説明

電気光学装置の駆動方法、電気光学装置の制御装置、電気光学装置および電子機器

【課題】初期化処理の後に表示した画像が画像を構成する画素の領域より広がって知覚されるのを抑える。
【解決手段】電気光学装置は、表示部3を初期化する初期化処理では、まず奇数行で且つ奇数列の画素100を黒、奇数行で且つ偶数列の画素100を白、偶数行で且つ奇数列の画素100を白、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒にする第1ステップを実行する。次に奇数行で且つ奇数列の画素100を白、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒と、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒、偶数行で且つ偶数列の画素100を白にする第2ステップで初期化処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の表示部を初期化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動方式の表示装置においては、新しい画像を表示するときに前の画像の残像が残るのを防ぐ発明として特許文献1に開示された表示装置がある。この表示装置は、隣り合う画素の一方を黒、他方を白にした第1の市松模様の表示と、第1の市松模様で黒であった画素を白、白であった画素を黒にした第2の市松模様の表示を交互に行い、最後に全画素を白にした後で新しい画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−58645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気泳動方式の表示装置においては、全画素を白の状態にしてから新たに黒の画像を表示する場合、黒の画像の輪郭部分の画素に隣り合う白の画素においても黒の電気泳動粒子が移動してしまい、黒として知覚される領域が黒にした画素の領域より広がって見えてしまうことがある。また、新しい画像を表示する前に全画素を黒にしたとしても、新たに白の画像を表示する場合、白の画像の輪郭部分の画素に隣り合う黒の画素においても白の電気泳動粒子が移動してしまい、白として知覚される領域が白にした画素の領域より広がって見えてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、初期化処理の後に表示した画像が画像を構成する画素の領域より広がって知覚されるのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る電気光学装置の駆動方法は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の駆動方法であって、前記表示部の画素を初期化する初期化処理は、前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする最終ステップで終了することを特徴とする。
本発明によれば、初期化処理の後に新たに画像を表示した場合、画像の輪郭部分の画素は、粒子の移動方向が第1電極から第2電極の方向へ移動するものと第2電極から第1電極のほうへ移動するものの両方があるため、表示した画像が表示した画像を構成する画素の領域より広がって知覚されるのを抑えることができる。
【0007】
また本発明においては、前記初期化処理は、前記第1領域の画素の階調を前記最終ステップにおける階調と異なる階調とする一方、前記第2領域の画素の階調を前記最終ステップにおける階調と異なる階調とするステップを前記最終ステップの前に有する構成であってもよい。
この構成によれば、第1領域の画素の粒子と第2領域の画素の粒子が攪拌されるため、初期化前の画像の残像が視認されにくくなる。
【0008】
また本発明においては、前記画素は行列で配置され、前記画素毎に前記画素の表示状態を定める画素回路を備え、前記画素回路の行毎に走査線を備え、前記画素回路の列毎にデータ線を備え、前記第1領域および前記第2領域は、前記データ線の伸びる方向に沿った領域である構成としてもよい。
この構成によれば、走査線を選択する毎にデータ線に供給する信号を変化させなくてもよいため、消費電力を抑えることができる。
【0009】
また本発明においては、前記初期化処理においては、前記初期化処理の前に前記表示部に表示されていた画像に応じて前記第1領域および前記第2領域の大きさを変更するする構成としてもよい。
この構成によれば、初期化前に表示されていた画像に応じて第1領域および第2領域の大きさが変更され、初期化前の画像の残像が視認されにくくなる。
【0010】
また上記目的を達成するために本発明に係る電気光学装置の制御装置は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御装置であって、前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする処理で前記表示部の画素の初期化を終了する初期化手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、初期化処理の後に新たに画像を表示した場合、画像の輪郭部分の画素は、粒子の移動方向が第1電極から第2電極の方向へ移動するものと第2電極から第1電極のほうへ移動するものの両方があるため、表示した画像が表示した画像を構成する画素の領域より広がって知覚されるのを抑えることができる。
【0011】
また上記目的を達成するために本発明に係る電気光学装置は、帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置であって、前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする処理で前記表示部の画素の初期化が終了されることを特徴とする。
本発明によれば、初期化処理の後に新たに画像を表示した場合、画像の輪郭部分の画素は、粒子の移動方向が第1電極から第2電極の方向へ移動するものと第2電極から第1電極のほうへ移動するものの両方があるため、表示した画像が表示した画像を構成する画素の領域より広がって知覚されるのを抑えることができる。
【0012】
なお、本発明は、電気光学装置のみならず、当該電気光学装置を有する電子機器としても概念することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係わる電気光学装置1の構成を示した図。
【図2】表示部3の部分断面図。
【図3】画素回路110の構成を示した図。
【図4】初期化処理を説明するための図。
【図5】初期化処理の効果を説明するための図。
【図6】電子ブックリーダー1000の外観図。
【図7】変形例に係わる初期化処理を説明するための図。
【図8】変形例に係わる初期化処理を説明するための図。
【図9】変形例に係わる初期化処理を説明するための図。
【図10】変形例に係わる初期化処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
(実施形態の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係わる電気光学装置1の構成を示した図である。電気光学装置1は、コントローラー2、表示部3、走査線駆動回路4およびデータ線駆動回路5を備えている。コントローラー2は、表示部3が備える画素を駆動するための各種信号を出力して各部を制御する制御装置である。表示部3においては、行方向(X方向)に沿ってm行の走査線112が設けられており、列方向(Y方向)に沿ってn列のデータ線114が設けられている。また表示部3においては、行方向と列方向に沿って画素回路110がm行×n列でマトリクス状に設けられている。画素回路110は、走査線112およびデータ線114に接続されている。例えば、1行1列目の画素回路110は、1行目の走査線112と1列目のデータ線114に接続されている。
【0015】
図2は、表示部3の部分断面図である。表示部3は、図2に示したように大別して第1基板10、電気泳動層20、第2基板30によって構成されている。第1基板10は、絶縁性及び可撓性を有する基板11上に回路の層が形成された基板である。基板11は、本実施形態においてはポリカーボネートで形成されている。なお、基板11としては、ポリカーボネートに限定されることなく、軽量性、可撓性、弾性及び絶縁性を有する樹脂材料を用いることができる。また、基板11は、可撓性を持たないガラスで形成されていてもよい。基板11の表面には、接着層11aが設けられ、接着層11aの表面には回路層12が積層されている。
【0016】
回路層12は、行方向に配列された複数の走査線112と、各走査線112と電気的に絶縁を保つように設けられ列方向に配列された複数のデータ線114とを有している。また、回路層12は、スイッチング素子であるnチャネル型の薄膜トランジスター(thin film transistor:以下「TFT」と略称する)で構成された画素回路110と、画素電極13a(第1電極)を有している。画素回路110の構成については後述する。
【0017】
電気泳動層20は、バインダー22と、バインダー22によって固定された複数のマイクロカプセル21で構成されており、画素電極13a上に形成されている。なお、マイクロカプセル21と画素電極13aとの間には、接着剤により形成された接着層を設けてもよい。
【0018】
バインダー22としては、マイクロカプセル21との親和性が良好で電極との密着性が優れ、且つ絶縁性を有するものであれば特に制限はない。マイクロカプセル21内には、分散媒と電気泳動粒子が格納されている。マイクロカプセル21を構成する材料としては、アラビアゴム・ゼラチン系の化合物やウレタン系の化合物等の柔軟性を有するものを用いるのが好ましい。
【0019】
分散媒としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などのいずれかを用いることができ、また、分散媒は、その他の油類であってもよい。また、これらの物質は単独又は混合して分散媒に用いることができ、さらに界面活性剤などを配合して分散媒としてもよい。
【0020】
電気泳動粒子は、分散媒中で電界によって移動する性質を有する粒子(高分子あるいはコロイド)である。本実施形態においては白の電気泳動粒子と黒の電気泳動粒子がマイクロカプセル21内に格納されている。黒の電気泳動粒子は、例えば、アニリンブラックやカーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子であり、本実施形態では正に帯電されている。白の電気泳動粒子は、例えば、二酸化チタンや酸化アルミニウム等の白色顔料からなる粒子であり、本実施形態では負に帯電されている。
【0021】
第2基板30は、フィルム31と、フィルム31の下面に形成された共通電極層32(第2電極)で構成されている。フィルム31は、電気泳動層20の封止及び保護の役割を担うものであり、例えばポリエチレンテレフタレートのフィルムである。フィルム31は、透明で絶縁性を有している。共通電極層32は、例えば、酸化インジウム膜(ITO膜)などの透明な導電膜で構成されている。なお、本実施形態においてはフィルム31側が、ユーザーが画像を視認する側となる。
【0022】
図1に戻り、走査線駆動回路4は、表示部3の各走査線112と接続されており、1、2、…、m行目の走査線112に走査信号Y1、Y2、…、Ymを供給する。具体的には、走査線駆動回路4は、走査線112を1、2、…、m行目という順番で排他的に選択し、選択した走査線112にH(High)レベルの信号を供給し、選択されていない走査線112にL(Low)レベルの信号を供給する。
【0023】
データ線駆動回路5は、表示部3の各データ線114に接続されており、コントローラー2から供給される信号に応じて、1、2、…、n列目のデータ線114にデータ信号X1、X2、…、Xnを供給する。なお、コントローラー2、走査線駆動回路4およびデータ線駆動回路5を合わせて電気光学装置1の制御装置と定義することもできる。
また、コントローラー2、またはコントローラー2、走査線駆動回路4およびデータ線駆動回路5を合わせたものは、表示部3の初期化を行うため、電気光学装置の初期化手段と定義することもできる。
【0024】
図3は、画素回路110の構成を示した図である。なお、図3においては、1行1列目の画素回路110を示している。各画素回路110の構成は同じであるため、ここでは代表して1行1列目の画素回路110について説明し、他の画素回路110については説明を省略する。
【0025】
画素回路110では、TFT131のゲートが走査線112に接続され、TFT131のソースがデータ線114に接続されている。また、TFT131のドレインが画素電極13aに接続されている。画素電極13aは、共通電極層32と対向し、画素電極13aと共通電極層32との間には電気泳動層20が挟まれている。この一の画素電極13aと共通電極層32との間にあるマイクロカプセル21が表示部3において一の画素100となる。なお、画素回路110においては、電気泳動層20と並列に保持容量C1が接続されている。また、共通電極層32の電位は予め定められた電位Vcomにされている。
【0026】
(画素の駆動方法)
次に、画素100の駆動方法について説明する。まず走査線駆動回路4により一の走査線112が選択され、選択された走査線112がHレベルとなると、当該走査線112にゲートが接続されたTFT131がオン状態になり、画素電極13aがデータ線114に接続される。このため、走査線112がHレベルであるときに、データ線114にデータ信号を供給すると、当該データ信号は、オン状態になったTFT131を介して画素電極13aに印加される。走査線112がLレベルになると、TFT131はオフ状態になるが、データ信号によって画素電極13aに印加された電圧は、保持容量C1に蓄積され、画素電極13aの電位及び共通電極層32の電位との電位差(電圧)に応じて電気泳動粒子が移動する。
例えば、共通電極層32の電位Vcomに対して画素電極13aの電位が高位(例えば+15V)である場合、負に帯電している白の電気泳動粒子が画素電極13a側に移動し、正に帯電している黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動して画素100が黒の表示となる。また、共通電極層32の電位Vcomに対して画素電極13aの電位が低位(例えば−15V)である場合、正に帯電している黒の電気泳動粒子が画素電極13a側に移動し、負に帯電している白の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動して画素100が白の表示となる。なお、画素100は記憶性を有するため、画素電極13aへの電圧の印加が停止されても黒または白の表示状態を維持する。
【0027】
(表示部3の初期化処理)
次に、本実施形態において新たな画像を表示部3に表示させる前に行う初期化処理について説明する。図4(a)と図4(b)は、初期化処理中において表示部3に表示される画像の一部を拡大した図である。なお、図4(a)と図4(b)は、1行1列目の画素100から列方向に10行分と、行方向に10列分の画素100の領域を拡大したものである。
【0028】
まず初期化処理の第1ステップにおいては、コントローラー2は、画素100の表示状態を規定する映像信号であって、奇数行で且つ奇数列の画素100を黒の表示にし、奇数行で且つ偶数列の画素100を白の表示にする映像信号と、偶数行で且つ奇数列の画素100を白の表示にし、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒の表示にする映像信号をデータ線駆動回路5へ供給する。例えば、1行目の画素100について見ると、1行目の走査線112がHレベルである期間に奇数列のデータ線114がHレベルとなり、偶数列のデータ線114がLレベルとなる。これにより、TFT131がオンである期間において共通電極層32の電圧Vcomより高位の電圧が1行目で奇数列の画素回路110の画素電極13aに印加され、共通電極層32より低位の電圧が1行目で偶数列の画素回路110の画素電極13aに印加される。画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より高位となると、黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、図4(a)に示したように1行目において奇数列の画素100は黒になり、画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より低位となると、白の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、図4(a)に示したように1行目において偶数列の画素100は白になる。
【0029】
また2行目の画素100について見ると、1行目の走査線112がLレベルとなった後、2行目の走査線112がHレベルである期間に奇数列のデータ線114がLレベルとなり、偶数列のデータ線114がHレベルとなる。これにより、TFT131がオンである期間において共通電極層32の電圧Vcomより低位の電圧が2行目で奇数列の画素回路110の画素電極13aに印加され、共通電極層32より高位の電圧が2行目で偶数列の画素回路110の画素電極13aに印加される。画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より低位となると、白の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、2行目において奇数列の画素100は白になり、画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より高位となると、黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、2行目において偶数列の画素100は黒になる。
【0030】
つまり、第1ステップにおいては、奇数行奇数列の画素100の各々と偶数行偶数列の画素100の各々が第1領域となり、奇数行奇数列の画素100の各々と偶数行偶数列の画素100の各々が第2領域となり、第1領域と第2領域とで異なる階調になる。
また、このように第1ステップが終了した後は、表示部3においては行方向と列方向とで黒の画素と白の画素が交互に並ぶこととなり、市松模様が表示されることとなる。なお、本実施形態において一の画素100の領域は微少であるため、表示部3においては微少な黒の領域と微少な白の領域とが交互に並ぶこととなり、人間の目には黒と白が混ざったグレーとして視認される。
【0031】
次に初期化処理の第2ステップにおいては、コントローラー2は、奇数行で且つ奇数列の画素100を白の表示にし、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒の表示にする映像信号と、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒の表示にし、偶数行で且つ偶数列の画素100を白の表示にする映像信号をデータ線駆動回路5へ供給する。例えば、1行目の画素100について見ると、1行目の走査線112がHレベルである期間に奇数列のデータ線114がLレベルとなり、偶数列のデータ線114がHレベルとなる。これにより、TFT131がオンである期間において共通電極層32より低位の電圧が1行目で奇数列の画素回路110の画素電極13aに印加され、共通電極層32より高位の電圧が1行目で偶数列の画素回路110の画素電極13aに印加される。画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より低位となると、白の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、1行目において奇数列の画素100は白になり、画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より高位となると、黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、1行目において偶数列の画素100は黒になる。
【0032】
また2行目の画素100について見ると、1行目の走査線112がLレベルとなった後、2行目の走査線112がHレベルである期間に奇数列のデータ線114がHレベルとなり、偶数列のデータ線114がLレベルとなる。これにより、TFT131がオンである期間において共通電極層32より高位の電圧が2行目で奇数列の画素回路110の画素電極13aに印加され、共通電極層32より低位の電圧が2行目で偶数列の画素回路110の画素電極13aに印加される。画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より高位となると、黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、2行目において奇数列の画素100は黒になり、画素電極13aの電圧が共通電極層32の電圧より低位となると、黒の電気泳動粒子が共通電極層32側に移動し、2行目において偶数列の画素100は白になる。
【0033】
つまり、第2ステップにおいては、奇数行奇数列の画素100の各々と偶数行偶数列の画素100の各々が第1領域となり、奇数行奇数列の画素100の各々と偶数行偶数列の画素100の各々が第2領域となり、第1領域と第2領域は、第1ステップとは異なる階調になる。
また第2ステップが終了した後も表示部3においては行方向と列方向とで黒の画素と白の画素が交互に並ぶこととなり、市松模様が表示されて人間の目には黒と白が混ざったグレーとして視認される。このように初期化処理中においてはグレーの画像が視認されるため、初期化処理中に全画素を黒にした後に全画素を白にする場合と比較すると、初期化処理中において画像の変化が視認されにくくなり、初期化処理中にユーザーが不快を感じることが少なくなる。また、初期化処理において第1ステップと第2ステップとを行うことで各画素100において黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が画素電極13aと共通電極層32との間で移動して攪拌されるため、初期化処理が終了した後で残像が視認されにくくなる。
【0034】
第2ステップが終了すると、新たに表示する画像を表す映像信号がコントローラー2からデータ線駆動回路5へ供給され、表示部3には新たな画像が表示される。新たに画像を表示する際には、画素100が記憶性を有することを利用し、第2ステップを終了した状態から表示が変化しない画素100については画素電極13aに印加する電圧を共通電極層32に印加されている電圧Vcomと同じ電圧にする。
【0035】
なお、図4(b)の市松模様の状態から新たな画像に変更すると、白から黒に変化する画素100、黒から白に変化する画素100、および表示状態が変化しない画素100が生じる。ここで図5(a)の第2ステップを終了した状態から、例えば1〜5列目までを黒にし、6〜10列目までを白にして図5(b)の状態にする場合、黒の表示となる領域と白の表示となる領域の境界部分について注目すると、6列目において黒から白に変化する画素(6列目において奇数行の画素)がある。図5(b)の画像を表示する際には、6列目の奇数行においては黒の電気泳動粒子が画素電極13a側に引き寄せられるため、6列目においては、5列目の黒の電気泳動粒子の移動につられて共通電極層32側に移動する黒の電気泳動粒子が少なく、全画素100が白の状態から画像を表示する場合と比較すると、黒として視認される領域が実際に黒にする領域より広くならないこととなる。
【0036】
また、初期化処理を行った後に新たに画像を表示しない場合、時間の経過とともに電気泳動粒子が移動する。ここで、従来のように全画素を黒または白にする初期化処理だと、黒および白の電気泳動粒子の移動により画素は白または黒からグレーの表示となり、初期化した画面の変化がユーザーに視認されやすいが、本実施形態においては、初期化処理が終了した時点でユーザーには画面はグレーとして視認されるため、市松模様の黒の画素と白の画素がグレーの表示となっても初期化した画面の変化がユーザーに視認されにくくなる。
【0037】
[電子機器]
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を適用した電子機器の例について説明する。図6は、当該電気光学装置を用いた電子ブックリーダーの外観を示した図である。電子ブックリーダー1000は、板状のフレーム1001と、ボタン9A〜9Fと、上述した実施形態または変形例に係る電気光学装置を備えている。ただし、図においては電気光学装置のうち、表示部3のみが露出している。電子ブックリーダー1000においては、電子書籍の内容が表示部3に表示され、ボタン9A〜9Fを操作することにより電子書籍のページがめくられる。
なお、このほかにも、上述した実施形態や変形例に係る電気光学装置が適用可能な電子機器としては、時計や、電子ペーパー、電子手帳、電卓、携帯電話機等などが挙げられる。
【0038】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。
【0039】
上述した実施形態においては、初期化処理において第1ステップで図4(a)の画像を表示し、第2ステップで図4(b)の画像を表示しているが、本発明においては、第1ステップで図4(b)の画像を表示し、第2ステップで図4(a)の画像を表示するようにしてもよい。
また、本発明においては、初期化処理において全画素100を黒にした後に全画素100を白にし、この後に図4(a)または図4(b)の画像を表示してもよく、また、全画素100を黒にした後に全画素100を白にし、この後に図4(a)と図4(b)の画像を交互に表示して初期化処理が終了した時点で図4(a)または図4(b)の画像が表示されるようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、図4(a)の画像と図4(b)の画像は、黒の画素100と白の画素100の比が50:50となっているが、面積階調で中間調となるのであれば初期化処理中に表示される画像中の黒の画素100と白の画素100の比は、50:50に限定されるものではなく他の比であってもよい。
【0040】
上述した実施形態においては、初期化処理中において市松模様を表示する構成となっているが、初期化処理中に表示する画像は市松模様に限定されるものではない。例えば、第1ステップにおいて、図7(a)に示したように奇数列の画素100を黒、偶数列の画素100を白とした縞模様の画像を表示し、第2ステップにおいて、図7(b)に示したように奇数列の画素100を白、偶数列の画素100を黒とした縞模様の画像を表示する構成であってもよい。また、第1ステップにおいて、奇数行の画素100を黒、偶数行の画素100を白とした縞模様の画像を表示し、第2ステップにおいて、奇数行の画素100を白、偶数行の画素100を黒とした縞模様の画像を表示する構成であってもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、初期化処理中は1画素ずつ交互に黒と白が隣り合う構成となっているが、例えば、初期化処理において、図8(a)に示したように2行ずつ交互に画素100を黒と白にし、2列ずつ交互に画素100を黒と白にする表示と、図8(b)に示したように図8(a)において黒の部分を白にし、図8(a)において白の部分を黒にした表示を順番に表示する構成としてもよい。このようにすれば、1画素ずつ交互に黒と白が隣り合う構成と比較して、データ線114の電位の遷移回数が減少するため、消費電力を抑えることができる。
また、初期化処理においては、例えば図9(a)に示したように2行2列の画素を1ブロックとし、1ブロックのうち3つの画素100を黒、残り1つを白とした第1ブロックB1と、1ブロックのうち3つの画素100を白、残り1つを黒とした第2ブロックB2が上下左右に隣り合う画像を表示した後、図9(b)に示したように第1ブロックB1と第2ブロックB2の位置を入れ替える構成としてもよい。このようにすれば、1画素ずつ交互に黒と白が隣り合う構成と比較して、初期化処理中の第1領域と第2領域の配置の不規則性が増すため、より残像を見え難くすることができる。
【0042】
また、本発明においては、図10(a)に示したように第1ステップでは奇数行の画素100及び奇数列の画素100を黒、偶数行の画素100及び偶数列の画素100を白とし、第2ステップでは図10(b)に示したように奇数行の画素100及び奇数列の画素100を白、偶数行の画素100及び偶数列の画素100を黒とする構成であってもよい。このように第1領域と第2領域の面積が異なる態様であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、このように第1ステップと第2ステップとが反転表示の関係とならない態様であっても、あるいは第1ステップと第2ステップとで表示が変わらない画素が存在する態様であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
また、本発明においては、電子ブックリーダー1000の電源となる充電池の残量に応じて初期化処理中に表示する画像を切り換えるようにしてもよい。例えば、充電池の残量が予め定められた閾値以上である場合には初期化処理中において図4(a)に示した画像と図4(b)に示した画像を表示し、充電池の残量が閾値未満の場合には図8(a)に示した画像と図8(b)に示した画像を表示する構成としてもよい。
また、本発明においては、初期化処理を行う前に表示されていた画像の内容に応じて初期化処理中に表示する画像を変更するようにしてもよい。例えば、文字列を表示している場合、フォントのサイズが予め定められたサイズ以下である場合には初期化処理において図4(a)に示した画像と図4(b)に示した画像を表示し、フォントのサイズが予め定められたサイズを超えている場合には、初期化処理において図8(a)に示した画像と図8(b)に示した画像を表示する構成としてもよい。このようにすれば、初期化処理を行う前に表示されていた画像の残像が視認されにくい状態とできる範囲において、データ線114の電位の遷移回数を最小限とすることができ、消費電力を低減させることができる。
【0044】
上述した実施形態では、図4(a)の画像を1回表示した後、図4(b)の画像を1回表示する構成となっているが、図4(a)の表示と図4(b)の表示を交互に複数回行う構成としてもよい。また、1行目の走査線112からm行目の走査線112の選択が終了するまでの期間を1フレームとし、連続する複数フレーム毎に図4(a)の画像が表示されるように各データ線114に電圧を印加し、次の連続する複数フレーム毎に図4(b)の画像が表示されるように各データ線114に電圧を印加する構成としてもよい。
【0045】
上述した実施形態においては、図4(a)と図4(b)における黒の画素100と白の画素100の比が50:50で固定となっているが、この比を変更可能としてもよい。例えば、画素100の特性を測定し、全画素100が白の状態から新たに画像を表示したときに黒の領域が拡がりやすい場合には、初期化中に表示する画像において白となる画素100の割合が多くなるようにしてもよい。
【0046】
上述した実施形態においては、初期化処理において第1ステップで表示する画像と第2ステップで表示する画像は、黒の画素と白の画素の比が同じとなっているが、例えば、段階的に黒の画素の割合が多くなるようにしてもよく、また段階的に白の画素の割合が多くなるようにしてもよい。
【0047】
また本発明においては、第1ステップにおいては、表示部3の上半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を白、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒、偶数行で且つ偶数列の画素100を白とし、表示部3の下半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を黒、奇数行で且つ偶数列の画素100を白、偶数行で且つ奇数列の画素100を白、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒としてもよい。また、第2ステップにおいては、表示部3の上半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を黒、奇数行で且つ偶数列の画素100を白、偶数行で且つ奇数列の画素100を白、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒とし、表示部3の下半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を白、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒、偶数行で且つ偶数列の画素100を白としてもよい。
【0048】
また、本発明においては、第1ステップにおいては、表示部3の左半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を白、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒、偶数行で且つ偶数列の画素100を白とし、表示部3の右半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を黒、奇数行で且つ偶数列の画素100を白、偶数行で且つ奇数列の画素100を白、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒としてもよい。また、第2ステップにおいては、表示部3の左半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を黒、奇数行で且つ偶数列の画素100を白、偶数行で且つ奇数列の画素100を白、偶数行で且つ偶数列の画素100を黒とし、表示部3の右半分について奇数行で且つ奇数列の画素100を白、奇数行で且つ偶数列の画素100を黒、偶数行で且つ奇数列の画素100を黒、偶数行で且つ偶数列の画素100を白としてもよい。
【0049】
上述した各実施形態や各変形例においては、電気光学装置1は、電気泳動方式の装置であって、マイクロカプセル21内に黒の電気泳動粒子と白の電気泳動粒子が封入され、対向する画素電極13aと共通電極層32との間にマイクロカプセル21が配置されているマイクロカプセル方式であるが、電気光学装置は、マイクロカプセル方式に限定されるものではない。例えば、本発明に係わる電気光学装置は、水平型電気泳動方式であってもよい。また、本発明に係わる電気光学装置は、電子粉流体(登録商標)を用いた方式でもよく、帯電トナー型方式であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…電気光学装置、2…コントローラー、3…表示部、4…走査線駆動回路、5…データ線駆動回路、9A〜9F…ボタン、10…第1基板、11…基板、11a…接着層、12…回路層、13a…画素電極、20…電気泳動層、21…マイクロカプセル、22…バインダー、30…第2基板、31…フィルム、32…共通電極層、100…画素、112…走査線、110…画素回路、114データ線、131…TFT、B1…第1ブロック、B2…第2ブロック、C1…補助容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の駆動方法であって、
前記表示部の画素を初期化する初期化処理は、前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする最終ステップで終了すること
を特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項2】
前記初期化処理は、前記第1領域の画素の階調を前記最終ステップにおける階調と異なる階調とする一方、前記第2領域の画素の階調を前記最終ステップにおける階調と異なる階調とするステップを前記最終ステップの前に有すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項3】
前記画素は行列で配置され、
前記画素毎に前記画素の表示状態を定める画素回路を備え、
前記画素回路の行毎に走査線を備え、
前記画素回路の列毎にデータ線を備え、
前記第1領域および前記第2領域は、前記データ線の伸びる方向に沿った領域であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項4】
前記初期化処理においては、前記初期化処理の前に前記表示部に表示されていた画像に応じて前記第1領域および前記第2領域の大きさを変更すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置の制御装置であって、
前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする処理で前記表示部の画素の初期化を終了する初期化手段を有すること
を特徴とする電気光学装置の制御装置。
【請求項6】
帯電した粒子を第1電極と前記第1電極に対となる第2電極との間に備える複数の画素を備えた表示部を具備する電気光学装置であって、
前記表示部において互いに隣り合い、それぞれ1または複数の前記画素からなる第1領域および第2領域のうち、前記第1領域の画素の階調と、前記第2領域の画素の階調を異ならせて前記表示部を面積階調の中間調にする処理で前記表示部の画素の初期化が終了されること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−194344(P2012−194344A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57950(P2011−57950)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】