説明

電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器

【課題】高い信頼性と安定した光学特性が得られる電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器を提供すること。
【解決手段】電気光学装置としての液晶装置100は、一対の基板間に負の誘電異方性を有する液晶層50が挟持され、一対の基板の少なくとも一方の基板としての素子基板10の画素電極15の表面と、他方の基板としての対向基板20の共通電極23の表面とに凹凸を有し、該凹凸の少なくとも側壁部分を覆う絶縁膜17,25と、絶縁膜17,25を含む電極の表面を覆う無機配向膜としての配向膜18,24と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電気光学装置として、一対の基板間に液晶層を備えた液晶装置が知られており、液晶層中の液晶分子は、一対の基板の表面に形成された配向膜によって初期の配向方向が制御されている。例えば、負の誘電異方性を有する液晶は、酸化シリコンなどの無機材料を基板面に対して斜方蒸着することによって形成された無機配向膜が用いられている。
【0003】
このような斜方蒸着による無機配向膜の形成方法では、無機配向膜が形成される基板上に凹凸が生じていると、凹凸に対して斜方蒸着が行われたときに蒸着方向に対して影となる部分、すなわち配向膜が形成され難い部分が生じてしまい、液晶分子の配向むらが発生することがあった。このような課題を解決する構成が例えば特許文献1〜特許文献3に開示されている。
【0004】
特許文献1の液晶装置では、少なくとも一方の無機配向膜の下地層は凹凸を有し、該下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度とを異ならせている。
特許文献2の液晶表示装置では、配向膜の少なくとも一方は、斜方蒸着によって形成された第1層と、当該第1層に対して180°をなす方位角方向からの斜方蒸着によって形成された第2層との積層構造からなる。
特許文献3の液晶装置では、基板において微粒子の凝集体からなる配向下地膜上に無機配向膜が形成されている。凝集体として光透過性を有するITO微粒子が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−268067号公報
【特許文献2】特開2005−181794号公報
【特許文献3】特開2007−178699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2における無機配向膜の形成方法では、基板面において様々な方向に生じた凹凸の表面を隈なく覆うように無機配向膜を形成することが困難であった。それゆえに、一対の基板のそれぞれに設けられた電極の表面が無機配向膜で覆われない部分が発生し、当該部分では電極と液晶層とが直接に接触していた。そうすると、電極に駆動電圧が印加されたときに、電極の当該部分から液晶層に電荷が放出され、一対の基板間において対向する電極間に与えられる駆動電圧が変動して表示品位が低下するという不具合が発生するおそれがあるという課題があった。
また、上記特許文献3における無機配向膜の形成方法では、凹凸を埋めてその表面が平坦となる程度の厚みを有する配向下地膜が必要であり、凝集体としてITO微粒子を用いたとしても、配向下地膜を設けない場合に比べて、画素における透過率が減少し、コントラストが低下するおそれがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、一対の基板間に負の誘電異方性を有する液晶層が挟持された電気光学装置であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に設けられた電極の少なくとも側壁部分を覆う絶縁膜と、前記電極および前記絶縁膜を含む前記少なくとも一方の基板の表面を覆う無機配向膜と、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、一対の基板のうち少なくとも一方の基板の電極における少なくとも側壁部分が絶縁膜で覆われているので、例えば、気相成長法を用いて無機配向膜を形成したとしても、該電極の側壁部分が露出することなく、無機配向膜を設けることができる。これにより、液晶層は絶縁膜または無機配向膜に接する状態となり、電極から液晶層への電荷の移動が抑制され、液晶層が安定して駆動されるため、優れた表示品質を有する電気光学装置を提供できる。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記電極は表面に凹凸を有し、前記絶縁膜は、さらに前記凹凸の側壁部分を覆って設けられていることが好ましい。
この構成によれば、一対の基板のうち少なくとも一方の基板の電極の表面における凹凸の側壁部分がさらに絶縁膜で覆われているので、例えば、気相成長法を用いて無機配向膜を形成したとしても、該凹凸の側壁部分が露出することなく、無機配向膜を設けることができる。これにより、液晶層は絶縁膜または無機配向膜に接する状態となり、電極から液晶層への電荷の移動が抑制され、液晶層が安定して駆動されるため、優れた表示品質を有する電気光学装置を提供できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の基板は、画素回路と、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記一対の基板のうち他方の基板は、前記液晶層を挟んで前記複数の画素電極に対向する共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記画素電極上の前記凹凸は、前記画素回路が設けられた位置に対応するものであることを特徴とする。
この構成によれば、一方の基板において画素電極上に画素回路に起因する凹凸が生じていたとしても、該凹凸の側壁部分が絶縁膜で覆われ、該側壁部分以外の画素電極上の表面は無機配向膜で覆われるので、画素電極が液晶層に対して露出しない。ゆえに、画素電極から液晶層への電荷の放出が抑制され、優れた表示品質を実現できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の基板は、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記一対の基板のうち他方の基板は、前記液晶層を挟んで前記複数の画素電極に対向する共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記画素電極上の前記凹凸は、前記画素電極の外縁部に設けられたものであるとしてもよい。
この構成によれば、画素電極の外縁部に凹凸を設けることにより、隣り合う画素電極間に生ずる横電界の影響を低減できると共に、該凹凸の部分が直接に液晶層に触れないので、画素電極から液晶層への電荷の放出が抑制され、より優れた表示品質を実現できる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の基板は、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記一対の基板のうち他方の基板は、画素を平面的に区画する遮光膜と、前記遮光膜を覆う層間膜層と、前記層間膜層を覆い前記複数の画素電極に対向する前記電極としての共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、前記共通電極上の前記凹凸は、前記遮光膜が設けられた位置に対応するものであるとしてもよい。
この構成によれば、他方の基板において共通電極上に遮光膜に起因する凹凸が生じていたとしても、該凹凸の側壁部分が絶縁膜で覆われ、該側壁部分以外の共通電極上の表面は無機配向膜で覆われるので、共通電極が液晶層に対して露出しない。ゆえに、共通電極から液晶層への電荷の放出が抑制され、優れた表示品質を実現できる。
【0014】
[適用例6]本適用例の電気光学装置の製造方法は、一対の基板間に負の誘電異方性を有する液晶層が挟持された電気光学装置の製造方法であって、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に電極を形成する電極形成工程と、前記電極の少なくとも側壁部分を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記絶縁膜を含む前記電極の表面を覆う無機配向膜を気相成長法を用いて形成する配向膜形成工程と、を備え、前記絶縁膜形成工程は、前記電極を覆うように前記絶縁膜を形成する工程と、前記電極の前記液晶層に面する表面が露出するように前記電極上の前記絶縁膜を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、配向膜形成工程では、電極を有する表面を確実に覆って無機配向膜を形成することができる。言い換えれば、電極が液晶層に対して露出することなく、電極から液晶層への電荷の放出が抑制され、優れた表示品質を有する電気光学装置を製造できる。また、電極の液晶層に面する表面上に形成された絶縁膜は除去されるので、絶縁膜を電極上に設けることに起因する駆動電圧の上昇や透過率の低下を抑制することができる。
【0016】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記絶縁膜形成工程は、前記電極における凹凸の少なくとも側壁部分に前記絶縁膜を残し、前記電極の前記液晶層に面する表面が露出するように前記電極上の前記絶縁膜を除去することが好ましい。
この方法によれば、配向膜形成工程では、電極の凹凸を有する表面を確実に覆って無機配向膜を形成することができる。言い換えれば、凹凸を有する電極が液晶層に対して露出することなく、電極から液晶層への電荷の放出が抑制され、優れた表示品質を有する電気光学装置を製造できる。
【0017】
[適用例8]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴する。
この構成によれば、優れた表示品質を有する電気光学装置を備えた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、(b)は(a)のH−H’線で切った概略断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】画素の構造を示す概略平面図。
【図4】実施例1の画素の構造を示す概略断面図。
【図5】(a)〜(c)は実施例1における液晶装置の製造方法を示す概略断面図。
【図6】実施例2の画素の構成を示す概略平面図。
【図7】図6のB−B’線で切った実施例2の画素の構造を示す概略断面図。
【図8】電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図。
【図9】変形例の液晶装置の画素の構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0020】
なお、以下の形態において、「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0021】
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を画素のスイッチング素子として備えた電気光学装置としてのアクティブマトリクス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0022】
<液晶装置>
まず、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置について、図1および図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のH−H’線で切った概略断面図、図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
【0023】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、一対の基板のうちの一方の基板としての素子基板10と、他方の基板としての対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10および対向基板20は、透明な例えば石英などのガラス基板が用いられている。
【0024】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合され、その隙間に負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50を構成している。シール材40は、例えば熱硬化性または紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0025】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に遮光膜21が設けられている。遮光膜21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜21の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。図1では詳細な図示を省略したが、遮光膜21は表示領域Eにおいて画素Pをそれぞれ平面的に区分するように対向基板20側に設けられている。
【0026】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側に走査線駆動回路102が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子104に接続されている。
以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
なお、検査回路103の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路101と表示領域Eとの間のシール材40の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0027】
図1(b)に示すように、素子基板10の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター30と、信号配線と、これらを覆う配向膜18とが形成されている。
【0028】
対向基板20の液晶層50側の表面には、遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間膜層22と、層間膜層22を覆うように設けられた共通電極23と、共通電極23を覆う配向膜24とが設けられている。
【0029】
遮光膜21は、図1(a)に示すように平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0030】
層間膜層22は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜21を覆うように設けられている。このような層間膜層22の形成方法としては、例えばプラズマCVD法などを用いて上記無機材料を成膜する方法が挙げられる。
【0031】
共通電極23は、例えばITOなどの透明導電膜からなり、層間膜層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0032】
画素電極15を覆う配向膜18および共通電極23を覆う配向膜24は、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜されたものである。気相成長法としては、配向膜18,24が形成される基板と、無機材料を放出する放出源とを該基板の法線方向に対して傾斜させて配置して成膜を行うものであって、斜方蒸着法、斜方スパッタ法などが挙げられる。このような配向膜18,24の形成方法によれば、配向膜18,24の表面に対してプレチルトを与えた状態で液晶分子を略垂直配向させることができる。
【0033】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、走査線3aに対して一定の間隔を置いて平行するように配置された容量線3bとを有する。
【0034】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0035】
TFT30のゲートは走査線3aに電気的に接続され、TFT30のソースはデータ線6aに電気的に接続されている。画素電極15はTFT30のドレインに電気的に接続されている。
データ線6aはデータ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に列順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングで、互いに重複しないパルス信号として順次供給する。
【0036】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に供給された所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0037】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0038】
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0039】
図3は画素の構造を示す概略平面図である。図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面的に略四角形の開口部を有する。開口部は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口部により囲まれている。
【0040】
X方向に延在する非開口部には、図2に示した走査線3aや容量線3bが設けられている。言い換えれば、低抵抗配線材料からなる走査線3aや容量線3bによって非開口部の少なくとも一部が構成されている。
【0041】
同じく、Y方向に延在する非開口部には、図2に示したデータ線6aが設けられている。言い換えれば、低抵抗配線材料からなるデータ線6aによって非開口部の少なくとも一部が構成されている。
【0042】
非開口部は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において表示領域Eに対応して格子状又はストライプ状にパターニングされた遮光膜21によっても構成されている。
【0043】
非開口部の交差部付近には、図2に示したTFT30や保持容量16が設けられている。遮光性を有する非開口部の交差部付近にTFT30を設けることにより、TFT30の光誤動作を防止すると共に開口率を確保している。
【0044】
次に、このような液晶装置100におけるより具体的な画素Pの構造について、実施例を挙げて説明する。図4は実施例1の画素の構造を示す概略断面図、図5(a)〜(c)は実施例1における液晶装置の製造方法を示す概略断面図、図6は実施例2の画素の構成を示す概略平面図、図7は図6のB−B’線で切った実施例2の画素の構造を示す概略断面図である。なお、図5(a)〜(c)において、素子基板10における画素回路の図示は省略した。TFT30、保持容量16ならびにこれらに繋がる配線類を含む画素回路の形成方法は、公知の方法を採用することができる。
【0045】
(実施例1)
図4に示すように、実施例1の画素Pは、素子基板10上において、画素Pごとに設けられたTFT30を有する。TFT30は例えば多結晶質シリコン膜からなるLDD(Lightly Doped Drain)構造の半導体層30aを有している。半導体層30aは例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜11により覆われ、ゲート絶縁膜11を介してチャンネル領域に対向する位置にゲート電極30gが設けられている。ゲート電極30gはアルミニウムなどの低抵抗配線材料やポリシリコンからなる走査線3aの一部を利用して設けられている。
ゲート電極30gとゲート絶縁膜11とを覆って例えばシリコンの酸化物や窒化物などからなる第1層間絶縁膜12が設けられている。第1層間絶縁膜12には半導体層30aのソース領域30sとドレイン領域30dとにそれぞれ対応した位置にコンタクトホールが設けられ、第1層間絶縁膜12上にはコンタクトホールを埋めるようにして成膜された低抵抗配線材料をパターニングして、ソース電極31とドレイン電極32とが形成されている。ソース電極31はデータ線6aと電気的に接続するようにパターニングされている。
これらのソース電極31およびドレイン電極32ならびに第1層間絶縁膜12を覆って同じくシリコンの酸化物や窒化物などからなる第2層間絶縁膜13が設けられている。第2層間絶縁膜13上にはTFT30と平面的に重なる位置に遮光膜80が設けられている。素子基板10上においてTFT30ごとに設けられた遮光膜80は、前述した非開口部の一部を構成するものである。
遮光膜80と第2層間絶縁膜13とを覆って同じくシリコンの酸化物や窒化物などからなる第3層間絶縁膜14が設けられている。第3層間絶縁膜14上には画素電極15が画素Pごとに設けられている。画素電極15は例えばITOなどの透明導電膜を用いて形成されている。画素電極15とTFT30のドレイン電極32とは第2層間絶縁膜13および第3層間絶縁膜14に設けられたコンタクトホール(図示省略)によって電気的に接続している。画素電極15は、図3に示した開口部と平面的に重なると共に開口部よりも大きな面積を有して形成されている。また、本実施例においては画素電極15の外縁部が他の部分と比べて膜厚が厚くなっている。したがって、画素電極15の液晶層50に面する側の表面は平坦でなく、上記外縁部側において凹凸を有している。該凹凸の側壁部分は絶縁膜17により覆われている。
【0046】
このような画素電極15の少なくとも液晶層50に面する表面と、絶縁膜17で覆われていない第3層間絶縁膜14の表面とには配向膜18が設けられている。配向膜18は前述したように無機材料としての酸化シリコンを気相成長法を用いて成膜したものであり、成膜面に対して斜め方向に成長した酸化シリコンの柱状体(カラム)18aの集合からなるものである。カラム18aの成膜面に対する傾斜角度は、気相成長法における無機材料の放出源に対する基板の傾斜角度に寄る。
図4では、説明上カラム18aを視認できる程度の大きさとして成膜面に対して間隔を置いて図示したが、実際にはカラム18aは微小なものであって、ほとんど隙間なく密集した状態で成長している。気相成長法を用いて配向膜18を形成する場合、放出源に対して影になり易い側の上記凹凸の側壁部分はカラム18aが形成され難い。実施例1では、上記凹凸の側壁部分が絶縁膜17によって覆われているので、画素電極15と液晶層50とは直接に接触していない。
【0047】
対向基板20の液晶層50に面する側には、まず遮光膜21が設けられ、次に遮光膜21を覆って層間膜層22と共通電極23とが順に形成されている。遮光膜21は前述したように対向基板20において表示領域Eを囲んで額縁状に設けられると共に、非開口部を構成するように格子状又はストライプ状に設けられている。したがって、遮光膜21に重なるように設けられた層間膜層22を覆う共通電極23は、遮光膜21の開口部21a以外の非開口部において液晶層50に向かって凸状(以降、共通電極23の凸部と言う)となっている。つまり、共通電極23の液晶層50に面する側には凹凸が生じている。この凹凸における側壁部分も画素電極15と同様に絶縁膜25によって覆われている。そして、共通電極23の液晶層50に面する側の表面には、同じく気相成長法によって形成された柱状体(カラム)24aの集合からなる配向膜24が設けられている。気相成長法を用いて配向膜24を形成する場合、放出源に対して影になり易い側の上記凹凸の側壁部分はカラム24aが形成され難い。共通電極23の表面は、絶縁膜25とカラム24aとによって覆われているので、やはり液晶層50と直接には触れていない。
【0048】
このような配向膜18,24の表面において、負の誘電異方性を有する液晶分子は、プレチルトが与えられた状態で略垂直配向している。
【0049】
初期的に略垂直配向している負の誘電異方性を有する液晶分子は、画素電極15と共通電極23との間に生じた電界方向に直交する方向に配列する。ところが隣り合う画素電極15間に横電界が生ずるとその影響を受けて液晶分子の上記配列が乱され光漏れが生ずるおそれがある。実施例1では、素子基板10と対向基板20とは、隣り合う画素電極15の外縁部と共通電極23における上記凸部とが重なり合うように、液晶層50を挟んで対向配置される。したがって、画素電極15の外縁部と共通電極23の凸部との間の液晶層50の厚みは他の部分に比べて薄くなる。それゆえに、画素電極15の外縁部と共通電極23の凸部との間に生ずる電界強度は、他の部分に比べて強くなるので、隣り合う画素電極15間に横電界が生じても液晶分子の上記配列が乱され難いという特徴を有している。
【0050】
さらに、画素電極15および共通電極23の液晶層50に面する表面は、それぞれ絶縁膜17,25と配向膜18,24とによって覆われている。したがって、絶縁膜17,25をそれぞれの電極の全面に亘って設ける場合に比べて、液晶層50に掛かる電界を阻害しない。言い換えれば、絶縁膜17,25を設けても駆動電圧が上昇することはない。加えて、それぞれの電極が液晶層50に直接に触れないため、駆動時に両電極間に与えられた電荷が液晶層50に放出され難い。すなわち、電荷の放出による電位(例えば、両電極間における最適なLCCOM;共通電位)の変動が長期的に抑制され、高い信頼性と安定した光学特性とが実現される。
【0051】
このような実施例1の液晶装置100の製造方法としては、図5(a)に示すように、素子基板10上において、外縁部の厚みが他に比べて厚い凸部15aを有するように画素電極15を形成する(電極形成工程)。このような画素電極15の形成方法としては、ITOなどの透明導電膜をパターニングして平面的な形状を整えた後に、凸部15a以外の部分をエッチングして膜厚を減らす方法、あるいは、凸部15aに相当する部分に選択的に透明導電膜を成膜する方法が挙げられる。なお、このような方法に限らず、画素電極15が形成される下地の第3層間絶縁膜14の表面を部分的に凸状としておき、その上に透明導電膜を成膜してパターニングする方法も採用できる。
そして、画素電極15が形成された素子基板10の表面を覆うように絶縁膜17aを形成する(絶縁膜形成工程)。絶縁膜17aを形成する方法としては、スパッタ法や蒸着法を用いることが出来る。
【0052】
次に、図5(b)に示すように、形成された絶縁膜17aのうち、少なくとも画素電極15の液晶層50に面する表面が露出するように画素電極15上の絶縁膜17aを除去する(絶縁膜除去工程)。除去方法としては、深さ方向のエッチング制御が可能なドライエッチング法が好ましい。これにより、画素電極15の表面と隣り合う画素電極15間の一部とを露出させると共に、凸部15aの側壁部分を覆う絶縁膜17を形成する。
【0053】
そして、図5(c)に示すように、画素電極15が形成された素子基板10の表面に配向膜18を形成する。配向膜18は無機材料を気相成長法により成膜することで形成する。例えば、気相成長法として斜方蒸着を用いたならば、酸化シリコンを蒸発させる蒸着源に対して素子基板10を斜めに配置して蒸着を行う。そのときに蒸着方向は、例えば図3に示したように、X方向とY方向とにマトリクス状に配列する画素P(画素電極15)に対して、実線の矢印で示した右上から左下へ向かうおよそ45度の方位角方向から斜方蒸着を行う。そうすると成膜面において蒸着方向に向かって成長したカラム18aの集合体が得られる。
【0054】
対向基板20における遮光膜21、層間膜層22、共通電極23の形成方法は、公知の方法を採用できる。また、共通電極23の凸部の側壁部分を覆う絶縁膜25の形成方法については、画素電極15における絶縁膜17の形成方法と同じ方法を採用することができる。さらに、対向基板20における配向膜24の形成方法は、素子基板10の場合と同様に気相成長法として斜方蒸着法を用いることができる。その場合の蒸着方向は、例えば図3に示すように、X方向とY方向とにマトリクス状に配列する画素Pに対して、破線の矢印で示した左下から右上へ向かうおよそ45度の方位角方向から斜方蒸着を行う。つまり、図4に示したように、素子基板10と対向基板20とを対向配置したときに、カラム18aとカラム24aの成長方向が合致するように斜方蒸着を行う。
【0055】
このような実施例1の液晶装置100の製造方法によれば、液晶層50に対して凹凸を有する画素電極15や共通電極23が直接触れることなく、負の誘電異方性を有する液晶分子をむらなく略垂直配向させる配向膜18,24を備えた液晶装置100を製造することができる。
【0056】
(実施例2)
図6は実施例2の画素の構成を示す概略平面図、図7は図6のB−B’線で切った画素の構造を示す概略断面図である。電極表面に凹凸を有する画素の構成および構造としては、実施例1の透過型の画素だけでなく、実施例2の反射型の画素にも適用することができる。なお、実施例1と同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0057】
図6に示すように、反射型の液晶装置100における画素PBは、直交するデータ線6aと走査線3a、ならびに走査線3aに並行して配置された容量線3bとを有する。容量線3bには画素PB内において幅が拡張され一方の容量電極として機能する拡張部3cが設けられている。この拡張部3cを含めた容量線3bに平面的に重なるように他方の容量電極として機能する中継電極16aが設けられている。容量線3bに接続された拡張部3cと、これに対向配置された中継電極16aとの間に誘電体層が挟まれて保持容量16を構成している。
【0058】
TFT30は、データ線6aと走査線3aの交差点付近に設けられている。また、細長い半導体層30aが走査線3aと交差すると共に、半導体層30aのソース領域30sがデータ線6aから画素PB内に平面視で突出した突出部6bと重なり、半導体層30aのドレイン領域30d側が中継電極16aと重なるように配置されている。
【0059】
画素電極15Bは、例えばAl(アルミニウム)やその合金などの金属材料からなり、光反射性を有している。また、データ線6a、走査線3a、容量線3b、中継電極16a、TFT30と平面的に重なるように配置されている。
【0060】
図7に示すように、TFT30は、素子基板10上に形成された例えば多結晶質シリコン膜からなるLDD構造の半導体層30aを有する。半導体層30aは、例えば酸化シリコンからなるゲート絶縁膜11によって覆われ、ゲート絶縁膜11上において半導体層30aのチャネル領域に重なるようにして走査線3aが設けられている。つまり、実施例1と同様にTFT30は走査線3aの一部がゲート電極30gとなるトップゲート構造の薄膜トランジスターである。
【0061】
走査線3aを覆うようにして第1層間絶縁膜12が設けられ、第1層間絶縁膜12上に容量線3bならびにその拡張部3cが設けられている。容量線3bおよび拡張部3cを覆うように第2層間絶縁膜13が設けられ、第2層間絶縁膜13上にデータ線6aおよび突出部6b、中継電極16aがパターニング形成されている。第2層間絶縁膜13は、保持容量16における誘電体層として機能する。
【0062】
データ線6aおよび突出部6b、中継電極16aを覆うように第3層間絶縁膜14が設けられ、第3層間絶縁膜14上に画素電極15Bが設けられている。
【0063】
走査線3a、容量線3b、データ線6a、中継電極16aは、いずれもAlやその合金などの低抵抗配線材料からなり、データ線6aの突出部6bは、ゲート絶縁膜11、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13を貫通するように設けられたコンタクトホール13aを介して半導体層30aのソース領域30sと接続している。
【0064】
中継電極16aは、ゲート絶縁膜11、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜13を貫通するように設けられたコンタクトホール13bを介して半導体層30aのドレイン領域30dと接続している。
【0065】
また、中継電極16aは、第3層間絶縁膜14を貫通するように設けられた開口部を画素電極15Bの形成材料を用いて埋めたコンタクトホール14aを介して画素電極15Bと接続している。
【0066】
実施例2の反射型の液晶装置100では、画素電極15Bが反射性を有しているので、TFT30や保持容量16などの画素回路の要素を画素電極15Bの下層に形成することができる。その一方で画素電極15Bの表面は、下層に設けられた画素回路に起因する凹凸を有している。該凹凸の側壁部分には、実施例1と同様に絶縁膜17が形成されている。したがって、画素電極15Bが設けられた素子基板10の表面に配向膜18を気相成長法を用いて形成したとしても、上記凹凸の側壁部分におけるカラム18aが成長し難い影の部分には絶縁膜17が形成されているので、画素電極15Bの表面が液晶層50に直接触れることが防止される。
【0067】
実施例2によれば、画素電極15Bの表面が液晶層50に直接触れないので、実施例1と同様に高い信頼性と、安定した光学特性とが得られる反射型の液晶装置100を提供することができる。
【0068】
実施例1および実施例2において、絶縁膜17,25は、配向膜18,24の形成における気相成長法の影の程度を鑑みて、電極上の凹凸の段差が少なくとも200nm以上となる部分の側壁部分を覆うように形成することが好ましい。言い換えれば、段差が200nm未満の凹凸は無視することができる。
【0069】
<電子機器>
図8は電子機器としての投射型表示装置の構成を示す概略図である。図8に示すように、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0070】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0071】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0072】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0073】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0074】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0075】
このような投射型表示装置1000によれば、高い信頼性と安定した光学特性とが得られる液晶装置100を備え、高い表示品位が実現されている。なお、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、透過型に限らず実施例2に示した反射型の液晶装置100を用いて投射型表示装置1000を構成することも可能である。
【0076】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0077】
(変形例1)上記実施例1の透過型の液晶装置100において、TFT30や保持容量16などの画素回路の要素が配置される部分は、画素Pの非開口部に限定されない。例えば、画素Pの大きさが高精細となり、画素回路の一部分が開口部にはみ出して配置されていてもよい。言い換えれば、画素回路に起因する画素電極15上の凹凸の少なくとも一部は画素Pの開口部内に配置されてもよい。
【0078】
(変形例2)上記液晶装置100において、電極上の凹凸における側壁部分を絶縁膜17で覆う構成は、素子基板10の画素電極15および対向基板20の共通電極23の双方に適用させなくてもよい。言い換えれば、いずれか一方における電極の凹凸に対応させて絶縁膜を設ける構成とすれば、相応の効果が得られる。
【0079】
(変形例3)上記液晶装置100において、共通電極23側の凸部は、遮光膜21と層間膜層22とを設けることにより生ずるものに限定されない。例えば、遮光膜21を無くして、層間膜層22に凹凸を設けてこれを覆うように共通電極23を形成してもよい。
【0080】
(変形例4)上記絶縁膜17によって側壁部分を覆う画素電極15の形状は、画素電極15の表面に凹凸を有するものに限定されない。図9は変形例の液晶装置の画素の構造を示す概略断面図である。なお、上記液晶装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細の説明は省略する。
例えば、図9に示すように、変形例の液晶装置150は、素子基板10上に複数の画素電極15Cを有している。画素電極15Cは、その表面が平坦なものであって、外周側の側壁部分を覆うように絶縁膜17が設けられている。配向膜18は上述したように例えば酸化シリコンを斜方蒸着して得られたカラム18aの集合体であって、斜方蒸着時に影となる画素電極15Cの側壁部分にはカラム18aが成長し難く、影とならない部分の側壁部分には成長する。いずれの側壁部分も絶縁膜17で覆われているので画素電極15Cが液晶層50と直接に接触することを防止することができる。つまり、変形例の液晶装置150は、実施例1の液晶装置100と同様に高い信頼性と、安定した光学特性とが得られる。
【0081】
(変形例5)上記透過型あるいは反射型の液晶装置100が適用される電子機器は、投射型表示装置1000に限定されない。例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
10…一方の基板としての素子基板、15,15B,15C…電極としての画素電極、17…絶縁膜、18…無機配向膜としての配向膜、20…他方の基板としての対向基板、21…遮光膜、22…層間膜層、23…電極としての共通電極、24…無機配向膜としての配向膜、25…絶縁膜、50…液晶層、100,150…電気光学装置としての液晶装置、1000…電子機器としての投射型表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に負の誘電異方性を有する液晶層が挟持された電気光学装置であって、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に設けられた電極の少なくとも側壁部分を覆う絶縁膜と、
前記電極および前記絶縁膜を含む前記少なくとも一方の基板の表面を覆う無機配向膜と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記電極は表面に凹凸を有し、
前記絶縁膜は、さらに前記凹凸の側壁部分を覆って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記一方の基板は、画素回路と、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記一対の基板のうち他方の基板は、前記液晶層を挟んで前記複数の画素電極に対向する共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記画素電極上の前記凹凸は、前記画素回路が設けられた位置に対応するものであることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記一方の基板は、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記一対の基板のうち他方の基板は、前記液晶層を挟んで前記複数の画素電極に対向する共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記画素電極上の前記凹凸は、前記画素電極の外縁部に設けられたものであることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記一方の基板は、複数の前記電極としての画素電極と、前記画素電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記一対の基板のうち他方の基板は、画素を平面的に区画する遮光膜と、前記遮光膜を覆う層間膜層と、前記層間膜層を覆い前記複数の画素電極に対向する前記電極としての共通電極と、前記共通電極を覆う前記無機配向膜とを有し、
前記共通電極上の前記凹凸は、前記遮光膜が設けられた位置に対応するものであることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項6】
一対の基板間に負の誘電異方性を有する液晶層が挟持された電気光学装置の製造方法であって、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に電極を形成する電極形成工程と、
前記電極の少なくとも側壁部分を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜を含む前記電極の表面を覆う無機配向膜を気相成長法を用いて形成する配向膜形成工程と、を備え、
前記絶縁膜形成工程は、前記電極を覆うように前記絶縁膜を形成する工程と、前記電極の前記液晶層に面する表面が露出するように前記電極上の前記絶縁膜を除去する工程とを含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜形成工程は、前記電極における凹凸の少なくとも側壁部分に前記絶縁膜を残し、前記電極の前記液晶層に面する表面が露出するように前記電極上の前記絶縁膜を除去することを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−78680(P2012−78680A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225424(P2010−225424)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】