説明

電気刺激装置および電気刺激装置の制御方法

【課題】刺激対象以外を刺激することなく、当該刺激対象の深部を刺激する。
【解決手段】生体内に留置される少なくとも2つの刺激装置と、各刺激装置を他の各刺激装置に電気的に接続する接続部と、各刺激装置に給電可能な生体内に設置される給電装置とを含む電気刺激装置である。各刺激装置は、刺激電極と、刺激信号を生成して刺激電極に印加する刺激信号生成部と、接続部に電気的に接続され、該接続部に電力を出力するとともに、刺激信号生成部を制御する制御部と、を備える。そして、入力された電力を蓄積し、蓄積された電力が刺激信号生成部および制御部に供給される蓄電部と、給電装置から受電可能な受電部と、蓄電部を、受電部あるいは接続部を選択的に接続可能なゲート部と、を備える。一方、給電装置は、各刺激装置の受電部に生体外より給電する給電部と、給電部から受電部に給電を行う際に、ゲート部を操作して蓄電部を蓄電部に接続させるゲート操作部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を電気刺激する電気刺激装置およびこの電気刺激の制御方法に関し、特に、生体内に植え込まれて使用される電気刺激装置およびこの電気刺激装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を挙げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。この期間においては電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込みが実施される。
【0004】
電気刺激装置の植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれる電極リードが皮下トンネルを通して腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
ところで、従来の電気刺激装置は、複数の電極が剥き出し状態とした電極リードを1本だけ有しており、この電極リードを硬膜外腔に留置して使用される(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,193,539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の電気刺激装置は、電極リードが硬膜外腔に留置された際に、複数の刺激電極が脊髄の軸方向と平行に並ぶようになっているので、脊髄の深部を刺激するためには、刺激強度を強くする必要があった。しかし、刺激強度を強くしすぎるとその刺激が側方へ広がり、刺激対象ではない脊髄の後根までも刺激される、という問題があった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、刺激対象以外を刺激することなく、当該刺激対象の深部を刺激する電気刺激装置およびこの電気刺激装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の電気刺激装置は、生体内に留置される少なくとも2つの刺激装置と、各刺激装置を他の各刺激装置に電気的に接続する接続部と、各刺激装置に給電可能な生体外に設置される給電装置とを含む電気刺激装置である。
各刺激装置は、刺激電極と、刺激信号を生成して刺激電極に印加する刺激信号生成部と、接続部に電気的に接続され、該接続部に電力を出力するとともに、刺激信号生成部を制御する制御部と、を備える。そして、入力された電力を蓄積し、蓄積された電力が刺激信号生成部および制御部に供給される蓄電部と、給電装置から受電可能な受電部と、蓄電部を、受電部あるいは接続部に選択的に接続可能なゲート部と、を備える。
一方、給電装置は、各刺激装置の外部より受電部に給電する給電部と、給電部から受電部に給電を行う際に、刺激装置のゲート部を操作して受電部を蓄電部に接続させるゲート操作部と、を備える。
【0010】
本発明の上述した構成によれば、給電装置の給電部が任意の一刺激装置の受電部に給電する際に、ゲート操作部により、当該一刺激装置のゲート部が操作されて、受電部が蓄電部に接続される。そして、受電部による給電部からの受電に伴ない、蓄電部に電力が蓄積される。蓄積された電力は、制御部および刺激信号生成部に供給され、制御部および刺激信号生成部が起動される。
【0011】
起動された制御部は、接続部に電力を出力し、当該接続部に接続された他の刺激装置に電力を供給する。このとき、他の刺激装置のゲート部は、ゲート操作部による操作が行われていない場合、接続部と蓄電部を接続している。そのため、一刺激装置の制御部から出力された電力は、接続部を介して、他の刺激装置の蓄電部に蓄積される。そして。この蓄電部に蓄積された電力は、他の刺激装置の制御部および刺激信号生成部に供給され、当該制御部および刺激信号生成部が起動される。これにより、一刺激装置および他の刺激装置の刺激電極にそれぞれに刺激信号を印加することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一刺激装置および他の刺激装置それぞれの刺激電極に刺激信号を印加することができる。そして、一刺激装置の刺激電極(以下、「一刺激電極」という)に印加される刺激信号における極性と、他の刺激装置の刺激電極(以下、「他の刺激電極」という)に印加される刺激信号における極性とが異なるようにすれば、一刺激電極(他の刺激電極)側から他の刺激電極(一刺激電極)側に刺激信号を流すことができる。その結果、例えば、一刺激電極と他の刺激電極で刺激対象を挟んだ場合、刺激対象の深部を中心に刺激信号を流すことができる。したがって、刺激対象以外を刺激せずに、刺激対象だけを刺激することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る刺激装置の全体を示す分解外観図である。
【図3】(a)本発明の一実施形態に係る刺激装置を示す拡大図である。(b)本発明の一実施形態に係る刺激装置の軸方向の断面図である。
【図4】(a)〜(e)本発明の一実施形態に係る刺激装置の径方向の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の機能を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る給電装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その1)を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その2)を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その3)を説明するための説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その4)を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その5)を説明するための説明図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置を生体内に植え込む手順(その6)を説明するための説明図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施形態に係る電気刺激装置の機能を示すブロック図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る電気刺激装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0015】
以下の手順で説明を行う。
<本発明の一実施形態例>
1.電気刺激装置の機械的な構成
2.電気刺激装置の電気的な構成
3.給電装置の構成
4.電気刺激装置の植え込み手順
5.電気刺激装置の動作
<本発明の他の実施形態例>
1.電気刺激装置の電気的な構成
2.電気刺激装置の動作
<変形例>
【0016】
<本発明の一実施形態例>
本発明の一実施形態の例を、図1〜図13を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の機械的な構成]
まず、電気刺激装置の大まかな構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図2は、図1に示す電気刺激装置の本体ブロックを上面から見た分解外観図である。
【0017】
電気刺激装置1は、棒状に形成された刺激装置100aと、刺激装置100aと同じ刺激装置100bと、刺激装置100aおよび刺激装置100bを電気的に接続する接続部に相当する接続線90とを備える。以下、刺激装置100aと刺激装置100bとで区別する必要がない場合は、刺激装置100a,100bを刺激装置100と記載する。なお、刺激装置100aと刺激装置100bで区別する必要がある場合は、刺激装置100aに関する構成には「xxxa」という符合を付し、刺激装置100bに関する構成には「xxxb」という符合を付すことにする。ただし、「xxx」部分は任意の数字である。
【0018】
刺激装置100は、撓み変形可能な略円筒形状に形成されており、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。刺激装置100は、脊髄の神経を刺激する際に、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、刺激装置100は、先端部114(図2を参照)から基端部119までの直径が、約1mm〜3mmであることが好ましい。
【0019】
刺激装置100は、大きく分けて、電極ブロック102と、回路ブロック103と、支持体104と、固定具121よりなる。そして、電極ブロック102と回路ブロック103はコネクタ部107で着脱可能となっており、回路ブロック103と支持体104はコネクタ部109で着脱可能となっている。さらに、支持体104と固定具121とは着脱可能となっており、らせん状に形成された導線217で接続されている。本例では、電極ブロック102、回路ブロック103および支持体104が接続されたものを本体ブロック101とする。
【0020】
より詳細に説明すると、図2に示すように、電極ブロック102と回路ブロック103は、電極ブロック102側のコネクタ部112と回路ブロック103側のコネクタ部107とが、例えばネジ等により固定されている。同様に、回路ブロック103と支持体104は、回路ブロック103側のコネクタ部109と支持体104側のコネクタ部113とが、同様にネジ等により固定されている。そして、支持体104の基端部119には、固定具121が着脱可能に固定されるようになっている。
【0021】
電極ブロック102は、先端部114が略半球状に形成され、その他の部分が略円筒形状に形成されている。先端部114の略半球状部分の半径は約0.5mm〜1.5mmであることが好ましく、その他の略円筒形状部分の直径は約1mm〜3mmであることが望ましい。このような電極ブロック102は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、刺激装置100を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように、等間隔に配置されるボディ106を含んでいる。さらに、ボディ106の基端部115側と回路ブロック103の先端部116とが連続するように接続するコネクタ部112とを含んでいる。なお、一実施形態の例では、刺激電極105の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極105の数は任意に設定できるものである。電極ブロック102の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0022】
回路ブロック103は、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成されている。回路ブロック103は、先端部116が電極ブロック102の基端部115側のボディ106と連続するように、電極ブロック102のコネクタ部112と接続するコネクタ部107を備えている。また、回路ブロック103には、コネクタ部107と連続するボディ108が設けられる。さらに、ボディ108の基端部117側に連続し、基端部117と支持体104とを接続するコネクタ部109を備えている。なお、回路ブロック103の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0023】
支持体104は、回路ブロック103と接続するコネクタ部113と、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成されたボディ110と、ボディ110に収納される導線217とを含んで形成される。
【0024】
支持体104のコネクタ部113は、ボディ110の先端部118側が回路ブロック103と連続するように、当該回路ブロック103のコネクタ部109と接続される。ボディ110は、刺激装置100が完全に生体内に植え込めるように切断可能となっており、切断部分、すなわちボディ110の基端部119側で固定具121に接続可能となっている。なお、支持体104の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0025】
固定具121は、主にシリコーンやポリウレタン等の柔軟性のある材料で構成されており、導線217と前述の接続線90(図1を参照)の端部が接続可能となっている。そして、固定具121は、支持体104の基端部119に固定可能となっている。なお、固定具121の内部構成については、図3にて後述する。
【0026】
次に、電気刺激装置1の内部構成について図3〜図5を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る刺激装置およびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図3(a)は、図1に示す刺激装置を上面から見た拡大外観図である。
図3(b)は、図3(a)に示す刺激装置のA―A’断面を示す断面図である。
【0027】
また、図4は、本発明の一実施形態に係る刺激装置の軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図4(a)は、図3(a)に示す刺激装置のB−B’断面を示す断面図である。
図4(b)は、図3(a)に示す刺激装置のC−C’断面を示す断面図である。
図4(c)は、図3(a)に示す刺激装置のD−D’断面を示す断面図である。
図4(d)は、図3(a)に示す刺激装置のE−E’断面を示す断面図である。
図4(e)は、図3(a)に示す刺激装置のF−F’断面を示す断面図である。
【0028】
最初に、電極ブロック102の内部構成について説明する。
ボディ106は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある樹脂素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の素材でできている。ボディ106の先端部114は前述したように、略半球状であり、その半径は、約0.5mmから1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ106の先端部114以外の部分は、軸方向が一部中空の略円筒形状に形成されている。そして、この中空部分に4つの刺激電極105がボディ106の表面に剥き出しになるように、固定されている。
【0029】
刺激電極105は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(プラチナ90%/イリジウム10%合金など)等の素材でできており、中空の略円筒状に形成されている。刺激電極105の外径は、ボディ106の外径とほぼ等しく形成される。
【0030】
各刺激電極105には、4つの導線202の一端(先端部114側の端)がそれぞれはんだ203によって接着されており(図4(a)を参照)、これら導線202の他端(基端部115側の端)がコネクタピン210(図2(a)を参照)と電気的に接続されている。なお、導線202のはんだ203で接着される箇所およびコネクタピン210と電気的に接続されている箇所以外の箇所は、PTFE(Polytetrafluoroethylene)やETFE(Ethylenetetrafluoroethylene)による絶縁被覆がなされており、ボディ106内部に完全に埋め込まれている(図4(b)を参照)。
【0031】
コネクタ部112は、ボディ106と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ106の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている。この切り欠き部は、基端部115(図2(a)参照)から軸方向に所定の距離だけ形成されている。なお、この切り欠き部は平面であり、切り欠き部上には4つのコネクタピン210(図2(a)を参照)が露出して配置され、この4つのコネクタピン210に各導線202がそれぞれ電気的に接続されるようになっている。
【0032】
次に、回路ブロック103の内部構成について説明する。
コネクタ部107は、後述する電気的接続部211以外はボディ106と同じ素材(ポリウレタンやシリコーン)で作られている。このコネクタ部107には、電極ブロック102のコネクタ部112と結合可能となるように、当該コネクタ部112の外径と略同じ形状の穴が軸方向に開けられている(図4(c)を参照)。このコネクタ部107の外径は、ボディ106の外径にほぼ等しい。また、コネクタ部107は、電極ブロック102のコネクタ部112と接続された場合に、4つのコネクタピン210とそれぞれ独立して電気的に接続される電気的接続部211を含んでいる。
【0033】
回路ブロック103のボディ108は、コネクタ部107と連続しており、当該コネクタ部107と同じ素材でできている。このボディ108は、略円筒形状に形成されており、その直径は、回路ブロック103のコネクタ部107の外径とほぼ等しく形成されている。
【0034】
このボディ108には、電気的刺激信号を生成する、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装することでできた刺激回路205と、刺激回路205と電気的に接続されているコイル部212とが埋め込まれている。なお、コイル部212は軸方向を軸として巻回されて形成される。
【0035】
刺激回路205は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ108に埋め込まれている導線204を介して電気的接続部211と接続されている。
【0036】
コネクタ部109は、ボディ108と連続しており、電気的接続部215以外は、コネクタ部107と同じものである。電気的接続部215は、ボディ108に埋め込まれている不図示の導線で刺激回路205と電気的に接続されている。
【0037】
次に、支持体104の内部構成について説明する。
コネクタ部113は、例えばポリウレタンやシリコーンでできており、回路ブロック103のコネクタ部109と結合可能となるように、電極ブロック102のコネクタ部112(図4(c)参照)と同一の形状とされる。そして、このコネクタ部113の切り欠き部上には2つのコネクタピン216(図2(c)を参照)が露出して配置される。
【0038】
ボディ110は、コネクタ部113と連続しており、コネクタ部113と同じ素材でできている。ボディ110は軸方向に一部中空を有する略円筒形状に形成され、その外径は回路ブロック103のボディ108の直径とほぼ等しい。そして、ボディ110の中空部分には、らせん状に形付けられた導線217が収納されている。これにより、この導線217は、刺激装置100の軸方向に伸縮可能となっている。そして、導線217の一端は、コネクタ部113のコネクタピン216と接続されており、導線217の他端は、固定具121に接続される。導線217は、独立した2つの信号線を含んでいる。
【0039】
次に、固定具121の内部構成について説明する。
固定具121は、シリコーン等で形成されており、キャップ部218とキャップ部218に連続する接続線接続部219とを含む。
【0040】
キャップ部218は、中空の略円筒形状に形成される。その中空部分の一部の直径は、支持体104のボディ110の基端部119(図2(c)を参照)側の一部を収納できるように、支持体104のボディ110の外径とほぼ等しいか、それより少し長い程度であることが好ましい。
【0041】
接続線接続部219は、略円筒形状に生成される。この接続線接続部219には、接続線90の一端と導線217の他端をそれぞれ機械的に着脱可能に接続するコネクタ(以下、「接続線接続コネクタ」という)が収納されており、接続線90の一端と導線217の他端が接続線接続コネクタに接続されると両者が電気的に接続される。接続線接続コネクタに導線217の他端を接続した状態でキャップ部218に支持体104のボディ110の基端部119側の一部が収納可能となっている。
【0042】
[2.電気刺激装置の電気的な構成]
次に、電気刺激装置1の電気的な構成について図5を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態例に係る電気刺激装置の機能を示すブロック図である。
電気刺激装置1は、図5に示すように、刺激装置100aと、刺激装置100aと同じ刺激装置100bとを備え、刺激装置100aおよび刺激装置100bは接続線90により電気的に接続されている。この接続線90の1つの信号線を用いて、刺激装置100aと刺激装置100bの基準電位が一致させられている。
【0043】
刺激装置100には、コイル部212と、刺激回路205が設けられている。そして、刺激回路205は、ゲート部302と、整流部303と、蓄電キャパシタ304と、通信部305を含む。さらに、制御部306と、刺激パラメータ設定部307と、電極構成設定部308と、発振部309と、スイッチ部310を備える。
【0044】
ゲート部302は、磁石によりオン/オフ制御されるリードスイッチであり、3つの端子S1〜S3を有する。ゲート部302の近くの所定位置に磁石がない状態では、端子S1と端子S2とが接続される。一方、ゲート部302の近くの所定位置に磁石が配置された状態では、端子S1と端子S3とが接続される。端子S1は整流部303および通信部305と接続されている。そして、端子S2は接続線90および制御部306と接続され、端子S3はコイル部212と接続されている。すなわち、上述の所定位置に磁石がない状態では、接続線90および制御部306が整流部303および通信部305に接続され、所定位置に磁石が配置された状態では、コイル部212が整流部303および通信部305に接続される。
【0045】
コイル部212は、受電部に相当し、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部212は、蓄電キャパシタ304に蓄電を行う場合、後述する体外の給電装置350(図6にて後述)から送信される給電用の電磁波を受信する。そして、このコイル部212による受信に伴って、コイル部212から発生される交流電流がゲート部302を介して整流部303に出力される。
【0046】
整流部303は、整流回路を内蔵し、ゲート部302を通じて入力された信号(コイル部212で発生する交流電流や後述の連続パルス)を整流して蓄電キャパシタ304に出力する。
【0047】
蓄電キャパシタ304は、整流部303で整流された信号に応じた電力を蓄積し、蓄積している電力を、刺激回路205を構成する各ブロックに供給する。なお、整流部303と蓄電キャパシタ304よりなる回路が蓄電部に相当する。
【0048】
制御部306は、例えばマイクロコンピュータ等を含むものであり、蓄電キャパシタ304から供給される電力により起動して刺激回路205を構成する各ブロックの制御を行う。
【0049】
この制御部306は、接続線90に電気的に接続されており、接続線90からの連続パルス(例えば、バースト電流やバースト電圧)の入力の有無を監視している。自身が起動してから連続パルスの入力が所定の期間以上ない場合に、制御部306は、自身を親機と認識する。自身が親機であると認識した場合、制御部306は、上述の連続パルスを生成し、生成した連続パルスを接続線90に出力する。
【0050】
一方、接続線90からの連続パルスの入力があった場合に、制御部306は、自身を子機と認識する。なお、自身が子機であると認識した制御部306は、接続線90に連続パルスを出力する処理は行わない。
【0051】
さらに、この制御部306には、各患者に応じて設定された所定の刺激プログラムが予め記憶されている。制御部306は、この刺激プログラムを読み出し、読み出した刺激プログラムに基づいて刺激パラメータおよび電極構成情報を生成する。刺激パラメータおよび電極構成情報は、刺激パラメータ設定部307および電極構成設定部308にそれぞれ出力される。
【0052】
刺激パラメータは、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報である。電気的刺激信号の刺激強度は、当該電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定されるので、刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。
【0053】
また、電極構成情報は、電極構成に関する情報であり、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極105をスイッチ部310に選択させるための情報とを含む信号である。
【0054】
刺激パラメータ設定部307は、制御部306から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
電極構成設定部308は、制御部306から入力される電極構成情報に基づいて、発振部309で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択するための電極構成選択信号を生成する。刺激強度変更信号は発振部309に出力される。一方、電極構成選択信号はスイッチ部310に出力される。
【0055】
発振部309は、刺激パラメータ設定部307から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部310に出力する。
スイッチ部310は、電極構成設定部308から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部309から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択する。なお、刺激パラメータ設定部307、電極構成設定部308、発振部309およびスイッチ部310よりなる回路が刺激信号生成部に相当する。
【0056】
通信部305は、外部の給電装置350(図6にて後述)と通信を行うためのものである。例えば、外部の給電装置350から前述の刺激パラメータや電極構成情報が載せられた電磁波が送信された場合、コイル部212で受信された当該電磁波を復調する。そして、電磁波に載せられている刺激パラメータや電極構成情報を取り出し、制御部306を介して刺激パラメータ設定部307や電極構成設定部308に出力する。これにより、制御部306に記憶された所定の刺激プログラムに関わらず、電気的刺激信号の強度等の設定を行うこともできる。
【0057】
[3.給電装置の構成]
次に、給電装置350の構成について図6を参照して説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る給電装置を示すブロック図である。
給電装置350は、体表に貼り付け、または取り付けられ、体内に埋め込まれた刺激装置に対して給電や通信等を行うものである。この給電装置350は、電源部351と、制御部352と、給電/通信部353と、給電コイル部354とを備える。
【0058】
電源部351は、蓄積している電力を、給電装置350を構成する各ブロックに供給している。電源部351には、例えば一次電池や充電池が用いられる。
【0059】
制御部352は、例えばマイクロコンピュータを含み、医師等のユーザの操作に基づいて、給電/通信部353を制御する。操作は、給電装置350に配置された不図示のスイッチなどの操作部を直接操作することもできるし、不図示のコントローラから通信により行うこともできる。
【0060】
給電/通信部353は、ユーザからの給電指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、給電用電磁波を生成する。そして、生成した給電用電磁波を、給電コイル部354を介して電気刺激装置1のコイル部212に送信する。
【0061】
また、給電/通信部353は、ユーザからの電気的刺激信号の強度等を変更する指示があった場合、制御部352の制御に基づいて、給電用電磁波に刺激パラメータや電極構成情報が載せられた電磁波を生成する。そして、生成した電磁波を、給電コイル部354を介して電気刺激装置1のコイル部212に送信する。
【0062】
給電コイル部354は、電磁波を電気刺激装置1へ送信できるコイルであればよく、例えば電線を円筒形に巻いたものでもよい。この給電コイル部354が給電部に相当する。
【0063】
この給電装置350は、電気刺激装置1のゲート部302を制御するためのゲート操作部に相当する磁石355を備えている。
【0064】
[4.電気刺激装置の植え込み手順]
次に、電気刺激装置1を例えば硬膜外腔に植え込む手順の一例について図7〜図12を参照して説明する。
図7〜図12は、人体の背中付近を示す説明図である。
【0065】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、X線透視下で患者の脊椎403の棘突起のやや左斜めから硬膜外針402を穿刺し、硬膜外針402の先端を硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針402が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から3椎体以上低位が選ばれる(図7を参照)。
【0066】
次に、医師は、硬膜外針402に本体ブロック101aの先端部114(図2を参照)を通し、当該本体ブロック101aを生体404内に挿入する。そして、本体ブロック101aの基端部119(図2を参照)を軸方向に押すことにより、本体ブロック101aが硬膜外針402を通じて左側の硬膜外腔405内に挿入される(図8を参照)。
【0067】
続いて、医師は、本体ブロック101aの基端部119(図2を参照)を軸方向にさらに押して、硬膜外腔405内に本体ブロック101aを上向させ、本体ブロック101aの刺激電極105a(図1を参照)を目標とする刺激部位の近くに位置させる。そして、本体ブロック101aが動かないように、当該本体ブロック101aを仮固定する(図9を参照)。そして、医師は、先に穿刺した同じ高さの脊椎403の棘突起のやや右斜めから硬膜外針402を穿刺して、右側の硬膜外腔405にも、図7〜図9に示した手順で本体ブロック101bを植え込む。
【0068】
以上の処理が完了した後、医師は、支持体104aのボディ110a(図3を参照)に収納された導線217aを、ボディ110aの外に一部引き出す(図10を参照)。同様に、本体ブロック101bの支持体104bからも導線217bを引き出す。
【0069】
次に、医師は、引き出した導線217aを固定具121aの接続線接続コネクタに接続するとともに、引き出した導線217bを固定具121bの接続線接続コネクタに接続する。さらに、固定具121aと固定具121bの接続線接続コネクタに接続線90を接続して両者を電気的に接続する(図11を参照)。
【0070】
次いで、医師は、刺激装置100a,100bの刺激電極105a,105bの位置を少しずつ移動させながら、給電装置350で電気刺激装置1を操作して神経刺激を行い、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、疼痛緩和の効果が最大となる最適な刺激電極105a,105bの位置をそれぞれ決定する。
【0071】
続いて、医師は、刺激装置100a,100bと接続線90を完全に生体404内に植え込むための処理を行う。具体的には、まず固定具121aと固定具121bの接続線接続コネクタから接続線90を取り外した後、固定具121aの接続線接続コネクタから導線217aを取り外すとともに、固定具121bの接続線接続コネクタから導線217bを取り外す。そして、各硬膜外針402が刺入している部分に小切開を加えた後、硬膜外針402をそれぞれ生体404から抜き去る。
【0072】
ここで、医師は、各刺激装置100a,100bにおいて、導線217a,217bを切らないように、体内から突出した支持体104a,104bのボディ110a、ボディ110bを切断する。
【0073】
続いて、医師は、導線217aを固定具121aの接続線接続コネクタに接続した後、支持体104aを手で固定しつつ、当該支持体104aの軸方向に固定具121aを押して、支持体104aのボディ110a(図3を参照)の内部に導線217aを収納する。そして、支持体104aの切断面に固定具121aでキャップし、固定具121aに糸(不図示)を通し、この糸で縛って固定具121aをボディ110aに固定する。これと同様の処理を刺激装置100bに対しても行う。
【0074】
次に、刺激装置100a,100bが生体404に完全に植え込まれた状態で生体404に固定されるようにするため、固定具121a,121bを糸(不図示)で生体404の小切開内の筋膜や結合組織にそれぞれ縫いつける。この処置は、刺激装置100a,100bが生体404内で移動しないようにするためのものである。そして、左右の小切開の間に皮下トンネルを作成して、この作成した皮下トンネルに接続線90を通し、再び固定具121aと固定具121bの接続線接続コネクタに接続線90を接続して両者を電気的に接続する。最後に、各小切開を縫合して刺激装置100a,100bと接続線90を完全に生体404内に植え込む。これにより、脊髄406の正中部を挟むような神経刺激が可能となる(図12を参照)。
【0075】
[5.電気刺激装置の動作]
次に、電気刺激装置1が、電気的刺激信号を生成する処理(以下、「電気的刺激信号生成処理」という)の詳細について図5、図6および図13を参照して説明する。なお、図12に示すように電気刺激装置1が生体404内に植え込まれているものとする。
【0076】
図13は、本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の動作を示すフローチャートである。
まず、医師は、体表面において、給電装置350の磁石355をゲート部302aに重なる位置に配置する。その結果、ゲート部302aでは、端子S1と端子S3とが接続される(ステップS10)。
【0077】
続いて、給電装置350の給電コイル部354からコイル部212aに対して給電用電磁波が送信されると、コイル部212aは、この給電用電磁波を受信して交流電流に変換する。そして、交流電流が整流部303aに出力される。整流部303aは、交流電流を整流して蓄電キャパシタ304aに出力する。すると、蓄電キャパシタ304aに電力が蓄積される。そして、蓄積された電力が刺激回路205aを構成する各ブロックに供給され、制御部306aが起動される(ステップS11)。
【0078】
起動された制御部306aは、接続線90からの連続パルスの入力があるか否かを確認する。この段階で接続線90からの連続パルスの入力はないので、制御部306aは、自身が親機であることを認識する(ステップS12)。そして、連続パルスを生成して接続線90に出力する(ステップS13)。接続線90に入力された連続パルスは、刺激装置100bのゲート部302bに出力される。このとき、ゲート部302bにおいて、端子S1は端子S2に接続されており、接続線90は整流部303bに接続されている。そのため、ゲート部302bに入力された連続パルスは、整流部303bに出力される。
【0079】
整流部303bは、連続パルスを整流して蓄電キャパシタ304bに出力する。すると、蓄電キャパシタ304bに電力が蓄積される。そして、蓄積された電力が刺激回路205bを構成する各ブロックに供給され、制御部306bが起動される(ステップS14)。
【0080】
起動された制御部306bは、接続線90からの連続パルスの入力があるか否かを確認する。このとき接続線90からの連続パルスの入力があるので、制御部306bは、自身が子機であることを認識する(ステップS15)。
【0081】
以上の処理が完了した後、制御部306a,306bは、自身に予め記憶している刺激プログラムを読み出し、読み出した刺激プログラムに基づいて刺激パラメータおよび電極構成情報を生成する。そして、制御部306aで生成された刺激パラメータおよび電極構成情報が、刺激パラメータ設定部307aおよび電極構成設定部308aにそれぞれ出力される。同様に、制御部306bで生成された刺激パラメータおよび電極構成情報が、刺激パラメータ設定部307bおよび電極構成設定部308bにそれぞれ出力される。
【0082】
刺激パラメータ設定部307a,307bは、入力された刺激パラメータに応じた強度の電気的刺激信号を発振部309a,309bにそれぞれ生成させる。発振部309aで生成された電気的刺激信号はスイッチ部310aに出力され、発振部309bで生成された電気的刺激信号は、スイッチ部310bに出力される。
【0083】
一方、電極構成設定部308a,308bは、入力された各電極構成情報に基づいて、スイッチ部310a,310bと刺激電極105a,105bとをそれぞれ選択的に接続するとともに、選択された刺激電極105a,105bにおける電気的刺激信号の極性をそれぞれ決定する。
【0084】
ここで、選択された刺激電極105aと、選択された刺激電極105bにおける電気的刺激信号の極性を異なるようにすれば、刺激電極105a(刺激電極105b)側から刺激電極105b(刺激電極105a)側に電気的刺激信号が流れる。この結果、刺激対象である脊髄406の正中部を挟むような神経刺激が実行される(ステップS16)。
【0085】
<本発明の他の実施形態例>
次に、本発明の他の実施形態の例について図14および図15を参照して説明する。
他の実施形態に係る電気刺激装置は、一実施形態に係る電気刺激装置1と機械的な構成および植え込み手順は同じであるので、機械的な構成および植え込み手順の説明を省略することにする。また、他の実施形態に係る電気刺激装置の電気的な構成において、電気刺激装置1と共通の部分については同一符号を付して、説明を省略する。
【0086】
[1.電気刺激装置の電気的な構成]
まず、他の実施形態に係る電気刺激装置の電気的な構成について図14を参照して説明する。
図14は、本発明の他の実施形態に係る電気刺激装置の機能を示すブロック図である。
電気刺激装置10は、電気刺激装置1と同様に、刺激電極105a(刺激電極105b)側から刺激電極105b(刺激電極105a)側に電気的刺激信号を流すことができるようにしたものである。
【0087】
この電気刺激装置10は、電気刺激装置1の刺激回路205の代替えとして、刺激回路502を備える。より具体的には、刺激回路205のゲート部302の代わりにゲート部503が設けられ、このゲート部503の状態を確認する機能を有する制御部504が制御部306の代わりに設けられている。
【0088】
ゲート部503は、磁石によりオン/オフ制御されるリードスイッチであり、5つの端子S1〜S5を有する。このゲート部503の近くの所定位置に磁石がない状態では、端子S1と端子S2とが接続される。このとき端子S4と端子S5は非接続状態である。一方、ゲート部503の近くの所定位置に磁石が配置された状態では、端子S1と端子S3とが接続されるとともに、端子S4と端子S5とが接続される。
【0089】
端子S1は整流部303および通信部305と接続されている。そして、端子S2は接続線90および制御部504と接続され、端子S3はコイル部212と接続されている。すなわち、上述の所定位置に磁石がない状態では、接続線90および制御部504が整流部303および通信部305に接続され、所定位置に磁石が配置された状態では、コイル部212が整流部303および通信部305に接続される。
【0090】
制御部504は、マイクロコンピュータ等を含むものであり、一実施形態に係る制御部306と同様に蓄電キャパシタ304から供給される電力により起動して刺激回路502を構成する各ブロックの制御を行う。
【0091】
この制御部504は、ゲート部503の端子S4および端子S5と接続されており、端子S4と端子S5が接続状態にあるか否かを監視している。そして、制御部504は、端子S4と端子S5とが接続状態にあることを検出すると、自身を親機と認識する。自身が親機であると認識した場合、制御部504は、上述の連続パルスを生成し、生成した連続パルスを接続線90に出力する。
【0092】
一方、制御部504は、端子S4と端子S5が非接続状態であることを検出すると、自身を子機と認識する。なお、自身が子機であると認識した制御部504は、接続線90に連続パルスを出力する処理は行わない。
【0093】
また、制御部504には、一実施形態に係る制御部306と同様に、所定の刺激プログラムが予め記憶されている。制御部504は、刺激プログラムを読み出し、読み出した刺激プログラムに基づいて刺激パラメータおよび電極構成情報を生成する。刺激パラメータおよび電極構成情報は、刺激パラメータ設定部307および電極構成設定部308にそれぞれ出力される。
【0094】
[2.電気刺激装置の動作]
次に、電気刺激装置10による電気的刺激信号生成処理の詳細について図14および図15を参照して説明する。図12に示したように、電気刺激装置10が生体404内に植え込まれているものとする。
【0095】
図15は、本発明の他の実施形態に係る電気刺激装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS26の処理は、図13に示すステップS16の処理と同じであるので、説明は省略する。
【0096】
まず、医師は、体表面において、刺激装置50aが植え込まれた部分に給電装置350(図6を参照)を当てて、給電装置350の磁石355をゲート部503aに重なる位置に配置する。その結果、ゲート部503aでは、端子S1と端子S3とが接続されるとともに、端子S4と端子S5とが接続される(ステップS20)。
【0097】
続いて、給電装置350の給電コイル部354から給電用電磁波が送信されると、コイル部212aは、この給電用電磁波を受信して交流電流に変換する。そして、交流電流が整流部303aに出力される。整流部303aは、交流電流を整流して蓄電キャパシタ304aに出力する。すると、蓄電キャパシタ304aに電力が蓄積される。そして、蓄積された電力が刺激回路502aを構成する各ブロックに供給され、制御部504aが起動される(ステップS21)。
【0098】
起動された制御部504aは、ゲート部503aの端子S4と端子S5とが接続されていることを検出して、自身が親機であることを認識する(ステップS22)。そして、連続パルスを生成して接続線90に出力する(ステップS23)。接続線90に入力された連続パルスは、刺激装置50bのゲート部503bに出力される。このとき、ゲート部503bにおいて、端子S1は端子S2に接続されており、接続線90は整流部303bに接続されている。そのため、ゲート部503bに入力された連続パルスは整流部303bに出力される。
【0099】
整流部303bは、連続パルスを整流して蓄電キャパシタ304bに出力する。すると、蓄電キャパシタ304bに電力が蓄積される。そして、蓄積された電力が刺激回路502bを構成する各ブロックに供給され、制御部504bが起動される(ステップS24)。
【0100】
起動された制御部504bは、ゲート部503bの端子S4と端子S5とが接続されていないことを検出して、自身が子機であることを認識する(ステップS25)。
【0101】
以上説明したように、各実施形態では、2つの刺激装置を有しているので、各刺激装置の刺激電極に電気的刺激信号を印加することができる。そして、各刺激電極における電気的刺激信号の極性をそれぞれ異なるようにすれば、任意の一刺激装置の刺激電極(一刺激電極)側から他の刺激装置の刺激電極(他の刺激電極)側に電気的刺激信号を流すことができる。この結果、一刺激電極と他の刺激電極で、脊髄などの刺激対象を挟んだ場合、刺激対象の深部を中心に電気的刺激信号を流すことができる。したがって、刺激対象以外を刺激することなく、刺激対象の深部を刺激することができる、という効果がある。
【0102】
また、各実施形態では、給電装置により電力供給がなされた方の刺激装置が、給電装置により電力供給がなされなかった方の刺激装置に電力を供給するようにした。これにより、刺激装置それぞれに対して、給電装置で給電する、というユーザにとってわずらわしい作業を行わなくてもよくなる、という効果がある。その上、いずれかの刺激装置を給電装置により給電するだけで、両方の刺激装置が使用可能状態にすることができるので、装置の使用開始までにかかる時間を短縮することができる、という効果もある。
【0103】
また、一実施形態では、本体ブロックを、硬膜外針の内部を挿通可能になるような形状に形成した。そのため、医師が本体ブロックの支持体部分を操作して、硬膜外針を介して、刺激電極を所定の位置まで移動させることができるとともに、刺激電極をその位置に長期間にわたって安定的に留置できるという効果がある。また、医師が支持体を操作して、電気刺激装置を体外へ容易に取り出すことができるという効果がある。
【0104】
なお、上述した各実施形態においては、各刺激装置および接続線よりなるものを電気刺激装置として説明しているが、電気刺激装置として給電装置を含む広い概念で捉えることもできる。
【0105】
<変形例>
上述した各実施形態では、生体内に電気刺激装置を挿入する際に、硬膜外針に直接刺激装置を通す形態とした。しかしながら、予め硬膜外針を通して柔軟性のあるカニューレを刺激を行う部位の近くまで導いた後に、このカニューレ内に刺激装置を通して生体内に挿入することで刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることが可能である。
【0106】
また、上述した各実施形態では、コネクタにより電極ブロック、回路ブロック、支持体をそれぞれ着脱可能に接続した。しかし、コネクタを廃して、電極ブロックと回路ブロックが予め一体化されていてもよく、あるいは、回路ブロックと支持体が予め一体化されていてもよく、あるいは、すべてが予め一体化されていてもよい。
【0107】
また、上述した各実施形態では、電源として蓄電キャパシタを用いたが、蓄電キャパシタの代わりに充電池を用いてもよい。これにより、体外のコントローラから常に給電を受ける必要がなくなる。
【0108】
また、上述した各実施形態において、本体ブロックに、その基端から中途部まで連通するルーメンを備えるようにしてもよい。これにより、本体ブロックを生体内に植え込む際に、スタイレットを利用できる。この結果、本体ブロックの体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0109】
また、上述した各実施形態において、本体ブロックに、その先端から基端まで連通するルーメンを備えるようにしてもよい。これにより、本体ブロックを生体内に植え込む際に、ガイドワイヤを利用できる。
【0110】
また、上述した各実施形態では、電気刺激装置の各本体ブロックは略円筒形状に形成されているが、棒状であればどのような形状でもよい。
【0111】
また、上述した各実施形態では、刺激装置の数を2としたが、2以上にすることもできる。この場合、親機対子機が1対多となるように接続線で親機と子機を接続すればよい。すなわち、電気的に1つの接続線に全ての刺激装置が接続されていれば、刺激装置の植え込み位置に応じて接続線の配線を変更することができる。
【0112】
また、上述した各実施形態では、刺激装置50a,100aを親機とし、刺激装置50a,100bを子機としたが、刺激装置50a,100aを子機とし、刺激装置50a,100bを親機とすることができることはいうまでもない。
【0113】
また、上述した各実施形態では、親機の通信部が給電装置からの刺激パラメータや電極構成情報を受け取ることができるとしたが、この受け取った情報を親機の制御部が接続線に出力する連続パルスに周波数変調を行うなどして載せることで、子機の通信部でもこれらの情報を受け取ることができ、給電装置から子機の刺激パラメータや電極構成情報を設定することが可能である。
【0114】
また、上述した各実施形態では、接続線は基準電位と連続パルスの2つの信号線であるとしたが、同期用に信号線を新たに1つ追加することで、左右の刺激装置の刺激電極を同時に刺激することが可能である(例えば、刺激電極105aの先端の電極を基準電位、刺激電極105aの先端から2番目の電極を正電位、刺激電極105bの先端の電極を正電位として、刺激電極105aの先端から2番目の電極と刺激電極105bの先端の電極を同時に刺激)。
【0115】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0116】
1,10…電気刺激装置、50,100…刺激装置、90…接続線、101…本体ブロック、102…電極ブロック、103…回路ブロック、104…支持体、105…刺激電極、106,108,110…ボディ、107,109,112,113…コネクタ部、114,116,118…先端部、115、117,119…基端部、121…固定具、202,204,217…導線、205,502…刺激回路、210,216…コネクタピン、211,215…電気的接続部、212…コイル部、218…キャップ部、219…接続線接続部、302,503…ゲート部、303…整流部、304…蓄電キャパシタ、305…通信部、306,352,504…制御部、307…刺激パラメータ設定部、308…電極構成設定部、309…発振部、310…スイッチ部、350…給電装置、351…電源部、353…給電/通信部、354…給電コイル部、355…磁石、402…硬膜外針、403…脊椎、404…生体、405…硬膜外腔、406…脊髄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に留置される少なくとも2つの刺激装置と、各刺激装置を他の各前記刺激装置に電気的に接続する接続部と、前記各刺激装置に給電可能な生体外に設置される給電装置と、を含む電気刺激装置であって、
前記各刺激装置は、
刺激電極と、
刺激信号を生成して前記刺激電極に印加する刺激信号生成部と、
前記接続部に電気的に接続され、該接続部に電力を出力するとともに、前記刺激信号生成部を制御する制御部と、
入力された電力を蓄積し、蓄積された電力が前記刺激信号生成部および前記制御部に供給される蓄電部と、
前記給電装置から受電可能な受電部と、
前記蓄電部を、前記受電部あるいは前記接続部に選択的に接続可能なゲート部と、を備え、
前記給電装置は、
前記各刺激装置の前記受電部に生体外より給電する給電部と、
前記給電部から前記受電部に給電を行う際に、前記ゲート部を操作して前記蓄電部を前記蓄電部に接続させるゲート操作部と、を備える
電気刺激装置。
【請求項2】
前記制御部は、自身が起動してから所定の期間以上前記接続部からの電力の入力がある場合に、前記接続部に電力を出力しないようにする
請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記制御部は、ゲート部の接続状態を監視し、前記蓄電部が前記接続部に接続されている場合に、前記接続部に電力を出力しないようにする
請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記給電装置の前記給電部から前記刺激信号の前記受電部への給電は、電磁誘導により行われる
請求項1乃至3のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記給電装置の前記ゲート操作部は、前記刺激装置の前記ゲート部を磁気的作用により操作する
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項6】
前記制御部から前記接続部への出力は連続パルスであり、
前記蓄電部は、前記連続パルスを整流して得た電力を蓄積する
請求項1乃至5のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記制御部から前記接続部へ出力される前記連続パルスは、バースト電流またはバースト電圧である
請求項6のいずれかに記載の電気刺激装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電気刺激装置を制御する制御方法であって、
前記給電装置の前記ゲート操作部により前記刺激装置の前記ゲート部を操作して、前記受電部と前記蓄電部とを接続するステップと、
前記受電部が、前記給電部から電力を取得して前記蓄電部に出力するステップと、
前記蓄電部に蓄積された電力を前記制御部および前記刺激信号生成部に供給するステップと、
前記制御部が、予め記憶された刺激プログラムに基づいて刺激パラメータおよび電極構成情報を生成するステップと、
前記制御部が、前記接続部に電力を出力して、該接続部に接続された他の前記刺激装置に電力を供給するステップと、
前記制御部が生成した前記刺激パラメータおよび前記電極構成情報を、前記刺激信号生成部に供給し、前記刺激信号生成部を制御するステップと、
前記刺激信号生成部が、刺激信号を生成して前記刺激電極に印加するステップと、を備える
電気刺激装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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