説明

電気光学アセンブリ

【課題】電気光学ディスプレイを提供すること。
【解決手段】電気光学ディスプレイは、第1の基板および第2の基板(110、190)、ならびにこれらの基板の間に配置された接着層(180)および電気光学材料の層(130)を備え、この接着層は、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む。この添加物は、上記接着層の体積抵抗率が制御されることを可能にする。また、ポリマーバインダー中のカプセルを含むカプセル化電気泳動媒体において、バインダーの体積抵抗率が同様の様式で制御され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電気光学(electro−optic)ディスプレイの生産で有用な電気光学アセンブリ、およびこのようなアセンブリでの使用のための材料が開示される。より詳細には、制御された体積抵抗率を有するバインダーおよび接着組成物、およびこのような材料を取り込む電気光学アセンブリが開示される。本明細書で開示される材料は、電気光学ディスプレイ以外の適用で有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
電気光学ディスプレイは、電気光学材料の層を備え、本明細書では、当該技術分野におけるその従来の意味で用いられるその用語は、少なくとも1つの光学的性質で異なる第1おび第2のディスプレイ状態を有する材料をいい、この材料は、この材料への電場の印加により、その第1からその第2のディスプレイ状態に変更される。上記光学的性質は、代表的には、ヒトの眼に対する色彩認知であるが、光学的透過、反射率、発光、または、機械読み取りのために意図されたディスプレイの場合、可視範囲外側の電磁波長の反射率における変化という意味で擬似色のような、別の光学的性質であり得る。
【0003】
本発明の電気光学ディスプレイは、代表的には、電気光学材料が固形の外表面を有するという意味で固形である、電気光学材料を含むが、この材料は、このような電気光学材料を用いるディスプレイをアセンブルするための方法に、内部の液体またはガスで充填されたスペースを有し得、そしてしばしば有する。固形の電気光学材料を用いるこのようなディスプレイは、本明細書では、以後、便宜のために「固形電気光学ディスプレイ」と称される。従って、この用語「固形電気光学ディスプレイ」は、回転重彩度(bichromal)メンバーディスプレイ(以下を参照のこと)、カプセル化電気泳動ディスプレイ、ミクロセル電気泳動ディスプレイおよびカプセル化液晶ディスプレイを含む。
【0004】
用語「二安定」および「二安定性」は、本明細書では、当該技術分野におけるそれらの従来意味で用いられ、少なくとも1つの光学的性質で異なる第1および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を含むディスプレイをいい、そしてそれ故、任意の所定の要素が、有限の持続時間のアドレスパルスの手段により駆動された後、アドレスパルスが終了した後、その第1または第2のディスプレイ状態をとり、その状態は、上記ディスプレイ要素の状態を変更するために必要なアドレスパルスの最小の持続期間の少なくも数倍、例えば、少なくとも4倍持続する。公開された米国特許出願第2002/0180687号には、グレースケールし得るいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極度の黒および白状態においてのみならず、それらの中間のグレー状態においても安定で、そして同じことが、いくつかのその他のタイプの電気光学ディスプレイについても真実であることが示されている。このタイプのディスプレイは、適正に、二安定よりもむしろ「マルチ安定」と呼ばれているが、便宜のために、本明細書では「二安定」が、二安定およびマルチ安定ディスプレイの両方をカバーするために用いられ得る。
【0005】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが知られている。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号;同第5,777,782号;同第5,760,761号;同第6,054,071号;同第6,055,091号;同第6,097,531号;同第6,128,124号;同第6,137,467号;および同第6,147,791号に記載のような、回転する重彩度メンバータイプである(このタイプのディスプレイは、しばしば、「回転重彩度ボール」ディスプレイと称され、この用語「回転重彩度メンバー」が好ましい。なぜなら、上記で述べた特許のいくつかでは、上記回転メンバーは球ではないのでより正確であるからである)。このようなディスプレイは、多数の小さな本体(代表的には球形または円筒形)を用い、これらは、異なる光学的特徴、および内部双極子をもつ2つ以上のセクションを有している。これらの本体は、マトリックス内の液体で充填された小腔(vacuole)内に懸濁され、これら小腔は、これら本体が自由に回転するように液体で充填されている。ディスプレイの外観は、それに電場を印加すること、従って、これら本体を種々の位置に回転すること、およびこれら本体のどのセクションが視表面を通じて観察されるのかを変更することに対して変更される。このタイプの電気光学媒体は、代表的には、二安定である。
【0006】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも一部が半導体金属酸化物から形成される電極、およびこの電極に付着された可逆的に色変化し得る複数の色素分子を備えるナノクロミックフィルムの形態のエレクトロクロミック媒体を用いる;例えば、O’Regan、Bら、Nature 1991、353、737;およびWood、D.、Information Display、18(3)、24(2002年3月)を参照のこと。また、Bach、U.ら、Adv.Mater.、2002、14(11)、845を参照のこと。このタイプのナノクロミックフィルムはまた、例えば、米国特許第6,301,038号、国際出願公開番号WO 01/27690、および米国特許出願第2003/0214695号に記載されている。このタイプの媒体もまた、代表的には二安定である。
【0007】
多年の間熱心な研究および開発の主題である別のタイプの電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、そこでは、複数の荷電粒子が電場の影響下で懸濁流体を通って移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広い視角、状態二安定性、および低電力消費の属性を有し得る。それにもかかわらず、これらディスプレイの長期間イメージ性質にともなう問題が、それらの広範囲の使用法を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向にあり、これらディスプレイの不適切な耐用年数を生じる。
【0008】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡されたか、またはその名の多くの特許および出願は、最近公開され、カプセル化電気泳動媒体を記載している。このようなカプセル化媒体は、多くの小さなカプセルを含み、その各々はそれ自身、液体懸濁媒体中に懸濁された電気泳動により可動な粒子を含む内部相、および内部相を取り囲むカプセル壁を含む。代表的には、これらカプセルは、それら自身ポリマーバイダー内に保持され、2つの電極間に位置する干渉層を形成する。このタイプのカプセル化媒体は、例えば、以下に記載されている;米国特許第5,930,026号;同第5,961,804号;同第6,017,584号;同第6,067,185号;同第6,118,426号;同第6,120,588号;同第6,120,839号;同第6,124,851号;同第6,130,773号;同第6,130,774号;同第6,172,798号;同第6,177,921号;同第6,232,950号;同第6,249,721号;同第6,252,564号;同第6,262,706号;同第6,262,833号;同第6,300,932号;同第6,312,304号;同第6,312,971号;同第6,323,989号;同第6,327,072号;同第6,376,828号;同第6,377,387号;同第6,392,785号;同第6,392,786号;同第6,413,790号;同第6,422,687号;同第6,445,374号;同第6,445,489号;同第6,459,418号;同第6,473,072号;同第6,480,182号;同第6,498,114号;同第6,504,524号;同第6,506,438号;同第6,512,354号;同第6,515,649号;同第6,518,949号;同第6,521,489号;同第6,531,997号;同第6,535,197号;同第6,538,801号;同第6,545,291号;同第6,580,545号;同第6,639,578号;同第6,652,075号;同第6,657,772号;同第6,664,944号;同第6,680,725号;同第6,683,333号;および同第6,704,133号;および米国特許出願公開番号2002/0019081;2002/0021270;2002/0053900;2002/0060321;2002/0063661;2002/0063677;2002/0090980;2002/0106847;2002/0113770;2002/0130832;2002/0131147;2002/0145792;2002/0171910;2002/0180687;2002/0180688;2002/0185378;2003/0011560;2003/0011868;2003/0020844;2003/0025855;2003/0034949;2003/0038755;2003/0053189;2003/0096113;2003/0102858;2003/0132908;2003/0137521;2003/0137717;2003/0151702;2003/0189749;2003/0214695;2003/0214697;2003/0222315;2004/0008398;2004/0012839;2004/0014265;2004/0027327;および国際出願公開番号WO 99/67678;WO 00/05704;WO 00/38000;WO 00/38001;WO 00/36560;WO 00/67110;WO 00/67327;WO 01/07961;WO 01/08241;WO 03/092077;およびWO 03/107,315。
【0009】
前記の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体中の別個のマイクロカプセルを取り囲む壁が、連続相によって置換され得、それ故、いわゆる「ポリマー分散型電気泳動ディスプレイ」を生成し、そこでは、電気泳動媒体は、電気泳動流体の別個の複数の液滴、およびポリマー材料の連続相を含み、しかも、このようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別個の液滴が、たとえ別個のカプセル膜が各個々の液滴にともなわなくてもカプセルまたはマイクロカプセルとみなされ得ることを認識している;例えば、前記の2002/0131147を参照のこと。従って、本出願の目的には、このようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種とみなされる。
【0010】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、代表的には、伝統的な電気泳動デバイスの凝集および沈降欠陥モードを受けず、そして広範な種類の可撓性および剛直性基板上のディスプレイにプリントまたはコートする能力のような、さらなる利点を提供する。(語「プリント」は、プリントおよびコーティングのすべての形態を含むことが意図され、制限されずに:パッチダイコーティング、スロットまたは押出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティグ、カーテンコーティングのようなプレメートル(pre−metered)コーティング;ナイフオーバーロールコーティング、前方および後方ロールコーティングのようなロールコーティング;グラビアコーティング;浸漬コーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラッシュコーティング;エアナイフコーティング;シルクスクリーンプリンティングプロセス;静電気プリンティングプロセス;熱プリンティングプロセス;インクジェットプリンティングプロセス;およびその他の類似の技法を含む。)従って、得られるディスプレイは可撓性であり得る。さらに、上記ディスプレイ媒体は(種々の方法を用いて)プリントされ得るので、このディスプレイ自身は、安価に作製され得る。
【0011】
関連するタイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「ミクロセル電気泳動ディスプレイ」である。ミクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および懸濁流体は、カプセル内にカプセル化されず、その代わりに、代表的にはポリマーフィルムであるキャリア媒体内に形成される複数の腔内に保持される。例えば、国際出願公開番号WO02/01281、および米国特許出願公開番号第2002/0075556(両者はSipix Imaging,Inc.に譲渡された)を参照のこと。
【0012】
その他のタイプの電気光学材料、例えば、ポリマー分散液晶もまた、本発明のディスプレイで用いられ得る。
【0013】
電気泳動媒体は、しばしば、不透明であり(なぜなら、例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的にブロックするからである)、そして反射モードで作動するけれども、多くの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「シャッターモード」で作動するように作製され得、そこでは、1つのディスプレイ状態は、実質的に不透明であり、そして1つは、光透過性である。例えば、前記の米国特許第6,130,774号および同第6,172,798号、および米国特許出願第5,872,552号;同第6,144,361号;同第6,271,823号;同第6,225,971号;および同第6,184,856号を参照のこと。双電気泳動(dielectrophoretic)ディスプレイは、電気泳動ディスプレイに類似しているが電場強度における変動に依存し、類似のモードで作動し得る;米国特許第4,418,346号を参照のこと。
【0014】
電気光学材料の層に加え、電気光学ディスプレイは、通常、電気光学材料の対向する面上に配置された少なくとも2つのその他の層を備え、これら2つの層の1つは、電極層である。大部分のこのようなディスプレイでは、両方の層が電極層であり、そして1つまたは両方の電極層は、パターン化されディスプレイの画素を規定する。例えば、1つの電極層は、細長い行電極に、そして他方は、この行電極に直角に走る細長い列電極にパターン化され得、画素は、行および列電極の交点によって規定される。あるいは、そしてより一般的には、1つの電極層は、単一の連続的電極の形態を有し、そして他方の電極層は、画素電極のマトリックスにパターン化され、その各々は、ディスプレイの1つの画素を規定する。スタイラス、プリントヘッドまたは類似のディスプレイから離れて移動可能な電極との使用に意図されている別のタイプの電気光学ディスプレイでは、電気光学層に隣接する層の1つのみが電極を備え、この電気光学層の反対の面上の層は、代表的には、上記移動可能な電極が電気光学層を損傷することを防ぐことが意図されている保護層である。
【0015】
三層の電気光学ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前記のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかでは、カプセル化電気泳動ディスプレイを製造するためのプロセスが記載され、そこでは、バインダー中にカプセルを含むカプセル化電気泳動媒体が、プラスチックフィルム上のインジウム−錫−酸化物(ITO)または類似の伝導性コーティング(これは、最終のディスプレイの1つの電極として作用する)を含む可撓性基板上にコートされ、このカプセル/バインダーコーティングは乾燥されて、この基板に強固に接着された電気泳動媒体の干渉層を形成する。別個に、画素電極のアレイ、および回路を駆動するためにこの画素電極を連結するコンダクターの適切な配列を含むバックプレーンが調製される。最終ディスプレイを形成するために、上記カプセル/バインダー層をその上に有する基板が、積層接着剤を用いて上記バックプレーンに積層される。(非常に類似したプロセスを用いて、スタイラスまたは類似の移動可能な電極と使用可能である電気泳動ディスプレイが、上記バックプレーンを、スタイラスまたはその他の移動可能な電極がその上をスライドし得る、プラスチックフィルムのような単純な保護層で置換することにより調製され得る。)このようなプロセスの1つの好ましい形態では、上記バックプレーンは、それ自身可撓性であり、そして画素電極およびコンダクターをプラスチックフィルムまたはその他の可撓性基板上にプリントすることにより調製される。このプロセスよるディスプレイの大量生産のための自明な積層技法は、積層接着剤を用いるロール積層である。類似の製造技法が、その他のタイプの電気光学ディスプレイとともに用いられ得る。例えば、ミクロセル電気泳動媒体または回転する重彩度メバー媒体を、カプセル化電気泳動媒体と実質的に同じ様式でバックプレーンに積層し得る。
【0016】
上記に記載のプロセスにおいて、上記電気光学層を保持する基板のバックプレーンへの積層は、有利には、減圧積層により実施され得る。減圧積層は、積層されている2つの材料の間から空気を駆逐する際に有効であり、それ故、最終ディスプレイ中の所望されない気泡を避け;このような気泡は、このディスプレイ上に生成されるイメージ中の所望されないアーチファクトを導入し得る。しかし、この様式の電気光学ディスプレイの2つの部分の減圧積層は、用いられる積層接着剤に対し緊縮な要求を課し、特にカプセル化電気泳動媒体を用いるディスプレイの場合がそうである。この積層接着剤は、上記電気光学層をこれが積層される層(代表的には電極層)に結合するに十分な接着強度を有するべきであり、そしてカプセル化電気泳動媒体の場合、この接着剤はまた、十分な接着強度を有し、カプセルを一緒に機械的に保持するべきである。電気光学ディスプレイが、可撓性タイプであるとき(そして回転重彩度メンバーおよびカプセル化電気泳動ディスプレイの重要な利点の1つは、それらが可撓性にされ得ることである)、この接着剤は、ディスプレイが曲げられるとき、ディスプレイ中に欠陥を導入しないように十分可撓性を有するべきである。この積層接着剤は、積層温度で適切な流れ性質を有するべきであり、高品質積層を確実にし、そしてこの観点から、カプセル化電気泳動およびいくつかのその他のタイプの電気光学媒体を積層する要求は、非常に困難である;この積層は、約130℃を超えない温度で実施されるべきである。なぜなら、上記媒体は損傷なくして実質的により高い温度までさらすことはできず、接着剤の流れは、その表面が下にあるカプセルより不規則にされるカプセル含有層の比較的不均一な表面に即応しなければならない。この積層温度は、実際、可能な限り低く維持されるべきであり、そして室温積層が理想的であり得るが、このような室温積層を許容する市販され利用可能な接着剤はない。この積層接着剤は、ディスプレイ中のすべてのその他の材料と化学的に適合するべきである。
【0017】
前記の2003/0025855で詳細に論議されるように、電気光学ディスプレイで用いられる積層接着剤は、特定の電気的規準に合致すべきであり、そして、これは、積層接着剤の選択でかなりの問題を導入する。積層接着剤の商業的製造者は、接着および積層温度の強度のような性質が、このような接着剤がそれらの主要な適用で良好に実施することを確実にすることに対するかなりの努力を当然つくし、これは、代表的には、ポリマーおよび類似のフィルムを積層することを含む。しかし、このような適用では、積層接着剤の電気的性質は、当面関係がなく、そしてその結果、商業的製造者は、このような電気的性質に注意を払わない。実際、特定の電気的性質における実質的変動(数倍まで)が、同じ市販の積層接着剤の異なるバッチ間で存在し得、恐らく、製造業者は、積層接着剤の非電気的性質(例えば、細菌増殖に対する抵抗性)を最適化することを試みていたからであり、そして電気的性質における生じる変化について全く関心がなかったからである。
【0018】
しかし、電気光学ディスプレイでは、その中には、積層接着剤が、通常、電気光学媒体の電気的状態を変更するために必要な電場を印加する電極間に配置され、この接着剤の電気的性質は、重要になり得る。電気技術者に明らかなように、この積層接着の体積抵抗率は重要になる。なぜなら、電気光学媒体を横切る電圧低下は、電極を横切る電圧低下から積層接着剤を横切る電圧低下を引いたものに基本的に等しいからである。この接着層の抵抗率が高すぎる場合、実質的な電圧低下が接着層内で生じ、電極を横切る電圧の増加が必要である。このような電極を横切る電圧を増加することは所望されない。なぜなら、それは、ディスプレイの電力消費を増加し、そして含まれる増加電圧を取り扱うためにより複雑かつ高価な制御回路の使用を必要とし得るからである。その一方、ディスプレイを連続的に横切って延びる接着層が、アクティブマトリックスディスプレイにおけるように、電極のマトリックスと接触している場合、この接着層の体積抵抗率は低すぎるべきではなく、または、この連続的接着層を通る電流の側方伝導は、隣接する電極間の所望されないクロストークを引き起こし得る。また、大部分の材料の体積抵抗率は、温度が増加すると急激に減少するので、接着剤の体積抵抗率が低すぎる場合、室温を実質的に超える温度におけるディスプレイの性能は、不利に影響される。これらの理由により、任意の所定の電気光学媒体との使用には、積層接着剤抵抗率の値の最適範囲が存在し、この範囲は、電気光学媒体の抵抗率とともに変動する。カプセル化電気泳動媒体の体積抵抗率は、代表的には、約1010オームcmであり、そしてその他の電気光学媒体の抵抗率は、通常、同じオーダーの大きさである。従って、この積層接着剤の体積抵抗率は、ディスプレイの作動温度、代表的には約20℃で、通常10〜1012オームcm、または約10〜1011オームcmである。この積層接着剤はまた、電気光学媒体それ自身のそれと類似である温度にともなう体積抵抗率の変動を有するべきである。
【0019】
電気光学ディスプレイにおける使用ための積層接着剤に対する先に論議したものの大部分で、むしろ共通点のない要求に合致し得る市販の材料の数は少なく、そして実際、小数の水分散ウレタンエマルジョンがこの目的のために用いられている。類似のグループの材料が、カプセル化電気泳動媒体のためのバインダーとして用いられている。
【0020】
しかし、このようなポリエステルを基礎にしたウレタンエマルジョンの積層接着剤としての使用は、なお、所望の機械的性質と電気的性質との間を完全には満足して妥協しない。アクリルポリマーおよび感圧接着剤のよう積層接着剤は、かなりより良好な機械的性質とともに利用可能であるが、これら材料の電気的性質は、電気光学ディスプレイにおける使用には不適正である。さらに、これまで、特定の電気光学媒体の電気的性質にそれらを「微調節」し適合させるウレタンエマルジョンの電気的性質を変更する満足な方法はない。従って、各セットの性質が別個に最適化され得るように、積層接着剤の機械的性質および電気的性質を「脱共役(decouple)」するために特定の方法が見出されれば高度に有利であり得る。
【0021】
さらに、電気光学ディスプレイにおける使用のために積層接着剤の選択を考慮することで、ディスプレイがアセンブルされるべきプロセスに注意が払われなければならない。電気泳動ディスプレイの最終的積層のための大部分の先行技術の方法は、本質的に回分(batch)方法であり、そこでは、電気光学媒体、積層接着剤およびバックプレーンは、最終アセンブリの直前に一緒にされるのみであり、そして大量生産のためにより良好に適合された方法を提供することが所望される。しかし、前述の2004/0027327は、固形電気光学ディスプレイ(粒子ベースの電気泳動ディスプレイを含む)をアセンブルする方法を記載し、それは、大量生産に良好に適合されている。本質的に、この同時係属中の出願は、いわゆる「フロントプレーン積層体」(「FPL」)を記載し、これは、順に、光透過性の電気伝導層;この電気伝導層に電気的に接触している固形電気光学媒体の層;接着層;および剥離シートを備える。代表的には、この光透過性の電気伝導層は、光透過性基板上に保持され、これは、好ましくは、この基板が、永久的な変形なくして直径(例えば)10インチ(254mm)ドラムの周りに手でくるめられ得るという意味で可撓性である。この同時係属中の出願および本明細書で用いられる用語「光透過性」は、このように指定された層が、この層を通して見る観察者が、上記電気光学媒体のディスプレイ状態における変化を観察することを可能にするに十分な光を透過することを意味するために用いられ、これは、通常、上記電気伝導層および隣接する基板(もし存在すれば)を通じて見られる。この基板は、代表的には、ポリマーフィルムであり、そして、通常、約1〜約25ミル(25〜634μm)、好ましくは約2〜約10ミル(51〜254μm)の範囲の厚みを有する。上記電気伝導層は、簡便には、例えば、アルミニウムまたはインジウム−錫−酸化物の薄い金属層であるか、または伝導性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが、例えば、E.I.du Pont de Nemours&Company、Wilmington DEから「アルミ化Mylar」(「Mylar」は登録商標である)として市販され利用可能であり、そしてこのような市販の材料は、このフロントプレーン積層体で良好な結果とともに用いられ得る。
【0022】
このようなフロントプレーン積層体を用いる電気光学ディスプレイのアセンブリは、このフロントプレーン積層体から剥離シートを除去すること、および上記接着層をバックプレーンと、この接着層がバックプレーンに接着させるに有効な条件下で接触することにより行われ得、それによって、この接着層、電気光学媒体層および電気伝導層をバックプレーンに固定する。このプロセスは、大量生産に良好に適応されている。なぜなら、このフロントプレーン積層体は、代表的には、ロールツーロール(roll−to−roll)コーティング技法を用いて大量生産され得、そして次に、特定のバックプレーンとの使用に必要な任意のサイズの片に切断されるからである。
【0023】
前記の2004/0027327はまた、上記フロントプレーン積層体のディスプレイへの取り込みの前に、フロントプレーン積層体中の電気光学媒体を試験する方法を記載する。この試験方法では、上記剥離シートには、電気伝導層が提供され、そして上記電気光学媒体の光学的状態を変更するに十分な電圧がこの電気伝導層と、上記電気光学媒体の反対面上の電気伝導層との間に印加される。この電気光学媒体の観察は、次いで、媒体中の任意の欠陥を示し得、従って、欠陥のある電気光学媒体をディスプレイ中に積層することを避け、欠陥のあるフロントプレーン積層体のみではなく、全体のディスプレイをスクラップにする結果コストを避ける。
【0024】
前記の2004/0027327はまた、剥離シート上に静電荷を配置し、従って、この電気光学媒体上にイメージを形成することにより、フロントプレーン積層体中の電気光学媒体を試験するための第2の方法を記載する。このイメージは、次いで、以前と同じ方法で観察され、この電気光学媒体中の任意の欠陥を検出する。
【0025】
国際出願番号PCT/US03/27686は、本質的に、先に記載されたフロントプレーン積層体の簡略バージョンである、いわゆる、「ダブル剥離フィルム」を記載している。このダブル剥離シートの1つの形態は、2つの接着層の間に挟まれた固形電気光学媒体の層を備え、この接着層の両方または1つは、剥離シートによって覆われている。このダブル剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固形電気光学媒体の層を備える。このダブル剥離フィルムの両方の形態は、既に記載されたフロントプレーン積層体から電気光学ディスプレイをアセンブルするためのプロセスにほぼ類似のプロセスでの使用のために意図されているが、2つの別個の積層体を含み;代表的には、第1の積層体において、ダブル剥離シートは、フロント電極に積層され、フロントサブアセンブリを形成し、そして次に、第2の積層体では、この第1のサブアセンブリが、バックプレーンに積層され、最終のディスプレイを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
前記の2004/0027327に記載されるフロントプレーン積層体を用いるアセンブリ方法の利点を考慮すると、積層接着剤がこのようなフロントプレーン積層体に取り込まれ得ることが所望される。積層接着剤が先に記載のダブル剥離フィルムに取り込まれ得ることもまた所望される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
第1の基板および第2の基板、ならびに該第1の基板と第2の基板との間に配置された接着層および電気光学材料の層を備える、電気光学アセンブリであって、該接着層が、ポリマー接着材料と塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気光学アセンブリ。
(項目2)
前記接着層が、ポリマー接着材料および塩の混合物を含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目3)
前記塩が、酢酸カリウムを含む、項目2に記載の電気光学アセンブリ。
(項目4)
前記塩が、第4級アンモニウム塩を含む、項目2に記載の電気光学アセンブリ。
(項目5)
前記塩が、テトラアルキルアンモニウム塩を含む、項目4に記載の電気光学アセンブリ。
(項目6)
前記塩が、塩化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを含む、項目5に記載の電気光学アセンブリ。
(項目7)
前記高分子電解質がポリ酸の塩を含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目8)
前記高分子電解質がポリアクリル酸のアルカリ金属塩を含む、項目7に記載の電気光学アセンブリ。
(項目9)
前記添加物を含む接着層に、異なる色の領域が提供され、そしてカラーフィルターとして供される、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目10)
前記添加物を含む接着層が、光学的バイアス要素をさらに備える、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目11)
前記接着層が、ポリマー接着材料1gあたり約10−6〜約10−4モルの塩を含む、項目2に記載の電気光学アセンブリ。
(項目12)
前記接着層が、ポリマー接着材料1gあたり約10−5〜約10−4モルの塩を含む、項目11に記載の電気光学アセンブリ。
(項目13)
前記接着層がポリウレタンを含む、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目14)
前記第1の基板および第2の基板の少なくとも1つが、電極を備える、項目1に記載の電気光学アセンブリ。
(項目15)
前記第1の基板および第2の基板の各々が、少なくとも1つの電極を備える、項目14に記載の電気光学アセンブリ。
(項目16)
前記第1の基板が光透過性の電気的に伝導性の電極を備え、前記第2の基板が剥離シートを備え、そして前記電気光学媒体が固形電気光学媒体である、項目14に記載の電気光学アセンブリ。
(項目17)
以下:
第1の表面および第2の表面をその対向する面に有する固形電気光学媒体の層;
該固形電気光学媒体の層の第1の表面上の第1の接着層;
該固形電気光学媒体の層から第1の接着層の対向する面上に配置された剥離シート;および
該固形電気光学媒体の層の第2の表面上の第2の接着層を備え、
該第1の接着層および第2の接着層の少なくとも1つが、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、製造品。
(項目18)
第1の基板および第2の基板、ならびに該第1の基板と第2の基板との間に配置された接着層および電気光学材料の層を備える電気光学アセンブリであって、該接着層が、ポリマー接着材料と伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気光学アセンブリ。
(項目19)
前記伝導性金属粉末がニッケルを含む、項目18に記載の電気光学アセンブリ。
(項目20)
以下:
第1の表面および第2の表面をその対向する面に有する固形電気光学媒体の層;
該固形電気光学媒体の層の第1の表面上の第1の接着層;
該固形電気光学媒体の層から第1の接着層の対向する面上に配置された剥離シート;および
該固形電気光学媒体の層の第2の表面上の第2の接着層を備え、
該第1の接着層および第2の接着層の少なくとも1つが、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、製造品。
(項目21)
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、該カプセルの各々が、カプセル壁、該カプセル壁内にカプセル化された懸濁流体、および該懸濁流体中に懸濁された複数の荷電した粒子を含み、そして該媒体への電場の印加に際しそれを通じて移動し得、該媒体が該カプセルを取り囲むバインダーをさらに含み、該バインダーが、ポリマー接着材料と塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気泳動媒体。
(項目22)
前記バインダーが、前記ポリマー接着材料および塩の混合物を含む、項目21に記載の電気泳動媒体。
(項目23)
前記塩が、酢酸カリウムを含む、項目22に記載の電気泳動媒体。
(項目24)
前記塩が、第4級アンモニウム塩を含む、項目22に記載の電気泳動媒体。
(項目25)
前記塩が、テトラアルキルアンモニウム塩を含む、項目24に記載の電気泳動媒体。
(項目26)
前記塩が、塩化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを含む、項目25に記載の電気泳動媒体。
(項目27)
前記高分子電解質がポリ酸の塩を含む、項目21に記載の電気泳動媒体。
(項目28)
前記高分子電解質が、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩を含む、項目27に記載の電気泳動媒体。
(項目29)
前記添加物を含むバインダーが、光学的バイアス要素をさらに含む、項目21に記載の電気泳動媒体。
(項目30)
バインダー1gあたり約10−6〜約10−4モルの塩を含む、項目21に記載の電気泳動媒体。
(項目31)
バインダー1gあたり約10−5〜約10−4モルの塩を含む、項目30に記載の電気泳動媒体。
(項目32)
前記バインダーが、ポリウレタンを含む項目21に記載の電気泳動媒体。
(項目33)
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、該カプセルの各々が、カプセル壁、該カプセル壁内にカプセル化された懸濁流体、および該懸濁流体中に懸濁された複数の荷電した粒子を含み、そして該媒体への電場の印加に際しそれを通じて移動し得、該媒体が該カプセルを取り囲むバインダーをさらに含み、該バインダーが、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気泳動媒体。
(項目34)
ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固形電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、接着剤。
(項目35)
前記ポリマー接着材料が、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸をベースにした接着剤、およびそれらの組み合わせから選択される、項目34に記載の接着剤。
(項目36)
ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む接着剤。
(項目37)
前記ポリマー接着材料が、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸をベースにした接着剤、およびそれらの組み合わせから選択される、項目36に記載の接着剤。
従って、1つの局面では、第1の基板および第2の基板、ならびにこの第1の基板と第2の基板との間に配置された接着層および電気光学材料の層を備える、電気光学アセンブリが提供され、この接着層は、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む。上記添加物を含む接着層は、ポリマー接着材料1gあたり約10−6〜約10−4モルの添加物を含む。代表的には、この層は、ポリマー接着材料1gあたり約10−5〜約10−4モルの添加物を含み得る。この層は、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、またはポリアクリル酸をベースにした接着剤を含み得る。
【0028】
1つの実施形態では、この電気光学アセンブリで用いられる接着層は、ポリマー接着材料および塩の混合物を含み得る。この塩は、例えば、無機塩、有機塩、またはそれらの組み合わせであり得る。1つの特定の実施形態では、この塩は、酢酸カリウムを含む。代替の実施形態では、この塩は、例えば、塩化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートのようなテトラアルキルアンモニウム塩である、第4級アンモニウム塩を含み得る。
【0029】
上記添加物が高分子電解質である実施形態では、この高分子電解質は、制限されないで、例えば、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩のような、ポリ酸の塩を含み得る。
【0030】
上記添加物を含む接着層は、接着機能の他にその他の機能を提供し得る。例えば、この層は、異なる色の領域が提供され、そしてカラーフィルターとして供され得る。あるいは、この層は、光学的バイアス要素をさらに備え得る。
【0031】
電気光学アセンブリでは、上記第1の基板および第2の基板の少なくとも1つは、電極を備え得る。1つの特定の実施形態では、この第1の基板および第2の基板の各々は、少なくとも1つの電極を備える。別の特定の実施形態では、上記第1の基板は光透過性の電気伝導層(これは、電極として作用し得る)を備え得、上記第2の基板は剥離シートを備え得、そして上記電気光学媒体は固形電気光学媒体であり得;従って、この全体の電気光学アセンブリは、前記2004/0027327に記載のようなフロントプレーン積層体の形態を有し得る。
【0032】
本発明のさらなる局面では、以下:第1の表面および第2の表面をその対向する面に有する固形電気光学媒体の層;この固形電気光学媒体の層の第1の表面上の第1の接着層;この固形電気光学媒体の層から第1の接着層の対向する面上に配置された剥離シート;および固形電気光学媒体の層の第2の表面上の第2の接着層を備え、この第1の接着層および第2の接着層の少なくとも1つが、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む製造品(ダブル剥離シート)が提供される。
【0033】
本発明の別の局面では、第1の基板および第2の基板、ならびにこの第1の基板と第2の基板との間に配置された接着層および電気光学材料の層を備える電気光学アセンブリであって、上記接着層が、ポリマー接着材料と伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気光学アセンブリが提供される。前記伝導性金属粉末は、例えば、ニッケルであり得る。
【0034】
本発明のなおさらなる局面では、以下:第1の表面および第2の表面をその対向する面に有する固形電気光学媒体の層;この固形電気光学媒体の層の第1の表面上の第1の接着層;この固形電気光学媒体の層から第1の接着層の対向する面上に配置された剥離シート;およびこの固形電気光学媒体の層の第2の表面上の第2の接着層を備え、この第1の接着層および第2の接着層の少なくとも1つは、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む製造品(ダブル剥離シート)が提供される。
【0035】
別の局面では、複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、このカプセルの各々が、カプセル壁、このカプセル壁内にカプセル化された懸濁流体、およびこの懸濁流体中に懸濁された複数の荷電した粒子を含み、そしてこの媒体への電場の印加に際しそれを通じて移動し得、この媒体が該カプセルを取り囲むバインダーをさらに含み、このバインダーが、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む電気泳動媒体が提供される。この添加物を含むバインダーは、バインダー1gあたり約10−6〜約10−4モルの添加物を含み得る。代表的には、このバインダーは、バインダー1gあたり約10−5〜約10−4モルの添加物を含み得る。このバインダーは、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、またはポリアクリル酸をベースにした接着剤を含み得る。
【0036】
1つの実施形態では、この電気泳動媒体で用いられるバインダーは、ポリマー接着材料および塩の混合物を含み得る。この塩は、例えば、無機塩、有機塩、またはそれらの組み合わせであり得る。1つの特定の実施形態では、この塩は、酢酸カリウムを含む。代替の実施形態では、この塩は、例えば、塩化テトラブチルアンモニウムまたはテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートのようなテトラアルキルアンモニウム塩である、第4級アンモニウム塩を含み得る。
【0037】
上記バインダー内の添加物が高分子電解質である実施形態では、この高分子電解質は、例えば、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩のような、ポリ酸の塩を含み得る。
【0038】
上記添加物を含むバインダーは、接着機能の他にその他の機能を提供し得る。例えば、このバインダーは、光学的バイアス要素を備え得る。
【0039】
なお別の局面では、複数のカプセルを含む電気泳動媒体が提供され、このカプセルの各々は、カプセル壁、このカプセル壁内にカプセル化された懸濁流体、およびこの懸濁流体中に懸濁された複数の荷電した粒子を含み、そしてこの媒体への電場の印加に際しそれを通じて移動し得、この媒体は上記カプセルを取り囲むバインダーをさらに含み、このバインダーは、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む。
【0040】
別の局面では、ポリマー接着材料と、塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固形電解質、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む接着剤が提供される。この接着剤では、上記ポリマー接着材料は、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸をベースにした接着剤、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0041】
最後に、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む接着剤が提供される。この接着剤では、上記ポリマー接着材料は、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸をベースにした接着剤、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、フロントプレーン積層体の形態を有する本発明の電気光学アセンブリを通る略断面図である。
【図2】図2は、上記実施例1で報告された実験で決定されるとき、種々のポリマー接着剤/添加物混合物の体積抵抗率を示すグラフである。
【図3】図3は、図2に示される種々の混合物の平均体積抵抗率を添加物濃度とともにプロットするグラフである。
【図4】図4は、図3と類似ではあるが、上記実施例2で報告された実験で決定されたとき、ポリマー接着剤/テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート混合物の体積抵抗率の変動を塩濃度とともに示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
既に示されたように、例えば、電気光学アセンブリの接着層およびディスプレイにおいて、およびカプセル化電気泳動媒体のカプセルを取り囲むバインダーにおいて用いられる接着材料の体積抵抗率を制御するための特定の接着剤が、本明細書中に開示される。本明細書中に開示される接着層およびバインダーは、この接着層またはバインダーの機械的性質を実質的に変えることなく、上記体積抵抗率が変動されることを可能にする。この接着層およびバインダーは、1つ以上の添加物の添加により、所望の機械的性質を有しているが、それらの体積抵抗率が不適正なためそうでなければ用いることができないであろう接着材料の選択を拡張する。従って、接着層またはバインダーの体積抵抗率を「微調節」し得、すなわち、この材料の体積抵抗率を特定のディスプレイまたは電気泳動媒体のための最適値に調節する。
【0044】
本発明の電気光学アセンブリは、完全な電気光学ディスプレイまたはこのようなディスプレイのサブアセンブリのみを構成し得る。既に示したように、そして前記のE InkおよびMIT特許および出願で詳細に論議したように、完全な電気光学ディスプレイは、少なくとも1つ、そして通常は2つの電極の存在を必要とし、電気光学材料の光学的状態を変動するために必要な電場を生成するが、いくつかの場合には、この2つの電極の1つのみがディスプレイの常設部分であり得、他方の電極は、移動可能なスタイラス、またはディスプレイ上に書き込むためにディスプレイの上を移動され得る類似の器具の形態にある。本発明の電気光学アセンブリが2つ以上の常設電極をもつ完全ディスプレイの形態であるとき、上記第1および第2の基板の各々が、少なくとも1つの電極を備える。例えば、上記アセンブリは、アクティブマトリックスディスプレイの形態を有し得、第1の基板は、複数の画素を横切って延びる単一の連続的光透過電極、および、代表的には、ディスプレイの全体(実際、この第1の基板はまた、通常、ポリマーフィルムまたは類似の支持層を備え、これは、比較的薄い光透過性電極を支持し、そしてこの比較的壊れ易い電極を機械的損傷から保護する)を備え、その一方、第2の基板は、支持体部分および複数の画素電極を備えるバックプレーンの形態を有し、これらは、ディスプレイの個々の画素を規定する。明らかなことには、このようなバックプレーンは、非直線状デバイス(代表的には薄膜トランジスター)、および上記画素電極上でディスプレイを駆動する(すなわち、種々の画素を、ディスプレイ上に所望のイメージを提供するために必要な光学的状態にスイッチする)ために必要な電位を生成するために用いられるその他の回路をさらに備え得る。
【0045】
あるいは、本発明の電気光学アセンブリは、このような完全なディスプレイのサブアセンブリを構成し得る。特に、この電気光学アセンブリは、前記の2004/0027327に記載されるようなフロントプレーン積層体の形態を有し得る。このようなフロントプレーン積層体では、基板の1つ(便宜のために第1の基板という)は、最終のディスプレイでフロント電極を形成することが意図される光透過性の電気伝導層を備え(再び、この第1の基板はまた、通常、ポリマーフィルム、または比較的薄い電気伝導性層を支持する類似の支持層を備え、そしてそれを機械的損傷から保護する)、その一方、上記第2の基板は、剥離シートを備え、これは、上記フロントプレーン積層体がバックプレーンに積層されて最終のディスプレイを形成する前に除去される。
【0046】
実際、本発明のダブル剥離シートは、本発明の電気光学アセンブリの特有のタイプと見なされ得る。実施において、このようなダブル剥離シートは、代表的には、その両方の面上に接着層を有する電気光学材料の層を備え、接着層の両方は剥離シートによって覆われている。このようなダブル剥離シートは、本発明の電気光学アセンブリを備え、ここで、両方の基板は、剥離シートである。
【0047】
上記接着層またはバインダーは、(a)塩、高分子電解質、ポリマー電解質、固体電解質、およびそれらの組み合わせ;または(b)伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の接着剤を含む。
【0048】
特定の実施形態では、上記添加物は、無機塩、有機塩、またはそれらの組み合わせのような塩であり得る。例示の塩は、酢酸カリウム、およびテトラアルキルアンモニウム塩、特に、塩化物などのテトラブチルアンモニウム塩を含む。塩のさらなる例は、LiCFSOF、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、およびLiN(CFSOのようなリチウム塩を含む。現在好ましい塩は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートであり、主として、この塩の安定性および不活性度のためである。
【0049】
その他の実施形態では、上記ポリマー電解質は、高分子電解質である。高分子電解質は、代表的には、分子の約10%以上がイオン化し得、荷電種を形成する官能基から構成されるポリマーである。高分子電解質内の特定の官能基の例は、制限されないで、カルボン酸、スルホン酸、リン酸および第4級アンモニウム化合物を含む。これらのポリマーは、有機または無機塩と組み合わせられ得るか、または単独で用いられる。高分子電解質の例は、制限されないで、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホネート、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(ジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)を含む。好ましい高分子電解質は、ポリアクリル酸のナトリウム塩である。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、上記添加物は、ポリマー電解質である。本明細書で用いられるとき、用語「ポリマー電解質」は、塩を可溶化し得るポリマーを記載する。これらポリマー中の塩の溶解度は、エーテル、カルボニル、カルボン酸、1級、2級、3級および4級アミノ基、スルホン酸など形成するポリマー内の酸素および/または窒素原子の存在によって増大され得る。ポリマー電解質の例は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピリンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドなどのポリエーテル化合物、ポリエチレインイミン、ポリビニルピロリジノン、NR1R2R3R4のような第4級アンモニウム基を含むポリマー(ここで、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に、Hまたは直鎖、分岐、または環状の1〜25の炭素原子を有するアルキル基であるり、そしてここで、対イオンは、任意の有機または無機アニオンから選択されるいずれかであり得るポリアミンを含む。
【0051】
なおその他の添加物は、伝導性金属粉末、強磁性流体、および/または溶液中のイオンの移動度を改善、または、あるいは、妨げ得る非反応性溶媒を含み得る。適切な非反応性溶媒の例は、水、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチレングリコール、グリム(glyme)、ジグリム、N−メチルピロリドンなどを含む。なお別の実施形態では、伝導性有機化合物が上記添加物として用いられ得る。これら化合物のいくつかの非制限的な例は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ−3,4−ジオキシエチレンチオフェン、およびこれら材料のn−ドープ状態またはp−ドープ状態にある誘導体を含む。
【0052】
上記接着層またはバインダーで用いられるポリマー接着材料は、エンドユース適用の特定の必要性を満たす任意のポリマー材料であり得る。適切なポリマー接着材料の例は、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸を基礎にした接着剤、またはそれらの組み合わせを含む。これらの接着材料は、溶媒ベースまたは水ベースであり得る。用いられ得る特定のポリウレタンの例は、2003年11月18日に出願され、Air Products and Chemicals,Inc.に譲渡された同時係属中の米国特許出願番号第10/715,916号に記載されている。
【0053】
ポリマー接着材料中に取り込まれ添加物は、インサイチュで形成され得る;換言すれば、1つ以上の前駆体材料がポリマー接着材料またはバインダー中に取り込まれ得、ここで、この前駆体材料(単数または複数)は、互いに、またはポリマー接着剤もしくはバインダーと反応し得るか、あるいは、この接着材料またはバインダーを、この前駆体材料内に変化を引き起し最終の接着剤を形成する条件に曝すことにより(例えば、熱、光、または磁場もしくは電場への曝露)変化を受け得る。
【0054】
上記接着材料またはバインダーは、その体積抵抗率を調節するために用いられる添加物(またはその他のドーパント)以外の成分を含み得る;例えば、この接着材料またはバインダーはまた、色素またはその他の着色剤を含み得る。ディスプレイの視表面(観察者がそれを通じてディスプレイを見る表面)上に別個の層としてカラーフィルターを提供することにより総カラー電気光学ディスプレイを形成することが知られており、このカラーフィルターは、異なる色、例えば、赤、緑および青の画素を含む。しかし、カラーフィルターがこのように上記電気光学材料から間隔を置かれるとき、カラーイメージを視表面に垂直方向に対し実質的な角度で見るとき、イメージの歪みの可能性が存在する。このような問題を避けるため、カラーフィルターを上記電気光学材料自身に直ぐ隣接して配置することが原則的に所望される。しかし、これは、カラーフィルターをディスプレイの電極の間に配置することを必要とし、その結果、このカラーフィルターの電気的性質が、ディスプレイの性能に影響する。これは、カラーフィルターにともなう特有の問題である。なぜなら、このようなフィルターは、通常、赤、緑および青またはその他の着色部分を形成するために、3つの異なる色素、または色素の混合物をもつポリマーベースの材料を乾燥する(dying)ことによって形成されるからであり、そしてこれら3つの異なる色素が同じ様式でカラーフィルターの電気的性質に影響することはありそうにない。本明細書に記載される接着層およびバインダーは、これら異なる色素の影響を相殺するために用いられ得、そしてこのカラーフィルターの電気的性質を実質的に均一にし、それによって、このカラーフィルター内の非均一な電気的性質に起因するイメージ上のアーチファクトを避ける。
【0055】
「光学的バイアス要素」がディスプレイの外観を調節するためにカプセル化電気泳動ディスプレイのバインダーまたは積層接着剤中に提供され得ることもまた公知である(前記の2003/0011560を参照のこと)。このような光学的バイアス要素の提供は、上記接着剤またはバインダーの電気的性質に影響し得、そしてこのような光学的バイアス要素を含む接着剤またはバインダーの電気的性質は、本明細書記載の添加物の使用により最適化され得る。
【0056】
添加物の最適量は、勿論、用いられる正確なポリマーバインダーまたは接着材料および正確な添加物、および最終混合物の所望の体積抵抗率とともに広く変動する。しかし、一般的な指針により、バインダーまたは接着剤の1グラムあたり約10−5〜約10−4モルの添加物の濃度が、有用な結果を与えることが見出されていることが示され得る。添加物か塩であるとき、この範囲は、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートおよび酢酸カリウムのような1:1塩に対しであり;炭酸ナトリウムまたは塩化カルシウムのような1:2が用いられる場合、バインダーまたは接着剤の塩1グラムあたり10−6モルのオーダーのより低い濃度が十分であり得る。以下の実施例で示されるように、接着材料の体積抵抗率は、代表的には、添加物の濃度とともに予測可能な様式で変動し、そしてそれ故、所望の体積抵抗率を達成するためにいくらの量の添加物が添加されるべきであるかの最終選択は、経験的に容易に決定され得る。
【0057】
少量の塩が、先行技術電気光学ディスプレイにおいて、例えば、延長された貯蔵の間の生物学的分解からポリマーを保護するための殺菌剤として、バインダーおよび積層接着剤として用いられるポリマーに添加されているけれども、このような塩は、代表的には、それらの殺菌機能または類似の機能を実施するとき、貯蔵の間に消耗される。対照的に、本発明で用いられる添加物は、ポリマーバインダーまたは積層接着剤の永久的成分であることが意図される。なぜなら、それらは、その伝導性において永久的な調節を行うことが意図されるからである。また、用いられる添加物の最適量は、代表的には、殺菌剤などとして用いられる塩の量より実質的により多い。
【0058】
代表的には、上記添加物を接着材料中に取り込むために特別な手順は必要ではない。代表的な場合であるように、上記接着層が、ラテックスのフィルムまたは接着材料の溶液を基板または電気光学材料の上にコーティングすること、および接着層を形成するために乾燥することによって形成される場合、この接着剤は、通常、コーティングの前に、ラテックスまたは接着材料の溶液に単に溶解または分散され得る。この添加物は、ラテックスまたは溶液ニートに添加され得るか、または水溶液、非水溶液、またはその組合せに溶解され得る。同様に、代表的な場合であるように、電気泳動媒体が、液体中のカプセル中のスラリーをラテックスまたはポリマーバインダーの溶液と混合すること、および得られる混合物を基板上にコーティングすること、およびこの電気泳動媒体を形成するために乾燥することにより形成される場合、上記添加物は、通常、このラテックスまたは溶液がカプセルと混合される前に、ラテックスまたはポリマーバインダーの溶液中に単に溶解または分散され得る。勿論、最終の接着層またはバインダー層内の伝導度における変動を防ぐために、この添加物が、上記接着材料の全体に均一に分散されることを確実にすることが必要であるが、コーティング技法の当業者は、このような均一な分散を確実にするためのロールミル上の長時間の撹拌のような慣用の技法を熟知している。
【0059】
用いられるべき特定の接着剤の選択は、大部分は、上記接着層のその他の成分との適合性、および上記添加物が添加され得る接着材料中の溶解度の考慮によって支配される。代表的な場合であるように、添加物が、接着材料の水性ラテックスに添加されるべき場合、この添加物は、良好な水溶解性を有するように選択されるべきであり、その結果、塩の中で、アルカリ金属および置換されたアンモニウム塩が一般に好まれる。この添加物がラテックス粒子の凝集を引き起こさないことを確実にするよう注意を払うべきである。また、上記添加物は、望ましくは、上記接着材料のpHにおいて大きな変化を引き起こすべきではなく、そして接着材料、またはそれが最終的に接触するようになる最終ディスプレイのその他のパーツ、例えばバックプレーンと化学的に反応するべきではない。
【0060】
1つ以上の添加物の添加は、電気光学ディスプレイでバインダーおよび積層接着剤として用いられ得る、ポリマー材料の範囲を大いに拡張する。特に、1つ以上の添加物の添加は、電気光学ディスプレイで高度に所望される機械的性質を有するが、それらの純粋状態で有用であるには高すぎる体積抵抗率を有するポリマー材料の使用を可能にする。また、いくつかの電気光学ディスプレイ、特にカプセル化電気泳動ディスプレイおよび、エレクトロクロミックディスプレイは、湿度に感受性であるので、1つ以上の添加物の添加は、このようなディスプレイでこれまで用いられた水ベースのポリウレタン分散物を、非吸湿性および/または疎水性ポリマー材料で置き換えるために用いられ得る。
【0061】
本明細書で開示される改変された接着剤およびバインダーは、電気光学ディスプレイ以外の適用で有用であり得るということは理解されるであろう。
【0062】
本発明の電気光学アセンブリの特に好ましい実施形態を、添付の図面の図1を参照して、例示のみであるが、ここで説明し、これは、フロントプレーン積層体の形態を有する1つのこのようなアセンブリを通る概略断面である。この電気光学アセンブリは、基板、伝導層、電気光学層、接着層、および剥離シートの形態である第2の基板を備え;このアセンブリは、サブアセンブリが第2のアセンブリ、すなわち、バックプレーンに積層される前の、電気光学ディスプレイのための製造プロセスの中間ステージで示されている。
【0063】
図1に示されるフロントプレーン積層体(一般に100で示される)は、光透過性基板110、光透過性電極層120、電気光学層130、積層接着層180および剥離シート190を備え;この剥離シートは、FPL100のバックプレーンへの積層に先立って、積層接着層180から除去されるプロセスで示されている。
【0064】
基板110は、代表的には、7ミル(177μm)ポリエチレンテレフタレートシートのような、透明プラスチックフィルムである。最終ディスプレイの視表面を形成する、基板110の(図1中)下面は、1つ以上のさらなる層(示さず)、例えば、紫外線照射を吸収するための保護層、最終ディスプレイ中に酸素または湿度の進入を防ぐためのバリア層、およびディスプレイの光学的性質を改良するための抗反射コーティングを有し得る。基板110の上面上にコートされて、好ましくはITOの薄い光透過性電気伝導層120があり、これは、最終ディスプレイにおいて共通フロント電極として作用する。ITOでコートされたPETフィルムが市販され利用可能である。
【0065】
電気光学層130は、代表的にはスロットコーティングにより、伝導層120上に堆積され得、この2つの層は電気的に接触している。図1に示される電気光学層130は、カプセル化電気泳動媒体であり、そしてマイクロカプセル140を備え、その各々は、炭化水素ベースの懸濁流体165中に懸濁された、負に荷電した白い粒子150、および正に荷電した黒い粒子160を含む。これらマイクロカプセル140は、ポリマーバインダー170内に維持されて保持される。電気光学層130を横切る電場の印加に際し、白い粒子150は正極に移動し、そして黒い粒子160は負極に移動し、その結果、電気光学層130は、基板110を通じてディスプレイを見る観察者に見え、白または黒は、伝導層120がバックプレーン中の隣接する画素電極に対して正または負いずれかに依存する。
【0066】
このFPL100は、望ましくは、便利には、スロットコーティングにより、液体形態の積層接着剤180を剥離シート190上にコートすること、固層を形成するためにこの接着剤を乾燥(またはそうでなければ硬化)すること、そして次にこの接着剤および剥離シートを、伝導層120を保持する基板110上に先にコートされている、上記電気光学層130に積層することにより調製され;この積層は、便利には、熱ロール積層を用いて行われ得る。(あるいは、しかし所望度は低いが、積層接着剤が電気光学層130上に付与され得、そして次に、剥離シート190で覆われる前に、乾燥またはそうでなければ硬化される)。この剥離シート190は、便利には、7ミル(177μm)フィルムであり;用いられる電気光学媒体の性質に依存して、このフィルムを、剥離剤、例えば、シリコーンでコートすることが所望され得る。図1に示されるように、この剥離シート190は、最終ディスプレイを形成するためにFPL100がバックプレーン(示さず)に積層される前に、積層接着剤180から剥がされるか、または除去される。
【0067】
添加物、例えば、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートが、バインダー170および/または積層接着剤180中に含められる。上記添加物が、バインダー170中に含められるべき場合、それは、前記のE InkおよびMIT特許および出願に記載のように、好都合なことに、基板110および伝導層120を備えるフィルム上にコートされるカプセル/バインダースラリーに添加される。同様に、上記添加物が、積層接着剤180中に含められるべき場合、それは、便利には、すでに記載されたように、この層180を形成するためのコーティングの前に、上記積層接着剤の液体形態に添加される。
【0068】
以下の実施例は、ここで、例示のみによるが、本発明で用いられる、好ましい材料、条件および技法の詳細を示すために与えられる。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
基礎となる接着材料が、NeoResins,Inc.,730 Main Street、Wilmington MA 01887から市販され入手可能な2つのポリウレタン分散物、NeoRez(登録商標)9630およびNeoRez9330をブレンドすることにより調製した。この材料を、各々が約50gの8つのサンプルに分割し、各サンプルは40重量%の固形分、そして変化する量の酢酸カリウム、テトラブチルアンモニウムクロライド、またはポリ(アクリル酸)水溶液を、以下の表に示されるように添加した;コントロールサンプルがまた、添加剤なしで提供された。
【0070】
【表1】

サンプルの各々を、完全に均一な産物を確実にするため、および添加物を固形分として上記サンプルに添加する結果として形成された任意のゲル様固形分を再分散するために、7〜10日の期間混合した。各混合期間の終わりに、視覚検査で、すべてのサンプルが任意の有意な量のゲルがないことを確認した。
【0071】
次いで、各サンプルを剥離シート上にコートし、そして乾燥して、約40μm厚みの接着剤の層を生成した。この乾燥されたフィルムは、インジウム錫酸化物コーティングが提供されたポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの伝導性表面に積層され、剥離シートが取り除かれ、そして接着剤の剥き出た表面を、グラファイトの層でコートされたポリマーフィルムを含む実験的2インチ×2インチ(51×51mm)バックプレーンに積層し、単一画素の試験ユニットを生成した(本質的に、単一画素ディスプレイから電気光学媒体を引いたもの)。得られた試験ユニットは、5日間、25℃および30%相対湿度で調製した。接着剤の厚みを測定かつ記録し、そして接着層の抵抗を決定した。接着剤の体積抵抗率を、次いで、これらの測定から決定し、そしてその結果を添付の図面の図2に示す。図3は、接着剤濃度に対する図2からの平均の結果を示す。
【0072】
図2および3中の結果から、添加物は、ほぼ大きさのオーダーによって体積抵抗率が改変され、そして体積抵抗率における変動が、添加物濃度と合理的に直線状であることが観察される。
【0073】
(実施例2)
この実施例は、前記の同時継続中の出願番号第10/715,916号に記載のような接着材料の体積抵抗率を低下することにおけるテトラブチルアンモニウムヘキサフロオロホスフェート(NBuPF)の影響を示す。
【0074】
溶液1gあたり10〜200mgのNBuPFを含む、この塩のストック溶液を調製し、そして種々のアリコートのポリウレタン分散物に添加し、接着剤固形分の1gあたり10−7〜10−4モルの範囲の所望のレベルの塩を生成した(重量/重量接着剤固形分ベースで約100〜100,000ppmの塩)。得られた塩溶液/分散混合物を、ローラーミル上で少なくとも3時間混合し、完全混合を確実にした。
【0075】
このように調製された塩含有分散物を、上記の実施例1におけるのと同じ方法でコートし、そして空気中、60℃で少なくとも10分間乾燥し、12〜20μmの厚みを有する乾燥した接着層を生成した。得られた接着層を、次いで、上記の実施例1におけるのと同じ方法で単一の画素試験ユニットに変換した;少なくとも3つの試験ユニットを各塩濃度について用いた。少しも添加物なしの同じポリウレタン添加物を含むコントロール試験ユニットもまた調製した。この完成した試験ユニットを、抵抗試験に先立って、30℃および30%の相対湿度で一週間調製した。
【0076】
これら試験ユニットの体積抵抗率を、次いで、15Vおよび300msec持続時間の駆動パルスを用いて測定し、そして得られたデータを、添付の図面の図4中にプロットした。この図から、NBuPFの添加が、この接着材料の体積抵抗率において、試験された塩濃度の範囲に亘り、約2オーダーの大きさだけ実質的な減少を生じ、しかも、この体積抵抗率は、塩濃度と直線的に変動したことが観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板および第2の基板、ならびに該第1の基板と第2の基板との間に配置された接着層および電気光学材料の層を備える電気光学アセンブリであって、該接着層が、ポリマー接着材料と伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気光学アセンブリ。
【請求項2】
前記伝導性金属粉末がニッケルを含む、請求項1に記載の電気光学アセンブリ。
【請求項3】
以下:
第1の表面および第2の表面をその対向する面に有する固形電気光学媒体の層;
該固形電気光学媒体の層の第1の表面上の第1の接着層;
該固形電気光学媒体の層から第1の接着層の対向する面上に配置された剥離シート;および
該固形電気光学媒体の層の第2の表面上の第2の接着層を備え、
該第1の接着層および第2の接着層の少なくとも1つが、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、製造品。
【請求項4】
複数のカプセルを含む電気泳動媒体であって、該カプセルの各々が、カプセル壁、該カプセル壁内にカプセル化された懸濁流体、および該懸濁流体中に懸濁された複数の荷電した粒子を含み、そして該媒体への電場の印加に際しそれを通じて移動し得、該媒体が該カプセルを取り囲むバインダーをさらに含み、該バインダーが、ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む、電気泳動媒体。
【請求項5】
ポリマー接着材料と、伝導性金属粉末、強磁性流体、非反応性溶媒、伝導性有機化合物、およびそれらの組み合わせから選択される添加物との混合物を含む接着剤。
【請求項6】
前記ポリマー接着材料が、ポリウレタン、酢酸ビニル、酢酸ビニルエチレン、エポキシ、ポリアクリル酸をベースにした接着剤、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−81407(P2011−81407A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265829(P2010−265829)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2006−509306(P2006−509306)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】