説明

電気光学ディスプレイのためのバックプレーン

電気光学ディスプレイのためのバックプレーンは、複数のピクセル電極と、前記バックプレーンに隣接して配置された接着層とを備え、前記接着層は、前記バックプレーンの前記ピクセル電極に隣接して配置された複数のピクセル領域と、前記バックプレーンの2つのピクセル間に配置された少なくとも1つのピクセル間領域とを備え、前記少なくとも1つのピクセル間領域は、前記接着層のピクセル領域よりも低い誘電率および高い体積抵抗率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時継続の米国出願公開第2004/0252360号および米国特許第6,831,769号と関連する。本出願はまた、(a)米国出願公開第2003/0112491号;(b)米国特許第6,727,881号;(c)米国特許第6,124,851号;(d)国際出願第PCT/US96/12000号;(e)米国特許第6,120,558号;(f)米国特許第6,657,772号;(g)米国出願公開第2004/0027327号;(h)米国出願公開第2004/0155857号;(i)米国特許第6,312,304号;(j)米国出願公開第2004/0263947号;および(k)米国出願公開第2002/0180688号に関連する。読者は、本発明に関する背景情報のために、上記の特許および出願の全てを引用する。
【0002】
本発明は、そのようなディスプレイにおいて使用するための電気光学ディスプレイおよびバックプレーンに関する。より具体的には、一側面において本発明は、隣接するピクセル間に低誘電率および/または高体積抵抗率の区域が与えられたそのようなバックプレーンに関する。本発明は、そのようなバックプレーンを組み込んだ電気光学ディスプレイにも関する。別の側面において、本発明は、電気光学ディスプレイおよびその構成要素に関し、これらはバックプレーンを製造するために使用される低誘電率によって生じた隣接するピクセル間の非結像区域を削除するよう設計される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
電気光学ディスプレイは、電気光学材料の層を備えている。本明細書において電気光学材料という用語は撮像技術での従来の意味で使用されており、少なくとも1つの光学特性が異なる第一と第二の状態を有する材料であって、電場を材料に適用することにより第一から第二のディスプレイ状態に変化する材料を指す。光学特性は、通常、人間の目には見える色であるが、光学伝送、反射、発光、また、機械読み取りを目的とするディスプレイの場合は、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化という意味において擬似色のような別の光学特性を持つことがある。
【0004】
本発明の電気光学ディスプレイは一般的に、液体または気体で充填された内部空洞を有する場合があり、またしばしば有するものの、固体の外部表面を有するという意味で、固体である電気光学材料を含む。およびそのような電気光学材料を使用してディスプレイを組み立てるための方法の、以下、固体電気光学材料を使用したそのようなディスプレイを、便宜上「固体の電気光学ディスプレイ」と称することがある。したがって、「固体の電気光学ディスプレイ」という用語は、回転二色部材ディスプレイ(以下参照)、気体ベースの電気泳動ディスプレイ、カプセル型電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル型液晶ディスプレイを含む。
【0005】
「双安定の」や「双安定」の用語は、本明細書では当該技術の従来の意味で使用されており、少なくとも1つの光学特性が異なる第一と第二のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を備えるディスプレイを指し、限定継続時間のアドレス指定波動の手段により、任意の指定要素が第一または第二のディスプレイ状態のいずれかになるように作用した後、アドレス指定波動が終了した後など、その状態は、例えば少なくとも4回など少なくとも何回かの間、ディスプレイ要素の状態の変更に必要なアドレス指定波動の最低継続時間を持続する。公開米国特許出願番号2002/0180687には、グレイスケール機能のある一部の粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、極端な白黒状態で安定しないばかりか中間のグレー状態でも安定しておらず、またその他一部の種類の電気光学ディスプレイでも同様であることが示されている。本明細書では便宜上、双安定と複安定両方のディスプレイを言及するために「双安定」という用語を使用することがあるが、この種類のディスプレイは、双安定ではなく、正しくは「複安定」と呼ばれる。
【0006】
いくつかの種類の電気光学ディスプレイが知られている。電気光学ディスプレイの1種類は例えば、米国特許番号5,808,783、5,777,782、5,760,761、6,054,071、6,055,091、6,097,531、6,128,124、6,137,467、6,147,791に記述されているように回転二色部材の種類である(この種類のディスプレイは「回転二色球」ディスプレイとしばしば呼ばれるが、上記の一部の特許では回転員は球ではないので「回転二色部材」の用語がより正確であり、好ましい)。このようなディスプレイは、異なる光学特性のある2つ以上のセクションを有する多数の小さな物体(典型的には球状または円筒型)、および内部双極子を使用する。これらの物体は、充填材内の液体入り液胞内に懸濁されるが、液胞は液体が入れられているので、物体は自由に回転する。ディスプレイの形状は電場をそこへ適用することにより変化するので、様々な位置に物体を回転させて、物体のどの部分が表示表面から見えるかが変わる。この種類の電気光学媒体は一般的に双安定性である。
【0007】
別の種類の電気光学ディスプレイは、例えば、電極に付着した色の変化を反転できる半導電性酸化金属と複数の色素分子から少なくとも一部が形成される電極を備えるナノクロミックフィルムの形の電気泳動媒体など電気泳動媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737およびWood,D.,Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照のこと。また、Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照のこと。この種類のナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許番号6,301,038、国際出願公表番号WO01/27690、米国特許出願2003/0214695にも説明されている。この種類の媒体も通常は双安定である。
【0008】
何年間も研究や開発が重点的に行われてきた別の種類の電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、複数の荷電粒子が電場の影響の下で懸濁流体内を移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較すると、優れた輝度とコントラスト、広視野角、状態の双安定性、低消費電力の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期的な画質の問題により、広範囲に及ぶ使用が妨げられてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈殿する傾向があり、その結果、これらのディスプレイの使用寿命は不十分である。
【0009】
上記のように、電気泳動媒体には懸濁流体の存在が必要である。ほとんどの先行技術の電気泳動媒体では、この懸濁流体は液体であるが、電気泳動媒体は気体の懸濁流体を使用して製造することができる。例えば、Kitamura,T.,らの「Electrical toner movement for electronic paper−like display」,IDW Japan,2001,Paper HCSI−l,およびYamaguchi,Y.ら「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW Japan,2001,Paper AMD4−4)を参照のこと。また、欧州特許出願1,429,178;1,462,847;1,482,354;および1,484,625;および国際出願WO2004/090626;WO2004/079442;WO2004/077140;WO2004/059379;WO2004/055586;WO2004/008239;WO2004/006006;WO2004/001498;WO03/091799;およびWO03/088495も参照のこと。このような気体ベースの電気泳動媒体は、その媒体を、例えば媒体が縦方向の平面に配置される看板など、粒子の沈殿が起こりえる方向で使用する場合には、液体ベースの電気泳動媒体と同様の、粒子の沈殿から生じる問題の影響を受けやすいと思われる。実際、液体の懸濁流体に比較すると気体の懸濁流体の粘性は低いために電気泳動粒子の沈殿が速くなるので、粒子の沈殿は流体ベースよりも気体ベースの電気泳動媒体でより深刻な問題となるようである。
【0010】
最近では、マサチューセッツ工科大学(MIT)およびE Ink社に移譲するか、またはその名義である、カプセル化媒体電気泳動媒体を開示した数多くの特許および出願が公開されている。このようなカプセル型の媒体は多数の小型カプセルを含んでおり、そのそれぞれは液体の懸濁媒体に懸濁された電気泳動移動型粒子を含有する内部の位相、および内部の位相を囲むカプセル壁を備える。典型的に、2つの電極の間に配置されるコヒーレントな層を形成するために、カプセルはそれ自体高分子接着剤内に保持される。この種類のカプセル型媒体は、例えば、米国特許番号5,930,026;5,961,804;6,017,584;6,067,185;6,118,426;6,120,588;6,120,839;6,124,851;6,130,773;6,130,774;6,172,798;6,177,921;6,232,950;6,249,271;6,252,564;6,262,706;6,262,833;6,300,932;6,312,304;6,312,971;6,323,989;6,327,072;6,376,828;6,377,387;6,392,785;6,392,786;6,413,790;6,422,687;6,445,374;6,445,489;6,459,418;6,473,072;6,480,182;6,498,114;6,504,524;6,506,438;6,512,354;6,515,649;6,518,949;6,521,489;6,531,997;6,535,197;6,538,801;6,545,291;6,580,545;6,639,578;6,652,075;6,657,772;6,664,944;6,680,725;6,683,333;6,704,133;6,710,540;6,721,083;6,727,881;6,738,050;6,750,473;6,753,999;6,816,147;6,819,471;6,822,782;6,825,068;6,825,829;6,825,970;6,831,769;6,839,158;6,842,279:6,842,657;および6,842,167;および米国特許出願公表番号WO2002/006031,2002/0060321;2002/0063661;2002/0090980;2002/0113770;2002/0130832;2002/0131147;2002/0171910;2002/0180687;2002/0180688;2003/0011560;2003/0020844;2003/0025855;2003/0102858;2003/0132908;2003/0137521;2003/0151702;2003/0214695;2003/0214697;2003/0222315;2004/0012839;2004/0014265;2004/0027327;2004/0075634;2004/0094422;2004/0105036;2004/0112750;2004/0119681;および2004/0196215;2004/0226820;2004/0233509;2004/0239614;2004/0252360;2004/0257635;2004/0263947;2005/0000813;2005/0001812;2005/0007336;2005/0007653;2005/0012980;2005/0017944;2005/0018273;および2005/0024353;および国際特許公表番号WO99/67678;WO00/05704;WO00/38000;WO00/38001;W000/36560;WO00/67110;WO00/67327;WO01/07961;WO01/08241;WO03/107,315;WO2004/023195;WO2004/049045;WO2004/059378;WO2004/088002;WO2004/088395;WO2004/090857;およびWO2004/099862に説明されている。
【0011】
前述の特許および出願の多数は、カプセル型電気泳動媒体の個別のマイクロカプセルを囲む壁は連続位相により置換できるとしており、電気泳動媒体は電気泳動流体の複数の個別の滴と高分子材料の連続位相を備える、いわゆる高分子分散電気泳動ディスプレイを作ること、および、このような高分子分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の個別の滴は、各個々の滴に関連付けられた個別のカプセル膜がなくてもカプセルまたはマイクロカプセルとして考えられるともしている。例えば、前述の2002/0131147を参照のこと。したがって、本出願の目的として、このような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル型電気泳動媒体の亜種として考えられる。
【0012】
関連する種類の電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子と懸濁液はマイクロカプセル内にカプセル化されないが、その代わりに、概してポリマー薄膜のキャリア媒体内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、どちらもSipix Imaging,Incに委譲された、国際出願公表番号WO02/01281および公開米国出願番号2002/0075556を参照のこと。
【0013】
別の種類の電気光学ディスプレイは、Philipsにより開発され、「Nature」誌の2003年9月25日公表の「Performing Pixels:Moving Images on Electronic Paper」の記事に説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。2004年10月6日に出願された同時継続中の米国出願番号10/711,802にはこのようなエレクトロウェッティングディスプレイは双安定にできると示されている。
【0014】
本発明のディスプレイには、その他の種類の電気光学材料、例えば高分子分散液晶も使用することが可能である。
【0015】
電気泳動媒体は(例えば、多くの電気泳動媒体では粒子がディスプレイを通過する可視光線の伝送を大幅にブロックするため)不透明であることが多く、反射モードで作動するが、電気泳動ディスプレイの多くは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透明であり、他のディスプレイ状態が光を透過する、いわゆる「シャッターモード」で作動するように作ることができる。例えば、前述の米国特許番号6,130,774および6,172,798、および米国特許番号5,872,552;6,144,361;6,271,823;6,225,971および6,184,856を参照のこと。電気泳動ディスプレイに類似するが電場強度の変化に依存する誘電泳動ディスプレイは、同様なモードで作動できる。米国特許番号4,418,346を参照のこと。その他の種類の電気光学ディスプレイはシャッターモードで作動することが可能である場合もある。
【0016】
カプセル型またはマイクロセル電気泳動ディスプレイは、概して従来の電気泳動装置の集積や沈殿の故障モードによる問題がなく、幅広く柔軟で硬い基板にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等、さらなる利点を提供する。(「印刷」という用語の使用は、印刷およびコーティングの全形態を含むことを意図しており、パッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティングのような事前従量制のコーティング、ナイフオーバーロールコーティングや前後ロールコーティングのようなロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、凹凸コーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷処理、静電印刷処理、加熱印刷処理、インクジェット印刷処理、電気泳動配置、およびその他の同様な技法を含むがこれらに限定されない。)このように、得られるディスプレイは柔軟となりうる。さらに、ディスプレイ媒体は印刷可能であるので(様々な方法を使用して)、ディスプレイ自体を安価に製造することができる。
【0017】
電気光学材料の層に加えて、電気光学ディスプレイは、通常、電気光学材料の反対側に配置される少なくとも2つのその他の層を備える。これら2層のうち1つは電極層である。このようなほとんどのディスプレイでは、両方の層が電極層で、その電極層のうち1つまたは両方はディスプレイのピクセルを規定するためにパターン化される。例えば、1つの電極層は細長い列の電極に、もう1つは列の電極に対して正しい角度で伸びる細長い縦列の電極にパターン化されることがある。あるいは、そして、より一般的には、1つの電極層が単独の連続電極の形を有し、もう1つの電極層がピクセル電極の行列にパターン化されて、それぞれがディスプレイの1つのピクセルを画定する。スタイラスと一緒に使用することを意図する別の種類の電気光学ディスプレイでは、プリントヘッドまたは同様な可動式の電極はディスプレイから分離しており、電気光学層に隣接する層のうち1つだけが電極を備え、電気光学層の反対側にある層は典型的に可動型電極が電気光学層を損傷することを防ぐことを目的とする保護層である。
【0018】
3層の電気光学ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層工程を伴う。例えば、前述のいくつかのMITおよびE Ink特許および出願では、カプセル型電気泳動ディスプレイの製造プロセスが説明されている。このプロセスでは、結合剤内にカプセルを備えるカプセル型電気泳動媒体を、インジウムスズ酸化物(ITO)を備える柔軟な基板、またはプラスチック膜上の同様な導電性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極として機能)上にコーティングし、カプセル/結合剤コーティングを乾燥させて基板に確実に付着した電気泳動媒体の接着層を形成する。別に、ピクセル電極の配列とピクセル電極を駆動回路に接続する導電体の適切な配置を含むバックプレーンを作成する。最終ディスプレイを形成するために、その上にカプセル/結合剤層を有する基板は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される。(このバックプレーンをスタイラスまたはその他の可動型電極がスライドできるプラスチック膜のような単純な保護膜で置換することにより、非常に類似するプロセスを、スタイラスまたは同様な可動型電極と一緒に使用可能な電気泳動ディスプレイの作成に使用することができる。)このようなプロセスのある好ましい形では、バックプレーンはそれ自体柔軟で、ピクセル電極と導電体をプラスチック膜またはその他の柔軟な基板に印刷することにより準備する。このプロセスによるディスプレイの大量生産のための明白な積層技法は、積層接着剤を使用するロール積層である。同様な製造技法は、その他の種類の電気光学ディスプレイで使用可能である。例えば、マイクロセル電気泳動媒体または回転二色部材媒体は、カプセル型電気泳動媒体とほとんど同じ手法でバックプレーンに積層されてよい。
【0019】
上記のプロセスでは、電気光学層を担持する基板のバックプレーンへの積層は、真空積層により好都合に実行されることができる。真空積層は、積層される2つの物質の間から空気を除くと効果的であり、最終ディスプレイの不必要な空泡を防ぐ。このような空泡は、ディスプレイに作られる画像に望ましくない不自然な結果を生み出すことがある。しかしながら、この手法での電気光学ディスプレイの2つの部分の真空積層は、特にカプセル型電気泳動媒体を使用するディスプレイの場合に、使用される積層接着剤に厳しい要件を課す。積層接着剤は、電気光学層が積層される層(典型的には電極層)に結合するために十分な接着強度を有する必要があり、カプセル型電気泳動媒体の場合には、接着剤はカプセルを機械的につなぎ合わせるために十分な接着強度も有する必要がある。電気光学ディスプレイが柔軟な種類であれば(そして、回転二色部材とカプセル型電気泳動ディスプレイの重要な利点の1つは柔軟に作ることができることである)、ディスプレイを撓ませた際にディスプレイに欠陥をもたらさないように接着剤が十分な柔軟性を有する必要がある。高品質の積層を保証するために、積層接着剤は、最低温度で適切な流量特性を有する必要があり、さらに、この点において、カプセル型電気泳動およびその他の種類の電気光学媒体の積層に関する要求は非常に困難である。媒体は非常に高温にさらされると損傷を受けるので、積層は約110℃未満の温度で行われるが、接着剤の流量はカプセル含有層の比較的不均一な表面、基底のカプセルにより不規則に描かれている表面に対処する必要がある。積層温度は確かに可能な限り低く保たれなければならず、室温での積層が理想的であろうが、そのような室温での積層が可能な市販の接着剤は見つかっていない。積層接着剤は、ディスプレイのその他すべての材料と化学的に適合する必要がある。溶剤型積層接着剤は回避すべきである。(文献には記されていないようであるが)積層後に残った溶剤はいずれも、電気光学媒体に望ましくない汚染物質を導入する強い傾向を有することがわかっている。
【0020】
上記の米国特許番号6,831,769で詳しく論じられているように、電気光学ディスプレイに使用される積層接着剤はある一定の電気的基準を満たさねばならず、これが積層接着剤の選択において重要な問題をもたらす。当然ながら積層接着剤の商業メーカーは、接着剤が主用途においてうまく機能するよう、接着の強度および積層温度等、そのような接着剤の特性を確実にするために相当な努力を注いでおり、これには通常、高分子および同様のフィルムを含む。しかしながら、そのような用途において、積層接着剤の電気的特性は関係なく、したがって商業メーカーはそのような電気的特性に注意を払う必要がない。実際、E Ink社の研究者たちは、おそらくメーカーが積層接着剤の非電気的特性(例えば、細菌増殖に対する抵抗)を最適化しようと試みており、電気的特性において結果的に起こる変化についてはまったく考慮していなかったため、同じ市販の積層接着剤の異なるバッチ間での一定の電気的特性において相当な変化(最大数倍)を観測した。
【0021】
しかしながら、積層接着剤が通常電気光学媒体の電気状態を変化させるために必要な電場を適用する電極間に位置している電気光学ディスプレイにおいて、接着剤の電気的特性は決定的となる。電気技術者には明らかなように、電気光学媒体全体にわたる電圧降下は、電極全体にわたる電圧降下から積層接着剤全体にわたる電圧降下を引いたものと基本的に等しいため、積層接着剤の体積低効率が重要になってくる。接着層の低効率が高すぎる場合、接着層内において電極全体にわたる電圧上昇を必要とする実質的な電圧降下が生じるであろう。この手法での電極全体にわたる電圧の上昇は、ディスプレイの消費電力を増加させ、関連する上昇した電圧を処理するためにより複雑で高価な制御回路の使用を要求することができるため、望ましくない。一方、連続的にディスプレイ中に拡大する接着層が、アクティブマトリクス駆動のディスプレイにあるように電極のマトリクスと接触している場合、接着そうの体積抵抗率は低下しすぎてはならない。さもないと連続的な接着層を介する電流の横伝導が隣接する電極間に望ましくないクロストークを引き起こすことがある。
【0022】
実際には、10−50μmという均一の厚さおよび10−10から10−9S/cmの階数の伝導率を有する積層接着層が電気光学ディスプレイに使用されている。この伝導率範囲は、ディスプレイ性能のための電気モデルに基づいて選択され、様々な電気光学材料の知られている伝導率であり、またそのようなディスプレイにおいて一般的に使用されるピクセルサイズである。実際のところ、この目標伝導率範囲は妥協を意味する。高い伝導性は電気光学材料層がより大きな電圧勾配を見せることを意味するため、より導電性の高い積層接着剤が望ましい。しかしながら、積層接着剤の伝導率が一定のピクセル解像度および蓄積容量で増加しているように、ピクセルに供給される電荷は近接するピクセルに漏れ、これがインク全体にわたる電圧勾配を低下させ、積層接着剤の伝導率を上昇させる効果を妨げる。また、既に述べたように、この横方向の電荷漏れは近接するピクセルの光学状態における変化を引き起こすことがある。積層接着剤が優れた横電圧保持力を提供するようにように設計されること、インク層全体にわたる電圧の勾配が最大化されることが望ましく、したがって、高解像度(100〜200lpi、4〜8lpm)アクティブマトリクス駆動のディスプレイのための開発性能要件は、等方導電性の接着剤が上記で指定した範囲の伝導率を有することを要求する。
【0023】
電気光学ディスプレイにおける接着剤の使用に関連する別の問題、すなわち「ブルーミング」があり、換言すると、ピクセル電極がそのピクセル電極自体によって占められるより大きい区域上の電気光学媒体の表示状態において変化を引き起こす傾向のことである。このブルーミング効果を、添付図面の、電気光学ディスプレイの隣接する2つのピクセル電極のための駆動電圧の用途によって生じた等電位線を示す図1Aにおいて概略的に説明する。図1Aからわかるように、外側に伸びた駆動電圧はピクセル電極からの距離のように上昇し、駆動電圧がピクセル電圧に適用された区域は等電位線をたどる電気光学媒体の表示状態において変化を引き起こすため、(例えば)ピクセル1の場合、左側のピクセルは電気光学媒体をその黒色表示状態に変化させる駆動電圧を適用した図1A(図1Aにおいてこの媒体を上方から見ている監視者にわかるように)であり、結果として生じたD1と指定される黒色の区域は実質的にピクセル1自体よりも大きい。同様に、ピクセル2の場合、右側のピクセルが電気光学媒体をその黒色表示状態に変化させる駆動電圧を適用した図1Aであり、結果として生じたD2と指定される黒色の区域は実質的にピクセル2自体よりも大きい。ピクセル1と2との間の中央区域は、駆動電圧がピクセル1または2のいずれかに適用されれば、黒色に変わるであろう。表示された画像の品質に悪影響を及ぼすため、そのようなピクセルブルーミングは望ましくない。
【0024】
ピクセルブルーミングは接着層の厚みを減らすことで低減可能であるが、接着層が薄すぎると他の問題を生じさせることがある。例えば、カプセル型電気泳動媒体を形成するカプセルの層に堆積している接着層は、カプセルをバックプレーンに積層するだけでなく、カプセルの層の不整地を平坦化する役割も果たしている。接着層が薄すぎると十分な接着を提供できないことがあり、カプセル層を平坦化できないこともある。したがって、接着層の厚みを極端に減らすことは望ましくなく、選択される厚みは、ピクセルブルーミングを減らすために必要とされるものと平坦化および優れた接着のために必要なものとの間の妥協であってよい。
【0025】
前述の2004/0252360は、積層接着剤の層に対し垂直方向に、この層の平面より高い電気伝導率を有する異方性積層接着剤を使用した電気光学ディスプレイについて記載している。本発明の一側面は、そのような接着剤の形成を必要とすることなく、異方性積層接着剤を使用することによって提供されるものと同様の利点を提供する、接着層の代替変更に関する。本発明のこの側面は、ピクセルブルーミングの削減も行う。
【0026】
ブルーミングを電気光学ディスプレイにおける問題として上述したが、制御された量のブルーミングが実際に有用となりうる一定の状況があり、本発明の第二の側面は、電気光学ディスプレイにそのような制御されたブルーミングを提供することに関する。
【0027】
ある種類の電気光学ディスプレイ、特にいわゆる「直接駆動のディスプレイ」(中に複数のピクセルが存在し、各ピクセルはピクセル電極およびそれに関連する別個の伝導体を有し、ディスプレイはその関連する伝導体を介し各ピクセル電極に適用される電圧を制御するよう配置されたコントローラを有する)が、隣接するピクセル間に大きな隙間を残す低解像度処理を使用してしばしば製造され、そのようなディスプレイは、例えば数字を表示するために使用される7セグメントディスプレイの形態を有する。そのようなディスプレイにおいて、電気光学媒体が制御された量のブルーミングを表示することは、監視者が結果として生じたディスプレイを見る際にこれらの隙間が事実上消えているように、ピクセル電極により変更された光学状態の電気光学媒体の区域が隣接する電極間の隙間を覆っているという点で、好都合である。しかしながら、ブルーミングは表示しようとする画像が歪曲するほど大きくてはならない。本発明の第二の主要な側面は、そのような制御されたブルーミングを電気光学ディスプレイにおいて実現するための方法に関する。
【0028】
一側面において、本発明は、電気光学ディスプレイのためのバックプレーンと、複数のピクセル電極を備えるバックプレーンと、隣接するバックプレーンに配置された接着層とを提供し、前記接着層は、前記バックプレーンの前記ピクセル電極に隣接して配置された複数のピクセル領域と、前記バックプレーンの2つのピクセル間に配置された少なくとも1つのピクセル間領域を備え、前記少なくとも1つのピクセル間領域は、前記接着層の前記ピクセル領域よりも低い誘電率および高い体積抵抗率のうち少なくとも1つを有する。
【0029】
便宜上、本発明のこの側面を、以後本発明の「リブ付きバックプレーン」と呼ぶことがある。このバックプレーンの好適な形態において、ピクセル間領域は、ピクセル領域を形成する材料と異なる材料から形成される少なくとも1つのリブを備える。そのようなリブは約3未満の誘電率および/または約1012ohm cmの体積抵抗率を有することができる。前記リブは、少なくとも約0.5、望ましくは少なくとも約1.0、好ましくは少なくとも約2.0のアスペクト比(リブの高さ÷幅)を有することができる。前記リブは、リブの端またはバックプレーンから離れたリブが接着剤に覆われるよう、接着層を貫通して伸びることはできない。
【0030】
本発明は、本発明のリブ付きバックプレーンおよび接着層に隣接する電気光学媒体の層を備える電気光学ディスプレイにまで及ぶ。そのようなディスプレイは、上述したいずれの種類の双安定電気光学媒体でも利用することができる。したがって、例えば、前記ディスプレイは、懸濁流体に配置された複数の荷電粒子を備え、電場を懸濁流体に適用することにより移動が可能な電気泳動電気光学媒体を備えることができる。懸濁流体は気体または液体であってよい。電気泳動媒体はカプセル型であってよい、すなわち、荷電粒子および懸濁流体は複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められてよい。第一の方法は、回転二色部材または電気泳動媒体を備えるディスプレイに使用されることもできる。
【0031】
既に述べたように、本発明の第二の主要な側面は、隣接するピクセル電極間の隙間を覆うため、電気光学ディスプレイにおいて制御されたブルーミングを製造することに関する。この目的全体の範囲内で、この本発明の第二の主要な側面は、いくつかの異なるアプローチを包含する。本発明は、互いに隔たる少なくとも2つのピクセル電極と、前記ピクセル電極に隣接して配置された電気光学媒体を備える電気光学ディスプレイを提供し、前記電気光学媒体の層は、約20〜25μmの厚みと約1×1010〜4×1010ohm cmの体積抵抗率を有する。
【0032】
本発明は、互いに隔たる少なくとも2つのピクセル電極と、前記ピクセル電極に隣接する接着層と、前記接着層の前記ピクセル電極から反対側に配置された電気光学媒体の層と、を備える電気光学ディスプレイも提供し、前記接着層は、約40〜約60μmの厚みと約3×10〜約8×10ohm cmの体積抵抗率を有する。
【0033】
最後に、本発明は互いに隔たる少なくとも2つのピクセル電極と、前記ピクセル電極に隣接して配置される電気光学媒体の層と、を備える電気光学ディスプレイを駆動する方法を提供し、この方法は、両方のピクセル電極に、電気光学媒体の飽和光学状態を実現するために必要とされる約1.1〜約3倍の電圧および継続時間を有する電圧パルスを適用するステップを含む。望ましくは、電圧パルスは飽和光学状態を実現するために必要とされる少なくとも約1.3倍、好ましくは1.5倍の電圧および継続時間を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
既に述べたように、その第一の主要な側面において、本発明は電気光学ディスプレイのためのバックプレーンを提供し、前記バックプレーンは、複数のピクセル電極と、前記バックプレーンに隣接して配置された接着層とを備え、前記接着層は、前記バックプレーンの前記ピクセル電極に隣接して配置された複数のピクセル領域と、前記バックプレーンの2つのピクセルの間に配置された少なくとも1つのピクセル間領域とを備え、前記少なくとも1つのピクセル間領域は、前記接着層の前記ピクセル領域よりも低い誘電率および高い体積抵抗率のうち少なくとも1つを有する。
【0035】
本発明は、そのようなバックプレーンを組み込んだ電気光学ディスプレイ、すなわち、固体電気光学材料の層を備える電気光学ディスプレイと、前記電気光学材料の層に隣接して配置された複数のピクセル電極を備えるバックプレーンと、前記電気光学材料と前記バックプレーンとの間に置かれた接着層とをも提供し、前記接着層は、前記バックプレーンの前記ピクセル電極に隣接して配置された複数のピクセル領域と、前記バックプレーンの2つのピクセル間に配置された少なくとも1つのピクセル間領域を備え、前記少なくとも1つのピクセル間領域は、前記接着層の前記ピクセル領域よりも低い誘電率および高い体積抵抗率のうち少なくとも1つを有する。
【0036】
理論上、接着層のピクセル間領域のより低い誘電率およびより高い体積抵抗率は、もともとは本質的に同質である接着層の処置によって製造可能である。例えば、接着層は、接着層のピクセル領域よりも高い体積抵抗率を有するピクセル間領域を製造するために、像様方式で放射硬化されることもありうる。しかしながら、現在のところ、ピクセル間領域は、残りの接着層から離れた物体(リブ)によって形成されることが好ましい。リブは、好ましくはきわめて低い誘電率(一般にk=3未満)を有し、きわめて優れた絶縁体(体積抵抗率は、望ましくは1012ohm cmを超える)である。リブのアスペクト比(高さ/幅)は、望ましくは約0.5を超え、好ましくは約1.0を超え、最も望ましくは約2.0を超える。一般に、リブは1〜20μmの階数の幅を有するであろう。市販の低K誘電材料の例としては、k=2.2のNanoglass(登録商標)E(Honeywell Corporation,Sunnyvale California,United States of America)、k=3のBlack Diamond(Applied Materials,Santa Clara,California,United States of America)、1.1<k<2.5のナノ多孔性シリカエアロゲル(Nanopore Inc.,Albuquerque,New Mexico,United States of America)、または当業者に知られているそのような他の材料が挙げられる。リブは、それらを形成するために使用されるプロセスおよびそれらが使用される特定のディスプレイに応じて、正方形、長方形、台形、半円形等を含む様々な断面を有することができる。リブは、フォトリソグラフィー法、印刷技術、または当業者に知られているその他のプロセスを使用して製造されることができる。含まれるピクセルのサイズに応じて、リブのセットを別個の物としてバックプレーン用に加工(例えば、繊維材料を穴抜き、打抜き、または成形した後、その繊維を裁断して個々のディスプレイ用にリブのセットを製造することによって)した後、バックプレーンにリブのセットを積層または接着することも可能である。
【0037】
図1Bに示すように、リブ(またはその他のピクセル間領域)は、等電位線がブルーミング型まで広がる傾向を削減することで機能する。より具体的には、リブは、バックプレーン間にある接着層の厚み部分およびリブの上端(図1Bに図示)内の等電位線のブルーミングを防止し、その結果ピクセルのブルーミング全体が低減され、ピクセル3および4によって製造される区域D3およびD4が、図1Aに示される対応する区域D1およびD2よりも小さくなる。また、当然ながら、区域D3とD4との間の重複部分は、D1とD2との間のそれよりも実質的に小さい。
【0038】
図2は、リブ付きバックプレーンを組み込んだ本発明のカプセル型電気泳動ディスプレイの小断面を示す概略側面図である。このディスプレイ(一般的に200と指定)は、ピクセル電極204および206を有するバックプレーン202と、接着層208と、カプセル型電気泳動層210と、共通の前面電極212と、監視者がディスプレイ200を見るのに使用する画面を形成する透明な前面基板214とを備える。
【0039】
本発明にしたがって、ディスプレイ200はさらにリブ216を備えているが、そのうちの1つだけを図2に示す。リブ216の断面は長方形であり、接着層208の厚みを貫通して伸びておらず、それにより、接着層208の厚み部分から離れている電気泳動層210のカプセルと接触しない。例えば、接着層が厚さ約15μmの場合、リブ216の高さは、フィールドスプレディングおよびブルーミングを9μmの接着層に見られるであろう数値まで低減するように、高さ約6μmであるかも知れない。
【0040】
本発明によるリブの使用により、そうでない場合はブルーミング効果により解像度を犠牲にすることなく可能であろう、より厚くより導電性の高い接着層の使用が可能になる。より導電性の高い接着層は、接着層内での電圧降下を低減し、したがって電気光学媒体そのものの全体にわたる電圧降下を増加させ、その結果、媒体の切り替え速度を上昇させる。
【0041】
本発明のリブ付きバックプレーンは、ブルーミングが主に電極間にある層の厚みの機能であり、また通常はピクセルのサイズを縮小するようにこれらの層の厚みを減らすことが不可能であるため、個々のピクセルが小さい高解像度ディスプレイにおいて特に有用となることができ、個々のピクセルのサイズに相対してブルーミングにより影響を受ける区域が大きくなるという意味で、ブルーミングはピクセルが小さいほど大きな問題となる。ブルーミングは、異なる色のピクセルが互いに隣接しあっている、高解像度のカラーディスプレイ特有の問題である。例えば、ピクセルが同じ色ごとに配置され、それによって例えば赤のピクセルの側面には隣接する列の青または緑のピクセルが位置する、赤/緑/青のカラーディスプレイについて考える。ディスプレイが赤一色であるのが望ましい場合、赤のピクセルは赤を表示するように設定され、一方緑および青のピクセルは黒を表示するように設定される。ブルーミングが赤のピクセルにおいて発生した場合、隣接する緑および青のピクセルの一部がそれぞれ緑と青を表示し、その結果、望ましい赤色をレンダリングする飽和は少なくなるであろう。そのようなディスプレイのピクセルが小さくなればなるほど、所定量のブルーミングの効果は大きくなる。
【0042】
このような理由のため、本発明のリブ付きバックプレーンは、カラーディスプレイにおいて特に有用である場合がある。そのようなカラーディスプレイは、当該分野で知られているいずれの種類の電気光学ディスプレイであってもよく、特に、参照することによりその開示全体が本明細書に組み込まれ、読者がさらなる情報のために具体的に参照する、前述の2004/0263947において記載されているいかなる種類のものであってもよい。この公開出願に記載されたディスプレイは、
(a)第一のアドレス可能なサブピクセルと、前記第一のサブピクセルから独立してアドレス可能な第二のサブピクセルとを備え、前記第一のサブピクセルおよび前記第二のサブピクセルのそれぞれが電気泳動粒子を備え、アドレス時に、白、黒、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄からなるグループから選択された3色以上を表示できる、フルカラーピクセルを備えるディスプレイ(特に、図1Dおよび本公開出願の段落[0087]を参照);
(b)粒子の監視者から反対側に配置されている着色された反射体またはフィルターを覆うかまたはさらけ出すよう、粒子が横方向に移動するディスプレイ(特に、図@a‐2Dおよび3A〜3E、ならびに段落[0088]〜[0097]を参照);
(c)異なる色を有する2つの異なる種類の粒子を有し、それによりディスプレイの各ピクセルが、(i)第一の種類の粒子の色;(ii)第二の種類の粒子の色;または(iii)粒子の監視者から反対側に配置されている反射体またはフィルターの色、を表示できるという点を除き、上記(b)にて述べたものと概して同様のディスプレイ(図3F〜3I、および段落[0098]〜[0101]を参照);
(d)粒子が懸濁している懸濁流体が着色され、反射体またはフィルターが省略され、それにより、懸濁流体の色が監視者に見える場合に第三の着色された状態が発生する、という点を除き、上記(c)にて述べたものと概して同様のディスプレイ(段落[0103]の図3Lを参照);および、
(e)異なる色を有する、異なる3種類の粒子を有するディスプレイ(図3M、5、6A〜6B、7A〜7Dおよび8A〜8C、ならびに段落[0103]〜[0113]を参照)
を含む。
【0043】
当然ながら、その他多くの種類のカラーディスプレイも、本発明のリブ付きバックプレーンを使用することにより、向上することができる。
【0044】
リブ付きバックプレーンは、柔軟なディスプレイ、例えばバックプレーン(および存在する任意の前面基板)が柔軟な高分子フィルム、柔軟な金属箔、または同様の柔軟な材料から形成されたディスプレイにおいて、「クリープ」を防止するためにも有用である。そのようなディスプレイが屈曲した場合、バックプレーンを電気光学媒体に固定するために使用されている接着層およびディスプレイのその他の層は流量を受ける傾向にあり、その結果、電気光学媒体はバックプレーンに対してわずかに移動する。これは、例えばディスプレイが、カラーフィルター配列が電気光学媒体のバックプレーンから反対側に配置されているカラーディスプレイである場合、そのようなディスプレイにおいて様々な色の筋またはカラーフィルター配列のその他の群をピクセル電極と揃えることを必要とするか、または表示された画像に深刻な色歪みが発生するため、深刻な問題を引き起こす。例えば、2つの隣接するピクセル電極が、赤および青のカラーフィルター要素と揃えられているディスプレイについて考えよう。もともと赤の要素と揃えられているピクセル電極が、半分は赤の要素、半分は青の要素と揃うように、カラーフィルター配列がバックプレーンに対してクリープしている場合、表示される画像の色が意図されたものと実質的に異なることは容易に明らかとなるであろう。
【0045】
本発明にしたがって接着層内にリブを提供することにより、クリープを最小化または削除することができる。リブは、クリープを防止するためだけに使用されることができるものであって、ブルーミングを低減するためのものではなく、この場合、リブの誘電率と体積抵抗率は無関係であり、また接着剤の流量に抵抗するために必要なのは、リブが十分な硬さであることと、バックプレーンに十分に接着されていることだけである。しかしながら、より一般的には、リブはブルーミングとクリープの両方を同時に低減するために使用されることになる。
【0046】
ここで、本発明の第二の主要な側面、すなわち、隣接する電極間に隙間を有するディスプレイにおいて、制御されたブルーミングを製造することについて説明する。既に述べたように、本発明はそのような制御されたブルーミングを製造するための3つの異なるアプローチ、すなわち(a)電気光学媒体の厚みと体積抵抗率を制御すること;(b)接着層の厚みと体積抵抗率を制御すること;および(c)駆動パルスの長さを制御する、またはより具体的には、電気光学媒体の飽和光学状態を実現するために必要なのと同じ電圧のパルスの継続時間よりも実質的に長い駆動パルスを使用することを提供する。(「飽和光学状態を実現する」という語句は、極端に光学的な状態の1つにおける電気光学媒体をはじめとして、電気光学媒体をその完全な光学的範囲の90%を他の極端に光学的な状態へ旋回させたパルスをいう。
【0047】
前述のE InkおよびMIT特許および出願の一部、特に本出願の冒頭部にて述べた「関連する出願」に記載された好適な電気泳動は、現在は制御されたブルーミングに十分適合することがわかっている。一般に、そのような電気泳動ディスプレイの電気泳動層は、ブルーミングがないことが望ましい高解像度アクティブマトリクスバックプレーン用に最適化されており、約20μmの厚みおよび約4×1010ohm cmの体積抵抗率を有するであろうし、一方その関連する接着層は約25μmの厚みおよび約8×10ohm cmの体積抵抗率を有する。そのようなディスプレイの典型的な波形は、15V、800ミリセカンドパルスを使用する全体的更新(すなわち、すべてのピクセルが書き換えられる)である。
【0048】
低解像度処理によって製造するバックプレーンにおいて、隣接するピクセル間の典型的な隙間は200μm(0.2mm)であるかもしれず、上述の従来技術による電気泳動ディスプレイのブルーミングはそのような隙間を「埋める」のに不十分である。200μmの隙間を埋めるのに十分な制御されたブルーミングは、電気光学媒体および/または接着層の厚みおよび/または伝導率を増加させることにより、もしくは光学的飽和を実現するために必要なものよりも長いアドレス指定パルスを使用することにより実現可能であることがわかっている。
【0049】
より具体的には、適度に制御されたブルーミングは、厚み約20〜約25μm、体積抵抗率約1×1010〜約4×1010ohm cmの電気光学媒体を使用して実現可能であることがわかっている。電気光学媒体の伝導率は、前述のE InkおよびMIT特許および出願に記載されているように、電気光学媒体が連続的な結合相に電気泳動粒子を含む懸濁流体の複数の滴を含む場合、材料の適切な選択により制御されることができ、一般に、結合相の選択によって電気光学媒体の伝導率を制御することが最も容易である。電気光学媒体の伝導率は、そこにイオン添加物を含むことによって制御されることもできる。
【0050】
適度に制御されたブルーミングは、約40〜60μmの厚みと約3×10〜約8×10ohm cmの体積抵抗率を有する接着層を使用して実現されることもできる。接着層の伝導率は、前述の同時継続中の出願番号10/810,761およびWO2004/088395に記載されているように、適切な材料の選択によって、そこに添加物を含むことによって、または接着剤の架橋結合の程度を制御することによって制御されることができる。
【0051】
最後に、適度に制御されたブルーミングは、電気光学媒体の光学的飽和を実現するために必要なものより長い駆動パルス、より具体的には、光学的飽和を実現するために必要なものを10〜200%超える長さを有する駆動パルスを使用して実現されることもできることがわかっている。使用される駆動スキームは、全体的更新または部分的更新のいずれかを伴うことができる、すなわち、すべてのピクセルが更新ごとに書き換えられるか、変更が必要なピクセルだけが書き換えられることができる。制御されたブルーミングは、これが単一の駆動パルスの利用よりも大きなブルーミングを生じさせることがわかっているため、アドレス指定パルスの反復利用およびアドレス指定されたピクセルに対するその逆によって実現されることもできる。
【0052】
以上より、本発明の第二の側面が、前述したいかなる種類のものであってもよい電気光学ディスプレイにおける、ピクセル間の隙間を光学的に埋めるのに効果的な方法を提供することがわかるであろう。これらの方法は、低解像度の方法により形成されるディスプレイの外観を著しく向上させ、その結果、そのようなディスプレイの商業的魅力を増す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】図1Aは、従来技術による電気光学ディスプレイの2つの隣接するピクセルに駆動電圧が適用された際に生じた等電位線を図示している。
【図1B】図1Bは、リブ付きバックプレーンを組み込んだ本発明の電気光学ディスプレイの隣接する2つのピクセルに駆動電源が適用された際に生じた等電位線を示していることを除いて、図1Aと同様の図である。
【図2】図2は、リブ付きバックプレーンを組み込んだ本発明のカプセル型電気泳動ディスプレイの小断面を示す概略側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学ディスプレイのためのバックプレーンであって、該バックプレーンは、複数のピクセル電極と、該バックプレーンに隣接して配置された接着層とを備え、該接着層が、該バックプレーンの該ピクセル電極に隣接して配置された複数のピクセル領域と、該バックプレーンの2つのピクセル間に配置された少なくとも1つのピクセル間領域とを備え、該少なくとも1つのピクセル間領域が、該接着層の該ピクセル領域よりも低い誘電率および高い体積抵抗率を有することを特徴とする、バックプレーン。
【請求項2】
前記少なくとも1つのピクセル間領域が、前記ピクセル領域を形成する材料とは異なる材料から形成される少なくとも1つのリブを備える、請求項1に記載のバックプレーン。
【請求項3】
前記少なくとも1つのリブが、3未満の誘電率を有する、請求項2に記載のバックプレーン。
【請求項4】
前記少なくとも1つのリブが、1012ohm cmよりも大きな体積抵抗率を有する、請求項2に記載のバックプレーン。
【請求項5】
前記少なくとも1つのリブが、少なくとも0.5のアスペクト比を有する、請求項2に記載のバックプレーン。
【請求項6】
前記少なくとも1つのリブが、少なくとも1.0のアスペクト比を有する、請求項5に記載のバックプレーン。
【請求項7】
前記少なくとも1つのリブが、少なくとも2.0のアスペクト比を有する、請求項6に記載のバックプレーン。
【請求項8】
前記少なくとも1つのリブが、前記バックプレーンから離れた該少なくとも1つのリブの端部が接着剤に覆われるように、該接着層を完全に貫通しては延びない、請求項2に記載のバックプレーン。
【請求項9】
請求項1に記載のバックプレーンと、前記接着層に隣接する固体電気光学媒体の層とを備える、電気光学ディスプレイ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのピクセル間領域が、前記ピクセル領域を形成する材料とは異なる材料から形成される少なくとも1つのリブを備える、請求項9に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項11】
前記電気光学媒体が、複数の荷電粒子を備えた電気泳動電気光学媒体を備え、該粒子は、懸濁流体内にあり、該懸濁流体に電場を印加することによって該懸濁流体を介して移動が可能である、請求項9に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項12】
前記懸濁流体が気体である、請求項11に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項13】
前記荷電粒子と前記懸濁流体が、複数のカプセルまたはマイクロセルに閉じ込められている、請求項11に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項14】
前記電気光学媒体が、回転二色部材または電気泳動媒体を含む、請求項9に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項15】
間隔のあいている少なくとも2つのピクセル電極と、該ピクセル電極に隣接して配置された電気光学媒体の層とを備える電気光学ディスプレイであって、該電気光学媒体の層が20〜25μmの厚みと1×1010〜4×1010ohm cmの体積抵抗率を有することを特徴とする、電気光学ディスプレイ。
【請求項16】
間隔のあいている少なくとも2つのピクセル電極と、該ピクセル電極に隣接する接着層と、該ピクセル電極と反対側の該接着層の面に配置された電気光学媒体の層と、を備える電気光学ディスプレイであって、該接着層が40〜60μmの厚みと3×10〜8×10ohm cmの体積抵抗率を有することを特徴とする、電気光学ディスプレイ。
【請求項17】
間隔のあいている少なくとも2つのピクセル電極と、該ピクセル電極に隣接して配置される電気光学媒体の層とを備える電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、該ピクセル電極の両方に、該電気光学媒体の飽和光学状態を実現するために必要とされる1.1〜3倍の電圧および継続時間を有する電圧パルスを適用することを特徴とする、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−525712(P2007−525712A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500811(P2007−500811)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006465
【国際公開番号】WO2005/084280
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】