電気光学装置および電子機器
【課題】1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保する。
【解決手段】電気光学装置100は、複数のブロックBに区分された複数のデータ線16と、複数の走査線120との各交差に対応して配置された複数の画素回路Uと、複数のブロックBと1対1に対応して配置される複数の信号線18と、複数のブロックBと1対1に対応して配置される複数の選択部MPと、各画素回路Uを水平走査期間Hの周期で駆動する駆動回路20とを備える。水平走査期間Hは、複数の選択期間Ts(データ出力期間Pk)と、書込期間PWRとを含む。駆動回路は、複数の選択期間Tsおよび書込期間PWRでは、当該水平走査期間Hで選択すべき走査線120に対応する複数の画素回路Uの各々の駆動トランジスタTDRにセット電流Isが流れるように電流生成手段を制御することで、複数の選択期間Tsおよび書込期間PWRにわたって、各駆動トランジスタTDRの移動度補償動作を行う。
【解決手段】電気光学装置100は、複数のブロックBに区分された複数のデータ線16と、複数の走査線120との各交差に対応して配置された複数の画素回路Uと、複数のブロックBと1対1に対応して配置される複数の信号線18と、複数のブロックBと1対1に対応して配置される複数の選択部MPと、各画素回路Uを水平走査期間Hの周期で駆動する駆動回路20とを備える。水平走査期間Hは、複数の選択期間Ts(データ出力期間Pk)と、書込期間PWRとを含む。駆動回路は、複数の選択期間Tsおよび書込期間PWRでは、当該水平走査期間Hで選択すべき走査線120に対応する複数の画素回路Uの各々の駆動トランジスタTDRにセット電流Isが流れるように電流生成手段を制御することで、複数の選択期間Tsおよび書込期間PWRにわたって、各駆動トランジスタTDRの移動度補償動作を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(ElectroLuminescent)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」という)素子などの電気光学素子を用いた電気光学装置が各種提案されている。このような電気光学装置を駆動する方式のひとつとしてマルチプレクサ方式が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1においては、複数のデータ線を3本ごとの複数のブロックに区分するとともに、ブロックを構成するデータ線の各々に対応する複数の画像信号線を設けている。1水平走査期間においては、各ブロックに属する3本のデータ線の各々に対して、当該ブロックに対応する画像信号線からR,G,Bの信号電圧が順番に供給されるという具合である。
【0003】
特許文献1の各画素は、駆動電流に応じた輝度で発光する発光素子と、駆動電流を制御する駆動トランジスタと、駆動トランジスタとデータ線との間に配置され、走査線に供給される信号に応じてオンオフが制御される選択トランジスタとを含んで構成される。特許文献1では、1水平走査期間内の期間であって信号書込期間よりも前の所定期間において、当該1水平走査期間で選択すべき走査線に対応する画素回路の選択トランジスタをオフ状態に設定したうえで、R,G,Bの信号電圧VsigR,VsigG,VsigBを各データ線に振り分ける。各データ線に供給された信号電圧は、当該データ線に付随する寄生容量等によって保持される。そして、その後の信号書込期間において、当該1水平走査期間で選択すべき走査線に対応する画素回路の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、各データ線に保持されている信号電圧を一斉に画素内に書き込む。これにより、各画素の駆動トランジスタには、当該画素に対応するデータ線に供給された信号電圧に応じた電流が流れて、負帰還による移動度補償が行われるという具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−304690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1においては、各データ線に対する信号電圧の書き込みが全て完了するのを待ってから、一斉に移動度補償動作を開始するので、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保することが困難であるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置(100)は、複数本を単位として複数のブロック(B)に区分された複数のデータ線(16)と、複数の走査線(120)との各交差に対応して配置される複数の画素回路(U)と、複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線(18)と、複数のブロックと1対1に対応して設けられるとともに、対応するブロックに属する各データ線と当該ブロックに対応する信号線との導通および非導通を切り替える複数の選択部(MP)と、複数の画素回路を単位期間(1水平走査期間H)の周期で駆動する駆動回路(20)と、を備え、複数の画素回路の各々は、高位側電源線(41)と低位側電源線(45)との間の経路に直列に接続される駆動トランジスタ(TDR)および発光素子(E)と、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子(C1)と、駆動トランジスタのゲートとデータ線との間に配置される選択トランジスタ(TSL)と、高位側電源線から、駆動トランジスタ、および、駆動トランジスタと発光素子との間に介在するノード(ND)を通って、発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流(Is)を生成する電流生成手段(C2,14)と、を具備し、単位期間は、複数の選択期間(Ts)と、複数の選択期間より後の書込期間(PWR)とを含み、複数の選択部の各々は、複数の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させ、駆動回路は、複数の選択期間では、各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき走査線との各交差に対応する画素回路の指定階調(D)に応じたデータ電位(DT)を順番に出力するとともに、当該単位期間にて選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタをオフ状態に設定し、書込期間においては、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定し、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、書込期間の終点における第1容量素子の両端間の電圧を駆動トランジスタの特性が反映された値に設定することを特徴とする。
【0007】
本発明では、駆動回路は、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、単位期間内(1水平走査期間内)の複数の選択期間および書込期間にわたって、各駆動トランジスタの移動度補償動作を行う。すなわち、本発明によれば、従来のように、複数の選択期間においては移動度補償動作が行われない態様に比べて、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保できるという利点がある。
【0008】
本発明に係る電気光学装置の態様として、各選択部は、単位期間内の最初の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、当該最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位に設定する態様であってもよい。
【0009】
ここで、各画素回路の駆動トランジスタのゲートと、当該画素回路に対応するデータ線との間には寄生容量が介在するので、駆動トランジスタのゲートが電気的にフローティング状態の下で、データ線にデータ電位が書き込まれると、駆動トランジスタのゲートの電位は、データ線の電位に連動して変化する。このとき、駆動トランジスタのソースの電位も、ゲートの電位に連動して変化する。したがって、上述の各選択期間において、データ線にデータ電位が書き込まれると、当該データ線に対応する画素回路を流れるセット電流の値も変化する。これにより、移動度補償の条件が変化するという具合である。上述の態様では、各選択部は、単位期間内の最初の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位に設定する。つまり、当該ブロックに属する各データ線の電位の変化量を揃えることで、各画素回路を流れるセット電流の変化量を揃えることができる。したがって、最初の選択期間における移動度補償の条件を画素回路間で揃えることができるという利点がある。
【0010】
なお、各選択期間におけるデータ線の電位の変化量が大きいほど、当該データ線に対応する画素回路を流れるセット電流の変化量も大きくなり、移動度補償の条件も大きく変動する。上述の態様では、最初の選択期間において、当該ブロックに属する各データ線の電位は、初期化電位よりも大きい電位(最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位)に設定されるので、各データ線の電位が、当該データ線にデータ電位が書き込まれるまでの間、初期化電位に設定される態様に比べて、第2番目以降の各選択期間におけるデータ線の電位の変動量を抑制できる。すなわち、各画素回路における移動度補償の条件が大きく変動することを抑制できるという利点もある。
【0011】
本発明に係る電気光学装置の態様として、単位期間は、複数の選択期間よりも前のセット期間(PS)を含み、駆動回路は、セット期間においては、各データ線の電位を初期化電位(VINI)に設定し、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、駆動トランジスタのゲートの電位を初期化電位に設定する一方、一定の大きさのセット電流が駆動トランジスタを流れるように電流生成手段を制御することで、第1容量素子の両端間の電圧を、当該セット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する態様であってもよい。
【0012】
例えば上述の特許文献1においては、複数の選択期間の直前における駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧は、当該駆動トランジスタの閾値電圧に設定されている。特許文献1では、駆動回路は、複数の選択期間よりも前の期間(補償期間)において、駆動トランジスタのゲートの電位を所定の値に維持したまま駆動トランジスタに電流を流すことで、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を閾値電圧に漸近させていくが、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧が閾値電圧に近づくにつれて駆動トランジスタを流れる電流は微小な値となり、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧の時間変化率も非常に小さくなる。したがって、駆動トランジスタに流れる電流の値が確実にゼロになるまでには(駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧が確実に閾値電圧に到達するまでには)、非常に長い時間を要する。これに対して、本発明では、複数の選択期間よりも前のセット期間において、駆動回路は、駆動トランジスタのゲートの電位を初期化電位に設定するとともに、一定の大きさのセット電流が駆動トランジスタを流れるように電流生成手段を制御することで、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧(第1容量素子の両端間の電圧)を、当該セット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する。これにより、複数の選択期間の直前における駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を所望の値に設定するのに要する時間長を、特許文献1に比べて大幅に短くできるという利点がある。
【0013】
本発明に係る電気光学装置の態様として、電流生成手段は、第1電極(L1)と第2電極(L2)とを含む第2容量素子(C2)と、給電線(14)とを備え、第1電極はノードに接続される一方、第2電極は給電線に接続され、駆動回路は、各単位期間内のセット期間、複数の選択期間、および、書込期間では、給電線に出力する電位を経時的に変化させる態様であってもよい。この態様においては、セット電流は、給電線に出力される電位の時間変化率に応じた値となる。例えば給電線に出力される電位が一定の時間変化率で直線的に変化するものであれば、セット電流の値は一定となり、第1容量素子の両端間の電圧は、そのセット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定される。この態様によれば、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を所望の値に調整し易いという利点がある。
【0014】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。本発明に係る電子機器としてはパーソナルコンピュータや携帯電話機が例示される。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(光ヘッド)としても本発明の発光装置が適用される。
【0015】
本発明は、単位期間の周期で電気光学装置を駆動する方法としても特定される。本発明に係る駆動方法は、複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、を備え、複数の画素回路の各々は、高位側電源線と低位側電源線との間に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、高位側電源線から、駆動トランジスタ、および、駆動トランジスタと発光素子との間に介在するノードを通って、発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備する電気光学装置を単位期間の周期で駆動する方法であって、単位期間は、複数の選択期間と、複数の選択期間より後の書込期間とを含み、複数の選択期間では、各ブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させる一方、各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき走査線との各交差に対応する画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力することで、各データ線にデータ電位を書き込み、書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々に対して、当該画素回路に対応するデータ線に書き込まれたデータ電位を供給し、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、書込期間の終点における第1容量素子の両端間の電圧を駆動トランジスタの特性が反映された値に設定することを特徴とする。
以上の駆動方法によっても本発明に係る電気光学装置と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。
【図2】選択部の回路図である。
【図3】画素回路の回路図である。
【図4】画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】初期化期間における画素回路の動作を示す図である。
【図6】セット期間における画素回路の動作を示す図である。
【図7】データ出力期間における画素回路の動作を示す図である。
【図8】データ出力期間における画素回路の動作を示す図である。
【図9】書込期間における画素回路の動作を示す図である。
【図10】発光期間における画素回路の動作を示す図である。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<A:実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置100の構成を示すブロック図である。この電気光学装置100は、画像を表示するための手段として各種の電子機器に採用される装置である。図1に示すように、電気光学装置100は、複数の画素回路Uが行列状に配列された素子部10を有する。素子部10には、X方向に延在するm組の配線群12と、配線群12と対をなしてX方向に延在するm本のランプ給電線14と、X方向に交差するY方向に延在する9n本のデータ線16とが形成される(m,nは自然数)。複数の画素回路Uは、配線群12およびランプ給電線14の対とデータ線16との交差に配置されて縦m行×横9n列の行列状に配列される。また、本実施形態においては、9n本のデータ線16は、相隣接する9本を単位としてn個のブロックB(B[1],B2,・・・B[n])に区分される。もっとも、各ブロックB内のデータ線16の本数(データ線16の区分の単位)は9本に限定されず、2本以上の任意の本数に設定され得る。
【0018】
図1に示すように、電気光学装置100は、各画素回路Uを駆動する駆動回路20と、n個のブロックB[1]〜B[n]と1対1に対応して設けられるn本の信号線18と、n個のブロックB[1]〜B[n]と1対1に対応して配置されるとともに、対応するブロックBに属する各データ線16と当該ブロックBに対応する信号線18との導通および非導通を切り替えるn個の選択部MP(MP[1]〜MP[n])と、制御回路30とをさらに備える。図1に示すように、駆動回路20は、走査線駆動回路21と、信号線駆動回路23と、電位生成回路25と、後述のデータ線初期化部(図1では不図示)とを含んで構成される。駆動回路20は、例えば複数の集積回路に分散して実装される。ただし、駆動回路20の少なくとも一部は、画素回路Uとともに基板上に形成された薄膜トランジスタで構成され得る。
【0019】
制御回路30は、電気光学装置100の動作を規定する信号を駆動回路20や各選択部MP[1]〜MP[n]へ出力する。本実施形態では、制御回路30は、各選択部MP[1]〜MP[n]の動作を規定する選択信号SEL1〜SEL9を各選択部MP[1]〜MP[n]へ出力する。また、制御回路30は、各画素回路Uの指定階調を示す階調データDやクロック信号などの制御信号(不図示)を信号線駆動回路23へ出力する。さらに、制御回路30は、走査線駆動回路21や電位生成回路25に対してもクロック信号などの制御信号(不図示)を出力する。
【0020】
走査線駆動回路21は、各垂直走査期間内のm個の水平走査期間H(H[1]〜H[m])の各々において複数の画素回路Uを行単位で順次に選択する手段である。信号線駆動回路23は、制御回路30が出力する各画素回路Uの階調データDからn相の階調信号VD[1]〜VD[n]を生成して各信号線18へ並列に出力する。例えば第j番目(1≦j≦n)のブロックB[j]に対応する信号線18へ出力される階調信号VD[j]は、当該ブロックB[j]に属する9列分のデータ線16と、走査線駆動回路21によって選択される行との各交差に対応する9つの画素回路Uの各々の階調データDに応じたデータ電位DTが時分割で出力される電圧信号である。
【0021】
各選択部MP[1]〜MP[n]は、当該選択部MPに対応するブロックBに属する9本のデータ線16に対して、当該ブロックBに対応する信号線18に出力される階調信号VDを分配する手段として機能する。図2は、選択部MPの回路図である。図2においては、第j番目のブロックB[j]に対応する第j番目の選択部MP[j]のみが代表的に例示されているが、他の選択部MPの構成も同様である。図2に示すように、選択部MP[j]は、当該選択部MP[j]に対応するブロックB[j]内のデータ線16の本数に相当する9個のスイッチSW(SW_1〜SW_9)を含む。選択部MP[j]のスイッチSW_k(k=1〜9)は、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16と第j列目の信号線18の出力端との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。n個の選択部MP[1]〜Mp[n]には制御回路30から9系統の選択信号SEL1〜SEL9が共通に供給される。選択信号SELk(k=1〜9)は、選択部MP[1]〜MP[n]の各々におけるスイッチSW_kに共通に供給されて開閉を制御する。
【0022】
再び図1に戻って説明を続ける。図1に示すように、電位生成回路25は、電源の高位側の電位VELHと、リセット用の電位VELLと、電源の低位側の電位VCTと、ランプ電位Vrmpと、初期化電位VINIとを生成する。電位VELHは、図3に示す給電線41へ供給される。給電線41は、各画素回路Uに共通に接続される。電位VELLは、図3に示す給電線43へ供給される。給電線43は、各画素回路Uに共通に接続される。電位VCTは、図3に示す給電線45へ供給される。給電線45は、各画素回路Uに共通に接続される。初期化電位VINIは、図3に示す初期化線47へ供給される。また、電位生成回路25は、各ランプ給電線14に対してランプ電位Vrmpを個別に出力する。ここでは、第i行目のランプ給電線14に出力されるランプ電位をVrmp[i]と表記する。
【0023】
図3は、画素回路Uの回路図である。図3においては、第i行(1≦i≦m)に属する第j番目のブロックB[j]内の第k列目に位置する1個の画素回路Uのみが代表的に図示されている。図3に示すように、画素回路Uは、発光素子Eと、駆動トランジスタTDRと、第1容量素子C1と、第2容量素子C2と、選択トランジスタTSLと、電源切替用のトランジスタTHおよびTLとを含んで構成される。図1において1本の直線として図示された配線群12は、図3に示すように、走査線120と制御線122と制御線124とを含んで構成される。また、各データ線16には容量Csが付随する。
【0024】
駆動トランジスタTDRおよび発光素子Eは、給電線41および給電線43の各々と、給電線45との間の経路に直列に接続される。発光素子Eは、相対向する陽極と陰極との間に有機EL材料の発光層を介在させたOLED素子であり、駆動トランジスタTDRによって生成される駆動電流の値に応じた輝度で発光する。発光素子Eの陰極は給電線45に接続される。
【0025】
駆動トランジスタTDRは、Nチャネル型の薄膜トランジスタであり、自身のゲートの電位VGとソースの電位VSとの差分の電圧VGS(=VG−VS)に応じた電流値の駆動電流を生成する。駆動トランジスタTDRのソースは発光素子Eの陽極に接続される。また、駆動トランジスタTDRのドレインと給電線41との間にはNチャネル型のトランジスタTHが配置され、駆動トランジスタTDRのドレインと給電線43との間にはNチャネル型のトランジスタTLが配置される。トランジスタTHのゲートは制御線122に接続され、制御線122に出力される制御信号GVH[i]に応じてオンオフが制御される。一方、トランジスタTLのゲートは制御線124に接続され、制御線124に出力される制御信号GVL[i]に応じてオンオフが制御される。本実施形態では、トランジスタTHとトランジスタTLとは相補的に動作する。より具体的には、トランジスタTHがオン状態のときは、トランジスタTLはオフ状態となり、トランジスタTHがオフ状態のときは、トランジスタTLはオン状態になるという具合である。
【0026】
駆動トランジスタTDRのゲートとソースとの間には第1容量素子C1が介在する。また、給電線41および給電線43の各々と給電線45とを結ぶ経路上における駆動トランジスタTDRと発光素子Eとの間に介在するノードND(駆動トランジスタTDRのソースに相当)と、第i行のランプ給電線14との間には第2容量素子C2が介在する。第2容量素子C2は、ノードNDに接続される第1電極L1と、第i行のランプ給電線14に接続される第2電極L2とを含んで構成される。本実施形態では、第2容量素子C2およびランプ給電線14は、後述のセット電流Isを生成するための電流生成手段として機能する。
【0027】
駆動トランジスタTDRのゲートとデータ線16との間には選択トランジスタTSLが配置される。選択トランジスタTSLは、例えばNチャネル型のトランジスタ(薄膜トランジスタ)が好適に採用される。第i行に属するn個の画素回路Uの各々の選択トランジスタTSLのゲートは第i行の走査線120に対して共通に接続される。
【0028】
また、本実施形態の電気光学装置100は、各データ線16の電位を初期化するためのデータ線初期化部50をさらに備える。図3に示すように、データ線初期化部50は、9n本のデータ線16と初期化線47との間に配置されるとともに、9n本のデータ線16と1対1に対応する複数(9n個)の初期化用トランジスタTinを含んで構成される。9n個の初期化用トランジスタTinの各々のゲートには、初期化信号GINIが共通に供給される。
【0029】
図4は、本実施形態に係る電気光学装置100の動作を示すタイミングチャートである。図4においては、第i番目の水平走査期間H[i]のみしか例示していないが、各水平走査期間H[1]〜H[m]の各々は、初期化期間PRSと、初期化期間PRSよりも後のセット期間PSと、セット期間PSよりも後のデータ出力期間Pkと、データ出力期間Pkよりも後の書込期間PWRとを含んで構成される。ある垂直走査期間における第i番目の水平走査期間H[i]が終了してから、次の垂直走査期間における第i番目の水平走査期間H[i]が開始されるまでの期間は発光期間PDRとして設定される。
【0030】
図1の走査線駆動回路21は、走査信号GWR[1]〜GWR[m]を生成して各走査線120へ出力する。図4に示すように、第i行の走査線120に出力される走査信号GWR[i]は、水平走査期間H[i]内の初期化期間PRS、セット期間PS、および、書込期間PWRにてアクティブレベル(ハイレベル)に設定される。ここで、「第i行の走査線120が選択される」とは、水平走査期間H[i]内の書込期間PWRにおいて走査信号GWR[i]がハイレベルに設定されることを意味する。また、走査線駆動回路21は、制御信号GVH[1]〜GVH[m]と、制御信号GVL[1]〜GVL[m]と、初期化信号GINIとを生成して出力する。制御信号GVH[i]は第i行の制御線122に供給され、制御信号GVL[i]は第i行の制御線124に供給される。さらに、初期化信号GINIは、9n個の初期化用トランジスタTinの各々のゲートへ共通に供給される。
【0031】
図1の信号線駆動回路23は、各水平走査期間H内のデータ出力期間Pkにおいて、各信号線18に対して、当該信号線18に対応するブロックBに属する各データ線16と、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120との各交差に対応する画素回路Uの指定階調を時分割で指定する階調信号VDを出力する。このとき、選択部MP[1]〜MP[n]は、当該選択部MPに対応するブロックBに属する各データ線16を順番に選択して当該ブロックBに対応する信号線18に導通させる。
【0032】
図4に示すように、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内のデータ出力期間Pkは、複数(9個)の選択期間Ts1〜Ts9で構成される。第j番目のブロックB[j]に着目すると、当該ブロックB[j]に対応する信号線18に出力される階調信号VD[j]は、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内の9個の選択期間Ts1〜Ts9において、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120と、ブロックB[j]に属する各データ線16との各交差に対応する9個の画素回路Uの各々の階調データDに応じたデータ電位DT(DT_1〜DT_9)に順番に設定される。より具体的には、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内の第k番目(1≦k≦9)の選択期間Tskにおいて、ブロックB[j]に対応する信号線18に出力される階調信号VD[j]は、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120と、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_kに設定されるという具合である。他の信号線18に出力される階調信号VDについても同様である。
【0033】
また、図4に示すように、選択信号SEL1〜SEL9は、各水平走査期間H内の9個の選択期間Ts1〜Ts9において、順番にアクティブレベル(ハイレベル)に設定される。本実施形態では、最初の選択期間Ts1において、選択信号SEL1〜SEL9が一斉にハイレベルに設定されるが、この詳細な内容については後述する。いま、kが1以外の数である場合を想定すると、選択信号SELk(k=2〜9)は、最初の選択期間Ts1だけでなく、第k番目の選択期間Tskにおいてもハイレベルに設定される。当該選択期間Tskにて選択信号SELkがハイレベルに遷移すると、階調信号VD[j]として設定されたデータ電位DT_kが、選択部MP[j]のスイッチSW_kを介してブロックB[j]内の第k列目のデータ線16に供給されるという具合である。以上のように、各水平走査期間H内のデータ出力期間Pkにおいて、各データ線16の電位は、当該水平走査期間Hにて選択される走査線120と当該データ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DTに設定される。
【0034】
以下では、第i行に属する第j番目のブロックB[j]内の第k列目の画素回路Uの動作を、初期化期間PRSと、セット期間PSと、データ出力期間Pkと、書込期間PWRと、発光期間PDRとに区分して説明する。なお、以下の説明においては、kは1以外の数であるものとする。
【0035】
(a)初期化期間PRS
図4に示すように、初期化期間PRSが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、初期化信号GINIをアクティブレベル(ハイレベル)に設定する。したがって、図5に示すように、初期用トランジスタTINはオン状態に設定される。各データ線16は、オン状態の初期化用トランジスタTINを介して初期化線47に導通するので、各データ線16の電位は初期化電位VINIに設定される。また、このとき、各選択部MP[j]のスイッチSW_1〜SW_9はオフ状態に設定されるので、各ブロックB内の各データ線16と、当該ブロックBに対応する信号線18とは非導通となる。
【0036】
また、図4に示すように、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]および制御信号GVL[i]をアクティブレベル(ハイレベル)に設定する一方、制御信号GVH[i]を非アクティブレベル(ローレベル)に設定する。したがって、図5に示すように、選択トランジスタTSLおよびトランジスタTLはオン状態に設定される一方、トランジスタTHはオフ状態に設定される。これにより、駆動トランジスタTDRのゲートは、オン状態の選択トランジスタTSLを介してデータ線16と導通するので、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは初期化電位VINIに設定される。また、駆動トランジスタTDRの一方の電極(ドレイン)は、オン状態のトランジスタTLを介して給電線43に導通する。本実施形態では、給電線43の電位VELLと初期化電位VINIとの差分の電圧は駆動トランジスタTDRの閾値電圧VTHを十分に上回るように設定されるので、駆動トランジスタTDRはオン状態となる。したがって、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは電位VELLに設定される。すなわち、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧VGS(第1容量素子C1の両端間の電圧)が初期化電位VINIと電位VELLとの差分の電圧(|VINI−VELL|)に初期化される。
【0037】
また、電位VELLは、当該電位VELLと給電線45の電位VCTとの電位差が発光素子Eの発光閾値電圧VTH_OLEDを十分に下回るような値に設定されるので、発光素子Eはオフ状態(非発光状態)に設定される。
【0038】
(b)セット期間
図4に示すように、セット期間PSが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、制御信号GVH[i]をハイレベルに設定する一方、制御信号GVL[i]をローレベルに設定する。その他の信号は初期化期間PRSと同じレベルに維持される。したがって、図6に示すように、トランジスタTHはオン状態に設定される一方、トランジスタTLはオフ状態に設定される。これにより、給電線41からの電流が駆動トランジスタTDRを流れ、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSが上昇を開始する。駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは初期化電位VINIに維持されているから、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は徐々に減少していく。このとき、駆動回路20(電位生成回路25)は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を経時的に変化させることで、給電線41からノードNDを通って、発光素子Eへ至る経路とは別の経路へ分岐して流れる所定の大きさのセット電流Isを生成する。より具体的には、以下のとおりである。
【0039】
図4に示すように、電位生成回路25は、水平走査期間H[i]が開始すると、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を基準電位Vrefから開始電位VX(>Vref)に設定する。そして、水平走査期間H[i]の始点から終点にかけて、ランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RX(RX=dVrmp/DT)で直線的に減少させる。本実施形態では、電位生成回路25は、水平走査期間H[i]の終点におけるランプ電位Vrmp[i]の値が基準電位Vrefに等しくなるように、ランプ電位Vrmp[i]を直線的に減少させる。第2容量素子C2の容量をCp、第2容量素子C2に蓄積される電荷をQと表記すると、セット期間PSにおいて、給電線41から、ノードNDおよび第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ流れるセット電流Isは、以下の式(1)で表される。
Is=dQ/dt=Cp×dVrmp/dt=Cp×dRX/dt ・・・(1)
【0040】
本実施形態では、ランプ電位Vrmpの時間変化率RXは一定であるから、セット電流Isの値は一定となる。したがって、セット期間PSにおいて、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1に漸近していく。このように、各駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが当該駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1に設定される。本実施形態では、電圧VGS1は、以下の式(2)で表される。
VGS1=VTH+Va ・・・(2)
【0041】
セット期間PSの終点において、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1にほぼ等しくなるから、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは初期化電位VINI(ゲートの電位VG)よりも電圧VGS1だけ低い電位VINI−VGS1に設定される。本実施形態では、この電位VINI−VGS1と給電線45の電位VCTとの電位差(発光素子Eの両端間の電圧)は、発光素子Eの発光閾値電圧Vth_elを下回るように設定される。すなわち、セット期間PSでも発光素子Eは非発光状態である。
【0042】
(c)データ出力期間Pk
図4に示すように、データ出力期間Pkが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、初期化信号GINIをローレベルに設定する。したがって、図7および図8に示すように、初期用トランジスタTINIはオフ状態に設定されるので、各データ線16と初期化線47とは非導通状態となる。また、図4に示すように、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をローレベルに設定する。したがって、図7および図8に示すように、選択トランジスタTSLはオフ状態となり、データ線16は電気的にフローティング状態となる。前述したように、各データ線16には容量Csが付随するので、データ電位DTの書き込みが行われるまでの間、各データ線16の電位は初期化電位VINIに保持される。
【0043】
図4に示すように、データ出力期間Pkにおいて、駆動回路20(電位生成回路25)は、セット期間PSと同様に、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させるから、ノードNDから第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ至る経路にはセット電流Isが流れ続ける。ここで、駆動トランジスタTDRの移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRを流れる電流の値は大きくなり、ソースの電位VSの上昇量も大きくなる。反対に、移動度μが小さいほど駆動トランジスタTDRを流れる電流の値は小さくなる。すなわち、移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)が大きくなる一方、移動度μが小さいほどゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)は小さくなる。これにより、画素回路Uごとの移動度μのバラツキが補償される。
【0044】
本実施形態では、図4に示すように、データ出力期間Pk内の最初の選択期間Ts1において、駆動回路(信号線駆動回路23)は、第j番目のブロックB[j]に対応する信号線18に出力する階調信号VD[j]の値を、第i行の走査線120と、ブロックB[j]内の第1列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_1に設定する。また、制御回路30は、選択信号SEL1〜SEL9を一斉にハイレベルに設定する。これにより、ブロックB[j]に属する各データ線16と、当該ブロックB[j]に対応する第j番目の信号線18とが一斉に導通する。したがって、図7に示すように、ブロックB[j]内の各データ線16の電位は、初期化電位VINIからデータ電位DT_1(>VINI)に変化する。
【0045】
ここで、駆動トランジスタTDRのゲートとデータ線16との間には寄生容量(不図示)が介在するので、データ線16の電位が初期化電位VINIからデータ電位DT_1に変化すると、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、データ線16の電位に連動して変化する。このとき、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSもゲートの電位VGに連動して変化するので、第2容量素子C2の両端間の電圧が変化して、セット電流Isの値が変化する。これにより、移動度補償の条件が変化する。前述したように、本実施形態では、最初の選択期間TS1では、ブロックB[j]内の各データ線と、当該ブロックB[j]に対応する信号線18とを一斉に導通させることで、当該ブロックB[j]に属する各データ線16の電位をデータ電位DT_1に設定するので、当該ブロックB[j]に属する各データ線16の電位の変化を揃えることができる。すなわち、当該ブロックB[j]内の各画素回路Uを流れるセット電流Isの変化量を揃えることができるので、最初の選択期間Ts1における移動度補償の条件を画素回路U間で揃えることができるという利点がある。
【0046】
その後、データ出力期間Pk内の第k番目の選択期間Tskが開始すると、駆動回路(信号線駆動回路23)は、ブロックB[j]に対応する信号線18に出力する階調信号VD[j]の値を、第i行の走査線120と、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_kに設定する。このとき、制御回路30は、選択信号SELkをハイレベルに設定するので、選択部MP[j]のスイッチSW_kはオン状態に設定され、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16と、当該ブロックB[j]に対応する信号線18とが導通する。したがって、図8に示すように、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16の電位は、最初の選択期間TS1にて設定された電位DT_1から電位DT_kへと変化する。これにより、当該画素回路U(第i行に属するブロックB[j]内の第k列目に位置する画素回路U)を流れるセット電流Isの値も変化する。
【0047】
なお、第k番目の選択期間Tskが終了する直前において、制御回路30は、選択信号SELkをローレベルに設定する。これにより、スイッチSW_kはオフ状態となり、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16は電気的にフローティング状態となる。前述したように、データ線16には容量Csが付随するので、第k番目の選択期間Tskにて第k列目のデータ線16に書き込まれたデータ電位DT_kは、容量Csによって保持されるという具合である。
【0048】
ここで、各選択期間Tsにおけるデータ線16の電位の変化量が大きいほど、当該データ線16に対応する画素回路Uを流れるセット電流Isの変化量も大きくなり、移動度補償の条件も大きく変動する。前述したように、本実施形態では、最初の選択期間Ts1において、ブロックB[j]に属する各データ線16の電位は、初期化電位VINIよりも大きい電位DT_1に設定されるので、各データ線16の電位が、当該データ線16にデータ電位DTが書き込まれるまでの間、初期化電位VINIに設定される態様に比べて、第2番目以降の各選択期間Tsにおけるデータ線16の電位の変動量を抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、各画素回路Uにおける移動度補償の条件が大きく変動することを抑制できるという利点がある。
【0049】
(d)書込期間PWR
図4に示すように、書込期間PWRが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をハイレベルに設定する。したがって、図9に示すように、選択トランジスタTSLはオン状態に遷移するから、駆動トランジスタTDRのゲートはブロックB[j]内の第k列目のデータ線16に導通する。これにより、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGはデータ電位DT_kに設定され、当該データ電位DT_kに応じた電流Idsが駆動トランジスタTDRを流れる。当該電流Idsが駆動トランジスタTDRを流れることにより、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは経時的に上昇するから、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は経時的に減少する。
【0050】
このとき、駆動回路20(電位生成回路25)は、セット期間PSおよびデータ出力期間Pkと同様に、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させるから、ノードNDから第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ至る経路にはセット電流Isが流れ続ける。そうすると、駆動トランジスタTDRを流れる電流Idsは、ノードNDにおいて、第2容量素子C2へ向かって流れるセット電流Isと、第1容量素子C1へ向かって流れる電流Ic(Ids−Is)とに分岐する。データ電位DT_kに応じた電流Idsの値が大きいほど、第1容量素子C1へ流れ込む電流Icの値は大きくなり、結果として、駆動トランジスタTDRのソースの電位の上昇量(つまりゲート・ソース間の電圧の減少量)も大きくなる。
【0051】
また、前述したように、駆動トランジスタTDRの移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)が大きくなる一方、移動度μが小さいほどゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)は小さくなる。これにより、画素回路Uごとの移動度μのバラツキが補償される。このような移動度補償動作がデータ出力期間Pkおよび書込期間PWRにわたって実行され、書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧(第1容量素子C1の両端間の電圧)は、データ電位DT_kと駆動トランジスタTDRの特性(移動度μ)とを反映した値に設定される。書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧VGS2は、以下の式(3)で表される。
VGS2=VGS1+ΔV=VTH+Va+ΔV ・・・(3)
式(3)のΔVは、データ電位DT_kおよび駆動トランジスタTDRの特性(移動度μ)に応じた値となる。なお、書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは、発光素子Eの両端間の電圧が発光閾値電圧Vth_elを下回るような値に設定される。したがって、書込期間PWRにおいても発光素子Eは非発光状態となる。
【0052】
(e)発光期間PDR
図4に示すように、発光期間PDRが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をローレベルに設定する。したがって、図10に示すように、選択トランジスタTSLがオフ状態に遷移し、駆動トランジスタTDRのゲートは電気的にフローティング状態となる。また、駆動回路20(電位生成回路25)は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を一定の基準電位Vrefに設定するので、式(1)からも理解されるように、セット電流Isの値はゼロとなる。
【0053】
このとき、第1容量素子C1の両端間の電圧(駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧)は、書込期間PWRの終点における電圧VGS2に維持されるから、当該電圧VGS2に応じた電流Ielが駆動トランジスタTDRを流れてソースの電位VSは経時的に上昇する。
駆動トランジスタTDRのゲートは電気的なフローティング状態であるから、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGはソースの電位VSに連動して上昇する。そして、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧が書込期間PWRの終点にて設定された電圧VGS2に維持されたまま、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSが徐々に増加する。発光素子Eの両端間の電圧が発光閾値電圧Vth_elに到達すると、電流Ielが駆動電流として発光素子Eを流れる。発光素子Eは、駆動電流Ielに応じた輝度で発光する。
【0054】
いま、駆動トランジスタTDRが飽和領域で動作する場合を想定すると、駆動電流Ielは以下の式(4)の形で表現される。「β」は駆動トランジスタTDRの利得係数である。
Iel=(β/2)(VGS2−VTH)2 ・・・(4)
式(3)の代入によって式(4)は以下のように変形される。
Iel=(β/2)(VTH+Va+ΔV−VTH)2
=(β/2)(Va+ΔV)2
つまり、駆動電流Ielは、駆動トランジスタTDRの閾値電圧VTHには依存しないから、画素回路Uごとの閾値電圧VTHのバラツキに起因した輝度のムラは抑制される。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の駆動回路20は、1水平走査期間H内のデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)および書込期間PWRにおいて、当該水平走査期間Hで選択すべき走査線120に対応する複数の画素回路Uの各々の駆動トランジスタTDRにセット電流Isが流れるように各画素回路Uの第2容量素子C2の電荷量を制御することで、1水平走査期間H内のデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)および書込期間PWRにわたって、各駆動トランジスタTDRの移動度補償動作を行う。すなわち、本実施形態によれば、従来のようにデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)においては移動度補償動作が行われない態様に比べて、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保できるので、駆動トランジスタTDRの移動度μのバラツキに起因した輝度のムラを十分に抑制できるという利点がある。
【0056】
<B:変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0057】
(1)変形例1
上述の実施形態では、セット期間PSにおいて、駆動回路20は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を経時的に変化させることで(つまり第2容量素子C2の電荷量を経時的に変化させることで)、セット電流Isを生成しているが、これに限らず、第2容量素子C2およびランプ給電線14の代わりに、セット電流Isを生成するための定電流源が設けられる態様であってもよい。要するに、各画素回路Uは、セット電流Isを生成するための電流生成手段を備えていればよい。
【0058】
(2)変形例2
上述の各実施形態では、ランプ給電線14に出力される電位は、一定の時間変化率RXで直線的に減少しているが、これに限らず、ランプ給電線14に出力される電位の変化の態様は任意である。例えばランプ給電線14に出力される電位の波形が曲線状であってもよい。要するに、ランプ給電線14に出力される電位は、セット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるように、経時的に変化するものであればよい。
【0059】
(3)変形例3
上述の各実施形態では、初期化期間PRSにおいて、駆動回路20はランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させているが、これに限らず、初期化期間PRSにおけるランプ給電線14の電位は任意である。例えば、初期化期間PRSにおいて、駆動回路20は、ランプ給電線14に出力する電位を所定の大きさの電位に固定することもできる。
【0060】
(4)変形例4
発光素子Eは、OLED素子であってもよいし、無機発光ダイオードやLED(Light Emitting Diode)であってもよい。要は、電気エネルギーの供給(電界の印加や電流の供給)に応じて発光する総ての素子を本発明の発光素子として利用できる。
【0061】
<C:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図11は、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての電気光学装置100と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この電気光学装置100は発光素子EにOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0062】
図12に、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに電気光学装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0063】
図13に、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに電気光学装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置10に表示される。
【0064】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0065】
10……素子部、12……配線群、14……給電線、16……データ線、18……信号線、20……駆動回路、21……走査線駆動回路、23……データ線駆動回路、25……電位生成回路、30……制御回路、41,43,45……給電線、47……初期化線、50……データ線初期化部、100……電気光学装置、B……ブロック、C1……第1容量素子、C2……第2容量素子、E……発光素子、GINI……初期化信号、GVH,GVL……制御信号、GWR……走査信号、MP……選択部、ND……ノード、SEL……選択信号、SW……スイッチ、TDR……駆動トランジスタ、TSL……選択トランジスタ、TIN……初期化用トランジスタ、Vrmp……ランプ電位、U……画素回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(ElectroLuminescent)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」という)素子などの電気光学素子を用いた電気光学装置が各種提案されている。このような電気光学装置を駆動する方式のひとつとしてマルチプレクサ方式が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1においては、複数のデータ線を3本ごとの複数のブロックに区分するとともに、ブロックを構成するデータ線の各々に対応する複数の画像信号線を設けている。1水平走査期間においては、各ブロックに属する3本のデータ線の各々に対して、当該ブロックに対応する画像信号線からR,G,Bの信号電圧が順番に供給されるという具合である。
【0003】
特許文献1の各画素は、駆動電流に応じた輝度で発光する発光素子と、駆動電流を制御する駆動トランジスタと、駆動トランジスタとデータ線との間に配置され、走査線に供給される信号に応じてオンオフが制御される選択トランジスタとを含んで構成される。特許文献1では、1水平走査期間内の期間であって信号書込期間よりも前の所定期間において、当該1水平走査期間で選択すべき走査線に対応する画素回路の選択トランジスタをオフ状態に設定したうえで、R,G,Bの信号電圧VsigR,VsigG,VsigBを各データ線に振り分ける。各データ線に供給された信号電圧は、当該データ線に付随する寄生容量等によって保持される。そして、その後の信号書込期間において、当該1水平走査期間で選択すべき走査線に対応する画素回路の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、各データ線に保持されている信号電圧を一斉に画素内に書き込む。これにより、各画素の駆動トランジスタには、当該画素に対応するデータ線に供給された信号電圧に応じた電流が流れて、負帰還による移動度補償が行われるという具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−304690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1においては、各データ線に対する信号電圧の書き込みが全て完了するのを待ってから、一斉に移動度補償動作を開始するので、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保することが困難であるという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置(100)は、複数本を単位として複数のブロック(B)に区分された複数のデータ線(16)と、複数の走査線(120)との各交差に対応して配置される複数の画素回路(U)と、複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線(18)と、複数のブロックと1対1に対応して設けられるとともに、対応するブロックに属する各データ線と当該ブロックに対応する信号線との導通および非導通を切り替える複数の選択部(MP)と、複数の画素回路を単位期間(1水平走査期間H)の周期で駆動する駆動回路(20)と、を備え、複数の画素回路の各々は、高位側電源線(41)と低位側電源線(45)との間の経路に直列に接続される駆動トランジスタ(TDR)および発光素子(E)と、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子(C1)と、駆動トランジスタのゲートとデータ線との間に配置される選択トランジスタ(TSL)と、高位側電源線から、駆動トランジスタ、および、駆動トランジスタと発光素子との間に介在するノード(ND)を通って、発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流(Is)を生成する電流生成手段(C2,14)と、を具備し、単位期間は、複数の選択期間(Ts)と、複数の選択期間より後の書込期間(PWR)とを含み、複数の選択部の各々は、複数の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させ、駆動回路は、複数の選択期間では、各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき走査線との各交差に対応する画素回路の指定階調(D)に応じたデータ電位(DT)を順番に出力するとともに、当該単位期間にて選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタをオフ状態に設定し、書込期間においては、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定し、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、書込期間の終点における第1容量素子の両端間の電圧を駆動トランジスタの特性が反映された値に設定することを特徴とする。
【0007】
本発明では、駆動回路は、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、単位期間内(1水平走査期間内)の複数の選択期間および書込期間にわたって、各駆動トランジスタの移動度補償動作を行う。すなわち、本発明によれば、従来のように、複数の選択期間においては移動度補償動作が行われない態様に比べて、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保できるという利点がある。
【0008】
本発明に係る電気光学装置の態様として、各選択部は、単位期間内の最初の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、当該最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位に設定する態様であってもよい。
【0009】
ここで、各画素回路の駆動トランジスタのゲートと、当該画素回路に対応するデータ線との間には寄生容量が介在するので、駆動トランジスタのゲートが電気的にフローティング状態の下で、データ線にデータ電位が書き込まれると、駆動トランジスタのゲートの電位は、データ線の電位に連動して変化する。このとき、駆動トランジスタのソースの電位も、ゲートの電位に連動して変化する。したがって、上述の各選択期間において、データ線にデータ電位が書き込まれると、当該データ線に対応する画素回路を流れるセット電流の値も変化する。これにより、移動度補償の条件が変化するという具合である。上述の態様では、各選択部は、単位期間内の最初の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位に設定する。つまり、当該ブロックに属する各データ線の電位の変化量を揃えることで、各画素回路を流れるセット電流の変化量を揃えることができる。したがって、最初の選択期間における移動度補償の条件を画素回路間で揃えることができるという利点がある。
【0010】
なお、各選択期間におけるデータ線の電位の変化量が大きいほど、当該データ線に対応する画素回路を流れるセット電流の変化量も大きくなり、移動度補償の条件も大きく変動する。上述の態様では、最初の選択期間において、当該ブロックに属する各データ線の電位は、初期化電位よりも大きい電位(最初の選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力されるデータ電位)に設定されるので、各データ線の電位が、当該データ線にデータ電位が書き込まれるまでの間、初期化電位に設定される態様に比べて、第2番目以降の各選択期間におけるデータ線の電位の変動量を抑制できる。すなわち、各画素回路における移動度補償の条件が大きく変動することを抑制できるという利点もある。
【0011】
本発明に係る電気光学装置の態様として、単位期間は、複数の選択期間よりも前のセット期間(PS)を含み、駆動回路は、セット期間においては、各データ線の電位を初期化電位(VINI)に設定し、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、駆動トランジスタのゲートの電位を初期化電位に設定する一方、一定の大きさのセット電流が駆動トランジスタを流れるように電流生成手段を制御することで、第1容量素子の両端間の電圧を、当該セット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する態様であってもよい。
【0012】
例えば上述の特許文献1においては、複数の選択期間の直前における駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧は、当該駆動トランジスタの閾値電圧に設定されている。特許文献1では、駆動回路は、複数の選択期間よりも前の期間(補償期間)において、駆動トランジスタのゲートの電位を所定の値に維持したまま駆動トランジスタに電流を流すことで、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を閾値電圧に漸近させていくが、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧が閾値電圧に近づくにつれて駆動トランジスタを流れる電流は微小な値となり、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧の時間変化率も非常に小さくなる。したがって、駆動トランジスタに流れる電流の値が確実にゼロになるまでには(駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧が確実に閾値電圧に到達するまでには)、非常に長い時間を要する。これに対して、本発明では、複数の選択期間よりも前のセット期間において、駆動回路は、駆動トランジスタのゲートの電位を初期化電位に設定するとともに、一定の大きさのセット電流が駆動トランジスタを流れるように電流生成手段を制御することで、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧(第1容量素子の両端間の電圧)を、当該セット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する。これにより、複数の選択期間の直前における駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を所望の値に設定するのに要する時間長を、特許文献1に比べて大幅に短くできるという利点がある。
【0013】
本発明に係る電気光学装置の態様として、電流生成手段は、第1電極(L1)と第2電極(L2)とを含む第2容量素子(C2)と、給電線(14)とを備え、第1電極はノードに接続される一方、第2電極は給電線に接続され、駆動回路は、各単位期間内のセット期間、複数の選択期間、および、書込期間では、給電線に出力する電位を経時的に変化させる態様であってもよい。この態様においては、セット電流は、給電線に出力される電位の時間変化率に応じた値となる。例えば給電線に出力される電位が一定の時間変化率で直線的に変化するものであれば、セット電流の値は一定となり、第1容量素子の両端間の電圧は、そのセット電流が駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定される。この態様によれば、駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を所望の値に調整し易いという利点がある。
【0014】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。本発明に係る電子機器としてはパーソナルコンピュータや携帯電話機が例示される。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(光ヘッド)としても本発明の発光装置が適用される。
【0015】
本発明は、単位期間の周期で電気光学装置を駆動する方法としても特定される。本発明に係る駆動方法は、複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、を備え、複数の画素回路の各々は、高位側電源線と低位側電源線との間に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、高位側電源線から、駆動トランジスタ、および、駆動トランジスタと発光素子との間に介在するノードを通って、発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備する電気光学装置を単位期間の周期で駆動する方法であって、単位期間は、複数の選択期間と、複数の選択期間より後の書込期間とを含み、複数の選択期間では、各ブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させる一方、各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき走査線との各交差に対応する画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力することで、各データ線にデータ電位を書き込み、書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々に対して、当該画素回路に対応するデータ線に書き込まれたデータ電位を供給し、複数の選択期間および書込期間では、当該単位期間で選択すべき走査線に対応する複数の画素回路の各々の駆動トランジスタにセット電流が流れるように電流生成手段を制御することで、書込期間の終点における第1容量素子の両端間の電圧を駆動トランジスタの特性が反映された値に設定することを特徴とする。
以上の駆動方法によっても本発明に係る電気光学装置と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。
【図2】選択部の回路図である。
【図3】画素回路の回路図である。
【図4】画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】初期化期間における画素回路の動作を示す図である。
【図6】セット期間における画素回路の動作を示す図である。
【図7】データ出力期間における画素回路の動作を示す図である。
【図8】データ出力期間における画素回路の動作を示す図である。
【図9】書込期間における画素回路の動作を示す図である。
【図10】発光期間における画素回路の動作を示す図である。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<A:実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置100の構成を示すブロック図である。この電気光学装置100は、画像を表示するための手段として各種の電子機器に採用される装置である。図1に示すように、電気光学装置100は、複数の画素回路Uが行列状に配列された素子部10を有する。素子部10には、X方向に延在するm組の配線群12と、配線群12と対をなしてX方向に延在するm本のランプ給電線14と、X方向に交差するY方向に延在する9n本のデータ線16とが形成される(m,nは自然数)。複数の画素回路Uは、配線群12およびランプ給電線14の対とデータ線16との交差に配置されて縦m行×横9n列の行列状に配列される。また、本実施形態においては、9n本のデータ線16は、相隣接する9本を単位としてn個のブロックB(B[1],B2,・・・B[n])に区分される。もっとも、各ブロックB内のデータ線16の本数(データ線16の区分の単位)は9本に限定されず、2本以上の任意の本数に設定され得る。
【0018】
図1に示すように、電気光学装置100は、各画素回路Uを駆動する駆動回路20と、n個のブロックB[1]〜B[n]と1対1に対応して設けられるn本の信号線18と、n個のブロックB[1]〜B[n]と1対1に対応して配置されるとともに、対応するブロックBに属する各データ線16と当該ブロックBに対応する信号線18との導通および非導通を切り替えるn個の選択部MP(MP[1]〜MP[n])と、制御回路30とをさらに備える。図1に示すように、駆動回路20は、走査線駆動回路21と、信号線駆動回路23と、電位生成回路25と、後述のデータ線初期化部(図1では不図示)とを含んで構成される。駆動回路20は、例えば複数の集積回路に分散して実装される。ただし、駆動回路20の少なくとも一部は、画素回路Uとともに基板上に形成された薄膜トランジスタで構成され得る。
【0019】
制御回路30は、電気光学装置100の動作を規定する信号を駆動回路20や各選択部MP[1]〜MP[n]へ出力する。本実施形態では、制御回路30は、各選択部MP[1]〜MP[n]の動作を規定する選択信号SEL1〜SEL9を各選択部MP[1]〜MP[n]へ出力する。また、制御回路30は、各画素回路Uの指定階調を示す階調データDやクロック信号などの制御信号(不図示)を信号線駆動回路23へ出力する。さらに、制御回路30は、走査線駆動回路21や電位生成回路25に対してもクロック信号などの制御信号(不図示)を出力する。
【0020】
走査線駆動回路21は、各垂直走査期間内のm個の水平走査期間H(H[1]〜H[m])の各々において複数の画素回路Uを行単位で順次に選択する手段である。信号線駆動回路23は、制御回路30が出力する各画素回路Uの階調データDからn相の階調信号VD[1]〜VD[n]を生成して各信号線18へ並列に出力する。例えば第j番目(1≦j≦n)のブロックB[j]に対応する信号線18へ出力される階調信号VD[j]は、当該ブロックB[j]に属する9列分のデータ線16と、走査線駆動回路21によって選択される行との各交差に対応する9つの画素回路Uの各々の階調データDに応じたデータ電位DTが時分割で出力される電圧信号である。
【0021】
各選択部MP[1]〜MP[n]は、当該選択部MPに対応するブロックBに属する9本のデータ線16に対して、当該ブロックBに対応する信号線18に出力される階調信号VDを分配する手段として機能する。図2は、選択部MPの回路図である。図2においては、第j番目のブロックB[j]に対応する第j番目の選択部MP[j]のみが代表的に例示されているが、他の選択部MPの構成も同様である。図2に示すように、選択部MP[j]は、当該選択部MP[j]に対応するブロックB[j]内のデータ線16の本数に相当する9個のスイッチSW(SW_1〜SW_9)を含む。選択部MP[j]のスイッチSW_k(k=1〜9)は、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16と第j列目の信号線18の出力端との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。n個の選択部MP[1]〜Mp[n]には制御回路30から9系統の選択信号SEL1〜SEL9が共通に供給される。選択信号SELk(k=1〜9)は、選択部MP[1]〜MP[n]の各々におけるスイッチSW_kに共通に供給されて開閉を制御する。
【0022】
再び図1に戻って説明を続ける。図1に示すように、電位生成回路25は、電源の高位側の電位VELHと、リセット用の電位VELLと、電源の低位側の電位VCTと、ランプ電位Vrmpと、初期化電位VINIとを生成する。電位VELHは、図3に示す給電線41へ供給される。給電線41は、各画素回路Uに共通に接続される。電位VELLは、図3に示す給電線43へ供給される。給電線43は、各画素回路Uに共通に接続される。電位VCTは、図3に示す給電線45へ供給される。給電線45は、各画素回路Uに共通に接続される。初期化電位VINIは、図3に示す初期化線47へ供給される。また、電位生成回路25は、各ランプ給電線14に対してランプ電位Vrmpを個別に出力する。ここでは、第i行目のランプ給電線14に出力されるランプ電位をVrmp[i]と表記する。
【0023】
図3は、画素回路Uの回路図である。図3においては、第i行(1≦i≦m)に属する第j番目のブロックB[j]内の第k列目に位置する1個の画素回路Uのみが代表的に図示されている。図3に示すように、画素回路Uは、発光素子Eと、駆動トランジスタTDRと、第1容量素子C1と、第2容量素子C2と、選択トランジスタTSLと、電源切替用のトランジスタTHおよびTLとを含んで構成される。図1において1本の直線として図示された配線群12は、図3に示すように、走査線120と制御線122と制御線124とを含んで構成される。また、各データ線16には容量Csが付随する。
【0024】
駆動トランジスタTDRおよび発光素子Eは、給電線41および給電線43の各々と、給電線45との間の経路に直列に接続される。発光素子Eは、相対向する陽極と陰極との間に有機EL材料の発光層を介在させたOLED素子であり、駆動トランジスタTDRによって生成される駆動電流の値に応じた輝度で発光する。発光素子Eの陰極は給電線45に接続される。
【0025】
駆動トランジスタTDRは、Nチャネル型の薄膜トランジスタであり、自身のゲートの電位VGとソースの電位VSとの差分の電圧VGS(=VG−VS)に応じた電流値の駆動電流を生成する。駆動トランジスタTDRのソースは発光素子Eの陽極に接続される。また、駆動トランジスタTDRのドレインと給電線41との間にはNチャネル型のトランジスタTHが配置され、駆動トランジスタTDRのドレインと給電線43との間にはNチャネル型のトランジスタTLが配置される。トランジスタTHのゲートは制御線122に接続され、制御線122に出力される制御信号GVH[i]に応じてオンオフが制御される。一方、トランジスタTLのゲートは制御線124に接続され、制御線124に出力される制御信号GVL[i]に応じてオンオフが制御される。本実施形態では、トランジスタTHとトランジスタTLとは相補的に動作する。より具体的には、トランジスタTHがオン状態のときは、トランジスタTLはオフ状態となり、トランジスタTHがオフ状態のときは、トランジスタTLはオン状態になるという具合である。
【0026】
駆動トランジスタTDRのゲートとソースとの間には第1容量素子C1が介在する。また、給電線41および給電線43の各々と給電線45とを結ぶ経路上における駆動トランジスタTDRと発光素子Eとの間に介在するノードND(駆動トランジスタTDRのソースに相当)と、第i行のランプ給電線14との間には第2容量素子C2が介在する。第2容量素子C2は、ノードNDに接続される第1電極L1と、第i行のランプ給電線14に接続される第2電極L2とを含んで構成される。本実施形態では、第2容量素子C2およびランプ給電線14は、後述のセット電流Isを生成するための電流生成手段として機能する。
【0027】
駆動トランジスタTDRのゲートとデータ線16との間には選択トランジスタTSLが配置される。選択トランジスタTSLは、例えばNチャネル型のトランジスタ(薄膜トランジスタ)が好適に採用される。第i行に属するn個の画素回路Uの各々の選択トランジスタTSLのゲートは第i行の走査線120に対して共通に接続される。
【0028】
また、本実施形態の電気光学装置100は、各データ線16の電位を初期化するためのデータ線初期化部50をさらに備える。図3に示すように、データ線初期化部50は、9n本のデータ線16と初期化線47との間に配置されるとともに、9n本のデータ線16と1対1に対応する複数(9n個)の初期化用トランジスタTinを含んで構成される。9n個の初期化用トランジスタTinの各々のゲートには、初期化信号GINIが共通に供給される。
【0029】
図4は、本実施形態に係る電気光学装置100の動作を示すタイミングチャートである。図4においては、第i番目の水平走査期間H[i]のみしか例示していないが、各水平走査期間H[1]〜H[m]の各々は、初期化期間PRSと、初期化期間PRSよりも後のセット期間PSと、セット期間PSよりも後のデータ出力期間Pkと、データ出力期間Pkよりも後の書込期間PWRとを含んで構成される。ある垂直走査期間における第i番目の水平走査期間H[i]が終了してから、次の垂直走査期間における第i番目の水平走査期間H[i]が開始されるまでの期間は発光期間PDRとして設定される。
【0030】
図1の走査線駆動回路21は、走査信号GWR[1]〜GWR[m]を生成して各走査線120へ出力する。図4に示すように、第i行の走査線120に出力される走査信号GWR[i]は、水平走査期間H[i]内の初期化期間PRS、セット期間PS、および、書込期間PWRにてアクティブレベル(ハイレベル)に設定される。ここで、「第i行の走査線120が選択される」とは、水平走査期間H[i]内の書込期間PWRにおいて走査信号GWR[i]がハイレベルに設定されることを意味する。また、走査線駆動回路21は、制御信号GVH[1]〜GVH[m]と、制御信号GVL[1]〜GVL[m]と、初期化信号GINIとを生成して出力する。制御信号GVH[i]は第i行の制御線122に供給され、制御信号GVL[i]は第i行の制御線124に供給される。さらに、初期化信号GINIは、9n個の初期化用トランジスタTinの各々のゲートへ共通に供給される。
【0031】
図1の信号線駆動回路23は、各水平走査期間H内のデータ出力期間Pkにおいて、各信号線18に対して、当該信号線18に対応するブロックBに属する各データ線16と、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120との各交差に対応する画素回路Uの指定階調を時分割で指定する階調信号VDを出力する。このとき、選択部MP[1]〜MP[n]は、当該選択部MPに対応するブロックBに属する各データ線16を順番に選択して当該ブロックBに対応する信号線18に導通させる。
【0032】
図4に示すように、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内のデータ出力期間Pkは、複数(9個)の選択期間Ts1〜Ts9で構成される。第j番目のブロックB[j]に着目すると、当該ブロックB[j]に対応する信号線18に出力される階調信号VD[j]は、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内の9個の選択期間Ts1〜Ts9において、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120と、ブロックB[j]に属する各データ線16との各交差に対応する9個の画素回路Uの各々の階調データDに応じたデータ電位DT(DT_1〜DT_9)に順番に設定される。より具体的には、各水平走査期間H(H[1]〜H[m])内の第k番目(1≦k≦9)の選択期間Tskにおいて、ブロックB[j]に対応する信号線18に出力される階調信号VD[j]は、当該水平走査期間Hにて選択すべき走査線120と、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_kに設定されるという具合である。他の信号線18に出力される階調信号VDについても同様である。
【0033】
また、図4に示すように、選択信号SEL1〜SEL9は、各水平走査期間H内の9個の選択期間Ts1〜Ts9において、順番にアクティブレベル(ハイレベル)に設定される。本実施形態では、最初の選択期間Ts1において、選択信号SEL1〜SEL9が一斉にハイレベルに設定されるが、この詳細な内容については後述する。いま、kが1以外の数である場合を想定すると、選択信号SELk(k=2〜9)は、最初の選択期間Ts1だけでなく、第k番目の選択期間Tskにおいてもハイレベルに設定される。当該選択期間Tskにて選択信号SELkがハイレベルに遷移すると、階調信号VD[j]として設定されたデータ電位DT_kが、選択部MP[j]のスイッチSW_kを介してブロックB[j]内の第k列目のデータ線16に供給されるという具合である。以上のように、各水平走査期間H内のデータ出力期間Pkにおいて、各データ線16の電位は、当該水平走査期間Hにて選択される走査線120と当該データ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DTに設定される。
【0034】
以下では、第i行に属する第j番目のブロックB[j]内の第k列目の画素回路Uの動作を、初期化期間PRSと、セット期間PSと、データ出力期間Pkと、書込期間PWRと、発光期間PDRとに区分して説明する。なお、以下の説明においては、kは1以外の数であるものとする。
【0035】
(a)初期化期間PRS
図4に示すように、初期化期間PRSが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、初期化信号GINIをアクティブレベル(ハイレベル)に設定する。したがって、図5に示すように、初期用トランジスタTINはオン状態に設定される。各データ線16は、オン状態の初期化用トランジスタTINを介して初期化線47に導通するので、各データ線16の電位は初期化電位VINIに設定される。また、このとき、各選択部MP[j]のスイッチSW_1〜SW_9はオフ状態に設定されるので、各ブロックB内の各データ線16と、当該ブロックBに対応する信号線18とは非導通となる。
【0036】
また、図4に示すように、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]および制御信号GVL[i]をアクティブレベル(ハイレベル)に設定する一方、制御信号GVH[i]を非アクティブレベル(ローレベル)に設定する。したがって、図5に示すように、選択トランジスタTSLおよびトランジスタTLはオン状態に設定される一方、トランジスタTHはオフ状態に設定される。これにより、駆動トランジスタTDRのゲートは、オン状態の選択トランジスタTSLを介してデータ線16と導通するので、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは初期化電位VINIに設定される。また、駆動トランジスタTDRの一方の電極(ドレイン)は、オン状態のトランジスタTLを介して給電線43に導通する。本実施形態では、給電線43の電位VELLと初期化電位VINIとの差分の電圧は駆動トランジスタTDRの閾値電圧VTHを十分に上回るように設定されるので、駆動トランジスタTDRはオン状態となる。したがって、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは電位VELLに設定される。すなわち、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧VGS(第1容量素子C1の両端間の電圧)が初期化電位VINIと電位VELLとの差分の電圧(|VINI−VELL|)に初期化される。
【0037】
また、電位VELLは、当該電位VELLと給電線45の電位VCTとの電位差が発光素子Eの発光閾値電圧VTH_OLEDを十分に下回るような値に設定されるので、発光素子Eはオフ状態(非発光状態)に設定される。
【0038】
(b)セット期間
図4に示すように、セット期間PSが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、制御信号GVH[i]をハイレベルに設定する一方、制御信号GVL[i]をローレベルに設定する。その他の信号は初期化期間PRSと同じレベルに維持される。したがって、図6に示すように、トランジスタTHはオン状態に設定される一方、トランジスタTLはオフ状態に設定される。これにより、給電線41からの電流が駆動トランジスタTDRを流れ、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSが上昇を開始する。駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは初期化電位VINIに維持されているから、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は徐々に減少していく。このとき、駆動回路20(電位生成回路25)は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を経時的に変化させることで、給電線41からノードNDを通って、発光素子Eへ至る経路とは別の経路へ分岐して流れる所定の大きさのセット電流Isを生成する。より具体的には、以下のとおりである。
【0039】
図4に示すように、電位生成回路25は、水平走査期間H[i]が開始すると、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を基準電位Vrefから開始電位VX(>Vref)に設定する。そして、水平走査期間H[i]の始点から終点にかけて、ランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RX(RX=dVrmp/DT)で直線的に減少させる。本実施形態では、電位生成回路25は、水平走査期間H[i]の終点におけるランプ電位Vrmp[i]の値が基準電位Vrefに等しくなるように、ランプ電位Vrmp[i]を直線的に減少させる。第2容量素子C2の容量をCp、第2容量素子C2に蓄積される電荷をQと表記すると、セット期間PSにおいて、給電線41から、ノードNDおよび第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ流れるセット電流Isは、以下の式(1)で表される。
Is=dQ/dt=Cp×dVrmp/dt=Cp×dRX/dt ・・・(1)
【0040】
本実施形態では、ランプ電位Vrmpの時間変化率RXは一定であるから、セット電流Isの値は一定となる。したがって、セット期間PSにおいて、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1に漸近していく。このように、各駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが当該駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1に設定される。本実施形態では、電圧VGS1は、以下の式(2)で表される。
VGS1=VTH+Va ・・・(2)
【0041】
セット期間PSの終点において、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は、一定のセット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるのに必要な電圧VGS1にほぼ等しくなるから、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは初期化電位VINI(ゲートの電位VG)よりも電圧VGS1だけ低い電位VINI−VGS1に設定される。本実施形態では、この電位VINI−VGS1と給電線45の電位VCTとの電位差(発光素子Eの両端間の電圧)は、発光素子Eの発光閾値電圧Vth_elを下回るように設定される。すなわち、セット期間PSでも発光素子Eは非発光状態である。
【0042】
(c)データ出力期間Pk
図4に示すように、データ出力期間Pkが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、初期化信号GINIをローレベルに設定する。したがって、図7および図8に示すように、初期用トランジスタTINIはオフ状態に設定されるので、各データ線16と初期化線47とは非導通状態となる。また、図4に示すように、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をローレベルに設定する。したがって、図7および図8に示すように、選択トランジスタTSLはオフ状態となり、データ線16は電気的にフローティング状態となる。前述したように、各データ線16には容量Csが付随するので、データ電位DTの書き込みが行われるまでの間、各データ線16の電位は初期化電位VINIに保持される。
【0043】
図4に示すように、データ出力期間Pkにおいて、駆動回路20(電位生成回路25)は、セット期間PSと同様に、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させるから、ノードNDから第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ至る経路にはセット電流Isが流れ続ける。ここで、駆動トランジスタTDRの移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRを流れる電流の値は大きくなり、ソースの電位VSの上昇量も大きくなる。反対に、移動度μが小さいほど駆動トランジスタTDRを流れる電流の値は小さくなる。すなわち、移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)が大きくなる一方、移動度μが小さいほどゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)は小さくなる。これにより、画素回路Uごとの移動度μのバラツキが補償される。
【0044】
本実施形態では、図4に示すように、データ出力期間Pk内の最初の選択期間Ts1において、駆動回路(信号線駆動回路23)は、第j番目のブロックB[j]に対応する信号線18に出力する階調信号VD[j]の値を、第i行の走査線120と、ブロックB[j]内の第1列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_1に設定する。また、制御回路30は、選択信号SEL1〜SEL9を一斉にハイレベルに設定する。これにより、ブロックB[j]に属する各データ線16と、当該ブロックB[j]に対応する第j番目の信号線18とが一斉に導通する。したがって、図7に示すように、ブロックB[j]内の各データ線16の電位は、初期化電位VINIからデータ電位DT_1(>VINI)に変化する。
【0045】
ここで、駆動トランジスタTDRのゲートとデータ線16との間には寄生容量(不図示)が介在するので、データ線16の電位が初期化電位VINIからデータ電位DT_1に変化すると、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、データ線16の電位に連動して変化する。このとき、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSもゲートの電位VGに連動して変化するので、第2容量素子C2の両端間の電圧が変化して、セット電流Isの値が変化する。これにより、移動度補償の条件が変化する。前述したように、本実施形態では、最初の選択期間TS1では、ブロックB[j]内の各データ線と、当該ブロックB[j]に対応する信号線18とを一斉に導通させることで、当該ブロックB[j]に属する各データ線16の電位をデータ電位DT_1に設定するので、当該ブロックB[j]に属する各データ線16の電位の変化を揃えることができる。すなわち、当該ブロックB[j]内の各画素回路Uを流れるセット電流Isの変化量を揃えることができるので、最初の選択期間Ts1における移動度補償の条件を画素回路U間で揃えることができるという利点がある。
【0046】
その後、データ出力期間Pk内の第k番目の選択期間Tskが開始すると、駆動回路(信号線駆動回路23)は、ブロックB[j]に対応する信号線18に出力する階調信号VD[j]の値を、第i行の走査線120と、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16との交差に対応する画素回路Uの階調データDに応じたデータ電位DT_kに設定する。このとき、制御回路30は、選択信号SELkをハイレベルに設定するので、選択部MP[j]のスイッチSW_kはオン状態に設定され、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16と、当該ブロックB[j]に対応する信号線18とが導通する。したがって、図8に示すように、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16の電位は、最初の選択期間TS1にて設定された電位DT_1から電位DT_kへと変化する。これにより、当該画素回路U(第i行に属するブロックB[j]内の第k列目に位置する画素回路U)を流れるセット電流Isの値も変化する。
【0047】
なお、第k番目の選択期間Tskが終了する直前において、制御回路30は、選択信号SELkをローレベルに設定する。これにより、スイッチSW_kはオフ状態となり、ブロックB[j]内の第k列目のデータ線16は電気的にフローティング状態となる。前述したように、データ線16には容量Csが付随するので、第k番目の選択期間Tskにて第k列目のデータ線16に書き込まれたデータ電位DT_kは、容量Csによって保持されるという具合である。
【0048】
ここで、各選択期間Tsにおけるデータ線16の電位の変化量が大きいほど、当該データ線16に対応する画素回路Uを流れるセット電流Isの変化量も大きくなり、移動度補償の条件も大きく変動する。前述したように、本実施形態では、最初の選択期間Ts1において、ブロックB[j]に属する各データ線16の電位は、初期化電位VINIよりも大きい電位DT_1に設定されるので、各データ線16の電位が、当該データ線16にデータ電位DTが書き込まれるまでの間、初期化電位VINIに設定される態様に比べて、第2番目以降の各選択期間Tsにおけるデータ線16の電位の変動量を抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、各画素回路Uにおける移動度補償の条件が大きく変動することを抑制できるという利点がある。
【0049】
(d)書込期間PWR
図4に示すように、書込期間PWRが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をハイレベルに設定する。したがって、図9に示すように、選択トランジスタTSLはオン状態に遷移するから、駆動トランジスタTDRのゲートはブロックB[j]内の第k列目のデータ線16に導通する。これにより、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGはデータ電位DT_kに設定され、当該データ電位DT_kに応じた電流Idsが駆動トランジスタTDRを流れる。当該電流Idsが駆動トランジスタTDRを流れることにより、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは経時的に上昇するから、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧は経時的に減少する。
【0050】
このとき、駆動回路20(電位生成回路25)は、セット期間PSおよびデータ出力期間Pkと同様に、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させるから、ノードNDから第2容量素子C2を介して第i行のランプ給電線14へ至る経路にはセット電流Isが流れ続ける。そうすると、駆動トランジスタTDRを流れる電流Idsは、ノードNDにおいて、第2容量素子C2へ向かって流れるセット電流Isと、第1容量素子C1へ向かって流れる電流Ic(Ids−Is)とに分岐する。データ電位DT_kに応じた電流Idsの値が大きいほど、第1容量素子C1へ流れ込む電流Icの値は大きくなり、結果として、駆動トランジスタTDRのソースの電位の上昇量(つまりゲート・ソース間の電圧の減少量)も大きくなる。
【0051】
また、前述したように、駆動トランジスタTDRの移動度μが大きいほど駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)が大きくなる一方、移動度μが小さいほどゲート・ソース間の電圧の減少量(負帰還量)は小さくなる。これにより、画素回路Uごとの移動度μのバラツキが補償される。このような移動度補償動作がデータ出力期間Pkおよび書込期間PWRにわたって実行され、書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧(第1容量素子C1の両端間の電圧)は、データ電位DT_kと駆動トランジスタTDRの特性(移動度μ)とを反映した値に設定される。書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧VGS2は、以下の式(3)で表される。
VGS2=VGS1+ΔV=VTH+Va+ΔV ・・・(3)
式(3)のΔVは、データ電位DT_kおよび駆動トランジスタTDRの特性(移動度μ)に応じた値となる。なお、書込期間PWRの終点における駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは、発光素子Eの両端間の電圧が発光閾値電圧Vth_elを下回るような値に設定される。したがって、書込期間PWRにおいても発光素子Eは非発光状態となる。
【0052】
(e)発光期間PDR
図4に示すように、発光期間PDRが開始すると、駆動回路20(走査線駆動回路21)は、走査信号GWR[i]をローレベルに設定する。したがって、図10に示すように、選択トランジスタTSLがオフ状態に遷移し、駆動トランジスタTDRのゲートは電気的にフローティング状態となる。また、駆動回路20(電位生成回路25)は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を一定の基準電位Vrefに設定するので、式(1)からも理解されるように、セット電流Isの値はゼロとなる。
【0053】
このとき、第1容量素子C1の両端間の電圧(駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧)は、書込期間PWRの終点における電圧VGS2に維持されるから、当該電圧VGS2に応じた電流Ielが駆動トランジスタTDRを流れてソースの電位VSは経時的に上昇する。
駆動トランジスタTDRのゲートは電気的なフローティング状態であるから、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGはソースの電位VSに連動して上昇する。そして、駆動トランジスタTDRのゲート・ソース間の電圧が書込期間PWRの終点にて設定された電圧VGS2に維持されたまま、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSが徐々に増加する。発光素子Eの両端間の電圧が発光閾値電圧Vth_elに到達すると、電流Ielが駆動電流として発光素子Eを流れる。発光素子Eは、駆動電流Ielに応じた輝度で発光する。
【0054】
いま、駆動トランジスタTDRが飽和領域で動作する場合を想定すると、駆動電流Ielは以下の式(4)の形で表現される。「β」は駆動トランジスタTDRの利得係数である。
Iel=(β/2)(VGS2−VTH)2 ・・・(4)
式(3)の代入によって式(4)は以下のように変形される。
Iel=(β/2)(VTH+Va+ΔV−VTH)2
=(β/2)(Va+ΔV)2
つまり、駆動電流Ielは、駆動トランジスタTDRの閾値電圧VTHには依存しないから、画素回路Uごとの閾値電圧VTHのバラツキに起因した輝度のムラは抑制される。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態の駆動回路20は、1水平走査期間H内のデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)および書込期間PWRにおいて、当該水平走査期間Hで選択すべき走査線120に対応する複数の画素回路Uの各々の駆動トランジスタTDRにセット電流Isが流れるように各画素回路Uの第2容量素子C2の電荷量を制御することで、1水平走査期間H内のデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)および書込期間PWRにわたって、各駆動トランジスタTDRの移動度補償動作を行う。すなわち、本実施形態によれば、従来のようにデータ出力期間Pk(複数の選択期間Ts)においては移動度補償動作が行われない態様に比べて、1水平走査期間内における移動度補償期間を十分に確保できるので、駆動トランジスタTDRの移動度μのバラツキに起因した輝度のムラを十分に抑制できるという利点がある。
【0056】
<B:変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。また、以下に示す変形例のうちの2以上の変形例を組み合わせることもできる。
【0057】
(1)変形例1
上述の実施形態では、セット期間PSにおいて、駆動回路20は、第i行のランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を経時的に変化させることで(つまり第2容量素子C2の電荷量を経時的に変化させることで)、セット電流Isを生成しているが、これに限らず、第2容量素子C2およびランプ給電線14の代わりに、セット電流Isを生成するための定電流源が設けられる態様であってもよい。要するに、各画素回路Uは、セット電流Isを生成するための電流生成手段を備えていればよい。
【0058】
(2)変形例2
上述の各実施形態では、ランプ給電線14に出力される電位は、一定の時間変化率RXで直線的に減少しているが、これに限らず、ランプ給電線14に出力される電位の変化の態様は任意である。例えばランプ給電線14に出力される電位の波形が曲線状であってもよい。要するに、ランプ給電線14に出力される電位は、セット電流Isが駆動トランジスタTDRを流れるように、経時的に変化するものであればよい。
【0059】
(3)変形例3
上述の各実施形態では、初期化期間PRSにおいて、駆動回路20はランプ給電線14に出力するランプ電位Vrmp[i]を時間変化率RXで直線的に減少させているが、これに限らず、初期化期間PRSにおけるランプ給電線14の電位は任意である。例えば、初期化期間PRSにおいて、駆動回路20は、ランプ給電線14に出力する電位を所定の大きさの電位に固定することもできる。
【0060】
(4)変形例4
発光素子Eは、OLED素子であってもよいし、無機発光ダイオードやLED(Light Emitting Diode)であってもよい。要は、電気エネルギーの供給(電界の印加や電流の供給)に応じて発光する総ての素子を本発明の発光素子として利用できる。
【0061】
<C:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図11は、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての電気光学装置100と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この電気光学装置100は発光素子EにOLED素子を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0062】
図12に、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに電気光学装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0063】
図13に、以上に説明した実施形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに電気光学装置100を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置10に表示される。
【0064】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0065】
10……素子部、12……配線群、14……給電線、16……データ線、18……信号線、20……駆動回路、21……走査線駆動回路、23……データ線駆動回路、25……電位生成回路、30……制御回路、41,43,45……給電線、47……初期化線、50……データ線初期化部、100……電気光学装置、B……ブロック、C1……第1容量素子、C2……第2容量素子、E……発光素子、GINI……初期化信号、GVH,GVL……制御信号、GWR……走査信号、MP……選択部、ND……ノード、SEL……選択信号、SW……スイッチ、TDR……駆動トランジスタ、TSL……選択トランジスタ、TIN……初期化用トランジスタ、Vrmp……ランプ電位、U……画素回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられるとともに、対応するブロックに属する各データ線と当該ブロックに対応する前記信号線との導通および非導通を切り替える複数の選択部と、
前記複数の画素回路を単位期間の周期で駆動する駆動回路と、を備え、
前記複数の画素回路の各々は、
高位側電源線と低位側電源線との間の経路に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとデータ線との間に配置される選択トランジスタと、
前記高位側電源線から、前記駆動トランジスタ、および、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に介在するノードを通って、前記発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備し、
前記単位期間は、複数の選択期間と、前記複数の選択期間より後の書込期間とを含み、
前記複数の選択部の各々は、
前記複数の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させ、
前記駆動回路は、
前記複数の選択期間では、前記各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき前記走査線との各交差に対応する前記画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力するとともに、当該単位期間にて選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタをオフ状態に設定し、
前記書込期間においては、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタを一斉にオン状態に設定し、
前記複数の選択期間および前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記駆動トランジスタに前記セット電流が流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記書込期間の終点における前記第1容量素子の両端間の電圧を前記駆動トランジスタの特性が反映された値に設定する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記各選択部は、
前記単位期間内の最初の前記選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、当該最初の前記選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力される前記データ電位に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記単位期間は、前記複数の選択期間よりも前のセット期間を含み、
前記駆動回路は、
前記セット期間においては、前記各データ線の電位を初期化電位に設定し、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、前記駆動トランジスタのゲートの電位を前記初期化電位に設定する一方、一定の大きさの前記セット電流が前記駆動トランジスタを流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記第1容量素子の両端間の電圧を、当該セット電流が前記駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記電流生成手段は、第1電極と第2電極とを含む第2容量素子と、給電線とを備え、
前記第1電極は前記ノードに接続される一方、前記第2電極は前記給電線に接続され、
前記駆動回路は、
前記単位期間内の前記セット期間の開始から前記書込期間の終了までは、前記給電線に出力する電位を経時的に変化させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記単位期間内の前記セット期間の開始から前記書込期間の終了までは、前記給電線に出力される電位は直線的に変化する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項7】
複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、を備え、
前記複数の画素回路の各々は、
高位側電源線と低位側電源線との間に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、
前記高位側電源線から、前記駆動トランジスタ、および、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に介在するノードを通って、前記発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備する電気光学装置を単位期間の周期で駆動する方法であって、
前記単位期間は、複数の選択期間と、前記複数の選択期間より後の書込期間とを含み、
前記複数の選択期間では、各ブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させる一方、前記各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき前記走査線との各交差に対応する前記画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力することで、前記各データ線に前記データ電位を書き込み、
前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々に対して、当該画素回路に対応する前記データ線に書き込まれた前記データ電位を供給し、
前記複数の選択期間および前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記駆動トランジスタに前記セット電流が流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記書込期間の終点における前記第1容量素子の両端間の電圧を前記駆動トランジスタの特性が反映された値に設定する、
ことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項1】
複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられるとともに、対応するブロックに属する各データ線と当該ブロックに対応する前記信号線との導通および非導通を切り替える複数の選択部と、
前記複数の画素回路を単位期間の周期で駆動する駆動回路と、を備え、
前記複数の画素回路の各々は、
高位側電源線と低位側電源線との間の経路に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとデータ線との間に配置される選択トランジスタと、
前記高位側電源線から、前記駆動トランジスタ、および、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に介在するノードを通って、前記発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備し、
前記単位期間は、複数の選択期間と、前記複数の選択期間より後の書込期間とを含み、
前記複数の選択部の各々は、
前記複数の選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させ、
前記駆動回路は、
前記複数の選択期間では、前記各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき前記走査線との各交差に対応する前記画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力するとともに、当該単位期間にて選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタをオフ状態に設定し、
前記書込期間においては、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタを一斉にオン状態に設定し、
前記複数の選択期間および前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記駆動トランジスタに前記セット電流が流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記書込期間の終点における前記第1容量素子の両端間の電圧を前記駆動トランジスタの特性が反映された値に設定する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記各選択部は、
前記単位期間内の最初の前記選択期間では、当該選択部に対応するブロックに属する各データ線と、当該ブロックに対応する信号線とを一斉に導通させることで、当該ブロックに属する各データ線の電位を、当該最初の前記選択期間にて当該ブロックに対応する信号線に出力される前記データ電位に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記単位期間は、前記複数の選択期間よりも前のセット期間を含み、
前記駆動回路は、
前記セット期間においては、前記各データ線の電位を初期化電位に設定し、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記選択トランジスタを一斉にオン状態に設定することで、前記駆動トランジスタのゲートの電位を前記初期化電位に設定する一方、一定の大きさの前記セット電流が前記駆動トランジスタを流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記第1容量素子の両端間の電圧を、当該セット電流が前記駆動トランジスタを流れるのに必要な値に設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記電流生成手段は、第1電極と第2電極とを含む第2容量素子と、給電線とを備え、
前記第1電極は前記ノードに接続される一方、前記第2電極は前記給電線に接続され、
前記駆動回路は、
前記単位期間内の前記セット期間の開始から前記書込期間の終了までは、前記給電線に出力する電位を経時的に変化させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記単位期間内の前記セット期間の開始から前記書込期間の終了までは、前記給電線に出力される電位は直線的に変化する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項7】
複数本を単位として複数のブロックに区分された複数のデータ線と、複数の走査線との各交差に対応して配置される複数の画素回路と、
前記複数のブロックと1対1に対応して設けられる複数の信号線と、を備え、
前記複数の画素回路の各々は、
高位側電源線と低位側電源線との間に直列に接続される駆動トランジスタおよび発光素子と、
前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に配置される第1容量素子と、
前記高位側電源線から、前記駆動トランジスタ、および、前記駆動トランジスタと前記発光素子との間に介在するノードを通って、前記発光素子へ至る経路とは別の経路へ分岐して流れるセット電流を生成する電流生成手段と、を具備する電気光学装置を単位期間の周期で駆動する方法であって、
前記単位期間は、複数の選択期間と、前記複数の選択期間より後の書込期間とを含み、
前記複数の選択期間では、各ブロックに属する各データ線を順番に選択して当該ブロックに対応する信号線に導通させる一方、前記各信号線に対して、当該信号線に対応するブロックに属する各データ線と当該単位期間にて選択すべき前記走査線との各交差に対応する前記画素回路の指定階調に応じたデータ電位を順番に出力することで、前記各データ線に前記データ電位を書き込み、
前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々に対して、当該画素回路に対応する前記データ線に書き込まれた前記データ電位を供給し、
前記複数の選択期間および前記書込期間では、当該単位期間で選択すべき前記走査線に対応する複数の前記画素回路の各々の前記駆動トランジスタに前記セット電流が流れるように前記電流生成手段を制御することで、前記書込期間の終点における前記第1容量素子の両端間の電圧を前記駆動トランジスタの特性が反映された値に設定する、
ことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−113195(P2012−113195A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263250(P2010−263250)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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