説明

電気光学装置及びその製造方法

【課題】複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルが移動したり、変形したり又は破壊されたりすることを防止できるようにした電気光学装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】塗工基板10と、塗工基板10と向かい合うように配置されたアレイ基板30と、塗工基板10とアレイ基板30との間に配置された複数のマイクロカプセル20と、アレイ基板30の一方の面30a側に固定された複数の球状スペーサー40と、を備え、複数の球状スペーサー40の各々の直径は、複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさとなっている。複数の球状スペーサー40の存在により、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔(スペース)dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体中に微粒子を分散させた分散系に電界を作用させると、微粒子は、クーロン力により液体中で移動(泳動)することが知られている。この現象を電気泳動といい、近年、この電気泳動を利用して、所望の情報(画像)を表示させるようにした電気泳動表示装置が新たな表示装置として注目を集めている。この電気泳動表示装置は、電圧の印加を停止した状態での表示メモリー性や広視野角性を有することや、低消費電力で高コントラストの表示が可能であること等の特徴を備えている。
【0003】
また、電気泳動表示装置は、非発光型(反射型)の表示デバイスであることから、ブラウン管のような発光型の表示デバイスに比べて、目に優しいという特徴も有している。このような電気泳動表示装置としては、電極を有する一対の基板間に、電気泳動粒子(微粒子)を分散させた分散媒を封入したマイクロカプセルを多数配設したマイクロカプセル型のものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。マイクロカプセル型の電気泳動表示装置では、マイクロカプセル同士の隙間にバインダーが充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−504666号公報
【特許文献2】特開2005−084268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2に開示されているマイクロカプセル型の電気泳動表示装置では、一対の基板間に球形のスペーサー(又は、柱状のギャップ材)が配置されており、これらスペーサー等によって基板間の距離が保たれるようになっている。
しかしながら、特許文献1の電気泳動表示装置では、スペーサーが固定されていない。このため、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられる(例えば、指やペン等によって表示面側が強く押圧される)と、その外部からの力によってマイクロカプセルがスペーサーと共に移動してしまう可能性があったマイクロカプセルの移動量が大きいと、データ表示層にマイクロカプセルが存在しない領域(つまり、データを表示できない空白の領域)が大きく生じてしまう可能性がある。
【0006】
特許文献2の電気泳動表示装置では、ギャップ材の高さまでマイクロカプセルが圧縮された状態(即ち、変形した状態)で、シート状の基板が貼り合わされている。マイクロカプセルは押圧により変形しているため、変形のない場合と比べて壊れ易い。また、シート状の基板は、弾力性のあるマイクロカプセルによってある程度押し戻されるため、その表面には凹凸等のムラが生じ易かった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルが移動したり、変形したり又は破壊されたりすることを防止できるようにした電気光学装置及びその製造方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電気光学装置の製造方法は、第1の基板と、前記第1の基板と向かい合うように配置された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された複数のマイクロカプセルと、前記第1の基板の前記第2の基板と向かい合う第1の面の側に固定された複数の球状スペーサーと、を備え、前記複数の球状スペーサーの各々の直径は、前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであることを特徴とする。
【0008】
ここで、「平均粒径」とは、第1の基板と第2の基板との間に配置された複数のマイクロカプセルの粒径(直径)の平均値のことを意味する。また、「平均粒径と同じ大きさ」とは、平均粒径とほぼ同じ大きさ(例えば、平均粒径の0.9倍〜1.1倍の大きさ)のことを意味する。なお、本発明では、第1の基板と第2の基板との間に配置される複数のマイクロカプセルの最大径と最小径との間の大きさを、球状スペーサーの直径としてもよい。
【0009】
このような構成であれば、複数の球状スペーサーによって、第1の基板と第2の基板との間の間隔(スペース)を複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさに保持することができる。このため、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルの変形を抑制することができ、その破壊を防ぐことができる。また、球状スペーサーは第1の基板の第1の面の側に固定されているため、外部から力が加えられた場合でも、球状スペーサーが支えとなって、マイクロカプセルの移動を抑制することができる。このため、外部から力が加えられた場合でも、データ表示層にマイクロカプセルが存在しない領域(つまり、データを表示できない空白の領域)が大きく生じてしまうことを防ぐことができる。さらに、球状スペーサーの側面には角部が存在しない。このため、マイクロカプセルが球状スペーサーの側面に押圧された場合でも、マイクロカプセルが傷つくことを防ぐことができる。
【0010】
なお、「第1の基板」としては例えば後述のアレイ基板30が該当し、その「第1の面」としては例えば後述の「一方の面30a」が該当する。また、「第2の基板」としては例えば後述の塗工基板10が該当し、その「第2の面」としては例えば後述の「一方の面10a」が該当する。
また、上記の電気光学装置において、前記第1の基板の前記第1の面上に設けられ、前記複数の球状スペーサーと前記第1の基板との間で固着している樹脂、をさらに備えることを特徴としてもよい。このような構成であれば、樹脂により、第1の基板の第1の面の側に球状スペーサーを固定することができる。
【0011】
本発明の別の態様に係る電気光学装置の製造方法は、第1の面の側に複数の球状スペーサーが固定された第1の基板を用意する工程と、第2の面の側に複数のマイクロカプセルを塗工された第2の基板を用意する工程と、前記第1の面と前記第2の面とを向かい合わせた状態で前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を含み、前記複数の球状スペーサーの各々の直径は、前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであることを特徴とする。
このような方法であれば、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルが移動したり、変形したり又は破壊されたりすることを防止できるようにした電気光学装置を製造することができる。
【0012】
また、上記の電気光学装置の製造方法において、前記第1の基板を用意する工程は、前記複数の球状スペーサーとして、表面が樹脂で覆われた複数の球状スペーサーを用意する工程と、前記複数の球状スペーサーを前記第1の基板の前記第1の面上に散布する工程と、散布された前記複数の球状スペーサーの各々の表面を覆っている前記樹脂を溶融させて、当該樹脂を前記複数の球状スペーサーの各々と前記第1の基板との間へ移動させる工程と、溶融により移動した前記樹脂を固着させる工程と、を含むことを特徴としてもよい。このような方法であれば、第1の基板の第1の面の側に球状スペーサーを固定することができる。
【0013】
また、上記の電気光学装置の製造方法において、前記第1の基板を用意する工程は、前記第1の基板の前記第1の面に樹脂を設ける工程と、前記樹脂が設けられた前記第1の面上に前記複数の球状スペーサーを散布する工程と、前記複数の球状スペーサーを散布した後で前記樹脂を固着させる工程と、を含むことを特徴としてもよい。このような方法であれば、第1の基板の第1の面の側に球状スペーサーを固定することができる。
【0014】
また、上記の電気光学装置の製造方法において、前記第1の基板を用意する工程は、前記第1の基板の前記第1の面の所定領域のみに樹脂を設ける工程と、前記樹脂が部分的に設けられた前記第1の面上に前記複数の球状スペーサーを散布する工程と、前記複数の球状スペーサーを散布した後で前記樹脂を固着させる工程と、前記複数の球状スペーサーのうちの、前記樹脂により前記第1の面の側に固定されていない球状スペーサーを前記第1の面上から除去する工程と、を含むことを特徴としてもよい。このような方法であれば、第1の基板の第1の面の側であって、所定領域のみに球状スペーサーを固定することができる。なお、所定領域として、電極等の形成されていない領域(即ち、電極間の領域)を選択することもできる。この場合は、球状スペーサーは電極上には存在せず、電極上に球状ススペーサーが配置される場合と比較して、データ表示に寄与しない空白の点を少なくすることができるため、画像表示の品質向上に寄与することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様に係る電気光学装置は、第1の基板と、前記第1の基板と向かい合うように配置された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された複数のマイクロカプセルと、前記第1の基板の前記第2の基板と向かい合う第1の面の側に固定された複数のスペーサーと、を備え、前記複数のスペーサーの各々の高さは前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであり、且つ、前記複数のスペーサーの各々の平面視による形状は円形であることを特徴とする。
【0016】
このような構成であれば、複数のスペーサーによって、第1の基板と第2の基板との間の間隔(スペース)を複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさに保持することができる。このため、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルの変形を抑制することができ、その破壊を防ぐことができる。また、スペーサーは第1の基板の第1の面の側に固定されているため、外部から力が加えられた場合でも、スペーサーが支えとなって、マイクロカプセルの移動を抑制することができる。このため、外部から力が加えられた場合でも、データ表示層にマイクロカプセルが存在しない領域(つまり、データを表示できない空白の領域)が大きく生じてしまうことを防ぐことができる。なお、「スペーサー」としては、例えば、後述の球状スペーサー40や、柱状スペーサー50が該当する。
【0017】
本発明のさらに別の態様に係る電気光学装置の製造方法は、第1の面の側に複数のスペーサーが固定された第1の基板を用意する工程と、第2の面の側に複数のマイクロカプセルを塗工された第2の基板を用意する工程と、前記第1の面と前記第2の面とを向かい合わせた状態で前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を含み、前記複数のスペーサーの各々の高さは前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであり、且つ、前記複数のスペーサーの各々の平面視による形状は円形であることを特徴とする。
このような方法であれば、複数のマイクロカプセルを含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合でも、マイクロカプセルが移動したり、変形したり又は破壊されたりすることを防止できるようにした電気光学装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る電気泳動表示装置100の製造方法を示す図。
【図2】第2実施形態に係る電気泳動表示装置200の製造方法を示す図。
【図3】第3実施形態に係る電気泳動表示装置300の製造方法を示す図。
【図4】第4実施形態に係る電気泳動表示装置400の製造方法を示す図。
【図5】柱状スペーサーの構成例を示す図。
【図6】第5実施形態に係る電気泳動表示装置300´、400´を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する場合もある。
(1)第1実施形態
図1(a)から(b)は、本発明の第1実施形態に係る電気泳動表示装置100の製造方法を示す断面図である。
まず始めに、図1(a)に示すように、まず始めに、塗工基板10を用意する。塗工基板10は、例えば、可撓性を有する絶縁性の樹脂からなる。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエステル樹脂が好適であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好適である。塗工基板10の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば25〜1000μmの範囲内であれば十分な可撓性が得られる。
【0020】
また、この塗工基板10の一方の面10aには、例えば、共通電極又は画素電極の一方を成す導電層11が形成されている。導電層11の材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛、金属微粒子、金属箔などの無機導電性物質や、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンなどの有機導電性物質などが挙げられる。
【0021】
次に、図1(b)に示すように、この導電層11を覆うように、塗工基板10の一方の面にマイクロカプセル20を塗工する。具体的には、光透過性を有する透明なバインダー(図示せず)と、このバインダーの内部に分散させた複数のマイクロカプセル20とを含む塗料を、塗工基板10の一方の面10aに塗布する。バインダーの材料としては、例えば、シリコン樹脂、アクリル樹脂又はウレタン樹脂等が用いられる。
マイクロカプセル20は、中空で球状の光透過性を有するカプセル本体(殻体)21を有する。このカプセル本体21の内部には、液体(溶媒)が充填されており、この液体に、正又は負に帯電させた複数の帯電粒子が分散されている。帯電粒子及び液体はそれらの色が相互に異なるように設定されている。
【0022】
一例として、帯電粒子は白色で、液体の色は黒である。或いは、カプセル本体21の内部の液体には、正に帯電させた複数の帯電粒子Aと、負に帯電させた複数の帯電粒子Bとが分散されており、これら帯電粒子の色が帯電の正負で相互に異なるように設定されていてもよい。一例として、正に帯電させた帯電粒子Aは白色で、負に帯電させた帯電粒子Bは黒色であり、液体は透明である。
【0023】
なお、カプセル本体21はある程度の弾力性を有する材料からなる。このような材料として、例えば、ゼラチン、アラビアゴムとゼラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、マイクロカプセル20の形状は、外力を加えていない状態で球形である。複数のマイクロカプセル20の各々の直径は、個々のカプセル間で多少ばらつくことが普通であるが、それらの平均値(即ち、平均粒径)は例えば40μmである。
【0024】
次に、図1(a)及び(b)に示した工程と前後して、或いは並行して、図1(c)〜図1(e)に示す工程を行う。即ち、図1(c)では、アレイ基板30を用意する。アレイ基板30は、例えばPET、PEN等の絶縁性の樹脂、又は、ガラス基板からなる。このアレイ基板30の一方の面30aには、共通電極又は画素電極の他方を成す導電層31が形成されている。導電層31の材料は、例えば導電層11と同じであり、一例を挙げるとインジウムスズ酸化物(ITO)である。また、図示しないが、アレイ基板30の一方の面30aには、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)が形成されている。
【0025】
なお、塗工基板10及びアレイ基板30は、有色透明若しくは無色透明、又は、非透明であってもよく、特に限定されるものではないが、完成後の電気泳動表示装置100では、塗料(即ち、データ表示層)が共通電極と画素電極とで挟持されている。このため、表示データを目視するためには、塗工基板10及びアレイ基板30のうちの少なくとも一方が透明であることが必要である。但し、後述の樹脂が固着した状態で非透明の場合は、塗工基板10側から表示データを目視できるように(即ち、塗工基板10が表示面側となるように)、塗工基板10が透明であることが好ましい。
【0026】
次に、図1(d)に示すように、複数個(多数)の球状スペーサー40を用意し、これら球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a上に散布する。ここでは、例えば、エアーを噴出する装置(エアーガン等)を用いて複数の球状スペーサー40をエアーで飛ばすことにより、複数の球状スペーサー40を互いに分散させつつ、これらをアレイ基板30の一方の面30a上に供給する。この第1実施形態では、球状スペーサー40として、その表面に熱溶融性の樹脂41が予めコーティングされているものを使用する。
【0027】
なお、球状スペーサー40は、マイクロカプセル20と比べて、弾力性に乏しい(即ち、硬い)絶縁性の材料からなる。このような材料として、例えば、酸化珪素、酸化チタン等の無機材料、またはエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン66)、スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、球状スペーサー40の直径は、複数のマイクロカプセル20の平均粒径とほぼ同じである。具体的には、複数のマイクロカプセル20の平均粒径が40μmであれば、球状スペーサー40の大きさは36〜44μm(つまり、平均粒径の0.9倍〜1.1倍の大きさ)である。
【0028】
次に、複数個の球状スペーサー40が供給されたアレイ基板30に熱処理を施して、球状スペーサー40の表面にコーティングされている樹脂41を溶融させる。このとき、アレイ基板30の一方の面30aを上側に向け、他方の面を下側に向けておく。これにより、図1(e)に示すように、溶融した樹脂41はその自重により球状スペーサー40の表面に沿って流れ落ち、球状スペーサー40とアレイ基板30との間へ移動する。その後、熱処理を止め、必要に応じて冷却することにより、溶融している樹脂41を移動先の位置(即ち、球状スペーサー40とアレイ基板30との間)で固着させる。固着後の樹脂41´により、球状スペーサー40はアレイ基板30の一方の面30a側に固定される。
【0029】
その後、塗工基板10の一方の面10aと、アレイ基板30の一方の面30aとを対向させ、この状態で、塗工基板10とアレイ基板30とを貼り合わせる。これにより、図1(f)に示すような電気泳動表示装置100が完成する。
なお、塗工基板10とアレイ基板30との貼り合わせは、例えばロールラミネート装置内で、塗工基板10とアレイ基板30とを上記のように対向させた状態で、これらを一対のローラー間に通して加圧することにより行う。或いは、上記の貼り合わせは、例えば真空ラミネート装置内で、塗工基板10とアレイ基板30とを上記のように対向させた状態で、これらを真空圧を利用して加圧することにより行う。
【0030】
貼合わせの過程では、隣り合うマイクロカプセル20間に球状スペーサー40が配置され、複数のマイクロカプセル20と複数の球状スペーサー40とが理想的には単層で配置されることとなる。塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔(スペース)dは、複数の球状スペーサー40によって、複数のマイクロカプセル20の平均粒径とほぼ同じ大きさに保持される。
【0031】
このように、本発明の第1実施形態によれば、複数の球状スペーサー40によって、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができる。このため、複数のマイクロカプセル20を含むデータ表示層に外部から力が加えられた場合(例えば、上記のような貼合わせ工程や、完成後に例えば、指やペン等によって表示面側が強く押圧される場合など)でも、マイクロカプセル20の変形を抑制することができ、その破壊を防ぐことができる。
【0032】
また、球状スペーサー40はアレイ基板30に固定されているため、外部から力が加えられた場合でも、球状スペーサー40が支えとなって、マイクロカプセル20の移動を抑制することができる。このため、外部から力が加えられた場合でも、データ表示層にマイクロカプセル20が存在しない領域(つまり、データを表示できない空白の領域)が大きく生じてしまうことを防ぐことができる。さらに、球状スペーサー40の側面には角部が存在しない。このため、マイクロカプセル20が球状スペーサー40の側面に押圧された場合でも、マイクロカプセル20が傷つくことを防ぐことができる。
【0033】
(2)第2実施形態
上記の第1実施形態では、球状スペーサー40として、その表面に熱溶融性の樹脂41が予めコーティングされているものを用意し、これをアレイ基板30の一方の面上に散布し、その後、アレイ基板30に熱処理を施すことによって樹脂を溶融する。これにより、球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a側に固定する場合について説明した。しかしながら、本発明において、球状スペーサー40の固定方法は上記に限定されるものではない。例えば、熱溶融性の樹脂41を球状スペーサー40の表面ではなく、アレイ基板30の表面に塗布するようにしてもよい。
【0034】
図2(a)〜(g)は、本発明の第2実施形態に係る電気泳動表示装置200の製造方法を示す断面図である。なお、図2(a)〜(c)の各工程は、図1(a)〜(c)の各工程と同じであるため、その説明は省略する。
図2(d)に示すように、この第2実施形態では、アレイ基板30の一方の面30aの全てに熱溶融性の樹脂41を塗布する。次に、図2(e)に示すように、この樹脂41が塗布された面30a上に球状スペーサー40を散布する。ここで、散布する球状スペーサー40は、例えば、第1実施形態で説明した球状スペーサーと同一の形状で同一の大きさであり、且つ、同一の材料からなるが、その表面には樹脂41はコーティングされていない。そして、この球状スペーサー40が散布されたアレイ基板30に熱処理を施して、樹脂41を溶融させる。その後、熱処理を止め、必要に応じて冷却することにより、溶融している樹脂41を球状スペーサー40とアレイ基板30との間で固着させる。図2(f)に示すように、固着後の樹脂41´により、球状スペーサー40はアレイ基板30の一方の面30a側に固定される。
【0035】
その後、塗工基板10の一方の面10aと、アレイ基板30の一方の面30aとを対向させ、この状態で、塗工基板10とアレイ基板30とを貼り合わせる。これにより、図2(g)に示すような電気泳動表示装置200が完成する。
このように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、複数の球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a側に固定することができる。そして、この固定された複数の球状スペーサー40によって、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができる。従って、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(3)第3実施形態
上記の第2実施形態では、アレイ基板30の一方の面30aの全てに熱溶融性の樹脂41を設ける場合について説明した。しかしながら、本発明では、上記の樹脂41をアレイ基板30の一方の面30aの全てでなく、一方の面30aのうちの所定領域のみに設けるようにしてもよい。
図3(a)〜(h)は、本発明の第3実施形態に係る電気泳動表示装置300の製造方法を示す断面図である。なお、図3(a)〜(d)の各工程は、図2(a)〜(d)の各工程と同じであるため、その説明は省略する。
【0037】
図3(e)では、アレイ基板30の一方の面30aの塗布された熱溶融性の樹脂41を、例えばフォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、一方の面30aのうちの所定領域のみに樹脂41を残し、それ以外の領域からは樹脂41を除去する。次に、この樹脂41が部分的に設けられた(残された)面30a上に球状スペーサー40を散布する。ここで、散布する球状スペーサー40は、例えば、第1実施形態で説明した球状スペーサーと同一の形状で同一の大きさであり、且つ、同一の材料からなるが、その表面には樹脂はコーティングされていない。
【0038】
次に、図3(f)では、この球状スペーサー40が散布されたアレイ基板30に熱処理を施して、樹脂41を溶融させる。その後、熱処理を止め、必要に応じて冷却することにより、溶融している樹脂41を球状スペーサー40とアレイ基板30との間で固着させる。固着後の樹脂41´により、球状スペーサー40はアレイ基板30の一方の面30a側に固定される。
次に、図3(g)に示すように、複数の球状スペーサー40のうちの、樹脂41´で固定されていないスペーサー(即ち、過剰スペーサー)を、一方の面30a上から除去する。過剰スペーサーはアレイ基板30に固定されていないため、例えば、エアー等を吹き付けることにより除去することができる。
【0039】
その後、塗工基板10の一方の面10aと、アレイ基板30の一方の面10aとを対向させ、この状態で、塗工基板10とアレイ基板30とを貼り合わせる。これにより、図3(f)に示すような電気泳動表示装置300が完成する。
このように、本発明の第3実施形態によれば、第1、第2実施形態と同様に、複数の球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a側に固定することができる。そして、この固定された複数の球状スペーサー40によって、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができる。従って、第1、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0040】
(4)第4実施形態
上記の第1〜第3実施形態では、本発明のスペーサーとして球状スペーサーを用いる場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られることはない。本発明では、スペーサーとして、球形ではなく、柱状のスペーサーを用いてもよい。
図4(a)〜(g)は、本発明の第4実施形態に係る電気泳動表示装置400の製造方法を示す断面図である。なお、図4(a)〜(c)の各工程は、図1(a)〜(c)の各工程と同じであるため、その説明は省略する。
【0041】
図4(d)に示すように、この第4実施形態では、アレイ基板30の一方の面30aの全てに例えば絶縁性の感光性樹脂(即ち、フォトレジスト)51を塗布し、必要に応じて熱処理(プリベーク)を施す。次に、図4(e)に示すように、フォトマスク53を用いてフォトレジスト51を部分的に露光する。そして、露光後のフォトレジスト51を現像処理し、必要に応じて熱処理(ポストベーク)を施す。これにより、図4(f)に示すように、柱状スペーサー50を形成する。
【0042】
ポストベークにより、柱状スペーサー50を構成しているフォトレジストは固着するため、この柱状スペーサー50をアレイ基板30の一方の面30a側に固定することができる。また、このポストベークにより、柱状スペーサー50を構成しているフォトレジストはマイクロカプセル20よりも硬いものに変質する。
その後、塗工基板10の一方の面10aと、アレイ基板30の一方の面30aとを対向させ、この状態で、塗工基板10とアレイ基板30とを貼り合わせる。これにより、図4(g)に示すような電気泳動表示装置400が完成する。
【0043】
図5(a)〜(c)は、柱状スペーサー50の構成例を示す平面図と、断面図と、底面図である。図5(a)〜(c)に示すように、この柱状スペーサー50の平面視による形状は円形である。また、この柱状スペーサー50の断面視による形状は台形である。つまり、この柱状スペーサーは、円錐の先端部を、アレイ基板30の一方の面30aと平行な面で切断したような形状を有する。
【0044】
この柱状スペーサー50の高さ(即ち、柱状スペーサー50の上面50aと下面50bとの間の距離)hは、複数のマイクロカプセル20の平均粒径とほぼ同じである。具体的には、複数のマイクロカプセル20の平均粒径が40μmであれば、この柱状スペーサー50の高さhは36〜44μm(つまり、平均粒径の0.9倍〜1.1倍の大きさ)となっている。また、この柱状スペーサー50の外周面(即ち、側面)50cは曲面となっており、角が存在しない。このため、マイクロカプセル20が柱状スペーサー50の側面50cに押圧された場合でも、マイクロカプセル20が傷つくことを防ぐことができる。
本発明の第4実施形態によれば、アレイ基板30の一方の面30a側に固定された複数の柱状スペーサー50によって、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができる。従って、第1〜第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
(5)第5実施形態
上記の第3実施形態では、熱溶融性の樹脂41を導電層31上に設け、その上に球状スペーサー40を配置する場合について説明した(例えば、図3(g)参照。)。また、上記の第4実施形態では、フォトレジストからなる柱状スペーサー50を導電層31上に配置する場合について説明した(例えば、図4(f)参照。)。しかしながら、本発明において、スペーサーが配置される領域(即ち、所定領域)は導電層上に限定されるものではない。アレイ基板の一方の面であって導電層から露出している領域を、上記の所定領域としてもよい。
【0046】
図6(a)及び(b)は、本発明の第5実施形態に係る電気泳動表示装置300´、400´の構成例を示す断面図である。図6(a)に示す電気泳動表示装置300´では、熱溶融性の樹脂41はアレイ基板30の一方の面30aであって導電層31から露出している領域のみに設けられている。そして、この部分的に設けられた樹脂41を介して、球状スペーサー40はアレイ基板30の一方の面30a側に固定されている。また、図6(b)に示す電気泳動表示装置400´では、柱状スペーサー50はアレイ基板30の一方の面30aであって導電層31から露出している領域のみに設けられている。
このような構成であっても、アレイ基板30の一方の面30a側に固定された複数の球状スペーサー40、複数の柱状スペーサー50によって、塗工基板10とアレイ基板30との間の間隔dを複数のマイクロカプセル20の平均粒径と同じ大きさに保持することができるため、第1〜第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
また、この第5実施形態では、球状スペーサー40、柱状スペーサー50は導電層31上には存在しない。導電層31上には、データを表示可能なマイクロカプセル20が隙間少なく配置される。このため、導電層31上に球状スペーサー40や柱状スペーサー50が配置される場合と比較して、データ表示に寄与しない空白の点を少なくすることができる。画像表示の品質向上に寄与することができる。
【0048】
(6)その他の実施形態
なお、上記の第3実施形態では、熱溶融性の樹脂41を部分的に配置するために、アレイ基板30の一方の面30aの全てに樹脂41を塗布した後で、これをフォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いてパターニングする場合について説明した。しかしながら、本発明において、樹脂41の部分的配置を実現する方法はこれに限定されない。例えば、上記の第3実施形態において、樹脂41は、インクジェット法などの印刷技術を用いて、所定領域のみに形成するようにしてもよい。上記の第5実施形態においても同様である。このような方法であれば、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いないで済むため、工程を短縮することができる。その結果、製造コストの低減を期待することができる。
【0049】
また、上記の第1〜第3、第5実施形態では、球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a側に固定するための材料として、熱溶融性の樹脂41を用いる場合について説明した。しかしながら、本発明において、球状スペーサー40を固定するための材料は熱溶融性の樹脂41に限定されない。例えば、紫外線(UV)を照射することにより固着(硬化)するような、UV硬化性の樹脂を用いてもよい。
【0050】
即ち、第1〜第3、第5実施形態では、熱溶融性の樹脂41の代わりに、UV硬化性の樹脂を用いても良い。この場合は、熱溶融性の樹脂41を固着させるための熱処理工程の代わりに、UV硬化性の樹脂にUVを照射する工程を行う。このUV照射によって、球状スペーサー40をアレイ基板30の一方の面30a側に固定することができるため、熱溶融性の樹脂41を用いる場合と同様の効果を奏することができる。
なお、上記の各実施形態では、本発明の「電気光学装置」として電気泳動表示装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば、半球ごとに白と黒とに塗り分けられた球形微粒子の向きを電界により制御して、表示要素を表示するツイストボールを用いた電気光学装置とその製造方法などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 塗工基板、10a 塗工基板の一方の面、11、31 導電層、20 マイクロカプセル、21 カプセル本体、30 アレイ基板、30a アレイ基板の一方の面、40 球状スペーサー、41 樹脂、41´ 固着後の樹脂、50 柱状スペーサー、50a 柱状スペーサーの上面、50b 柱状スペーサーの下面、50c 柱状スペーサーの側面、51 フォトレジスト、53 フォトマスク、100、200、300、300´、400、400´ 電気泳動表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板と向かい合うように配置された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された複数のマイクロカプセルと、
前記第1の基板の前記第2の基板と向かい合う第1の面の側に固定された複数の球状スペーサーと、を備え、
前記複数の球状スペーサーの各々の直径は、前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1の基板の前記第1の面上に設けられ、前記複数の球状スペーサーの各々と前記第1の基板との間で固着している樹脂、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
第1の面の側に複数の球状スペーサーが固定された第1の基板を用意する工程と、
第2の面の側に複数のマイクロカプセルを塗工された第2の基板を用意する工程と、
前記第1の面と前記第2の面とを向かい合わせた状態で前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を含み、
前記複数の球状スペーサーの各々の直径は、前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板を用意する工程は、
前記複数の球状スペーサーとして、表面が樹脂で覆われた複数の球状スペーサーを用意する工程と、
前記複数の球状スペーサーを前記第1の基板の前記第1の面上に散布する工程と、
散布された前記複数の球状スペーサーの各々の表面を覆っている前記樹脂を溶融させて、当該樹脂を前記複数の球状スペーサーの各々と前記第1の基板との間へ移動させる工程と、
溶融により移動した前記樹脂を固着させる工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板を用意する工程は、
前記第1の基板の前記第1の面に樹脂を設ける工程と、
前記樹脂が設けられた前記第1の面上に前記複数の球状スペーサーを散布する工程と、
前記複数の球状スペーサーを散布した後で前記樹脂を固着させる工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の基板を用意する工程は、
前記第1の基板の前記第1の面の所定領域のみに樹脂を設ける工程と、
前記樹脂が部分的に設けられた前記第1の面上に前記複数の球状スペーサーを散布する工程と、
前記複数の球状スペーサーを散布した後で前記樹脂を固着させる工程と、
前記複数の球状スペーサーのうちの、前記樹脂により前記第1の面の側に固定されていない球状スペーサーを前記第1の面上から除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
第1の基板と、
前記第1の基板と向かい合うように配置された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された複数のマイクロカプセルと、
前記第1の基板の前記第2の基板と向かい合う第1の面の側に固定された複数のスペーサーと、を備え、
前記複数のスペーサーの各々の高さは前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであり、且つ、前記複数のスペーサーの各々の平面視による形状は円形であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
第1の面の側に複数のスペーサーが固定された第1の基板を用意する工程と、
第2の面の側に複数のマイクロカプセルを塗工された第2の基板を用意する工程と、
前記第1の面と前記第2の面とを向かい合わせた状態で前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を含み、
前記複数のスペーサーの各々の高さは前記複数のマイクロカプセルの平均粒径と同じ大きさであり、且つ、前記複数のスペーサーの各々の平面視による形状は円形であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168407(P2012−168407A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30144(P2011−30144)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】