電気化学尿素センサおよびその製造方法
試料中の尿素を検出するための電気化学センサは、酵素層および外側拡散層を含む複合膜を含む。外側拡散層は、酵素層と分析試料との間に配置され、酵素層と分析試料との直接の接触を防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年2月11日出願の米国特許出願第10/364,840号明細書の一部継続出願であり、その開示は本明細書で参照することにより援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、電気化学センサ、詳しくは、分析試料中の尿素を測定するセンサの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
研究者および医師はしばしば生体試料中のさまざまな被分析物の濃度を測定する必要がある。これらの被分析物としては、溶解ガス(二酸化炭素)、イオン(例えば水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、アンモニウム、およびマグネシウム)、および生物活性分子(例えば尿素)が挙げられる。多くの場合、生体試料は、外来診療中または手術を受けている間の患者から取られた体液(例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および/または尿)である。適切な診断および治療はしばしば、これらの測定の精度およびそれらが得られる速度によって決まる。
【0004】
電気化学センサシステムが、生体試料中の被分析物の濃度を測定するために使用されうる分析ツールである。電気化学センサは、少なくとも1つの半透過性膜によって分析試料から分離される、金属電極などの物理的変換器を含む。分析試料中の生体代謝産物(例えば、糖質、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、または尿素など)を検出および/または測定する酵素センサは、半透過性膜を覆う酵素層を含む。酵素層は、目的とする被分析物と反応し、半透過性膜を通じて移動し、電極によって検出されうる化学副産物を生成する少なくとも1つの酵素を含有する。酵素センサの例が尿素センサであるが、これは、尿素を加水分解してアンモニウムイオンを形成するウレアーゼなどの酵素を含有しうる。
【0005】
既存の尿素センサは、他のタイプのセンサ(例えば、イオンセンサ)と比べ一般に寿命が短い。これは、既存の尿素センサの酵素層が分析試料と直接接触しており、これにより膜の酵素および他の成分が試料および/または試料中の汚染物質へ浸出し、酵素層における酵素を分解または破壊することによる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要約
本発明は、酵素層が試料と直接接触しない尿素センサを提供し、これにより試料中の尿素濃度の複数の連続した測定が可能となる。また、本発明の尿素センサは小型化に適しており、センサカードの全体的な寿命を損なうことがなく、複数被分析物の連続長期分析用に使用される他の小型化電気化学センサを含むセンサカードへ組込まれうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、一態様において、本発明は、電極と、酵素層と、外側拡散層とを含む試料中の尿素を検出するためのセンサである。外側拡散層は尿素に対して透過性であり、酵素層と試料との間に配置されている。外側拡散層は、酵素層と試料との直接の接触を防ぐことによって、酵素の分解および/または損失を阻止し、それによって尿素センサの寿命を延長する。尿素センサは、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および/または尿試料の尿素濃度を測定するために使用されうる。
【0008】
本発明の本態様の実施形態は以下の特徴を含みうる。電極は、銀/塩化銀電極などの金属電極でありうる。酵素層は、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒するウレアーゼなどの酵素を含有しうる。酵素層は、例えば、ポリペプチド(例えば、グルタチオン)および不活性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)などの1つもしくはそれ以上の酵素安定剤をも含有しうる。特定の実施形態において、酵素層は、グルタチオンに架橋結合されたウレアーゼを含む。他の実施形態において、酵素層は、ウレアーゼおよびグルタチオンの少なくとも1つに架橋結合されたウシ血清アルブミンなどの1つもしくはそれ以上の不活性タンパク質を含む。外側拡散層は、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物などのポリマーを含みうる。
【0009】
一部の実施形態において、尿素センサは、電極と酵素層との間に配置されたイオン選択膜をさらに含む。例えば、イオン選択膜は、アンモニウム選択イオノフォアが配置されたポリマーマトリクスなどのアンモニウムイオン選択膜であってもよい。ポリマーマトリクスは、例えば、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物を含みうる。適切なアンモニウムイオン選択イオノフォアの例としては、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリトリアコンタン、ベンゾクラウンエーテル、環状デプシペプチド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0010】
別の態様において、本発明は、基板の中または上に配置された上記の1つもしくはそれ以上のセンサを含むセンサカードである。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は上記のセンサを形成するための方法を提供する。1つの方法では、この方法は、電極を用意するステップと、電極の少なくとも1つの表面に酵素層を塗布するステップと、酵素層上に外側拡散層を塗布するステップとを含む。別の方法では、この方法は、電極を用意するステップと、電極の少なくとも1つの表面にイオン選択膜を塗布するステップと、イオン選択膜に酵素層を塗布するステップと、酵素層上に外側拡散層を塗布するステップとを含む。
【0012】
本発明の前記および他の目的、態様、特徴、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0013】
図面の簡単な説明
図面において、同じ参照文字は一般に異なる図面の全体を通じて同じ部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、一般に本発明の原理の説明に重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
説明
本発明による電気化学センサは電気化学センサシステムに組込むことができる。図1を参照すると、本発明による一実施形態において、電気化学センサシステム1は、生体試料が電気化学センサシステム1へ導入される注入口2を有する。蠕動ポンプ4が、体液試料などの試料を注入口2を通じて電極カード6へ移動させる。電極カード6は、試料中の対象の被分析物を検出および測定する1つもしくはそれ以上の電極8を含有する。電気的インターフェース10は電極カード6をマイクロプロセッサ12に接続する。電極カード6からの信号がマイクロプロセッサ12に移動し、信号の保存および表示を可能にする。マイクロプロセッサ12からの信号が電極カード6に移動し、電極の分極電圧などの測定条件の制御を可能にする。本発明による一実施形態において、試料注入口2および電極カード6は使い捨てカートリッジ13内に含まれており、これは電気化学センサシステム1の他の要素から使用後に取外され、交換されうる。
【0015】
図2を参照すると、本発明による一実施形態において、電極カード6は、ポリ塩化ビニル(PVC)で作られた硬質の実質的に長方形のカードを含む。チャネル20が電極カード6内に配置されており、それを通じて生体試料または基準溶液が流れうる。1つもしくはそれ以上の電極8をチャネル20内に埋込むことができる。試料が電極カード6を通過すると、試料はチャネル20を通じて電極8を越えて流れ、対象の被分析物の検出および/または測定を可能にする。
【0016】
図2を参照すると、電極カード6へ組込まれうる電極8は、イオン選択電極(ISE)100、溶解ガスを分析するための電極(ガス電極)、および酵素ベースの検出システムを使用する電極(酵素電極)を含む。例えば、電極はナトリウム26、カルシウム28、カリウム30、pH32、リチウム34、マグネシウム36、アンモニウム38、二酸化炭素40、および尿素42を検出しうる。
【0017】
図3を参照すると、本発明による一実施形態において、ISE100は、金属要素105、内側溶液層110、およびポリマー膜115を含む。金属要素105は電極カード6のPVCに埋込まれており、内側溶液層110は金属要素105の露出端を覆う。内側溶液層110は、例えば、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)バッファーを含有しうる。ポリマー膜115は、電極カード6のチャネル20を通過する分析試料(例えば、体液試料)から内側溶液層110を分離するイオン選択膜である。ポリマー膜115の組成は、特定のイオンに対するISE100の選択性を決定する。本発明による特定の実施形態において、PVC−COOHがポリマー膜115の成分である。
【0018】
再び図2を参照すると、分析試料中のイオンの濃度を測定するには、ISE100は基準電極44と並行して作動しなければならない。ISE100が検出するように意図されているイオンが分析試料中に存在する場合は、図3に示されている内側溶液層110における被分析物の濃度と分析試料中のその濃度との差に依存する電位が、ポリマー膜115に発生する。ISE100と基準電極44との間の電位差は、分析試料中の測定イオンの濃度の対数の変化に直接比例している。
【0019】
図4を参照すると、本発明による一実施形態において、ガス電極の1つのタイプである二酸化炭素(CO2)電極40は、金属要素125、内側溶液層130、およびポリマー膜135を含む。CO2電極40は、CO2電極40の内側溶液層130が重炭酸バッファーであることを除いて、機能的にISE100とほぼ同じである。図2を参照すると、ISE100とは異なり、CO2電極40はpH電極32と並行して作動しなければならない。
【0020】
再び図4を参照すると、CO2はCO2電極40のポリマー膜135を通過すると、内側溶液層130の重炭酸バッファーに溶解し、バッファーpHを変化させ、これによりCO2電極40の電位が変化する。しかし、pH電極32の内側溶液層は分析試料中のCO2によって影響されず、そのためpH電極の電位は一定のままである。CO2電極40とpH電極32との間の電位差は、試料中のCO2の濃度に比例する。本発明による一実施形態において、PVC−COOHがCO2電極40のポリマー膜135を構成していてもよい。
【0021】
図5は本発明による別の実施形態の、分析試料中の生体代謝産物(例えば、糖質、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、または尿素など)の存在および濃度を検出するための酵素電極150を示す。酵素電極150は、電極カード6に埋込まれた金属要素155、およびチャネル20を通じて電極カード6に流れる金属要素155と分析試料との間に配置されている複合膜160を含む。複合膜160は、チャネル20に隣接した外側拡散膜165、酵素層170、イオン選択ポリマー膜175、および金属要素155に隣接した内側溶液層180を含む。外側拡散膜165は、被分析物の酵素層170への拡散を制御し、酵素電極150の他の成分をチャネル20における分析試料との直接の接触から保護する。酵素層170は、特定の被分析物と反応する少なくとも1つの酵素、または、いくつかの酵素、タンパク質、および安定剤の混合物を具備しうる。被分析物が外側拡散膜165を通じて拡散する場合には、これは酵素170における酵素と反応し、化学副産物を生じうるが、これはイオン選択ポリマー膜175を通じて移動しうる。尿素センサの場合、化学副産物は、例えば、アンモニウムイオンでありうる。分析試料中の対象の被分析物の濃度に比例する化学副産物の濃度に依存する電位が複合膜160に発生する。本発明による一実施形態において、PVC−COOHがイオン選択ポリマー膜175を構成していてもよい。
【0022】
特定の実施形態において、本発明による尿素センサは、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒する酵素を含み、次いでアンモニウムイオンがアンモニウムイオン選択電極によって検出される。適切な酵素の例がウレアーゼである。図5を参照すると、尿素センサの複合膜160は、外側拡散膜165、ウレアーゼを含有する酵素層170、アンモニウムイオン選択ポリマー膜175、および金属要素155に隣接した内側溶液層180を含む。
【0023】
外側拡散膜165は、いくつかの機能を果たすように調製される。第一に、外側拡散膜165は、保護用の外側拡散膜165がなければ起こるであろう酵素層上を流れる較正溶液または試料の流れによって酵素層170が洗い流されてしまうことを防ぎ、酵素層170をイオン選択ポリマー膜175に固定する。第二に、外側拡散膜165は、試料から酵素層170への汚染物質の拡散を制限し、センサの寿命を有利に延長する。特定の実施形態において、外側拡散膜165は、尿素の酵素層170への拡散を制限するように調製され、これにより、試料中の尿素より少ないが、これに比例する量の尿素が酵素と反応することを可能にする。酵素層170に達する尿素の量の制限は、尿素センサの線形範囲を拡大するだけではなく、酵素層170のpHが増加するのを抑制し、これによりさらにセンサの上部線形範囲を拡大する。
【0024】
外側拡散膜165は、一般に1つもしくはそれ以上のポリマーを含む。適切なポリマーとしては、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー(例えば、デラフェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont De Nemours&Co.,Wilmington,DE)によってナフィオン(NAFION)の商標で販売されているペルフルオロスルホン酸イオノマー)、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル誘導体(例えば、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、および水酸化ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物およびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。外側拡散膜165での使用に好ましいポリマーは、親水性ポリウレタン(例えば、マサチューセッツ州ウォバーンのテルメディックス社(Thermedics,Inc.,Woburn,MA)から入手可能)である。一実施形態において、外側拡散膜165は2つもしくはそれ以上のポリマーの混合物またはコポリマーを含む。別の実施形態において、外側拡散膜165は、同一のまたは異なるポリマーおよび/または同一のまたは異なるコポリマーの2つもしくはそれ以上の別個の層を含む。
【0025】
酵素層170は、例えば、ウレアーゼなど尿素のアンモニウムイオンに対する反応を触媒する酵素を含む。一実施形態において、酵素層170は、例えば、1種以上の不活性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンを含む血清タンパク質)、ポリペプチド(例えば、グルタチオン)などの酵素安定剤と溶媒を含む。特定の実施形態において、グルタチオンが1種以上の不活性タンパク質とともに使用され、酵素層170におけるウレアーゼを安定化する。また、ウレアーゼを、架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)を使用してグルタチオンおよび/または1種以上の不活性タンパク質に架橋結合させ、酵素および/または安定剤が酵素層170からの移動するのを防いでもよい。架橋により、酵素層170もその下のイオン選択ポリマー層175に固定される。酵素層170の製造中、酵素安定剤は、一般に、架橋剤の添加に先立って酵素含有溶液に添加され、安定剤が酵素と架橋結合することを確実にする。
【0026】
アンモニウムイオン選択ポリマー層175は、ポリマーマトリクスに配置されたアンモニウム選択イオノフォアを含む。適切なイオノフォアとしては、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリトリアコンタン、ベンゾクラウンエーテル(例えば、Anal.Chem.、2000年、72、4683−4688頁を参照)環状デプシペプチド(例えば、Anal.Chem.、2003年、75、152−156頁を参照)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーマトリクスは、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル誘導体(例えば、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、および水酸化ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物およびコポリマーを含みうる。また、アンモニウムイオン選択ポリマー層175は、本明細書に記載された可塑剤および脂溶性塩添加剤などの他の添加剤を含有しうる。
【0027】
再び図3を参照すると、ISEのポリマー膜は、対象の被分析物のためにISE100の選択性を調節する。ポリマー膜115は、少なくとも4つの要素:ポリマー、可塑剤、イオノフォア、および脂溶性塩添加剤、を含む。
【0028】
本発明による一実施形態において、PVC−COOHはポリマー膜115のポリマー成分である。PVC−COOHは、塩素原子の一部がカルボキシル基(COOH)によって置換されたポリ塩化ビニル(PVC)ポリマーである。本発明による実施形態において、PVC−COOHは、0.1〜5重量%のCOOHを含有し、本発明の特定の実施形態において、PVC−COOHは、1.8重量%のCOOHを含有しうる。PVC−COOHは、分析試料中の脂溶性陰イオン性種(例えば、鎮痛剤および麻酔剤など)がポリマー膜115に浸透し、かつISE100に干渉するのを防ぐ。かかる脂溶性陰イオン性種には、例えば、チオペンタールナトリウム(チオペンタール)、フェニトイン、イブプロフェン、フェノプロフェン、サリチル酸塩、バルプロ酸塩、およびε−アミノカプロン酸塩などが含まれる。PVC−COOHは、別のポリマー(例えば、HMW−PVCまたはポリウレタンなど)と混合され、ポリマー膜のポリマー成分を形成してもよい。本発明の特定の実施形態においては、PVC−COOHは別のポリマーと混合されておらず、ポリマー膜の唯一のポリマー成分である。
【0029】
PVC−COOHを含むポリマー膜115は、固体プラットフォームへの付着力の増強も示すが、これは電気化学センサの長い寿命および電位の安定性に重要である。また、ポリマー膜115にPVC−COOHを使用する電気化学センサは、以下の実施例6によって示されているように、比較的極性を有するポリマー膜115によって与えられる膜抵抗の大幅な低減により、より優れたセンサ測定の潜在的安定性および再現性を示す。PVC−COOHセンサの精度および正確度は、以下の実施例7によって示されているように、高分子量ポリ塩化ビニル(HMW−PVC)に基づくセンサなどの周知のISEと同等である。
【0030】
ポリマー膜115の可塑剤成分は、有効なイオン移動を得るために必要な膜内におけるイオン移動度を提供する。可塑剤はポリマー成分と適合しなければならず、イオノフォアの溶媒でなければならない。可塑剤は、ポリマー膜115の表面と接触する水性試料に大幅に移動することがないように、水中で十分に不溶性でもなければならない。可塑剤は電極の寿命を延長するために、実質的に非揮発性であることも望ましい。有用な可塑剤としては、セバシン酸ビス(2−エチルへキシル)(DOS)およびo−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)が挙げられる。
【0031】
ポリマー膜115において使用されるイオノフォアは、特定のイオンと選択的に結合する能力がある。イオノフォアのこの特徴により、ISEのイオン選択性が生じる。ナトリウムISEの適切なイオノフォアの例としては、メチルモネンジンエステル、カリックスアレーン誘導体、および他のナトリウム感受性化合物が挙げられる。単環式抗生物質(例えば、バリオマイシンなど)をカリウムISE用のイオノフォアとして使用することができる。カルシウムISE用のイオノフォアは、例えば、(−)−(R,R)−N,N’−(ビス(11−エトキシカルボニル)ウンデシル)−N,N’−4,5−テトラメチル−3,6−ジオキサオクタンジアミド、ジエチルN,N’−[(4R,5R)−4,5−ジメチル−1,8−ジオキソ−3,6−ジオキサオクタメチレン]−ビス(12−ドデカン酸メチルアミノ)(ETH1001)でありうる。pH電極および/または二酸化炭素電極用の適切なイオノフォアの例は、トリドデシルアミン(TDDA)である。
【0032】
ポリマー膜115に使用される脂溶性塩添加剤は、膜抵抗を削減し、かつ陰イオン干渉を削減するために役立つ。有用な脂溶性塩添加剤としては、例えば、カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸(KTpClPB)、およびカリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸(KTTFPB)が挙げられる。しかし、脂溶性塩添加剤は、ポリマー膜115の機能に必ずしも必須ではなく、一定の被分析物が分析対象となる場合には省略できる。
【0033】
ポリマー膜115の脂溶性陰イオン薬剤不純物を拒絶する効率は、ポリマー膜115の組成のPVC−COOH/可塑剤比を最適化し、かつイオノフォアおよび脂溶性塩添加剤のタイプおよび比を適切に選択することによって強化される。例えば、ナトリウムISE用のポリマー膜115は、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、2−8重量%のカリックスアレーン誘導体、および1−3重量%のKTTFPBを含有しうる。カリウムISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、1−5重量%のバリノマイシン、および0−1重量%のKTpClPBを含有しうる。カルシウムISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%の1:1のDOS/NPOE、1−5重量%のETH1001、および0.2−2重量の%KTpClPBを含有しうる。pHまたはCO2ISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、2−7重量%のTDDA、および1−4重量%のKTpClPBを含有しうる。図6は、適切なポリマー膜115成分の特定の実施形態、およびそれらのそれぞれのさまざまな電気化学センサの重量比の例を示す。
【0034】
さらに図3を参照すると、本発明によるポリマー膜115は、適切な量のポリマー、可塑剤、イオノフォア、および脂溶性塩添加剤を溶媒、一般的にはテトラヒドロフラン(THF)またはシクロヘキサノン、に溶解し、この溶液を電極カード6に埋込まれた金属要素105の露出表面に塗布することによって形成されうる。例えば、カリウムISEは、図6に記載された比に従ってPVC−COOH(1.8重量%のCOOH)、DOS、バリノマイシン、およびKTpClPBを混合し、全質量を630〜650mgにすることによって製造されうる。混合物は3〜3.5mL THF中に溶解され、この溶液の0.75μLが電極カード6に埋込まれた金属要素105(例えば、塩素化銀ワイヤ)の露出端に塗布される。溶媒が蒸発したら、同量の膜溶液を十分な乾燥時間をおいてさらに2回塗布する。最後の塗布の後溶媒が蒸発したら、ポリマー膜115が形成され、電極カード6に結合される。
【0035】
再び図5を参照すると、一実施形態において、本発明による尿素センサは、まず内側溶液層180(例えば、MESバッファー溶液)を電極カード6に埋込まれた金属要素155(例えば、銀/塩化銀または白金)の露出面に塗布することによって製造される。次に、ノナクチン、ポリ塩化ビニル、および1つもしくはそれ以上の可塑剤の溶液を内側溶液層180上に塗布し、イオン選択ポリマー層175を形成する。酵素層170は、ウレアーゼ、グルタチオン、ウシ血清アルブミン、およびグルタルアルデヒド溶液をイオン選択ポリマー層175の表面に塗布することによって形成される。最後に、親水性ポリウレタンの溶液を酵素層170上に塗布し、外側拡散層165を形成する。
【0036】
本発明によるISEでは、試料中の被分析物の濃度の変化に起因する分析試料のミリボルト(mV)で測定される電位の変化が測定される。同様に、本発明によるガス電極では、試料中に溶解されたガスの分圧の変化に起因する分析試料の電位の変化が測定される。当業者であれば、電位値がネルンストの式による濃度または分圧値に関係があることを承知している。本発明による特定の実施形態においては、電極によって測定された電位値をネルンストの式を使用することによって被分析物の濃度または分圧値に変換するソフトウェアを電気化学センサシステムに含めることができる。
【0037】
別の態様において、本発明は、脂溶性陰イオン性種(例えば、チオペンタールなど)の存在下で被分析物を検出および/または測定する際に、脂溶性陰イオン性種による干渉を受けることなく体液(例えば、血液)中の被分析物の存在を検出および/または濃度を測定するための方法である。本発明のこの方法は、センサのポリマー膜のポリマー成分としてPVC−COOHを含む体液中の対象被分析物を検出および/または測定するための電気化学センサを提供する。対象被分析物および脂溶性陰イオン性汚染物質を含有する体液試料が、センサのポリマー膜のポリマー成分としてPVC−COOHを含む電気化学センサと接触して配置される。次いで、体液試料中の対象被分析物が、脂溶性陰イオン性汚染物質による干渉が低減された中で電気化学センサによって測定および/または検出される。
【0038】
以下の実施例は、本発明を説明するが、限定することは意図されていない。
【実施例】
【0039】
実施例1
図7は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりナトリウムの濃度が142mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更したところ、ISEは137mMのナトリウム濃度値に戻った。
【0040】
図8は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでナトリウムの濃度が139mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更されたところ、5つの電極すべてが139mMのナトリウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのナトリウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後に、HMW−PVCベースのナトリウムISEに見られるドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるナトリウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0041】
実施例2
図9は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりカリウムの濃度が3.2mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、ISEは2.8mMのカリウム濃度値に戻った。
【0042】
図10は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでカリウムの濃度が3.3mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更されたところ、5つの電極すべてが3.3mMのカリウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのカリウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後に、HMW−PVCベースのカリウムISEに見られるドリフトと比べて、わずかしか電位のドリフトを示さなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるカリウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0043】
実施例3
図11は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカルシウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカルシウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりカルシウムの濃度が0.93mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカルシウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、ISEは0.81mMのカルシウム濃度値に戻った。
【0044】
図12は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカルシウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカルシウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでカルシウムの濃度が0.87mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカルシウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、5つの電極は0.85、0.85、0.86、0.86、および0.85mMのカルシウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのカルシウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後にHMW−PVCをベースとするカルシウムISEに見られるほどの大きな電位のドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるカルシウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0045】
実施例4
図13は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するpH電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知のpHのバッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入され、電極ではpHが7.63であることが測定された。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、電極は7.68のpH値に戻った。
【0046】
図14は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのpH電極含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応の1つのグラフ表示である。既知のpHのバッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入され、5つの電極のすべてでpHが7.66であることが測定された。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、5つの電極は7.68のpH値に戻った。PVC−COOHベースのpH電極は、チオペンタールで汚染された試料の分析後にHMW−PVCをベースとするpH電極に見られるほどの大きな電位のドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるpH測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0047】
実施例5
図15は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するCO2電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。バッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入された。溶液中のCO2の分圧の2つの測定値を取り、結果を平均化し、66mmHgの値を得た。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、電極は115mmHgのCO2分圧値に戻った。
【0048】
図16は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する4つのCO2電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。バッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入された。4つの電極の各々で溶液中のCO2の分圧の2つの測定値を取り、各電極の結果を平均化し、67.9、68.0、68.0、および68.2mmHgの値を得た。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、4つの電極は70.4、68.8、68.8、および73.4mmHgのCO2の分圧値に戻った。PVC−COOHベースのCO2電極は、HMW−PVCベースのCO2電極に見られるドリフトと比べてチオペンタールで汚染された試料の分析後にわずかしか電位のドリフトを示さなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるCO2測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0049】
実施例6
図17は、当技術分野で周知のポリマー成分としてHMW−PVCを含むISEポリマー膜のバルク膜抵抗のグラフ表示である。図17によると、HMW−PVC膜は約2.4×107オームのバルク抵抗を有する。比較すると、図18は、本発明によるポリマー成分としてPVC−COOHを含むISEポリマー膜のバルク膜抵抗が、HMW−PVCを含有するISEより19倍以上低い約1.25×106オームであることを示している。バルク膜抵抗性を低下させることによって、そのポリマー膜にPVC−COOHを使用して製造されたISEは、測定の電位の安定性および再現性の増強を示す。
【0050】
実施例7
図19は、全血液試料におけるナトリウム濃度の本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードによる測定値とHMW−PVCを含有するポリマー膜を有する既知のナトリウムISEによる測定値を比較するグラフ表示である。広範囲のナトリウムレベルを表す99種類の全血試料のナトリウム濃度値を最初にHMW−PVCベースのナトリウムISEで測定し、次いでPVC−COOHベースのナトリウムISEで測定した。図19によって示されているように、PVC−COOHベースのナトリウムISEから得られた値は、HMW−PVCベースのナトリウムISEを使用して得られたものと十分に相関し(r=0.9983)、このことはPVC−COOHベースのナトリウムISEでは既知のナトリウム電極と同等の精度および正確度でナトリウムが測定されることを示している。
【0051】
図20は、PVC−COOHベースのカリウムISEを使用した同様の実験を示す。広範囲のカリウムレベルを表す127種類の全血試料のカリウム測定値を、最初にHMW−PVCベースのカリウムISEを使用して測定し、次いでPVC−COOHベースのカリウムISEで測定した。図20によって示されているように、PVC−COOHベースのカリウムISEから得られた値は、HMW−PVCベースの電極を使用して得られたものと十分に相関し(r=0.9995)、このことはPVC−COOHベースのカリウムISEでは既知のカリウム電極と同等の精度および正確度でカリウムが測定されることを示している。
【0052】
実施例8
図21は、本発明によるPVC−COOHベースのナトリウムISEの経時的な安定性のグラフ表示である。1日目、既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料を、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードに導入し、ナトリウムの濃度を測定した。次いで、分析試料を同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更し、ナトリウムの濃度を再び測定した。チオペンタール干渉による電極の電位のドリフトを表す、2つの測定値間の差(ΔEMF)を計算し、分析試料をセンサカードから除去した。この手順を2、4、6、9、12、14、および20日目に繰返し、ΔEMF値を計算した。図21が示すように、チオペンタールなどの脂溶性陰イオン性種が本発明によるPVC−COOHベースのナトリウムISEに及ぼす影響は、電極の全寿命を通じてきわめて低いままである。
【0053】
実施例9
尿素センサを以下の通り本発明に従って製造した。50.9mmol/L MESカリウム塩、46.6mmol/L MES非含有酸、2mmol/L塩化カリウムを含有するMESバッファー溶液を調製し、この溶液0.05μLをPVC電極カードに埋込まれた銀/塩化銀ワイヤの端に塗布した。次に、PVC150mg、セバシン酸ジオクチル100μL、2−ニトロフェニルオクチルエーテル100μL、THF中1%カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸塩110μL、および8mL THF中THF中5%ノナクチン300μLを組合わせることによってイオン選択膜溶液を調製した。この溶液の2つの0.75μLアリコートをMESバッファー層上に連続的に塗布し、イオン選択膜を形成した。次に、50mg/mLウレアーゼ(バイオザイム(Biozyme)、San Diego、カリフォルニア州(CA))、20mg/mLグルタチオン、10mg/mLウシ血清アルブミン、および0.12%グルタルアルデヒドをpH7.2の0.1Mリン酸バッファー中に含有する酵素溶液を調製し、この溶液0.075μLをイオン選択膜に塗布した。最後に、THF中に0.12g/mlのポリウレタン(テルメディックス社(Thermedics,Inc.)、ウォバーン、マサチューセッツ州)を含有する外側膜溶液を調製し、この溶液0.5μLを酵素層上に塗布し、外側膜を形成した。尿素センサを使い捨てカートリッジに組み込み、GEMプレミア(Premier)3000分析器(インスツルメンテーション・ラボラトリー・カンパニー(Instrumentation Laboratory Company)、レキシントン、マサチューセツ州)で試験した。
【0054】
使用中、本発明による尿素センサは、センサの全寿命を通じて所定のスケジュールに従って使い捨てカートリッジに封入された較正溶液を使用して自動的に較正される。較正は、尿素センサの尿素に対する感度(すなわち、尿素反応曲線の傾き)およびカリウムに対する尿素のセンサの選択係数を測定するために実行される。本発明による尿素センサの感度を測定するために、上記の尿素センサを2種類の較正溶液で較正した。1.0mmol/Lの尿素および2.0mmol/Lのカリウムを含んだ最初の較正溶液(Cal B)をカートリッジの試料チャネルへ導入し、尿素センサの信号を記録した。次に、7.5mmol/L尿素および15mmol/Lカリウムを含んだCal Bを第2の較正溶液(Cal D)で置換し、センサ反応を記録した。最後に、較正溶液をCal Bに切替え、センサ反応を再び記録した。センサは、較正および試料分析中を除き、つねにCal B溶液中に浸される。図22に示されているように、尿素センサは、迅速、かつ安定的に尿素およびカリウム濃度の変化に反応したが、このことは本発明による尿素センサが分析試料の迅速な分析が可能であることを示す。
【0055】
次に、尿素センサの分析性能を、3週間にわたって試験された62個の全血液試料の尿素濃度を分析することによって評価した。血液試料は、試験の第4日、第9日、第14日、および第22日に試験された。各々試験のために、ヘパリン化全血液試料を健康な個人から採取し、濃縮尿素溶液でスパイクし、5〜70mmol/Lの範囲の尿素濃度の試料を得た。次いで、各々の試料の尿素濃度値を上記のように本発明による尿素センサを使用して測定した。比較のために、各々のアリコートを分析後に遠心分離して血漿を単離し、血漿尿素濃度を従来の臨床化学分析器(モナーク(MONARCH)、インスツルメンテーション・ラボラトリー・カンパニー(Instrumentation Laboratory Company)、Lexington、マサチューセツ州(MA))を使用して測定した。モナーク(Monarch)分析器では、ウレアーゼ、グルタミン酸脱水素酵素、およびNADHの二酵素反応と組合せた分光測光法が使用され、試料中の尿素濃度を検出する。モナーク分析器は35mmol/Lまでの尿素しか測定できないので、血漿試料は分析前に食塩水で希釈した。実験の結果は図23に要約されている。
【0056】
図23が示すように、本発明の尿素センサから得られた尿素濃度値はモナーク分析器を使用して得られたものと十分に相関し(r=0.995)、これは本発明の尿素センサにより従来の化学分析器と同等の精度および正確度で尿素が測定されることを示す。本発明による尿素センサは、モナーク分析器よりも高価でなく、使用しやすいという追加の利点を有する。また、実験が示すように、尿素センサは少なくとも3週間の有効寿命を有する。
【0057】
実施例10
本発明による尿素センサのアンモニウムイオン選択膜は少なくとも部分的にカリウムイオンに対して透過性であるが、これは誤った尿素濃度値をもたらしうる。カリウム干渉の尿素濃度値を補正する1つの方法は、試料中のカリウム濃度を(例えば、本明細書に記載されたカリウムISEを使用して)独立して測定し、カリウム濃度と尿素センサのカリウムに対する尿素の選択係数に基づく補正係数を決定し、次いで補正係数を測定された尿素濃度値から引き、試料の実際の尿素濃度値を得るステップを含む。
【0058】
本発明による尿素センサを使用する際にカリウム干渉が補正できるかを判定するために、2つの尿素センサを実施例9に記載された方法に従って製造し、カリウムISEも含む使い捨てカートリッジへ組込んだ。各々の尿素センサの選択係数は、2つの較正溶液、すなわちCal A(1.0mmol/L尿素、7.5mmol/Lカリウム)およびCal B(1.0mmol/L尿素、2.0mmol/Lカリウム)で較正することによって測定された。5つの全血液試料を異なる量のカリウムでスパイクし、8〜24mmol/Lの範囲のカリウム濃度の試料を得た。非スパイク試料は、4.2mmol/Lのカリウム濃度および5.0mmol/Lの尿素濃度を有した。各々の試料をカートリッジへ導入し、カリウムおよび尿素濃度値を記録した。尿素濃度値を選択係数およびカリウム濃度に基づき補正した。実験の結果は、以下の表1に要約されている。
【0059】
【表1】
【0060】
表1が示すように、カリウム干渉は本発明による尿素センサのために有効に除去できる。
【0061】
本明細書に記載されているものの変型、変更、および他の実施は、請求された発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者には考え及ぶであろう。したがって、本発明は、前記例示的説明によってではなく、冒頭の特許請求の範囲の精神および範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】電極カードおよび試料注入口を有するセンサカートリッジ、蠕動ポンプ、およびマイクロプロセッサを含む、本発明による電気化学センサシステムの実施形態の構成要素を示す概略図である。
【図2】本発明による電極カードの実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明によるイオン選択電極(ISE)の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明による二酸化電極(CO2)の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明による酵素電極の実施形態を示す断面図である。
【図6】4種類のISEのポリマー膜成分およびそのそれぞれの重量%の例を含む表である。
【図7】高分子量ポリ塩化ビニル(HMW−PVC)を含有するポリマー膜を有するナトリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールナトリウム(チオペンタール)で汚染された試料を含有するナトリウムの分析前後に取られた測定値を示すグラフ表示である。
【図8】本発明によるカルボキシル化ポリ塩化ビニル(PVC−COOH)含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図9】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図10】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図11】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカルシウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図12】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカルシウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図13】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するpH電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図14】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのpH電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応の1つと、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図15】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するCO2電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図16】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する4つのCO2電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染された試料の分析前後に取られた測定値とともを示すグラフ表示である。
【図17】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するISEのバルク膜抵抗を示すグラフ表示である。
【図18】PVC−COOHを含有するポリマー膜を有するISEのバルク膜抵抗を示すグラフ表示である。
【図19】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEによって測定された全血液試料中のナトリウム濃度値と本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードによって測定されたものとの比較を示すグラフ表示である。
【図20】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEによって測定された全血液試料中のカリウム濃度値と本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードによって測定されたものとの比較を示すグラフ表示である。
【図21】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEの経時的な電位のマイナスドリフトを示すグラフ表示である。
【図22】2種類の較正溶液に対する本発明による尿素センサの反応を示すグラフ表示である。
【図23】市販の臨床化学分析器によって測定された血漿試料中の尿素濃度値と本発明による尿素センサを含む電極カードによって測定された対応する全血液試料中の尿素濃度値との比較を示すグラフ表示である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年2月11日出願の米国特許出願第10/364,840号明細書の一部継続出願であり、その開示は本明細書で参照することにより援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、電気化学センサ、詳しくは、分析試料中の尿素を測定するセンサの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
研究者および医師はしばしば生体試料中のさまざまな被分析物の濃度を測定する必要がある。これらの被分析物としては、溶解ガス(二酸化炭素)、イオン(例えば水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、アンモニウム、およびマグネシウム)、および生物活性分子(例えば尿素)が挙げられる。多くの場合、生体試料は、外来診療中または手術を受けている間の患者から取られた体液(例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および/または尿)である。適切な診断および治療はしばしば、これらの測定の精度およびそれらが得られる速度によって決まる。
【0004】
電気化学センサシステムが、生体試料中の被分析物の濃度を測定するために使用されうる分析ツールである。電気化学センサは、少なくとも1つの半透過性膜によって分析試料から分離される、金属電極などの物理的変換器を含む。分析試料中の生体代謝産物(例えば、糖質、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、または尿素など)を検出および/または測定する酵素センサは、半透過性膜を覆う酵素層を含む。酵素層は、目的とする被分析物と反応し、半透過性膜を通じて移動し、電極によって検出されうる化学副産物を生成する少なくとも1つの酵素を含有する。酵素センサの例が尿素センサであるが、これは、尿素を加水分解してアンモニウムイオンを形成するウレアーゼなどの酵素を含有しうる。
【0005】
既存の尿素センサは、他のタイプのセンサ(例えば、イオンセンサ)と比べ一般に寿命が短い。これは、既存の尿素センサの酵素層が分析試料と直接接触しており、これにより膜の酵素および他の成分が試料および/または試料中の汚染物質へ浸出し、酵素層における酵素を分解または破壊することによる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要約
本発明は、酵素層が試料と直接接触しない尿素センサを提供し、これにより試料中の尿素濃度の複数の連続した測定が可能となる。また、本発明の尿素センサは小型化に適しており、センサカードの全体的な寿命を損なうことがなく、複数被分析物の連続長期分析用に使用される他の小型化電気化学センサを含むセンサカードへ組込まれうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、一態様において、本発明は、電極と、酵素層と、外側拡散層とを含む試料中の尿素を検出するためのセンサである。外側拡散層は尿素に対して透過性であり、酵素層と試料との間に配置されている。外側拡散層は、酵素層と試料との直接の接触を防ぐことによって、酵素の分解および/または損失を阻止し、それによって尿素センサの寿命を延長する。尿素センサは、例えば、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および/または尿試料の尿素濃度を測定するために使用されうる。
【0008】
本発明の本態様の実施形態は以下の特徴を含みうる。電極は、銀/塩化銀電極などの金属電極でありうる。酵素層は、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒するウレアーゼなどの酵素を含有しうる。酵素層は、例えば、ポリペプチド(例えば、グルタチオン)および不活性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)などの1つもしくはそれ以上の酵素安定剤をも含有しうる。特定の実施形態において、酵素層は、グルタチオンに架橋結合されたウレアーゼを含む。他の実施形態において、酵素層は、ウレアーゼおよびグルタチオンの少なくとも1つに架橋結合されたウシ血清アルブミンなどの1つもしくはそれ以上の不活性タンパク質を含む。外側拡散層は、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物などのポリマーを含みうる。
【0009】
一部の実施形態において、尿素センサは、電極と酵素層との間に配置されたイオン選択膜をさらに含む。例えば、イオン選択膜は、アンモニウム選択イオノフォアが配置されたポリマーマトリクスなどのアンモニウムイオン選択膜であってもよい。ポリマーマトリクスは、例えば、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物を含みうる。適切なアンモニウムイオン選択イオノフォアの例としては、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリトリアコンタン、ベンゾクラウンエーテル、環状デプシペプチド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0010】
別の態様において、本発明は、基板の中または上に配置された上記の1つもしくはそれ以上のセンサを含むセンサカードである。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は上記のセンサを形成するための方法を提供する。1つの方法では、この方法は、電極を用意するステップと、電極の少なくとも1つの表面に酵素層を塗布するステップと、酵素層上に外側拡散層を塗布するステップとを含む。別の方法では、この方法は、電極を用意するステップと、電極の少なくとも1つの表面にイオン選択膜を塗布するステップと、イオン選択膜に酵素層を塗布するステップと、酵素層上に外側拡散層を塗布するステップとを含む。
【0012】
本発明の前記および他の目的、態様、特徴、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0013】
図面の簡単な説明
図面において、同じ参照文字は一般に異なる図面の全体を通じて同じ部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、一般に本発明の原理の説明に重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
説明
本発明による電気化学センサは電気化学センサシステムに組込むことができる。図1を参照すると、本発明による一実施形態において、電気化学センサシステム1は、生体試料が電気化学センサシステム1へ導入される注入口2を有する。蠕動ポンプ4が、体液試料などの試料を注入口2を通じて電極カード6へ移動させる。電極カード6は、試料中の対象の被分析物を検出および測定する1つもしくはそれ以上の電極8を含有する。電気的インターフェース10は電極カード6をマイクロプロセッサ12に接続する。電極カード6からの信号がマイクロプロセッサ12に移動し、信号の保存および表示を可能にする。マイクロプロセッサ12からの信号が電極カード6に移動し、電極の分極電圧などの測定条件の制御を可能にする。本発明による一実施形態において、試料注入口2および電極カード6は使い捨てカートリッジ13内に含まれており、これは電気化学センサシステム1の他の要素から使用後に取外され、交換されうる。
【0015】
図2を参照すると、本発明による一実施形態において、電極カード6は、ポリ塩化ビニル(PVC)で作られた硬質の実質的に長方形のカードを含む。チャネル20が電極カード6内に配置されており、それを通じて生体試料または基準溶液が流れうる。1つもしくはそれ以上の電極8をチャネル20内に埋込むことができる。試料が電極カード6を通過すると、試料はチャネル20を通じて電極8を越えて流れ、対象の被分析物の検出および/または測定を可能にする。
【0016】
図2を参照すると、電極カード6へ組込まれうる電極8は、イオン選択電極(ISE)100、溶解ガスを分析するための電極(ガス電極)、および酵素ベースの検出システムを使用する電極(酵素電極)を含む。例えば、電極はナトリウム26、カルシウム28、カリウム30、pH32、リチウム34、マグネシウム36、アンモニウム38、二酸化炭素40、および尿素42を検出しうる。
【0017】
図3を参照すると、本発明による一実施形態において、ISE100は、金属要素105、内側溶液層110、およびポリマー膜115を含む。金属要素105は電極カード6のPVCに埋込まれており、内側溶液層110は金属要素105の露出端を覆う。内側溶液層110は、例えば、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)バッファーを含有しうる。ポリマー膜115は、電極カード6のチャネル20を通過する分析試料(例えば、体液試料)から内側溶液層110を分離するイオン選択膜である。ポリマー膜115の組成は、特定のイオンに対するISE100の選択性を決定する。本発明による特定の実施形態において、PVC−COOHがポリマー膜115の成分である。
【0018】
再び図2を参照すると、分析試料中のイオンの濃度を測定するには、ISE100は基準電極44と並行して作動しなければならない。ISE100が検出するように意図されているイオンが分析試料中に存在する場合は、図3に示されている内側溶液層110における被分析物の濃度と分析試料中のその濃度との差に依存する電位が、ポリマー膜115に発生する。ISE100と基準電極44との間の電位差は、分析試料中の測定イオンの濃度の対数の変化に直接比例している。
【0019】
図4を参照すると、本発明による一実施形態において、ガス電極の1つのタイプである二酸化炭素(CO2)電極40は、金属要素125、内側溶液層130、およびポリマー膜135を含む。CO2電極40は、CO2電極40の内側溶液層130が重炭酸バッファーであることを除いて、機能的にISE100とほぼ同じである。図2を参照すると、ISE100とは異なり、CO2電極40はpH電極32と並行して作動しなければならない。
【0020】
再び図4を参照すると、CO2はCO2電極40のポリマー膜135を通過すると、内側溶液層130の重炭酸バッファーに溶解し、バッファーpHを変化させ、これによりCO2電極40の電位が変化する。しかし、pH電極32の内側溶液層は分析試料中のCO2によって影響されず、そのためpH電極の電位は一定のままである。CO2電極40とpH電極32との間の電位差は、試料中のCO2の濃度に比例する。本発明による一実施形態において、PVC−COOHがCO2電極40のポリマー膜135を構成していてもよい。
【0021】
図5は本発明による別の実施形態の、分析試料中の生体代謝産物(例えば、糖質、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、または尿素など)の存在および濃度を検出するための酵素電極150を示す。酵素電極150は、電極カード6に埋込まれた金属要素155、およびチャネル20を通じて電極カード6に流れる金属要素155と分析試料との間に配置されている複合膜160を含む。複合膜160は、チャネル20に隣接した外側拡散膜165、酵素層170、イオン選択ポリマー膜175、および金属要素155に隣接した内側溶液層180を含む。外側拡散膜165は、被分析物の酵素層170への拡散を制御し、酵素電極150の他の成分をチャネル20における分析試料との直接の接触から保護する。酵素層170は、特定の被分析物と反応する少なくとも1つの酵素、または、いくつかの酵素、タンパク質、および安定剤の混合物を具備しうる。被分析物が外側拡散膜165を通じて拡散する場合には、これは酵素170における酵素と反応し、化学副産物を生じうるが、これはイオン選択ポリマー膜175を通じて移動しうる。尿素センサの場合、化学副産物は、例えば、アンモニウムイオンでありうる。分析試料中の対象の被分析物の濃度に比例する化学副産物の濃度に依存する電位が複合膜160に発生する。本発明による一実施形態において、PVC−COOHがイオン選択ポリマー膜175を構成していてもよい。
【0022】
特定の実施形態において、本発明による尿素センサは、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒する酵素を含み、次いでアンモニウムイオンがアンモニウムイオン選択電極によって検出される。適切な酵素の例がウレアーゼである。図5を参照すると、尿素センサの複合膜160は、外側拡散膜165、ウレアーゼを含有する酵素層170、アンモニウムイオン選択ポリマー膜175、および金属要素155に隣接した内側溶液層180を含む。
【0023】
外側拡散膜165は、いくつかの機能を果たすように調製される。第一に、外側拡散膜165は、保護用の外側拡散膜165がなければ起こるであろう酵素層上を流れる較正溶液または試料の流れによって酵素層170が洗い流されてしまうことを防ぎ、酵素層170をイオン選択ポリマー膜175に固定する。第二に、外側拡散膜165は、試料から酵素層170への汚染物質の拡散を制限し、センサの寿命を有利に延長する。特定の実施形態において、外側拡散膜165は、尿素の酵素層170への拡散を制限するように調製され、これにより、試料中の尿素より少ないが、これに比例する量の尿素が酵素と反応することを可能にする。酵素層170に達する尿素の量の制限は、尿素センサの線形範囲を拡大するだけではなく、酵素層170のpHが増加するのを抑制し、これによりさらにセンサの上部線形範囲を拡大する。
【0024】
外側拡散膜165は、一般に1つもしくはそれ以上のポリマーを含む。適切なポリマーとしては、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー(例えば、デラフェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.Du Pont De Nemours&Co.,Wilmington,DE)によってナフィオン(NAFION)の商標で販売されているペルフルオロスルホン酸イオノマー)、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル誘導体(例えば、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、および水酸化ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物およびコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。外側拡散膜165での使用に好ましいポリマーは、親水性ポリウレタン(例えば、マサチューセッツ州ウォバーンのテルメディックス社(Thermedics,Inc.,Woburn,MA)から入手可能)である。一実施形態において、外側拡散膜165は2つもしくはそれ以上のポリマーの混合物またはコポリマーを含む。別の実施形態において、外側拡散膜165は、同一のまたは異なるポリマーおよび/または同一のまたは異なるコポリマーの2つもしくはそれ以上の別個の層を含む。
【0025】
酵素層170は、例えば、ウレアーゼなど尿素のアンモニウムイオンに対する反応を触媒する酵素を含む。一実施形態において、酵素層170は、例えば、1種以上の不活性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンを含む血清タンパク質)、ポリペプチド(例えば、グルタチオン)などの酵素安定剤と溶媒を含む。特定の実施形態において、グルタチオンが1種以上の不活性タンパク質とともに使用され、酵素層170におけるウレアーゼを安定化する。また、ウレアーゼを、架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド)を使用してグルタチオンおよび/または1種以上の不活性タンパク質に架橋結合させ、酵素および/または安定剤が酵素層170からの移動するのを防いでもよい。架橋により、酵素層170もその下のイオン選択ポリマー層175に固定される。酵素層170の製造中、酵素安定剤は、一般に、架橋剤の添加に先立って酵素含有溶液に添加され、安定剤が酵素と架橋結合することを確実にする。
【0026】
アンモニウムイオン選択ポリマー層175は、ポリマーマトリクスに配置されたアンモニウム選択イオノフォアを含む。適切なイオノフォアとしては、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリトリアコンタン、ベンゾクラウンエーテル(例えば、Anal.Chem.、2000年、72、4683−4688頁を参照)環状デプシペプチド(例えば、Anal.Chem.、2003年、75、152−156頁を参照)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーマトリクスは、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル誘導体(例えば、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、および水酸化ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物およびコポリマーを含みうる。また、アンモニウムイオン選択ポリマー層175は、本明細書に記載された可塑剤および脂溶性塩添加剤などの他の添加剤を含有しうる。
【0027】
再び図3を参照すると、ISEのポリマー膜は、対象の被分析物のためにISE100の選択性を調節する。ポリマー膜115は、少なくとも4つの要素:ポリマー、可塑剤、イオノフォア、および脂溶性塩添加剤、を含む。
【0028】
本発明による一実施形態において、PVC−COOHはポリマー膜115のポリマー成分である。PVC−COOHは、塩素原子の一部がカルボキシル基(COOH)によって置換されたポリ塩化ビニル(PVC)ポリマーである。本発明による実施形態において、PVC−COOHは、0.1〜5重量%のCOOHを含有し、本発明の特定の実施形態において、PVC−COOHは、1.8重量%のCOOHを含有しうる。PVC−COOHは、分析試料中の脂溶性陰イオン性種(例えば、鎮痛剤および麻酔剤など)がポリマー膜115に浸透し、かつISE100に干渉するのを防ぐ。かかる脂溶性陰イオン性種には、例えば、チオペンタールナトリウム(チオペンタール)、フェニトイン、イブプロフェン、フェノプロフェン、サリチル酸塩、バルプロ酸塩、およびε−アミノカプロン酸塩などが含まれる。PVC−COOHは、別のポリマー(例えば、HMW−PVCまたはポリウレタンなど)と混合され、ポリマー膜のポリマー成分を形成してもよい。本発明の特定の実施形態においては、PVC−COOHは別のポリマーと混合されておらず、ポリマー膜の唯一のポリマー成分である。
【0029】
PVC−COOHを含むポリマー膜115は、固体プラットフォームへの付着力の増強も示すが、これは電気化学センサの長い寿命および電位の安定性に重要である。また、ポリマー膜115にPVC−COOHを使用する電気化学センサは、以下の実施例6によって示されているように、比較的極性を有するポリマー膜115によって与えられる膜抵抗の大幅な低減により、より優れたセンサ測定の潜在的安定性および再現性を示す。PVC−COOHセンサの精度および正確度は、以下の実施例7によって示されているように、高分子量ポリ塩化ビニル(HMW−PVC)に基づくセンサなどの周知のISEと同等である。
【0030】
ポリマー膜115の可塑剤成分は、有効なイオン移動を得るために必要な膜内におけるイオン移動度を提供する。可塑剤はポリマー成分と適合しなければならず、イオノフォアの溶媒でなければならない。可塑剤は、ポリマー膜115の表面と接触する水性試料に大幅に移動することがないように、水中で十分に不溶性でもなければならない。可塑剤は電極の寿命を延長するために、実質的に非揮発性であることも望ましい。有用な可塑剤としては、セバシン酸ビス(2−エチルへキシル)(DOS)およびo−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)が挙げられる。
【0031】
ポリマー膜115において使用されるイオノフォアは、特定のイオンと選択的に結合する能力がある。イオノフォアのこの特徴により、ISEのイオン選択性が生じる。ナトリウムISEの適切なイオノフォアの例としては、メチルモネンジンエステル、カリックスアレーン誘導体、および他のナトリウム感受性化合物が挙げられる。単環式抗生物質(例えば、バリオマイシンなど)をカリウムISE用のイオノフォアとして使用することができる。カルシウムISE用のイオノフォアは、例えば、(−)−(R,R)−N,N’−(ビス(11−エトキシカルボニル)ウンデシル)−N,N’−4,5−テトラメチル−3,6−ジオキサオクタンジアミド、ジエチルN,N’−[(4R,5R)−4,5−ジメチル−1,8−ジオキソ−3,6−ジオキサオクタメチレン]−ビス(12−ドデカン酸メチルアミノ)(ETH1001)でありうる。pH電極および/または二酸化炭素電極用の適切なイオノフォアの例は、トリドデシルアミン(TDDA)である。
【0032】
ポリマー膜115に使用される脂溶性塩添加剤は、膜抵抗を削減し、かつ陰イオン干渉を削減するために役立つ。有用な脂溶性塩添加剤としては、例えば、カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸(KTpClPB)、およびカリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸(KTTFPB)が挙げられる。しかし、脂溶性塩添加剤は、ポリマー膜115の機能に必ずしも必須ではなく、一定の被分析物が分析対象となる場合には省略できる。
【0033】
ポリマー膜115の脂溶性陰イオン薬剤不純物を拒絶する効率は、ポリマー膜115の組成のPVC−COOH/可塑剤比を最適化し、かつイオノフォアおよび脂溶性塩添加剤のタイプおよび比を適切に選択することによって強化される。例えば、ナトリウムISE用のポリマー膜115は、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、2−8重量%のカリックスアレーン誘導体、および1−3重量%のKTTFPBを含有しうる。カリウムISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、1−5重量%のバリノマイシン、および0−1重量%のKTpClPBを含有しうる。カルシウムISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%の1:1のDOS/NPOE、1−5重量%のETH1001、および0.2−2重量の%KTpClPBを含有しうる。pHまたはCO2ISE用のポリマー膜115は、例えば、25−35重量%のPVC−COOH、60−70重量%のDOS、2−7重量%のTDDA、および1−4重量%のKTpClPBを含有しうる。図6は、適切なポリマー膜115成分の特定の実施形態、およびそれらのそれぞれのさまざまな電気化学センサの重量比の例を示す。
【0034】
さらに図3を参照すると、本発明によるポリマー膜115は、適切な量のポリマー、可塑剤、イオノフォア、および脂溶性塩添加剤を溶媒、一般的にはテトラヒドロフラン(THF)またはシクロヘキサノン、に溶解し、この溶液を電極カード6に埋込まれた金属要素105の露出表面に塗布することによって形成されうる。例えば、カリウムISEは、図6に記載された比に従ってPVC−COOH(1.8重量%のCOOH)、DOS、バリノマイシン、およびKTpClPBを混合し、全質量を630〜650mgにすることによって製造されうる。混合物は3〜3.5mL THF中に溶解され、この溶液の0.75μLが電極カード6に埋込まれた金属要素105(例えば、塩素化銀ワイヤ)の露出端に塗布される。溶媒が蒸発したら、同量の膜溶液を十分な乾燥時間をおいてさらに2回塗布する。最後の塗布の後溶媒が蒸発したら、ポリマー膜115が形成され、電極カード6に結合される。
【0035】
再び図5を参照すると、一実施形態において、本発明による尿素センサは、まず内側溶液層180(例えば、MESバッファー溶液)を電極カード6に埋込まれた金属要素155(例えば、銀/塩化銀または白金)の露出面に塗布することによって製造される。次に、ノナクチン、ポリ塩化ビニル、および1つもしくはそれ以上の可塑剤の溶液を内側溶液層180上に塗布し、イオン選択ポリマー層175を形成する。酵素層170は、ウレアーゼ、グルタチオン、ウシ血清アルブミン、およびグルタルアルデヒド溶液をイオン選択ポリマー層175の表面に塗布することによって形成される。最後に、親水性ポリウレタンの溶液を酵素層170上に塗布し、外側拡散層165を形成する。
【0036】
本発明によるISEでは、試料中の被分析物の濃度の変化に起因する分析試料のミリボルト(mV)で測定される電位の変化が測定される。同様に、本発明によるガス電極では、試料中に溶解されたガスの分圧の変化に起因する分析試料の電位の変化が測定される。当業者であれば、電位値がネルンストの式による濃度または分圧値に関係があることを承知している。本発明による特定の実施形態においては、電極によって測定された電位値をネルンストの式を使用することによって被分析物の濃度または分圧値に変換するソフトウェアを電気化学センサシステムに含めることができる。
【0037】
別の態様において、本発明は、脂溶性陰イオン性種(例えば、チオペンタールなど)の存在下で被分析物を検出および/または測定する際に、脂溶性陰イオン性種による干渉を受けることなく体液(例えば、血液)中の被分析物の存在を検出および/または濃度を測定するための方法である。本発明のこの方法は、センサのポリマー膜のポリマー成分としてPVC−COOHを含む体液中の対象被分析物を検出および/または測定するための電気化学センサを提供する。対象被分析物および脂溶性陰イオン性汚染物質を含有する体液試料が、センサのポリマー膜のポリマー成分としてPVC−COOHを含む電気化学センサと接触して配置される。次いで、体液試料中の対象被分析物が、脂溶性陰イオン性汚染物質による干渉が低減された中で電気化学センサによって測定および/または検出される。
【0038】
以下の実施例は、本発明を説明するが、限定することは意図されていない。
【実施例】
【0039】
実施例1
図7は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりナトリウムの濃度が142mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更したところ、ISEは137mMのナトリウム濃度値に戻った。
【0040】
図8は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでナトリウムの濃度が139mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更されたところ、5つの電極すべてが139mMのナトリウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのナトリウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後に、HMW−PVCベースのナトリウムISEに見られるドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるナトリウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0041】
実施例2
図9は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりカリウムの濃度が3.2mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、ISEは2.8mMのカリウム濃度値に戻った。
【0042】
図10は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカリウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでカリウムの濃度が3.3mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更されたところ、5つの電極すべてが3.3mMのカリウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのカリウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後に、HMW−PVCベースのカリウムISEに見られるドリフトと比べて、わずかしか電位のドリフトを示さなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるカリウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0043】
実施例3
図11は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカルシウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカルシウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、ISEによりカルシウムの濃度が0.93mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカルシウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、ISEは0.81mMのカルシウム濃度値に戻った。
【0044】
図12は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカルシウムISEを含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知の濃度のカルシウムを含有する分析試料が電極カードに導入され、5つのISEのすべてでカルシウムの濃度が0.87mMであることが測定された。時間tで、分析試料が同じ濃度のカルシウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、5つの電極は0.85、0.85、0.86、0.86、および0.85mMのカルシウム濃度値に戻った。PVC−COOHベースのカルシウムISEは、チオペンタールで汚染された試料の分析後にHMW−PVCをベースとするカルシウムISEに見られるほどの大きな電位のドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるカルシウム測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0045】
実施例4
図13は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するpH電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。既知のpHのバッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入され、電極ではpHが7.63であることが測定された。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、電極は7.68のpH値に戻った。
【0046】
図14は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのpH電極含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応の1つのグラフ表示である。既知のpHのバッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入され、5つの電極のすべてでpHが7.66であることが測定された。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、5つの電極は7.68のpH値に戻った。PVC−COOHベースのpH電極は、チオペンタールで汚染された試料の分析後にHMW−PVCをベースとするpH電極に見られるほどの大きな電位のドリフトを示すことはなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるpH測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0047】
実施例5
図15は、HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するCO2電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。バッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入された。溶液中のCO2の分圧の2つの測定値を取り、結果を平均化し、66mmHgの値を得た。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、電極は115mmHgのCO2分圧値に戻った。
【0048】
図16は、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する4つのCO2電極を含む電極カードから記録されたクロノポテンシオメトリー反応のグラフ表示である。バッファー溶液を含有する分析試料が電極カードに導入された。4つの電極の各々で溶液中のCO2の分圧の2つの測定値を取り、各電極の結果を平均化し、67.9、68.0、68.0、および68.2mmHgの値を得た。時間tで、分析試料が同じバッファー溶液+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更され、4つの電極は70.4、68.8、68.8、および73.4mmHgのCO2の分圧値に戻った。PVC−COOHベースのCO2電極は、HMW−PVCベースのCO2電極に見られるドリフトと比べてチオペンタールで汚染された試料の分析後にわずかしか電位のドリフトを示さなかったが、このことは脂溶性陰イオン性汚染物質によって引き起こされるCO2測定障害の防止におけるPVC−COOHの有効性を示している。
【0049】
実施例6
図17は、当技術分野で周知のポリマー成分としてHMW−PVCを含むISEポリマー膜のバルク膜抵抗のグラフ表示である。図17によると、HMW−PVC膜は約2.4×107オームのバルク抵抗を有する。比較すると、図18は、本発明によるポリマー成分としてPVC−COOHを含むISEポリマー膜のバルク膜抵抗が、HMW−PVCを含有するISEより19倍以上低い約1.25×106オームであることを示している。バルク膜抵抗性を低下させることによって、そのポリマー膜にPVC−COOHを使用して製造されたISEは、測定の電位の安定性および再現性の増強を示す。
【0050】
実施例7
図19は、全血液試料におけるナトリウム濃度の本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードによる測定値とHMW−PVCを含有するポリマー膜を有する既知のナトリウムISEによる測定値を比較するグラフ表示である。広範囲のナトリウムレベルを表す99種類の全血試料のナトリウム濃度値を最初にHMW−PVCベースのナトリウムISEで測定し、次いでPVC−COOHベースのナトリウムISEで測定した。図19によって示されているように、PVC−COOHベースのナトリウムISEから得られた値は、HMW−PVCベースのナトリウムISEを使用して得られたものと十分に相関し(r=0.9983)、このことはPVC−COOHベースのナトリウムISEでは既知のナトリウム電極と同等の精度および正確度でナトリウムが測定されることを示している。
【0051】
図20は、PVC−COOHベースのカリウムISEを使用した同様の実験を示す。広範囲のカリウムレベルを表す127種類の全血試料のカリウム測定値を、最初にHMW−PVCベースのカリウムISEを使用して測定し、次いでPVC−COOHベースのカリウムISEで測定した。図20によって示されているように、PVC−COOHベースのカリウムISEから得られた値は、HMW−PVCベースの電極を使用して得られたものと十分に相関し(r=0.9995)、このことはPVC−COOHベースのカリウムISEでは既知のカリウム電極と同等の精度および正確度でカリウムが測定されることを示している。
【0052】
実施例8
図21は、本発明によるPVC−COOHベースのナトリウムISEの経時的な安定性のグラフ表示である。1日目、既知の濃度のナトリウムを含有する分析試料を、本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードに導入し、ナトリウムの濃度を測定した。次いで、分析試料を同じ濃度のナトリウム+10mg/dLのチオペンタールを含有する溶液に変更し、ナトリウムの濃度を再び測定した。チオペンタール干渉による電極の電位のドリフトを表す、2つの測定値間の差(ΔEMF)を計算し、分析試料をセンサカードから除去した。この手順を2、4、6、9、12、14、および20日目に繰返し、ΔEMF値を計算した。図21が示すように、チオペンタールなどの脂溶性陰イオン性種が本発明によるPVC−COOHベースのナトリウムISEに及ぼす影響は、電極の全寿命を通じてきわめて低いままである。
【0053】
実施例9
尿素センサを以下の通り本発明に従って製造した。50.9mmol/L MESカリウム塩、46.6mmol/L MES非含有酸、2mmol/L塩化カリウムを含有するMESバッファー溶液を調製し、この溶液0.05μLをPVC電極カードに埋込まれた銀/塩化銀ワイヤの端に塗布した。次に、PVC150mg、セバシン酸ジオクチル100μL、2−ニトロフェニルオクチルエーテル100μL、THF中1%カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸塩110μL、および8mL THF中THF中5%ノナクチン300μLを組合わせることによってイオン選択膜溶液を調製した。この溶液の2つの0.75μLアリコートをMESバッファー層上に連続的に塗布し、イオン選択膜を形成した。次に、50mg/mLウレアーゼ(バイオザイム(Biozyme)、San Diego、カリフォルニア州(CA))、20mg/mLグルタチオン、10mg/mLウシ血清アルブミン、および0.12%グルタルアルデヒドをpH7.2の0.1Mリン酸バッファー中に含有する酵素溶液を調製し、この溶液0.075μLをイオン選択膜に塗布した。最後に、THF中に0.12g/mlのポリウレタン(テルメディックス社(Thermedics,Inc.)、ウォバーン、マサチューセッツ州)を含有する外側膜溶液を調製し、この溶液0.5μLを酵素層上に塗布し、外側膜を形成した。尿素センサを使い捨てカートリッジに組み込み、GEMプレミア(Premier)3000分析器(インスツルメンテーション・ラボラトリー・カンパニー(Instrumentation Laboratory Company)、レキシントン、マサチューセツ州)で試験した。
【0054】
使用中、本発明による尿素センサは、センサの全寿命を通じて所定のスケジュールに従って使い捨てカートリッジに封入された較正溶液を使用して自動的に較正される。較正は、尿素センサの尿素に対する感度(すなわち、尿素反応曲線の傾き)およびカリウムに対する尿素のセンサの選択係数を測定するために実行される。本発明による尿素センサの感度を測定するために、上記の尿素センサを2種類の較正溶液で較正した。1.0mmol/Lの尿素および2.0mmol/Lのカリウムを含んだ最初の較正溶液(Cal B)をカートリッジの試料チャネルへ導入し、尿素センサの信号を記録した。次に、7.5mmol/L尿素および15mmol/Lカリウムを含んだCal Bを第2の較正溶液(Cal D)で置換し、センサ反応を記録した。最後に、較正溶液をCal Bに切替え、センサ反応を再び記録した。センサは、較正および試料分析中を除き、つねにCal B溶液中に浸される。図22に示されているように、尿素センサは、迅速、かつ安定的に尿素およびカリウム濃度の変化に反応したが、このことは本発明による尿素センサが分析試料の迅速な分析が可能であることを示す。
【0055】
次に、尿素センサの分析性能を、3週間にわたって試験された62個の全血液試料の尿素濃度を分析することによって評価した。血液試料は、試験の第4日、第9日、第14日、および第22日に試験された。各々試験のために、ヘパリン化全血液試料を健康な個人から採取し、濃縮尿素溶液でスパイクし、5〜70mmol/Lの範囲の尿素濃度の試料を得た。次いで、各々の試料の尿素濃度値を上記のように本発明による尿素センサを使用して測定した。比較のために、各々のアリコートを分析後に遠心分離して血漿を単離し、血漿尿素濃度を従来の臨床化学分析器(モナーク(MONARCH)、インスツルメンテーション・ラボラトリー・カンパニー(Instrumentation Laboratory Company)、Lexington、マサチューセツ州(MA))を使用して測定した。モナーク(Monarch)分析器では、ウレアーゼ、グルタミン酸脱水素酵素、およびNADHの二酵素反応と組合せた分光測光法が使用され、試料中の尿素濃度を検出する。モナーク分析器は35mmol/Lまでの尿素しか測定できないので、血漿試料は分析前に食塩水で希釈した。実験の結果は図23に要約されている。
【0056】
図23が示すように、本発明の尿素センサから得られた尿素濃度値はモナーク分析器を使用して得られたものと十分に相関し(r=0.995)、これは本発明の尿素センサにより従来の化学分析器と同等の精度および正確度で尿素が測定されることを示す。本発明による尿素センサは、モナーク分析器よりも高価でなく、使用しやすいという追加の利点を有する。また、実験が示すように、尿素センサは少なくとも3週間の有効寿命を有する。
【0057】
実施例10
本発明による尿素センサのアンモニウムイオン選択膜は少なくとも部分的にカリウムイオンに対して透過性であるが、これは誤った尿素濃度値をもたらしうる。カリウム干渉の尿素濃度値を補正する1つの方法は、試料中のカリウム濃度を(例えば、本明細書に記載されたカリウムISEを使用して)独立して測定し、カリウム濃度と尿素センサのカリウムに対する尿素の選択係数に基づく補正係数を決定し、次いで補正係数を測定された尿素濃度値から引き、試料の実際の尿素濃度値を得るステップを含む。
【0058】
本発明による尿素センサを使用する際にカリウム干渉が補正できるかを判定するために、2つの尿素センサを実施例9に記載された方法に従って製造し、カリウムISEも含む使い捨てカートリッジへ組込んだ。各々の尿素センサの選択係数は、2つの較正溶液、すなわちCal A(1.0mmol/L尿素、7.5mmol/Lカリウム)およびCal B(1.0mmol/L尿素、2.0mmol/Lカリウム)で較正することによって測定された。5つの全血液試料を異なる量のカリウムでスパイクし、8〜24mmol/Lの範囲のカリウム濃度の試料を得た。非スパイク試料は、4.2mmol/Lのカリウム濃度および5.0mmol/Lの尿素濃度を有した。各々の試料をカートリッジへ導入し、カリウムおよび尿素濃度値を記録した。尿素濃度値を選択係数およびカリウム濃度に基づき補正した。実験の結果は、以下の表1に要約されている。
【0059】
【表1】
【0060】
表1が示すように、カリウム干渉は本発明による尿素センサのために有効に除去できる。
【0061】
本明細書に記載されているものの変型、変更、および他の実施は、請求された発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者には考え及ぶであろう。したがって、本発明は、前記例示的説明によってではなく、冒頭の特許請求の範囲の精神および範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】電極カードおよび試料注入口を有するセンサカートリッジ、蠕動ポンプ、およびマイクロプロセッサを含む、本発明による電気化学センサシステムの実施形態の構成要素を示す概略図である。
【図2】本発明による電極カードの実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明によるイオン選択電極(ISE)の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明による二酸化電極(CO2)の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明による酵素電極の実施形態を示す断面図である。
【図6】4種類のISEのポリマー膜成分およびそのそれぞれの重量%の例を含む表である。
【図7】高分子量ポリ塩化ビニル(HMW−PVC)を含有するポリマー膜を有するナトリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールナトリウム(チオペンタール)で汚染された試料を含有するナトリウムの分析前後に取られた測定値を示すグラフ表示である。
【図8】本発明によるカルボキシル化ポリ塩化ビニル(PVC−COOH)含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図9】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図10】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図11】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカルシウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図12】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカルシウムISEを含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図13】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するpH電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図14】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのpH電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応の1つと、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図15】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するCO2電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染されたカルシウム含有試料の分析前後の測定値を示すグラフ表示である。
【図16】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する4つのCO2電極を含む電極カードのクロノポテンシオメトリー反応と、10mg/dLチオペンタールで汚染された試料の分析前後に取られた測定値とともを示すグラフ表示である。
【図17】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するISEのバルク膜抵抗を示すグラフ表示である。
【図18】PVC−COOHを含有するポリマー膜を有するISEのバルク膜抵抗を示すグラフ表示である。
【図19】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEによって測定された全血液試料中のナトリウム濃度値と本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのナトリウムISEを含む電極カードによって測定されたものとの比較を示すグラフ表示である。
【図20】HMW−PVCを含有するポリマー膜を有するカリウムISEによって測定された全血液試料中のカリウム濃度値と本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有する5つのカリウムISEを含む電極カードによって測定されたものとの比較を示すグラフ表示である。
【図21】本発明によるPVC−COOHを含有するポリマー膜を有するナトリウムISEの経時的な電位のマイナスドリフトを示すグラフ表示である。
【図22】2種類の較正溶液に対する本発明による尿素センサの反応を示すグラフ表示である。
【図23】市販の臨床化学分析器によって測定された血漿試料中の尿素濃度値と本発明による尿素センサを含む電極カードによって測定された対応する全血液試料中の尿素濃度値との比較を示すグラフ表示である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の尿素を検出するためのセンサであって、
電極と、
酵素層と、
前記試料と前記酵素層との間に配置された外側拡散層と、
を含み、
前記外側拡散層が尿素に透過性であるセンサ。
【請求項2】
前記電極が、金属電極を含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記電極が、銀/塩化銀電極を含む請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記酵素層が、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒する請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記酵素層が、ウレアーゼを含む請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記酵素層が、1つもしくはそれ以上の酵素安定剤をさらに含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記酵素安定剤が、ポリペプチドおよび不活性タンパク質からなる群から選択される請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、グルタチオンを含む請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記不活性タンパク質が、ウシ血清アルブミンを含む請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
前記酵素層が、グルタチオンに架橋結合されたウレアーゼを含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項11】
ウレアーゼおよびグルタチオンの少なくとも1つに架橋結合された1つもしくはそれ以上の不活性タンパク質をさらに含む請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記不活性タンパク質が、ウシ血清アルブミンを含む請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記外側拡散層が、ポリマーを含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項13に記載のセンサ。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリウレタンを含む請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記電極と前記酵素層との間に配置されたイオン選択膜をさらに含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項17】
前記イオン選択膜が、アンモニウムイオン選択膜を含む請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記イオン選択膜が、
ポリマーマトリクスと、
その中に配置されたアンモニウム選択イオノフォアと、
を含む請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記ポリマーマトリクスが、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記ポリマーマトリクスが、ポリ塩化ビニルを含む請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記イオノフォアが、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリテトラコンタン、ベンゾクラウンエーテル、環状デプシペプチド、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項18に記載のセンサ。
【請求項22】
前記イオノフォアが、ノナクチンを含む請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
前記試料が、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および尿からなる群から選択される請求項1に記載のセンサ。
【請求項24】
前記試料が、血液である請求項23に記載のセンサ。
【請求項25】
基板と、
前記基板の上または中に配置された請求項1に記載の1つもしくはそれ以上のセンサと、
を含むセンサカード。
【請求項26】
請求項1に記載のセンサを形成する方法であって、前記方法が、
電極を用意するステップと、
前記電極の少なくとも1つの表面に酵素層を塗布するステップと、
前記酵素層上に外側拡散層を塗布するステップと、
を含み、
前記センサが試料中の尿素を検出または測定する方法。
【請求項27】
請求項15に記載のセンサを形成する方法であって、前記方法が、
電極を用意するステップと、
前記電極の少なくとも1つの表面にイオン選択膜を塗布するステップと、
前記イオン選択膜に酵素層を塗布するステップと、
前記酵素層上に外側拡散層を塗布するステップと、
を含み、
前記センサが試料中の尿素を検出または測定する方法。
【請求項1】
試料中の尿素を検出するためのセンサであって、
電極と、
酵素層と、
前記試料と前記酵素層との間に配置された外側拡散層と、
を含み、
前記外側拡散層が尿素に透過性であるセンサ。
【請求項2】
前記電極が、金属電極を含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記電極が、銀/塩化銀電極を含む請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記酵素層が、尿素のアンモニウムイオンへの加水分解を触媒する請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記酵素層が、ウレアーゼを含む請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記酵素層が、1つもしくはそれ以上の酵素安定剤をさらに含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記酵素安定剤が、ポリペプチドおよび不活性タンパク質からなる群から選択される請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、グルタチオンを含む請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記不活性タンパク質が、ウシ血清アルブミンを含む請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
前記酵素層が、グルタチオンに架橋結合されたウレアーゼを含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項11】
ウレアーゼおよびグルタチオンの少なくとも1つに架橋結合された1つもしくはそれ以上の不活性タンパク質をさらに含む請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記不活性タンパク質が、ウシ血清アルブミンを含む請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記外側拡散層が、ポリマーを含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)イオノマー、ポリ−(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、酢酸セルロース、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項13に記載のセンサ。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリウレタンを含む請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記電極と前記酵素層との間に配置されたイオン選択膜をさらに含む請求項1に記載のセンサ。
【請求項17】
前記イオン選択膜が、アンモニウムイオン選択膜を含む請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記イオン選択膜が、
ポリマーマトリクスと、
その中に配置されたアンモニウム選択イオノフォアと、
を含む請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記ポリマーマトリクスが、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、水酸化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、シリコーンゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記ポリマーマトリクスが、ポリ塩化ビニルを含む請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記イオノフォアが、ノナクチン、モナクチン、ジナクチン、トリナクチン、テトラナクチン、ナラシン、ヘキサオキサヘプタシクロトリテトラコンタン、ベンゾクラウンエーテル、環状デプシペプチド、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項18に記載のセンサ。
【請求項22】
前記イオノフォアが、ノナクチンを含む請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
前記試料が、血液、血清、血漿、脳脊髄液、唾液、および尿からなる群から選択される請求項1に記載のセンサ。
【請求項24】
前記試料が、血液である請求項23に記載のセンサ。
【請求項25】
基板と、
前記基板の上または中に配置された請求項1に記載の1つもしくはそれ以上のセンサと、
を含むセンサカード。
【請求項26】
請求項1に記載のセンサを形成する方法であって、前記方法が、
電極を用意するステップと、
前記電極の少なくとも1つの表面に酵素層を塗布するステップと、
前記酵素層上に外側拡散層を塗布するステップと、
を含み、
前記センサが試料中の尿素を検出または測定する方法。
【請求項27】
請求項15に記載のセンサを形成する方法であって、前記方法が、
電極を用意するステップと、
前記電極の少なくとも1つの表面にイオン選択膜を塗布するステップと、
前記イオン選択膜に酵素層を塗布するステップと、
前記酵素層上に外側拡散層を塗布するステップと、
を含み、
前記センサが試料中の尿素を検出または測定する方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図4】
【図5】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2008−502921(P2008−502921A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527688(P2007−527688)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020120
【国際公開番号】WO2005/123938
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506391864)インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/020120
【国際公開番号】WO2005/123938
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506391864)インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
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