説明

電気光学装置の製造方法

【課題】撥液層が隔壁の上面のみに形成された有機EL装置を製造する。
【解決手段】基板10の一方の面上に島状の第1電極74を形成する第1の工程と、第1電極74を覆う絶縁材料層55を形成する第2の工程と、絶縁材料層55上に、平面視で第1電極74に含まれる第1の領域53を除く領域である第2の領域54に撥液層36を形成する第3の工程と、絶縁材料層55と撥液層36とを一括してパターニングして、第1電極74の少なくとも一部を露出させる第1の開口部51を形成する第4の工程と、第1の開口部51内に発光機能層形成材料を含む液体材料23を滴下後、該液体材料を乾燥させて、発光機能層76を形成する第5の工程と、を記載の順に実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気光学装置の一分野である薄型(平面型)の画像表示装置として、有機EL装置が注目されている。有機EL装置は、画像表示領域内に陽極(第1電極)と少なくとも有機EL(エレクトロルミネッセンス)層を含む発光機能層と陰極(第2電極)とが積層されてなる有機EL素子を複数個有しており、個々の有機EL素子の発光を制御することで画像を形成している。そして、カラー画像を表示可能な有機EL装置は、画像表示領域内に赤色光を射出する有機EL素子と緑色光を射出する有機EL素子と青色光を射出する有機EL素子との3種類の有機EL素子を有している。
【0003】
複数の有機EL素子に夫々異なる色の発光を射出させる方法として、発光色に対応する発光機能層(特に有機EL層)を、液滴を滴下(吐出)するIJ(インクジェット)法により有機EL素子毎に形成する方法がある。平面視で陽極を囲む隔壁を形成して、該隔壁を側面として陽極を底面とする凹部内に発光機能層材料を含有する液材(液体材料)を滴下後、該液材を乾燥(硬化)させて発光機能層を形成する方法である。そしてかかるIJ法では、隣り合う凹部内に滴下後の液材が流出する現象を低減するために、隔壁の表面あるいは上面に撥液性を付与することが一般的である。
【0004】
撥液性を付与する方法としては、例えば第1の方法として、特許文献1に示すように形成後の隔壁にフロロカーボンガス(CF4ガス等)を用いたプラズマ処理を施す方法が知られている。該プラズマ処理により隔壁表面に生成されたフッ素化合物により、撥液性が付与される。また第2の方法として、隔壁の形成材料にフッ素系等の撥液剤を内包させておき、隔壁形成後の熱拡散により表面を撥液性とする方法がある。また第3の方法として、形成後の隔壁上面に転写法により撥液材料層を形成する方法がある。また、第4の方法として、パターニング前の隔壁の形成材料層の上面(の前面)に撥液層を形成しておき、隔壁のパターニング時に撥液層も一括してパターニングする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の第1の方法は、隔壁形成時の残渣が陽極上に残留していた場合、該残渣もフッ素化されるため陽極の表面も撥液化され得るという課題があった。陽極の表面も撥液化された場合、滴下された液材の挙動が不安定となり、隣り合う凹部内に流出しかねない。また上述の第2の方法は、隔壁形成時の残渣が陽極上に残留していた場合、該残渣に含有されている撥液剤により陽極の表面も撥液化され得るという課題があった。また上述の第3の方法は、陽極の表面にも撥液材料層が転写されかねないという課題が有った。
【0007】
さらに上述の第4の方法は、隔壁のパターニング時に撥液層がエッチング液(具体的には現像液)の浸透を妨げる可能性もあった。また、撥液層が充分にエッチングされず、上述の陽極上に架橋されたように残留する可能性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる電気光学装置の製造方法は、基板の一方の面上に島状の第1電極を形成する第1の工程と、上記第1電極を覆う絶縁材料層を形成する第2の工程と、上記絶縁材料層上に、平面視で上記第1電極に含まれる第1の領域を除く領域である第2の領域に撥液層を形成する第3の工程と、上記絶縁材料層と上記撥液層とを一括してパターニングして、上記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1の開口部を形成する第4の工程と、上記第1の開口部内に発光機能層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて、発光機能層を形成する第5の工程と、を記載の順に実施することを特徴とする。
【0010】
このような製造方法であれば、第4の工程の実施後において画素電極の表面に残る撥液層の残渣を低減できる。したがって第1の開口部内にIJ法を用いて良好な発光機能層を形成でき、表示品質の向上した電気光学装置を得ることができる。
【0011】
[適用例2]本適用例にかかる電気光学装置の製造方法は、基板の一方の面上に島状の第1電極を形成する第1の工程と、上記第1電極を覆う絶縁材料層を形成する第2の工程と、上記絶縁材料層上に、撥液層を形成する第3の工程と、上記絶縁材料層と上記撥液層とを一括してパターニングして、上記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1の開口部を形成する第4の工程と、上記第1の開口部内に発光機能層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて、発光機能層を形成する第5の工程と、を記載の順に実施し、上記第3の工程では、平面視で上記第1電極に含まれる第1の領域に形成される撥液層の層厚を、上記第1の領域を除く領域である第2の領域に形成される撥液層の層厚よりも小さく形成することを特徴とする。
【0012】
このような製造方法であれば、第4の工程の実施後において画素電極の表面に残る撥液層の残渣を低減できる。したがって第1の開口部内にIJ法を用いて良好な発光機能層を形成でき、表示品質の向上した電気光学装置を得ることができる。
【0013】
[適用例3]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第2の工程は感光性を有する上記絶縁材料層を形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0014】
このような製造方法であれば、第4の工程を実施する際に別途フォトレジスト層を形成する必要が無いため、絶縁材料層上に撥液層を形成した場合においても高い精度で第1の開口部を形成できる。
【0015】
[適用例4]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第3の工程は、上記第1の領域を、該第1の領域の外周線と上記第1の開口部の外周線とで囲まれる領域が所定の幅を有する環状の領域となるように形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0016】
このような製造方法であれば、パターニング後の絶縁材料層上の全域に撥液層を形成でき、かつ、第1電極の表面に残る残渣をより一層低減できる。
【0017】
[適用例5]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第2の工程は、上記絶縁材料層を、平面視で上記第1の領域に含まれ、かつ、上記第1電極を露出させる第2の開口部を有するように形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0018】
このような製造方法であれば、エッチング液、すなわちパターニングに用いる液材の浸透が促進されるため、第1の開口部のパターニング精度を向上できる。
【0019】
[適用例6]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第2の工程は、上記絶縁材料層を、絶縁材料を含む液体材料を将来的に上記第2の開口部となる領域を除く領域に滴下後、該液体材料を乾燥させて上記絶縁材料層とする工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0020】
このような製造方法であれば、絶縁材料層の形成時に第2の開口部を同時に形成できるため、製造コストを低減できる。
【0021】
[適用例7]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第3の工程は、撥液層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて撥液層とする工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0022】
このような製造方法であれば、領域による撥液層の形成密度の差を容易に達成できる。したがって製造コストを低減できる。
【0023】
[適用例8]上述の電気光学装置の製造方法であって、上記第3の工程は、一方の面に撥液材料層を有するフィルムを上記絶縁材料層に対して相対的に加圧して上記撥液材料層を上記絶縁材料層上に転写することにより上記撥液層を形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【0024】
このような製造方法であれば、領域による撥液層の形成密度の差を容易に達成できる。したがって製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の対象となる有機EL装置の回路構成を示す図。
【図2】第1の実施形態の対象となる有機EL装置の模式断面図。
【図3】第5の実施形態の対象となる有機EL装置の模式断面図。
【図4】第1の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図5】第1の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図6】第1の開口部と第2の開口部、及び第1の領域を示す図。
【図7】第1の領域の具体的な形状を示す図。
【図8】従来の製造方法により生じ得る撥液層の残渣を示す図。
【図9】第2の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図10】第3の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図11】第4の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図12】第5の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【図13】第5の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態にかかる電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について、図面を参照しつつ述べる。なお、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0027】
(第1の実施形態)
上述したように、本発明の製造方法は電気光学装置としての有機EL装置を対象としている。そこで、本実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を説明する前に、有機EL装置の概略構成について述べる。
【0028】
図1は、本実施形態の製造方法の対象となる有機EL装置1の回路構成を示す図である。有機EL装置1は、規則的に配置された複数の有機EL素子118の発光を個別に制御して、画像表示領域100にカラー画像を形成するアクティブマトリクス型の有機EL装置である。画像表示領域100には、複数の走査線102と該走査線と直交する複数の信号線104と該信号線に対して平行に延在する複数の電源供給線106が形成されている。そして、上記3種類の配線で囲まれる区分毎に、画素116が形成されている。
【0029】
各々の画素116は、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106から駆動電流が供給される有機EL素子118と、で構成されている。
【0030】
画素116は、赤色光を射出する赤色画素116Rと緑色光を射出する緑色画素116Gと青色光を射出する青色画素116Bの計3種類がある。有機EL装置においては、かかる発光色の差異が、後述する発光機能層76(図2参照)を発光色に合せて形成することで得られている。なお、以下の記載において「画素116(R,G,B)」あるいは単に「画素116」と表記した場合、上述の3種類の画素の総称を意味するものとする。画素116のように発光色毎に形成されている他の構成要素、例えば発光機能層76及び後述するカラーフィルター84(図3参照)等についても同様である。
【0031】
画像表示領域100の周辺には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路120から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、信号線104には信号線駆動回路130から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0032】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から画素116に駆動電流が供給される。そして個々の画素116(R,G,B)は、該駆動電流の大きさに応じて光を射出する。夫々の画素116(R,G,B)が任意の強度で発光を射出することで、画像表示領域100にカラー画像が形成される。なお、以下の記載において、画素116等の符号の後の「(R,G,B)」の表記は一部省略している。
【0033】
図2は、本実施形態の製造方法の対象となる有機EL装置1の画像表示領域100(図1参照)内における模式断面図であり、上述の3種類の画素116の断面を示す図である。ただし、スイッチング用TFT108と保持容量110については図示を省略している。図示するように有機EL装置1は、後述する封止接着層88を介して対向配置された素子基板10と対向基板11の一対の基板、及び該一対の基板間に形成された有機EL素子118等で形成されている。なお、以下の記載において、各々の基板(素子基板10及び対向基板11)から見て封止接着層88側となる面あるいは方向を「上面」、「上方」あるいは「上側」と称する。
【0034】
素子基板10は、ガラスあるいはプラスチック等からなる。有機EL装置1は、対向基板11側に光を射出するトップエミッション型の表示装置である。したがって、素子基板10は透明性を要しない。一方、対向基板11は透明性が必要であり、有機EL装置1においてはガラスで形成されている。素子基板10の対向基板11側の面上には、駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する)112が規則的に形成されている。TFT112は、ポリ(多結晶)シリコンからなる半導体層及びゲート電極等で構成されており、公知の技術を用いて形成されている。そのため、詳細の記述は省略する。
【0035】
TFT112の上面には、アクリル系の樹脂成分を主体とする層間絶縁膜80が形成されている。そして、該層間絶縁膜の上面には、第1電極としての画素電極(陽極)74が規則的に形成されている。なお、層間絶縁膜80は、酸化シリコン等の無機材料を主体とする第1層間絶縁膜とアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁膜とを積層した構成とすることもできる。画素電極74とTFT112とは、層間絶縁膜80を局所的に除去して形成されたコンタクトホール82を介して電気的に接続されている。
【0036】
画素電極74はITO(酸化インジウム・錫合金)等で形成されており、画素116毎に島状にパターニングされている。なお、画素電極74がITOで形成されている場合、該画素電極と素子基板10の間に、素子基板10側に向かう発光を対向基板11側に反射させる反射層を形成する必要がある。
【0037】
画素電極74の上面には、平面視で該画素電極を囲む隔壁15が形成されている。隔壁15は絶縁性材料、具体的には感光性アクリル材料からなり、各々の画素電極74を電気的に独立させている。そして、画素電極74は、外縁部において隔壁15と重なっている。すなわち、画素電極74の外縁部には、隔壁15と該画素電極とが重なる環状の領域が形成されている。隔壁15が形成された段階において、画素電極74の表面は、該環状の領域を除くと露出している。かかる露出している部分(あるいは領域)が後述する第1の開口部51(図6等参照)である。なお、第1の開口部51は、隔壁15を側壁として画素電極74を底面とする凹部であるとも言える。
【0038】
上述したように画素電極74は島状にパターニングされているため、隔壁15は平面視で網状となる。そして、隔壁15の上面には撥液層36が形成されている。かかる撥液層36は、後述するように、発光機能層76(R,G,B)をIJ法で形成する際に、該発光機能層の形成材料が隔壁15を乗り越えて隣り合う画素電極74上に流出することを低減する機能を果たしている。本実施形態の製造方法、及び後述する第2〜4の実施形態の製造方法は、有機EL装置1の製造工程における撥液層36の形成方法に関するものである。
【0039】
隔壁15を側面として画素電極74を底面とする凹部内には、発光機能層76(R,G,B)が形成されている。そして該発光機能層及び撥液層36等の上面には、第2電極としての陰極78が形成されている。画素電極74と発光機能層76と陰極78との積層体が有機EL素子118である。陰極78は、ITO、又はAl、又はAgMg(銀−マグネシウム合金)等の材料からなり、透明導電性を有している。したがって、発光機能層76内で生じた発光は、該陰極を介して対向基板11側から図中の矢印の方向に射出される。
【0040】
発光機能層76は、素子基板10側から順に、正孔注入層と、正孔輸送層と、通電によりすなわち正孔と電子の結合により発光する有機EL層と、電子輸送層と、電子注入層と、の計5層が積層されて形成されている。有機EL層を除く4層は上述の3種類の画素116間で共通である。有機EL層のみが、発光色に合せて3種類の画素116間で夫々異なる材料で形成されている。
【0041】
陰極78の上面には、封止接着層88が、少なくとも画像表示領域100の全域に渡って形成されている。そして、該封止接着層により対向基板11が貼り合されている。封止接着層88は素子基板10側から順に封止層と接着層が積層されて形成されており、封止層はさらに素子基板10側から順に電極保護層と緩衝層とガスバリア層とが積層されて形成されている。
【0042】
図3は、有機EL装置1とは異なる型の有機EL装置であり、後述する第5の実施形態にかかる製造方法の対象となる有機EL装置2の模式断面図である。有機EL装置2は、上述の有機EL装置1と同様の、カラー画像を表示可能なトップエミッション型の有機EL装置であり、回路構成も共通している。そこで、上述の図1に相当する図は省略すると共に、共通する構成要素には同一の符号を付与して説明の記載は省略する。
【0043】
有機EL装置2は、3原色の射出光を対向基板11の素子基板10側に形成されたカラーフィルター84(R,G,B)によって得ている。発光機能層76は白色光を発光する有機EL層を含む層であり、3種類の画素116(R,G,B)間で共通である。そして発光機能層76は、IJ法ではなく蒸着法等で少なくとも画像表示領域100の全域に形成されている。したがって、有機EL装置2は素子基板10側の隔壁15の上面には、撥液層36(図2参照)を有していない。
【0044】
カラーフィルター84(R,G,B)は、着色顔料を含有するアクリル等の透明樹脂材料で形成されている。カラーフィルター84Rは赤色光に相当する波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光は吸収する顔料を含有し、カラーフィルター84Gは緑色光に相当する波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光は吸収する顔料を含有し、カラーフィルター84Bは青色光に相当する波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光は吸収する顔料を含有している。そして、カラーフィルター84(及び後述するブラックマトリクス16)の上側には、保護層としてのオーバーコート層86が形成されている。発光機能層76内で生じた白色光はカラーフィルター84(R,G,B)透過することで3原色光の何れかの光となって、図中の矢印の方向に射出される。
【0045】
カラーフィルター84(R,G,B)は、上述の着色顔料を含有する透明樹脂材料を溶媒に分散させてなる液材をブラックマトリクス16で囲まれた凹部内にIJ法で供給した後、該溶媒を乾燥除去する方法で形成されている。したがって、有機EL装置2においては、上述のブラックマトリクス16で囲まれた凹部が第1の開口部に相当(該当)し、カラーフィルター84(R,G,B)が発光機能層76に相当している。そのため、有機EL装置1の隔壁15と同様に、有機EL装置2のブラックマトリクス16の上層にはIJ法でカラーフィルター84を形成する際に上述の液材が隣り合う凹部内に流出する現象を低減するための撥液層36が形成されている。後述する第5の実施形態にかかる製造方法は、ブラックマトリクス16と該ブラックマトリクスの上層の撥液層36の形成に関するものである。
【0046】
図4(a)〜(e)及び図5(f)〜(i)は、第1の実施形態にかかる有機EL装置1の製造方法を示す工程断面図である。上述したよう、本実施形態及び後述する第2〜4の実施形態は、画素電極を平面視で囲む隔壁15と該隔壁の上層に形成される撥液層36の形成に関するものである。画素電極74と素子基板10との間に配置されているTFT112(図2等参照)等は公知の技術で形成される。そこで、本実施形態及び後述する第2〜4の実施形態にかかる製造方法を示す工程断面図においては、画素電極74との素子基板10との間に配置されている各要素は層間絶縁膜80(図2等参照)を含めて素子層12として図示して、画素電極74は該素子層の上層に形成されるように図示する。以下、工程順に説明する。
【0047】
まず、図4(a)に示すように、素子基板10上に素子層12を形成し、該素子層の上層に第1の工程として画素電極74を形成する。上述したように素子層12の最上層には層間絶縁膜80(図2参照)が形成されている。画素電極74は、該層間絶縁膜の上に形成されたITOをフォトリソグラフィー法により島状にパターニングして形成する。
【0048】
次に、第2の工程として、図4(b)に示すように素子基板10上に絶縁材料としての感光性アクリル材料を溶媒等に分散させてなる第1の液材21をインクジェットヘッド19から滴下する。そして該第1の液材を乾燥させて、図4(c)に示す絶縁材料層としての感光性アクリル層55を形成する。
【0049】
本工程では、第1の液材21を素子基板10上の全面ではなく、画素電極74の一部を露出させる第2の開口部52が形成されるように、局所的に滴下する。上述の図1に示すように、有機EL装置1において、画素電極74を有する画素116はマトリクス状に形成されている。そして、第1の液材21は画素電極74毎に開口部が生じるように滴下される。したがって、本工程において第1の液材21が滴下される領域は、格子状の領域となる。なお、画素116が千鳥状に形成されている場合、第1の液材21は網状の領域に滴下されることとなる。
【0050】
第2の開口部52とは、後述する図6に示すように、後述する第1の領域53(図4(d)参照)及び将来的に形成される第1の開口部51(図5(f)参照)に含まれる領域である。なお、「含まれる」とは、第2の開口部52の外周線と第1の領域53(及び第1の開口部51)の外周線との間に、平面視で所定の幅を有する環状の領域が形成される態様を意味している。
【0051】
次に、第3の工程として、図4(c)に示すように、感光性アクリル層55上の第2の領域54に撥液材料を溶媒等に分散させてなる第2の液材22をインクジェットヘッド19から滴下する。そして、滴下された第2の液材22を乾燥させて、図4(d)に示すように感光性アクリル層55上に撥液層36を形成する。
【0052】
ここで、第2の領域54について説明する。本実施形態及び後述する第2の実施形態及び3の実施形態において、第3の工程の実施時すなわち第2の液材22をインクジェットヘッド19から滴下するにあたって、画像表示領域100(図1参照)を第1の領域53と第2の領域54とに区分している。第1の領域53は平面視で画素電極74に含まれる領域であり、将来的に形成される第1の開口部51(図5(f)参照)にも平面視で含まれる領域である。段落50で述べたように、「含まれる」とは、双方の外周線の間に環状の領域が形成される態様のことである。
【0053】
第2の領域54は、画像表示領域100内における第1の領域53以外の領域である。そして第2の領域54は、本実施形態及び後述する第2の実施形態と第4の実施形態において、撥液層36が形成される領域である。また、第2の領域54は、後述する第3の実施形態において、撥液層36が、第1の領域53における該撥液層の層厚よりも厚い層厚となるように形成される領域である。第1の領域53が平面視で画素電極74に含まれるため、有機EL装置1における第2の領域54は、平面視で格子状となる。そして、本実施形態では、第2の開口部52が平面視で第1の領域53に含まれるため、撥液層36は平面視で感光性アクリル層55内に位置することとなる。なお、上述したように、画素116が千鳥状に形成されている場合、第2の領域54は網状となる。
【0054】
図6に、第1の開口部51と第2の開口部52、及び第1の領域53を示す。図示するように、第1の開口部51は、感光性アクリル層55(不図示)をパターニングして画素電極74を露出させた領域である。感光性アクリル層55の、パターニングされずにすなわち開口部とならずに残された部分が隔壁15となる。第1の領域53は第1の開口部51の内側に区分された領域であり、該第1の領域以外の領域が第2の領域54(不図示)となる。第2の開口部52は第1の領域53のさらに内側に区分されている。そして、本実施形態、及び後述する第2〜4の実施形態においては、第1の領域53の外周線62と第1の開口部51の外周線61との間隔が(角の部分を除くと)一定となるように設定されている。
【0055】
ただし、フォトリソグラフィー法で形成される第1の開口部51とは異なり、第2の領域54は液材(第2の液材22)を液滴として滴下して形成される領域である。したがって、第1の領域53と第2の領域54との境界線、すなわち第1の領域53の外周線62は、微視的には曲線を組み合せた形状となる。
【0056】
図7(a)及び図7(b)に、第1の領域53の具体的な形状を示す。上述したように、第2の領域54が滴下された液滴を乾燥させて得られる略円形のパターンを敷き詰めて形成されているため、第1の領域53の外周線62は円弧を組み合せた形状となる。したがって、第3の工程は、第1の開口部51の外周線61と第1の領域53の外周線62との間隔が巨視的には略一定となるように第2の液材22を滴下して撥液層36を形成する工程である。
なお、後述する第4の実施形態においては、撥液層36は転写法により形成される。したがって、第1の領域53の形状は上記の形状とは異なっている。
【0057】
次に、第4の工程として、図5(e)に示すように感光性アクリル層55と撥液層36を一括してパターニングして、隔壁15と該隔壁で囲まれた領域である第1の開口部51を形成する。そして、該パターニング後に、素子基板10を略200℃の温度で略30分加熱してポストベークを行い、隔壁15を硬化させる。第1の開口部51は、画素電極74が露出する領域である。上述のパターニングは、フォトリソグラフィー法により行う。図示するように素子基板10上にフォトマスク28を配置して、矢印で示すように紫外線を照射する。本実施形態の製造方法で用いる感光性アクリルはポジ型であるため、エッチングすべき領域(将来的に第1の第1の開口部となる領域)に紫外線を照射する。そして現像液を用いてウェットエッチングして、図5(f)に示すように第1の開口部51を形成する。
【0058】
ここで、感光性アクリル層55と撥液層36とは、最適なエッチング液が異なるため、感光性アクリル層55に最適なエッチング液(すなわち感光性アクリルの現像液)を用いた場合は撥液層36が溶解されず、パターニングが好ましく行われない可能性がある。しかし、本実施形態の製造方法においては、撥液層36を素子基板10の全面に形成せずに第2の領域54にのみ形成することで、単一のエッチング液を用いてパターニングを好適に実施している。かかる効果については後述する。
【0059】
第1の開口部51の形成後、以下に記載の工程を行って有機EL装置1を形成する。まず、素子基板10の全面にO2プラズマ(不図示)を照射する。かかる照射により、画素電極74の表面に残留している可能性のある有機系の残渣を除去する。そして画素電極74の表面を親液性とする。
【0060】
次に、第5の工程として、図5(g)に示すように、第1の開口部51内すなわち隔壁15を側壁として画素電極74を底面とする凹部内に発光機能層材料を溶媒等に分散させてなる第3の液材23をインクジェットヘッド19から滴下する。そして該第3の液材を乾燥させて固体として、図5(h)に示すように、第1の開口部51内すなわち上述の凹部内に発光機能層76を形成する。
【0061】
上述したように有機EL装置1の発光機能層76は正孔注入層等の複数の材料層を積層して形成されている。したがって、本工程は上述の第3の液材23の滴下と該第3の液材の乾燥を複数回繰り返す工程である。そして、第3の液材23は、夫々異なる材料を分散させてなる複数種の液材の総称である。また、発光機能層76に含まれる有機EL層は3種類の画素116(R,G,B)毎に異なっている。したがって、有機EL層の形成は、画素116(R,G,B)毎に異なる材料を分散させた液材を滴下して行う。
【0062】
発光機能層76を形成後、図5(i)に示すように、素子基板10上の少なくとも画像表示領域100(図1参照)を含む領域に陰極78を形成する。陰極78は上述したようにAl、又はAgMg(銀−マグネシウム合金)等の材料からなり、スパッタ法又は蒸着法により形成される。画素電極74上に発光機能層76と陰極78とを積層することで、有機EL素子118が形成される。以下、封止接着層88(図2参照)を介して対向基板11(図2参照)を配置して有機EL装置1を形成させる。
【0063】
本実施形態にかかる製造方法は、パターニングされる前の撥液層36を、平面視で画素電極74に含まれる領域である第1の領域53には形成しない点に特徴がある。撥液層36は、IJ法により発光機能層76を形成する際の、第3の液材23の流出を低減するために形成される層である。上述したように画素電極74の表面はO2プラズマにより親液性が付与されているため、滴下された第3の液材23は第1の開口部51内に略均一に分布する。一方、隔壁15の上面には撥液層36が形成されているため、滴下された第3の液材23は隔壁15を乗り越えることが困難である。したがって、撥液層36により滴下された第3の液材23が隣り合う第1の開口部51へ流出する現象が低減され、各画素116間における発光機能層76の層厚等の均一性が向上した有機EL装置が形成される。
【0064】
一方で、隔壁15の上面に撥液層36を形成する場合、従来の製造方法では該撥液層の残渣が画素電極74上に残留する可能性があった。図8は、従来の製造方法により生じ得る撥液層36の残渣65を示す図である。図8(a)は、感光性アクリル層55上の全面に均一の層厚で撥液層36を形成した状態を示す模式断面図である。そして図8(b)は、フォトリソグラフィー法により第1の開口部51を形成した状態を示す模式断面図である。
【0065】
感光性アクリル層55がパターニングされる前の段階において、将来的に第1の開口部51となる領域にも撥液層36が形成されている。そして上述したように、感光性アクリル層55の好適なエッチング液は撥液層36を溶解する機能が不足している。したがって、第1の開口部51となる領域の感光性アクリル層55が除去されても撥液層36は除去されずに残り、図8(b)に示すように残渣65が生じる。なお、図8(c)は図8(b)の左側の第1の開口部51を平面視した図であり、図8(d)は図8(b)の右側の第1の開口部51を平面視した図である。
【0066】
図8(b)〜(d)に示すように、残渣65は画素電極74上に残る場合も有り、また第1の開口部51を囲む隔壁15間に架橋されたように残る場合もある。そしてこのような残渣65は、撥液性により、第3の液材23が滴下されたときに該第3の液材をはじいて隣り合う第1の開口部51へ流出させ得る。その結果、完成後の有機EL装置の表示品質が低下することとなる。
【0067】
一方、本実施形態の製造方法は、感光性アクリル層55がパターニングされる前の段階において、将来的に第1の開口部51となる領域、すなわち画素電極74と重なる領域には、撥液層36を殆んど形成していない。感光性アクリル層55をパターニングする第4の工程は、撥液層36の外周を最終的に整える工程であり、その前の段階でパターニングは既に殆んどなされている。そのため、該撥液層を溶解する機能が不足するエッチング液を用いるにもかかわらず、パターニング後に第1の開口部51内(すなわち画素電極74上)に残る残渣65を極めて低いレベルに抑えることができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、発光機能層76を形成する工程において第3の液材23が隣り合う第1の開口部51に流出することを低減でき、表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。図9は、第2の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態の対象となる有機EL装置は上述の第1の実施形態の対象となる有機EL装置1と同一である。そこで、共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明は一部省略する。以下、工程順に説明する。
【0069】
まず、図9(a)に示すように、素子基板10上に素子層12を形成し、該素子層の上層に第1の工程として画素電極74を形成する。画素電極74の形成材料及び形成方法は、上述の第1の実施形態における形成材料及び形成方法と同一である。
【0070】
次に、第2の工程として、図9(b)に示すように、画素電極74を覆うようにポジ型の感光性アクリルからなる感光性アクリル層55を形成する。本実施形態では、上述の第1の実施形態とは異なり、感光性アクリル層55を素子基板10の全面に形成する。したがって、第2の開口部52は形成しない。なお、感光性アクリル層55の形成方法はスピンコート法が好ましい。
【0071】
次に、第3の工程として、図9(c)に示すように、感光性アクリル層55上の第2の領域54に撥液材料を溶媒等に分散させてなる第2の液材22をインクジェットヘッド19から滴下する。そして、滴下された第2の液材22を乾燥させて感光性アクリル層55上に図9(d)に示すように撥液層36を形成する。第2の領域54及び本図に示す第1の領域53の定義は、上述の第1の実施形態における第1の領域53等の定義と同一である。
【0072】
次に、第4の工程として、感光性アクリル層55を撥液層36と共にパターニングして、第1の開口部51を形成する。まず、図9(d)に示すように素子基板10上にフォトマスク28を配置する。そして将来的に第1の開口部51が形成される領域に対して紫外線を照射する。そして、エッチングにより、紫外線が照射された領域の感光性アクリル層55を除去して図9(e)に示すように、第1の開口部51と隔壁15を形成する。そして、上記の第1の実施形態における条件と同一の条件でポストベークを実施して、隔壁15を硬化させる。
【0073】
以下、O2プラズマを照射した後、第5の工程として、IJ法により発光機能層76(図5(h)参照)を形成し、さらに陰極78(図5(i)参照)等を形成して、図1及び図2に示す有機EL装置1を得る。かかる工程は、第1の実施形態において説明した工程と同一であるため、図示を省略する。
【0074】
本実施形態の製造方法は、上述の第1の実施形態の製造方法と同様に、第3の工程において、将来的に第1の開口部51が形成される領域には撥液層36を殆んど形成しない点に特徴がある。したがって、第1の実施形態の製造方法と同様に、パターニング後の第1の開口部51内に残る残渣65を極めて低いレベルに抑えることができる。そのため、発光機能層76を形成する工程において上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができ、表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0075】
そして、本実施形態の製造方法は、第1の実施形態の製造方法とは異なり、感光性アクリル層55に第2の開口部52(図4(b)参照)を形成していない。すなわち、感光性アクリル層55は、スピンコート法等で素子基板10上の全面に形成される。したがって本実施形態の製造方法は、第1の実施形態の製造方法と比べて工程を簡略化でき製造コストを低減できるという効果を有している。また、感光性アクリル層55をパターニングして第1の開口部51を形成するまでの間、画素電極74の表面が保護されているため、該表面に傷等が発生することが低減されるという効果も得ることができる。
【0076】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかる、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。図10は、第3の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態の対象となる有機EL装置は上述の第1〜第2の実施形態の対象となる有機EL装置1と同一である。そこで、共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明は一部省略する。以下、工程順に説明する。
【0077】
まず、図10(a)に示すように、素子基板10上に素子層12を形成し、該素子層の上層に第1の工程として画素電極74を形成する。画素電極74の形成材料及び形成方法は、上述の第1〜第2の実施形態における形成材料及び形成方法と同一である。
【0078】
次に、第2の工程として、図10(b)に示すように、画素電極74を覆うようにポジ型の感光性アクリルからなる感光性アクリル層55を形成する。本実施形態では、上述の第2の実施形態と同様に、第2の開口部52を形成せずに感光性アクリル層55を素子基板10の全面に形成する。したがって、感光性アクリル層55をスピンコート法等で形成できる。
【0079】
次に、第3の工程として、図10(c)に示すように、感光性アクリル層55上に撥液材料を溶媒等に分散させてなる第2の液材22をインクジェットヘッド19から滴下する。そして、滴下された第2の液材22を乾燥させて感光性アクリル層55上に撥液層36を形成する。
【0080】
本実施形態の製造方法は、第3の工程すなわち撥液層36を形成する工程において、素子基板10上の領域毎に滴下量を変化させつつ第2の液材22を滴下することに特徴がある。具体的には、第2の領域54には上述の第1〜第2の実施形態における滴下量と同等の量の第2の液材22を滴下する。そして、第1の領域53には第2の領域54における滴下量よりも少ない量の第2の液材22を滴下する。
【0081】
図10(d)は、本工程によって形成された撥液層36を示す図である。本工程においては、上述するように領域毎に滴下量を変化させた結果、領域毎に層厚が異なる撥液層36が形成される。具体的には、第2の領域54においては上述の第1の実施形態及び第2の実施形態において第2の領域54に形成される撥液層36の層厚と同等の層厚を有し、第1の領域53においては上述の層厚よりも薄い層厚を有する撥液層36が形成される。言い換えると、本工程において撥液層36は、第1の領域53における該撥液層の層厚が、第2の領域54における該撥液層の層厚よりも小さく(薄く)なるように形成される。
なお、第1の領域53と第2の領域54の定義は、上述の第1の実施形態で述べた定義と同一である。また、第1の領域53と第2の領域54の境界線が、上述の図7に示すように円弧を組み合わせて構成されていることも、上述の第1〜第2の実施形態と同様である。
【0082】
次に、第4の工程として、感光性アクリル層55を撥液層36と共にパターニングして、第1の開口部51を形成する。すなわち図10(e)に示すように素子基板10上にフォトマスク28を配置する。そして将来的に第1の開口部51が形成される領域に対して紫外線を照射する。そして、エッチングにより、紫外線が照射された領域の感光性アクリル層55を該領域の撥液層36と共に除去して、上述の図5(f)あるいは図9(e)に示すような、第1の開口部51と隔壁15を形成する。そして、上記の第1の実施形態における条件と同一の条件でポストベークを実施して、隔壁15を硬化させる。
【0083】
以下、O2プラズマを照射した後、第5の工程として、IJ法により発光機能層76(図5(h)等参照)を形成し、さらに陰極78(図5(i)参照)等を形成して、図1及び図2に示す有機EL装置1を得る。かかる工程は、上述の第1〜第2の実施形態において説明した工程と同一であるため、図示を省略する。
【0084】
本実施形態の製造方法は、第1〜第2の実施形態の製造方法とは異なり、第1の開口部51が形成される前の段階において素子基板10の全面に撥液層36を形成している。そして該撥液層の層厚を、領域毎に異ならせている。具体的には、第2の領域54においては上述第1〜第2の実施形態における撥液層36の層厚と同等の層厚としており、第1の領域53においては上述の層厚よりも薄い層厚としている。
【0085】
第1の領域53に形成する相対的に薄い撥液層36は、隔壁15の上面に確実に撥液層36を形成するためのものである。上述したように、第2の領域54は、将来的に形成される隔壁15を平面視で含んでいる。したがって、第3の工程のおける第2の液材22の滴下が正常に実施されている場合、撥液層36は隔壁15の上面の全域に形成される。しかし、第3の工程における第2の液材22の滴下に不備があり、第2の領域54内に該第2の液材が滴下されない領域が発生した場合、第4の工程の実施により形成された隔壁15上に撥液層36が形成されず、感光性アクリル層55が露出する領域が生じる可能性がある。
【0086】
本実施形態の製造方法は、第1の領域53にも本来の層厚(第2の領域54における層厚)よりも薄い層厚ではあるが撥液層36を形成するため、上述の不備が生じても、隔壁15の上面に感光性アクリル層55(すなわち感光性のアクリル層)が露出することが低減される。したがって、第3の工程に不備があった場合であっても、第5の工程で発光機能層76を形成する際に滴下された第3の液材23が、隣り合う第1の開口部51へ流出する現象が低減される。そのため、上述の不備があった場合でも有機EL装置1の表示品質を維持でき、信頼性等の低下も避けることができる。
【0087】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態にかかる、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。図11は、第4の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態の対象となる有機EL装置は上述の第1〜第3の実施形態の対象となる有機EL装置1と同一である。そこで、共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明は一部省略する。以下、工程順に説明する。
【0088】
まず、図11(a)に示すように、素子基板10上に素子層12を形成し、該素子層の上層に第1の工程として画素電極74を形成する。画素電極74の形成材料及び形成方法は、上述の第1〜第3の実施形態における形成方法と同一である。そして次に第2の工程として、画素電極74が形成された素子基板10上にポジ型の感光性アクリルからなる感光性アクリル層55を形成する。
【0089】
本実施形態では、感光性アクリル層55を、上述の第1の実施形態と同様に、インクジェットヘッド19から感光性アクリルを溶媒等に分散させてなる第1の液材21を滴下し、滴下後の該第1の液材を硬化させる手法で形成する。そして第1の実施形態と同様に、該絶縁材料層に第2の開口部52を形成する。すなわち、感光性アクリル層55を素子基板10の全面に形成するのではなく、局所的に形成する。
なお、本実施形態における第2の開口部52は、第1の実施形態における第2の開口部52と略同一の部分であり、将来的に形成される第1の開口部51(図5(f)等参照)に含まれる領域である。ただし、第2の開口部52は、第1の開口部51の形成に伴い消滅する区分であるため、厳密に同一である必要はない。
【0090】
局所的に感光性アクリル層55を形成した後、第3の工程として転写法を用いて該絶縁材料層上に撥液層36を形成する。まず、図11(b)に示すように、ベースフィルム33と撥液材料層34とを積層して形成されたラミネートフィルム32を、素子基板10上に、撥液材料層34と感光性アクリル層55とが対向するように配置する。そして次に、図11(c)に示すように、加圧ローラー26を用いて、ラミネートフィルム32に対してベースフィルム33側から押し圧を加える。そして撥液材料層34を感光性アクリル層55に転写して、撥液層36とする。
【0091】
図11(d)は、上述の転写により形成された撥液層36を示す図である。本実施形態においては、撥液層36がセルフアライメント的に形成される。上述の加圧工程では、素子基板10上の凸部、すなわち感光性アクリル層55の上面にのみ撥液材料層34が転写されて撥液層36となる。撥液層36が形成された領域が第2の領域54であり、それ以外の領域が第1の領域53である。したがって、本実施形態では、感光性アクリル層55が形成された領域が第2の領域54となる。
【0092】
以下、第4の工程として、図11(e)に示すように将来的に第1の開口部51となる領域に紫外線を照射する。そして、エッチングにより感光性アクリル層55のうち紫外線が照射された部分を上層の撥液層36と共に除去して、上述の図5(f)に示すように第1の開口部51を形成する。そして、上記の第1の実施形態における条件と同一の条件でポストベークを実施して、隔壁15を硬化させる。
【0093】
ポストベーク後、素子基板10上の全面にO2プラズマを照射する。そして次に、第5の工程として、IJ法により発光機能層76(図5(h)等参照)を形成し、さらに陰極78(図5(i)参照)等を形成する。そしてさらに対向基板11を封止接着層88を介して貼り合せることで、図1及び図2に示す有機EL装置1を得る。かかる工程は、上述の第1〜第3の実施形態において説明した工程と同一であるため、図示を省略する。
【0094】
本実施形態の製造方法は、第3の工程において撥液層36を、素子基板10上において局所的に形成する点で上記の第1〜第2の実施形態と共通している。そして、かかる第3の工程をIJ法ではなく転写法で行う点で、第1〜第2の実施形態と相違している。転写法はインクジェット装置を要しないため、低コストで実施できる。また、乾燥させる工程も不要であるため、製造工程を簡略化できる。
【0095】
そして、転写法で形成された撥液層36はIJ法で形成された撥液層36と同等の効果を発揮し得るため、第1の開口部51を形成後にIJ法で発光機能層76を形成する際に第3の液材23の流出を充分に低減できる。したがって、本実施形態によれば、製造コストを低減しつつ表示品質及び信頼性の向上した有機EL装置を得ることができる。
【0096】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態にかかる電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。図12及び図13は、第5の実施形態にかかる有機EL装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施形態の対象となる有機EL装置は、上述の第1〜第4の実施形態の対象となる有機EL装置1ではなく上記の図3に示す有機EL装置2である。そして、本実施形態の対象となる構成要素は、有機EL装置2の対向基板11(図3参照)に形成されたカラーフィルター84である。以下、工程順に説明する。
【0097】
まず、図12(a)に示すように、対向基板11上に、ブラックマトリクス材料を溶媒等に分散させてなる第4の液材24を、インクジェットヘッド19を用いて局所的に、すなわち開口部が生じるように滴下する。第4の液材24が滴下されない領域は、上述の第1〜4の実施形態における第2の開口部52に相当する領域である。すなわち将来的に形成されるブラックマトリクス16(図13参照)で囲まれる領域のさらに内側(すなわち中央部)に位置する領域である。
【0098】
次に、図12(b)に示すように、該第4の液材を乾燥させてブラックマトリクス材料層56を形成する。ブラックマトリクス材料層56は、後述する工程でパターニングされてブラックマトリクス16(図3参照)となる。したがって、本工程ではブラックマトリクス材料層56を将来的に形成されるブラックマトリクス16を平面視で含むように形成する。なお、ブラックマトリクス材料とは、カーボンブラックが混入されたポジ型の感光性のアクリル樹脂である。
【0099】
次に、図12(c)に示すように、ブラックマトリクス材料層56の上面にインクジェットヘッド19から第2の液材22を滴下する。該第2の液材が滴下される領域は、上述の第1〜4の実施形態における第2の領域54に相当する領域である。すなわち、ブラックマトリクス材料層56からはみ出さず、かつ将来的に形成されるブラックマトリクス16を含む領域である。しかし、対向基板11には画素電極74が形成されていないため、本実施形態ではかかる文言は使用しない。
【0100】
次に、該第2の液材を乾燥させて、図12(d)に示すように撥液層36を形成する。そして、図12(e)に示すように、対向基板11の上側にフォトマスク28を配置する。そして、将来的にブラックマトリクス16が形成される領域以外の領域に、矢印で示すように紫外線を照射する。
【0101】
次に、図13(f)に示すように、紫外線が照射された領域のブラックマトリクス材料層56をエッチングして、該領域の撥液層36と共に除去する。ブラックマトリクス材料層56のうち、このエッチング工程でエッチングされずに残った部分がブラックマトリクス16となる。エッチング前の段階において、ブラックマトリクス材料層56の上層には撥液層36が形成されていたため、ブラックマトリクス16の上面には、全域に渡って撥液層36が形成されている。そして本工程により、該ブラックマトリクスを側面(側壁)として対向基板11を底面とする凹部が形成される。
【0102】
上述したように、本工程のエッチング前の段階において撥液層36は局所的に、具体的には上述の第1〜4の実施形態における第2の領域54に相当する領域にのみ形成されている。したがって本工程においては、該撥液層によりエッチング液の浸透が妨げられる現象が低減されている。同時に、上述のエッチング時に除去される撥液層36の量が低減されるため、除去された撥液層36が対向基板11に再付着する現象も低減される。
【0103】
該凹部が形成された領域は、上述の第1〜4の実施形態における第1の開口部51に相当する。しかし、対向基板11には画素電極74が形成されていないため本実施形態ではかかる文言は使用しない。そして、かかる凹部が形成された後、対向基板11の全面にO2プラズマを照射する。そして、上述のエッチング工程により露出された対向基板11の表面の親液性を向上させる。
【0104】
次に、図13(g)に示すように、上述の凹部内にインクジェットヘッド19から、カラーフィルター材料を溶媒等に分散させてなる第5の液材25を滴下する。ここでカラーフィルター材料とは、上述したように特定の波長範囲の光を透過させ他の波長範囲の光を吸収する顔料を含む樹脂材料である。上述したように、上述の凹部内は親液性が付与されているため、滴下された第5の液材25は該凹部内に略均一に分布する。また、該凹部を囲むブラックマトリクス16の上層には撥液層36が形成されているため、滴下された第5の液材25が隣り合う凹部へ流出する現象も充分に低減されている。
【0105】
次に、図13(h)に示すように、第5の液材25を乾燥させて上述の凹部内にカラーフィルター84(R,G,B)を形成する。上述したように、符号に含まれるアルファベットは、透過させる波長範囲の光に対応する色を示している。次に、図13(i)に示すように、対向基板11の全面にオーバーコート層86を形成する。そして、該対向基板を陰極78(図3参照)まで形成された素子基板10(図3参照)と封止接着層88を介して貼り合せて有機EL装置2を得る。
【0106】
本実施形態の有機EL装置の製造方法、具体的にはカラーフィルターの製造方法によれば、ブラックマトリクス16の上面の全域に撥液層36を形成し、かつ第5の液材25が滴下される凹部内には該撥液層の残渣等が残留する現象を低減できる。そして上述したように、該撥液層により厚さ等の均一性及び色純度が向上したカラーフィルター84を形成できる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、表示品質及び信頼性等の向上した有機EL装置2を得ることができる。
【0107】
本発明の実施の形態は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0108】
(変形例)
上述の第4の実施形態では、感光性アクリル層55に撥液材料層34を転写する工程で用いるフィルムとして、ベースフィルム33の全面に撥液材料層34が形成されたラミネートフィルム32を用いている。しかし上述の工程は第2の開口部52に対応する領域、又は第1の領域53に対応する領域から予め撥液材料層34を除去したラミネートフィルム、すなわち表面の撥液材料層34がパターニングされたラミネートフィルムを用いることもできる。かかるラミネートフィルムを用いれば、撥液材料層34を必要な領域にのみに転写することができる。また、感光性アクリル層55をスピンコート法で素子基板10の全面に形成した場合にも、撥液層36を転写法で形成できる。
【符号の説明】
【0109】
1…電気光学装置としての有機EL装置、2…電気光学装置としての有機EL装置、10…素子基板、11…対向基板、12…素子層、15…隔壁、16…ブラックマトリクス、19…インクジェットヘッド、21…第1の液材、22…第2の液材、23…第3の液材、24…第4の液材、25…第5の液材、26…加圧ローラー、28…フォトマスク、32…ラミネートフィルム、33…ベースフィルム、34…撥液材料層、36…撥液層、51…第1の開口部、52…第2の開口部、53…第1の領域、54…第2の領域、55…絶縁材料層としての感光性アクリル層、56…ブラックマトリクス材料層、61…第1の開口部の外周線、62…第1の領域の外周線、65…残渣、74…第1電極としての画素電極、76…発光機能層、78…陰極、80…層間絶縁膜、82…コンタクトホール、84…カラーフィルター、86…オーバーコート層、88…封止接着層、112…駆動用TFT、116…画素、118…有機EL素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面上に島状の第1電極を形成する第1の工程と、
前記第1電極を覆う絶縁材料層を形成する第2の工程と、
前記絶縁材料層上に、平面視で前記第1電極に含まれる第1の領域を除く領域である第2の領域に撥液層を形成する第3の工程と、
前記絶縁材料層と前記撥液層とを一括してパターニングして、前記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1の開口部を形成する第4の工程と、
前記第1の開口部内に発光機能層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて、発光機能層を形成する第5の工程と、
を記載の順に実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
基板の一方の面上に島状の第1電極を形成する第1の工程と、
前記第1電極を覆う絶縁材料層を形成する第2の工程と、
前記絶縁材料層上に、撥液層を形成する第3の工程と、
前記絶縁材料層と前記撥液層とを一括してパターニングして、前記第1電極の少なくとも一部を露出させる第1の開口部を形成する第4の工程と、
前記第1の開口部内に発光機能層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて、発光機能層を形成する第5の工程と、
を記載の順に実施し、
前記第3の工程では、平面視で前記第1電極に含まれる第1の領域に形成される撥液層の層厚を、前記第1の領域を除く領域である第2の領域に形成される撥液層の層厚よりも小さく形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第2の工程は感光性を有する前記絶縁材料層を形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第3の工程は、前記第1の領域を、該第1の領域の外周線と前記第1の開口部の外周線とで囲まれる領域が所定の幅を有する環状の領域となるように形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記絶縁材料層を、平面視で前記第1の領域に含まれ、かつ、前記第1電極を露出させる第2の開口部を有するように形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第2の工程は、前記絶縁材料層を、絶縁材料を含む液体材料を将来的に前記第2の開口部となる領域を除く領域に滴下後、該液体材料を乾燥させて前記絶縁材料層とする工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第3の工程は、撥液層形成材料を含む液体材料を滴下後、該液体材料を乾燥させて撥液層とする工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかの1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記第3の工程は、一方の面に撥液材料層を有するフィルムを前記絶縁材料層に対して相対的に加圧して前記撥液材料層を前記絶縁材料層上に転写することにより前記撥液層を形成する工程であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−9299(P2012−9299A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144610(P2010−144610)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】