説明

電気光学装置およびその製造方法、電子機器

【課題】発光領域内の有機機能層の厚みがほぼ均一である電気光学装置およびその製造方法、電子機器を提供すること。
【解決手段】電気光学装置10は、第1電極12と、第1電極12に対応した開口部14aを有する絶縁膜14と、絶縁膜14上に形成され、開口部14aに対応した範囲を囲むバンク16と、バンク16に囲まれた範囲内に液滴配置により形成され、開口部14aに対応する発光領域18eを有する有機機能層18と、有機機能層18を覆う第2電極20と、を備え、開口部14aは、発光領域18eより広くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置およびその製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL方式の電気光学装置の製造には、有機機能層(正孔注入層および発光層)を液滴吐出法により形成する方法が広く用いられている。液滴吐出法では、有機機能層材料溶液を所定の領域にのみ選択的に配置するため、プロセスが簡易であるとともに原材料の使用量を少なくすることができる。
【0003】
一方で、液滴吐出法では、配置された有機機能層材料溶液が画素電極の開口部の領域より広い範囲に濡れ広がってしまう場合がある。このような場合、画素電極の開口部の領域以外も発光することや、画素電極のそれぞれに対応する有機機能層の面積、形状が均一でない場合もある。このような場合、各画素の発光状態がばらつくことがあった。電気光学装置が露光ヘッドである場合、発光領域の拡大や発光状態のばらつきにより、解像度や描画品質が低下するという課題があった。
【0004】
また、液滴吐出法では、配置された有機機能層がバンクに囲まれた周縁部で盛り上がり、有機機能層の厚みがばらつく場合がある。このような場合、それぞれの領域内での有機機能層の厚みが均一でないため、画素内で発光の強弱が生じることがあった。そのため、有機機能層が局部的に劣化し、電気光学装置としての寿命低下を招いてしまうという課題があった。
【0005】
これに対して、正孔注入層に紫外線照射により選択的に表面処理を施し、処理を施した部分の表面特性と抵抗値とを変化させる方法が提案されている(例えば特許文献1)。この方法では、発光領域、すなわち正孔注入層の表面処理が施されなかった部分のみに発光層の材料を配置することにより、発光層形成時の材料の発光領域外への拡散を抑え発光領域外の発光を防止しようとしている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−158436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この方法では、発光領域の周囲を撥液性に変化させ、親液性の発光領域内に発光層の材料を配置するため、配置された発光層の材料は発光領域内の周縁部で盛り上がってしまう。したがって、発光層の材料の濡れ広がりは抑えられるが、発光領域内全体に亘って発光層の厚みを均一にすることは困難である。
【0008】
本発明はこのような課題を鑑みてなされ、その目的の1つは、発光領域内の有機機能層の厚みがほぼ均一である電気光学装置およびその製造方法、電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る電気光学装置は、第1電極と、前記第1電極に対応した開口部を有する絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、少なくとも前記開口部に対応した範囲を囲むバンクと、前記バンクに囲まれた前記範囲内に液滴配置により形成され、前記開口部に対応する発光領域を有する有機機能層と、前記有機機能層を覆う第2電極と、を備え、前記開口部は、前記発光領域より広いことを特徴とする。
【0010】
これによれば、電極の開口部が発光領域より広いので、開口部を囲むバンク内に形成されている有機機能層の領域は発光領域よりも広い。このため、層の厚みがばらつく有機機能層の周縁部を発光領域外に配置することができる。したがって、発光領域内の有機機能層の厚みをほぼ均一にすることができる。
【0011】
(2)この電気光学装置では、前記バンクは、複数の前記開口部に対応した前記範囲を囲むように形成されていてもよい。
【0012】
これによれば、有機機能層は複数の開口部を囲む大面積のバンク内に形成されているので、有機機能層形成領域はより広い。このため、層の厚みのほぼ均一な有機機能層の中央部をより広くすることができる。したがって、発光領域内の有機機能層の厚みをより均一にすることができる。また、有機機能層形成領域の中央部に複数の発光領域が配置されるので、これら複数の発光領域で有機機能層の厚みをほぼ均一にすることができる。このことにより、画素間での発光の強弱のばらつきを抑えることができる。
【0013】
(3)この電気光学装置では、前記有機機能層は、前記発光領域以外の部分の比抵抗が、前記発光領域の部分の比抵抗より高くなっていてもよい。
【0014】
これによれば、有機機能層において、発光領域以外の部分の比抵抗が発光領域の部分の比抵抗より高くなっている。比抵抗の高い部分には電流がほとんど流れないので、発光領域以外の部分は発光に寄与しない。したがって、比抵抗の低い発光領域の部分のみを発光に寄与させることができる。
【0015】
(4)この電気光学装置では、前記有機機能層は正孔注入層を含んでいてもよい。
【0016】
これによれば、有機機能層は正孔注入層を含んでいる。発光層と正孔注入層との両方において、発光領域以外の部分の比抵抗が高くなっているので、発光領域以外の部分に流れる電流をさらに小さくすることができる。
【0017】
(5)本発明に係る電子機器は、開口部が発光領域より広い電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、電子機器が備えている電気光学装置は、発光領域内の有機機能層の厚みがほぼ均一である。したがって、画素内での発光の強弱のばらつきが抑えられ有機機能層の局部的な劣化が防止されるので、電子機器を長寿命化することができる。また、発光領域外の発光が防止されるので、解像度や描画品質の優れた画像の電子機器を提供することができる。
【0019】
(6)本発明に係る電気光学装置の製造方法は、第1電極を形成するステップと、前記第1電極に対応した開口部を有する絶縁膜を形成するステップと、前記絶縁膜上に、少なくとも前記開口部に対応した範囲を囲むようにバンクを形成するステップと、前記バンクで囲まれた前記範囲内に液滴を配置し有機機能層を形成するステップと、前記有機機能層に、前記開口部に対応した発光領域を規定するステップと、前記有機機能層を覆う第2電極を形成するステップと、を含み、前記開口部は、前記発光領域より広く形成されていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、電極の開口部が発光領域より広いので、開口部を囲むバンク内に形成される有機機能層の領域は発光領域よりも広い。このため、層の厚みがばらつく有機機能層の周縁部を発光領域外に配置することができる。したがって、発光領域内の有機機能層の厚みをほぼ均一にすることができる。
【0021】
(7)この電気光学装置の製造方法では、前記バンクは、複数の前記開口部に対応した前記範囲を囲むように形成されていてもよい。
【0022】
これによれば、有機機能層は複数の開口部を囲むバンク内に形成されるので、有機機能層形成領域はより広くなる。このため、層の厚みのほぼ均一な有機機能層の中央部をより広くすることができる。したがって、発光領域内の有機機能層の厚みをより均一にすることができる。また、有機機能層の中央部に複数の発光領域を配置するので、これら複数の発光領域で有機機能層の厚みをほぼ均一にすることができる。このことにより、画素間での発光の強弱のばらつきを抑えることができる。
【0023】
(8)この電気光学装置の製造方法では、前記有機機能層は、前記発光領域以外の部分の比抵抗が、前記発光領域の部分の比抵抗より高くなっていてもよい。
【0024】
これによれば、有機機能層において、発光領域以外の部分の比抵抗が発光領域の部分の比抵抗より高くなっている。比抵抗の高い部分には電流がほとんど流れないので、発光領域以外の部分は発光に寄与しない。したがって、比抵抗の低い発光領域の部分のみを発光に寄与させることができる。
【0025】
(9)この電気光学装置の製造方法では、前記発光領域は、前記有機機能層に対して選択的に表面処理を施すことにより規定されていてもよい。
【0026】
これによれば、有機機能層を発光領域に対応する部分と発光領域に対応する部分以外に区分し、発光領域に対応する部分以外に選択的に表面処理を施す。有機機能層の表面処理が施された部分は比抵抗が変化するので、有機機能層の発光領域に対応する部分以外に対して選択的に表面処理を施すことにより、発光領域に対応する部分以外の比抵抗を変化させることができる。したがって、有機機能層に対して選択的に表面処理を施すことにより発光領域を規定することができる。
【0027】
(10)この電気光学装置の製造方法では、前記表面処理の方法は、紫外領域の光の照射であってもよい。
【0028】
これによれば、紫外領域の光をマスクで部分的に遮光することにより、有機機能層の特定の部分に対して選択的に紫外領域の光を照射することができる。有機機能層の紫外領域の光が照射された部分は比抵抗が変化するので、有機機能層の発光領域に対応する部分をマスクで遮光することにより、有機機能層の発光領域に対応する部分以外に対して選択的に表面処理を施し、発光領域に対応する部分以外の比抵抗を変化させることができる。また、紫外領域の光の照射によれば、基板単位で一括して選択的に表面処理を施すことができる。
【0029】
(11)この電気光学装置の製造方法では、前記有機機能層は正孔注入層を含んでいてもよい。
【0030】
これによれば、有機機能層は正孔注入層を含んでいる。正孔注入層材料は発光層材料よりも比抵抗が低い場合が多いため、正孔注入層に選択的に表面処理を施すことにより比抵抗をより大きく変化させることができる場合が多い。また、発光層と正孔注入層との両方に対して表面処理を施すことにより、発光層と正孔注入層との両方において、発光領域以外の部分の比抵抗を高くすることができるので、発光領域に対応する部分以外に流れる電流をさらに小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、縮尺は各部材ごとに異なる場合がある。
【0032】
(電気光学装置)
まず、本実施形態に係る電気光学装置の構成について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電気光学装置の概略構成を模式的に示す図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
【0033】
本実施形態に係る電気光学装置10は、図1および図2に示すように、複数の第1電極12と、絶縁膜14と、バンク16と、有機機能層18と、第2電極20と、を備えている。
【0034】
複数の第1電極12のそれぞれは、基板11(図2参照)上に形成されている。本実施形態では、各構成要素の位置関係をわかり易くするため、8つの第1電極12が形成されている場合を例にとり説明する。第1電極12の形状は、例えば円形である。複数の第1電極12は、それぞれが図1のX軸方向に延びる2つの列を構成しており、2つの列のそれぞれにおいて等ピッチP1で配置されている。ピッチP1は、例えば、84.5μmである。第1電極12の一方の列と他方の列との列間ピッチP2は、例えば、84.5μmである。一方の列の第1電極12のそれぞれは、隣接する他方の列の第1電極12のそれぞれとX軸方向に半ピッチずれるように配置されている。
【0035】
第1電極12は、透光性導電材料からなる。第1電極12の材料は、例えばITO(Indium Tin Oxide)である。第1電極12は、陽極であり、電気光学装置10の画素電極である。基板11は、本実施形態では、透明な材料からなる。基板11の材料は、例えば、ガラスである。基板11の材料は、プラスチックであってもよい。基板11と第1電極12との間には、図示しないが、走査線、信号線、保持容量、駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)等を含む回路素子部が設けられている。第1電極12は、図示しないが、層間絶縁膜のコンタクトホールを介してTFTに接続されている。
【0036】
絶縁膜14は、図2に示すように、基板11と第1電極12の一部分とを覆うように形成されている。絶縁膜14は、第1電極12のそれぞれに対応する開口部14aを有している。開口部14aの形状は、例えば円形である。開口部14aは、第1電極12のそれぞれに対応して配置されている。すなわち、図1のX軸方向に一列に等しいピッチP1で配列された4つの開口部14aが、列間ピッチP2で2列配置されている。開口部14aのそれぞれは、第1電極12のそれぞれの領域よりも小さい範囲で、できるだけ大きいことが好ましい。開口部14aの直径D1は、後述する発光領域18eの直径D2が40μmである場合は、50μm以上であることが好ましい。開口部14aの直径D1は、例えば、75μmである。絶縁膜14の膜厚は、50nm〜300nmの範囲が好ましい。絶縁膜14の膜厚が50nm〜300nmの範囲であると、絶縁膜14の成膜時間が長くなることと、開口部14aを形成するためのエッチングの加工精度の低下とを避けることができる。絶縁膜14の材料は、親液性を有し成膜およびエッチングが容易な材料であれば特に限定されない。絶縁膜14の材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、等である。
【0037】
バンク16は、絶縁膜14上に形成されている。バンク16は、本実施形態では、絶縁膜14のすべての開口部14aに対応する範囲を囲んでいる。バンク16の形状は、例えば、角部が丸みを帯びた四角形である。バンク16の膜厚は、バンク16内に液滴配置により形成される有機機能層18の機能液が溢れない撥液性を発揮し、バンク16上に形成される第2電極20の断線が起きない範囲であればよい。バンク16の膜厚は、例えば、1μm〜3μmである。バンク16は、少なくとも上面が撥液性である。バンク16は、例えば、感光性のアクリル、ポリイミド、等の樹脂材料からなる。なお、バンク16と絶縁膜14との境界と、開口部14aと、の間の距離は、X軸方向には3mm以上であることが好ましい。また、Y軸方向には50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0038】
有機機能層18は、バンク16内に形成されており、絶縁膜14の開口部14aのそれぞれに対応する位置にそれぞれの発光領域18eを有している。発光領域18eの直径D2は、開口部14aの直径D1より小さい。すなわち、開口部14aのそれぞれは、発光領域18eより広く形成されている。発光領域18eの直径D2は、例えば、40μmである。有機機能層18において、発光領域18e以外の部分の比抵抗は、発光領域18eの部分の比抵抗より高くなっている。発光領域18e以外の部分は、比抵抗が高いため電流がほとんど流れないので、発光に寄与しない。したがって、比抵抗の低い発光領域18eのみを発光に寄与させることができる。
【0039】
有機機能層18は、本実施形態では、図2に示すように、正孔注入層18aと発光層18bとから構成されている。有機機能層18では、発光領域18e内において、正孔注入層18aから注入された正孔と、第2電極20から注入される電子が発光層18bで再結合し、発光が得られる。
【0040】
正孔注入層18aは、バンク16で囲まれた範囲内に、絶縁膜14と開口部14aにおいて絶縁膜14から露出した第1電極12とを覆うように、形成されている。正孔注入層18aの材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を用いることができる。
【0041】
発光層18bは、バンク16で囲まれた範囲内に、正孔注入層18a上に積層されている。発光層18bの材料は、例えば、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料にペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0042】
有機機能層18、すなわち正孔注入層18aおよび発光層18bは、液滴配置により形成される際、それぞれの開口部14aにおいて、絶縁膜14と第1電極12との段差があるため、層の厚みがばらついてしまう。さらに、正孔注入層18aおよび発光層18bは、撥液性を有するバンク16に囲まれる周縁部においても機能液の液滴が表面張力により盛り上がるため、層の厚みがばらついてしまう。ここで、絶縁膜14の開口部14aは正孔注入層18aおよび発光層18bの発光領域18eより広いので、開口部14aの段差により層の厚みがばらつく部分を発光領域18e外に配置することができる。また、バンク16は、すべての開口部14aに対応する範囲を囲んでいるので、バンク16に囲まれて層の厚みがばらつく正孔注入層18aおよび発光層18bの周縁部を、すべての発光領域18e外に配置することができる。したがって、層の厚みがほぼ均一な正孔注入層18aおよび発光層18bの中央部をより広くすることができ、これにより、発光領域18e内の正孔注入層18aおよび発光層18bの厚みをほぼ均一にすることができる。また、層の厚みがほぼ均一な正孔注入層18aおよび発光層18bの中央部に、すべての発光領域18eが配置されるので、これらすべての発光領域18eで層の厚みをほぼ均一にすることができる。このことにより、画素間での発光の強弱のばらつきを抑えることができる。
【0043】
有機機能層18上には、バンク16と有機機能層18との全体を覆うように、第2電極20が形成されている。第2電極20は、例えば、Ca層とAl層とが積層されて構成されている。第2電極20は、陰極であり、第1電極12と対になって有機機能層18に電流を流す役割を果たす。第2電極20は、封止層22に覆われている。封止層22は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、液状ガラス等からなり、さらにガラス、金属、樹脂フィルム、プラスチック、その他の封止部材を積層接着してもよい。
【0044】
本実施形態の電気光学装置10においては、有機機能層18から基板11側に発した光が基板11側に出射されるとともに、有機機能層18から第2電極20側に発した光が第2電極20により反射されて、基板11側に出射されるようになっている。
【0045】
(電気光学装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法について図を参照して説明する。図3および図4は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を説明する図である。
【0046】
本実施形態に係る電気光学装置10の製造方法は、図3(a)に示すように、まず基板11を用意し、基板11上に、図示しないが、走査線、信号線、保持容量、駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)等を含む回路素子部を設ける。
【0047】
次に、基板11上に第1電極12を形成する。第1電極12は、それぞれが図1のX軸方向に延びる2つの列を構成し、2つの列のそれぞれにおいて等ピッチP1で配置されるように形成する。ピッチP1は、例えば、84.5μmである。第1電極12の一方の列と他方の列との列間ピッチP2は、例えば、84.5μmである。一方の列の第1電極12のそれぞれは、隣接する他方の列の第1電極12のそれぞれとX軸方向に半ピッチずれるように配置する。第1電極12を形成する方法は、公知の方法を適用すればよい。第1電極12は、基板11上に設けられたTFTに接続されるようにする。
【0048】
次に、基板11と第1電極12とを覆うように、絶縁膜14を形成する。絶縁膜14を形成する方法は、公知の方法を適用すればよい。
【0049】
次に、図3(b)に示すように、絶縁膜14に、第1電極12のそれぞれに対応する開口部14aを形成する。開口部14aは、第1電極12のそれぞれに対応して配置されるように形成する。すなわち、開口部14aは、それぞれが図1のX軸方向に延びる2つの列を構成し、2つの列のそれぞれにおいて等ピッチP1で配置されるように形成する。開口部14aの直径D1は、例えば、75μmである。開口部14aを形成する方法は、例えば、フォトリソグラフィ法を適用する。
【0050】
次に、図3(c)に示すように、絶縁膜14上に、開口部14aのすべてに対応する範囲を囲むようにバンク16を形成する。バンク16を形成した後、第1電極12および絶縁膜14に対してO2プラズマ処理を施す。これにより、第1電極12および絶縁膜14の表面の親液性が増大する。続いて、バンク16に対してCF4プラズマ処理を施す。これにより、バンク16の撥液性が増大する。
【0051】
次に、バンク16で囲まれた範囲内に有機機能層18を形成する。まず、図3(d)に示すように、有機機能層18のうち正孔注入層18aを、絶縁膜14と開口部14aによって絶縁膜14から露出した第1電極12とを覆うように形成する。正孔注入層18aを形成する方法は、液滴吐出装置を用いた液滴吐出法を適用し、正孔注入層形成材料を含む機能液の液滴を第1電極12と絶縁膜14との上面に配置した後、乾燥処理および熱処理を行う。
【0052】
次に、有機機能層18のうち発光層18bを、図4(a)に示すように、バンク16で囲まれた範囲内に、正孔注入層18aを覆うように形成する。発光層18bを形成する方法は、液滴吐出装置を用いた液滴吐出法を適用し、発光層形成材料を含む機能液の液滴を正孔注入層18aの上面に配置した後、乾燥処理および熱処理を行う。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、有機機能層18に、開口部14aのそれぞれに対応するそれぞれの発光領域18eを規定する。有機機能層18に発光領域18eを規定する方法は、有機機能層18に対する選択的な表面処理を適用する。具体的には、遮光部24aを有するマスク24を通して紫外領域の光26を照射する。このとき、遮光部24aは、開口部14aのそれぞれに対応する位置にそれぞれ配置されている。遮光部24aの直径D2は、例えば、40μmである。紫外領域の光26は、例えば、紫外線光である。紫外領域の光26は、紫外領域の波長のレーザ光であってもよい。
【0054】
マスク24を通して紫外領域の光26を照射することにより、有機機能層18は、紫外領域の光26が照射された部分、すなわちマスク24の遮光部24aに対応する領域を除く部分において比抵抗が増大する。一方、有機機能層18において、マスク24の遮光部24aに対応する領域の比抵抗は変化しない。したがって、有機機能層18において、遮光部24aに対応する領域以外の部分の比抵抗は、遮光部24aに対応する領域の比抵抗より高くなる。有機機能層18の遮光部24aに対応する領域以外の部分は、比抵抗が高いために電流がほとんど流れないので、発光に寄与しない。したがって、比抵抗の低い遮光部24aに対応する領域のみを発光に寄与させることができる。このようにして、有機機能層18に、マスク24の遮光部24aに対応して発光領域18eが規定される。有機機能層18の発光領域18eは、絶縁膜14の開口部14aのそれぞれに対応する位置にそれぞれが配置される。発光領域18eの直径D2は、40μmである。したがって、開口部14aのそれぞれは、発光領域18eより広く形成されている。
【0055】
次に、図4(c)に示すように、バンク16と有機機能層18との全体を覆うように、第2電極20を形成する。第2電極20を形成する方法は、公知の方法を適用すればよいが、蒸着法を適用することが、熱による有機機能層18の損傷を防止できる点で好ましい。
【0056】
次に、第2電極20を覆うように、封止層22を形成する(図2参照)。以上により、電気光学装置10を製造することができる。
【0057】
(電子機器)
次に、本実施形態に係る電気光学装置を備えた電子機器について、図を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る電子機器を説明する図である。
【0058】
本実施形態の電子機器は、本実施形態に係る電気光学装置を露光ヘッド101として備えた画像形成装置80である。画像形成装置80は、露光ヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム41K、41C、41M、41Yにそれぞれ配置したことにより、露光装置を構成した、タンデム方式のものである。
【0059】
画像形成装置80は、駆動ローラ91と、従動ローラ92と、テンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図5中の矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっており、露光ヘッド101K、101C、101M、101Yに対して、所定の感度を有している。
【0060】
ここで、上記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これらの符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図5中の矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0061】
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させるコロナ帯電器42(K、C、M、Y)と、コロナ帯電器42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する露光ヘッド101(K、C、M、Y)とが設けられている。ここで、露光ヘッド101(K、C、M、Y)は、前述したようにヘッドケースによってSLアレイ(図示しない)とともに互いにアライメントされた状態で一体的に保持され、ラインヘッドモジュールとして用いられている。
【0062】
また、露光ヘッド101(K、C、M、Y)(ラインヘッドモジュール)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0063】
ここで、各露光ヘッド101(K、C、M、Y)は、それぞれのアレイ方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各露光ヘッド101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とがほぼ一致するように設定されている。
【0064】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0065】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Sに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体S上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0066】
なお、画像形成装置80は、図5に示すように、多数枚の記録媒体Sが積層保持されている給紙カセット63と、給紙カセット63から記録媒体Sを一枚ずつ給送するピックアップローラ64と、二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Sの供給タイミングを規定するゲートローラ対65と、中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写ローラ66と、二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード67と、をさらに備えている。
【0067】
画像形成装置80は、本実施形態に係る電気光学装置を露光ヘッド101として備えている。これにより、画像形成装置80の露光ヘッド101は、画素内での発光の強弱のばらつきが抑えられ有機機能層の局部的な劣化が防止されるので、長寿命である。また、画像形成装置80の露光ヘッド101は、発光領域のみが発光に寄与するので、発光領域外の発光が防止される。したがって、画像形成装置80は、解像度や描画品質の優れた画像を印刷することができる。
【0068】
なお、本発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
【0069】
上記実施形態では、第1電極12は、円形形状で、それぞれが図1のX軸方向に延びる2つの列を構成し、2つの列のそれぞれにおいて等ピッチP1で配置されているようにしたが、第1電極12の形状、数、配列、およびピッチはこれに限定されない。例えば、第1電極12の形状は四角形、楕円、等別の形状であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、バンク16は、すべての開口部14aに対応する範囲を囲んでいるようにしたが、これに限定されない。バンク16は、すべての開口部14aを複数の開口部の集合に分けそれぞれの集合の複数の開口部を囲んでいてもよいし、一つの開口部14aに対応する範囲だけを囲んでいてもよい。また、バンク16の形状は、角部が丸みを帯びた四角形としたが、円形、楕円、等別の形状であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、有機機能層18は、正孔注入層18aと発光層18bとから構成されているようにしたが、これに限定されない。有機機能層18は、発光層18bのみで構成されていてもよいし、発光層18bに隣接して形成された電子注入輸送などの機能を有する他の機能層をさらに含んでいてもよい。
【0072】
上記実施形態では、有機機能層18の発光領域18eは、正孔注入層18aと発光層18bとに規定されているようにしたが、これに限定されない。有機機能層18の発光領域18eは、正孔注入層18aのみに規定されていてもよい。この場合は、有機機能層18を形成するステップにおいて、発光層18bを形成する前に、遮光部24aを有するマスク24を通して紫外領域の光26を正孔注入層18aに照射すればよい。これにより、正孔注入層18aのみに発光領域18eが規定される。このとき、有機機能層18の発光領域18eのみに正孔注入層18aから正孔が注入されるので、発光領域18eのみが発光に寄与することができる。
【0073】
上記実施形態では、有機機能層18から基板11側に発した光が基板11側に出射される構成としたが、これに限定されない。例えば、第2電極20に透明な材料を用いることにより、第2電極20側から光を出射させるようにしてもよい。
【0074】
上記実施形態では、電子機器は、本実施形態に係る電気光学装置を露光ヘッド101として備えた画像形成装置80としたが、これに限定されない。電子機器は、例えば、図6に示すように、本実施形態に係る電気光学装置をディスプレイ202として備えた携帯電話200であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の概略構成を模式的に示す図。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を説明する図。
【図4】本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を説明する図。
【図5】本実施形態に係る電子機器を説明する図。
【図6】本実施形態に係る電子機器を説明する図。
【符号の説明】
【0076】
10…電気光学装置、11…基板、12…第1電極、14…絶縁膜、14a…開口部、16…バンク、18…有機機能層、18a…正孔注入層、18b…発光層、18e…発光領域、20…第2電極、22…封止層、24…マスク、24a…遮光部、26…光、41…感光体ドラム、42…コロナ帯電器、44…現像装置、45…一次転写ローラ、46…クリーニング装置、61…定着ローラ対、62…排紙ローラ対、63…給紙カセット、64…ピックアップローラ、65…ゲートローラ対、66…二次転写ローラ、67…クリーニングブレード、68…排紙トレイ、80…画像形成装置、90…中間転写ベルト、91…駆動ローラ、92…従動ローラ、93…テンションローラ、101…露光ヘッド、200…携帯電話、202…ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に対応した開口部を有する絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、少なくとも前記開口部に対応した範囲を囲むバンクと、
前記バンクに囲まれた前記範囲内に液滴配置により形成され、前記開口部に対応する発光領域を有する有機機能層と、
前記有機機能層を覆う第2電極と、を備え、
前記開口部は、前記発光領域より広いことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置であって、
前記バンクは、複数の前記開口部に対応した前記範囲を囲むように形成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置であって、
前記有機機能層は、前記発光領域以外の部分の比抵抗が、前記発光領域の部分の比抵抗より高くなっていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気光学装置であって、
前記有機機能層は正孔注入層を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えた電子機器。
【請求項6】
第1電極を形成するステップと、
前記第1電極に対応した開口部を有する絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に、少なくとも前記開口部に対応した範囲を囲むようにバンクを形成するステップと、
前記バンクで囲まれた前記範囲内に液滴を配置し有機機能層を形成するステップと、
前記有機機能層に、前記開口部に対応した発光領域を規定するステップと、
前記有機機能層を覆う第2電極を形成するステップと、を含み、
前記開口部は、前記発光領域より広く形成されていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記バンクは、複数の前記開口部に対応した前記範囲を囲むように形成されていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記有機機能層は、前記発光領域以外の部分の比抵抗が、前記発光領域の部分の比抵抗より高くなっていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記発光領域は、前記有機機能層に対して選択的に表面処理を施すことにより規定されることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記表面処理の方法は、紫外領域の光の照射であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記有機機能層は正孔注入層を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−109003(P2008−109003A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292187(P2006−292187)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】