説明

電気光学装置および電子機器

【課題】トランジスター群の位置に依存したスジを抑制すること。
【解決手段】電気光学装置は、第1基板と、第1基板上に形成されたk×n本のデータ線
と、k×n本のデータ線に画像信号を供給するn個のデマルチプレクサーと、n個のデマ
ルチプレクサーに制御信号を供給するk本の制御信号線と、n個のデマルチプレクサーに
画像信号を供給するn本の画像信号線とを備え、n個のデマルチプレクサーのそれぞれは
、n本の画像信号線のうちの一本の画像信号線とk×n本のデータ線のうちのk本のデー
タ線との間に接続され、制御信号に応じて選択された一のデータ線に画像信号を供給する
k個のトランジスターと、k個のトランジスターに入力する制御信号の波形を成形するk
個の波形成形回路と有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のデータ線の中から、デマルチプレクサーによって選択されたデー
タ線に画像信号を供給する、いわゆるハイブリッド型の電気光学装置を開示している。特
許文献2は、サンプル・ホールド回路において、互いに相補の論理状態を示す信号を整形
する波形整形回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−224220号公報
【特許文献2】特開平10−22804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような、1群のトランジスターのなかからオンにするトラ
ンジスターを選択制御信号により選択する構成の電気光学装置により表示される画像にお
いて、各トランジスター群が選択制御信号線において接続されている位置の違いにより、
トランジスター群に依存したスジが発生してしまう場合があった。
これに対し本発明は、画素群の位置に依存したスジを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1基板と、前記第1基板上に形成されたk×n本のデータ線と、前記k×
n本のデータ線に画像信号を供給するn個のデマルチプレクサーと、前記n個のデマルチ
プレクサーに制御信号を供給するk本の制御信号線と、前記n個のデマルチプレクサーに
前記画像信号を供給するn本の画像信号線とを備え、前記n個のデマルチプレクサーのそ
れぞれは、前記n本の画像信号線のうちの一本の画像信号線と前記k×n本のデータ線の
うちのk本のデータ線との間に接続され、前記制御信号に応じて選択された一のデータ線
に前記画像信号を供給するk個のトランジスターと、前記k個のトランジスターに入力す
る前記制御信号の波形を成形するk個の波形成形回路とを有することを特徴とする電気光
学装置を提供する。
この電気光学装置によれば、波形整形回路を有さない構成と比較して、画素群の位置に
依存したスジを抑制することができる。
【0006】
好ましい態様において、前記k個の波形成形回路の各々は、偶数段接続されたインバー
ターで構成されてもよい。
この電気光学装置によれば、入力された制御信号の論理値を維持しつつ、制御信号の波
形を整形することができる。
【0007】
別の好ましい態様において、前記第1基板は、前記k本の制御信号線のそれぞれに接続
され、前記制御信号の供給に用いられるk個の制御信号入力端子と、前記n本の画像信号
線のぞれぞれに接続され、前記画像信号の供給に用いられるn個の画像信号入力端子とを
備え、前記k個の制御信号入力端子および前記n個の画像信号入力端子と電気的に接続さ
れた可撓性を有する第2基板と、前記第2基板上に形成され、前記画像信号線を介して前
記k×n本のデータ線に前記画像信号を供給し、前記制御信号線を介して前記制御信号と
を供給する駆動回路とを有していてもよい。
この電気光学装置によれば、可撓性を有さない基板上に駆動回路を設ける構成と比較し
て、電気光学装置を小型化することができる。
【0008】
また、本発明は、上記いずれかの電気光学装置を有する電子機器を提供する。
この電子機器によれば、波形整形回路を有さない構成と比較して、画素群の位置に依存
したスジを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る電気光学装置1を用いた電子機器の外観を示す図。
【図2】電気光学装置1の構成を示す模式図。
【図3】液晶パネル100の構造を示す図。
【図4】画素111の等価回路を示す図。
【図5】電気光学装置1の動作を示すタイミングチャート。
【図6】プッシュダウン現象を説明する図。
【図7】従来技術の問題点を説明する図。
【図8】液晶パネル100の構造を説明する図。
【図9】プロジェクター2100の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.構成
図1は、一実施形態に係る電気光学装置1を用いた電子機器の(一部の)外観を示す図
である。この例で、電気光学装置1は、プロジェクターのライトバルブとして用いられる
液晶装置である。電子機器は、液晶パネル100と、データ線駆動回路200と、FPC
(Flexible Printed Circuits)基板300と、回路基板400とを有する。FPC基板
300上には、データ線駆動回路200が設けられている。回路基板400上には、電気
光学装置1を制御する回路が設けられている。回路基板400と液晶パネル100とは、
FPC基板300を介して電気的に接続される。回路基板400とFPC基板300とは
、コネクター410およびコネクター320を介して接続される。FPC基板300と液
晶パネル100とはコネクター310およびコネクター107を介して接続される。
【0011】
図2は、電気光学装置1の構成を示す模式図である。データ線駆動回路200は、他の
回路から入力されるクロック信号、制御信号、および画像信号に従って、液晶パネル10
0に表示させる画像を示す画像信号を出力する。液晶パネル100は、データ線駆動回路
200および他の回路から入力されるクロック信号および画像信号に従って、画像を表示
する。
【0012】
液晶パネル100は、画素領域110と、走査線駆動回路130と、データ線選択回路
150と、n本の画像信号線160と、n個の画像信号入力端子161と、k本の選択制
御信号線(選択制御信号線141、選択制御信号線142、および選択制御信号線143
。この例ではk=3)と、k個の選択制御信号入力端子(選択制御信号入力端子146、
選択制御信号入力端子147、および選択制御信号入力端子148)とを有する。
【0013】
画素領域110は、画像を表示する領域である。画素領域110は、m本の走査線11
2と、(k×n)本のデータ線114と、(m×k×n)個の画素111とを有する。走
査線112は、走査信号を伝送する信号線であり、行(x)方向に沿って設けられている
。データ線114は、データ信号を伝送する信号線であり、列(y)方向に沿って設けら
れている。走査線112とデータ線114とは、電気的に絶縁されている。画素111は
、液晶パネル100をz方向(x方向およびy方向に垂直な方向)に見たときに、走査線
112とデータ線114との交差に対応して設けられている。すなわち、画素111は、
m行×(k×n)列のマトリクス状に配列されている。また、この例では、行方向におい
て連続するk個の画素111が、1つの画素群を形成している。すなわち、液晶パネル1
00は、m行n列の画素群を有する。別の見方をして、同一のデータ線114に接続され
ている画素111を一群の画素として考えると、液晶パネル100は、(k×n)列の画
素群を有する。画素111の詳細は後述する。以下の説明において、複数の走査線112
の各々を区別する必要があるときは、第1行、第2行、第3行、…、第m行の走査線11
2と表す。複数のデータ線114の各々を区別する必要があるときは、第1列、第2列、
第3列、…、第(k×n)列のデータ線114と表す。画像信号線160についても同様
である。
【0014】
走査線駆動回路130は、複数の走査線112の中から1本の走査線112を選択する
ための走査信号を出力する。走査線駆動回路130は、第1行、第2行、第3行、…、第
m行の走査線112に、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを供給する。走査信号Y1
、Y2、Y3、…、Ymは、順次排他的にH(High)レベルとなる信号である。
【0015】
選択制御信号線141、選択制御信号線142、および選択制御信号線143は、選択
制御信号入力端子146、選択制御信号入力端子147、および選択制御信号入力端子1
48から入力された選択制御信号G1、G2、およびG3を伝送する信号線である。選択
制御信号G1、G2、およびG3は、順次排他的にHレベルとなる信号である。
【0016】
データ線選択回路150は、各画素群において、k本のデータ線114の中から1本の
データ線114を選択する回路である。データ線選択回路150は、n列の画素群の各々
に対応する、n個のデマルチプレクサー151を有する。デマルチプレクサー151は、
選択制御信号G1、G2、およびG3に応じて、対応する画素群に接続されているk本の
データ線114の中から、1本のデータ線114を選択する。デマルチプレクサー151
の詳細は後述する。
【0017】
画像信号線160は、画像信号入力端子161から入力された画像信号Sを、データ線
選択回路150に伝送する信号線である。画像信号Sは、画素111に書き込まれるデー
タを示す信号である。ここで、「画像」は静止画または動画をいう。
【0018】
データ線駆動回路200は、第1列、第2列、第3列、…、第n列の画像信号入力端子
161に、画像信号S1、S2、S3、…、Snを出力する。また、データ線駆動回路2
00は、選択制御信号入力端子146、選択制御信号入力端子147、および選択制御信
号入力端子148に、選択制御信号G1、G2、G3を出力する。
【0019】
図3(A)は、液晶パネル100の構造を示す斜視図である。図3(B)は、図3(A
)におけるH−h線における断面を示す模式図である。液晶パネル100は、素子基板1
01と、対向基板102と、液晶105とを有する。素子基板101と対向基板102と
は、スペーサー(図示省略)を含むシール材90によって一定の間隙を保って、互いに電
極形成面が対向するように貼り合わせられている。液晶105は、この間隙に封入されて
いる。液晶105は、例えばVA(Vertical Alignment)型の液晶である。
【0020】
素子基板101および対向基板102は、それぞれガラスまたは石英などの透明性を有
する基板を有する。素子基板101にあっては、対向基板102よりもY方向のサイズが
長い。奥側(h側)が揃えられているので、素子基板101の手前側(H側)の一辺が対
向基板102から張り出している。この張り出した領域にX方向に沿って複数のコネクタ
ー107が設けられている。複数のコネクター107は、FPC基板300に接続される
。FPC基板300には、データ線駆動回路200が形成される。複数のコネクター10
7は、外部の回路から各種信号や各種電圧、画像信号などを供給するための端子であり、
上述の選択制御信号入力端子146、選択制御信号入力端子147、選択制御信号入力端
子148、および画像信号入力端子161を含む。
【0021】
素子基板101において対向基板102と対向する面には、画素電極118が形成され
ている。画素電極118は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性を有する導電層を
パターニングしたものである。また、素子基板101には、走査線駆動回路130が形成
されている。対向基板102において、素子基板101と対向する面に設けられた共通電
極108は、同じくITOなどの透明性を有する導電層である。
【0022】
図4は、画素111の等価回路を示す図である。図4では、第i行第j列の画素群およ
びこの画素群に対応するデマルチプレクサー151が示されている(iおよびjは、1≦
i≦mおよび1≦j≦nを満たす整数)。一つの画素群は、k個(この例ではk=3)の
画素111から構成される。画素111は、TFT(Thin Film Transistor)116と、
画素電極118と、液晶層120と、共通電極108と、保持容量117とを有する。T
FT116は、画素電極118へのデータの書き込み(電圧の印加)を制御するスイッチ
ング素子であり、この例ではnチャネル型の電界効果トランジスターである。TFT11
6のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極はデータ線114に接続され、ド
レイン電極は画素電極118に接続されている。走査線112にHレベルの走査信号が供
給されるとTFT116はオン状態になり、データ線114と画素電極118とが導通す
る。すなわち、画素電極118にデータが書き込まれる。走査線112にL(Low)レベ
ルの走査信号が供給されるとTFT116はオフ状態になり、データ線114と画素電極
118とは絶縁する。共通電極108はすべての画素111について共通である。共通電
極108には、例えばデータ線駆動回路200により、共通電圧LCCOMが印加される
。液晶層120には、画素電極118と共通電極108との電位差に相当する電圧が印加
され、この電圧に応じて光学的特性(反射率または透過率)が変化する。保持容量117
は、液晶層120に並列に接続されており、画素電極118と共通電圧VCOMとの電位
差に相当する電荷を保持する(この例では、VCOM=LCCOMである)。以下、単一
の画素群において、画素111の各々を区別するときは、画素111−sのように添字を
用いて区別する(sは、1≦s≦kを満たす整数)。TFT116等、画素111に含ま
れる要素についても同様である。
【0023】
デマルチプレクサー151は、選択制御信号G1〜G3に応じて選択された1本のデー
タ線114に、画像信号Sを供給する回路である。デマルチプレクサー151は、1つの
画像信号入力端子と、k個の選択制御信号入力端子と、k個の画像信号出力端子と、k個
のスイッチング素子とを有する(この例ではk=3)。
【0024】
デマルチプレクサー151は、k個のスイッチング素子として、TFT152、TFT
153、およびTFT154を有する。TFT152、TFT153、およびTFT15
4は、ゲートに入力される選択制御信号Gに応じて動作するトランジスターである。TF
T152のゲート電極は、選択制御信号線141に接続され、ソース電極は第j列の画像
信号線160に接続され、ドレイン電極は第(3j−2)列のデータ線114(すなわち
、第j列の画素群のTFT116−1のソース電極)に接続されている。選択制御信号線
141にHレベルの選択制御信号G1が供給されるとTFT152はオン状態になり、第
j列の画像信号線160と第(3j−2)列のデータ線114とが導通する。すなわち、
第(3j−2)列のデータ線114に画像信号Sjが供給される。選択制御信号線141
にLレベルの選択制御信号G1が供給されるとTFT152はオフ状態になり、第j列の
画像信号線160と第(3j−2)列のデータ線114とが絶縁する。
【0025】
TFT153のゲート電極は、選択制御信号線142に接続され、ソース電極は第j列
の画像信号線160に接続され、ドレイン電極は第(3j−1)列のデータ線114(す
なわち、第j列の画素群のTFT116−2のソース電極)に接続されている。選択制御
信号線142にHレベルの選択制御信号G2が供給されるとTFT153はオン状態にな
り、第j列の画像信号線160と第(3j−1)列のデータ線114とが導通する。すな
わち、第(3j−1)列のデータ線114に画像信号Sjが供給される。選択制御信号線
142にLレベルの選択制御信号G2が供給されるとTFT153はオフ状態になり、第
j列の画像信号線160と第(3j−1)列のデータ線114とが絶縁する。
【0026】
TFT154のゲート電極は、選択制御信号線143に接続され、ソース電極は第j列
の画像信号線160に接続され、ドレイン電極は第3j列のデータ線114(すなわち、
第j列の画素群のTFT116−3のソース電極)に接続されている。選択制御信号線1
43にHレベルの選択制御信号G3が供給されるとTFT154はオン状態になり、第j
列の画像信号線160と第3j列のデータ線114とが導通する。すなわち、第3j列の
データ線114に画像信号Sjが供給される。選択制御信号線143にLレベルの選択制
御信号G3が供給されるとTFT154はオフ状態になり、第j列の画像信号線160と
第3j列のデータ線114とが絶縁する。
【0027】
デマルチプレクサー151は、さらに、波形整形回路155、波形整形回路156、お
よび波形整形回路157を有する。波形整形回路155は、選択制御信号G1の波形を整
形する回路である。この例で、波形整形回路155は、2段接続されたインバーター(論
理反転回路)、具体的にはインバーター1551およびインバーター1552、により構
成される。選択制御信号線141を介してデマルチプレクサー151に入力される選択制
御信号G1の波形は、選択制御信号線141の配線抵抗および寄生容量により、理想的な
矩形波からなまっている。波形整形回路155は、選択制御信号G1のなまった波形を整
形する。波形整形回路155は、波形が整形された選択制御信号G1を、TFT152の
ゲートに供給する。波形整形回路156および波形整形回路157は、同様に、インバー
ター1561およびインバーター1562、並びにインバーター1571およびインバー
ター1572を有する。波形整形回路156および波形整形回路157は、波形が整形さ
れた選択制御信号G2および選択制御信号G3を、TFT153およびTFT154のゲ
ートに供給する。
【0028】
デマルチプレクサー151には、画像信号入力端子161から入力された画像信号Sが
、画像信号線160を介して供給される。デマルチプレクサー151においては、画像信
号線160が、TFT152、TFT153、およびTFT154との間で複数に分岐し
ている。
【0029】
以上、まとめると、電気光学装置1は、第1基板(素子基板101)と、第1基板上に
形成されたk×n本のデータ線114と、k×n本のデータ線に画像信号を供給するn個
のデマルチプレクサー151と、n個のデマルチプレクサーに制御信号を供給するk本の
制御信号線(選択制御信号線141、選択制御信号線142、および選択制御信号線14
3)と、n個のデマルチプレクサーに画像信号を供給するn本の画像信号線160とを備
る。n個のデマルチプレクサーのそれぞれは、n本の画像信号線160のうちの一本の画
像信号線とk×n本のデータ線のうちのk本のデータ線との間に接続され、制御信号に応
じて選択された一のデータ線に画像信号を供給するk個のトランジスターと、k個のトラ
ンジスターに入力する制御信号の波形を成形するk個の波形成形回路(波形整形回路15
5、波形整形回路156、および波形整形回路157)と有する。k個の波形成形回路の
各々は、偶数段接続されたインバーター(インバーター1551およびインバーター15
52)で構成される。第1基板は、k本の制御信号線のそれぞれに接続され、制御信号の
供給に用いられるk個の制御信号入力端子(選択制御信号入力端子146、選択制御信号
入力端子147、および選択制御信号入力端子148)と、n本の画像信号線のぞれぞれ
に接続され、画像信号の供給に用いられるn個の画像信号入力端子(画像信号入力端子1
61)とを備える。電気光学装置1は、k個の制御信号入力端子およびn個の画像信号入
力端子と電気的に接続された可撓性を有する第2基板(FPC基板300)と、第2基板
上に形成され、配線を介してk×n本のデータ線に画像信号と制御信号とを供給する駆動
回路(データ線駆動回路200)とを有する。
【0030】
2.動作
図5は、電気光学装置1の動作を示すタイミングチャートである。ここでは、第i行第
j列の画素群に対するデータの書き込み動作を例として説明する。時刻t1の直前におい
て、操作信号Yi、選択制御信号G1、選択制御信号G2、および選択制御信号G3はL
レベルである。時刻t1において、走査線駆動回路130は、走査信号YiをLレベルか
らHレベルに変化させる。走査信号YiがHレベルになると、TFT116がオン状態に
なり、データ線114と画素電極118とが導通する。
【0031】
時刻t2において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G1をHレベルに変化さ
せる。選択制御信号G1がHレベルになると、TFT152がオン状態になり、第j列の
画像信号線160と第(3j−2)列のデータ線114とが導通する。このとき、データ
線駆動回路200は、第j列の画像信号線160に画像信号Sj(1)を供給している。
したがって、画素電極118−1には、画像信号Sj(1)に応じたデータが書き込まれ
る。時刻t3において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G1をLレベルに変化
させる。選択制御信号G1がLレベルになると、TFT152がオフ状態になり、第j列
の画像信号線160と第(3j−2)列のデータ線114とが絶縁する。
【0032】
時刻t4において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G2をHレベルに変化さ
せる。選択制御信号G2がHレベルになると、TFT153がオン状態になり、第j列の
画像信号線160と第(3j−1)列のデータ線114とが導通する。このとき、データ
線駆動回路200は、第j列の画像信号線160に画像信号Sj(2)を供給している。
したがって、画素電極118−2には、画像信号Sj(2)に応じたデータが書き込まれ
る。時刻t5において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G2をLレベルに変化
させる。選択制御信号G2がLレベルになると、TFT152がオフ状態になり、第j列
の画像信号線160と第(3j−1)列のデータ線114とが絶縁する。
【0033】
時刻t6において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G3をHレベルに変化さ
せる。選択制御信号G3がHレベルになると、TFT154がオン状態になり、第j列の
画像信号線160と第3j列のデータ線114とが導通する。このとき、データ線駆動回
路200は、第j列の画像信号線160に画像信号Sj(3)を供給している。したがっ
て、画素電極118−3には、画像信号Sj(3)に応じたデータが書き込まれる。時刻
t7において、データ線駆動回路200は、選択制御信号G3をLレベルに変化させる。
選択制御信号G3がLレベルになると、TFT154がオフ状態になり、第j列の画像信
号線160と第3j列のデータ線114とが絶縁する。
【0034】
時刻t8において、走査線駆動回路130は、走査信号YiをHレベルからLレベルに
変化させる。走査信号YiがLレベルになると、TFT116がオフ状態になり、データ
線114と画素電極118とが絶縁する。以上により、第j列の画素群へのデータの書き
込みは終了する。液晶層120の容量および保持容量117により、データとして書き込
まれた電荷は、新たなデータが書き込まれるまで保持される。走査線駆動回路130は、
次に走査信号Yi+1をLレベルからHレベルに変化させる。こうして第i+1行の画素
群にデータが書き込まれる。走査線駆動回路130は、第1行、第2行、第3行、…、第
m行の走査線112に、順次排他的にHレベルとなる走査信号を供給する。第1行から第
m行まで書き込みが終わると、1フレームの画像の書き込みが完了する。走査線駆動回路
130は、再び、第1行の走査線112から順に、順次排他的にHレベルとなる走査信号
を供給する。こうして、次のフレームの画像の書き込みが行われる。データ線駆動回路2
00は、画像信号Sの共通電圧LCCOMに対する極性を、1フレーム毎に正負が交互に
入れ替わるように制御する。すなわち、液晶層120に印加される電圧の極性は、1フレ
ーム毎に正負が入れ替わる。
【0035】
図6は、プッシュダウン現象を説明する図である。図6の縦軸および横軸は、画素電極
118の電圧Vpおよび時刻を示す。走査信号YiがHレベルからLレベルに変化すると
TFT116はオン状態からオフ状態に変化するが、このとき、ゲート−ドレイン間の容
量性結合により、画素電圧Vpが低下する現象(いわゆるプッシュダウン現象)が起こる
。プッシュダウン現象による電圧変化ΔVpは次式(1)で表されることが知られている

ΔVp=Cgd・Vg/(Cgd+Cs) …(1)
ここで、CgdはTFT152のゲート−ドレイン間の容量を、CsはTFT152にお
ける寄生容量を、Vgはゲート電圧を表す。
【0036】
図7は、従来技術の問題点を説明する図である。ここでは、説明を簡単にするため、選
択制御信号線141、第1列のTFT152、画像信号線160、第n列のTFT152
、および画像信号線160だけを考える。第1列の画像信号線160に接続されたTFT
152と、第n列の画像信号線160に接続されたTFT152とでは、配線の長さが異
なるため、TFT152における寄生容量の値が異なっている。第1列のTFT152の
寄生容量Cs1と、第n列のTFT152の寄生容量Csnとの関係は、例えば、Cs1
>Csnである。このとき、式(1)から、第1列のTFT152における電圧変化ΔV
p1と、第n列のTFT152における電圧変化ΔVpnとの関係は、ΔVp1<ΔVp
nである。より一般化すると、2つのTFT152を考えると、選択制御信号入力端子1
46に対してより上流側(例えば第n列)に位置するTFT152のプッシュダウン現象
による電圧変化ΔVpUと、より下流側(例えば第1列)に位置するTFT152のプッ
シュダウン現象による電圧変化ΔVpLとの関係は、ΔVpL<ΔVpUである(図6)
。このように、選択制御信号入力端子146からの距離に応じて画素電極118の電圧V
pが異なると、スジが視認される場合がある。すなわち、図7の構成では、画質の低下を
招く可能性がある。
【0037】
図8は、本実施形態に係る液晶パネル100の構造を説明する図である。図7の構成と
対比するため、選択制御信号線141、第1列のTFT152、画像信号線160、第n
列のTFT152、および画像信号線160だけを考える。この例では、選択制御信号G
1は波形整形回路155により整形されているので、2つのTFT152における寄生容
量は、Cs1=Csnである。なお、波形整形回路155からTFT152のゲート電極
までの線長はほぼ同一である。すなわち、式(1)から、これら2つのTFT152のプ
ッシュダウン現象による電圧変化は、ほぼ同一である。すなわち、波形整形回路を有さな
い構成と比較すると、スジが視認されにくく、画質が向上する。
【0038】
3.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以
下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用い
られてもよい。
【0039】
波形整形回路の構成は、インバーターを2段接続したものに限定されない。4段、6段
等、偶数段接続されたインバーターが波形整形回路として用いられてもよい。別の例で、
偶数段接続されたインバーター以外の回路が波形整形回路として用いられてもよい。選択
制御信号の波形を整形できるものであれば、どのような構成の回路が用いられてもよい。
【0040】
デマルチプレクサー151に含まれるTFTの数、すなわちkの値は実施形態で説明し
たものに限定されない。例えば、デマルチプレクサー151は、1個のTFTを有してい
てもよい(k=1)。別の例で、デマルチプレクサー151は、4個以上、例えば8個の
TFTを有していてもよい。これらの場合、画素群に含まれる画素111の数も同様に、
1個または8個である。
【0041】
液晶層120は、透過型に限られず、反射型であってもよい。さらに、液晶層120は
、ノーマリーブラックモードに限られず、例えばTN方式として、電圧無印加時において
液晶層120が白状態となるノーマリーホワイトモードであってもよい。
また、TFTはnチャネル型の電界効果トランジスターに限定されず、pチャネル型の
電界効果トランジスターであってもよい。この場合、プッシュダウン現象ではなく、プッ
シュアップ現象が起こる。
【0042】
実施形態においてはデータ線駆動回路200が画像信号Sおよび選択制御信号Gを供給
する構成を説明したが、画像信号Sおよび選択制御信号Gは、それぞれ別の回路により供
給されてもよい。また、実施形態においては、データ線駆動回路200がFPC基板30
0上に設けられる例を説明したが、データ線駆動回路200は、可撓性を有さない基板上
に設けられてもよい。
【0043】
図9は、プロジェクター2100の構成を示す図である。プロジェクター2100は、
一実施形態にかかる電子機器の一例である。プロジェクター2100の内部には、ハロゲ
ンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。ランプユニッ
ト2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚
のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色
に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれ
ぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その
損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ212
4からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0044】
プロジェクター2100では、実施形態に係る電気光学装置1が、R色、G色、B色の
それぞれに対応して3組設けられる。そして、R色、G色、B色のそれぞれに対応する映
像データがそれぞれ上位回路から供給されて、各色に対応するデータ信号Vidに変換され
る構成となっている。ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述し
た液晶パネル100と同様であり、R色、G色、B色のそれぞれに対応する画像信号に応
じて駆動される。
【0045】
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイク
ロイックプリズム2112に3方向から入射する。ダイクロイックプリズム2112にお
いて、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、
各色の画像が合成された後、スクリーン2120には、投射レンズ2114によってカラ
ー画像が投射される。
【0046】
なお、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2
108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィ
ルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイク
ロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100
Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査
方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像
を表示する構成となっている。
【0047】
この電子機器は、図9で説明したプロジェクターの他、電子ビューファインダーや、リ
ヤ・プロジェクション型のテレビジョン、ヘッドマウントディスプレイなどであってもよ
い。
【符号の説明】
【0048】
1…電気光学装置、90…シール材、100…液晶パネル、101…素子基板、102…
対向基板、105…液晶、107…コネクター、108…共通電極、110…画素領域、
111…画素、112…走査線、114…データ線、116…TFT、118…画素電極
、120…液晶層、117…保持容量、130…走査線駆動回路、141…選択制御信号
線、142…選択制御信号線、143…選択制御信号線、146…選択制御信号入力端子
、147…選択制御信号入力端子、148…選択制御信号入力端子、150…データ線選
択回路、151…デマルチプレクサー、152…TFT、153…TFT、154…TF
T、155…波形整形回路、156…波形整形回路、157…波形整形回路、160…画
像信号線、161…画像信号入力端子、200…データ線駆動回路、300…FPC基板
、310…コネクター、320…コネクター、400…回路基板、410…コネクター、
1551…インバーター、1552…インバーター、1561…インバーター、1562
…インバーター、1571…インバーター、1572…インバーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に形成されたk×n本のデータ線と、
前記k×n本のデータ線に画像信号を供給するn個のデマルチプレクサーと、
前記n個のデマルチプレクサーに制御信号を供給するk本の制御信号線と、
前記n個のデマルチプレクサーに前記画像信号を供給するn本の画像信号線とを備え、
前記n個のデマルチプレクサーのそれぞれは、
前記n本の画像信号線のうちの一本の画像信号線と前記k×n本のデータ線のうちのk
本のデータ線との間に接続され、前記制御信号に応じて選択された一のデータ線に前記画
像信号を供給するk個のトランジスターと、
前記k個のトランジスターに入力する前記制御信号の波形を成形するk個の波形成形回
路と
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記k個の波形成形回路の各々は、偶数段接続されたインバーターで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1基板は、
前記k本の制御信号線のそれぞれに接続され、前記制御信号の供給に用いられるk個の
制御信号入力端子と、
前記n本の画像信号線のぞれぞれに接続され、前記画像信号の供給に用いられるn個の
画像信号入力端子とを備え、
前記k個の制御信号入力端子および前記n個の画像信号入力端子と電気的に接続された
可撓性を有する第2基板と、
前記第2基板上に形成され、前記画像信号線を介して前記k×n本のデータ線に前記画
像信号を供給し、前記制御信号線を介して前記制御信号とを供給する駆動回路と
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子
機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−189860(P2012−189860A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54017(P2011−54017)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】