説明

電気光学的光変調素子、電気光学的ディスプレイおよび変調媒体

本発明は、電気光学的光変調素子、電気光学的ディスプレイ、ならびに例えばテレビジョンスクリーンおよびコンピューターモニターなどのこのタイプの素子を含有するディスプレイシステム、ならびにここで用いられる変調媒体に関する。本発明の光変調素子は、光変調媒体が動作中、等方相にあるメソゲン性変調媒体を含有し、良好なコントラスト、低い視野角依存性、および非常に短い応答時間に加えて、特に、非常に低い温度依存性を伴う比較的低い駆動電圧に優れている。本発明の変調媒体は、それらがキラル成分を含む事実により区別される。それらは、好ましくはアキラルな成分を含む。変調媒体は、特に好ましくは、ブルー相を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、光変調素子、これを含むディスプレイおよび光変調媒体に関する。光変調素子は、好ましくは、ある温度で異方性特性を有する変調媒体、例えば液晶などを用いる。光変調素子は、変調媒体がブルー相にある温度において動作する。等方相にある変調媒体を用いる類似のディスプレイは、本出願人による他の2つの特許出願である、DE 102 17 273.0および現在まで刊行されていない2002年9月4日付けDE 102 41 301.0に記載されている。
【0002】
本発明は、電気光学的光変調素子並びにこのタイプの素子を含む電気光学的ディスプレイおよびディスプレイシステム、例えばテレビスクリーンおよびコンピューターモニター並びに光変調素子において用いられる変調媒体などに関する。本発明の光変調素子は、光変調素子の動作の間、ブルー相にあるメソゲン性変調媒体を含む。良好なコントラストおよびコントラストの低い視野角依存性、短い応答時間および比較的低い動作電圧に加えて、これらは、特に、動作電圧の極めて低い温度依存性により区別される。
特に、本発明は、メソゲン性媒体およびこのタイプの光変調素子における変調媒体としての使用に関する。
【0003】
目的および従来技術
通常の電気光学的液晶ディスプレイは、一般的用語において知られている。これらは、変調媒体が一般的に光学的異方性のメソ相にある温度において動作する。ほとんどのディスプレイタイプにおいて、変調媒体は、ネマチック相において用いられる。メソ相において、変調媒体は、一般的に電界を印加しなくとも、異方性特性、例えば複屈折(Δn)などを有する。これは、電界が印加された際にのみ誘起されるものではない。TN(「ねじれネマチック」)およびSTN(「超ねじれネマチック」)ディスプレイが最も広まっている。これらのディスプレイにおける液晶セルは、液晶媒体の2つの相対する側上の基板上に電極を有する。電界は、このように液晶層に本質的に垂直である。最初に述べたディスプレイは、特に、例えばラップトップおよびノート型コンピューターにおける、大きい情報容量および高い解像度を有するディスプレイに駆動するTFT(「薄膜トランジスタ」)と組み合わせて用いられる。
【0004】
最近、特にデスクトップコンピューターモニターにおいて、IPS(「面内切換」、例えばDE 40 00 451およびEP 0 588 568)タイプまたは、あるいはまたVAN(「垂直配向ネマチック」)タイプの液晶ディスプレイが、ますます用いられている。VANディスプレイは、ECB(「電気的制御複屈折」)ディスプレイの最新の改良型である。更なる最新の改良型であるMVA(「マルチドメイン垂直配向」)ディスプレイにおいては、複数のドメインが、駆動された電極毎に安定化されており、さらに特定の光学的補償層が用いられている。これらのディスプレイは、すでに述べたTNディスプレイと同様に、液晶層に垂直な電界を用いる。これとは対照的に、IPSディスプレイは、一般的に、1つのみの基板上で、即ち液晶層の一方の側において、電極を用い、即ち、液晶層に平行な電界の有意な成分により特徴づけられる。
【0005】
通常の全てのディスプレイは、比較的長い応答時間であり、特に、ますます広まってきているTVおよびマルチメディア用途のためには、応答時間が充分に短くない。これは、現実に随所にある陰極線管と比較して、特に顕著である。液晶ディスプレイにおいて用いられる既知の電気光学的効果のさらなる欠点は、大部分のタイプにおける、達成されたコントラストの顕著な視野角依存性である。ほとんどの場合において、これは非常に大きいため、補償層、典型的にいくつかの場合において複雑な構造を有する異方性フィルムを、直接観察で動作するディスプレイのために用いなければならない。
【0006】
DE 102 17 273.0には、メソゲン性変調媒体が、動作温度において等方相である光変調素子が、記載されている。これらの光変調素子は、特に迅速に切り換えられ、コントラストの良好な視野角依存性を有する。しかし、駆動電圧は、多くの用途には高すぎる。したがって、特に低下した駆動電圧を有する改善された光変調素子についての要求が存在する。
【0007】
さらに、本出願人による未公開出願DE 102 41 301.0には、動作電圧の顕著な低下をもたらす特別の電極構造が提案されている。しかし、これらの電極構造には、光変調素子の生産において、多大な労力が必要である。
【0008】
加えて、DE 102 17 273.0およびDE 102 41 301.0で提案されている光変調素子は、顕著な温度依存性を有する。等方相の変調媒体で、電界により誘起された電気光学的効果は、変調媒体の透明点に近い温度で最も顕著である。これが、光変調素子が最も低い特性電圧を有するところであり、すなわち、最も低い駆動電圧が必要なところである。昇温させると、特性電圧は極めて増加し、したがって、動作電圧も増加する。しきい値電圧の典型的な温度依存性は、1度につき2、3ボルトから1度につき10ボルトまたはそれ以上までの範囲である。DE 102 17 273.0およびDE 102 41 301.0に記載の等方性の変調媒体を含有する、種々の光変調素子の特性電圧の相対的温度依存性は、1次近似により、用いられる媒体および電極構造に依存しないものと認めることができる。DE 102 17 273.0には、等方相で動作する光変調素子に用いることができる、顕著に変化する組成を有する等方性の媒体が記載され、DE 102 41 301.0には種々の電極構造が記載されている。しきい値電圧の相対的温度依存性は、透明点より1°高い温度で、ほぼ50%/度の程度である。それは、昇温させると低下する。透明点より5°高い温度温度で、ほぼ数十%/度の程度である。
【0009】
実用的なディスプレイで用いられる光変調素子のためには、この電気光学的効果の温度依存性は、通常大きすぎる。一般的に、少なくとも2、3度、好ましくは5°またはそれ以上、特に好ましくは、10°またはそれ以上、非常に好ましくは、20°またはそれ以上の温度範囲に亘り、動作電圧が実質的に動作温度に依存しない効果に対する需要がある。
【0010】
駆動電圧に続いて、電子工学の代替的な発達は、比較的複雑である。一方では、これは、結局、最も高い作動温度でも充分に大きくなければならないので、それは、一般的に利用できる駆動電圧の一部を失うことになる。他方では、それは、いくつかの測定努力およびコントロール努力に関連している。したがって、光変調素子の電流温度が決定されなければならない。比較的大きい画面を有するディスプレイでは、ディスプレイの複数のポイントでの温度勾配または温度を決定することが必要であり得る。
【0011】
光変調素子の温度を一定に保つことの更なる代替手段も、同様に、容易には達成することができない。明白な現実的理由のため、ディスプレイは、この目的のため加熱されなければならない。この代替手段も同様に、光変調素子の温度の決定を必要とする。
【0012】
DE 102 17 273.0に記載された、等方性の変調媒体を使用するディスプレイの特に良好なコントラストの利点は、現実的に、容易には利用することができない。
したがって、光学的等方相で変調媒体を使用し、および特性電圧の低い温度依存性を示す光変調素子に対し、多大な需要が存在することが分かる。
【0013】
相応して大きなキラルツイストを有する液晶は、1種または2種以上の光学的等方性のメソ相を有することができる。これらの相は、対応するコレステリックピッチ、すなわちピッチが可視光の波長領域にある場合、充分に大きな層厚で、わずかに青みがかったように見える。この理由のため、それらは、ブルー相として知られる(Gray and Goodby, “Smectic Liquid Crystals, Textures and Structures”, Leonhard Hill, USA, Canada (1984))。
【0014】
ブルー相の液晶に与える電界の効果は、例えば、H.S. Kitzerow, “The Effect of Electric Fields on Blue Phases”, Mol. Cryst. Liq. Cryst, (1991), Vol. 202, pp. 51-83に記載されている。電界のない液晶で観察することができるブルー相の3種のタイプ(BP I〜BP III)は、ここで言及されている。しかしながら、電場誘起複屈折を利用する電気光学的ディスプレイは記載されていない。電界の影響下で、ブルー相I、II、およびIIIとは異なる更なるブルー相または他の相が生じ得る。
【0015】
したがって、本発明は、電界のない状態で光学的等方相にある変調媒体を用いた光変調素子の特に速い切換を開発すること、良好なコントラスト、良好な視野角依存性、低い駆動電圧、および特に駆動電圧の低い温度依存性を有すること、ならびにこの目的のために必要な変調媒体を提供する目的を有していた。これらの光変調素子は、FPD(フラットパネルディスプレイ)、例えば、コンピューター用フラットパネルスクリーンの素子として使用するのに好適であるために、できるだけ小さい変調媒体の層厚を有するべきである。それらは、さらにできるだけ単純な電極配置により駆動されるべきである。
【0016】
本発明
驚くべきことに、未公開出願DE10217273.0に記載される光変調素子のような、光学的等方相で変調媒体を使用する光変調素子は、ブルー相である変調媒体を用いることで、下記するように、顕著に改善されることが見出された。特に、光変調素子は、特性電圧の温度依存性を顕著に低下させ、したがって、動作電圧の温度依存性を達成することができる。
【0017】
本発明の電気光学的光変調素子は、
−1つまたは2つ以上、好ましくは1つまたは2つ、特に好ましくは2つの基板
−電極装置
−光の偏光化のための1つの素子、または複数の素子、および
−変調媒体
を含み、
−光変調素子が、駆動されてない状態での変調媒体が光学的等方相である温度で動作すること、および
−メソゲン性変調媒体が、1種または2種以上のキラル化合物からなるキラル成分である成分(A)を含むこと、および
−任意に、好ましくは必ず、1種または2種以上のアキラル化合物からなるアキラル成分である成分(B)を含むこと、および
−メソゲン性変調媒体が、光変調素子がブルー相を有する温度で動作すること、または
−メソゲン性変調媒体が、光変調素子が等方相である温度で動作すること、および
−任意に、電極装置が、メソゲン性変調媒体の表面と平行な有意な成分を有する電界を発生させることができること
を特徴とする。
【0018】
メソゲン性変調媒体の表面と平行な有意な成分を有する電界を発生させることができる電極装置の使用が好ましい。
本発明を以下に詳細に説明する。
【0019】
光変調素子に用いられる変調媒体は、好ましくはメソゲン性媒体である。本明細書において、メソゲン性媒体またはメソゲン性化合物の用語は、メソ相を有し、メソ相に溶解し、またはメソ相を誘起する媒体または化合物を示す。メソ相は、スメクチック相、ネマチック相、またはブルー相である。スメクチック相およびネマチック相は、ここで好ましくは、キラルである。本明細書において、「キラルネマチック相」および「コレステリック相」の用語は、他で特に明記されてない限り、同義語として用いられる。「ブルー相」の用語は、任意に既知のブルー相を示し、他で特に明記されてない限り、これらの複数の相を同時に包含する。
【0020】
電界を印加すると、例えば、BPHおよびBPXなどの電界に誘起される相が発生し得る。強い電界強度の電界の場合には、電界なしで比較的低温で発生する相への相転移がさらに可能である。光変調素子の特性の場合、相の決定は、他で明記しない限り、対応する電圧、一般的に動作電圧、またはしきい値電圧を印加して行われるが、材料、特に変調媒体それ自体の特性に対する相の決定は、電界が印加されない場合に関する。転移温度T(BP,I)は、光変調素子の特性電圧の温度依存性の増加における変化から、電界を印加して決定されるが、転移温度T(,BP)は、電界のない状態で決定される。
【0021】
変調媒体は、好ましくはブルー相を有し、特に好ましくはブルー相および更にメソ相、好ましくはコレステリック相を有する。
メソ相を有してない材料のメソゲン性性質を調べるために用いられる好ましい媒体は、Merck KGaA, Darmstadt, Germanyからのネマチック混合物ZLI−4792である。メソゲン性材料は、好ましくは、この混合物の10%溶液から外挿して、−50℃またはそれ以上、特に好ましくは−20℃またはそれ以上、および非常に好ましくは0℃またはそれ以上の透明点を有する。
【0022】
変調媒体は、キラルドーピング成分である成分(A)、および任意に、アキラルな成分である成分(B)を含む。キラル成分(A)は、1種または2種以上のキラルな化合物を含み、好ましくは、これらの化合物からなる。これらのキラルな化合物は、メソゲン性構造を有し、好ましくはそれ自体、1種または2種以上のメソ相、好ましくは少なくとも1種のコレステリック相を有する。
本発明の第1の態様では、メソゲン性変調媒体は、キラル成分(A)のみからなる。この場合、変調媒体は、1種または2種以上、好ましくは2種または3種以上、特に好ましくは3種、4種または5種以上のキラル化合物を含む。変調媒体は、好ましくは、コレステリック相を有する1種または2種以上の化合物を、好ましくは含む。しかしながら、ある態様では、変調媒体は、1種、2種以上または全てが、それ自体メソ相を有さない1種または2種以上のキラル化合物を有利に含むこともできる。この場合、大気温度より高い融点を有するキラル化合物が、操作性に優れているため好ましい。加えて、この場合、高いHTPを有する化合物、即ち、ネマチックホスト混合物中、低濃度で用いられても短いコレステリックピッチを誘起させる化合物が特に好ましい。
【0023】
上記した態様、特に先の段落に記載された態様と同一であり得る特に好ましい態様には、1種または2種のみのキラル化合物、好ましくは1種のみのキラル化合物が用いられる。
本発明の更なる好ましい態様には、メソゲン性変調媒体は、キラル成分(A)およびアキラル成分(B)からなる。この場合、キラル成分は、1種または2種以上、好ましくは2種または3種以上のキラル化合物を含み、およびアキラル成分(B)は、1種または2種以上、好ましくは2種または3種以上、特に好ましくは、3種、4種または5種以上のアキラル化合物を含む。
【0024】
更なる態様には、キラル化合物、または成分(A)の複数のキラル化合物は、メソ相、好ましくはコレステリック相を有する。この態様では、キラル化合物は、メソゲン性アキラル成分(B)の、例えば、透明点、複屈折、および誘電異方性などの物理的性質に、比較的わずかにだけ影響を与え、高い濃度のキラル成分(A)を用いることも相応して可能となり、比較的低いHTPの化合物の使用も可能とする。メソゲン性アキラル成分(B)の、例えば、透明点、複屈折、および誘電異方性などの物理的性質は、コレステリックピッチが十分に長く、一般的には光の波長より十分に長い場合には、比較的わずかにだけ変化する。
【0025】
他の好ましい態様には、キラル化合物、または成分(A)の複数のキラル化合物はメソ相を有さない。この態様は、キラル成分(A)がアキラル成分(B)中で高いHTPを有する場合に特に好ましく、なぜならば、所望の低いコレステリックピッチは、その後に低濃度のキラル成分(A)で達成することができ、例えば、透明点、複屈折、および誘電異方性などの変調媒体の物理的性質が、アキラル成分(B)のそれらと比較して、わずかだけ変化することをもたらすためである。
しかしながら、2つ前の段落で記載される2つの態様中の1つのコレステリックピッチ、または他の態様中のコレステリックピッチが、比較的低い値をとる場合、光の波長順に、キラル成分(A)は、メソゲン性媒体中に、ネマチック相およびコレステリック相の構造とは完全に異なる構造であるブルー相を誘起させる。
【0026】
キラル成分(A)およびアキラル成分(B)の双方を含む媒体の、例えば、透明点、複屈折、および誘電異方性などの物理的性質を、ネマチック液晶混合物のための通常の方法を用いて、一般的に入手することはできない。この場合、対応する物理的性質を決定するためには、キラル成分(A)を、アキラル成分(A‘)に同濃度で置き換える。アキラル成分(A‘)は、成分(A)と同じ濃度で、同じ化合物または複数の同じ化合物を含む。しかしながら、成分(A)と比較して、成分(A‘)は、キラル化合物ではなく、代わりに対応するラセミ体、即ち、複数の化合物のそれぞれにおけるそれぞれ2つの対応するエナンチオマーの1:1の比率でのキラルでない混合物を含む。
【0027】
ブルー相は、成分(A)および成分(B)の双方を含む媒体中で生じる。
成分(B)の1種または2種以上のアキラル化合物は、メソ相、好ましくはスメクチック相および/またはネマチック相、好ましくはネマチック相を好ましくは有する。
本発明の好ましい態様には、アキラル成分(B)は、変調媒体の主要な部分を構成する。この態様では、変調媒体のキラル成分の濃度は、好ましくは0.5%〜45%、特に好ましくは1%〜35%、および非常に好ましくは3%〜25%である。
【0028】
この態様では、キラルネマチック相とも称されるコレステリック相における変調媒体のコレステリックピッチは、式(1)による1次近似に再び示すことができる。
P=(HTP・c)−1 (1)
ここで、Pはコレステリックピッチを示し、
cは、キラル成分(A)の濃度を示し、およびHTP(螺旋ねじれ力)(helical twisting power)は、キラル物質のねじれ力(twisting power)を特徴付ける定数を示し、キラル物質(成分(A))およびアキラル成分(B)に依存する。
【0029】
より正確にピッチを決定する場合、式(1)は相応するように修正することができる。このためには、多項式(2)の形態のコレステリックピッチの展開が通常用いられる。
P=(HTP・c)−1+(a・c)−2+(a・c)−3+... (2)
ここで、パラメーターは式(1)に対して定義したとおりであり、ならびにaおよびaは、キラル成分(A)およびアキラル成分(B)に依存する定数を示す。
多項式は、所望の正確性を可能にする程度まで続けることができる。
【0030】
キラル成分(A)が2種または3種以上の化合物からなる場合、式(1)は修正されて式(3)となる。
P=[S(HTP(i)・c)]−1 (3)
ここで、Pはコレステリックピッチを示し、
はキラル成分(A)のi番目の化合物の濃度を示し、および
HTP(i)は、アキラル成分(B)中のキラル成分(A)のi番目の化合物のHTPを示す。
HTPの温度依存性は、線形要素の直後でしばしば終結することができる多項式展開(4)でも通常表される。
HTP(T)=HTP(T)+b・(T−T)+b・(T−T+... (4)
ここで、パラメーターは式(1)に対して定義したとおりであり、および
Tは温度を示し、
は参照温度を示し、
HTP(T)は温度TでのHTPを示し、
HTP(T)は温度TでのHTPを示し、および
bおよびbは、キラル成分(A)およびアキラル成分(B)に依存する定数を示す。
【0031】
本発明の好ましい態様には、キラル成分(A)は、Merck KGaA, Darmstadtからの市販のネマチックホスト混合物であるMLC−6260中で、10μm−1 またはそれ以上、好ましくは30μm−1またはそれ以上、特に好ましくは50μm−1またはそれ以上、または非常に好ましくは90μm−1またはそれ以上のHTP(螺旋ねじれ力)を有する、1種または2種以上のキラル化合物を含む。
本発明の好ましい態様には、キラル成分(A)は、2種または3種以上のキラル化合物を含む。キラル化合物は、好ましくはすべてが、同じHTPのサイン(sign)を有する。
【0032】
変調媒体は、−30℃〜80℃、好ましくは55℃までの範囲に、特性温度、好ましい態様には透明点を有する。
本発明の光変調素子は、好ましくは、動作温度でブルー相であるメソゲン性媒体を含有する。この媒体は、有利には基板の上または下に位置する。
【0033】
一般的には、変調媒体は、2つの基板間に位置する。この態様が好ましい。変調媒体が2つの基板間に位置する場合、これらの基板の少なくとも1つが透明である。透明基板または複数の透明基板は、例えば、ガラス、石英またはプラスチックからなることができる。非透明基板が用いられる場合、これは、とりわけ、金属または半導体からなることができる。これらの媒体は、そのようなものとして用いることができるし、または例えばセラミックなどの支持体上に置くこともできる。変調媒体がポリマー媒体である場合、必要に応じて、第2の基板の使用を省略することができる。ポリマー変調媒体は、自己支持形態でも製造することができる。この場合、基板は全く必要ない。この場合、もっぱらフレキシブル基板を使用する場合と同様に、フレキシブル光変調素子を達成することができる。
【0034】
光変調素子の動作温度は、好ましくは、変調媒体の特性温度より高く、一般的には、変調媒体のブルー相への転移温度より高く、一般的には、この温度より高い0.1°〜50°の範囲、好ましくは、この温度より高い0.1°〜10°の範囲、特に好ましくは、この温度より高い0.1°〜5°の範囲で高い。動作温度は、好ましくは、変調媒体のブルー相への転移温度から、変調媒体の等方相への転移温度、透明点まで広がる範囲である。しかしながら、光変調素子は、DE10117273.0に記載されるように、変調媒体が等方相である温度でも動作させることができる。しかしながら、その結果、一般的に望ましくないことだが、動作電圧の温度依存性が増大する。
【0035】
本発明の光変調素子の動作温度範囲は、好ましくは、少なくとも5°またはそれ以上、好ましくは20°またはそれ以上、好ましくは30°またはそれ以上、好ましくは40°またはそれ以上、特に好ましくは60°またはそれ以上、非常に好ましくは80°またはそれ以上の温度範囲に広がる。本発明の光変調素子の動作温度範囲は、好ましくは、少なくとも10℃またはそれ以下〜50℃またはそれ以上まで、好ましくは、少なくとも0℃またはそれ以下〜60℃またはそれ以上まで、特に好ましくは、少なくとも−20℃またはそれ以下〜80℃またはそれ以上まで、非常に好ましくは、少なくとも−30℃またはそれ以下〜100℃またはそれ以上まで、最も好ましくは、少なくとも−40℃またはそれ以下〜120℃またはそれ以上まで広がる。
【0036】
好ましい態様には、変調媒体の特性温度と比較した、本発明の光変調素子の動作温度範囲は、少なくとも、特性温度より50℃またはそれ以上高くまで、特に好ましくは、少なくとも、特性温度より−5℃またはそれ以下に低くから、特性温度より60℃またはそれ以上に高くまで、および非常に好ましくは、少なくとも、特性温度より−10℃またはそれ以下に低くから、特性温度より80℃またはそれ以上に高くまで広がる。
電圧を印加すると、配向が、光学的等方相におけるメソゲン性媒体に誘起され、それは光学的遅延をもたらし、既知の方法、例えば好ましくは交差した偏光子間で視覚化させることができる。不均一な電界が好ましくは用いられる。
【0037】
本発明の光変調素子は、光の偏光化のために少なくとも1つの素子を含有する。加えて、それらは、好ましくは更なる光学的素子を含有する。この更なる光学的素子とは、光の偏光化のための第2の素子であるリフレクターかまたはトランスフレクター(transflector)である。
光変調素子のメソゲン性媒体を光が通過するとき、光がメソゲン性媒体に入る前と、メソゲン性媒体を出る後との双方で、少なくとも1つの偏光素子を少なくとも一度通過するように、光学的素子は配置されている。
【0038】
本発明の光変調素子の好ましい態様には、メソゲン性媒体は、2つの偏光子、即ち偏光子と検光子との間に位置する。2つの直線的な偏光子が好ましくは用いられる。この態様では、偏光子の吸収軸は、好ましくは90°の角度で交差する。
本発明の光変調素子は、任意に、1つまたは2つ以上の複屈折層を含有する。それは、好ましくは1つのλ/4層または複数のλ/4層、好ましくは1つのλ/4層を含有する。λ/4層の光学的遅延は、好ましくは約140nmである。
【0039】
メソゲン性変調媒体の層厚(d)は、好ましくは0.1μm〜5000μm(即ち5mm)まで、特に好ましくは0.5μm〜1000μm(即ち、1mm)まで、特に好ましくは1.0μm〜100μmまで、非常に好ましくは1.5μm好ましくは3.0μm〜30μmまで、特に2.0μm好ましくは3.5μm〜20μmまでである。好ましい態様には、メソゲン性変調媒体の層厚は、好ましくは0.5μm〜50μmまで、特に好ましくは1.0μm〜20μmまで、非常に好ましくは1.0μm〜8.0μmまでである。
【0040】
本発明は、また、1種または2種以上の本発明の光変調素子を含有する電気光学的ディスプレイに関する。これらの電気光学的ディスプレイは、好ましくは、アクティブマトリックスにより駆動される。
さらに本発明は、本発明の1種または2種以上の電気光学的ディスプレイを含有する電気光学的ディスプレイシステムに関する。これらの電気光学的ディスプレイシステムは、好ましくは、情報のディスプレイのため、とりわけ好ましくは、テレビジョンスクリーンまたはコンピューターモニターとして用いられる。ディスプレイされる情報は、好ましくは、デジタルシグナルまたはビデオシグナルである。
【0041】
本発明の光変調素子は、加えて、1種または2種以上の更なる通常の光学的素子、限定的ではないが例えば、複屈折層(例えば補償層)、拡散層など、ならびに複屈折および/または光収率、および/または視野角依存性を増大させるための素子を含有することができる。
本発明の光変調素子は、用いられる偏光子の性質に、非常におよび実質的に主に依存している良好なコントラストに特徴付けられる。通常のTNセルと比較して、ここで用いられるTNセルは、0.50μmの光学的遅延、明確なコントラスト、および隣接する基板でネマチック液晶の優先的な配向に垂直な偏光子の吸収軸を有し、およびキラルでない液晶を含有する。本発明の光変調素子のコントラストは、とりわけ特に、用いられる電極の形、タイプおよび構造に依存する。同じ偏光子が本発明の光変調素子に用いられる場合、これらの通常のTNセルでは、本発明の光変調素子のコントラストは、一般的に20%またはそれ以上、ある場合には、とりわけ垂直なディスプレイ表面と大きく異なる観察角では、TNセルのコントラストより40%またはそれ以上大きい。
【0042】
本発明光変調素子のコントラストの視野角依存性は、非常に良い。既知のECBセルの視野角依存性より、極めて優れている。市販されているIPSディスプレイ(例えば、日立およびNEC、日本)およびMVAディスプレイ(例えば、富士通、日本)で観察される視野角依存性に匹敵する。通常のTNディスプレイのものより、極めて低い。
したがって、本発明の光変調素子でのコントラスト比に対するイソコントラスト(isocontrast)カーブは、一般的に、TNディスプレイでの同じコントラスト比に対する対応するイソコントラストカーブより、2倍、しばしば3倍以上の角度範囲を包含する。
本発明の光変調素子の応答時間は、非常に短い。それらは一般的に5msまたはそれ以下、好ましくは1msまたはそれ以下、特に好ましくは0.5msまたはそれ以下、非常に好ましくは0.1msまたはそれ以下の値である。
【0043】
異なるグレイシェード(grey shade)間で切換するときの応答時間、特に切換をオンにするための応答時間が、印加される駆動電圧から実質的に独立していることは、特に有利である。このことは、通常の光変調素子、例えばTNセルなどの液晶セルにわたって、極めて有利であることを意味している。
電気光学的特性線は、特性電圧により特徴付けられた。このためには、10%、50%、および90%相対的コントラストが達成される電圧が用いられた。これらの電圧(略してV10、V50およびV90)は、それぞれ、しきい値、ミッドグレー(mid-grey)、および飽和電圧として知られている。加えて、70%相対的コントラスト(V70)が達成される電圧を、一般的に決定した。
【0044】
本発明による電気光学的ディスプレイは、本発明による1種または2種以上の光変調素子を含有する。好ましい態様には、これらはアクティブマトリックスにより駆動される。
他の好ましい態様には、本発明の光変調素子は、いわゆる「フィールド・シーケンシャルモード」で駆動される。ここで、切換素子は、駆動と連動して、異なる色の光で連続的に照らされる。パルスカラーの光をつくるために、例えば、カラーホイール、ストロボスコープランプまたはフラッシュランプを用いることができる。
【0045】
本発明の電気光学的ディスプレイは、特にテレビジョンスクリーン、コンピューターモニターなどのために用いられる場合には、カラー画像のディスプレイのために、カラーフィルターを含有することができる。このカラーフィルターは、有利には、異なる色のフィルター素子のモザイクからなる。典型的に、色のカラーフィルターモザイクの素子は、ここでは、それぞれの電気光学的切換素子に割り当てられている。
本発明の光変調素子は、メソゲン性媒体の層と平行な有意な成分を有する電界を発生させる電極構造を含む。この電極構造は、インターデジタル電極の形態に設計することができる。それは、くし状またははしご状の形態に設計することができる。重ね合わせた「H」および二重の「T」または「I」の形態の態様も有利である。電極構造は、好ましくは、これとメソゲン性媒体との間に少なくとも1つの基板を使用して、メソゲン性媒体の片側にのみ、有利に位置する。電極構造は、好ましくは、少なくとも2種の異なる面に位置し、メソゲン性変調媒体の片側に双方が位置する。このことは、特に電極が上にあるサブストラクチャー(sub-structure)を含有する場合に適用される。これらのサブストラクチャーは、有利には、誘電体層により互いに分離されている。サブストラクチャーが絶縁体層の反対側に位置する場合、キャパシタの構築を許容する配置を選択することができる。これは、アクティブマトリックスによりディスプレイを駆動する場合に、特に有利である。このタイプのアクティブマトリックスディスプレイは、非直線の電流/電圧特性線を有する駆動素子のマトリックスを使用し、それは、例えばTFTsまたはMIM(「金属−絶縁体−金属」)などの個々の光変調素子に割り当てられる。
【0046】
光学的等方相にあるメソゲン性変調媒体を用いた光変調素子の構造は、基本的には、DE10217273.0に記載されている。本発明の光変調素子の構造は、ここで簡潔に記載されている。切換素子は、基板の内側表面の間に、変調媒体を含有する。異なる電位が印加され得る、少なくとも2つの電極を有する電極構造は、一つの基板の内側表面に位置する。
電極は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明材料からなることができる。この場合、光変調素子の部品または複数の部品を、ブラックマスクによりカバーすることが有利であり得、ときには必要であり得る。これは、電界が有効でない領域を覆うことを可能とし、したがって、コントラストが改善される。しかしながら、電極は、通常、例えばクロミウム、アルミウム、タンタル、銅、銀または金、好ましくはクロミウムの金属の非透明材料からなることもできる。この場合、分離されたブラックマスクの使用は、不必要であり得る。
【0047】
印加される電界は、好ましくは不均一である。
異なる電位が印加され得る電極の相互の横方向距離は、顕著な影響を光変調素子の特性電圧に与えることが見出された。距離を減少させると、必要な駆動電圧が減少する。しかしながら、距離が小さくなる場合、光変調素子の相対的なアパーチャ(aperture)も小さくなり、輝度も減少する。電極は、好ましくは、0.5μm〜100μmの範囲、好ましくは1μm〜20μmの範囲、特に好ましくは1μm〜15μmの範囲、非常に好ましくは2μm〜12μmの範囲、最も好ましくは2μmから、好ましくは3μm〜11μmの範囲の相互の距離を有する。
【0048】
電極距離を減少させると、駆動電圧は低下する。しかしながら、同時に相対的なアパーチャ、ならびにしたがって透過、およびある照明に対するディスプレイの輝度も低下する。目的が、電気光学的ディスプレイの輝度を最適化することである場合、8μmまたはそれ以上、特に好ましくは10μmまたはそれ以上、非常に好ましくは12μmまたはそれ以上の電極距離が用いられる。しかしながら、駆動電圧が最適化の主焦点である場合、電極の相互の距離は、好ましくは19μmまたはそれ以下、特に好ましくは15μmまたはそれ以下、非常に好ましくは10μmまたはそれ以下、およびとりわけ好ましくは9μmまたはそれ以下である。
【0049】
異なる電位が印加される隣接する電極方向における電極幅は、この方向の電極の距離よりも重要でない。それは、光変調素子の特性電圧に実質的な影響を与えない。しかしながら、電極の幅を増大させると光変調素子の相対的なアパーチャが小さくなり、特に電極が光に透明でない材料からなる場合に、輝度が増大する。対照的に、電極の幅を減少させると、その電気(オーム)抵抗は増大する。電極は、好ましくは、0.5μm〜30μmの範囲、好ましくは0.5μm〜20μmの範囲、特に好ましくは0.7μm〜19μmの範囲、非常に好ましくは1μm〜9μmの範囲、最も好ましくは1.5μm〜6μmの範囲の幅を有する。
【0050】
本発明のメソゲン性媒体は、好ましくはブルー相を有する。しかしながら、結晶相、スメクチック相またはネマチック相からの等方相への転移が実質的に生じるほど、ブルー相の温度範囲が非常に狭い媒体の使用も可能である。
【0051】
好ましくはブルー相を有するメソゲン性媒体の特性温度または透明点は、好ましくは、−20℃〜80℃の範囲、好ましくは−30℃〜80℃、好ましくは60℃またはそれ以下、特に好ましくは0℃〜60℃の範囲、好ましくは0℃〜55℃の範囲、非常に好ましくは20℃〜60℃の範囲、好ましくは50℃までである。ディスプレイがバックライトを有する場合、特性温度、好ましい態様における透明点は、好ましくは10℃〜70℃の範囲、特に好ましくは30℃〜60℃の範囲である。
ブルー相は、好ましくは−10℃まで安定であり、特に好ましくは−0℃まで、非常に好ましくは−40℃まで安定である。
【0052】
媒体もしくは成分(B)の特性温度または透明点より4°低い温度での、媒体または媒体のアキラル成分(B)の光学的異方性は、好ましくは、0.070またはそれ以上、好ましくは0.080またはそれ以上、特に好ましくは0.090またはそれ以上、非常に好ましくは0.100またはそれ以上である。本発明の光変調素子で、より小さい光学的異方性を有する媒体を用いると、より高い駆動電圧が、より大きい光学的異方性を有する媒体を用いるよりも必要になる。相応して高い駆動電圧が利用できる限り、0.070より小さい光学的異方性を有し、アキラル成分を有する媒体を用いることができる。
【0053】
好ましい態様には、本発明のメソゲン性媒体のアキラル成分(B)は、透明点より4度低い温度で、ネマチック相において、0.100またはそれ以上、特に好ましくは0.150またはそれ以上、非常に好ましくは0.200 またはそれ以上の複屈折(Dn)を好ましくは有する。この好ましい態様では、キラル成分(A)の濃度は、メソゲン性媒体の、20%またはそれ以下、好ましくは10%またはそれ以下、非常に好ましくは7%またはそれ以下である。
成分(B)の複屈折の値は、本明細書においては限定しないのと同然である。しかしながら、実際的な面では、一般的に0.500またはそれ以下、通常0.450またはそれ以下である。本発明の媒体の複屈折の値は、ここでは、透明点より4度低い温度でのネマチック相において測定される。
【0054】
変調媒体(成分(B))のアキラル成分が、ネマチック相において、この温度でネマチック相として安定でなく、または少なくともこの温度まで過冷却であり得ない場合には、媒体の混合物の複屈折、およびMerck KGaAからのZLI−4792ネマチック混合物の複屈折は、それぞれの物質およびプレミックスの場合として20℃で測定され、混合物ZLI−4792と比較しての変化から純粋な媒体の値へ外挿される。10%の媒体および90%の混合物ZLI−4792が用いられる。媒体の溶解性が十分でない場合、濃度を5%に変化させ、それでも溶解性が十分でない場合には、用いられるホスト混合物は、詳細は以下に記載するが、Merck KGaAからのネマチック混合物MLC−6828であり、必要な場合には、ここでの濃度は、10%から5%へ低下させる。ホスト混合物からの値の外挿方法は、ネマチック相において対応する温度で測定できない場合に、媒体の対応する性質全てに対して用いられる。
【0055】
本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、好ましくは、4デバイまたはそれ以上、特に好ましくは6デバイまたはそれ以上、特に好ましくは8デバイまたはそれ以上の双極子モーメントを有する。
本発明の光変調素子に対しては、成分(B)がメソ相において正の誘電異方性(Δε)を有するメソゲン性変調媒体、および成分(B)がメソ相において負の誘電異方性を有するメソゲン性変調媒体の双方を用いることが可能である。成分(B)がメソ相において正の誘電異方性(Δε)を有するメソゲン性変調媒体の使用が好ましい。
【0056】
メソゲン性変調媒体の成分(B)が正の誘電異方性を有する場合、これは、1kHzおよび透明点より4°低い温度で、好ましくはネマチック相において、15またはそれ以上、特に好ましくは30またはそれ以上、非常に好ましくは45またはそれ以上の値を好ましくは有する。媒体の成分(B)がネマチック相を有さない場合、または透明点より4°低い温度でネマチック相でない場合、誘電異方性は、複屈折のように、対応するホスト混合物の値の外挿により決定される。
メソゲン性変調媒体の成分(B)が負の誘電異方性を有する場合、これは好ましくは、−5またはそれ以下、特に好ましくは−7またはそれ以下、非常に好ましくは−10またはそれ以下である。変調媒体の誘電異方性が負の成分(B)または成分(B)の誘電異方性が負の構成成分に対しては、所望により、Merck KGaAからのネマチック混合物ZLI−3086が、ホスト混合物として用いられる。
正の誘電異方性の成分(B)を有する変調媒体が特に好ましい。
【0057】
本発明の光変調素子における本発明媒体は、好ましくは、特性温度より2度高い温度で、5V〜150V、好ましくは15V〜110V、特に好ましくは20V〜90V、非常に好ましくは30V〜80Vの範囲で特性電圧V10を有する。特性電圧は、本明細書においては、他で特に明記しない限り、10μmの電極幅、および10μmの電極距離を有するセルに対し与えられる。本発明の光変調素子における本発明の変調媒体は、特性温度より2度高い温度で、特に好ましくは、105Vまたはそれ以下、好ましくは95Vまたはそれ以下、特に好ましくは75Vまたはそれ以下、非常に好ましくは50Vまたはそれ以下の特性電圧V10を有する。
【0058】
本発明の好ましい態様には、本発明の光変調素子における本発明の変調媒体は、特性温度より2度高い温度で、2V、好ましくは5Vから110Vまでの範囲、特に好ましくは10V〜90V、非常に好ましくは10V〜80Vの範囲に特性電圧V10を有する。
【0059】
本発明のさらに好ましい態様には、本発明の光変調媒体における本発明の変調媒体は、特性温度より2度高い温度で、2V〜100Vの範囲、好ましくは3V〜50V、特に好ましくは4V〜30V、非常に好ましくは5V〜20V、最も好ましくは5Vまたは7Vから15Vまでの範囲に特性電圧V10を有する。
【0060】
本明細書では、特性温度(Tchar.)は、以下のように定義される:
特性電圧が、温度の関数として最小値を通過する場合、この最小値の温度が特性温度と呼ばれ、
特性電圧が、温度の関数として最小値を有さないが、変調媒体が1種または2種以上のブルー相を有する場合、ブルー相への転移温度、複数のブルー相が発生する場合には、昇温させながら最初に発生するブルー相への転移温度が特性温度と呼ばれ、
特性電圧が温度の関数として最小値を有さず、変調媒体がブルー相を有さない場合、等方相への転移温度が特性温度と呼ばれる。
【0061】
本発明の光変調素子における本発明の変調媒体は、好ましくは、特性電圧(V)例えば、V10、V50、V70、およびV90の低い温度依存性を有する。特性電圧(V)の温度依存性(dV/dT)は、好ましくは、それらの相対的な値(dV/dT)により記述される。この目的のために、参照温度でのそれぞれの特性電圧と比較される。参照温度(Tref.)は、それぞれの変調媒体の特性温度より2度高い温度である。
dV/dT = dV(Tref.)/dT / V(Tref.) (5)
ここで、
:X%相対的コントラストが達成される電圧
Tは、温度を表し、
ref.は、参照温度Tref.=Tchar.+2°(テキスト参照)を表し、およびTchar.は、特性温度を表す。
【0062】
特性電圧、好ましくはV70の相対的な温度依存性は、好ましくは、所望の動作温度より低い温度から始まり高い温度までの、ある温度範囲に亘って引用される。動作温度は、好ましくは0.5°〜60°、特に好ましくは1°〜50°、非常に好ましくは1°〜30°の範囲であり、セル中の変調媒体の特性温度より高い。特性電圧の温度依存性の比較のために、温度依存性は、本明細書では、変調媒体の特性温度より(約)2度高い温度より(約)1度低い温度から、(約)1度高い温度までの範囲に亘って、引用される。温度依存性は、極端な温度(限界温度または限度温度)での電圧値の差の指標として引用され、これらの温度差は、他で特に明記されてない限り、これらの温度の平均に割り当てられる。
【0063】
この温度範囲での特性電圧、好ましくはV70の温度依存性の総計および好ましくは、値は、0%/度〜30%/度の範囲、好ましくは0%/度〜23%/度の範囲、好ましくは22%/度まで、好ましくは20%/度まで、特に好ましくは0%/度〜15%/度の範囲、好ましくは12%/度まで、非常に好ましくは0%/度〜7%/度である。
本発明の光変調素子は、好ましくは、動作温度の広範囲に亘って、低い温度依存性を有する。
【0064】
温度依存性に対する前記限界は、特に好ましくは、変調媒体の特性温度より2°高い温度から特性温度より10°高い温度までの範囲から選択される動作温度範囲における、動作温度の前後+/−1°またはそれ以上の温度範囲、特に好ましくは、特性温度より5°高い温度の前後+/−4°の温度範囲、とりわけ好ましくは、特性温度より2°高い温度から特性温度より20°高い温度までの範囲から選択される動作温度範囲における、動作温度の前後+/−1°またはそれ以上の温度範囲、非常に好ましくは、特性温度より10°高い温度からの温度前後の+/−4°、好ましくは+/−9°の温度範囲に亘って適合する。
【0065】
本発明の光変調素子で用いられる変調媒体は、5度またはそれ以上、好ましくは10度またはそれ以上、特に好ましくは20度またはそれ以上、非常に好ましくは30度またはそれ以上の幅を有する温度範囲に亘って広がるブルー相を有する。
本発明の特に好ましい態様には、本発明の光変調素子に用いられる変調媒体は、15度またはそれ以上、特に好ましくは30度またはそれ以上、非常に好ましくは40度またはそれ以上の幅を有する温度範囲に亘って広がるブルー相を有する。
【0066】
変調媒体は、20℃またはそれ以下〜35℃またはそれ以上までの温度範囲、特に好ましくは10℃またはそれ以下〜50℃またはそれ以上までの温度範囲、とりわけ好ましくは0℃またはそれ以下〜60℃またはそれ以上までの温度範囲、非常に好ましくは−30℃またはそれ以下〜80℃またはそれ以上までの温度範囲の動作温度範囲、好ましくはブルー相を、好ましくは有する。
ブルー相の温度範囲の幅は、特に明記されない限り、以下のように決定される。
【0067】
まず、キラル成分(A)または全体のキラル成分(A)の個々の化合物のHTPは、Merck KGaAから市販されている液晶混合物MLC−6828で決定される。
ブルー相の存在をチェックするために、アキラルな液晶混合物AM−3(この目的のために特別に開発された)におけるキラル成分(A)の混合物を、その後に調製する。この混合物の組成および性質は、例4で示される。ここで、アキラル混合物における成分(A)の濃度は、生成する混合物のコレステリックピッチが、180nm〜800nmの範囲、好ましくは400nm〜600nmの範囲、特に好ましくは550nmになるように選択される。このようにして得られた混合物の一滴は、標本スライドで
ガラスカバースリップで覆われ、顕微鏡で調べられる。約100μmまたはそれ以上の層厚において、ブルー相は直接観察することができる(この点について、Gray and Goodbyも参照)。
【0068】
次に、調べられる変調媒体の混合物が、その後に調整され得る。この目的のために、キラル成分(A)は、アキラル成分(B)に所望の濃度で溶解させる。ブルー相の位置および幅の決定のための上記方法の代替として、出発点はまた、成分(A)および(B)の混合物であり得る。この目的のために、コレステリックピッチは、所望により、ブルー相が顕微鏡で観察できるまで、増大させることができる。以下の3つの可能性が、この目的のために利用でき、好ましい順に示される:
【0069】
第1に、成分(A)の濃度は、参照混合物AM−3を用いる方法と関連して前記したコレステリックピッチの値が達成されるまで、例えば成分(B)の添加により減少される;
第2に、成分(A)のHTPの補償は、所望のピッチが達成されるまで、成分(A)のHTPサインと反対のサインを有する、1種または2種以上のキラル化合物が使用される、および
第3に、成分(A)の化合物または複数の化合物に対応するエナンチオマーが、濃度の成分(A)のHTPの補償のために使用され、達成される所望のピッチをもたらす。
【0070】
成分(A)および(B)の混合物は、変調媒体として、20μmまたはそれ以下、好ましくは約10μmの層厚を有するセルに導入され、その電気光学的性質に関して調べられる。
変調媒体の相挙動は、その後に、電気光学的テストセルで調べられる。この目的のために、変調媒体の特性電圧、好ましくはV10の温度依存性が、本発明にしたがって、参照セルにおいて調べられる。光変調素子におけるブルー相の存在は、昇温させての光学的等方性の発現から明らかである。電気光学的効果は、DE 102 17 273.0に記載される方法と類似する方法で、光学的等方相への変換が起こる変換温度で起こる。しかしながら、本発明の媒体は、その後にDE 102 17 273.0で記載される媒体のように、等方相ではなく、ブルー相になる。本発明の光変調素子における電気光学的効果は、以下のように特徴付けられる。セルは、交差偏光子で(完全に)暗くなっている。これは、特にコレステリックピッチが用いられる光の波長よりもずっと短い場合に適用される。本発明の電気光学的効果のコントラストは、ほとんど視野角依存性がなく、およびその効果は双安定性を示さない。
【0071】
さらに温度を増大させると、特性電圧は一般的に、昇温させるとわずかに増加する。この効果は、ブルー相の全範囲に亘って観察することができる。ブルー相から等方相への変換を越してもなお、電気光学的効果を観察することができる。したがって、本発明の光変調素子の動作温度範囲は、一般的に変調媒体でブルー相が発現する範囲より広くなる。しかしながら、ブルー相から等方相への相転移より高い温度では、特性電圧の増大の温度との傾きは、ブルー相よりも顕著に大きい。ブルー相から等方相への転移温度は、この転移温度より低いまたは高い温度での、それぞれの特性電圧の曲線(しばしば実質的に直線)から内挿することにより得ることができる。
変調媒体でブルー相が発現する温度範囲は、DSC(示差走査熱量測定)により確かめることもできる。
【0072】
本発明のセルにおける電気光学的効果の特性電圧が、最小値を通過する変調媒体では、温度曲線の異なるスロープ(最初は平坦でその後に急勾配)を伴う2つの領域の区別は、一般的に観察できない。これらの場合、ブルー相の幅は、本明細書で以下のように定められる。相範囲の上端の温度は、特性電圧が、特性電圧の最小値の2倍値を選定する場合の温度として定められる。相範囲の下端の温度は、同様に、特性電圧が、特性電圧の最小値の2倍値を選定する場合の温度として定められる。しかしながら、この値が最小値の温度未満の温度で達成されない場合、電気光学的効果が昇温させながら最初に発現する温度が、相範囲の下端の温度として定められる。
【0073】
好ましくは、30°またはそれ以上まで、好ましくは40°またはそれ以上まで、特に好ましくは45°またはそれ以上まで、非常に好ましくは60°またはそれ以上まで、水平および垂直に広がる視野角範囲に亘る好ましい視野角で観察される場合の電気光学的効果は、好ましくは、5:1またはそれ以上、好ましくは10:1またはそれ以上、非常に好ましくは15:1またはそれ以上のコントラスト比を示す。
【0074】
電気光学的効果は、好ましくは、15msまたはそれ以下、好ましくは10msまたはそれ以下、特に好ましくは5msまたはそれ以下、非常に好ましくは3msまたはそれ以下の応答時間を示す。本明細書中、応答時間とは、特に明記されない限り、以下の条件で決定される。スイッチオン時間(ton)を決定するとき、矩形電圧の値は、切換素子のV〜V100まで増大し、透過における変化のために要する時間、または10%〜90%までの相対的コントラストが決定される。スイッチオフ時間(toff)は、V100〜Vまで電圧を減少させる間、90%〜10%までの切換相対的コントラストに対し引用される。
【0075】
バルク(bulk)において、変調媒体がブルー相を有さず、特性電圧も最小値を通過しない特性電圧と、セルの変調媒体の透明点が異なる場合、温度はセルの透明点に基づく。
透明点測定装置(Mettler)のキャピラリーで決定する場合においてメソゲン性変調媒体が、鋭い透明点ではなく、比較的幅のある、典型的には数度の幅を有する場合、通常の定義と対照的に、ここでの透明点は、透明点の始点ではなく、透明範囲の終点として定義される。
本発明のメソゲン性媒体は、好ましくは、2種〜40種の化合物、特に好ましくは5種〜30種の化合物、非常に好ましくは7種〜25種の化合物からなる。
【0076】
キラル成分(A)のキラル化合物は、好ましくは、高いHTPを有する。それらは一般的に、相対的に低い濃度でメソゲン性基本混合物に添加されるため、それらもまたキラルドーパントと呼ばれる。それらは、好ましくは、アキラル成分(B)における良好な溶解性を有する。コレステリックピッチが、光の波長よりも極めて小さい値を有する限り、それらは、メソゲン性媒体のメソゲン性質または液晶性質を損なわないか、または小さい程度でしか損なわない。しかしながら、コレステリックピッチが、光の波長程度である場合、それらは、コレステリック相の構造とは全く異なる構造を有するブルー相を誘起する。2種または3種以上のキラル化合物が用いられる場合、それらは同一または反対の回転方向、および同一または反対のねじれ温度依存性を有することができる。
【0077】
Merck KGaAからの市販の液晶混合物MLC−6828において、20μm−1またはそれ以上、特に40μm−1またはそれ以上、特に好ましくは70μm−1またはそれ以上のHTPを有するキラル化合物が特に好ましい。
本発明の好ましい態様には、キラル成分(A)は、全てがHTPの同一のサインを有する2種または3種以上のキラル化合物からなる。
個々の化合物のHTPの温度依存性は、高くても低くてもよい。媒体のピッチの温度依存性は、HTPの異なる温度依存性を有する化合物を、対応する比率で混合することにより、補償することができる。
【0078】
光学的に活性な成分に対しては、いくつかは市販されている、複数のキラルドーパントが、当業者には入手可能であり、例えば、ノナン酸コレステリル、R/S−811、R/S−1011、R/S−2011、R/S−3011、R/S−4011、B(OC)2CH−C−3またはCB15(全てMerck KGaA、Darmstadt)である。
特に好適なドーパントは、1種もしくは2種以上のキラル基および1種もしくは2種以上のメソゲン性基またはキラル基を伴ってメソゲン性基を形成する1種または2種以上の芳香族基または脂環式基を含有する化合物である。
好適なキラル基は、例えば、キラルな分枝状炭化水素基、キラルなエタンジオール、ビナフトールまたはジオキソラン、さらに糖誘導体、糖アルコール、糖酸、乳酸、キラルな置換グリコール、ステロイド誘導体、テルペン誘導体、アミノ酸、2、3好ましくは1〜5のアミノ酸の配列からなる群から選択される1価または多価のキラル基である。
【0079】
好ましいキラル基は、糖誘導体、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、デキストロース;糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールまたはそれらの無水物誘導体、特にジアンヒドロヘキシトール、例えば、ジアンヒドロソルバイド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルバイド、イソソルバイド)、ジアンヒドロマンニトール(イソソルビトール)またはジアンヒドロイジトール(イソイジトール);糖酸、例えば、グルコン酸、ケトグルコン酸;キラルな置換グリコール基、例えば、モノ−またはオリゴエチレンもしくはプロピレングリコール、ここで1つまたは2つ以上のCH2基は、アルキルまたはアルコキシで置換されている:アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、フェニルグリシン、もしくはフェニルアラニン、または1〜5個のこれらのアミノ酸の配列:ステロイド誘導体、例えば、コレステリルまたはコール酸基;テルペン誘導体、例えば、メンチル、ネオメンチル、カンフェイル(campheyl)、ピネイル(pineyl)、テルピンイル(terpineyl)、イソロンギホリル(isolongifolyl)、フェンチル(fenchyl)、カレイル(carreyl)、ミルテニル(myrthenyl)、ノピル(nopyl)、ゲラニル、リナロイル、ネリル、シトロネリルまたはジヒドロシトロネリルである。
【0080】
好適なキラル基およびメソゲン性キラル化合物は、例えば、DE 34 25 503、DE 35 34 777、DE 35 34 778、DE 35 34 779およびDE 35 34 780、DE 43 42 280、EP 01 038 941、およびDE 195 41 820に記載されている。
以下の式A−I〜A−IIIの化合物からなる群から選択されるドーパントが特に好ましい:
【化1】

ここで、
a11およびRa12は、互いに独立して、2〜9個、好ましくは7個までのC原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルを示し、およびRa11は、代替的に、メチルまたは1〜9個のC原子を有するアルコキシを示し、好ましくは双方が、アルキル、好ましくはn−アルキルを示す、
a21およびRa22は、互いに独立して、1〜9個、好ましくは7個までのC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2〜9個、好ましくは7個までのC原子を有するオキサアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、好ましくは双方が、アルキル、好ましくはn−アルキルを示す、
a31およびRa32は、互いに独立して、2〜9個、好ましくは7個までのC原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルを示し、およびRa11は、代替的に、メチル、1〜9個のC原子を有するアルコキシを示し、好ましくは双方がアルキル、好ましくはn−アルキルを示す。
【0081】
以下の式の化合物からなる群から選択されるドーパントが特に好ましい:
【化2】

【0082】
さらに好ましいドーパントは、以下の式A−IVのイソソルバイド、イソマンニトールまたはイソイジトールの誘導体である:
【化3】

を示し、
好ましくはジアンヒドロソルビトール、
および例えば、ジフェニルエタンジオール(ヒドロベンゾイン)、特に以下の式A−Vのメソゲン性ヒドロベンゾイン誘導体を示し、
【化4】

示しはしないが、(R,S)、(S,R)、(R,R)、および(S,S)のエナンチオマーを含み、
ここで、
BおよびCは、互いにそれぞれ独立して、Lで単置換、二置換、もしくは三置換されてもよい1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンを示し、Lは、H、F、Cl、CNまたは1〜7個のC原子を有し、任意にハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシを示し、
cは、0または1を示し、
は、−COO−、−OCO−、−CHCH−または単結合を示し、および
は、1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシを示す、
で表される前記式A−Vのメソゲン性ハイドロベンゾイン誘導体などのキラルエタンジオールを示す。
【0083】
式A−IVの化合物は、WO 98/00 428に記載されている。式A−Vの化合物は、GB-A-2,328,207に記載されている。
非常に好ましいドーパントは、WO02/94 805に記載されているようなキラルなビナフチル誘導体、WO02/34 739に記載されているようなキラルなビナフトールアセタール誘導体、WO 02/06 265に記載されているようなキラルなTADDOL誘導体、ならびにWO 02/06 196およびWO 02/06 195に記載されているような、少なくとも1種のフッ素化された架橋基(bridging group)および末端基または中央のキラル基を含有するキラルドーパントである。
【0084】
式A−VIのキラルな化合物が特に好ましい。
【化5】

ここで、
、X、Y、およびYは、それぞれ互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、それは、F、Cl、Br、IまたはCNで、単置換または多置換されてもよく、およびここで、加えて、1つまたは2つ以上の非隣接CH2基は、Oおよび/またはS原子が、それぞれ直接的に結合しないように、それぞれ互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、NR−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、もしくは−C≡C−で置換されてよく、重合性基または20個までのC原子を有するシクロアルキルもしくはアリールを示し、それは、任意にハロゲン、好ましくはF、または重合性基で単置換または多置換されてもよく、
は、Hまたは1〜4個のC原子を有するアルキルを示し、
およびxは、それぞれ互いに独立して、0、1または2を示し、
およびyは、それぞれ互いに独立して、0、1、2、3または4を示し、BおよびBは、それぞれ互いに独立して、芳香族環または完全にもしくは部分的に飽和の脂肪族6員環を示し、ここで1つまたは2つ以上のCH基は、N原子で置換されてよく、および1つまたは2つ以上の非隣接CH2基は、Oおよび/またはSで置換されてよい、
およびWは、それぞれ互いに独立して、−Z−A−(Z−A−Rを示し、および2つの内の1つは、代替的に、RまたはAを示すが、双方は同時にはHを示さず、または
【化6】

を示し、
およびUは、それぞれ互いに独立して、CH、O、S、COまたはCSを示し、
およびVは、それぞれ互いに独立して、(CHを示し、1〜4つの非隣接CH2基は、Oおよび/またはS、ならびにVおよびVの1つで置換されてよく、およびここで
【化7】

を示し、双方は単結合を示し、
およびZは、それぞれ互いに独立して、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−、−CF−O−、−O−CF−、−CF−S−、−S−CF−、−CH−CH−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CF−CF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、Oおよび/またはSおよび/またはN原子の2つはそれぞれ直接的には結合しない、これら基の2つの組み合わせ、好ましくは、−CH=CH−COO−または−COO−CH=CH−または単結合を示し、
、A、およびAは、それぞれ互いに独立して、1つまたは2つの非隣接CH基がNで置換されてもよい1,4−フェニレン、1つまたは2つの非隣接CH2基がOおよび/またはSで置換されてよい1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキソラン−4,5−ジイル、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルを示し、ここで、これらの基のそれぞれは、Lで単置換または多置換されてよく、加えてAは、単結合を示し、
Lは、ハロゲン原子、好ましくはF、CN、NO、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシを示し、ここで1つまたは2つ以上のH原子は、FまたはClで置換されてよく、
mは、それぞれの場合、独立して、0、1、2または3を示し、および
RおよびRは、それぞれ互いに独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF、1個または3個〜25個のC原子をそれぞれ有する直鎖状アルキルまたは分枝状アルキルを示し、それは任意に、F、Cl、Br、IまたはCNで単置換または多置換されてよく、およびここで1つまたは2つ以上の非隣接CH基は、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−で置換されてよく、ここでOおよび/またはS原子の2つは、それぞれ直接には結合せず、または重合性基を示す、
で表される前記式A−VIのキラルな化合物が特に好ましい。
【0085】
式A−VI−1のキラルなビナフチル誘導体が特に好ましく、
【化8】

特に、以下の式A−VI−1a〜A−VI−1cから選択された誘導体が好ましく
【化9】

ここで、B、RおよびZは、式A−IVに対して定義されて通りであり、およびbは、0、1または2であり、およびZは、特に−OCO−または単結合を示す。
【0086】
さらに、式A−VI−2のキラルなビナフチル誘導体が特に好ましく、
【化10】

特に、以下の式A−VI−2a〜A−VI−2fから選択された誘導体が好ましく、
【化11】

ここで、Rは、式A−IVに対して定義した通りであり、XはH、F,Cl、CNを示し、またはRは好ましくはFを示す。
【0087】
特に、前記基A−IV、A−V、およびA−VIのドーパント、特にA−VI−1a〜A−VI−1c、およびA−VI−2a〜A−VI−2dのドーパントが、アキラル成分中での良好な溶解性を示し、および高いねじれおよびらせんピッチの低い温度依存性を有するコレステリック構造を誘起させる。したがって、これらのドーパントを少量でも用いると、好ましい性質を有する本発明の媒体を得ることができ、それは特に、変調媒体が光学的等方相で駆動される光変調媒体の使用に対して好適である。
【0088】
正の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体のアキラル成分(B)は、好ましくは、
−30またはそれ以上の非常に大きい正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−A)
−任意に、10から30未満の大きい正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−B)
−任意に、1.5より大きく10未満の中程度の正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−C)
−任意に、−1.5〜+1.5の範囲の誘電異方性を有する誘電的に中性の1種または2種以上の化合物からなる成分(B−D)
−任意に、−1.5未満の負の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−E)
を含む。
【0089】
これらの媒体の成分(B)の成分(B−A)は、好ましくは、式Iの1種または2種以上の化合物を含み、特に好ましくは、主に、式Iおよび式IIの化合物から選択される1種または2種以上の化合物からなり、非常に好ましくは、ほぼ完全になる:
【化12】

ここで、
は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたは2〜7個のC原子を有するオキサアルキルを示し、それぞれは好ましくは、2〜5個のC原子を有し、好ましくはアルキルであり、
【化13】

を示し、
11およびZ12は、それぞれ互いに独立して、単結合、−CO−O−、トランス−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CO−O−、−CF=CF−CO−O−、−CF=CH−CO−O−、−CH=CF−CO−O−、−CF−O−、−O−CF−、もしくは−C≡C−またはこれらの基の2種または3種以上の組み合わせを示し、好ましくはこれらの基の少なくとも1種は−COO−または−CF−O−であり、
は、F、−OCF、−CF、−OCFH、Cl、CN、−C≡C−CN、またはNCS、好ましくはCN、−CF、−C≡C−CNまたはNCS、特に好ましくはCNまたは−CFを示し、
11、Y12、Y13、およびY14は、HまたはFを示し、および
は、0または1、好ましくは0を示し、
ここで、式Iの化合物は、好ましくは3種または4種以上、特に好ましくは4種または5種以上のフッ素原子をフェニル環上に有しているが、好ましくは、フェニル環毎に多くて2つのF原子を有し、Y11、Y12、およびY13は、特に好ましくはFであり、Z12は好ましくは−COO−であり、
【化14】

【0090】
ここで、
は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシまたはオキサアルキルを示し、好ましくは、1〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシまたは2〜5個のC原子を有するアルケニル、好ましくはアルキルまたはアルコキシを示し、
【化15】

であり、
21およびZ22は、それぞれ互いに独立して、単結合、−CO−O−、トランス−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CO−O−、−CF=CF−CO−O−、−CF=CH−CO−O−、−CH=CF−CO−O−、−CF−O−、−O−CF−、もしくは−C≡C−またはこれらの基の2種または3種以上の組み合わせを示し、好ましくは、これらの基の少なくとも1種は、−COO−または−CF−O−であり、
は、F、−OCF、−CF、−OCFH、Cl、CN、−C≡C−CNまたはNCSを示し、好ましくはCN、−CF、−C≡C−CNまたはNCS、特に好ましくはCNを示し、
は、HまたはFを示し、および
は、0または1を示す。
【0091】
本発明の好ましい態様には、媒体の成分(B)は、式Iの1種または2種以上の化合物を含み、好ましくは、主に、特に好ましくは、ほぼ完全に、式Iの化合物から選択される1種または2種以上の化合物からなる。
【0092】
式Iの化合物は、好ましくは、化合物I−1およびI−2からなる群から選択され、
【化16】

ここで、パラメーターは、式Iで定義したとおりであり、好ましくは
は、1〜7個、好ましくは1〜5個、好ましくは3個までのC原子を有するアルキルを示し、
12は、−COO−または−CF−O−を示し、および
は、CN、−CFまたはNCS、好ましくはCNまたは−CFを示す。
【0093】
本発明の媒体は、特に好ましくは、式Iの化合物の1種または2種以上を含み、好ましくはXがCFである式I−1および/または式I−2の化合物を含む。
【0094】
式IIの化合物は、好ましくは、化合物II−1〜II−7からなる群から選択され、
【化17】

ここで、パラメーターは式IIで定義したとおりであり、好ましくは、
は、1〜7個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシまたはオキサアルキル、好ましくは1〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを示し、
22は、単結合、−CO−O−または−CF−O−、好ましくは、−COO−または−CF−O−を示し、式II−6においては特に好ましくは、−C≡C−を示し、および
は、CNまたはCF、好ましくはCFを示し、式II−6においては特に好ましくは、CNまたはCF、好ましくは、CNを示す。
【0095】
本発明の媒体は、好ましくは式II1〜II−5からなる群から選択される1種または2種以上の化合物、好ましくは、Z22が−CO−O−または−CF−O−を示す化合物を含む。
本発明の好ましい態様には、本発明媒体の成分(B)の成分(B−A)は、好ましくは、式IIの化合物の1種または2種以上を含み、特に好ましくは、主に、式IIの化合物の1種または2種以上からなり、非常に好ましくは、ほぼ完全になる。
【0096】
本発明の光変調素子に対しては、メソ相において正の誘電異方性(De)を有するメソゲン性変調媒体、および負の誘電異方性を有する媒体の双方を用いることが可能である。メソ相において正の誘電異方性を有するメソゲン性変調媒体を用いることが好ましい。メソゲン性変調媒体が正の誘電異方性を有する場合、これらの媒体のアキラル成分(B)は、1kHzおよび透明点より4°低い温度で、好ましくはネマチック相で、好ましくは、40またはそれ以上、特に好ましくは、50またはそれ以上、非常に好ましくは、60またはそれ以上のΔε値を有する。
【0097】
正の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、特に好ましくは、主に、非常に好ましくは、完全に、成分(B−A)からなる。
好ましい態様には、正の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、成分(B−B)〜(B−D)からなる群、好ましくは、成分(B−B)及び成分(B−D)、特に好ましくは成分(B−B)から選択される1種または2種以上の成分を含む。
【0098】
正の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、好ましくは、
−5%〜80%、好ましくは10%〜60%、特に好ましくは18%〜43%の式Iの1種または2種以上の化合物
−5%〜95%、好ましくは15%〜80%、特に好ましくは40%〜70%の式IIの1種または2種以上の化合物
−0%〜30%、好ましくは0%〜15%、特に好ましくは0%〜10%の1種または2種以上のさらなる化合物
を含む。
【0099】
正の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、好ましくは、
−3%〜45%、好ましくは5%〜40%、特に好ましくは10%〜35%の式I−1の1種または2種以上の化合物、および/または
−2%〜35%、好ましくは4%〜30%、特に好ましくは5%〜30%の式I−1の1種または2種以上の化合物、および/または
−0〜30%、好ましくは2%〜25%、特に好ましくは5%〜20%の式II−1の1種または2種以上の化合物、および/または
−0〜30%、好ましくは2%〜25%、特に好ましくは5%〜20%の式II−2の1種または2種以上の化合物、および/または
−5%〜70%、好ましくは15%〜65%、特に好ましくは20%〜60%の式II−3および/または式II−4、好ましくはII−4の1種または2種以上の化合物、および/または
−0%〜20%、好ましくは0%〜15%、特に好ましくは3%〜12%の式II−5の1種または2種以上の化合物、および/または
−0%〜30%、好ましくは0%〜20%、特に好ましくは3%〜15%の式II−6の1種または2種以上の化合物、および/または
−0%〜35%、好ましくは0%〜30%、特に好ましくは3%〜12%の式II−7の1種または2種以上の化合物
を含む。
【0100】
負の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体の成分(B)は、特に好ましくは、主に、非常に好ましくは、ほぼ完全に、成分(B−E)からなる。
これらの媒体の成分(B−E)は、好ましくは、1種または2種以上の化合物を含む。
【0101】
負の誘電異方性を有する本発明のメソゲン性媒体は、好ましくは、
―−5またはそれ未満の大きい負の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−A‘)
−任意に、−1.5〜−5未満の中程度の負の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−B‘)
−任意に、−1.5〜+1.5の誘電異方性を有する誘電的に中性の1種または2種以上の化合物からなる成分(B−C‘)、および
−任意に、1.5より大きい正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物からなる成分(B−D‘)
を含む。
【0102】
本発明のメソゲン性媒体は、好ましくは、
−成分(A)および(B)の化合物からなる群から選択される、4種またはそれ以上、好ましくは6種またはそれ以上の化合物、および/または
−成分(B)の化合物の5種またはそれ以上の化合物、および/または
−成分(A)の化合物の1種、2種またはそれ以上の化合物
を含む。
【0103】
本発明のメソゲン性媒体は、他の添加剤、例えば、安定剤または二色性染料を、通常の濃度で含むことができる。これらの他の構成成分の合計の濃度は、全体の混合物を基準として、0%〜10%の範囲内、好ましくは0.1%〜6%の範囲内である。これらの個別の化合物の濃度は、0.1〜3%の範囲内である。これらの化合物および混合物の類似する構成成分の濃度は、他で明記しない限り、他の混合物構成成分の濃度範囲を特定する際には、考慮しない。
【0104】
媒体は、通常の方法で、化合物から得られる。比較的少量で用いる化合物を、有利には、比較的大量で用いる化合物に溶解させる。混合操作の間の温度が主要な成分の透明点よりも高く上昇させる場合には、溶解の完全さを、容易に観察することができる。しかし、本発明の媒体を、また、他の方法で、例えばプレミックスを用いることにより製造することができる。用いることができるプレミックスは、特に、相同性混合物および/または共融混合物である。しかし、プレミックスはまた、すでに使用可能な媒体自体であってもよい。これは、いわゆる2つのボトル(two-bottle)またはマルチボトル(multi-bottle)系における場合である。
【0105】
本明細書において、他に明白に述べない限り、以下のことが当てはまる。
値の示した範囲は、好ましくは、限界値を含む。
【0106】
濃度を、重量%で示し、完全な混合物を基準とする。温度を、摂氏度で示し、温度差異を、差異の摂氏度で示す。すべての物理的性質を、他に明白に述べない限りは、“Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals”, as of Nov. 1997, Merck KGaA, Germanyにおいて決定し、20℃の温度について示す。また複屈折として知られている光学異方性(Δn)を、589.3nmの波長において決定する。誘電特性を、1kHzの周波数において決定する。メソゲン性変調媒体の性質および特にそれらのアキラルな成分(B)の性質は、それぞれの透明点より4°低い温度で決定される。
コレステリック媒体またはキラルネマチック媒体のコレステリックピッチは、その重要性に依存した既知の方法で決定される。
【0107】
比較的大きい値の場合、それは、グランジャン−カノ(Grandjean-Cano)方法で決定される。この目的のために、材料は、基板にホモジニアスな配向を伴う、温度自動調節されたくさび型のセルに導入される。観察される転傾線(disclination line)の分離は決定され、ピッチは、くさび角度によって計算される。用いられるくさび角度は、決定されるピッチに依存する。約0.1°〜4°、好ましくは0.5°〜3°、および特に好ましくは1°〜2°のくさび角度を有するセルが、典型的には用いられる。転傾線の分離は、好ましくは、顕微鏡で測定される。配向の欠陥は、値を対応して平均化することで考慮に入れられる。代替的に、分離の平均は、転傾線グリッドでのレーザービーム(例えば、He−Neレーザー)の回折により決定することができる。ここで、回折の最大値は、ダイオード・アレーまたはCCDにより、有利に決定される。くさび型のセルの角度は、好ましくは、レーザービームの多重反射により決定される。代替的には、それは、セルの形状から得ることができ、または既知ピッチの材料を用いる較正測定により得ることができる。ピッチの測定精度は、測定方法および電流値に依存するが、約+/−1%〜約+/−3%である。
【0108】
ピッチの値が大きすぎる場合、レンズ法が用いられる。これにおいては、材料は、平面プレートと凸レンズとの間に配向する。円状転傾線の分離は、その後に測定される。これは、データの平均化を単純化する画像処理システムを用いて行うことができる。平面基板からのレンズ表面の分離は、転傾線の位置で、レンズの半径および接触ポイントからの転傾線の分離から得られる。この方法の測定精度は、くさび型セルを用いる方法より、やや劣るがピッチ値の大部分の範囲をカバーすることができる。
【0109】
ピッチの非常に小さい値は、選択的反射の方法を用いて決定される。この目的のために、材料の配向されたサンプルを通じた透過が決定される。ピッチは、材料の屈折率を経た選択的反射の最大値の波長から決定される。この方法においては、ピッチに対する測定精度は、同様に約+/−1%である。
【0110】
キラルな材料、特にキラルなそれぞれの化合物のHTPは、本明細書に従い、20℃の温度で、Merck KGaA, Darmstadtから市販のネマチックホスト混合物MLC−6828中、グランジャン−カノ方法により決定される。HTPの温度依存性は、0℃〜50℃の範囲で調べられ、典型的には20℃で引用される。一般的に、HTPも、同様にMerck KGaAから市販のネマチックホスト混合物MLC−6260で決定される。
【0111】
変調媒体のコレステリックピッチが決定できない場合、それは成分(B)中の成分(A)のHTPから外挿される。成分(B)中の成分(A)のHTP値も、対応する温度で決定できない場合、これも、一般的により低温でのHTPの温度依存性から外挿する。
【0112】
媒体またはそれらの成分の組成の詳細に関連して、
−「含む」は、それぞれの場合、参照部、すなわち媒体または成分における当該材料、すなわち成分または化合物の濃度が、好ましくは、10%またはそれ以上、特に好ましくは、20%またはそれ以上、非常に好ましくは、30%またはそれ以上であることを意味する、
−「主に〜からなる」は、参照部における当該材料の濃度が、好ましくは、50%またはそれ以上、特に好ましくは、60%またはそれ以上、非常に好ましくは、70%またはそれ以上であることを意味する、および
−「ほぼ完全に〜からなる」は、参照部における当該材料の濃度が、好ましくは、80%またはそれ以上、特に好ましくは、90%またはそれ以上、非常に好ましくは、95%またはそれ以上であることを意味する。
【0113】
誘電的に正の化合物は、>1.5のΔεを有し、誘電的に中性の化合物は、−1.5≦Δε≦1.5の範囲内のΔεを有し、誘電的に負の化合物は、<−1.5のΔεを有する。また、同一の定義が、混合物の成分および混合物に適用される。
【0114】
誘電特性、電気光学的特性(例えばしきい値電圧)および応答時間を、Merck KGaA, Darmstadt, Germanyにおいて製造されたテストセル中で決定した。Δεの決定についてのテストセルは、22μmの層厚ならびに、1.13cmの面積および保護環を有する酸化スズインジウム(ITO)の円形電極を有していた。εの決定のためのホメオトロピック配向のために、ホメオトロピック的に配向したポリイミド配向層を有するセルを用いた。あるいはまた、レシチン(Merck KGaA)を、配向剤として用いることができる。εの決定のためのセルは、日本国日本合成ゴムからのポリイミドAL−1054の配向層を有していた。キャパシタンスを、一般的に、矩形波および0.3Vrmsの有効電圧を有するソラトロン(Solatron)1260周波数分析装置を用いて測定した。液晶ディレクターの再配向が0.3Vrmsで起こる高い誘電異方性を有する材料の場合、0.1Vrmsのより低い電圧が例外的に用いられる。電気光学的検査を、白色光を用いて行った。特性電圧を、垂直観察で決定した。
【0115】
材料の誘電特性は、好ましくは、1kHzおよび、可能であれば20℃において、昇温して最初に起こる光学的等方相(ブルー相または等方相)への転移温度より4°低い温度、およびそれぞれの材料の透明点または特性温度より4°高い温度で決定される。
【0116】
化合物の誘電異方性(Δε)は、20℃において、ホスト混合物中のそれぞれの化合物の10%溶液の値の、100%のそれぞれの化合物の比率への外挿により、決定される。テスト混合物のキャパシタンスは、ホメオトロピック端部配向を有するセルおよびホモジニアス端部配向を有するセルの両方において、決定される。2つのセルのタイプの層の厚さは、約20μmである。測定を、1kHzの周波数および典型的には0.1Vまたは0.2V〜1.0Vの有効電圧(rms、二乗平均平方根)を有する矩形波を用いて行う。各々の場合において、用いる電圧は、各々の場合において調べられる混合物の容量性しきい値よりも低い。
【0117】
誘電的に正の化合物について、混合物ZLI−4792を、ホスト混合物として用い、誘電的に中性の化合物、および誘電的に負の化合物について、混合物ZLI−3086を、ホスト混合物として用い、これらは、共に、Merck KGaA, Germanyからである。これらのホスト混合物は、相当する温度においてもネマチック相を有しないか、またはネマチック相に相当する温度まで過冷却することができない成分および媒体についても用いる。それぞれのホスト混合物における化合物、成分または媒体の溶解性が、10%よりも低い場合には、調べた物質の濃度は、例外的に5%まで低下する。誘電的に正の物質(化合物、媒体の成分または媒体)のホスト混合物ZLI−4792への溶解性が、5%よりも低い場合には、ネマチック混合物MLC−6828、Merck KGaA, Germanyを、ホスト混合物として用いる。ここで、また、調べられるべき物質の濃度は、必要に応じて、10%〜5%まで半減する。純粋な物質の値を、ホスト混合物の値と比較した値の変化から外挿する。
【0118】
本発明の媒体は、好ましくは、対応するホスト混合物(ZLI−3086またはMLC−6828)への溶解性が5%よりも低い化合物を0%〜10%含む。これらの化合物の濃度は、好ましくは8%またはそれ以下、特に好ましくは5%またはそれ以下、および非常に好ましくは4%またはそれ以下である。
【0119】
20℃または透明点よりも4°低い温度でネマチック相にはないか、あるいはこの相においてこの温度まで過冷却することができない化合物、成分、または媒体の誘電異方性を、化合物の場合において上記したように、ホスト混合物から決定する。
誘電定数εおよびεを、約+/−0.1〜+/−0.2の絶対精度で決定し、これにより、誘電異方性(Δε)について、約+/−0.2〜+/−0.4、典型的には+/−0.3の絶対精度が得られる。精度は、比較的大きい値において低下し、即ち可能な偏差が増大する。25〜40のΔεの値において、絶対精度は、約+/−0.5であり、40より大きい値において、絶対精度は、約+/−1.0である。
【0120】
媒体の誘電感受性を、特性温度よりも4℃高い温度において決定する。まず得られた近似の結果、ネマチック媒体の平均誘電感受性の透明点を超えての外挿から得ることができるから、これを平均誘電感受性(εav.)と呼ぶ。媒体の誘電感受性を、典型的には、約+/−0.1〜+/−0.2の絶対精度で決定する。50〜100までのεav.の値の場合において、絶対精度は約+/−0.5であり、100より大きい値の場合において、絶対精度は約+/−2である。
【0121】
本発明の媒体の複屈折の値を、ここでは、一次近似に、ネマチック相において、20℃および、透明点よりも4℃低い温度において測定する。媒体が、これら2つの温度の1つにおいて、もしくはこれら2つの温度においてネマチック相として安定ではないか、または、少なくともネマチック相におけるこの温度にまで過冷却することができない場合には、混合物の複屈折を、誘電異方性の決定について上記したように、対応するネマチックホスト混合物から外挿する。
【0122】
本明細書におけるしきい値電圧の用語は、光学的しきい値を示し、10%の相対的コントラスト(V10)について示す。ミッドグレー電圧および飽和電圧を、同様に、光学的に決定し、それぞれ50%および90%の相対的コントラストについて示す。本明細書中に示す種々の媒体の電気光学的特性線の基準量および特性値は、一般的に電圧(V10)、例外的な場合に、特性線が70%相対的コントラストの値に初めて到達する電圧(V70)である。またフレデリクスしきい値として知られている、容量性しきい値電圧(V)、または100%相対的コントラストに達する電圧(V100)を示す場合には、これを、明示的に記載する。
【0123】
媒体を、インターデジタル電極を有するテストセル中に導入した。テストセルの層の厚さは、一般的に約10μmであった。電極の幅は、10μmであり、隣接する電極間の距離は、15μmであった。電気光学的特性線を、それぞれの媒体の特性温度より2度高い温度において決定した。媒体のセル中への導入の間、透明点のわずかな増大が、いくつかの場合において観察された。この効果は、薄層におけるネマチック相のある安定化により説明することができる。透明点の増大は、ある場合に0.5度および約0.7度までであった。まれに、約2°〜4°までの偏差が起こりえる。セルの特性温度(または透明点)がバルクと異なる媒体の場合、セルの特性温度(または透明点)が特徴づけのために用いられる。
光の波長は、400nm〜800nm、好ましくは555nmとみなしている。
【0124】
本明細書において、特に以下に記載する例において、化学的化合物の構造を、略語により示す。それぞれの略語の意味を、以下の表AおよびBに示す。基C2n+1およびC2m+1全ては、それぞれn個およびm個のC原子を有する直鎖状アルキル基である。表Bは、各々の場合において相同性化合物の式についての完全な略語を示すため、これ自体自明である。表Aにおいて、化合物のタイプの核となる構造にかかわる略語のみを示す。それぞれの個別の化合物についての略語は、以下の表に示すように、それぞれ化合物の核についてのこれらの関連する略語および、ダッシュにより結合させた基R、R、LおよびLについての略語で構成されている
【0125】
【表1】

【0126】
表A:
【化18】

【0127】
【化19】

【0128】
【化20】

【0129】
表B:
【化21】

【0130】
【化22】

【0131】
【化23】

【0132】
【化24】

【0133】
【化25】

【0134】
【化26】

【0135】
【化27】

【0136】
【化28】

【0137】
【化29】

【0138】
【化30】

【0139】
【化31】

【0140】
【化32】

【0141】
【化33】

【0142】
【化34】

【0143】
【化35】

【0144】
本明細書のメソゲン性媒体は、好ましくは、
−4種または5種以上、好ましくは6種または7種以上の、表AおよびBで表される化合物からなる群から選択された化合物および/または
−5種または6種以上の、表Bで表される化合物からなる群から選択された化合物および/または
−2種または3種以上の、表Aで表される化合物からなる群から選択された化合物
を含む。
【0145】
本発明の媒体は、必要に応じて、安定剤として、または比抵抗を調整するために少量で、1種または2種以上の他の化合物を含むことができる。それらは、好ましくは、表Cの以下の化合物のリストから、好ましくは選択される1種または2種以上の安定剤を含む。
【0146】
表C
【化36】

【0147】
【化37】

【0148】
【化38】

【0149】
比抵抗を調整するために用いることができる典型的な化合物は以下の式を有する:
【化39】

【0150】

以下に記載する例は、本発明を、いかなる方法によってもこれを限定せずに説明する。これらはさらに、当業者に、本発明により達成することができる特性および特に特性の組み合わせを示す。
【0151】
例1および比較例1a〜1d
比較例1a
以下の組成を有するアキラルな液晶混合物AM−1を調製し、調べた。
【表2】

【0152】
この液晶混合物を、テストセル中に導入し、この電気光学的特性を、7.7℃の温度、および6.2℃〜10.7℃(透明点よりも5°高い)の範囲の温度に亘り調べた。
用いたテストセルは、2つの基板の1つのみの上にインターデジタル電極を有していた。液晶混合物を含有する光切換素子を有する電気光学的テストセルを製造した。基板は、ガラスからなっていた。配向層を有しない基板およびパッシベーション層を有しない基板を用いた。電極構造は、互いにかみ合うくし形状の電極からなっていた。電極の距離は、10μmであり、互いからの電極の幅は、10μmであった。電極の層の厚さは、約100nmであった。電極を、すべて共通の平面内に配置した。変調媒体の層の厚さは、約10μmであった。
【0153】
第1の偏光板を、セルの前で用い、第2の偏光板を、セルの後ろの分析装置として用いた。2つの偏光板の吸収軸は、互いに90°の角度を形成していた。偏光板の最大吸収の軸と、ディスプレイの平面中の電界の成分との間の角度は、各々の場合において45°であった。電圧/透過特性線を、Autronic-Melchers, Karlsruhe, GermanyからのDMS 703電気光学的測定ステーションを用いて決定した。垂直観察の際に、曲線が、電気的に制御された複屈折(例えばECB)を有するセルに典型的なものとして得られた。
媒体の透明点より高く温度を高くすると、特性電圧は単調に増加する。7.7℃で、V70は45Vである。結果を以下の表に示す。
【表3】

【0154】
例1
比較例1aのアキラルな液晶混合物AM−1を97%、およびキラル化合物B(OC)2CH−C−3を3%含む混合物を調製し、調べる。用いられる形態のキラル化合物は、20℃で、+137μm−1(MLC−6828中)およびMLC−6260中+104μm−1のHTPを有する。
【表4】

【0155】
該混合物は、以下の位相順序を有する約2度の範囲に亘りブルー相を有する: N11.5℃ BP13.5℃ I
比較例1aに記載される混合物はをテストセルに導入し、上記したように調べる。特に、その電気光学的性質を、その特性温度より数度高い温度まで調べる。比較例1aの結果との比較のため、結果を表1に示す。
この表から分かるように、例1の液晶切換素子の特性電圧V70は、特性温度より高く近接した温度で、対応する温度での比較例1aの特性電圧より、いくぶん大きい。例1の液晶切換素子の特性電圧は、比較例1aの特性電圧と同様に、昇温させると単調に増大する。しかしながら、例1aの液晶切換素子における特性電圧は、比較例1の特性電圧より、最初に著しく小さいため、2つの切換素子は、それらの参照温度より1.5°だけ高い温度で、実質的に同じ電圧V70を示す。それぞれの特性温度より2°高い温度での温度依存性は、比較例1aと例1との光変調素子を比較すると、25%より大きい値から20%より小さい値まで低下する。特性温度より0.5°高い温度で、ここでは、特性電圧の相対的温度依存性dV70(/V70)/dTは9%/°であり、特性温度より2°高い温度で、特性電圧の相対的温度依存性dV70(/V70)/dTは45%/°である。
【0156】
例1および比較例1aの混合物の場合において、加えて、15μmの電極距離、および10μmの電極幅を有するセルを調べた。結果を表2に示す。
【表5】

【0157】
比較例1b〜1d
比較例1b〜1dでは、例1とは対照的に、例1aのようにアキラル変調媒体が用いられた。しかしながら、ここでは、比較例1aの変調媒体とは異なる組成を有する変調媒体を用いた。
比較例1b
以下の組成および以下の性質を有する混合物を調整し、調べた。
【表6】

結果を表2に示す。
【0158】
比較例1c
以下の組成および以下の性質を有する混合物を調整し、調べた。
【表7】

結果を表2に示す。
【0159】
比較例1d
以下の組成および以下の性質を有する混合物を調整し、調べた。
【表8】

結果を表2に示す。
【0160】
比較例1b〜1dの媒体を、15μmの電極距離、および10μmの電極幅を有するセル中で、例1および比較例1aのように調べた。結果を表2に示す。
表2から分かるように、相対的特性電圧V70の温度依存性は、例1においてはわずか9%であるのに対して、全ての4つの比較例に対し約25%で実質的に同一である。
【0161】
例2a〜2dおよび比較例2
比較例2
最初に、以下の組成を有するアキラル混合物AM−2を調整し、調べた。
【表9】

【0162】
例2a
比較例2のアキラルな液晶混合物AM−2を90%、およびキラル化合物 B(OC)2CH−C−3を10%含む混合物を調製し、調べる。この混合物は22.5℃の特性温度を有していたが、セル中24.4℃が特性温度と思われる。電圧V70の温度依存性を以下の表(表3)に示す。
【表10】

【0163】
この表(表3)から分かるように、このドープ混合物を含有するセルの特性電圧V70は、比較例1aおよび例1のように、昇温させても増加しないが、その代わりに、昇温させると最初は低下し、その後に約−11.6℃で最小値を通過し、さらに昇温させると再びわずかだけ上昇する。本明細書では、−11.6℃の温度は、特性電圧が最小値を通過するので、特性温度と称される。この温度(すなわち、Tchar.=−11.6℃)の付近、約+/−3°の温度範囲で、温度依存性(dV70/dT)は、実質的に消失する、すなわち約0V/度である。
【0164】
ここで示されるブルー相の相範囲は、−19.3℃〜13℃の範囲内である。電圧は、低温で156Vにしか達しない、すなわち、80Vの最小電圧値の2倍より小さい。温度範囲の下限は、電気光学的効果が最初に利用できる温度である。それは観察される応答時間から決定することができる。13℃の温度で、164Vの電圧が達成され、最小電圧値の2倍よりいくぶん大きい。この上限を特定するとき、下限に対する場合のように、1度より小さい精度を有する値への内挿は省略する。
【0165】
例2b
例1のアキラル液晶混合物AM−2の85%を、以下の組成を有するドーパント混合物DM−1の15%と混ぜる。
【表11】

【0166】
ドーパント混合物DM−1の全てで用いられるキラル化合物は、1つの例外を別として、規定の組成を有する参照混合物において、高い正のHTP値を有する。
生成する変調媒体に対し、透明点を決定し、または−20℃までの温度において顕微鏡でブルー相を決定することは可能でなかった。85%のAM−2、および15%のDM−1を含む混合物を、式のフェノール0.1%で混合し、
【化40】

テストセル中に導入し、比較例1aに記載されるように調べる。特に、電気光学的性質は、その特性温度より何度か高い温度で決定される。結果を表4に示し、および例2aの結果との比較のために表5に示す。
【表12】

【0167】
この表(表4)から分かるように、このドープ混合物を含有するセルの特性電圧V70は、実質的に、−11.4℃〜−5.6℃の温度範囲に亘り、温度から独立している。
例2aのように、ここで、V70は最初に、昇温させると低下し、さらに昇温させると再びわずかだけ増大する。V70の最小値は約−8.5℃である。この参照温度付近、約+/−2°の温度範囲で、特性電圧(dV70/dT)の温度依存性は、再び実質的に完全に消失する(表5と比較)。
【表13】

【0168】
例2c
比較例2の液晶混合物AM−2の85%を、例2bのように、ドーパント混合物の15%と再び混合物した。しかしながら、ここで、以下の組成を有するドーパント混合物DM−2を用いた。
【表14】

【0169】
ドーパント混合物DM−2に用いられるキラル化合物は、参照混合物中、昇温させると増大するHTP値を有する。生成する混合物は特性温度を有する。
AM−2を85%、およびDM−2を15%含む混合物を、例2bで用いられるフェノール0.1%と混合し、テストセルに導入し、比較例1aに記載されるように調べる。特にその電気光学的性質は、その特性温度を、その特性温度より何度か高い温度で決定する。これらの結果を、同様に、比較例1aおよび例1の結果の比較ために、表1に示す。
【0170】
例2d
10%のキラル化合物(1OPZPZ)2Xを、比較例4の混合物AM−2に加えた。
生成混合物中でブルー相を直接観察することは、可能でなかった。−5℃〜9℃までの相転移範囲は、電気光学的データに由来する。ここで、推定された特性温度は例外的に9℃であった。結果を以下の表、表6に示し、および同様に比較のために表1に含める。
【表15】

【0171】
例3a〜3fおよび比較例3
比較例3
アキラルな出発混合物として、以下の組成を有する混合物AM−3を調製した。
【表16】

この混合物を、そのようなものとして調べた。特性温度は60℃だった。結果を表7に示す。
【0172】
例3a〜3c
代替物として、例1で用いられるキラル化合物B(OC)2CH−C−3の3%、5%、または7%を、比較例3の混合物AM−3に加えた(それぞれ例3a、3b、および3c)。生成混合物は、それぞれ、約24℃、約36℃、および約46℃で、ブルー相への相転移を有していた。ここで、推定された特性温度は、それぞれ、24.3℃、36.3℃、および45.9℃であった。結果を表7に示し、および例3bの結果を同様に表1に含める。
【表17】

【0173】
例3d〜3f
用いられるアキラルな出発混合物は、再び例3a〜3cの混合物AM−3であった。
10%、13%、または16%のキラル化合物B(OC)2CH−C−3(例1で用いられる)を、この混合物(AM−3)に加えた。生成混合物(それぞれ、例3d、3e、および3f)は、コレステリック相からブルー相への相転移を6℃の温度で有し(例3d)、または1℃(例3e)および0.3℃(例3f)の温度で、特性電圧の特性線の最小値を有していた。結果を以下の表、表8に示す。
【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−1つの基板、または複数の基板
−電極装置
−光の偏光化のための1つの素子、または複数の素子、および
−変調媒体
を含む電気光学的光変調素子であって、
−光変調素子が、駆動されてない状態での変調媒体が光学的等方相である温度で動作すること、および
−メソゲン性変調媒体が、1種または2種以上のキラル化合物からなるキラル成分である成分(A)を含むこと、および
−メソゲン性変調媒体が、光変調素子がブルー相を有する温度で動作すること、または
−メソゲン性変調媒体が、光変調素子が等方相である温度で動作すること
を特徴とする、前記電気光学的光変調素子。
【請求項2】
−電極装置が、メソゲン性変調媒体の表面と平行に、有意な成分を有する電界を発生させることができること
を特徴とする、請求項1に記載の電気光学的光変調素子。
【請求項3】
−メソゲン性変調媒体がブルー相を有すること
を特徴とする、請求項1または2に記載の電気光学的光変調素子。
【請求項4】
−メソゲン性変調媒体が、1種または2種以上のキラル化合物からなるキラル成分である成分(A)を含むこと
を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電気光学的光変調素子。
【請求項5】
−メソゲン性変調素子が、1種または2種以上のアキラル化合物からなるアキラル成分である成分(B)を含むこと
を特徴とする、請求項4に記載の電気光学的光変調素子。
【請求項6】
−変調媒体の10%相対的コントラスト(V10)に対する、特性電圧の相対的温度依存性(dV10/dT)が、特性温度付近+/−1°の範囲における特性温度(Tchar.)より2°高い温度で、30%/度またはそれ以下であること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電気光学的光変調素子。
【請求項7】
−相対的温度依存性(dV10/dT)が、23%/度またはそれ以下であること
を特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項8】
−10%相対的コントラスト(V10)に対する特性電圧が、セル内の変調媒体の特性温度(Tchar.)より2°高い温度で、80V、好ましくは60Vまたはそれ以下であること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項9】
−メソゲン性変調媒体が、2種または3種以上のキラル化合物からなるキラル成分である成分(A)を含むこと
を特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項10】
−成分(A)の全てのキラル化合物が、参照混合物中、20℃で、HTPの同じサインを有すること
を特徴とする、請求項9に記載の光変調素子。
【請求項11】
−成分(A)の1種または2種以上のキラル化合物のHTP値が、参照混合物中、20℃で、10μm−1、またはそれ以上であること
を特徴とする、請求項9または10に記載の光変調素子。
【請求項12】
−メソゲン性変調媒体が、1種または2種以上のアキラル化合物からなるアキラル成分である成分(B)を含むこと
を特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項13】
−ブルー相またはコレステリック相から等方相への変換温度より4度高い温度での、変調媒体の誘電感受性(eav.)が40またはそれ以上、好ましくは55またはそれ以上であること
を特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項14】
−コレステリック相から等方相への転移温度より4度低い温度での光学的異方性が、0.050またはそれ以上、好ましくは0.080またはそれ以上であること
を特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の1種または2種以上の光変調素子を含有する電気光学的ディスプレイ。
【請求項16】
ディスプレイがアクチブマトリックスにより駆動されることを特徴とする、請求項15に記載の電気光学的ディスプレイ。
【請求項17】
請求項15または16に記載の1種または2種以上の電気光学的ディスプレイを含有する電気光学的ディスプレイシステム。
【請求項18】
テレビジョンスクリーン、コンピューターモニター、またはその双方として用いることができることを特徴とする、請求項17に記載の電気光学的ディスプレイシステム。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれかに記載の光変調素子の、情報のディスプレイのための使用。
【請求項20】
請求項15または16に記載の電気光学的ディスプレイの電気光学的ディスプレイシステムにおける使用。
【請求項21】
請求項17または18に記載の電気光学的ディスプレイシステムの、ビデオシグナルまたはデジタルシグナルのディスプレイのための使用。
【請求項22】
0℃またはそれ以下から80℃またはそれ以上の範囲で、光学的等方相、好ましくはブルー相を有することを特徴とする、電気光学的光変調素子の使用のためのメソゲン性変調媒体。
【請求項23】
(a)1種または2種以上のキラル化合物からなるキラル成分である成分(A)
(b)1種または2種以上のキラル化合物および/またはアキラル化合物からなる、任意のアキラル成分である成分(B)
を含むことを特徴とする、請求項22に記載のメソゲン性変調媒体。
【請求項24】
1種または2種以上のキラル化合物および/またはアキラル化合物からなる、アキラル成分である成分(B)を含むことを特徴とする、請求項23に記載のメソゲン性変調媒体。
【請求項25】
成分(B)が1種または2種以上のアキラル化合物からなることを特徴とする、請求項24に記載のメソゲン性変調媒体。
【請求項26】
成分(B)が1種または2種以上のキラル化合物からなることを特徴とする、請求項24に記載のメソゲン性変調媒体。
【請求項27】
0℃〜60℃の範囲に特性温度を有することを特徴とする、請求項22〜26のいずれかに記載の媒体。
【請求項28】
ブルー相が、5度または5度以上の温度範囲を有することを特徴とする、請求項22〜27のいずれかに記載の媒体。
【請求項29】
ブルー相が、10度または10度以上の温度範囲を有することを特徴とする、請求項28のいずれかに記載の媒体。

【公表番号】特表2006−506515(P2006−506515A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570273(P2004−570273)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012626
【国際公開番号】WO2004/046805
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】