説明

電気化学キャパシタ

【課題】クーロン効率の向上を図ることができながら、エネルギー密度の向上を図ることができる、電気化学キャパシタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気化学キャパシタは、正極2と、負極3と、正極2と負極3との間に介在されるセパレータ4とを備え、セパレータ4に、正極2と隣接配置され、正極において発生するガスの通過を許容する正極側セパレータ11と、負極3と隣接配置され、非水電解質に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する負極側セパレータ12と、正極側セパレータ11と負極側セパレータ12との間に配置され、負極において析出するリチウム析出物の通過を遮断する中間セパレータ13とを備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学キャパシタ、詳しくは、電気二重層による蓄電と、酸化還元反応による蓄電とを併有するハイブリッドキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車両や燃料電池車両に搭載される蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池などの二次電池、電気二重層キャパシタおよびハイブリッドキャパシタなどの電気化学キャパシタの検討および開発が進められている。蓄電デバイスは、一般的に、正極と、負極と、これら電極間に介在されるセパレータと、電極およびセパレータを収容し、これらを浸漬するように電解液が満たされている外装容器とを備えている。
【0003】
このような蓄電デバイスとしては、例えば、電解液が、リチウム塩を含む非プロトン性有機溶媒であり、セパレータが、セルロース、ポリエチレンなどから形成され、正極と負極との間に少なくとも2枚以上挟装されるリチウムイオンキャパシタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−59732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載のリチウムイオンキャパシタでは、高い電圧で充放電を繰り返した場合に、負極においてLiデンドライト(Liの樹枝状晶)が析出し、また、正極において、電解液の酸化分解によってガス(例えば、CO)が発生する場合がある。
【0006】
そして、そのようなリチウムイオンキャパシタにおいて、セパレータがセルロースから形成される場合、Liデンドライト(Liの樹枝状晶)がセパレータを貫通し、正極と負極とが短絡してしまう場合がある。その結果、クーロン効率が低下してしまう場合がある。
【0007】
一方、セパレータがポリエチレンから形成される場合、Liデンドライト(Liの樹枝状晶)がセパレータを貫通することを防止できるが、電解液の酸化分解によるガス(例えば、CO)のセパレータの通過が抑制され、そのガスがセル内に滞留する場合がある。その結果、エネルギー密度を良好に維持できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、クーロン効率の向上を図ることができながら、エネルギー密度の向上を図ることができる、電気化学キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電気化学キャパシタは、正極と、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な材料からなる負極と、リチウムイオンを含む非水電解質と、前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータとを備える電気化学キャパシタであって、前記セパレータは、前記正極に隣接配置され、前記正極において発生するガスの通過を許容する第1セパレータと、前記負極に隣接配置され、前記非水電解質に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する第2セパレータと、前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置され、前記非水電解質に含まれるリチウムイオンから誘導され、前記負極において析出するリチウム析出物の通過を遮断する第3セパレータとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気化学キャパシタは、第1セパレータが正極に隣接配置され、第3セパレータが第1セパレータと第2セパレータとの間に配置されている。そのため、正極において発生するガスが第1セパレータを通過して、電気化学キャパシタ外に除去されるとともに、負極において析出するリチウム析出物が、セパレータを貫通することを防止できる。
【0011】
その結果、正極と負極との短絡を防止できるとともに、電気化学キャパシタ内にガスが滞留することを抑制できる。
【0012】
従って、本発明の電気化学キャパシタは、クーロン効率の向上を図ることができながら、エネルギー密度の向上を図ることができる。これにより、電気化学キャパシタの寿命の向上を図ることができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電気化学キャパシタの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
【図2】実施例および比較例の充放電サイクルにおけるハイブリッドキャパシタ(試験セル)のクーロン効率の変化を示す図である。
【図3】実施例および比較例の充放電サイクルにおけるハイブリッドキャパシタ(試験セル)のエネルギー密度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の電気化学キャパシタの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
【0015】
図1において、電気化学キャパシタの一例としてのハイブリッドキャパシタ1は、正極2と、正極2に対して間隔を隔てて対向配置される負極3と、正極2と負極3との間に介在されるセパレータ4と、正極2、負極3およびセパレータ4を収容するセル槽6と、セル槽6に貯留され、正極2、負極3およびセパレータ4が浸漬される非水電解質5とを備えている。なお、ハイブリッドキャパシタ1は、ラボスケールで採用される電池セルであって、工業的には、このハイブリッドキャパシタ1を、公知の技術によって適宜スケールアップしたものが採用される。
【0016】
正極2は、分極性電極であって、正極側塗工層8と、正極側集電体7とを備えている。
【0017】
正極側塗工層8は、所定の形状(例えば、矩形状)に形成され、例えば、分極性カーボンからなる正極材料と、ポリマーバインダとを含有し、さらに必要に応じて、導電剤を含有している。
【0018】
正極材料は、例えば、カーボン材を賦活処理することにより得られる。
【0019】
カーボン材としては、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボンなどが挙げられる。
【0020】
ソフトカーボンは、例えば、不活性雰囲気中での熱処理によって、炭素原子で構成される六角網面が、ハードカーボンの六角網面よりも相対的に規則的な積層構造(黒鉛構造)を形成しやすいカーボンの総称である。具体的には、不活性雰囲気中、2000〜3000℃、好ましくは、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Å以下、好ましくは、3.35〜3.40Åとなる結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0021】
具体的なソフトカーボンとしては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、メソフェーズ系ピッチなどのピッチ類、例えば、石油系ニードルコークス、石炭系ニードルコークス、アントラセン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどの易黒鉛化性コークス類などの熱分解物などが挙げられる。
【0022】
ハードカーボンは、例えば、不活性雰囲気中、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Åを超える結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0023】
具体的なハードカーボンとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、レゾルシノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、例えば、フリュードコークス、ギルソナイトコークスなど易黒鉛化性コークスとは異なる難黒鉛化性コークス、例えば、やしがら、木粉などの植物系原料、例えば、ガラス状炭素などの熱分解物などが挙げられる。
【0024】
これらカーボン材は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0025】
これらカーボン材のなかでは、好ましくは、ソフトカーボンが挙げられ、さらに好ましくは、メソフェーズ系ピッチが挙げられる。
【0026】
賦活処理としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを賦活剤として用いるアルカリ賦活処理、例えば、塩化亜鉛(ZnCl)、リン酸(HPO)などを賦活剤として用いる薬品賦活処理、例えば、二酸化炭素(CO)、空気などを賦活剤として用いるガス賦活処理、例えば、水蒸気(HO)を賦活剤として用いる水蒸気賦活処理などが挙げられる。
【0027】
これら賦活処理のなかでは、好ましくは、アルカリ賦活処理が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化カリウム(KOH)を賦活剤として用いるアルカリ賦活処理(KOH賦活処理)が挙げられる。
【0028】
賦活処理は、例えば、KOH賦活処理の場合、窒素雰囲気下において、カーボン材を、例えば、500〜800℃で予備焼成し、次いで、700〜1000℃でKOHとともに焼成する。用いられるKOHの量は、例えば、カーボン材1質量部に対して、0.5〜5質量部である。
【0029】
上記賦活処理によって得られる正極材料を正極2に用いたハイブリッドキャパシタ1では、例えば、正極2の電位が4.2V vs.Li/Li以上となる充放電サイクルにおいて、正極2に比較的大きな不可逆容量を発現させることができる。そのため、放電過程において、より低い電位にまで正極の放電が可能となる。その結果、正極2の電気容量を拡大することができる。
【0030】
正極材料の含有割合は、正極側集電体100質量部に対して、例えば、65〜99質量部、好ましくは、70〜90質量部である。
【0031】
ポリマーバインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体架橋ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。
【0032】
これらポリマーバインダは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0033】
また、これらポリマーバインダのなかでは、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が挙げられる。
【0034】
ポリマーバインダの含有割合は、正極側集電体100質量部に対して、例えば、1〜25質量部、好ましくは、5〜20質量部である。
【0035】
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。
【0036】
これら導電剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0037】
また、これら導電剤のなかでは、好ましくは、カーボンブラックが挙げられる。
【0038】
導電剤の含有割合は、正極側集電体100質量部に対して、例えば、0〜20質量部、好ましくは、5〜10質量部である。
【0039】
正極側集電体7は、例えば、金属箔などから形成され、金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などが挙げられる。
【0040】
これら金属箔のなかでは、好ましくは、アルミニウム箔が挙げられる。
【0041】
また、これら金属箔の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、10〜50μmである。
【0042】
そして、正極2を形成するには、例えば、上記した正極材料、ポリマーバインダ、さらに、必要に応じて、導電剤などを、上記した割合で配合し、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60質量%)を得る。次いで、スラリーを正極側集電体7の表面に塗工し、正極側塗工層8を形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、矩形状、円形状)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、正極2が得られる。
【0043】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、水などのプロトン性極性溶媒、例えば、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチルなどの低極性溶媒が挙げられる。
【0044】
これら溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0045】
また、これら溶媒のなかでは、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0046】
このような方法により得られる正極2の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚みが30〜150μmである。
【0047】
また、正極2の大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、10〜200mm、好ましくは、10〜100mm、長手方向と直交する方向(幅方向)長さが、例えば、10〜200mm、好ましくは、10〜100mmであり、例えば、円形状の場合には、直径が、例えば、5〜30mm、好ましくは、5〜15mmである。
【0048】
負極3は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する電極であって、負極側塗工層10と、負極側集電体9とを備えている。
【0049】
負極側塗工層10は、所定の形状(例えば、矩形状)に形成され、例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極材料と、ポリマーバインダとを含有し、さらに必要に応じて導電剤を含有している。
【0050】
負極材料としては、例えば、上記したハードカーボンおよびソフトカーボンや、グラファイトなどが挙げられる。
【0051】
グラファイトとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛化メソフェーズカーボン繊維、黒鉛ウィスカ、黒鉛化炭素繊維、ピッチ、コークスなどの縮合多環炭化水素化合物の熱分解物などのグラファイト系炭素材料が挙げられる。また、グラファイトは、粉末状のもの(例えば、平均粒径が25μm以下のもの)が好ましく用いられる。
【0052】
これら負極材料は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0053】
また、これら負極材料のなかでは、好ましくは、ソフトカーボンと、グラファイトとが挙げられ、さらに好ましくは、ソフトカーボンとグラファイトとの併用が挙げられる。
【0054】
負極材料の含有割合は、負極側塗工層100質量部に対して、例えば、80〜99質量部、好ましくは、85〜95質量部である。
【0055】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられる。
【0056】
これらポリマーバインダは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0057】
また、これらポリマーバインダのなかでは、好ましくは、PVdFが挙げられる。
【0058】
ポリマーバインダの含有割合は、負極側塗工層100質量部に対して、例えば、1〜20質量部、好ましくは、5〜15質量部である。
【0059】
導電剤としては、例えば、上記した導電剤が挙げられる。
【0060】
これら導電剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0061】
導電剤の含有割合は、負極側塗工層100質量部に対して、例えば、0〜20質量部、好ましくは、1〜10質量部である。
【0062】
負極側集電体9は、例えば、上記した金属箔から形成される。
【0063】
これら金属箔のなかでは、好ましくは、銅箔が挙げられる。
【0064】
金属箔の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、5〜50μmである。
【0065】
そして、負極3を形成するには、例えば、上記した負極材料、ポリマーバインダ、さらに、必要に応じて、導電剤などを、上記した割合で配合し、溶媒中で攪拌してスラリー(固形分:10〜60質量%)を得る。
【0066】
次いで、スラリーを負極側集電体9上に塗工(塗布)し、負極側塗工層10を形成した後、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、矩形状、円形状)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、負極3が得られる。
【0067】
溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられ、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0068】
負極3の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、5〜70μmである。
【0069】
また、負極3の大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、10〜200mm、長手方向と直交する方向(幅方向)長さが、例えば、10〜200mmであり、例えば、円形状の場合には、直径が、例えば、5〜30mm、好ましくは、5〜15mmである。
【0070】
セパレータ4は、第1セパレータの一例としての正極側セパレータ11と、第2セパレータの一例としての負極側セパレータ12と、第3セパレータの一例としての中間セパレータ13とを備えている。
【0071】
正極側セパレータ11は、正極側塗工層8に隣接配置され、例えば、セルロースなどの天然繊維などから形成されている。
【0072】
このような正極側セパレータ11のなかでは、好ましくは、セルロースから形成されるセパレータが挙げられる。
【0073】
また、正極側セパレータ11には、気孔が形成されており、その気孔径は、例えば、3〜50μm、好ましくは、5〜25μmである。
【0074】
また、正極側セパレータ11の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、10〜100μmである。
【0075】
負極側セパレータ12は、負極側塗工層10に隣接配置され、例えば、負極活性阻害物質を捕捉するための捕捉剤と、ポリマーバインダとを含有している。
【0076】
捕捉剤としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)などのアルカリ金属の炭酸塩、酸化マグネシウム(MgO)などのアルカリ土類金属の酸化物などが挙げられる。
【0077】
このような捕捉剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0078】
また、これら捕捉剤のなかでは、好ましくは、炭酸リチウムが挙げられる。
【0079】
捕捉剤の含有割合は、負極側セパレータ100質量部に対して、例えば、60〜95質量部、好ましくは、70〜90質量部である。
【0080】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられる。
【0081】
これらポリマーバインダは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0082】
また、これらポリマーバインダのなかでは、好ましくは、PTFEが挙げられる。
【0083】
ポリマーバインダの含有割合は、負極側セパレータ100質量部に対して、例えば、5〜40質量部、好ましくは、10〜30質量部である。
【0084】
そして、負極側セパレータ12を形成するには、例えば、上記した捕捉剤と、ポリマーバインダとを、上記した割合で配合した混合物を調製する。
【0085】
次いで、その混合物を、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して捕捉剤含有シートを得る。次いで、捕捉剤含有シートを所定の形状(例えば、矩形状、円形状)に裁断した後、必要によりさらに乾燥させる。これにより、負極側セパレータ12が得られる。
【0086】
中間セパレータ13は、正極側セパレータ11と負極側セパレータ12との間に配置され、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体など)などの有機繊維などから形成されている。
【0087】
このような中間セパレータ13のなかでは、好ましくは、ポリエチレンから形成されるセパレータが挙げられる。
【0088】
このような中間セパレータ13には、気孔が形成されており、その気孔径は、例えば、0.2〜1μm、好ましくは、0.2〜0.8μmである。
【0089】
また、中間セパレータ13の厚みは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、ラボスケールでは、例えば、5〜50μmである。
【0090】
また、これら正極側セパレータ11、負極側セパレータ12、および中間セパレータ13の大きさは、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、例えば、矩形状の場合には、長手方向長さが、例えば、15〜220mmであり、幅方向長さが、例えば、15〜220mmであり、例えば、円形状の場合には、直径が、例えば、10〜60mm、好ましくは、20〜20mmである。
【0091】
このようなセパレータ4は、中間セパレータ13が正極側セパレータ11と負極側セパレータ12との間に挟まれるように配置されており、中間セパレータ13の一方側の面と、正極側セパレータ11とが接触し、中間セパレータ13の他方側の面と、負極側セパレータ12とが接触している。
【0092】
また、負極側セパレータ12、中間セパレータ13、および、正極側セパレータ11の厚みの比は、例えば、1〜4:1:1〜4、好ましくは、2〜3:1:2〜3である。
【0093】
非水電解質5は、リチウムイオンを含む有機溶媒であって、リチウム塩を有機溶媒に溶解させることにより調製されている。
【0094】
リチウム塩としては、ハロゲンを含むアニオン成分を有し、例えば、LiClO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiCSO、LiC17SO、LiB[C(CF−3,5]、LiB(C、LiB[C(CF)−4]、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFCO、LiN(CFSOなどが挙げられる。なお、上式中[C(CF−3,5]は,フェニル基の3位と5位に、[C(CF)−4]はフェニル基の4位に、それぞれ−CFが置換されているものを意味する。
【0095】
これらリチウム塩は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0096】
また、これらリチウム塩のなかでは、好ましくは、LiPFが挙げられる。
【0097】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート誘導体、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジオキソラン、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,3−プロパンスルトン、4,5−ジヒドロピラン誘導体、ニトロベンゼン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体、シドノン化合物、アセトニトリル、ニトロメタン、アルコキシエタン、トルエンなどが挙げられる。
【0098】
これら有機溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0099】
また、これら有機溶媒のなかでは、好ましくは、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられ、さらに好ましくは、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒が挙げられる。
【0100】
非水電解質5におけるリチウム塩の濃度は、例えば、0.5〜5mol/L、好ましくは、0.5〜2mol/Lである。
【0101】
このようなハイブリッドキャパシタ1を調製するには、まず、上記した正極2、負極3およびセパレータ4を積層する。詳しくは、中間セパレータ13を、正極側セパレータ11と負極側セパレータ12とで挟み、その後、正極側セパレータ11に正極側塗工層8が隣接するように正極2を積層し、負極側セパレータ12に負極側塗工層10が隣接するように負極3を積層する。
【0102】
次いで、正極側集電体7および負極側集電体9と、集電タブとを接合し、得られた積層体を、セル槽6(例えば、アルミニウム製のラミネートフィルムなど)に収容する。そして、セル槽6に非水電解質5を注入する。
【0103】
以上により、ラミネートセルとしてハイブリッドキャパシタ1が調製される。
【0104】
このハイブリッドキャパシタ1では、正極2の電位を4.2V vs Li/Li以上などの高電位とした場合に、正極2の不可逆容量の発現に起因して、非水電解質5に含まれるアニオン(例えば、LiPFに含まれるPFなど)から、負極の電気容量を低下させる負極活性阻害物質が生成する。
【0105】
負極活性阻害物質が生成する過程として、例えば、負極活性阻害物質であるHFが生成する過程を、以下に説明する。
【0106】
まず、正極2および負極3に所定電圧(すなわち、4.2V vs Li/Li以上)を印加すると、非水電解質5内では、例えば、正極2や非水電解質5に含まれる水分や有機物から、下記式(1)(2)に示すように、プロトン(H)が生成する。
【0107】
(1)2HO→O+4H+4e
(2)R−H→R+H+e(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、非水電解質5に含まれるアニオン(例えば、LiPFに含まれるPFなど)と反応し、HFが生成する(下記式(3)参照。)。
【0108】
(3)PF+H→PF+HF
HFのような負極活性阻害物質は、負極3の電気容量を低下させて、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度を低下させるおそれがある。
【0109】
しかし、ハイブリッドキャパシタ1では、負極側セパレータ12が捕捉剤(例えば、炭酸リチウム)を含有するので、正極2の不可逆容量の発現に起因して負極活性阻害物質が生成しても、その負極活性阻害物質を負極側セパレータ12が捕捉する。そのため、ハイブリッドキャパシタ1のエネルギー密度の低下を防止することができる。
【0110】
また、ハイブリッドキャパシタ1では、高電圧で充放電を繰り返した場合に、正極2において、非水電解質5の酸化分解などによってガス(例えば、CO)が発生する。一方、負極3において、非水電解質5に含まれるリチウムイオンから、リチウム析出物(リチウムデンドライト)が析出する。
【0111】
このハイブリッドキャパシタ1では、気孔径が、例えば、3〜50μmの正極側セパレータ11が正極側塗工層8に隣接配置されているので、正極2において発生したガスが正極側セパレータ11を通過し、ハイブリッドキャパシタ1外に除去される。そのため、ハイブリッドキャパシタ1内にガスが滞留することを抑制でき、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0112】
また、ハイブリッドキャパシタ1では、気孔径が、例えば、0.2〜1μmの中間セパレータ13が、正極側セパレータ11と負極側セパレータ12との間に配置されているので、中間セパレータ13により、負極3において析出するリチウム析出物の通過が遮断される。そのため、リチウム析出物がセパレータ4を貫通することを防止でき、正極2と負極3との短絡を防止できる。その結果、クーロン効率の向上を図ることができる。
【0113】
従って、ハイブリッドキャパシタ1は、クーロン効率の向上を図ることができながら、エネルギー密度の向上を図ることができる。これにより、ハイブリッドキャパシタ1の寿命の向上を図ることができ、コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0114】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
1.正極の作製
メソフェーズ系ピッチ(三菱ガス化学株式会社製 AR樹脂)を大気中350℃で2時間加熱した。次いで、加熱後のピッチを、窒素雰囲気下800℃で2時間予備焼成した。
【0115】
これにより、ソフトカーボンを得た。得られたソフトカーボンをアルミナ製の坩堝に入れ、ソフトカーボン1質量部に対して4質量部のKOHを加えた。
【0116】
次いで、ソフトカーボンを、窒素雰囲気下800℃で2時間、KOHとともに焼成することにより、KOH賦活した。次いで、KOH賦活したソフトカーボンを超純水で、廃液が中性になるまで洗浄した。これにより、KOH賦活ソフトカーボン(正極材料)を得た。洗浄後、KOH賦活ソフトカーボンを乳鉢で粉砕し、篩(32μm)で分級した。そして、ほぼ全てのKOH賦活ソフトカーボンが篩を通過できる粒径になるまで、乳鉢での粉砕操作を繰り返した。
【0117】
分級後、KOH賦活ソフトカーボン粉末と、導電剤(カーボンブラック、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク製 VXC−72R)と、ポリマーバインダ(株式会社クレハ製 PVdF)とを、固形分75:8.3:16.7の質量割合で、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒に投入し、室温(25℃〜30℃)で12時間攪拌することにより、混合物のスラリー(固形分:30質量%)を得た。
【0118】
次いで、得られたスラリーを厚み15μmのアルミニウム箔(正極側集電体)の表面に塗工し、80℃で12時間乾燥させて、正極側塗工層を形成した。次いで、乾燥後のアルミニウム箔を、ロールプレスで加圧延伸することにより、アルミニウム箔を除く正極側塗工層(正極活物質の塗工層)の厚さが72μmの電極シートを得た。
【0119】
次いで、電極シートを、直径Φ10mmの円形状に裁断し、正極を作製した。(電極体積:約5.7mm
2.負極の作製
人造黒鉛と、ソフトカーボンと、ポリマーバインダ(株式会社クレハ製 PVdF)とを、固形分67.5:22.5:10の質量割合で、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒に投入し、室温(25℃〜30℃)で12時間攪拌することにより、混合物のスラリー(固形分:40質量%)を得た。
【0120】
次いで、得られたスラリーを厚み10μmの銅箔(負極側集電体)の表面に塗工し、80℃で12時間乾燥させて、負極側塗工層を形成した。次いで、乾燥後の銅箔を、ロールプレスで加圧延伸することにより、銅箔を除く負極側塗工層(負極活物質の塗工層)の厚さが14μmの電極シートを得た。
【0121】
次いで、電極シートを、直径Φ10mmの円形状に裁断し、負極を作製した。(電極体積:約1.1mm
3.セパレータの作製
(3−1)正極側セパレータの作製
厚さ20μmのセルロース製セパレータ(ニッポン高度紙製 TF40−50)(気孔径約5μm)を、直径Φ25mmの円形状に裁断することにより、正極側セパレータを作製した。
(3−2)中間セパレータの作製
厚さ9μmのポリエチレン製セパレータ(旭化成社製 ND309)(気孔径0.2μm)を、直径Φ25mmの円形状に裁断することにより、中間セパレータを作製した。
(3−3)負極側セパレータの作製
炭酸リチウム(LiCO)粉末(キシダ化学社製 平均粒径85.0μm)と、ポリマーバインダ(ダイキン工業株式会社製 PTFEディスパージョン)とを、固形分80:20の質量割合で、乳鉢で混練することにより、それらの混合物を得た。
【0122】
次いで、混合物を、手動ロールプレスを用いて加圧延伸することにより、厚み20μmの捕捉剤含有シートを得た。次いで、捕捉剤含有シートを、直径Φ25mmの円形状に裁断した後、乾燥機に搬入し、120℃で12時間真空乾燥した。そして、乾燥機内を窒素パージした後、捕捉剤含有シートを、ドライAr雰囲気のグローブボックスへ大気に触れないように搬入した。以上の操作により、負極側セパレータを作製した。
4.電解液の調製
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)に、LiPF(リチウム塩)を、1mol/L溶解することにより電解液を調製した。
5.ラミネートセル(試験セル)の組み立て
上記の正極1枚、負極1枚、セパレータ3枚(正極側セパレータ、中間セパレータ、負極側セパレータ)を積層した。具体的には、まず、中間セパレータを、正極側セパレータと負極側セパレータとで挟み、その後、正極側セパレータに、正極側塗工層が隣接するように正極を積層し、負極側セパレータに、負極側塗工層が隣接するように負極を積層した。
【0123】
次いで、積層された正極、負極および各セパレータを、セル槽に収容し、電解液(1cc)を注入した。以上の操作により、試験セルを組み立てた。
比較例1
中間セパレータを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、試験セルを調製した。
比較例2
正極側セパレータを、中間セパレータと負極側セパレータとで挟み、中間セパレータに、正極側塗工層が隣接するように正極を積層し、負極側セパレータに、負極側塗工層が隣接するように負極を積層した点以外は、実施例1と同様にして、試験セルを調製した。
充放電試験
上記実施例および各比較例で組み立てた試験セルに対して、以下に示す方法により、充放電試験(充放電サイクル)をそれぞれ実施した。
(1)1サイクル目
セル電圧が4.8Vに上昇するまで1mA/cmで定電流充電した。充電後、電流値が0.3mA/cmに降下するまでセル電圧を4.8Vに保持し、その後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cmで定電流放電した。
(2)2〜6サイクル目
セル電圧が4.6Vに上昇するまで1mA/cmで定電流充電した。充電後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cmで定電流放電した。
(3)7サイクル目以降
セル電圧が4.6Vに上昇するまで5mA/cmで定電流充電した。充電後、セル電圧が2.3Vに降下するまで5mA/cmで定電流放電した。
2.評価
図2に、実施例および各比較例の充放電サイクルにおけるハイブリッドキャパシタ(試験セル)のクーロン効率(充電容量に対する放電容量の比)の変化を示す。
【0124】
図3に、実施例および各比較例の充放電サイクルにおけるハイブリッドキャパシタ(試験セル)のエネルギー密度の変化を示す。
【0125】
なお、クーロン効率は、試験セルのサイクル毎の放電容量/充電容量により算出した。
【0126】
また、エネルギー密度の変化は、正極・負極の電極体積に対する試験セルのサイクル毎のエネルギーの比であって、7サイクル目以降のエネルギー密度の変化により算出した。
考察
(1)クーロン効率について
図1に示すように、比較例1では、充放電サイクルにおける約700サイクル付近において、正極と負極との短絡(クーロン効率が著しく低い点)が確認された。
【0127】
一方、実施例1および比較例2では、正極と負極との短絡が確認されなかった。
(2)エネルギー密度について
図2に示すように、比較例1および2では、充放電サイクルの繰り返しに伴ない、エネルギー密度の低下が確認された。
【0128】
一方、実施例1では、充放電サイクルを繰り返しても、高いエネルギー密度が良好に維持されることが確認された。
【符号の説明】
【0129】
1 ハイブリッドキャパシタ
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 非水電解質
11 正極側セパレータ
12 負極側セパレータ
13 中間セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な材料からなる負極と、
リチウムイオンを含む非水電解質と、
前記正極と前記負極との間に介在されるセパレータとを備える電気化学キャパシタであって、
前記セパレータは、
前記正極に隣接配置され、前記正極において発生するガスの通過を許容する第1セパレータと、
前記負極に隣接配置され、前記非水電解質に含まれるアニオンから誘導される負極活性阻害物質を捕捉する第2セパレータと、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとの間に配置され、前記非水電解質に含まれるリチウムイオンから誘導され、前記負極において析出するリチウム析出物の通過を遮断する第3セパレータとを備えることを特徴とする、電気化学キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−73961(P2013−73961A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209776(P2011−209776)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】