電気光学装置及び電子機器
【課題】表示基板と中継基板との圧着条件を固着部全体に亘って同一にすることにより、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができるとともに、コントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない電気光学装置、及び当該電気光学装置を備える電子機器を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板等の中継基板に形成された配線に接続される電極74,75等の電極の間に平坦化膜80が形成されており、平坦化膜80上及び電極74,75の端部に第1層間絶縁層284が形成されている。そして、電極74,75上及び凸部79に透明電極77が形成されている。
【解決手段】フレキシブル基板等の中継基板に形成された配線に接続される電極74,75等の電極の間に平坦化膜80が形成されており、平坦化膜80上及び電極74,75の端部に第1層間絶縁層284が形成されている。そして、電極74,75上及び凸部79に透明電極77が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に係り、特に有機エレクトロルミネッセンス材料を備えた電気光学装置及び当該電気光学装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画素電極(陽極)及び陰極の間に、有機蛍光材料等の発光材料からなる発光素子が挟持された構造のカラー電気光学装置、特に発光材料として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)材料を用いた有機EL表示装置の開発が行われている。以下、従来の電気光学装置(有機EL表示装置)について簡単に説明する。
【0003】
図13は、従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。図13に示すように、従来の電気光学装置は、複数の走査線901と、走査線901に対して交差する方向に延びる複数の信号線902と、信号線902に並行して延びる複数の発光用電源配線903とがそれぞれ配線され、走査線901と信号線902との各交点毎に、画素領域Aが設けられている。各信号線902は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路904に接続されており、各走査線901は、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路905に接続されている。
【0004】
また、画素領域Aの各々には、走査線901を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ913と、このスイッチング薄膜トランジスタ913を介して信号線902から供給される画像信号を保持する保持容量Capと、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ914と、このカレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903に電気的に接続されたときに発光用電源配線903から駆動電流が流れ込む画素電極911と、この画素電極911と陰極912との間に挟み込まれる発光層910とが設けられている。陰極912は、陰極用電源回路931に接続されている。
【0005】
上記の発光層910には、赤色に発光する発光層910R、緑色に発光する発光層910G、青色に発光する発光層910Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層910R,910G,910Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して各発光層910R,910G,910Bに接続される発光用電源配線903R,903G,903Bは、それぞれ発光用電源回路932に接続されている。各色毎に発光用電源配線が配線されているのは、発光層910の駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0006】
以上の構成において、走査線901に走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ913がオン状態になると、そのときに信号線902に供給されている画像信号に応じた電荷が保持容量Capに保持される。この保持容量Capに保持された電荷の量に応じて、カレント薄膜トランジスタ914のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903R,903G,903Bから画素電極911に電流が流れ、更に発光層910を介して陰極912に駆動電流が流れる。このとき、発光層910を流れた電流量に応じた量の発光が発光層910から得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図13に示した電気光学装置は、走査線901、信号線902、陰極912、発光用電源配線903(903R,903G,903B)、走査側駆動回路905、及び画素領域Aがガラス等の透明基板(表示基板)上に形成され、陰極用電源回路931、発光用電源回路932、及びデータ側駆動回路904等の回路が可撓性のあるフレキシブル基板(中継基板)上に配置された構成とされることがある。
【0008】
かかる構成の場合には、基板に対してフレキシブル基板を固着させ、走査線901、信号線902、陰極912、及び発光用電源配線903とフレキシブル基板上に形成された回路とを電気的に導通させる必要がある。基板とフレキシブル基板との固着及び電気的な接続は、基板とフレキシブル基板との間に導電粒子を含む異方性導電膜を配置し、フレキシブル基板を基板に対して圧着させることにより行われる。
【0009】
上述した電気光学装置に設けられる発光層910を安定して発光させるためには、発光用電源配線903から画素電極911に印加する駆動電流の電位変動をできるだけ少なくすることが要求される。特に、図13に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であり、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を防止するためには、陰極912及び発光用電源配線903の配線抵抗等による電圧降下を極力抑える必要がある。このため、陰極912及び発光用電源配線903は、走査線901及び信号線902よりも幅広に形成されている。
【0010】
基板とフレキシブル基板と固着させる際には、主として圧着部において生ずる電気的抵抗の均一化を図るために、固着部の全面に亘って圧着条件を同一にしたいという要求がある。この要求を満たすためには、固着部に設けられ、上述した種々の配線が接続される端子の形状を同一にする必要がある。
【0011】
しかしながら、上述したように、図13に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であるため、陰極912及び発光用電源配線903の配線幅を狭くすることは配線抵抗等による電圧降下を考慮すると困難である。また、走査線901及び信号線902は数が多く、これら全てを配置するためには細線化及び狭ピッチ化する必要があるため、走査線901及び信号線902の線幅を陰極912及び発光用電源配線903の線幅と同程度にすることも困難である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表示基板と中継基板との圧着条件を固着部全体に亘って同一にすることにより、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができるとともに、コントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない電気光学装置、及び当該電気光学装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の製造方法は、外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、前記外部接続用端子を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記外部接続用端子には凸状の絶縁膜が形成されてなり、前記凸部によって形成された領域に前記液体材料を塗布することを特徴とする。
【0015】
また、前記液体液体材料をインクジェット法により塗布することを特徴とする。
【0016】
また、上記製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【0017】
さらには上記に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態の電気光学装置の平面模式図である。
【図5】図4のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】図4に示した固着部65付近の上面図である。
【図7】図6中のB−B’線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図である。
【図8】図7中の外部接続端子70の拡大図である。
【図9】第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成された第2外部接続端子70,70の拡大図である。
【図10】第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成され、且つ電極74,75間に平坦化膜が設けられた第1外部接続端子70,70の拡大図である。
【図11】本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。
【図12】他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。
【図13】従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。
【図14】塗布装置の構造を示す図である。
【図15】ヘッドユニットを示す平面図を示す図である。
【図16】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図17】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示す模式図である。
【図18】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示す模式図である。
【図19】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図20】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図21】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図22】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子の他の実施例を示す模式図である。
【図23】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子の他の実施例を示す模式図である。
【図24】本発明のパターンの形成方法の他の実施形態を示す模式図である。
【図25】本発明の電気光学装置の一実施形態を示す図であってプラズマ型表示装置に適用した例を示す分解斜視図である。
【図26】ヘッドユニットを示す側面図である。
【図27】ヘッドユニットを示す正面図である。
【図28】ヘッドユニットを示す断面図である。
【図29】ヘッドユニットを示す射視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電気光学装置及び電子機器について詳細に説明する。尚、以下の説明で参照する各図は、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、大別すると表示基板20と、表示基板20に接続される中継基板30とから構成される。表示基板20は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリクス方式の有機EL装置である。
【0021】
この表示基板20には、複数の走査線21が形成されており、この走査線21に交差する方向に延びる複数の信号線22が形成されている。また、表示基板20には、発光素子が複数形成された表示素子20aが設けられている。更に、図1においては図示を省略しているが、表示基板20には電源線及び陰極が形成されている。また、表示基板20の一端には、走査線21、信号線22、並びに不図示の電源線及び陰極各々に対する外部接続端子27が形成されている。
【0022】
尚、図1に示した電気光学装置10は、あくまでも主要な構成を模式的に示したものであり、実際の走査線21、信号線22、及び外部接続端子27は、極めて狭い間隔をもって多数が表示基板20上にそれぞれ形成されている点に注意されたい。また、外部接続端子27と走査線21との接続状態との接続状態も図1においては図示を省略している。
【0023】
中継基板30は、可撓性を有するベース基板31上に複数の配線32が形成されており、更に中継基板30の所定位置に半導体チップ33を搭載した構成である。配線32の一端には、表示基板20に形成された走査線21及び信号線22等の配線と電気的に接続するための外部接続端子34が形成されている。尚、図1では、中継基板30上に半導体チップ33のみが実装された構成であるが、半導体チップ33が実装される部位以外の部位の所定位置に抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品を実装しても良い。また、中継基板30に形成される配線32及び外部接続端子34も、その構造の理解を容易にするために、間隔を拡大して模式的に示すとともに、構造を簡略化して図示してある。
【0024】
図1に示すように、中継基板30は、異方性導電膜40を介して表示基板20に固着される。このとき、中継基板30の外部接続端子34は異方性導電膜40を介して表示基板20の外部接続端子27と電気的に接続される。この異方性導電膜40は、一対の端子間を異方性を持たせて電気的に一括接続するために用いられる導電性のある高分子フィルムであって、例えば、図2に示すように、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂41aの中に多数の導電粒子41bを分散させることによって形成される。
【0025】
図2は、異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。図2に示すように、表示基板20に形成された外部接続端子27と中継基板30に形成された外部接続端子34との間に導電粒子41bが挟持されるため、外部接続端子27と中継配線である外部接続端子34との間が電気的に接続されることになる。一方、外部接続端子27及び外部接続端子34が形成されている部位以外の部位においては、導電粒子41bが挟持されていても、接続端子が存在しないため、導通は取れていない。このようにして、外部接続端子27及び外部接続端子34との間のみで導通をとることができる。
【0026】
異方性導電膜40を用いて表示基板20と中継基板30とを固着させるには、表示基板20を表面が粗面とされた案内板を有する載置台(何れも図示省略)上に配置し、表示基板20を真空吸着する。このとき、少なくとも表示基板20に対して中継基板30が固着される部位が案内板の上方に位置するように表示基板20を載置台上に載置する。ここで、表面が粗面とされた案内板を用いるのは、案内板と表示基板20の接触面積を低減して案内板からの熱放散を抑えることで、表示基板20に加える温度を低下させるためである。
【0027】
表示基板20の載置台上への載置が完了すると、中継基板30が固着される表示基板20の部位に異方性導電膜40を貼付し、更に、半導体チップ33が搭載された面を下側にして、外部接続端子34が異方性導電膜40の上方に位置するように中継基板30の位置合わせを行う。以上の工程が終了すると、図示しない加熱加圧ヘッドを用いて外部接続端子34が形成されている面の裏面を加熱・加圧して、外部接続端子34と表示基板20に形成されている外部接続端子27との導通をとるとともに、中継基板30を表示基板20に固着させる。このとき、加熱加圧ヘッドから中継基板30及び表示基板20に加える温度は百数十〜数百°程度であり、加える圧力は数メガパスカルである。以上の工程を経ることにより、中継基板30を表示基板20に固着させることができる。
【0028】
次に、本実施形態の電気光学装置10の配線構造の詳細について説明する。図3は、本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。図3に示したように電気光学装置10は、複数の走査線21と、走査線21に対して交差する方向に延びる複数の信号線22と、信号線22に並行して延びる複数の発光用電源配線23とがそれぞれ配線されており、走査線21及び信号線22の各交点付近に、画素領域Aが設けられている。
【0029】
各信号線22には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路33aが接続されている。また、各信号線22には、薄膜トランジスタを備える検査回路25が接続されている。更に、各走査線21には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路24が接続されている。
【0030】
また、画素領域Aの各々には、スイッチング薄膜トランジスタ52、保持容量Cap、カレント薄膜トランジスタ53、画素電極51、発光層50、及び陰極26が設けられる。スイッチング薄膜トランジスタ52は、そのゲート電極に走査線21が接続されており、走査線21から供給される走査信号に応じて駆動されてオン状態又はオフ状態となる。保持容量Capは、スイッチング薄膜トランジスタ52を介して信号線22から供給される画像信号を保持する。
【0031】
カレント薄膜トランジスタ53は、そのゲート電極がスイッチング薄膜トランジスタ52及び保持容量Capに接続されており、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される。画素電極51は、カレント薄膜トランジスタ53に接続されており、カレント薄膜トランジスタ53を介して発光用電源配線23に電気的に接続したときに発光用電源配線23から駆動電流が流れ込む。発光層50は画素電極51と陰極26との間に挟み込まれている。
【0032】
上記、発光層50には、赤色に発光する発光層50R、緑色に発光する発光層50G、及び青色に発光する発光層50Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層50R,50G,50Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ53を介して各発光層50R,50G,50Bに接続される発光用電源配線23R,23G,23Bがそれぞれ、発光用電源回路33cに接続されている。各色毎に発光用電源配線23R,23G,23Bが配線されているのは、発光層50R,50G,50Bの駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0033】
また、本実施形態の電気光学装置においては、陰極26と発光用電源配線23R,23G,23Bとの間に静電容量C1が形成されている。電気光学装置10が駆動するとこの静電容量C1に電荷が蓄積される。電気光学装置10の駆動中に各発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合には、蓄積された電荷が各発光用電源配線23に放電されて駆動電流の電位変動を抑制する。これにより、電気光学装置10の画像表示を正常に保つことができる。
【0034】
尚、この電気光学装置10においては、走査線21から走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ52がオン状態になると、そのときの信号線22の電位が保持容量Capに保持され、保持容量Capに保持された電位に応じてカレント薄膜トランジスタ53のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ53のチャネルを介して、発光用電源配線23R,23G,23Bから画素電極51に駆動電流が流れ、更に発光層50R,50G,50Bを介して陰極26に電流が流れる。このとき、発光層50を流れた電流量に応じた量の発光が発光層50から得られる。
【0035】
次に、本実施形態の電気光学装置10の具体的な構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態の電気光学装置の平面模式図であり、図5は、図4のA−A’線に沿う断面図である。図4に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、基板60、不図示の画素電極群領域、発光用電源配線23(23R,23G,23B)、及び表示画素部61(図中一点鎖線の枠内)とから概略構成される。
【0036】
基板60は、例えばガラス等からなる透明な基板である。画素電極群領域は、図3に示したカレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極(図示省略)を基板60上にマトリックス状に配置した領域である。発光用電源配線23(23R,23G,23B)は、図4に示したように、画素電極群領域の周囲に配置され、各画素電極に接続されている。表示画素部61は、少なくとも画素電極群領域上に位置し、平面視略矩形形状である。この表示画素部61は、中央部分の実表示領域(又は、有効表示領域ともいう)62(図中二点鎖線の枠内)と、実表示領域62の外側に配置されたダミー領域63(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0037】
また、実表示領域62の図中両側には、走査線駆動回路24が配置されている。この走査線駆動回路24はダミー領域63の下層側(基板60側)に位置して設けられている。更に、ダミー領域63の下層側には、走査線駆動回路24に接続される走査線駆動回路用制御信号配線24aと走査線駆動回路用電源配線24bとが設けられている。また更に、実表示領域62の図中上側には、前述の検査回路25が配置されている。この検査回路25はダミー領域63の下層側(基板側2)に位置して設けられており、この検査回路25により、製造途中や出荷時の電気光学装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0038】
図4に示すように、発光用電源配線23R,23G,23Bは、ダミー領域63の周囲に配設されている。各発光用電源配線23R,23G,23Bは、基板60の図2中下側から走査線駆動回路用制御信号配線24aに沿って図4中上方に延在し、走査線駆動回路用制御信号配線24aが途切れた位置から折曲してダミー領域63の外側に沿って延在し、実表示領域62内にある図示略の画素電極に接続されている。また、基板60には、陰極26に接続される陰極用配線26aが形成されている。この陰極用配線26aは、発光用電源配線23R,23G,23Bを囲むように平面視略コ字状に形成されている。
【0039】
次に、図5に示すように、基板60上には回路部11が形成され、この回路部11上に表示画素部61が形成されている。また、基板60には、表示画素部61を環状に囲む封止材13が形成されており、更に表示画素部61上に封止基板14が備えられている。封止基板14は、封止材13を介して基板60に接合されており、ガラス、金属、又は樹脂等からなるものである。この封止基板14の裏側には、吸着剤15が貼付され、表示画素部61と封止基板14との間の空間に混入した水又は酸素を吸収できるようになっている。尚、吸着剤15に代えてゲッター剤を用いても良い。また、封止材13は、例えば熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。
【0040】
回路部11の中央部分には、画素電極群領域11aが設けられている。この画素電極群領域11aには、カレント薄膜トランジスタ53と、カレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極51が備えられている。カレント薄膜トランジスタ53は、基板60上に積層された下地保護層281、第2層間絶縁層283、及び第1層間絶縁層284に埋め込まれて形成され、画素電極51は、第1層間絶縁層284上に形成されている。カレント薄膜トランジスタ53に接続され、第2層間絶縁層283上に形成された電極の一方(ソース電極)には、発光用電源配線23(23R,23G,23B)が接続されている。尚、回路部11には、前述した保持容量Cap及びスイッチング薄膜トランジスタ52も形成されているが、図5ではこれらの図示を省略している。更に、図5においては、信号線22の図示を省略している。
【0041】
次に、図5において、画素電極群領域11aの図中両側には、前述の走査線駆動回路24が設けられている。図4に示した走査線駆動回路24には、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型の薄膜トランジスタ24cが備えられ、この薄膜トランジスタ24cは、画素電極51に接続されていない点を除いて上記のカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。尚、図5においては、検査回路25の図示を省略しているが、この検査回路25にも同様に薄膜トランジスタが備えられている。検査回路25に備えられている薄膜トランジスタは、後述するダミー画素電極51’に接続されていない点を除いてカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。
【0042】
図5に示すように、走査線駆動回路24の図中外側の下地保護層281上には、走査線駆動回路用制御信号配線24aが形成されている。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aの外側の第2層間絶縁層283上には、走査線駆動回路用電源配線24bが形成されている。また、走査線駆動回路用電源配線24bの外側には、発光用電源配線23が形成されている。この発光用電源配線23は、2つの配線からなる二重配線構造を採用しており、前述したように表示画素部61の外側に配置されている。二重配線構造を採用することで配線抵抗を軽減できる。
【0043】
例えば、図5中左側にある赤色用の発光用電源配線23Rは、下地保護層281上に形成された第1配線23R1と、第2層間絶縁層283を介して第1配線23R1上に形成された第2配線23R2とから構成されている。第1配線23R1及び第2配線23R2は、図2に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23R3により接続されている。このように、第1配線23R1は、陰極用配線26aと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間は第2層間絶縁層283が配置されている。また、図5に示す通り、陰極用配線26aはコンタクトホールを介して第2層間絶縁層283上に形成された陰極用配線26bと電気的に接続されおり、いわば陰極用配線26aも二重配線構造になっている。よって、第2配線23R2は、陰極用配線26bと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R2と陰極用配線26bとの間は第1層間絶縁層284が配置されている。このような構造をとることで、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間、及び、第2配線23R2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0044】
同様に、図5の右側にある青色及び緑色用の発光用電源配線23G,23Bも二重配線構造を採用しており、それぞれ下地保護層281上に形成された第1配線23G1,23B1と、第2層間絶縁層283上に形成された第2配線23G2,23B2とから構成され、第1配線23G1,23B1及び第2配線23G2,23B2は、図4に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23G3,23B3により接続されている。そして、青色の第1配線23B1と陰極用配線26aの間、及び、青色の第2配線23B2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0045】
第1配線23R1と第2配線23R2との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満であると、信号線22及び走査線21のような異なる電位を有するソースメタルとゲートメタルとの間の寄生容量が増えるため好ましくない。例えば、実表示領域62内においては、ソースメタルとゲートメタルとが交差する箇所が多く存在し、かかる箇所の寄生容量が多いと画像信号の時間遅延を引き起こす虞がある。その結果として、定められた期間内に画像信号を画素電極51に書き込むことができないため、コントラストの低下を引き起こす。第1配線23R1及び第2配線23R2に挟まれる第2層間絶縁層283の材質は、例えばSiO2等が好ましいが、1.0μm以上形成するとSiO2の応力により基板60が割れる恐れが生じる。
【0046】
また、各発光用電源配線23Rの上側には、表示画素部61から延出した陰極26が形成されている。これにより、各発光用電源配線23Rの第2配線23R2が、第1層間絶縁層284を挟んで陰極26と対向配置され、これにより第2配線23R2と陰極26との間に前述の第1の静電容量C1が形成される。ここで、第2配線23R2と陰極26との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満だと、画素電極及びソースメタルのような異なる電位を有する画素電極とソースメタルとの間の寄生容量が増える為、ソースメタルを用いている信号線の配線遅延が生じる。その結果、定められた期間内に画像信号を書き込むことができない為、コントラストの低下を引き起こす。第2配線23R2と陰極26に挟まれる第1層間絶縁層284の材質は、例えばSiO2やアクリル樹脂等が好ましい。しかしながら、SiO2を1.0μm以上形成すると応力により基板60が割れる恐れが生じる。また、アクリル樹脂の場合は、2.0μm程度まで形成することができるが、水を含むと膨張する性質があるため、その上に形成する画素電極を割る恐れがある。
【0047】
このように、表示基板20には、発光用電源配線23と陰極26との間に第1の静電容量C1が設けられるので、発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合に第1の静電容量C1に蓄積された電荷が発光用電源配線23に供給され、駆動電流の電位不足分がこの電荷により補われて電位変動を抑制することができ、発光装置1の画像表示を正常に保つことができる。特に、発光用電源配線23と陰極26とが表示画素部61の外側で対向しているので、発光用電源配線23と陰極26との間隔を小さくして第1の静電容量C1に蓄積される電荷量を増大させることができ、駆動電流の電位変動をより小さくして画像表示を安定に行うことができる。更に、発光用電源配線23が第1配線及び第2配線からなる二重配線構造を有し、第1配線と陰極用配線との間に第2の静電容量C2が設けられているので、第2の静電容量C2に蓄積された電荷も発光用電源配線23に供給されるため、電位変動をより抑制することができ、発光装置1の画像表示をより正常に保つことができる。
【0048】
次に、表示画素部61の実画素領域62には、発光層50及びバンク部(絶縁部)122が形成されている。発光層50は図5に示すように、画素電極51上の各々に積層されている。また、バンク部122は、各画素電極51及び各発光層50の間に備えられており、各発光層50を区画している。バンク部122は、基板60側に位置する無機物バンク層122aと基板60から離れて位置する有機物バンク層122bとが積層されて構成されている。尚、無機物バンク層122aと有機物バンク層122bとの間に遮光層を配置してもよい。
【0049】
無機物、有機物バンク層122a,122bは、画素電極51の周縁部上に乗上げるまで延出形成されており、また無機物バンク層122aは、有機物バンク層122bよりも画素電極51の中央側に延出形成されている。また、無機物バンク層122aは、例えば、SiO2、TiO2、SiN等の無機材料からなることが好ましい。また無機物バンク層122aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。膜厚が50nm未満では、無機物バンク層122aが後述する正孔注入/輸送層より薄くなり、正孔注入/輸送層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。また膜厚が200nmを越えると、無機物バンク層122aによる段差が大きくなって、正孔注入/輸送層上に積層する後述の発光層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。
【0050】
更に、有機物バンク層122bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の通常のレジストから形成されている。この有機物バンク層122bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層122bが薄くなり、発光層が上部開口部から溢れるおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部による段差が大きくなり、有機物バンク層122b上に形成する陰極26のステップカバレッジを確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層122bの厚さを2μm以上にすれば、陰極26と画素電極51との絶縁を高めることができる点でより好ましい。
このようにして、発光層50は、バンク部122より薄く形成されている。
【0051】
また、バンク部122の周辺には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層122a及び画素電極51であり、これらの領域には、酸素を反応ガスとするプラズマ処理によって水酸基等の親液基が導入されている。また、撥液性を示す領域は、有機物バンク層122bであり、4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理によってフッ素等の撥液基が導入されている。
【0052】
発光層50は、画素電極51上に積層された図示せぬ正孔注入/輸送層上に積層されている。尚、本明細書では、発光層50及び正孔注入/輸送層を含む構成を機能層といい、画素電極51、機能層、及び陰極26含む構成を発光素子という。正孔注入/輸送層は、正孔を発光層50に注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層を画素電極51と発光層50の間に設けることにより、発光層50の発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層50では、正孔注入/輸送層から注入された正孔と、陰極26からの電子とが結合して蛍光を発生させる。発光層50は、赤色(R)に発光する赤色発光層、緑色(G)に発光する緑色発光層、及び青色(B)に発光する青色発光層の3種類を有し、図3及び図4に示すように、各発光層がストライプ配置されている。
【0053】
次に、図5に示したように、表示画素部61のダミー領域63には、ダミー発光層210及びダミーバンク部212が形成されている。ダミーバンク部212は、基板60側に位置するダミー無機物バンク層212aと基板60から離れて位置するダミー有機物バンク層212bとが積層されて構成されている。ダミー無機物バンク層212aは、ダミー画素電極51’の全面に形成されている。またダミー有機物バンク層212bは、有機物バンク層122bと同様に画素電極51の間に形成されている。そして、ダミー発光層210は、ダミー無機物バンク212aを介してダミー画素電極51’上に形成されている。
【0054】
ダミー無機物バンク層212a及びダミー有機物バンク層211bは、先に説明した無機物、有機物バンク層122a,122bと同様の材質、同様の膜厚を有するものである。また、ダミー発光層210は、図示略のダミー正孔注入/輸送層上に積層されており、ダミー正孔注入/輸送層及びダミー発光層の材質や膜厚は、前述の正孔注入/輸送層及び発光層50と同様である。従って、上記の発光層50と同様に、ダミー発光層210はダミーバンク部212より薄く形成されている。
【0055】
ダミー領域63を実表示領域62の周囲に配置することにより、実表示領域62の発光層50の厚さを均一にすることができ、表示ムラを抑制することができる。即ち、ダミー領域63を配置することで、表示素子をインクジェット法によって形成する場合における吐出した組成物インクの乾燥条件を実表示領域62内で一定にすることができ、実表示領域62の周縁部で発光層50の厚さに偏りが生じる虞がない。
【0056】
次に、陰極26は、実表示領域62とダミー領域63の全面に形成されるとともにダミー領域63の外側にある基板60上まで延出され、ダミー領域63の外側、即ち表示画素部61の外側で発光用電源配線23と対向配置されている。また陰極26の端部が、回路部11に形成された陰極用配線26aに接続されている。陰極26は、画素電極51の対向電極として発光層50に電流を流す役割を果たす。この陰極26は、例えば、フッ化リチウムとカルシウムの積層体からなる陰極層26bと反射層26cとが積層されて構成されている。陰極26のうち、反射層26cのみが表示画素部61の外側まで延出されている。反射層26cは、発光層50から発した光を基板60側に反射させるもので、例えば、Al、Ag、Mg/Ag積層体等からなることが好ましい。更に、反射層26c上にSiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0057】
また、図4に示すように、基板60の一端には前述した異方性導電膜40を用いて中継基板30が固着されている。尚、中継基板30上に搭載された半導体チップ33には、図3に示したデータ側駆動回路33a、陰極用電源回路33b、及び発光用電源回路33cが内蔵されている。図4中の破線で囲った部分は、表示基板20と中継基板30との固着部を示している。図6は、図4に示した固着部65付近の上面図である。尚、図6においては、異方性導電膜40及び中継基板30の図示を省略している。
【0058】
図6に示したように、固着部65においては、外部接続端子が形成されている。外部接続端子には、線幅の細い配線各々に対して配線の幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子が設けられ、幅広の配線に対しては線幅よりも幅の狭い複数の第2外部接続端子が設けられる。例えば、線幅の細い走査線駆動回路用制御信号配線24aの各々に対しては、走査線駆動回路用制御信号配線24aの線幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子67,68,69が設けられる。一方、幅が広い発光用電源配線23Rに対しては、発光用電源配線23Rの線幅よりも幅の狭い第2外部接続端子66a,66b,66cが設けられる。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aよりも幅が狭い信号線22に対しては、信号線22と同程度の線幅を有する第2外部接続端子70がそれぞれ設けられる。尚、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数は、基板60に形成される配線の線幅に応じて適宜設定される。
【0059】
このように、基板60に形成された配線の線幅に応じて第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数を変えるのは、固着部65の全面に亘って圧着条件を極力同一にするためである。つまり、図1及び図2を用いて説明したように、表示基板10と中継基板20とは異方性導電膜40により固着されるが、固着条件(例えば、端子の幅、接着面積、圧力の掛かり具合等)が異なると固着部65内部における電気的抵抗がその位置に応じて異なる。固着部65における電気的抵抗が位置に応じて異なると、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を生ずる。このために、固着部65において、基板60に形成された配線の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより圧着条件を極力同一にしている。更に、複数の外部接続端子を設けることにより、接着面積を増大させることができる。即ち、複数の外部接続端子間に異方性導電膜を配置することができるので、強固な接着が可能となる。
【0060】
次に、固着部65に形成される外部接続端子の構造について詳細に説明する。
図7は、図6中のB−B’線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図であり、図8は、図7中の外部接続端子70の拡大図である。図7及び図8に示すように、基板60上には下地保護層281が形成されており、この下地保護層281上にSiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層71が形成されている。このゲート絶縁層71は、図示しない薄膜トランジスタのチャネル領域とゲート電極とを電気的に絶縁するために形成されるものである。尚、本明細書において、「主体」とする成分とは最も含有率の高い成分のことをいうものとする。
【0061】
ゲート絶縁層71上には信号線22及び発光用電源配線23Rが形成されており、更に信号線22及び発光用電源配線23R上に第2層間絶縁層283が形成されている。また、発光用電源配線23、走査線駆動回路用制御信号配線24aは、図3に記載の走査線21と同時に形成される。
【0062】
上記第2層間絶縁層283には、信号線22及び発光用電源配線23Rの上部位置にコンタクトホールHが複数形成されている。また、発光用電源配線23Rの上方の第2層間絶縁層283上には電極73が形成され、信号線22の上方の第2層間絶縁層283上には電極74,75が形成されている。
【0063】
これらの電極73,74,75は、コンタクトホールHを形成した後でスパッタリング法等により形成されるため、コンタクトホールHの上部にはコンタクトホールH内に堆積した金属材料の分だけ表面に凹部Bが形成される。このようにして、コンタクトホールHを介して、第2層間絶縁層283に覆われた発光用電源配線23Rと第2層間絶縁層283上に形成された電極74との導通、及び、第2層間絶縁層283に覆われた信号線22と第2層間絶縁層283上に形成された電極74,75の導通がとられる。
【0064】
また、第2層間絶縁層283上に形成された電極73,74,75の端部、側部、及びこれらの電極73,74,75間には、電気的な絶縁を目的としたSiN等の無機材料からなる第1層間絶縁層284が形成されている。電極73,74,75の上部、側部、及び周辺部には、ITO等からなる透明電極77が形成され、更に電極73,74,75の周辺部に形成された透明電極77及び第2外部接続端子66c,70,70間にはSiO2からなる保護層78が形成されている。尚、電極73,74,75は、図3に記載されているゲート線と同時に形成され、又、透明電極77は、ITOにより形成され、画素電極(陽極)と同時に形成される。このとき、ITOなどの材料をスパッタ等の方法により形成している。
【0065】
この方法とは別に、インクジェット法により導電材料を含む液体材料を塗布することにより、外部接続端子の最上面に金属層を形成することができる。なお、図9等に示されているように、外部接続端子は複数層の導電層から形成されているため、前述の例の如く最上面に限ることなく、複数層の導電層のうち少なくとも一層にこの手法を適用することができ、また全ての層をインクジェット法により形成することも可能である。
【0066】
導電膜配線用の液体材料として、本例では導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液(液状体)が用いられ、これは水性であると油性であるとを問わない。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうち少なくとも1種類を含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
【0067】
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。特に、5nm以上0.1μmであることが好ましい。0.1μmより大きいと、上記液滴吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、5nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーテイング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0068】
導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下(約0.133Pa以上26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高い場合には、吐出後に分散媒が急激に蒸発し、良好な膜を形成することが困難となる。また、分散媒の蒸気圧は0.001mmHg以上50mmHg以下(約0.133Pa以上6650Pa以下)であることがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高い場合には、インクジェット法で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こりやすい。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒の場合、乾燥が遅くて膜中に分散媒が残留しやすくなり、後工程の熱・光処理後に良質の導電膜が得られにくい。
【0069】
上記分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるものであって凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、またインクジェット法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0070】
上記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度は1質量%以上80質量%以下であり、所望の導電膜の膜厚に応じて調整するとよい。なお、80質量%を超えると凝集をおこしやすく、均一な膜が得にくい。
【0071】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。
【0072】
表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0073】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0074】
以下に、金微粒子を用いた例を示す。
【0075】
直径10nmの金微粒子がトルエン中に分散した金微粒子分散液(真空冶金社製、商品名「パーフェクトゴールド」)にキシレンを添加し、その粘度を3cpとした液体を用いた。その際、凸部の間に形成された領域(端子の平坦な部分)にインクジェット法を用いて前述の液体を塗布した。その際、端子部の平坦部上、及び凸部の表面の少なくとも平坦な領域側に金からなる金属薄膜が形成される。
【0076】
インクジェット法として用いるインクジェット装置(液体塗布装置ともいう)は、例えば図14に示した装置を用いることができる。
【0077】
インクジェット装置は、インクジェットヘッド群1、X軸方向駆動軸4、Y方向ガイド軸5、制御装置6、載置台7、クリーニング機構部8、基台9及びヒーター15を備えている。
【0078】
インクジェットヘッド群は所定の導電性微粒子を含有する液体をノズル(吐出口)から吐出して所定間隔で基板に付与するインクジェット塗布手段としてのヘッドを備えている。ヘッド群は、複数のノズルが形成されたヘッドが複数個配列されて形成している。この複数個配列しているヘッド群は、図15のようなレイアウトで構成されている。すなわち、ヘッドの走査方向に対して各ヘッドを傾けて配置された構造となっている。
【0079】
図示されているように、インクジェット装置に設けられているインクジェットヘッドは複数個配置されている。複数個のインクジェットヘッドを走査方向に対して交差する方向に傾けて配置し、インクジェットによる描画を行うことができる。例えば、走査方向に対して30度傾けることによってインクジェット装置による描画が可能となる。インクジェットヘッドを走査方向に対して交差する方向に傾けることにより以下の効果が得られる。すなわち、形成するパターンの間隔が狭いときに、ヘッドを傾けることにより見かけ上、ノズル間隔が狭くなる。このようにすることによって、挟ピッチのパターンの描画が可能になり、しかも傾ける角度を変化させることにより、どのようなパターンでも形成することができる。なお、その場合には、インクジェットヘッドを所望の角度に変更、調整できる機能をインクジェット装置に設ける。
【0080】
以下にインクジェットヘッド、及びユニットについて詳細に説明する。
【0081】
〔ヘッドユニットの構成〕
次に、ヘッドユニット420の構成について説明する。図15は、液滴吐出処理装置に設けられたヘッドユニットを示す平面図である。図26は、ヘッドユニットを示す側面図である。図27は、ヘッドユニットを示す正面図である。図28は、ヘッドユニットを示す断面図である。
【0082】
ヘッドユニット420は、図15ないし図28に示すように、ヘッド本体部430と、インク供給部431とを有している。また、ヘッド本体部430は、平板状のキャリッジ426と、このキャリッジ426に複数取り付けられた実質的に略同一形状のヘッド装置433とを有している。
【0083】
(ヘッド装置の構成)
図29はヘッドユニット420に配設されたヘッド装置433を示す分解斜視図である。
【0084】
ヘッド装置433は、図29に示すように、短冊状のプリント基板435を有している。このプリント基板435には、各種電気部品436が実装され図示しない電気配線が設けられている。また、プリント基板435には、長手方向の一端側(図6中右側)に位置して窓部437が貫通形成されている。さらに、プリント基板435には、インクであるフィルタエレメント材料13が流通可能な流通路438が窓部437の両側に位置して設けられている。
【0085】
そして、このプリント基板435の一面側(図29中下面側)には、長手方向の略一端側(図29中右側)に位置してインクジェットヘッド421が取付部材440により一体的に取り付けられている。このインクジェットヘッド421は、長手矩形状に形成され、長手方向がプリント基板435の長手方向に沿う状態で取り付けられる。
【0086】
なお、各ヘッド装置433における各インクジェットヘッド421は、実質的に略同一形状、すなわち例えば所定の規格の製品であって、所定の品質に選別されたものなどであればよい。具体的には、これらインクジェットヘッド421が同一個数の後述するノズルを有し、ノズルの形成位置が互いに同一であることが、キャリッジ426に対してインクジェットヘッド421を組み立てる際に効率的となり、また組み立て精度も高まるので、好ましい。さらに、同一の製造・組立工程を経て作られた製品を用いれば、特別な製品を作る必要が無くなり、低コストとすることができる。
【0087】
また、プリント基板435の他面側(図29中上面側)には、長手方向の略他端側(図29中左側)に位置してインクジェットヘッド421に電気配線442にて電気的に接続されるコネクタ441が一体的に取り付けられている。これらコネクタ441には、ヘッドユニット420の移動に影響しないように副走査駆動装置427に配線された電気配線442(電源配線、信号配線を含む)が接続される。この電気配線442は図示しない制御装置とヘッドユニット420を接続するものとなる。すなわち、これら電気配線442は、図15および図28に二点鎖線の矢印で模式的に示すように、副走査駆動装置427からヘッドユニット420の2列のヘッド装置433の配列方向の両側であるヘッドユニット420の外周側に配線されてコネクタ441に接続され、電気ノイズが生じないようになっている。
【0088】
さらに、プリント基板435の他面側(図29中上面側)には、長手方向の略一端側(図29中右側)でインクジェットヘッド421に対応してインク導入部443が取り付けられている。このインク導入部443は、取付部材440に設けられプリント基板435を貫通する位置決めピン部444を嵌合する略円筒状の位置決め筒部445と、プリント基板435に係止する係止爪部446とを有している。
【0089】
また、インク導入部443には、先端先細り形状の略円筒状の連結部448が一対突設されている。これら連結部448は、プリント基板435側となる基端部にプリント基板435の流通路438に略液密に連通する図示しない開口を有し、先端部にフィルタエレメント材料13が流通可能な図示しない孔を有している。
【0090】
さらに、これら連結部448には、図26ないし図29に示すように、先端側に位置してシール連結部450がそれぞれ取り付けられている。これらシール連結部450は、内周側に連結部448を略液密に嵌着する略円筒状に形成され、先端部にシール部材449が設けられている。
【0091】
次に、本体の構造の説明をする。
【0092】
載置台7は、この塗布装置によって液滴(液体)を付与される基板101を載置させるもので、この基板101を基準位置に固定する機構を備える。
【0093】
X方向駆動軸4には、X方向駆動モータ2が接続されている。X方向駆動モータ2は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸4を回転させる。X方向駆動軸4が回転させられると、インクジェットヘッド群1がX軸方向に移動する。
【0094】
Y方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。載置台7は、Y方向駆動モータ3を備えている。Y方向駆動モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からY軸方向の駆動信号が供給されると、載置台7をY軸方向に移動させる。
【0095】
制御回路6は、インクジェットヘッド群1の各ヘッドに液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ2にインクジェットヘッド群1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ3に載置台7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0096】
クリーニング機構部8は、インクジェットヘッド群1をクリーニングする機構を備えている。クリーニング機構部8には、図示しないY方向の駆動モータが備えられる。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構8は、Y方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も、制御装置6によって制御される。
【0097】
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板101を熱処理する手段であり、基板上に塗布された液体の蒸発・乾燥を行うとともに導電膜に変換させる。このヒータの電源の投入及び遮断も制御回路6によって制御される。なお、ヒーターの代わりにホットプレートを用いた熱処理、乾燥炉を用いた熱処理であってもかまわない。
【0098】
このようなインクジェット装置において、インクジェット装置による描画には、予備吐出、フラッシングが必要となる。
【0099】
配線パターンとしての外部接続用端子を形成する際、予め基板の外に予備吐出を行う。これは、ノズルの目詰まりを防止し、所定の量の液滴を吐出させるためのものである。予備吐出する液滴の量は約200〜5000発であり、インクジェットヘッドに形成されている全ノズルから吐出を行うものである。また、フラッシングも同様であり、全ノズルから液滴を吐出し、吐出安定性を確保する。吐出量は適宜設定されるが、予備吐出と同様の量が吐出される。
【0100】
このようなインクジェットヘッドにより吐出される液滴は、例えば図16〜23のような順番で吐出される。以下、本発明の外部接続用端子を形成する形成方法について図面を参照しながら説明する。図16は本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【0101】
ここで、本実施形態では基板上に導電膜配線パターンを形成する場合を例にして説明する。
【0102】
図16において、本実施形態に係るパターンの形成方法は、液体材料の液滴が配置される基板を所定の溶媒等を用いて洗浄する工程(ステップS1)と、基板の表面処理工程の一部を構成する撥液化処理工程(ステップS2)と、撥液化処理された基板表面の撥液性を調整する表面処理工程の一部を構成する撥液性低下処理工程(ステップS3)と、表面処理された基板上に液滴吐出法に基づいて導電膜配線形成用材料を含む液体材料の液滴を配置して膜パターンを描画(形成)する材料配置工程(ステップS4)と、基板上に配置された液体材料の溶媒成分の少なくとも一部を除去する熱・光処理を含む中間乾燥処理工程(ステップS5)と、所定の膜パターンが描画された基板を焼成する焼成工程(ステップS7)とを有している。なお、中間乾燥処理工程の後、所定のパターン描画が終了したかどうかが判断され(ステップS6)、パターン描画が終了したら焼成工程が行われ、一方、パターン描画が終了していなかったら材料配置工程が行われる。
【0103】
次に、図17〜図23を参照しながら本発明の特徴部分である液滴吐出法に基づく材料配置工程(ステップS4)について説明する。
【0104】
本実施形態の材料配置工程は、導電膜配線形成用材料を含む液体材料の液滴を液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドより基板上に吐出することにより基板上に線状の膜パターン(配線パターン)Wである外部接続用端子を形成する工程である。液体材料は導電膜配線形成用材料である金属等の導電性微粒子を分散媒に分散した液状体である。
【0105】
図16において、材料配置工程(ステップS4)は、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド10(前述のヘッド群)の吐出ノズル10Aより液体材料の液滴を吐出して基板11に配置することで、この基板11上に膜パターンWの線幅方向中央部(中央パターン)W1を形成する第1工程(図16(a)参照)と、基板11に形成された中央パターンW1に対して一方の側部(第1側部パターン)W2を形成する第2工程(図17(b)参照)と、基板11に形成された中央パターンW1に対して他方の側部(第2側部パターン)W3を形成する第3工程(図17(c)参照)とを有している。これら第1、第2、及び第3工程により、図17(c)に示すような線状の膜パターンWが形成される。
【0106】
第1工程では、図17(a)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、基板11上に一定の距離間隔(ピッチ)で配置される。そして、この液滴の配置動作を繰り返すことにより基板11上における膜パターンWの形成予定領域W4の中央部に、この膜パターンWの一部を構成する線状の中央パターンW1が形成される。なお、基板11の表面はステップS2及びS3により所望の撥液性に予め加工されているので、基板11上に配置した液滴の拡がりが抑制される。そのためパターン形状を良好な状態に確実に制御できるとともに厚膜化も容易である。
【0107】
ここで、基板11上に中央パターンW1を形成するための液滴を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)が行われる。中間乾燥処理は、例えばホットプレート、電気炉、及び熱風発生機等の加熱装置を用いた一般的な熱処理の他にランプアニールを用いた光処理であってもよい。
【0108】
次に、第2工程では、図17(b)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、これにより中央パターンW1の一方の側に隣接する線状の第1側部パターンW2が形成される。ここで、液滴吐出ヘッド10は第1側部パターンW2を形成するに際し、吐出した液滴と基板11上に形成された中央パターンW1との少なくとも一部が重なるように、液滴を吐出する。これにより中央パターンW1と第1側部パターンW2を形成する液滴とは確実に接続され、形成された膜パターンWに導電膜配線形成用材料の不連続部が生じることがない。
【0109】
そして、第2工程においても液滴は基板11上に一定のピッチで配置され、この配置動作を繰り返すことにより、膜パターンWの形成予定領域W4の一方の側部にこの膜パターンWの一部を構成する第1側部パターンW2が形成され、中央パターンW1と第1側部パターンW2とが一体化される。
【0110】
ここでも、基板11上に第1側部パターンW2を形成するための液滴を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)が行われる。
【0111】
次に、第3工程では、図17(c)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、これにより中央パターンW1の他方の側に隣接する線状の第2側部パターンW3が形成される。ここでも、液滴吐出ヘッド10は第2側部パターンW3を形成するに際し、吐出した液滴と基板11上に形成された中央パターンW1との少なくとも一部が重なるように、液滴を吐出する。これにより中央パターンW1と第2側部パターンW3を形成する液滴とは確実に接続され、形成された膜パターンWに導電膜配線形成用材料の不連続部が生じることがない。こうして、中央パターンW1と第2側部パターンW3とが一体化され、3つの線状のパターンW1、W2、及びW3が一体化されて幅広の膜パターンWが形成される。そして、第3工程においても液滴は基板上に一定のピッチで配置され、この配置動作を繰り返すことにより、膜パターンWの形成予定領域W4の他方の側部にこの膜パターンWの一部を構成する第2側部パターンW3が形成される。
【0112】
このとき、第2、第3工程で吐出する液滴の吐出位置(中央パターンWとの距離)を調整することで最終的な線状の膜パターンWの線幅を制御することができる。また、第1、第2、及び第3の各工程で形成する複数のパターンW1、W2、及びW3の基板11の表面からの高さ(厚み)を変化させることにより、一体化後の膜パターンWの膜厚を制御できる。
【0113】
なお、パターンの輪郭において凹凸形状が形成された場合には、必要に応じて凹凸部を埋めるように微小液滴を塗布することが好ましい。この微小液滴は、通常塗布する液滴(W1、W2、W3で塗布する液滴を指す)よりも小さい液滴であり、吐出量も通常の液滴よりも少なく設定されている。このように微小液滴を塗布することにより、パターンの輪郭に凹凸がなく、直線的なパターンを形成することができる。
【0114】
次に、図18(a)〜(c)を参照しながら、線状の中央パターンW1、及び側部パターンW2、W3を形成する手順について説明する。
【0115】
まず、図18(a)に示すように、液滴吐出ヘッド10から吐出した液滴L1が所定の間隔をあけて基板11上に順次配置される。すなわち、液滴吐出ヘッド10は基板11上で液滴L1どうしが重ならないように配置する(第1配置工程)。本例では、液滴L1の配置ピッチP1は基板11上に配置した直後の液滴L1の直径よりも大きくなるように設定されている。これにより基板11上に配置された直後の液滴L1どうしは重ならずに(接触せずに)、液滴L1どうしが合体して基板11上で濡れ拡がることが防止される。また、液滴L1の配置ピッチP1は基板11上に配置した直後の液滴L1の直径の2倍以下となるように設定されている。
【0116】
ここで、基板11上に液滴L1を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)を行うことができる。中間乾燥処理は、上述したように、例えばホットプレート、電気炉、及び熱風発生機等の加熱装置を用いた一般的な熱処理の他に、ランプアニールを用いた光処理であってもよい。この場合、分散媒の除去だけでなく、分散液を導電膜に変換するまで、加熱や光照射の度合いを高めても差し支えないが、分散媒をある程度除去できれば十分である。
【0117】
次に、図18(b)に示すように、上述した液滴の配置動作が繰り返される。
すなわち図18(a)に示した前回と同様に、液滴吐出ヘッド10から液体材料が液滴L2として吐出され、その液滴L2が一定距離ごとに基板11に配置される。
【0118】
このとき、液滴L2の体積(1つの液滴あたりの液体材料の量)、及びその配置ピッチP2は前回の液滴L1と同じである。そして、液滴L2の配置位置は前回の液滴L1から1/2ピッチだけシフトされ、基板11上に配置されている前回の液滴L1どうしの中間位置に今回の液滴L2が配置される(第2配置工程)。図示されているように、最初に塗布された第1の液滴L1の間を補完するように第2の液滴L2を塗布することにより、平坦性に優れた配線パターン(ここでは外部接続用端子)が形成できる。
【0119】
前述したように、基板11上の液滴L1の配置ピッチP1は、基板11上に配置した直後の液滴L1の直径よりも大きく且つ、その直径の2倍以下である。そのため、液滴L1の中間位置に液滴L2が配置されることにより、液滴L1に液滴L2が一部重なり、液滴L1どうしの間の隙間が埋まる。このとき、今回の液滴L2と前回の液滴L1とが接するが、前回の液滴L1はすでに分散媒が完全に又はある程度除去されているので、両者が合体して基板11上で拡がることは少ない。
【0120】
なお、図18(b)では、液滴L2の配置を開始する位置を前回と同じ側(図18(a)に示す左側)としているが逆側(右側)としてもよい。往復動作の各方向への移動時に液滴の吐出を行うことにより、液滴吐出ヘッド10と基板11との相対移動の距離を少なくできる。
【0121】
液滴L2を基板11上に配置した後、分散媒の除去を行うために前回と同様に必要に応じて中間乾燥処理を行うことが可能である。
【0122】
こうした一連の液滴の配置動作を複数回繰り返すことにより、基板11上に配置される液滴どうしの隙間が埋まり、図18(c)に示すように、線状の連続したパターンである中央パターンW1、及び側部パターンW2、W3が基板11上に形成される。この場合、液滴の配置動作の繰り返し回数を増やすことにより基板11上に液滴が順次重なり、パターンW1、W2、W3の膜厚、すなわち基板11の表面からの高さ(厚み)が増す。線状パターンW1、W2、W3の高さ(厚み)は最終的な膜パターンに必要とされる所望の膜厚に応じて設定され、この設定した膜厚に応じて上記液滴の配置動作の繰り返し回数が設定される。
【0123】
なお、線状パターンの形成方法は図18(a)〜(c)に示したものに限定されない。例えば、液滴の配置ピッチや繰り返しの際のシフト量等を任意に設定可能であり、パターンW1、W2、W3を形成する際の液滴の基板P上での配置ピッチをそれぞれ異なる値に設定してもよい。例えば、中央パターンW1を形成する際の液滴ピッチがP1である場合、側部パターンW2、W3を形成する際の液滴ピッチをP1より広いピッチ(例えばP1×2)としてもよい。もちろん、P1より狭いピッチ(例えばP1×0.5)としてもよい。また、パターンW1、W2、W3を形成する際の液滴の体積をそれぞれ異なる値に設定してもよい。あるいは、第1、第2、及び第3の各工程において基板11や液滴吐出ヘッド10が配置される雰囲気である液滴配置雰囲気(温度や湿度等)、すなわち材料配置環境条件を互いに異なる条件に設定してもよい。
【0124】
なお、本実施形態では複数の側部パターンW2、W3は1本ずつ形成されるが2本同時に形成されてもよい。ここで、1本ずつ複数のパターンW2、W3を形成する場合と2本同時に形成する場合とでは、乾燥処理の回数の合計が異なる可能性があるため、基板11の撥液性が損なわれないように乾燥条件を定めるとよい。
【0125】
なお、本実施形態では、第1工程で1本の中央パターンW1を形成したが、中央パターンW1を2本以上の複数形成してもよい。そして、この複数本の中央パターンW1の両側部に対して液滴を吐出し、これらを連続させることにより、より広い線幅の膜パターンを容易に形成できる。
【0126】
更に、ある1つのノズルから液滴を塗布することも可能であるが、ノズル間における液滴の吐出量のばらつきをできるだけ抑えるために、異なるノズルによって液滴を塗布することも可能である。例えば、液滴L1の塗布には第1のノズルにより塗布を行い、液滴L1の間を保管する液滴L2は第1のノズルとは異なる第2のノズルにより塗布することが好ましい。更に、第1のノズルと第2のノズルは同じヘッドに形成されていても良いが、前述のとおり複数個のヘッドが形成されているので、別のヘッドに形成されていても良い。すなわち、第1のノズルは第1のヘッドに形成され、第2のノズルは第2のヘッドに形成され、所望のパターンを形成する際は、第1のノズル、第2のノズルにより塗布を行う、ことも可能である。
【0127】
次に、図19〜図22を参照しながら基板上に液滴を吐出する順序の一例について説明する。これらの図に示すように、基板11上には液体材料の液滴が吐出される格子状の複数の単位領域であるピクセルを有するビットマップが設定されている。液滴吐出ヘッド10は液滴をビットマップで設定されたピクセル位置に対して吐出する。ここで、1つのピクセルは正方形に設定されている。また、液滴吐出ヘッド10は基板11に対してY軸方向に走査しながら吐出ノズル10Aより液滴を吐出するものとする。そして、図19〜図22を用いた説明において、1回目の走査時に吐出された液滴には「1」を付し、2回目、3回目、…、n回目の走査時に吐出された液滴には「2」、「3」…、「n」を付す。また、以下の説明では、図19のグレーで示す領域(パターン形成予定領域)のそれぞれに液滴を吐出して膜パターンWを形成するものとする。
【0128】
図19(a)に示すように、1回目の走査時において、中央パターンW1を形成するために中央パターン形成予定領域に1つ分のピクセルをあけつつ液滴が吐出される。ここで、基板11に対して吐出された液滴は基板11に着弾することにより基板11上で濡れ拡がる。つまり、図19(a)に円で示すように、基板11に着弾した液滴は1つのピクセルの大きさより大きい直径cを有するように濡れ拡がる。ここで、液滴はY軸方向において所定間隔(1つ分のピクセル)をあけて吐出されているので、基板11上に配置された液滴どうしは重ならないように設定されている。こうすることによりY軸方向において基板11上に液体材料が過剰に設けられることを防ぎ、バルジの発生を防止することができる。
【0129】
なお、図19(a)では基板11に配置された際の液滴どうしは重ならないように配置されているが、僅かに重なるように液滴が配置されてもよい。また、ここでは1つ分のピクセルをあけて液滴が吐出されているが、2つ以上の任意の数のピクセル分だけ間隔をあけて液滴を吐出してもよい。この場合、基板11に対する液滴吐出ヘッド10の走査動作及び吐出動作を増やして基板上の液滴どうしの間を補間すればよい。
【0130】
図19(b)は2回目の走査により液滴吐出ヘッド10の吐出ノズル10Aから基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図19(b)において、2回目の走査時で吐出された液滴には「2」を付している。2回目の走査時では、1回目の走査時で吐出された液滴「1」の間を補間するように液滴が吐出される。
【0131】
そして、1回目及び2回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、中央パターンW1が形成される。
【0132】
次に、液滴吐出ヘッド10と基板11とが1つのピクセルの大きさ分だけX軸方向に相対移動する。ここでは液滴吐出ヘッド10が基板11に対して−X方向に1つのピクセル分だけステップ移動する。そして、液滴吐出ヘッド10は3回目の走査を行う。これにより、図20(a)に示すように、中央パターンW1の−X側に隣接するように、第1側部パターンW2を形成するための液滴「3」が基板11上に配置される。ここでも、液滴「3」はY軸方向に1つ分のピクセルをあけて配置される。ここで、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後における1回目の走査時(すなわち全体における3回目の走査時)における液滴「3」は、ステップ移動前の1回目の走査時における液滴「1」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0133】
図20(b)は4回目の走査により液滴吐出ヘッド10から基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図20(b)において、4回目の走査時で吐出された液滴には「4」を付している。4回目の走査時では、3回目の走査時で吐出された液滴「3」の間を補間するように液滴が吐出される。そして、3回目及び4回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、第1側部パターンW2が形成される。ここで、ステップ移動後の2回目の走査時(すなわち全体における4回目の走査時)における液滴「4」は、ステップ移動前の2回目の走査時における液滴「2」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0134】
次に、液滴吐出ヘッド10と基板11とが2つのピクセル分だけX軸方向に相対移動する。ここでは液滴吐出ヘッド10が基板に対して+X方向に2つのピクセル分だけステップ移動する。そして、液滴吐出ヘッド10は5回目の走査を行う。これにより、図21(a)に示すように、中央パターンW1の+X側に隣接するように、第2側部パターンW3を形成するための液滴「5」が基板上に配置される。ここでも、液滴「5」はY軸方向に1つ分のピクセルをあけて配置される。ここで、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後である5回目の走査時における液滴「5」は、液滴「1」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0135】
図21(b)は6回目の走査により液滴吐出ヘッド10から基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図21(b)において、6回目の走査時で吐出された液滴には「6」を付している。6回目の走査時では、5回目の走査時で吐出された液滴「5」の間を補間するように液滴が吐出される。そして、5回目及び6回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、第2側部パターンW3が形成される。ここで、6回目の走査時における液滴「6」は、液滴「2」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0136】
このように、1つのパターンに対し、同じノズルにより液滴を吐出することが可能であるが、前述の通り異なるノズルにより液滴を吐出することも可能である。異なるノズルで液滴を吐出する場合の吐出方法は前述の通りである。また、ノズルの活用に関しては、以下に記載の例においても、同様に実施可能である。
【0137】
図22は液滴の吐出位置の配置順序を変えた例を示す図である。図22において、中央パターンW1を形成する液滴「1」のX軸について−X側に隣接する位置には、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後において2回目の走査時(全体で4回目の走査時)で吐出された液滴「4」が配置され、一方、中央パターンW1を形成する液滴「2」のX軸について−X側に隣接する位置には、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後において1回目の走査時(全体で3回目の走査時)で吐出された液滴「3」が配置されている。同様に、液滴「1」のX軸について+X側に隣接する位置には、全体で6回目の走査時において吐出された液滴「6」が配置され、一方、中央パターンW1を形成する液滴「2」の+X側に隣接する位置には、全体で5回目の走査時において吐出された液滴「5」が配置されている。このように、各ラインW1、W2、W3を形成するに際し、液滴の吐出位置の順序のそれぞれを各ライン毎に異なるように設定してもよい。
【0138】
更に、図23に示す例のように、中央パターンW1を形成するための液滴「1」を配置した後、液滴吐出ヘッド10をステップ移動し、第1側部パターンW2を形成するための液滴「2」を配置し、次いで、液滴吐出ヘッド10をステップ移動して第2側部パターンW2を形成するための液滴「3」を配置するといった順序も可能である。そして、これらを補間するように液滴「4」、「5」、「6」が順次吐出される。このように、中央パターンW1を形成した後に側部パターンW2、W3を形成するに際し、例えば中央パターンW1を完全に形成してから側部パターンW2、W3を形成せずに、中央パターンW1が未完成の状態で側部パターンW2、W3の形成動作を開始してもよい。
【0139】
図24(a)、(b)は、上記第2、第3工程において、中央パターンW1の両側部に第1、第2側部パターンW2、W3を形成するための液滴の配置例を示す図である。図24(a)の例では、図18を参照して説明した吐出条件(配置条件)と同じ条件で中央パターンW1が形成される。一方、第2、第3工程の吐出条件(配置条件)は中央パターンW1を形成するための吐出条件と異なっている。具体的には、第1工程に比べて液滴Lnの体積が大きく設定されている。すなわち、一度に吐出される液体材料の量が増加されている。なお、本例では、液滴Lnの配置ピッチは第1工程と同じである。液滴Lnの体積を大きくすることにより膜パターンW全体の形成時間を短縮でき、スループット向上を図ることができる。なお、液滴の体積が大きくなるとバルジが発生しやすくなるため、液体材料の材料特性に応じてバルジが生じない液滴体積条件を予め求めておき、この求めた条件に基づいて吐出液滴の最大可能体積を設定すればよい。
【0140】
図24(b)の例では、第2、第3工程の吐出条件は第1工程に比べて液滴Lnの配置ピッチを狭くしている。なお、液滴Lnの体積は第1工程と同じでもよく、図24(a)に示したように第1工程に比べて大きくしてもよい。液滴の配置ピッチを狭くすることにより単位面積あたりの液滴の配置量が増え、短時間でパターン形成が可能となる。
【0141】
以上のように、各種吐出方法を説明したが、異なるノズルにより液滴を吐出する方法について以下に補足する。
【0142】
1つのパターン(ここでは1ライン)を形成する際、複数のノズルを用いて形成することが可能である。例えば、1番目の液滴を第1のノズルにより塗布し、2番目の液滴を第1のノズルとは異なる第2のノズルにより塗布することが可能である。さらには、3番目の液滴を第3のノズルから塗布し、4番目の液滴を第4のノズルから塗布することができる。このような塗布方法とすることにより、ノズルによって吐出量のばらつきがある場合、その差を最小限に抑えることができる。すなわち、同じノズルによって塗布した場合、吐出された液滴の総量に差が生じる。その結果、膜厚の差、更には電極としての抵抗値の差にも影響が出る。そこで、このような問題を改善するために、1つの電極(または1つのパターン)に対し異なるノズルにより液滴を塗布することにより、膜厚の差を最小限に抑えることができ、電極の抵抗もほぼ均一にすることが可能となる。
【0143】
<表面処理工程>
次に、図16で示した表面処理工程S2、S3について説明する。表面処理工程では、導電膜配線(外部接続用端子)を形成する基板の表面を液体材料に対して撥液性に加工する(ステップS2)。
【0144】
具体的には、導電性微粒子を含有した液体材料に対する所定の接触角が、60℃以上、好ましくは90℃以上110℃以下となるように基板に対して表面処理を施す。表面の撥液性(濡れ性)を制御する方法としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法、プラズマ処理法、UV照射をする方法等を採用できる。
【0145】
自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0146】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0147】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0148】
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0149】
なお、FASを用いることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0150】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4-n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF3)等のフルオロ基を有するため、基板の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0151】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板表面の前処理を施すことが望ましい。
【0152】
FAS処理を施した後、所望の撥液性に処理する撥液性低下処理が必要に応じて行われる(ステップS3)。すなわち、撥液化処理としてFAS処理を施した際に、撥液性の作用が強すぎて基板とこの基板上に形成した膜パターンWとが剥離しやすくなる場合がある。そこで、撥液性を低下(調整)する処理が行われる。撥液性を低下する処理としては波長170〜400nm程度の紫外線(UV)照射処理が挙げられる。所定のパワーの紫外線を所定時間だけ基板に照射することで、FAS処理された基板の撥液性が低下され、基板は所望の撥液性を有するようになる。あるいは、基板をオゾン雰囲気に曝すことにより基板の撥液性を制御することもできる。
【0153】
一方、プラズマ処理法では、常圧又は真空中で基板に対してプラズマ照射を行う。プラズマ処理に用いるガス種は、導電膜配線を形成すべき基板の表面材質等を考慮して種々選択できる。処理ガスとしては、例えば、4フッ化メタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等が例示できる。
【0154】
なお、基板表面を撥液性に加工する処理は、所望の撥液性を有するフィルム、例えば4フッ化エチレン加工されたポリイミドフィルム等を基板表面に貼着することによっても行ってもよい。また、撥液性の高いポリイミドフィルムをそのまま基板として用いてもよい。
【0155】
このような表面処理を、外部接続用端子を形成する表面に行うことにより、液滴を吐布した際、平坦性に優れ、輪郭に凹凸が少ない配線パターンを形成することができる。なお、電極73,74,75を形成する場合であれば、第2層間絶縁層283に上記のような表面処理を施す。また、透明電極77に相当する位置にインクジェットにより電極を形成する場合には、この下層にあたる電極73、74、75に表面処理を行うことにより最上層にインクジェット方による電極(外部接続用端子)を形成することができる。
【0156】
<中間乾燥工程>
次に、図16で示した中間乾燥工程S5について説明する。中間乾燥工程(熱・光処理工程)では、基板上に配置された液滴に含まれる分散媒あるいはコーティング材を除去する。すなわち、基板上に配置された導電膜形成用の液体材料は、微粒子間の電気的接触をよくするために分散媒を完全に除去する必要がある。
また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。
【0157】
熱・光処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱/光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。例えば有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
【0158】
熱処理には、例えばホットプレート、電気炉等の加熱装置を用いることができる。光処理にはランプアニールを用いることができる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態例では100W以上1000W以下の範囲で十分である。上記熱・光処理により微粒子間の電気的接触が確保され、導電膜に変換される。
【0159】
なお、この際、分散媒の除去だけでなく、分散液を導電膜に変換するまで、加熱や光照射の度合いを高めても差し支えない。ただし、導電膜の変換は、すべての液体材料の配置が終了してから、熱処理・光処理工程においてまとめて行えばよいので、ここでは、分散媒をある程度除去できれば十分である。例えば、熱処理の場合は、通常100℃程度の加熱を数分行えばよい。また、乾燥処理は液体材料の吐出と並行して同時に進行させることも可能である。例えば、基板を予め加熱しておいたり、液滴吐出ヘッドの冷却とともに沸点の低い分散媒を使用したりすることにより、基板に液滴を配置した直後から、その液滴の乾燥を進行させることができる。
【0160】
前述の通り、塗布後、過熱処理を加えることもある。すなわち、微粒子分散液21が所定パターンに塗布された基板101は、溶媒を除去し、微粒子間の電気的接触をよくするために、熱処理に供される。熱処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。上記の熱処理の処理温度は溶媒の沸点(蒸気圧)、圧力および微粒子の熱的挙動により適宜定めればよく、特に限定されるものではないが室温以上300℃以下で行うことが望ましい。プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
【0161】
熱処理は通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0162】
図7及び図8に示すように、本実施形態の電気光学装置に設けられる第2外部接続端子66c,70,70の表面には複数の凹部Bが形成されされており、この凹部Bにより、第2外部接続端子66c,70,70を複数の電極として分割した構成となっている。図6に示したように、発光用電源配線23R及び信号線22の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより、固着部65における固着条件の均一化を図っているが、第2外部接続端子66c,70,70の表面に複数の凹部Bが形成されているため、第2外部接続端子66c,70,70は更に複数の電極に分割されたものとなり、固着条件の均一化を図る上で極めて好適である。
【0163】
また、電極73,74,75の端部に第1層間絶縁層284を形成することにより、第2外部接続端子66c,70,70の端部に凸部79が形成される。この凸部79は、異方性導電膜40を用いて表示基板10と中継基板20とを固着する際に、異方性導電膜40に含まれる導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70の側部にはみ出るのを防止するように作用する。その結果、より多くの導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70上に配置されることになるため、固着部65における電気的抵抗を低減する極めて優れた構造である。
【0164】
以上説明した本実施形態の表示基板20は、固着部65において圧着条件を均一化するための構成が設けられているため、固着部65に固着される中継基板30に形成される外部接続端子34は、図6に示す発光用電源配線23R及び走査線駆動回路用制御信号配線24a等と同様の線幅で形成されていても良い。しかしながら、より均一な圧着条件下で中継基板30と表示基板20とを固着するには、固着部65に形成された第2外部接続端子66c,70,70等と同様のパターンであることが好適である。
【0165】
ところで、図5に示した第2層間絶縁層283上に形成された各種配線と、実表示領域62及びダミー領域63の上部(基板60側に対する反対側)を覆うように形成されている陰極26との間の寄生容量を低減して表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を極力低減するために、第1層間絶縁層284の厚みを厚くする傾向がある。
【0166】
図9は、第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成された第2外部接続端子70,70の拡大図である。図9に示すように、電極74,75間の第1層間絶縁層284の厚みが厚くなると、第1外部接続端子70,70の端部に形成されている凸部79の高さが、図8に示した凸部79の高さよりも高く形成される。尚、図7及び図8においては、第1層間絶縁層284がSiNから形成されていたが、図9では、第1層間絶縁層284をSiO2を用いて形成している。
【0167】
図9に示すように、第1層間絶縁層284の厚みを増すことにより、電極74,75の端部に形成される凸部79の高さが高くなって、電極74,75と透明電極77との間の厚みが共に薄くなる。また、第2層間絶縁層283及び電極74,75上に直接第1層間絶縁層284を形成すると、電極74,75の端部に形成された凸部79は、電極74,75に対してのみならず第1外部接続端子70,70間における第1層間絶縁層284の表面に対しても突出した形状になって平坦性が損なわれ、異方性導電膜40を用いて中継基板30を固着するときに不具合が生ずる虞がある。
【0168】
かかる不具合を防止すべく、本実施形態では電極74,75により形成される凹凸を平坦化するための平坦化膜を設けている。図10は、第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成され、且つ電極74,75間に平坦化膜が設けられた第1外部接続端子70,70の拡大図である。この平坦化膜80は第1層間絶縁層284を形成する前に、電極74及び電極75等の電極が形成された部位以外の部位に形成される。
【0169】
図10を参照すると、平坦化膜80を形成した後で第1層間絶縁層284を形成することにより、第1外部接続端子70,70間における第1層間絶縁層284の表面と凸部79との高低差(段差)が小さくなることが分かる。よって、異方性導電膜40を用いて中継基板30を固着する際も不具合が生じない。
【0170】
以上、本発明の一実施形態による電気光学装置について説明したが、前述に示した有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置以外にも、この端子構造は液晶表示装置、図25に示すようなプラズマディスプレイ装置、無機EL装置、電気泳動装置、等のディスプレイに適用できる。
【0171】
更に、ディスプレイに形成される実装端子を例にとって示したが、実装端子に実装されるテープ側を本発明のようなプロセスにすることも可能である。すなわち、ディスプレイの外部接続端子は従来通りの構造とし、テープ(明細書では中継基板)を前述のようなプロセスとすることも可能である。
【0172】
また、以上に説明した電気光学装置、CPU(中央処理装置)等を備えたマザーボード、キーボード、ハードディスク等の電子部品を筐体内に組み込むことで、例えば図11に示すノート型のパーソナルコンピュータ600(電子機器)が製造される。図11は、本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。尚、図9において601は筐体であり、602は液晶表示装置であり、603はキーボードである。図12は、他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。図12に示した携帯電話機700は、アンテナ701、受話器702、送話器703、液晶表示装置704、及び操作釦部705等を備えて構成されている。
【0173】
また、上記実施形態では、電子機器としてノート型コンピュータ及び携帯電話機を例に挙げて説明したが、これらに限らず、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することが可能である。
【0174】
以上説明したように、本発明によれば、第1端子間、第2端子間、及び第1端子と第2端子との間に平坦化膜が設けられ、この平坦化膜上、第1端子の端部、及び第2端子の端部に絶縁膜を形成した構成であるため、絶縁層の厚みを厚くしたとしても第1端子の端部及び第2端子の端部に形成される絶縁層の高さが、平坦化膜上に形成される絶縁層の表面に対してさほど高くならずに平坦性を確保することができるという効果がある。その結果として、第1端子及び第2端子と接続される配線の接続不良を生ずることがないという効果がある。
【符号の説明】
【0175】
10…電気光学装置、22…信号線(第1配線)、23,23R…発光用電源配線(第2配線、電源線)、24a…走査線駆動回路用制御信号配線(第1配線)、30…中継基板、40…異方性導電膜、50…発光素子、53…スイッチング素子、66a,66b,66c…電極(第2端子)、67,68,69,70…電極(第1端子)、284…第1層間絶縁層(絶縁層)、79…凸部、80…平坦化膜、B…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置及び電子機器に係り、特に有機エレクトロルミネッセンス材料を備えた電気光学装置及び当該電気光学装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画素電極(陽極)及び陰極の間に、有機蛍光材料等の発光材料からなる発光素子が挟持された構造のカラー電気光学装置、特に発光材料として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)材料を用いた有機EL表示装置の開発が行われている。以下、従来の電気光学装置(有機EL表示装置)について簡単に説明する。
【0003】
図13は、従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。図13に示すように、従来の電気光学装置は、複数の走査線901と、走査線901に対して交差する方向に延びる複数の信号線902と、信号線902に並行して延びる複数の発光用電源配線903とがそれぞれ配線され、走査線901と信号線902との各交点毎に、画素領域Aが設けられている。各信号線902は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路904に接続されており、各走査線901は、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路905に接続されている。
【0004】
また、画素領域Aの各々には、走査線901を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング薄膜トランジスタ913と、このスイッチング薄膜トランジスタ913を介して信号線902から供給される画像信号を保持する保持容量Capと、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるカレント薄膜トランジスタ914と、このカレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903に電気的に接続されたときに発光用電源配線903から駆動電流が流れ込む画素電極911と、この画素電極911と陰極912との間に挟み込まれる発光層910とが設けられている。陰極912は、陰極用電源回路931に接続されている。
【0005】
上記の発光層910には、赤色に発光する発光層910R、緑色に発光する発光層910G、青色に発光する発光層910Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層910R,910G,910Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して各発光層910R,910G,910Bに接続される発光用電源配線903R,903G,903Bは、それぞれ発光用電源回路932に接続されている。各色毎に発光用電源配線が配線されているのは、発光層910の駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0006】
以上の構成において、走査線901に走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ913がオン状態になると、そのときに信号線902に供給されている画像信号に応じた電荷が保持容量Capに保持される。この保持容量Capに保持された電荷の量に応じて、カレント薄膜トランジスタ914のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ914を介して発光用電源配線903R,903G,903Bから画素電極911に電流が流れ、更に発光層910を介して陰極912に駆動電流が流れる。このとき、発光層910を流れた電流量に応じた量の発光が発光層910から得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図13に示した電気光学装置は、走査線901、信号線902、陰極912、発光用電源配線903(903R,903G,903B)、走査側駆動回路905、及び画素領域Aがガラス等の透明基板(表示基板)上に形成され、陰極用電源回路931、発光用電源回路932、及びデータ側駆動回路904等の回路が可撓性のあるフレキシブル基板(中継基板)上に配置された構成とされることがある。
【0008】
かかる構成の場合には、基板に対してフレキシブル基板を固着させ、走査線901、信号線902、陰極912、及び発光用電源配線903とフレキシブル基板上に形成された回路とを電気的に導通させる必要がある。基板とフレキシブル基板との固着及び電気的な接続は、基板とフレキシブル基板との間に導電粒子を含む異方性導電膜を配置し、フレキシブル基板を基板に対して圧着させることにより行われる。
【0009】
上述した電気光学装置に設けられる発光層910を安定して発光させるためには、発光用電源配線903から画素電極911に印加する駆動電流の電位変動をできるだけ少なくすることが要求される。特に、図13に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であり、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を防止するためには、陰極912及び発光用電源配線903の配線抵抗等による電圧降下を極力抑える必要がある。このため、陰極912及び発光用電源配線903は、走査線901及び信号線902よりも幅広に形成されている。
【0010】
基板とフレキシブル基板と固着させる際には、主として圧着部において生ずる電気的抵抗の均一化を図るために、固着部の全面に亘って圧着条件を同一にしたいという要求がある。この要求を満たすためには、固着部に設けられ、上述した種々の配線が接続される端子の形状を同一にする必要がある。
【0011】
しかしながら、上述したように、図13に示した電気光学装置は電流駆動型の電気光学装置であるため、陰極912及び発光用電源配線903の配線幅を狭くすることは配線抵抗等による電圧降下を考慮すると困難である。また、走査線901及び信号線902は数が多く、これら全てを配置するためには細線化及び狭ピッチ化する必要があるため、走査線901及び信号線902の線幅を陰極912及び発光用電源配線903の線幅と同程度にすることも困難である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表示基板と中継基板との圧着条件を固着部全体に亘って同一にすることにより、固着部における電気的抵抗の不均一性を解消することができるとともに、コントラストの低下等の表示上の不具合を生ずることがない電気光学装置、及び当該電気光学装置を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の製造方法は、外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、前記外部接続用端子を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記外部接続用端子には凸状の絶縁膜が形成されてなり、前記凸部によって形成された領域に前記液体材料を塗布することを特徴とする。
【0015】
また、前記液体液体材料をインクジェット法により塗布することを特徴とする。
【0016】
また、上記製造方法を用いて製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【0017】
さらには上記に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。
【図4】本実施形態の電気光学装置の平面模式図である。
【図5】図4のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】図4に示した固着部65付近の上面図である。
【図7】図6中のB−B’線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図である。
【図8】図7中の外部接続端子70の拡大図である。
【図9】第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成された第2外部接続端子70,70の拡大図である。
【図10】第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成され、且つ電極74,75間に平坦化膜が設けられた第1外部接続端子70,70の拡大図である。
【図11】本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。
【図12】他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。
【図13】従来の電気光学装置の配線構造を示す図である。
【図14】塗布装置の構造を示す図である。
【図15】ヘッドユニットを示す平面図を示す図である。
【図16】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【図17】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示す模式図である。
【図18】本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示す模式図である。
【図19】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図20】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図21】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子を示す模式図である。
【図22】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子の他の実施例を示す模式図である。
【図23】基板上に設定されたビットマップデータに基づいて液滴が配置される様子の他の実施例を示す模式図である。
【図24】本発明のパターンの形成方法の他の実施形態を示す模式図である。
【図25】本発明の電気光学装置の一実施形態を示す図であってプラズマ型表示装置に適用した例を示す分解斜視図である。
【図26】ヘッドユニットを示す側面図である。
【図27】ヘッドユニットを示す正面図である。
【図28】ヘッドユニットを示す断面図である。
【図29】ヘッドユニットを示す射視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電気光学装置及び電子機器について詳細に説明する。尚、以下の説明で参照する各図は、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による電気光学装置を模式的に示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、大別すると表示基板20と、表示基板20に接続される中継基板30とから構成される。表示基板20は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリクス方式の有機EL装置である。
【0021】
この表示基板20には、複数の走査線21が形成されており、この走査線21に交差する方向に延びる複数の信号線22が形成されている。また、表示基板20には、発光素子が複数形成された表示素子20aが設けられている。更に、図1においては図示を省略しているが、表示基板20には電源線及び陰極が形成されている。また、表示基板20の一端には、走査線21、信号線22、並びに不図示の電源線及び陰極各々に対する外部接続端子27が形成されている。
【0022】
尚、図1に示した電気光学装置10は、あくまでも主要な構成を模式的に示したものであり、実際の走査線21、信号線22、及び外部接続端子27は、極めて狭い間隔をもって多数が表示基板20上にそれぞれ形成されている点に注意されたい。また、外部接続端子27と走査線21との接続状態との接続状態も図1においては図示を省略している。
【0023】
中継基板30は、可撓性を有するベース基板31上に複数の配線32が形成されており、更に中継基板30の所定位置に半導体チップ33を搭載した構成である。配線32の一端には、表示基板20に形成された走査線21及び信号線22等の配線と電気的に接続するための外部接続端子34が形成されている。尚、図1では、中継基板30上に半導体チップ33のみが実装された構成であるが、半導体チップ33が実装される部位以外の部位の所定位置に抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品を実装しても良い。また、中継基板30に形成される配線32及び外部接続端子34も、その構造の理解を容易にするために、間隔を拡大して模式的に示すとともに、構造を簡略化して図示してある。
【0024】
図1に示すように、中継基板30は、異方性導電膜40を介して表示基板20に固着される。このとき、中継基板30の外部接続端子34は異方性導電膜40を介して表示基板20の外部接続端子27と電気的に接続される。この異方性導電膜40は、一対の端子間を異方性を持たせて電気的に一括接続するために用いられる導電性のある高分子フィルムであって、例えば、図2に示すように、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂41aの中に多数の導電粒子41bを分散させることによって形成される。
【0025】
図2は、異方性導電膜40により中継基板30と表示基板20とが固着される様子を示す断面図である。図2に示すように、表示基板20に形成された外部接続端子27と中継基板30に形成された外部接続端子34との間に導電粒子41bが挟持されるため、外部接続端子27と中継配線である外部接続端子34との間が電気的に接続されることになる。一方、外部接続端子27及び外部接続端子34が形成されている部位以外の部位においては、導電粒子41bが挟持されていても、接続端子が存在しないため、導通は取れていない。このようにして、外部接続端子27及び外部接続端子34との間のみで導通をとることができる。
【0026】
異方性導電膜40を用いて表示基板20と中継基板30とを固着させるには、表示基板20を表面が粗面とされた案内板を有する載置台(何れも図示省略)上に配置し、表示基板20を真空吸着する。このとき、少なくとも表示基板20に対して中継基板30が固着される部位が案内板の上方に位置するように表示基板20を載置台上に載置する。ここで、表面が粗面とされた案内板を用いるのは、案内板と表示基板20の接触面積を低減して案内板からの熱放散を抑えることで、表示基板20に加える温度を低下させるためである。
【0027】
表示基板20の載置台上への載置が完了すると、中継基板30が固着される表示基板20の部位に異方性導電膜40を貼付し、更に、半導体チップ33が搭載された面を下側にして、外部接続端子34が異方性導電膜40の上方に位置するように中継基板30の位置合わせを行う。以上の工程が終了すると、図示しない加熱加圧ヘッドを用いて外部接続端子34が形成されている面の裏面を加熱・加圧して、外部接続端子34と表示基板20に形成されている外部接続端子27との導通をとるとともに、中継基板30を表示基板20に固着させる。このとき、加熱加圧ヘッドから中継基板30及び表示基板20に加える温度は百数十〜数百°程度であり、加える圧力は数メガパスカルである。以上の工程を経ることにより、中継基板30を表示基板20に固着させることができる。
【0028】
次に、本実施形態の電気光学装置10の配線構造の詳細について説明する。図3は、本発明の一実施形態による電気光学装置の配線構造を模式的に示す図である。図3に示したように電気光学装置10は、複数の走査線21と、走査線21に対して交差する方向に延びる複数の信号線22と、信号線22に並行して延びる複数の発光用電源配線23とがそれぞれ配線されており、走査線21及び信号線22の各交点付近に、画素領域Aが設けられている。
【0029】
各信号線22には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路33aが接続されている。また、各信号線22には、薄膜トランジスタを備える検査回路25が接続されている。更に、各走査線21には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路24が接続されている。
【0030】
また、画素領域Aの各々には、スイッチング薄膜トランジスタ52、保持容量Cap、カレント薄膜トランジスタ53、画素電極51、発光層50、及び陰極26が設けられる。スイッチング薄膜トランジスタ52は、そのゲート電極に走査線21が接続されており、走査線21から供給される走査信号に応じて駆動されてオン状態又はオフ状態となる。保持容量Capは、スイッチング薄膜トランジスタ52を介して信号線22から供給される画像信号を保持する。
【0031】
カレント薄膜トランジスタ53は、そのゲート電極がスイッチング薄膜トランジスタ52及び保持容量Capに接続されており、保持容量Capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される。画素電極51は、カレント薄膜トランジスタ53に接続されており、カレント薄膜トランジスタ53を介して発光用電源配線23に電気的に接続したときに発光用電源配線23から駆動電流が流れ込む。発光層50は画素電極51と陰極26との間に挟み込まれている。
【0032】
上記、発光層50には、赤色に発光する発光層50R、緑色に発光する発光層50G、及び青色に発光する発光層50Bの3種の発光素子が含まれ、各発光層50R,50G,50Bがストライプ配置されている。そして、カレント薄膜トランジスタ53を介して各発光層50R,50G,50Bに接続される発光用電源配線23R,23G,23Bがそれぞれ、発光用電源回路33cに接続されている。各色毎に発光用電源配線23R,23G,23Bが配線されているのは、発光層50R,50G,50Bの駆動電位が各色毎に異なるためである。
【0033】
また、本実施形態の電気光学装置においては、陰極26と発光用電源配線23R,23G,23Bとの間に静電容量C1が形成されている。電気光学装置10が駆動するとこの静電容量C1に電荷が蓄積される。電気光学装置10の駆動中に各発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合には、蓄積された電荷が各発光用電源配線23に放電されて駆動電流の電位変動を抑制する。これにより、電気光学装置10の画像表示を正常に保つことができる。
【0034】
尚、この電気光学装置10においては、走査線21から走査信号が供給されてスイッチング薄膜トランジスタ52がオン状態になると、そのときの信号線22の電位が保持容量Capに保持され、保持容量Capに保持された電位に応じてカレント薄膜トランジスタ53のオン・オフ状態が決まる。そして、カレント薄膜トランジスタ53のチャネルを介して、発光用電源配線23R,23G,23Bから画素電極51に駆動電流が流れ、更に発光層50R,50G,50Bを介して陰極26に電流が流れる。このとき、発光層50を流れた電流量に応じた量の発光が発光層50から得られる。
【0035】
次に、本実施形態の電気光学装置10の具体的な構成について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態の電気光学装置の平面模式図であり、図5は、図4のA−A’線に沿う断面図である。図4に示すように、本実施形態の電気光学装置10は、基板60、不図示の画素電極群領域、発光用電源配線23(23R,23G,23B)、及び表示画素部61(図中一点鎖線の枠内)とから概略構成される。
【0036】
基板60は、例えばガラス等からなる透明な基板である。画素電極群領域は、図3に示したカレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極(図示省略)を基板60上にマトリックス状に配置した領域である。発光用電源配線23(23R,23G,23B)は、図4に示したように、画素電極群領域の周囲に配置され、各画素電極に接続されている。表示画素部61は、少なくとも画素電極群領域上に位置し、平面視略矩形形状である。この表示画素部61は、中央部分の実表示領域(又は、有効表示領域ともいう)62(図中二点鎖線の枠内)と、実表示領域62の外側に配置されたダミー領域63(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0037】
また、実表示領域62の図中両側には、走査線駆動回路24が配置されている。この走査線駆動回路24はダミー領域63の下層側(基板60側)に位置して設けられている。更に、ダミー領域63の下層側には、走査線駆動回路24に接続される走査線駆動回路用制御信号配線24aと走査線駆動回路用電源配線24bとが設けられている。また更に、実表示領域62の図中上側には、前述の検査回路25が配置されている。この検査回路25はダミー領域63の下層側(基板側2)に位置して設けられており、この検査回路25により、製造途中や出荷時の電気光学装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0038】
図4に示すように、発光用電源配線23R,23G,23Bは、ダミー領域63の周囲に配設されている。各発光用電源配線23R,23G,23Bは、基板60の図2中下側から走査線駆動回路用制御信号配線24aに沿って図4中上方に延在し、走査線駆動回路用制御信号配線24aが途切れた位置から折曲してダミー領域63の外側に沿って延在し、実表示領域62内にある図示略の画素電極に接続されている。また、基板60には、陰極26に接続される陰極用配線26aが形成されている。この陰極用配線26aは、発光用電源配線23R,23G,23Bを囲むように平面視略コ字状に形成されている。
【0039】
次に、図5に示すように、基板60上には回路部11が形成され、この回路部11上に表示画素部61が形成されている。また、基板60には、表示画素部61を環状に囲む封止材13が形成されており、更に表示画素部61上に封止基板14が備えられている。封止基板14は、封止材13を介して基板60に接合されており、ガラス、金属、又は樹脂等からなるものである。この封止基板14の裏側には、吸着剤15が貼付され、表示画素部61と封止基板14との間の空間に混入した水又は酸素を吸収できるようになっている。尚、吸着剤15に代えてゲッター剤を用いても良い。また、封止材13は、例えば熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。
【0040】
回路部11の中央部分には、画素電極群領域11aが設けられている。この画素電極群領域11aには、カレント薄膜トランジスタ53と、カレント薄膜トランジスタ53に接続された画素電極51が備えられている。カレント薄膜トランジスタ53は、基板60上に積層された下地保護層281、第2層間絶縁層283、及び第1層間絶縁層284に埋め込まれて形成され、画素電極51は、第1層間絶縁層284上に形成されている。カレント薄膜トランジスタ53に接続され、第2層間絶縁層283上に形成された電極の一方(ソース電極)には、発光用電源配線23(23R,23G,23B)が接続されている。尚、回路部11には、前述した保持容量Cap及びスイッチング薄膜トランジスタ52も形成されているが、図5ではこれらの図示を省略している。更に、図5においては、信号線22の図示を省略している。
【0041】
次に、図5において、画素電極群領域11aの図中両側には、前述の走査線駆動回路24が設けられている。図4に示した走査線駆動回路24には、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型の薄膜トランジスタ24cが備えられ、この薄膜トランジスタ24cは、画素電極51に接続されていない点を除いて上記のカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。尚、図5においては、検査回路25の図示を省略しているが、この検査回路25にも同様に薄膜トランジスタが備えられている。検査回路25に備えられている薄膜トランジスタは、後述するダミー画素電極51’に接続されていない点を除いてカレント薄膜トランジスタ53と同様の構造とされている。
【0042】
図5に示すように、走査線駆動回路24の図中外側の下地保護層281上には、走査線駆動回路用制御信号配線24aが形成されている。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aの外側の第2層間絶縁層283上には、走査線駆動回路用電源配線24bが形成されている。また、走査線駆動回路用電源配線24bの外側には、発光用電源配線23が形成されている。この発光用電源配線23は、2つの配線からなる二重配線構造を採用しており、前述したように表示画素部61の外側に配置されている。二重配線構造を採用することで配線抵抗を軽減できる。
【0043】
例えば、図5中左側にある赤色用の発光用電源配線23Rは、下地保護層281上に形成された第1配線23R1と、第2層間絶縁層283を介して第1配線23R1上に形成された第2配線23R2とから構成されている。第1配線23R1及び第2配線23R2は、図2に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23R3により接続されている。このように、第1配線23R1は、陰極用配線26aと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間は第2層間絶縁層283が配置されている。また、図5に示す通り、陰極用配線26aはコンタクトホールを介して第2層間絶縁層283上に形成された陰極用配線26bと電気的に接続されおり、いわば陰極用配線26aも二重配線構造になっている。よって、第2配線23R2は、陰極用配線26bと同じ階層位置に形成されており、第1配線23R2と陰極用配線26bとの間は第1層間絶縁層284が配置されている。このような構造をとることで、第1配線23R1と陰極用配線26aとの間、及び、第2配線23R2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0044】
同様に、図5の右側にある青色及び緑色用の発光用電源配線23G,23Bも二重配線構造を採用しており、それぞれ下地保護層281上に形成された第1配線23G1,23B1と、第2層間絶縁層283上に形成された第2配線23G2,23B2とから構成され、第1配線23G1,23B1及び第2配線23G2,23B2は、図4に示すように第2層間絶縁層283を貫通するコンタクトホール23G3,23B3により接続されている。そして、青色の第1配線23B1と陰極用配線26aの間、及び、青色の第2配線23B2と陰極用配線26bとの間に第2の静電容量C2が形成されている。
【0045】
第1配線23R1と第2配線23R2との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満であると、信号線22及び走査線21のような異なる電位を有するソースメタルとゲートメタルとの間の寄生容量が増えるため好ましくない。例えば、実表示領域62内においては、ソースメタルとゲートメタルとが交差する箇所が多く存在し、かかる箇所の寄生容量が多いと画像信号の時間遅延を引き起こす虞がある。その結果として、定められた期間内に画像信号を画素電極51に書き込むことができないため、コントラストの低下を引き起こす。第1配線23R1及び第2配線23R2に挟まれる第2層間絶縁層283の材質は、例えばSiO2等が好ましいが、1.0μm以上形成するとSiO2の応力により基板60が割れる恐れが生じる。
【0046】
また、各発光用電源配線23Rの上側には、表示画素部61から延出した陰極26が形成されている。これにより、各発光用電源配線23Rの第2配線23R2が、第1層間絶縁層284を挟んで陰極26と対向配置され、これにより第2配線23R2と陰極26との間に前述の第1の静電容量C1が形成される。ここで、第2配線23R2と陰極26との間隔は、例えば、0.6〜1.0μmの範囲が好ましい。間隔が0.6μm未満だと、画素電極及びソースメタルのような異なる電位を有する画素電極とソースメタルとの間の寄生容量が増える為、ソースメタルを用いている信号線の配線遅延が生じる。その結果、定められた期間内に画像信号を書き込むことができない為、コントラストの低下を引き起こす。第2配線23R2と陰極26に挟まれる第1層間絶縁層284の材質は、例えばSiO2やアクリル樹脂等が好ましい。しかしながら、SiO2を1.0μm以上形成すると応力により基板60が割れる恐れが生じる。また、アクリル樹脂の場合は、2.0μm程度まで形成することができるが、水を含むと膨張する性質があるため、その上に形成する画素電極を割る恐れがある。
【0047】
このように、表示基板20には、発光用電源配線23と陰極26との間に第1の静電容量C1が設けられるので、発光用電源配線23を流れる駆動電流の電位が変動した場合に第1の静電容量C1に蓄積された電荷が発光用電源配線23に供給され、駆動電流の電位不足分がこの電荷により補われて電位変動を抑制することができ、発光装置1の画像表示を正常に保つことができる。特に、発光用電源配線23と陰極26とが表示画素部61の外側で対向しているので、発光用電源配線23と陰極26との間隔を小さくして第1の静電容量C1に蓄積される電荷量を増大させることができ、駆動電流の電位変動をより小さくして画像表示を安定に行うことができる。更に、発光用電源配線23が第1配線及び第2配線からなる二重配線構造を有し、第1配線と陰極用配線との間に第2の静電容量C2が設けられているので、第2の静電容量C2に蓄積された電荷も発光用電源配線23に供給されるため、電位変動をより抑制することができ、発光装置1の画像表示をより正常に保つことができる。
【0048】
次に、表示画素部61の実画素領域62には、発光層50及びバンク部(絶縁部)122が形成されている。発光層50は図5に示すように、画素電極51上の各々に積層されている。また、バンク部122は、各画素電極51及び各発光層50の間に備えられており、各発光層50を区画している。バンク部122は、基板60側に位置する無機物バンク層122aと基板60から離れて位置する有機物バンク層122bとが積層されて構成されている。尚、無機物バンク層122aと有機物バンク層122bとの間に遮光層を配置してもよい。
【0049】
無機物、有機物バンク層122a,122bは、画素電極51の周縁部上に乗上げるまで延出形成されており、また無機物バンク層122aは、有機物バンク層122bよりも画素電極51の中央側に延出形成されている。また、無機物バンク層122aは、例えば、SiO2、TiO2、SiN等の無機材料からなることが好ましい。また無機物バンク層122aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。膜厚が50nm未満では、無機物バンク層122aが後述する正孔注入/輸送層より薄くなり、正孔注入/輸送層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。また膜厚が200nmを越えると、無機物バンク層122aによる段差が大きくなって、正孔注入/輸送層上に積層する後述の発光層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。
【0050】
更に、有機物バンク層122bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の通常のレジストから形成されている。この有機物バンク層122bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層122bが薄くなり、発光層が上部開口部から溢れるおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部による段差が大きくなり、有機物バンク層122b上に形成する陰極26のステップカバレッジを確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層122bの厚さを2μm以上にすれば、陰極26と画素電極51との絶縁を高めることができる点でより好ましい。
このようにして、発光層50は、バンク部122より薄く形成されている。
【0051】
また、バンク部122の周辺には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層122a及び画素電極51であり、これらの領域には、酸素を反応ガスとするプラズマ処理によって水酸基等の親液基が導入されている。また、撥液性を示す領域は、有機物バンク層122bであり、4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理によってフッ素等の撥液基が導入されている。
【0052】
発光層50は、画素電極51上に積層された図示せぬ正孔注入/輸送層上に積層されている。尚、本明細書では、発光層50及び正孔注入/輸送層を含む構成を機能層といい、画素電極51、機能層、及び陰極26含む構成を発光素子という。正孔注入/輸送層は、正孔を発光層50に注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層を画素電極51と発光層50の間に設けることにより、発光層50の発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層50では、正孔注入/輸送層から注入された正孔と、陰極26からの電子とが結合して蛍光を発生させる。発光層50は、赤色(R)に発光する赤色発光層、緑色(G)に発光する緑色発光層、及び青色(B)に発光する青色発光層の3種類を有し、図3及び図4に示すように、各発光層がストライプ配置されている。
【0053】
次に、図5に示したように、表示画素部61のダミー領域63には、ダミー発光層210及びダミーバンク部212が形成されている。ダミーバンク部212は、基板60側に位置するダミー無機物バンク層212aと基板60から離れて位置するダミー有機物バンク層212bとが積層されて構成されている。ダミー無機物バンク層212aは、ダミー画素電極51’の全面に形成されている。またダミー有機物バンク層212bは、有機物バンク層122bと同様に画素電極51の間に形成されている。そして、ダミー発光層210は、ダミー無機物バンク212aを介してダミー画素電極51’上に形成されている。
【0054】
ダミー無機物バンク層212a及びダミー有機物バンク層211bは、先に説明した無機物、有機物バンク層122a,122bと同様の材質、同様の膜厚を有するものである。また、ダミー発光層210は、図示略のダミー正孔注入/輸送層上に積層されており、ダミー正孔注入/輸送層及びダミー発光層の材質や膜厚は、前述の正孔注入/輸送層及び発光層50と同様である。従って、上記の発光層50と同様に、ダミー発光層210はダミーバンク部212より薄く形成されている。
【0055】
ダミー領域63を実表示領域62の周囲に配置することにより、実表示領域62の発光層50の厚さを均一にすることができ、表示ムラを抑制することができる。即ち、ダミー領域63を配置することで、表示素子をインクジェット法によって形成する場合における吐出した組成物インクの乾燥条件を実表示領域62内で一定にすることができ、実表示領域62の周縁部で発光層50の厚さに偏りが生じる虞がない。
【0056】
次に、陰極26は、実表示領域62とダミー領域63の全面に形成されるとともにダミー領域63の外側にある基板60上まで延出され、ダミー領域63の外側、即ち表示画素部61の外側で発光用電源配線23と対向配置されている。また陰極26の端部が、回路部11に形成された陰極用配線26aに接続されている。陰極26は、画素電極51の対向電極として発光層50に電流を流す役割を果たす。この陰極26は、例えば、フッ化リチウムとカルシウムの積層体からなる陰極層26bと反射層26cとが積層されて構成されている。陰極26のうち、反射層26cのみが表示画素部61の外側まで延出されている。反射層26cは、発光層50から発した光を基板60側に反射させるもので、例えば、Al、Ag、Mg/Ag積層体等からなることが好ましい。更に、反射層26c上にSiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0057】
また、図4に示すように、基板60の一端には前述した異方性導電膜40を用いて中継基板30が固着されている。尚、中継基板30上に搭載された半導体チップ33には、図3に示したデータ側駆動回路33a、陰極用電源回路33b、及び発光用電源回路33cが内蔵されている。図4中の破線で囲った部分は、表示基板20と中継基板30との固着部を示している。図6は、図4に示した固着部65付近の上面図である。尚、図6においては、異方性導電膜40及び中継基板30の図示を省略している。
【0058】
図6に示したように、固着部65においては、外部接続端子が形成されている。外部接続端子には、線幅の細い配線各々に対して配線の幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子が設けられ、幅広の配線に対しては線幅よりも幅の狭い複数の第2外部接続端子が設けられる。例えば、線幅の細い走査線駆動回路用制御信号配線24aの各々に対しては、走査線駆動回路用制御信号配線24aの線幅と同程度の幅を有する第1外部接続端子67,68,69が設けられる。一方、幅が広い発光用電源配線23Rに対しては、発光用電源配線23Rの線幅よりも幅の狭い第2外部接続端子66a,66b,66cが設けられる。また、走査線駆動回路用制御信号配線24aよりも幅が狭い信号線22に対しては、信号線22と同程度の線幅を有する第2外部接続端子70がそれぞれ設けられる。尚、第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数は、基板60に形成される配線の線幅に応じて適宜設定される。
【0059】
このように、基板60に形成された配線の線幅に応じて第1外部接続端子及び第2外部接続端子の数を変えるのは、固着部65の全面に亘って圧着条件を極力同一にするためである。つまり、図1及び図2を用いて説明したように、表示基板10と中継基板20とは異方性導電膜40により固着されるが、固着条件(例えば、端子の幅、接着面積、圧力の掛かり具合等)が異なると固着部65内部における電気的抵抗がその位置に応じて異なる。固着部65における電気的抵抗が位置に応じて異なると、表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を生ずる。このために、固着部65において、基板60に形成された配線の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより圧着条件を極力同一にしている。更に、複数の外部接続端子を設けることにより、接着面積を増大させることができる。即ち、複数の外部接続端子間に異方性導電膜を配置することができるので、強固な接着が可能となる。
【0060】
次に、固着部65に形成される外部接続端子の構造について詳細に説明する。
図7は、図6中のB−B’線に沿う第2外部接続端子66c及び第2外部接続端子70の断面図であり、図8は、図7中の外部接続端子70の拡大図である。図7及び図8に示すように、基板60上には下地保護層281が形成されており、この下地保護層281上にSiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層71が形成されている。このゲート絶縁層71は、図示しない薄膜トランジスタのチャネル領域とゲート電極とを電気的に絶縁するために形成されるものである。尚、本明細書において、「主体」とする成分とは最も含有率の高い成分のことをいうものとする。
【0061】
ゲート絶縁層71上には信号線22及び発光用電源配線23Rが形成されており、更に信号線22及び発光用電源配線23R上に第2層間絶縁層283が形成されている。また、発光用電源配線23、走査線駆動回路用制御信号配線24aは、図3に記載の走査線21と同時に形成される。
【0062】
上記第2層間絶縁層283には、信号線22及び発光用電源配線23Rの上部位置にコンタクトホールHが複数形成されている。また、発光用電源配線23Rの上方の第2層間絶縁層283上には電極73が形成され、信号線22の上方の第2層間絶縁層283上には電極74,75が形成されている。
【0063】
これらの電極73,74,75は、コンタクトホールHを形成した後でスパッタリング法等により形成されるため、コンタクトホールHの上部にはコンタクトホールH内に堆積した金属材料の分だけ表面に凹部Bが形成される。このようにして、コンタクトホールHを介して、第2層間絶縁層283に覆われた発光用電源配線23Rと第2層間絶縁層283上に形成された電極74との導通、及び、第2層間絶縁層283に覆われた信号線22と第2層間絶縁層283上に形成された電極74,75の導通がとられる。
【0064】
また、第2層間絶縁層283上に形成された電極73,74,75の端部、側部、及びこれらの電極73,74,75間には、電気的な絶縁を目的としたSiN等の無機材料からなる第1層間絶縁層284が形成されている。電極73,74,75の上部、側部、及び周辺部には、ITO等からなる透明電極77が形成され、更に電極73,74,75の周辺部に形成された透明電極77及び第2外部接続端子66c,70,70間にはSiO2からなる保護層78が形成されている。尚、電極73,74,75は、図3に記載されているゲート線と同時に形成され、又、透明電極77は、ITOにより形成され、画素電極(陽極)と同時に形成される。このとき、ITOなどの材料をスパッタ等の方法により形成している。
【0065】
この方法とは別に、インクジェット法により導電材料を含む液体材料を塗布することにより、外部接続端子の最上面に金属層を形成することができる。なお、図9等に示されているように、外部接続端子は複数層の導電層から形成されているため、前述の例の如く最上面に限ることなく、複数層の導電層のうち少なくとも一層にこの手法を適用することができ、また全ての層をインクジェット法により形成することも可能である。
【0066】
導電膜配線用の液体材料として、本例では導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液(液状体)が用いられ、これは水性であると油性であるとを問わない。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうち少なくとも1種類を含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
【0067】
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。特に、5nm以上0.1μmであることが好ましい。0.1μmより大きいと、上記液滴吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、5nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーテイング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0068】
導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上200mmHg以下(約0.133Pa以上26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高い場合には、吐出後に分散媒が急激に蒸発し、良好な膜を形成することが困難となる。また、分散媒の蒸気圧は0.001mmHg以上50mmHg以下(約0.133Pa以上6650Pa以下)であることがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高い場合には、インクジェット法で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こりやすい。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒の場合、乾燥が遅くて膜中に分散媒が残留しやすくなり、後工程の熱・光処理後に良質の導電膜が得られにくい。
【0069】
上記分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるものであって凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、またインクジェット法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0070】
上記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度は1質量%以上80質量%以下であり、所望の導電膜の膜厚に応じて調整するとよい。なお、80質量%を超えると凝集をおこしやすく、均一な膜が得にくい。
【0071】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。
【0072】
表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0073】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0074】
以下に、金微粒子を用いた例を示す。
【0075】
直径10nmの金微粒子がトルエン中に分散した金微粒子分散液(真空冶金社製、商品名「パーフェクトゴールド」)にキシレンを添加し、その粘度を3cpとした液体を用いた。その際、凸部の間に形成された領域(端子の平坦な部分)にインクジェット法を用いて前述の液体を塗布した。その際、端子部の平坦部上、及び凸部の表面の少なくとも平坦な領域側に金からなる金属薄膜が形成される。
【0076】
インクジェット法として用いるインクジェット装置(液体塗布装置ともいう)は、例えば図14に示した装置を用いることができる。
【0077】
インクジェット装置は、インクジェットヘッド群1、X軸方向駆動軸4、Y方向ガイド軸5、制御装置6、載置台7、クリーニング機構部8、基台9及びヒーター15を備えている。
【0078】
インクジェットヘッド群は所定の導電性微粒子を含有する液体をノズル(吐出口)から吐出して所定間隔で基板に付与するインクジェット塗布手段としてのヘッドを備えている。ヘッド群は、複数のノズルが形成されたヘッドが複数個配列されて形成している。この複数個配列しているヘッド群は、図15のようなレイアウトで構成されている。すなわち、ヘッドの走査方向に対して各ヘッドを傾けて配置された構造となっている。
【0079】
図示されているように、インクジェット装置に設けられているインクジェットヘッドは複数個配置されている。複数個のインクジェットヘッドを走査方向に対して交差する方向に傾けて配置し、インクジェットによる描画を行うことができる。例えば、走査方向に対して30度傾けることによってインクジェット装置による描画が可能となる。インクジェットヘッドを走査方向に対して交差する方向に傾けることにより以下の効果が得られる。すなわち、形成するパターンの間隔が狭いときに、ヘッドを傾けることにより見かけ上、ノズル間隔が狭くなる。このようにすることによって、挟ピッチのパターンの描画が可能になり、しかも傾ける角度を変化させることにより、どのようなパターンでも形成することができる。なお、その場合には、インクジェットヘッドを所望の角度に変更、調整できる機能をインクジェット装置に設ける。
【0080】
以下にインクジェットヘッド、及びユニットについて詳細に説明する。
【0081】
〔ヘッドユニットの構成〕
次に、ヘッドユニット420の構成について説明する。図15は、液滴吐出処理装置に設けられたヘッドユニットを示す平面図である。図26は、ヘッドユニットを示す側面図である。図27は、ヘッドユニットを示す正面図である。図28は、ヘッドユニットを示す断面図である。
【0082】
ヘッドユニット420は、図15ないし図28に示すように、ヘッド本体部430と、インク供給部431とを有している。また、ヘッド本体部430は、平板状のキャリッジ426と、このキャリッジ426に複数取り付けられた実質的に略同一形状のヘッド装置433とを有している。
【0083】
(ヘッド装置の構成)
図29はヘッドユニット420に配設されたヘッド装置433を示す分解斜視図である。
【0084】
ヘッド装置433は、図29に示すように、短冊状のプリント基板435を有している。このプリント基板435には、各種電気部品436が実装され図示しない電気配線が設けられている。また、プリント基板435には、長手方向の一端側(図6中右側)に位置して窓部437が貫通形成されている。さらに、プリント基板435には、インクであるフィルタエレメント材料13が流通可能な流通路438が窓部437の両側に位置して設けられている。
【0085】
そして、このプリント基板435の一面側(図29中下面側)には、長手方向の略一端側(図29中右側)に位置してインクジェットヘッド421が取付部材440により一体的に取り付けられている。このインクジェットヘッド421は、長手矩形状に形成され、長手方向がプリント基板435の長手方向に沿う状態で取り付けられる。
【0086】
なお、各ヘッド装置433における各インクジェットヘッド421は、実質的に略同一形状、すなわち例えば所定の規格の製品であって、所定の品質に選別されたものなどであればよい。具体的には、これらインクジェットヘッド421が同一個数の後述するノズルを有し、ノズルの形成位置が互いに同一であることが、キャリッジ426に対してインクジェットヘッド421を組み立てる際に効率的となり、また組み立て精度も高まるので、好ましい。さらに、同一の製造・組立工程を経て作られた製品を用いれば、特別な製品を作る必要が無くなり、低コストとすることができる。
【0087】
また、プリント基板435の他面側(図29中上面側)には、長手方向の略他端側(図29中左側)に位置してインクジェットヘッド421に電気配線442にて電気的に接続されるコネクタ441が一体的に取り付けられている。これらコネクタ441には、ヘッドユニット420の移動に影響しないように副走査駆動装置427に配線された電気配線442(電源配線、信号配線を含む)が接続される。この電気配線442は図示しない制御装置とヘッドユニット420を接続するものとなる。すなわち、これら電気配線442は、図15および図28に二点鎖線の矢印で模式的に示すように、副走査駆動装置427からヘッドユニット420の2列のヘッド装置433の配列方向の両側であるヘッドユニット420の外周側に配線されてコネクタ441に接続され、電気ノイズが生じないようになっている。
【0088】
さらに、プリント基板435の他面側(図29中上面側)には、長手方向の略一端側(図29中右側)でインクジェットヘッド421に対応してインク導入部443が取り付けられている。このインク導入部443は、取付部材440に設けられプリント基板435を貫通する位置決めピン部444を嵌合する略円筒状の位置決め筒部445と、プリント基板435に係止する係止爪部446とを有している。
【0089】
また、インク導入部443には、先端先細り形状の略円筒状の連結部448が一対突設されている。これら連結部448は、プリント基板435側となる基端部にプリント基板435の流通路438に略液密に連通する図示しない開口を有し、先端部にフィルタエレメント材料13が流通可能な図示しない孔を有している。
【0090】
さらに、これら連結部448には、図26ないし図29に示すように、先端側に位置してシール連結部450がそれぞれ取り付けられている。これらシール連結部450は、内周側に連結部448を略液密に嵌着する略円筒状に形成され、先端部にシール部材449が設けられている。
【0091】
次に、本体の構造の説明をする。
【0092】
載置台7は、この塗布装置によって液滴(液体)を付与される基板101を載置させるもので、この基板101を基準位置に固定する機構を備える。
【0093】
X方向駆動軸4には、X方向駆動モータ2が接続されている。X方向駆動モータ2は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸4を回転させる。X方向駆動軸4が回転させられると、インクジェットヘッド群1がX軸方向に移動する。
【0094】
Y方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。載置台7は、Y方向駆動モータ3を備えている。Y方向駆動モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からY軸方向の駆動信号が供給されると、載置台7をY軸方向に移動させる。
【0095】
制御回路6は、インクジェットヘッド群1の各ヘッドに液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ2にインクジェットヘッド群1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ3に載置台7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0096】
クリーニング機構部8は、インクジェットヘッド群1をクリーニングする機構を備えている。クリーニング機構部8には、図示しないY方向の駆動モータが備えられる。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構8は、Y方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も、制御装置6によって制御される。
【0097】
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板101を熱処理する手段であり、基板上に塗布された液体の蒸発・乾燥を行うとともに導電膜に変換させる。このヒータの電源の投入及び遮断も制御回路6によって制御される。なお、ヒーターの代わりにホットプレートを用いた熱処理、乾燥炉を用いた熱処理であってもかまわない。
【0098】
このようなインクジェット装置において、インクジェット装置による描画には、予備吐出、フラッシングが必要となる。
【0099】
配線パターンとしての外部接続用端子を形成する際、予め基板の外に予備吐出を行う。これは、ノズルの目詰まりを防止し、所定の量の液滴を吐出させるためのものである。予備吐出する液滴の量は約200〜5000発であり、インクジェットヘッドに形成されている全ノズルから吐出を行うものである。また、フラッシングも同様であり、全ノズルから液滴を吐出し、吐出安定性を確保する。吐出量は適宜設定されるが、予備吐出と同様の量が吐出される。
【0100】
このようなインクジェットヘッドにより吐出される液滴は、例えば図16〜23のような順番で吐出される。以下、本発明の外部接続用端子を形成する形成方法について図面を参照しながら説明する。図16は本発明のパターンの形成方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
【0101】
ここで、本実施形態では基板上に導電膜配線パターンを形成する場合を例にして説明する。
【0102】
図16において、本実施形態に係るパターンの形成方法は、液体材料の液滴が配置される基板を所定の溶媒等を用いて洗浄する工程(ステップS1)と、基板の表面処理工程の一部を構成する撥液化処理工程(ステップS2)と、撥液化処理された基板表面の撥液性を調整する表面処理工程の一部を構成する撥液性低下処理工程(ステップS3)と、表面処理された基板上に液滴吐出法に基づいて導電膜配線形成用材料を含む液体材料の液滴を配置して膜パターンを描画(形成)する材料配置工程(ステップS4)と、基板上に配置された液体材料の溶媒成分の少なくとも一部を除去する熱・光処理を含む中間乾燥処理工程(ステップS5)と、所定の膜パターンが描画された基板を焼成する焼成工程(ステップS7)とを有している。なお、中間乾燥処理工程の後、所定のパターン描画が終了したかどうかが判断され(ステップS6)、パターン描画が終了したら焼成工程が行われ、一方、パターン描画が終了していなかったら材料配置工程が行われる。
【0103】
次に、図17〜図23を参照しながら本発明の特徴部分である液滴吐出法に基づく材料配置工程(ステップS4)について説明する。
【0104】
本実施形態の材料配置工程は、導電膜配線形成用材料を含む液体材料の液滴を液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドより基板上に吐出することにより基板上に線状の膜パターン(配線パターン)Wである外部接続用端子を形成する工程である。液体材料は導電膜配線形成用材料である金属等の導電性微粒子を分散媒に分散した液状体である。
【0105】
図16において、材料配置工程(ステップS4)は、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド10(前述のヘッド群)の吐出ノズル10Aより液体材料の液滴を吐出して基板11に配置することで、この基板11上に膜パターンWの線幅方向中央部(中央パターン)W1を形成する第1工程(図16(a)参照)と、基板11に形成された中央パターンW1に対して一方の側部(第1側部パターン)W2を形成する第2工程(図17(b)参照)と、基板11に形成された中央パターンW1に対して他方の側部(第2側部パターン)W3を形成する第3工程(図17(c)参照)とを有している。これら第1、第2、及び第3工程により、図17(c)に示すような線状の膜パターンWが形成される。
【0106】
第1工程では、図17(a)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、基板11上に一定の距離間隔(ピッチ)で配置される。そして、この液滴の配置動作を繰り返すことにより基板11上における膜パターンWの形成予定領域W4の中央部に、この膜パターンWの一部を構成する線状の中央パターンW1が形成される。なお、基板11の表面はステップS2及びS3により所望の撥液性に予め加工されているので、基板11上に配置した液滴の拡がりが抑制される。そのためパターン形状を良好な状態に確実に制御できるとともに厚膜化も容易である。
【0107】
ここで、基板11上に中央パターンW1を形成するための液滴を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)が行われる。中間乾燥処理は、例えばホットプレート、電気炉、及び熱風発生機等の加熱装置を用いた一般的な熱処理の他にランプアニールを用いた光処理であってもよい。
【0108】
次に、第2工程では、図17(b)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、これにより中央パターンW1の一方の側に隣接する線状の第1側部パターンW2が形成される。ここで、液滴吐出ヘッド10は第1側部パターンW2を形成するに際し、吐出した液滴と基板11上に形成された中央パターンW1との少なくとも一部が重なるように、液滴を吐出する。これにより中央パターンW1と第1側部パターンW2を形成する液滴とは確実に接続され、形成された膜パターンWに導電膜配線形成用材料の不連続部が生じることがない。
【0109】
そして、第2工程においても液滴は基板11上に一定のピッチで配置され、この配置動作を繰り返すことにより、膜パターンWの形成予定領域W4の一方の側部にこの膜パターンWの一部を構成する第1側部パターンW2が形成され、中央パターンW1と第1側部パターンW2とが一体化される。
【0110】
ここでも、基板11上に第1側部パターンW2を形成するための液滴を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)が行われる。
【0111】
次に、第3工程では、図17(c)に示すように、液滴吐出ヘッド10から液体材料の液滴が吐出され、これにより中央パターンW1の他方の側に隣接する線状の第2側部パターンW3が形成される。ここでも、液滴吐出ヘッド10は第2側部パターンW3を形成するに際し、吐出した液滴と基板11上に形成された中央パターンW1との少なくとも一部が重なるように、液滴を吐出する。これにより中央パターンW1と第2側部パターンW3を形成する液滴とは確実に接続され、形成された膜パターンWに導電膜配線形成用材料の不連続部が生じることがない。こうして、中央パターンW1と第2側部パターンW3とが一体化され、3つの線状のパターンW1、W2、及びW3が一体化されて幅広の膜パターンWが形成される。そして、第3工程においても液滴は基板上に一定のピッチで配置され、この配置動作を繰り返すことにより、膜パターンWの形成予定領域W4の他方の側部にこの膜パターンWの一部を構成する第2側部パターンW3が形成される。
【0112】
このとき、第2、第3工程で吐出する液滴の吐出位置(中央パターンWとの距離)を調整することで最終的な線状の膜パターンWの線幅を制御することができる。また、第1、第2、及び第3の各工程で形成する複数のパターンW1、W2、及びW3の基板11の表面からの高さ(厚み)を変化させることにより、一体化後の膜パターンWの膜厚を制御できる。
【0113】
なお、パターンの輪郭において凹凸形状が形成された場合には、必要に応じて凹凸部を埋めるように微小液滴を塗布することが好ましい。この微小液滴は、通常塗布する液滴(W1、W2、W3で塗布する液滴を指す)よりも小さい液滴であり、吐出量も通常の液滴よりも少なく設定されている。このように微小液滴を塗布することにより、パターンの輪郭に凹凸がなく、直線的なパターンを形成することができる。
【0114】
次に、図18(a)〜(c)を参照しながら、線状の中央パターンW1、及び側部パターンW2、W3を形成する手順について説明する。
【0115】
まず、図18(a)に示すように、液滴吐出ヘッド10から吐出した液滴L1が所定の間隔をあけて基板11上に順次配置される。すなわち、液滴吐出ヘッド10は基板11上で液滴L1どうしが重ならないように配置する(第1配置工程)。本例では、液滴L1の配置ピッチP1は基板11上に配置した直後の液滴L1の直径よりも大きくなるように設定されている。これにより基板11上に配置された直後の液滴L1どうしは重ならずに(接触せずに)、液滴L1どうしが合体して基板11上で濡れ拡がることが防止される。また、液滴L1の配置ピッチP1は基板11上に配置した直後の液滴L1の直径の2倍以下となるように設定されている。
【0116】
ここで、基板11上に液滴L1を配置した後、分散媒の除去を行うために必要に応じて中間乾燥処理(ステップS5)を行うことができる。中間乾燥処理は、上述したように、例えばホットプレート、電気炉、及び熱風発生機等の加熱装置を用いた一般的な熱処理の他に、ランプアニールを用いた光処理であってもよい。この場合、分散媒の除去だけでなく、分散液を導電膜に変換するまで、加熱や光照射の度合いを高めても差し支えないが、分散媒をある程度除去できれば十分である。
【0117】
次に、図18(b)に示すように、上述した液滴の配置動作が繰り返される。
すなわち図18(a)に示した前回と同様に、液滴吐出ヘッド10から液体材料が液滴L2として吐出され、その液滴L2が一定距離ごとに基板11に配置される。
【0118】
このとき、液滴L2の体積(1つの液滴あたりの液体材料の量)、及びその配置ピッチP2は前回の液滴L1と同じである。そして、液滴L2の配置位置は前回の液滴L1から1/2ピッチだけシフトされ、基板11上に配置されている前回の液滴L1どうしの中間位置に今回の液滴L2が配置される(第2配置工程)。図示されているように、最初に塗布された第1の液滴L1の間を補完するように第2の液滴L2を塗布することにより、平坦性に優れた配線パターン(ここでは外部接続用端子)が形成できる。
【0119】
前述したように、基板11上の液滴L1の配置ピッチP1は、基板11上に配置した直後の液滴L1の直径よりも大きく且つ、その直径の2倍以下である。そのため、液滴L1の中間位置に液滴L2が配置されることにより、液滴L1に液滴L2が一部重なり、液滴L1どうしの間の隙間が埋まる。このとき、今回の液滴L2と前回の液滴L1とが接するが、前回の液滴L1はすでに分散媒が完全に又はある程度除去されているので、両者が合体して基板11上で拡がることは少ない。
【0120】
なお、図18(b)では、液滴L2の配置を開始する位置を前回と同じ側(図18(a)に示す左側)としているが逆側(右側)としてもよい。往復動作の各方向への移動時に液滴の吐出を行うことにより、液滴吐出ヘッド10と基板11との相対移動の距離を少なくできる。
【0121】
液滴L2を基板11上に配置した後、分散媒の除去を行うために前回と同様に必要に応じて中間乾燥処理を行うことが可能である。
【0122】
こうした一連の液滴の配置動作を複数回繰り返すことにより、基板11上に配置される液滴どうしの隙間が埋まり、図18(c)に示すように、線状の連続したパターンである中央パターンW1、及び側部パターンW2、W3が基板11上に形成される。この場合、液滴の配置動作の繰り返し回数を増やすことにより基板11上に液滴が順次重なり、パターンW1、W2、W3の膜厚、すなわち基板11の表面からの高さ(厚み)が増す。線状パターンW1、W2、W3の高さ(厚み)は最終的な膜パターンに必要とされる所望の膜厚に応じて設定され、この設定した膜厚に応じて上記液滴の配置動作の繰り返し回数が設定される。
【0123】
なお、線状パターンの形成方法は図18(a)〜(c)に示したものに限定されない。例えば、液滴の配置ピッチや繰り返しの際のシフト量等を任意に設定可能であり、パターンW1、W2、W3を形成する際の液滴の基板P上での配置ピッチをそれぞれ異なる値に設定してもよい。例えば、中央パターンW1を形成する際の液滴ピッチがP1である場合、側部パターンW2、W3を形成する際の液滴ピッチをP1より広いピッチ(例えばP1×2)としてもよい。もちろん、P1より狭いピッチ(例えばP1×0.5)としてもよい。また、パターンW1、W2、W3を形成する際の液滴の体積をそれぞれ異なる値に設定してもよい。あるいは、第1、第2、及び第3の各工程において基板11や液滴吐出ヘッド10が配置される雰囲気である液滴配置雰囲気(温度や湿度等)、すなわち材料配置環境条件を互いに異なる条件に設定してもよい。
【0124】
なお、本実施形態では複数の側部パターンW2、W3は1本ずつ形成されるが2本同時に形成されてもよい。ここで、1本ずつ複数のパターンW2、W3を形成する場合と2本同時に形成する場合とでは、乾燥処理の回数の合計が異なる可能性があるため、基板11の撥液性が損なわれないように乾燥条件を定めるとよい。
【0125】
なお、本実施形態では、第1工程で1本の中央パターンW1を形成したが、中央パターンW1を2本以上の複数形成してもよい。そして、この複数本の中央パターンW1の両側部に対して液滴を吐出し、これらを連続させることにより、より広い線幅の膜パターンを容易に形成できる。
【0126】
更に、ある1つのノズルから液滴を塗布することも可能であるが、ノズル間における液滴の吐出量のばらつきをできるだけ抑えるために、異なるノズルによって液滴を塗布することも可能である。例えば、液滴L1の塗布には第1のノズルにより塗布を行い、液滴L1の間を保管する液滴L2は第1のノズルとは異なる第2のノズルにより塗布することが好ましい。更に、第1のノズルと第2のノズルは同じヘッドに形成されていても良いが、前述のとおり複数個のヘッドが形成されているので、別のヘッドに形成されていても良い。すなわち、第1のノズルは第1のヘッドに形成され、第2のノズルは第2のヘッドに形成され、所望のパターンを形成する際は、第1のノズル、第2のノズルにより塗布を行う、ことも可能である。
【0127】
次に、図19〜図22を参照しながら基板上に液滴を吐出する順序の一例について説明する。これらの図に示すように、基板11上には液体材料の液滴が吐出される格子状の複数の単位領域であるピクセルを有するビットマップが設定されている。液滴吐出ヘッド10は液滴をビットマップで設定されたピクセル位置に対して吐出する。ここで、1つのピクセルは正方形に設定されている。また、液滴吐出ヘッド10は基板11に対してY軸方向に走査しながら吐出ノズル10Aより液滴を吐出するものとする。そして、図19〜図22を用いた説明において、1回目の走査時に吐出された液滴には「1」を付し、2回目、3回目、…、n回目の走査時に吐出された液滴には「2」、「3」…、「n」を付す。また、以下の説明では、図19のグレーで示す領域(パターン形成予定領域)のそれぞれに液滴を吐出して膜パターンWを形成するものとする。
【0128】
図19(a)に示すように、1回目の走査時において、中央パターンW1を形成するために中央パターン形成予定領域に1つ分のピクセルをあけつつ液滴が吐出される。ここで、基板11に対して吐出された液滴は基板11に着弾することにより基板11上で濡れ拡がる。つまり、図19(a)に円で示すように、基板11に着弾した液滴は1つのピクセルの大きさより大きい直径cを有するように濡れ拡がる。ここで、液滴はY軸方向において所定間隔(1つ分のピクセル)をあけて吐出されているので、基板11上に配置された液滴どうしは重ならないように設定されている。こうすることによりY軸方向において基板11上に液体材料が過剰に設けられることを防ぎ、バルジの発生を防止することができる。
【0129】
なお、図19(a)では基板11に配置された際の液滴どうしは重ならないように配置されているが、僅かに重なるように液滴が配置されてもよい。また、ここでは1つ分のピクセルをあけて液滴が吐出されているが、2つ以上の任意の数のピクセル分だけ間隔をあけて液滴を吐出してもよい。この場合、基板11に対する液滴吐出ヘッド10の走査動作及び吐出動作を増やして基板上の液滴どうしの間を補間すればよい。
【0130】
図19(b)は2回目の走査により液滴吐出ヘッド10の吐出ノズル10Aから基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図19(b)において、2回目の走査時で吐出された液滴には「2」を付している。2回目の走査時では、1回目の走査時で吐出された液滴「1」の間を補間するように液滴が吐出される。
【0131】
そして、1回目及び2回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、中央パターンW1が形成される。
【0132】
次に、液滴吐出ヘッド10と基板11とが1つのピクセルの大きさ分だけX軸方向に相対移動する。ここでは液滴吐出ヘッド10が基板11に対して−X方向に1つのピクセル分だけステップ移動する。そして、液滴吐出ヘッド10は3回目の走査を行う。これにより、図20(a)に示すように、中央パターンW1の−X側に隣接するように、第1側部パターンW2を形成するための液滴「3」が基板11上に配置される。ここでも、液滴「3」はY軸方向に1つ分のピクセルをあけて配置される。ここで、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後における1回目の走査時(すなわち全体における3回目の走査時)における液滴「3」は、ステップ移動前の1回目の走査時における液滴「1」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0133】
図20(b)は4回目の走査により液滴吐出ヘッド10から基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図20(b)において、4回目の走査時で吐出された液滴には「4」を付している。4回目の走査時では、3回目の走査時で吐出された液滴「3」の間を補間するように液滴が吐出される。そして、3回目及び4回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、第1側部パターンW2が形成される。ここで、ステップ移動後の2回目の走査時(すなわち全体における4回目の走査時)における液滴「4」は、ステップ移動前の2回目の走査時における液滴「2」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0134】
次に、液滴吐出ヘッド10と基板11とが2つのピクセル分だけX軸方向に相対移動する。ここでは液滴吐出ヘッド10が基板に対して+X方向に2つのピクセル分だけステップ移動する。そして、液滴吐出ヘッド10は5回目の走査を行う。これにより、図21(a)に示すように、中央パターンW1の+X側に隣接するように、第2側部パターンW3を形成するための液滴「5」が基板上に配置される。ここでも、液滴「5」はY軸方向に1つ分のピクセルをあけて配置される。ここで、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後である5回目の走査時における液滴「5」は、液滴「1」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0135】
図21(b)は6回目の走査により液滴吐出ヘッド10から基板11に液滴を吐出した際の模式図である。なお、図21(b)において、6回目の走査時で吐出された液滴には「6」を付している。6回目の走査時では、5回目の走査時で吐出された液滴「5」の間を補間するように液滴が吐出される。そして、5回目及び6回目の走査及び吐出動作で液滴どうしが連続し、第2側部パターンW3が形成される。ここで、6回目の走査時における液滴「6」は、液滴「2」に対してX軸について隣接する位置に配置される。
【0136】
このように、1つのパターンに対し、同じノズルにより液滴を吐出することが可能であるが、前述の通り異なるノズルにより液滴を吐出することも可能である。異なるノズルで液滴を吐出する場合の吐出方法は前述の通りである。また、ノズルの活用に関しては、以下に記載の例においても、同様に実施可能である。
【0137】
図22は液滴の吐出位置の配置順序を変えた例を示す図である。図22において、中央パターンW1を形成する液滴「1」のX軸について−X側に隣接する位置には、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後において2回目の走査時(全体で4回目の走査時)で吐出された液滴「4」が配置され、一方、中央パターンW1を形成する液滴「2」のX軸について−X側に隣接する位置には、液滴吐出ヘッド10のX軸方向へのステップ移動後において1回目の走査時(全体で3回目の走査時)で吐出された液滴「3」が配置されている。同様に、液滴「1」のX軸について+X側に隣接する位置には、全体で6回目の走査時において吐出された液滴「6」が配置され、一方、中央パターンW1を形成する液滴「2」の+X側に隣接する位置には、全体で5回目の走査時において吐出された液滴「5」が配置されている。このように、各ラインW1、W2、W3を形成するに際し、液滴の吐出位置の順序のそれぞれを各ライン毎に異なるように設定してもよい。
【0138】
更に、図23に示す例のように、中央パターンW1を形成するための液滴「1」を配置した後、液滴吐出ヘッド10をステップ移動し、第1側部パターンW2を形成するための液滴「2」を配置し、次いで、液滴吐出ヘッド10をステップ移動して第2側部パターンW2を形成するための液滴「3」を配置するといった順序も可能である。そして、これらを補間するように液滴「4」、「5」、「6」が順次吐出される。このように、中央パターンW1を形成した後に側部パターンW2、W3を形成するに際し、例えば中央パターンW1を完全に形成してから側部パターンW2、W3を形成せずに、中央パターンW1が未完成の状態で側部パターンW2、W3の形成動作を開始してもよい。
【0139】
図24(a)、(b)は、上記第2、第3工程において、中央パターンW1の両側部に第1、第2側部パターンW2、W3を形成するための液滴の配置例を示す図である。図24(a)の例では、図18を参照して説明した吐出条件(配置条件)と同じ条件で中央パターンW1が形成される。一方、第2、第3工程の吐出条件(配置条件)は中央パターンW1を形成するための吐出条件と異なっている。具体的には、第1工程に比べて液滴Lnの体積が大きく設定されている。すなわち、一度に吐出される液体材料の量が増加されている。なお、本例では、液滴Lnの配置ピッチは第1工程と同じである。液滴Lnの体積を大きくすることにより膜パターンW全体の形成時間を短縮でき、スループット向上を図ることができる。なお、液滴の体積が大きくなるとバルジが発生しやすくなるため、液体材料の材料特性に応じてバルジが生じない液滴体積条件を予め求めておき、この求めた条件に基づいて吐出液滴の最大可能体積を設定すればよい。
【0140】
図24(b)の例では、第2、第3工程の吐出条件は第1工程に比べて液滴Lnの配置ピッチを狭くしている。なお、液滴Lnの体積は第1工程と同じでもよく、図24(a)に示したように第1工程に比べて大きくしてもよい。液滴の配置ピッチを狭くすることにより単位面積あたりの液滴の配置量が増え、短時間でパターン形成が可能となる。
【0141】
以上のように、各種吐出方法を説明したが、異なるノズルにより液滴を吐出する方法について以下に補足する。
【0142】
1つのパターン(ここでは1ライン)を形成する際、複数のノズルを用いて形成することが可能である。例えば、1番目の液滴を第1のノズルにより塗布し、2番目の液滴を第1のノズルとは異なる第2のノズルにより塗布することが可能である。さらには、3番目の液滴を第3のノズルから塗布し、4番目の液滴を第4のノズルから塗布することができる。このような塗布方法とすることにより、ノズルによって吐出量のばらつきがある場合、その差を最小限に抑えることができる。すなわち、同じノズルによって塗布した場合、吐出された液滴の総量に差が生じる。その結果、膜厚の差、更には電極としての抵抗値の差にも影響が出る。そこで、このような問題を改善するために、1つの電極(または1つのパターン)に対し異なるノズルにより液滴を塗布することにより、膜厚の差を最小限に抑えることができ、電極の抵抗もほぼ均一にすることが可能となる。
【0143】
<表面処理工程>
次に、図16で示した表面処理工程S2、S3について説明する。表面処理工程では、導電膜配線(外部接続用端子)を形成する基板の表面を液体材料に対して撥液性に加工する(ステップS2)。
【0144】
具体的には、導電性微粒子を含有した液体材料に対する所定の接触角が、60℃以上、好ましくは90℃以上110℃以下となるように基板に対して表面処理を施す。表面の撥液性(濡れ性)を制御する方法としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法、プラズマ処理法、UV照射をする方法等を採用できる。
【0145】
自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0146】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0147】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0148】
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0149】
なお、FASを用いることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0150】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4-n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF3)等のフルオロ基を有するため、基板の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0151】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板表面の前処理を施すことが望ましい。
【0152】
FAS処理を施した後、所望の撥液性に処理する撥液性低下処理が必要に応じて行われる(ステップS3)。すなわち、撥液化処理としてFAS処理を施した際に、撥液性の作用が強すぎて基板とこの基板上に形成した膜パターンWとが剥離しやすくなる場合がある。そこで、撥液性を低下(調整)する処理が行われる。撥液性を低下する処理としては波長170〜400nm程度の紫外線(UV)照射処理が挙げられる。所定のパワーの紫外線を所定時間だけ基板に照射することで、FAS処理された基板の撥液性が低下され、基板は所望の撥液性を有するようになる。あるいは、基板をオゾン雰囲気に曝すことにより基板の撥液性を制御することもできる。
【0153】
一方、プラズマ処理法では、常圧又は真空中で基板に対してプラズマ照射を行う。プラズマ処理に用いるガス種は、導電膜配線を形成すべき基板の表面材質等を考慮して種々選択できる。処理ガスとしては、例えば、4フッ化メタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等が例示できる。
【0154】
なお、基板表面を撥液性に加工する処理は、所望の撥液性を有するフィルム、例えば4フッ化エチレン加工されたポリイミドフィルム等を基板表面に貼着することによっても行ってもよい。また、撥液性の高いポリイミドフィルムをそのまま基板として用いてもよい。
【0155】
このような表面処理を、外部接続用端子を形成する表面に行うことにより、液滴を吐布した際、平坦性に優れ、輪郭に凹凸が少ない配線パターンを形成することができる。なお、電極73,74,75を形成する場合であれば、第2層間絶縁層283に上記のような表面処理を施す。また、透明電極77に相当する位置にインクジェットにより電極を形成する場合には、この下層にあたる電極73、74、75に表面処理を行うことにより最上層にインクジェット方による電極(外部接続用端子)を形成することができる。
【0156】
<中間乾燥工程>
次に、図16で示した中間乾燥工程S5について説明する。中間乾燥工程(熱・光処理工程)では、基板上に配置された液滴に含まれる分散媒あるいはコーティング材を除去する。すなわち、基板上に配置された導電膜形成用の液体材料は、微粒子間の電気的接触をよくするために分散媒を完全に除去する必要がある。
また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。
【0157】
熱・光処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。熱/光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。例えば有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
【0158】
熱処理には、例えばホットプレート、電気炉等の加熱装置を用いることができる。光処理にはランプアニールを用いることができる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態例では100W以上1000W以下の範囲で十分である。上記熱・光処理により微粒子間の電気的接触が確保され、導電膜に変換される。
【0159】
なお、この際、分散媒の除去だけでなく、分散液を導電膜に変換するまで、加熱や光照射の度合いを高めても差し支えない。ただし、導電膜の変換は、すべての液体材料の配置が終了してから、熱処理・光処理工程においてまとめて行えばよいので、ここでは、分散媒をある程度除去できれば十分である。例えば、熱処理の場合は、通常100℃程度の加熱を数分行えばよい。また、乾燥処理は液体材料の吐出と並行して同時に進行させることも可能である。例えば、基板を予め加熱しておいたり、液滴吐出ヘッドの冷却とともに沸点の低い分散媒を使用したりすることにより、基板に液滴を配置した直後から、その液滴の乾燥を進行させることができる。
【0160】
前述の通り、塗布後、過熱処理を加えることもある。すなわち、微粒子分散液21が所定パターンに塗布された基板101は、溶媒を除去し、微粒子間の電気的接触をよくするために、熱処理に供される。熱処理は通常大気中で行われるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。上記の熱処理の処理温度は溶媒の沸点(蒸気圧)、圧力および微粒子の熱的挙動により適宜定めればよく、特に限定されるものではないが室温以上300℃以下で行うことが望ましい。プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
【0161】
熱処理は通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
【0162】
図7及び図8に示すように、本実施形態の電気光学装置に設けられる第2外部接続端子66c,70,70の表面には複数の凹部Bが形成されされており、この凹部Bにより、第2外部接続端子66c,70,70を複数の電極として分割した構成となっている。図6に示したように、発光用電源配線23R及び信号線22の線幅に応じて外部接続端子の数を変えることにより、固着部65における固着条件の均一化を図っているが、第2外部接続端子66c,70,70の表面に複数の凹部Bが形成されているため、第2外部接続端子66c,70,70は更に複数の電極に分割されたものとなり、固着条件の均一化を図る上で極めて好適である。
【0163】
また、電極73,74,75の端部に第1層間絶縁層284を形成することにより、第2外部接続端子66c,70,70の端部に凸部79が形成される。この凸部79は、異方性導電膜40を用いて表示基板10と中継基板20とを固着する際に、異方性導電膜40に含まれる導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70の側部にはみ出るのを防止するように作用する。その結果、より多くの導電粒子41bが第2外部接続端子66c,70,70上に配置されることになるため、固着部65における電気的抵抗を低減する極めて優れた構造である。
【0164】
以上説明した本実施形態の表示基板20は、固着部65において圧着条件を均一化するための構成が設けられているため、固着部65に固着される中継基板30に形成される外部接続端子34は、図6に示す発光用電源配線23R及び走査線駆動回路用制御信号配線24a等と同様の線幅で形成されていても良い。しかしながら、より均一な圧着条件下で中継基板30と表示基板20とを固着するには、固着部65に形成された第2外部接続端子66c,70,70等と同様のパターンであることが好適である。
【0165】
ところで、図5に示した第2層間絶縁層283上に形成された各種配線と、実表示領域62及びダミー領域63の上部(基板60側に対する反対側)を覆うように形成されている陰極26との間の寄生容量を低減して表示ムラ及びコントラスト低下等の表示上の不具合を極力低減するために、第1層間絶縁層284の厚みを厚くする傾向がある。
【0166】
図9は、第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成された第2外部接続端子70,70の拡大図である。図9に示すように、電極74,75間の第1層間絶縁層284の厚みが厚くなると、第1外部接続端子70,70の端部に形成されている凸部79の高さが、図8に示した凸部79の高さよりも高く形成される。尚、図7及び図8においては、第1層間絶縁層284がSiNから形成されていたが、図9では、第1層間絶縁層284をSiO2を用いて形成している。
【0167】
図9に示すように、第1層間絶縁層284の厚みを増すことにより、電極74,75の端部に形成される凸部79の高さが高くなって、電極74,75と透明電極77との間の厚みが共に薄くなる。また、第2層間絶縁層283及び電極74,75上に直接第1層間絶縁層284を形成すると、電極74,75の端部に形成された凸部79は、電極74,75に対してのみならず第1外部接続端子70,70間における第1層間絶縁層284の表面に対しても突出した形状になって平坦性が損なわれ、異方性導電膜40を用いて中継基板30を固着するときに不具合が生ずる虞がある。
【0168】
かかる不具合を防止すべく、本実施形態では電極74,75により形成される凹凸を平坦化するための平坦化膜を設けている。図10は、第1層間絶縁層284の厚みが厚く形成され、且つ電極74,75間に平坦化膜が設けられた第1外部接続端子70,70の拡大図である。この平坦化膜80は第1層間絶縁層284を形成する前に、電極74及び電極75等の電極が形成された部位以外の部位に形成される。
【0169】
図10を参照すると、平坦化膜80を形成した後で第1層間絶縁層284を形成することにより、第1外部接続端子70,70間における第1層間絶縁層284の表面と凸部79との高低差(段差)が小さくなることが分かる。よって、異方性導電膜40を用いて中継基板30を固着する際も不具合が生じない。
【0170】
以上、本発明の一実施形態による電気光学装置について説明したが、前述に示した有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置以外にも、この端子構造は液晶表示装置、図25に示すようなプラズマディスプレイ装置、無機EL装置、電気泳動装置、等のディスプレイに適用できる。
【0171】
更に、ディスプレイに形成される実装端子を例にとって示したが、実装端子に実装されるテープ側を本発明のようなプロセスにすることも可能である。すなわち、ディスプレイの外部接続端子は従来通りの構造とし、テープ(明細書では中継基板)を前述のようなプロセスとすることも可能である。
【0172】
また、以上に説明した電気光学装置、CPU(中央処理装置)等を備えたマザーボード、キーボード、ハードディスク等の電子部品を筐体内に組み込むことで、例えば図11に示すノート型のパーソナルコンピュータ600(電子機器)が製造される。図11は、本発明の一実施形態による電気光学装置を備える電子機器の一例を示す図である。尚、図9において601は筐体であり、602は液晶表示装置であり、603はキーボードである。図12は、他の電子機器としての携帯電話機を示す斜視図である。図12に示した携帯電話機700は、アンテナ701、受話器702、送話器703、液晶表示装置704、及び操作釦部705等を備えて構成されている。
【0173】
また、上記実施形態では、電子機器としてノート型コンピュータ及び携帯電話機を例に挙げて説明したが、これらに限らず、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することが可能である。
【0174】
以上説明したように、本発明によれば、第1端子間、第2端子間、及び第1端子と第2端子との間に平坦化膜が設けられ、この平坦化膜上、第1端子の端部、及び第2端子の端部に絶縁膜を形成した構成であるため、絶縁層の厚みを厚くしたとしても第1端子の端部及び第2端子の端部に形成される絶縁層の高さが、平坦化膜上に形成される絶縁層の表面に対してさほど高くならずに平坦性を確保することができるという効果がある。その結果として、第1端子及び第2端子と接続される配線の接続不良を生ずることがないという効果がある。
【符号の説明】
【0175】
10…電気光学装置、22…信号線(第1配線)、23,23R…発光用電源配線(第2配線、電源線)、24a…走査線駆動回路用制御信号配線(第1配線)、30…中継基板、40…異方性導電膜、50…発光素子、53…スイッチング素子、66a,66b,66c…電極(第2端子)、67,68,69,70…電極(第1端子)、284…第1層間絶縁層(絶縁層)、79…凸部、80…平坦化膜、B…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、
前記外部接続用端子を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記外部接続用端子には凸状の絶縁膜が形成されてなり、前記凸部によって形成された領域に前記液体材料を塗布することを特徴とする請求項1記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、
前記外部接続用端子が複数の導電層により形成されてなり、前記複数の導電層うち少なくとも一層を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
複数の導電層のうち最上層に形成されてなる導電層を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成することを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記液体液体材料をインクジェット法により塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにより形成された電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、
前記外部接続用端子を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記外部接続用端子には凸状の絶縁膜が形成されてなり、前記凸部によって形成された領域に前記液体材料を塗布することを特徴とする請求項1記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
外部接続用端子が形成された電気光学装置の製造方法であって、
前記外部接続用端子が複数の導電層により形成されてなり、前記複数の導電層うち少なくとも一層を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成する工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
複数の導電層のうち最上層に形成されてなる導電層を、導電材料を含有した液体材料を塗布することにより形成することを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記液体液体材料をインクジェット法により塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにより形成された電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−48109(P2013−48109A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238717(P2012−238717)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2008−277868(P2008−277868)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【分割の表示】特願2008−277868(P2008−277868)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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