説明

電気化学装置

【課題】貫通孔形成による利点を生かしつつも、集電体の接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極の湾曲を防止する。
【解決手段】貫通孔30及び一対の端縁部を有する帯状の金属箔と、金属箔に一方の端縁部を残して活物質を塗布した活物質塗工部22,27とを有する電極板21,26を積層してなる発電要素20と、金属箔の一方の端縁部23A,28Aに接続された集電体13,14と、集電体13,14に接続された外部端子11,12と、を備え、金属箔における貫通孔30の開口率は、一対の端縁部21A,26Aにおいてそれ以外の部分21B,26Bよりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学装置では、金属箔表面に活物質層が形成された電極板を用いた発電要素を備える。例えば特許文献1に開示された発電要素は、金属箔に活物質層が形成された後、ロールプレス等によってプレスされ、所定の厚みに調整されている。そして、プレスされた正極及び負極の間に、セパレータを挟んだ状態で巻回することで、発電要素が得られる。
【0003】
この発電要素の巻軸方向の両端の一方には、正極を構成する金属箔において活物質層が形成されていない未塗布部が設けられており、他方には負極を構成する金属箔において同様の未塗布部が設けられている。各未塗布部には集電体が接続され、この集電体は電力を入出力するための電極端子に接続されている。このような構成の発電要素は、電池容器内へと収容されると共に、電解質を発電要素の電極間に満たすことで、電池として製造される。
【0004】
ところで、特許文献2には、当該金属箔に予め多数の貫通孔を形成しておき、その上から活物質層を形成することで、複数の電極に電解液が浸透し易くなり、プリドープを進行させることで、電気化学装置の高容量化、高電圧化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−008944号公報
【特許文献2】特開2008−60028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように貫通孔が金属箔全体に形成された構成によると、集電体に接続する部分にも貫通孔が形成されており、貫通孔が形成されていない場合と比較して強度が低下し、例えば集電体に金属箔を溶接する際に破れる等の不良が生じるため、好ましくない。また、プレス前において、活物質層が形成された塗布部と未塗布部との厚さが異なるため、プレスによって金属箔が受ける圧力ないし金属箔の面方向の延び率が異なり、電極が湾曲し、電極を巻回する工程で巻きずれが生じる虞がある。このため、貫通孔形成による利点を生かしつつも、集電体接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極の湾曲を防止することが要求されている。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、貫通孔形成による利点を生かしつつも、集電体の接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極の湾曲を防止することが可能な発電要素を有する電気化学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貫通孔及び一対の端縁部を有する帯状の金属箔と、前記金属箔に一方の端縁部を残して活物質を塗布した活物質塗工部とを有する電極板を積層してなる発電要素と、前記金属箔の前記一方の端縁部に接続された集電体と、前記集電体に接続された外部端子と、を備え、前記金属箔における前記貫通孔の開口率は、前記一対の端縁部においてそれ以外の部分よりも低いことに特徴を有する。
【0009】
まず金属箔に貫通孔を形成することで、電解質の浸透性を良好にすることができる。これにより、発電要素の中心にも電解質が保持されやすくなり、電気化学装置としての長寿命化が期待できる。この構成に加えて、電極板を構成する金属箔のうち集電体が接続される一方の端縁部を含み、ロールプレス時の送り方向に関して幅方向両端部における貫通孔の開口率を、それ以外の部分よりも低くすることで、貫通孔形成による利点を生かしつつも、集電体の接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極板の湾曲を防止することができる。
【0010】
前記金属箔の一対の端縁部は、前記貫通孔が形成されていない帯状の無孔部とされていてもよい。一対の端縁部、つまり金属箔の幅方向両端部を帯状の無孔部とすれば、当該部分に貫通孔が形成されている場合と比較して、強度を高めることができるから、集電体に接続する際に、金属箔が破れる等の破損の発生を防止することができる。また、集電体への接続部分を無孔部とすることで、貫通孔が形成されている場合と比較して、電気抵抗値を低く抑えることができる。
【0011】
また、帯状の無孔部を集電体の接続部分だけでなく、ロールプレス時の送り方向を長さ方向とした場合の幅方向両端部に設けることで、ロールプレス後に、部位ごとに延び率(ひずみ量)が異なることによる電極板の湾曲を未然に防止することができる。ロールプレス前の電極板は、活物質を塗布した活物質塗工部と塗布されていない部分の厚みが異なり、また、貫通孔が形成されている部分と帯状の無孔部との延び率も異なる。そこで、幅方向両端部に帯状の無孔部を設け、厚み及び貫通孔の形成によって延び率の大きくなる活物質塗工部の大部分となる中央部分を、貫通孔が形成されていないことで延び率の小さくなる帯状の無孔部で両側から挟むことで、電極板全体として延び率が異なることによる湾曲を抑えることができる。これにより、電極板を積層する際の、電極板間の位置がずれる等の不具合を抑制することが可能となる。
【0012】
前記金属箔の一方の端縁部のうち、前記集電体が接続される集電体接続部は、前記貫通孔が形成されていない無孔部とされていてもよい。このような構成によれば、強度を保持したい集電体接続部を完全に貫通孔がない無孔部として、それ以外の金属箔の一対の端縁部を貫通孔が少ない部分とすることで、集電体の接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極板の湾曲を防止するといった効果を最低限発揮させつつも、貫通孔を形成することによる効果、例えば電解質の浸透性をよくすることによる長寿命化が期待できる。
【0013】
前記集電体は、前記金属箔の一方の端縁部を挟みつける挟持部を備え、その挟持部が前記金属箔に超音波溶接されていてもよい。金属箔の一方の端縁部と、当該挟持部とを超音波溶接する際に、この超音波溶接する一方の端縁部に多くの貫通孔が形成されていると、挟持部を介してかかる応力により、金属箔に破れが生じる虞がある。このため、金属箔の超音波溶接される部分を含む一対の端縁部の貫通孔の開口率をそれ以外の部分よりも低く抑え、部分的に所定以上の強度とすることで、金属箔が破れるのを未然に防止することができる。
【0014】
前記金属箔に形成した前記貫通孔の孔径は0.1mm〜1mmであることが望ましい。このような構成によれば、金属箔に活物質を塗布し、その後ロールプレスする際に、貫通孔から金属箔表面の一方に形成された活物質層が、他方の面に漏れてしまうのを抑制することができる。
【0015】
前記金属箔において貫通孔が形成されている領域の開口率は10%以下であることが望ましい。金属箔は、ロールプレスしたり、その後積層状態へと成形するため、所定以上の強度が要求される。そこで、貫通孔が形成されている領域の開口率を10%以下とすることで、製造工程において破断しない引張強度を備えた金属箔とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貫通孔形成による利点を生かしつつも、集電体の接続部分の強度を向上させ、プレス時の電極の湾曲を防止することが可能な発電要素を有する電気化学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る非水電解質二次電池の発電要素と集電体との接続構造を表す分解斜視図
【図2】発電要素の展開した状態の分解斜視図
【図3】正極板の一方の端縁部周辺を拡大した平面図
【図4】ロールプレス工程において正極板をロールプレスしている状態を示した斜視図
【図5】実施形態1の変形例1に係る電極板の一方の端縁部周辺を拡大した平面図
【図6】実施形態1の変形例2に係る電極板の一方の端縁部周辺を拡大した平面図
【図7】実施形態2に係るロールプレス工程において正極板をロールプレスしている状態を示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。
本実施形態の電気化学装置は、例えば電気自動車やハイブリット自動車等の車両に搭載される非水電解質二次電池10(以下、単に電池という)に適用した場合を例示している。この電池10は、図1に示すように、2個の扁平型をなす発電要素20が並列接続された状態で、図示しない角形のケースに収容され、このケース内には電解液が充填されてなる。以下、図1における上下方向を電池10の上下方向として、紙面手前側、奥側を前側、後側として説明する。
【0019】
ケースは、上端が開放された上方開放型に構成され、このケースの上端開口が図示しない長方形状の蓋体によって塞がれる。蓋体の長手方向両側には、それぞれ対応する集電体13、14に接続された正極端子11及び負極端子12(共に外部端子に相当する)が突設されている。正極端子11及び負極端子12は、それぞれ対応するリベット11A、12Aに対してバスバー11B、12Bを介して接続され、リベット11A、12Aは、蓋体、及びその上下(ケースの内外)に配された図示しないパッキンを介して対応する正極集電体13、又は負極集電体14に締結されている。
【0020】
各集電体13、14は、それぞれ大きな電流容量が得られるように十分な厚さの金属板が使用され、正極集電体13は、例えばアルミニウム合金板、負極集電体14は、例えば銅板合金板を用いて成形されている。各集電体13、14は、略台形の平板面を有する本体部13A、14Aと、本体部13A、14Aの端縁から下方に向かって櫛歯状に延設された各4本ずつの接続部13B、14Bとを備えている。本体部13A、14Aには、リベット11A、12Aが貫通・締結される締結孔13C、14Cが設けられている。
【0021】
この集電体13、14の接続部13B、14Bは、クリップ15(集電体の挟持部に相当する)によって、発電要素20の溶接部23A、28A(集電体接続部に相当する)へと接続されている。クリップ15は、溶接される集電体13、14、及び発電要素20の溶接部の材質と同等の抵抗値を有する材料からなり、例えば正極側は、アルミニウム合金、負極側は銅合金製が望ましい。各クリップ15は、長方形状の金属板を2つ折りに屈曲した断面U字形状をなしており、各クリップ15において、接続部13B、14Bとそれらに対応する溶接部23A、28Aとを挟んだ状態で、超音波溶接を行うことによって、挟み付けられている。
【0022】
発電要素20は、正極板21(電極板に相当する)と負極板26(電極板に相当する)との間にセパレータ25を挟んだ状態で扁平型に巻回して構成されている。巻き解いた状態では、図2に示すように、それぞれ巻回方向を長手方向とする帯状をなしている。正極板21は、アルミニウム箔の表面に正極活物質が担持された塗工部22(活物質塗工部に相当する)と、一対の端縁部のうちの一方であって、正極活物質が塗布されずにアルミニウム箔が露出した帯状の未塗工部23を備えている。一方、負極板26は、銅箔の表面に負極活物質が担持された塗工部27(活物質塗工部に相当する)と、正極板21の未塗工部23とは反対側に位置し、一対の端縁部の一方に相当する未塗工部28とを備えている。未塗工部28は、同様に負極活物質が塗布されずに銅箔が露出した帯状をなしている。
【0023】
各塗工部22、27には、正極又は負極の活物質層が形成されている。この活物質層は、主成分を活物質とし、それ以外に結着剤や導電助剤等が含まれている。そして、正極板21の未塗工部23がセパレータ25及び負極板26に重ならないように、負極板26の未塗工部28がセパレータ25及び正極板21に重ならないように面方向にずらした状態で、巻回されて図1のような発電要素20が得られる。即ち、発電要素20の両端部の正極側には、正極板21の未塗工部23のみが積層して突設されており、同負極側には、負極板26の未塗工部28のみが積層して突設された態様をなす。
【0024】
さて、本実施形態の電極板21,26を構成する各金属箔には、多数の貫通孔30が形成されている。図2に示すように、電極板21、26の幅方向一端部に位置する未塗工部23、28及びその反対側の端縁部には、貫通孔30が形成されていない帯状無孔部21A、26A(無孔部に相当する)とされており、それ以外の部分は貫通孔30が形成された有孔部21B、26Bとされている。例えば図3の正極板21を例示して説明すると、有孔部21Bにおいて、貫通孔30は、所定間隔毎に形成されており、孔径は0.1mm〜1mmとされている。また、有孔部21Bにおける貫通孔30の単位面積当たりの開口率は、10%以下とされている。なお、負極板26における貫通孔30は正極板21と同一の構成をなすため、説明を省略する。
【0025】
本実施形態は以上にような構成であって、続いて作用及び効果について説明する。
まず、電極板21、26を構成するアルミニウム箔又は銅箔には、例えばロールトゥロール方式により、一方のロールから他方のロールへ金属箔を巻き取りながら、ロール間においてその金属箔の表面にピンやパンチ等で貫通孔30を穿孔する。貫通孔30を穿孔した状態の金属箔において、その幅方向両端(一対の端縁部)は、貫通孔30が形成されていない帯状無孔部21A、26Aとなるから、例えば穿孔後の金属箔を送る際に、その端部側においてはどの位置においても、センサにて位置を認識できるといったメリットがある。つまり、金属箔の幅方向両端部に貫通孔が形成されている場合、センサで認識する位置がたまたま貫通孔内の繰り抜かれた位置に当たってしまうと、金属箔の位置を認識できないといった不具合が起こりうる。このような不具合を幅方向両端に帯状無孔部21A、26Aを形成することで解消することが可能である。
【0026】
続いて、金属箔の表面に活物質等からなるスラリーを塗布又は噴霧し、乾燥させることで、活物質層を形成する。そして、図4に示すロールプレス工程において、活物質層が形成された金属箔を、厚さ方向にプレスして正極板21及び負極板26を成形する。図4の正極板21を用いてこのロールプレス工程について詳しく説明すると、上下一対のプレスロール40は、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を挟んだ状態で、互いに逆回転しつつ矢印の方向へと走行する。プレスロール40を通過したアルミニウム箔等は、矢印方向の先端側において所定の張力にて巻き取られる。このプレスロール40を通過する際に、正極活物質層及びアルミニウム箔は押し潰され、正極板21の高密度化がなされる。
【0027】
これに伴い、アルミニウム箔は、圧力を受けて主として図4の矢印の方向へと延ばされることとなる。この延び率は、主としてアルミニウム箔の面方向のひずみ量やプレス前の厚さによって異なる。つまり、帯状無孔部21Aと有孔部21Bとは、貫通孔31の形成により金属箔自体のひずみ量が異なる。加えて、プレス前において塗工部22は、未塗工部23に比べて正極活物質層の分だけ厚いため、かかる圧力は高くなる。よって、厚み及び貫通孔30の形成によって延び率が高くなる有孔部21Bを、有孔部21Bよりは延び率が低くなる帯状無孔部21A且つ塗工部22の部分、及び帯状無孔部21A且つ未塗工部23の部分で挟み込むことにより、延び率が異なることによる正極板21の湾曲が緩和される。一方、矢印の方向に対して直交する幅方向においては、プレスロール40により拘束されるため、延びることはほとんどない。なお、ここでは正極板21を用いてロールプレス工程を説明したが、負極板26についても同様の構成により湾曲が緩和される。
【0028】
こうしてロールプレス工程を終えた電極板21、26は、その間にセパレータ25を挟んで巻回され、図1のように、それぞれの電極板21、26の未塗工部23、28が、その両端部にそれぞれ積層して配される。このようにして製造された発電要素20に、続いて集電体13、14を接続する。集電体13、14を接続するには、まず、集電体13、14の接続部13B、14Bと、それに対応する未塗工部23、28の溶接部23A、28Aとをクリップ15で挟み込み、例えば隣り合うクリップ15間にアンビルを挟み、各集電体13、14の前後両端をホーンで挟んで加圧すると共に、超音波振動を与えることにより、超音波溶着される。この際、溶接部23A、28Aは帯状無孔部21A、26A内に位置し、貫通孔30が形成されていないから、クリップ15で挟み付ける際、又は超音波溶接する際に、金属箔が破れるのを抑制することができる。
【0029】
続いて、接続された発電要素20及び集電体13、14を図示しないケース内に収容し、電解液を注液したのち、蓋体によって各端子11、12を外部に突出させた状態でその上部を塞ぐことにより、電池10が完成する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、発電要素20の金属箔に貫通孔30を形成し、有孔部21B、26Bを設けることで、電解液の浸透性を良好にすることができる。これにより、発電要素20の巻軸中心側にも電解液が保持されやすくなり、電池10としての長寿命化が期待できる。この構成に加えて、集電体13、14が接続される発電要素20の一対の端縁部に位置する未塗工部23、28及び未塗工部23、28の反対側の端縁部を帯状無孔部21A、26Aとすることで、貫通孔30による利点を生かしつつも、集電体13、14に溶接される溶接部23A、28Aの強度を向上させ、プレス時の電極板21、26の湾曲を防止することができる。
【0031】
つまり、集電体13、14が接続される溶接部23A、28Aを帯状無孔部21A、26Aとすれば、当該部分に貫通孔30が形成されている場合と比較して、強度を高めることができるから、集電体13、14をクリップ15と共に溶接する際に、金属箔が破れる等の破損の発生を防止することができる。また、溶接部23A、28Aを無孔部とすることで、貫通孔が形成されている場合と比較して、電気抵抗値を低く抑えることができる。
【0032】
また、帯状無孔部21A、26Aを集電体13、14の接続部分だけでなく、ロールプレス時の送り方向を長さ方向とした場合の幅方向両端部に設けることで、ロールプレス後に、部位ごとに延び率(ひずみ量)が異なることによる電極板21、26の湾曲を未然に防止することができる。ロールプレス前の電極板21、26は、活物質層が形成された塗工部22、27と形成されていない未塗工部23、28との厚みが異なり、また、貫通孔30が形成されている有孔部21B、26Bと帯状無孔部21A、26Aとの延び率も異なる。そこで、幅方向両端部に帯状無孔部21A、26Aを設け、厚み及び貫通孔30の形成によって延び率の大きくなる活物質層が形成された有孔部21B、26Bを、貫通孔30が形成されていないことで延び率の小さくなる帯状無孔部21A、26Aで両側から挟むことで、電極板21、26全体として延び率が異なることによる湾曲を抑えることができる。これにより、電極板21、26を巻回する際の、電極板21、26間の位置がずれる等の不具合を抑制することが可能となる。
【0033】
また、集電体13、14の接続部13B、14Bと共に、クリップ15により挟み付けられる溶接部23A、28Aに、貫通孔が形成されていると、クリップ15を介してかかる応力により、溶接部23A、28Aに破れが生じる虞がある。このため、少なくとも金属箔の超音波溶接される溶接部23A、28Aを帯状無孔部21A、26Aに含め、部分的に所定以上の強度とすることで、金属箔が破れるのを未然に防止することができる。
【0034】
また、貫通孔30の孔径を0.1mm〜1mmとすることで、金属箔に活物質層を形成し、その後ロールプレスする際に、貫通孔30から金属箔表面の一方に形成された活物質層が、他方の面に漏れてしまうのを抑制することができる。
【0035】
また、金属箔は、ロールプレスしたり、その後巻回状態へと成形するため、所定以上の強度が要求される。そこで、帯状無孔部21A、26A以外の領域である有孔部21B、26Bにおいて開口率を10%以下とすることで、製造工程において破断しない引張強度を備えた金属箔とすることができる。
【0036】
以上本発明の実施形態1を示したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下のような変形例を含むこともできる。なお、以下の変形例において、上記実施形態と同様の部材には、上記実施形態と同符号を付して説明を省略するものもある。
【0037】
[実施形態1の変形例1]
実施形態1の変形例1について図5を用いて説明する。本変形例は、実施形態1において帯状無孔部21A,26Aとされた一対の端縁部に、貫通孔33が形成されているところが相違する。
【0038】
図5に示すように、電極板31の一対の端縁部のうち、一方に位置する未塗工部32及びその反対側の端縁部(図示せず)は、それ以外の部分よりも貫通孔33の単位面積当たりの形成率が低い低開口部31Aとされている。低開口部31A以外の部分、つまり活物質が塗布された塗工部34から他方の端縁部を除いた部分は高開口部31Bとされ、実施形態1と同等の開口密度にて貫通孔33が形成されている。そして、いずれの開口部31A,31Bにおいても、貫通孔33の孔径は0.1mm〜1mmとされている。以上のような構成の本変形例によっても、貫通孔33を形成することによる利点を生かしつつも、集電体の接続部分である未塗工部32の強度を向上させ、更にプレス時の電極板31の両端に位置する低開口部31Aによって、電極板31自体の湾曲を防止することができる。
【0039】
[実施形態1の変形例2]
実施形態1の変形例2について図6を用いて説明する。本変形例は、実施形態1とは、クリップ15に挟持される溶接部(無孔部)38のみに貫通孔37が形成されていないところが相違する。
【0040】
図6に示すように、電極板35の一対の端縁部のうち、一方に位置する未塗工部36において、クリップ15に挟持・溶接される溶接部は、貫通孔37が形成されていない無孔部38とされている。この無孔部38を除く未塗工部36及び塗工部39には、実施形態1と同様、所定間隔毎に貫通孔37が形成されている。
【0041】
なお、本変形例においては、金属箔の無孔部38以外の部分に均一に貫通孔37を形成したが、これに限られず、例えば、実施形態1の変形例1と同様、金属箔の一対の端縁部における無孔部(溶接部)38を除いた貫通孔の開口率がそれ以外の部分よりも低く形成されていてもよい。
【0042】
このような構成の本変形例によっても、貫通孔37を形成することによる利点を生かしつつ、クリップにより挟持され、集電体の接続部と共に溶接される溶接部を無孔部38とすることで、所定以上の強度を確保し、金属箔が破れる等の不具合を防止することができる。
【0043】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7によって説明する。
本実施形態は、実施形態1とは、電池2個分の電極板50を一度にロールプレスするところが相違する。他の構成については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、活物質層が形成された金属箔を、厚さ方向にプレスして2枚の正極板50を同時に成形する。即ち、上下一対のプレスロール60は、その長さが異なるものの、実施形態1と同様に、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔を挟んだ状態で、互いに逆回転しつつ矢印の方向へと走行する。プレスロール60を通過したアルミニウム箔等は、矢印方向の先端側において所定の張力にて巻き取られる。このプレスロール60を通過する際に、正極活物質層及びアルミニウム箔は押し潰され、正極板50の高密度化がなされる。
【0045】
これに伴い、アルミニウム箔は、圧力を受けて主として図5の矢印の方向へと延ばされることとなる。厚み及び貫通孔の形成によって延び率が高くなる有孔部50Bを、有孔部50Bよりは延び率が低くなる帯状無孔部50A且つ塗工部51の部分、及び帯状無孔部50A且つ未塗工部52の部分で挟み込むことにより、延び率が異なることによる正極板50の湾曲が緩和される。なお、ここでも正極板50を用いてロールプレス工程を説明したが、負極板についても同様の構成により湾曲が緩和される。その後、切り取り線Aに沿って長さ方向に切断することで、2枚の正極板50が得られる。
【0046】
このような構成によれば、一回のロールプレス工程において、複数毎の電極板50を成形する場合であっても、一回の同工程につき一枚の電極板を成形する場合と同様に、帯状無孔部50Aを設けることで、電極板50の湾曲を抑えることが可能である。加えて、帯状無孔部50A且つ未塗工部52に設けられる図示しない溶接部においても、実施形態1と同様に、所定以上の強度を確保し、溶接時の破れを防止することができる。また、製造工程において、金属箔を送る際にも、その幅方向両端部を帯状無孔部50Aとしたから、貫通孔が形成されているためにセンサが金属箔を認識しない等の不具合を防止することができる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)上記した各実施形態において、電池10は、発電要素20を2個備える場合を例示したが、これに限られず、発電要素は1個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、発電要素を並列接続するものだけでなく、直列接続するものも本発明に含むものとする。
【0049】
(2)上記した各実施形態において、発電要素20は、扁平型に巻回されたものを例示したが、これに限られず、例えば巻回される形状は円筒状等他の形状であってもよいし、巻回するのではなく、正極板と負極板とをセパレータを挟んで積層してなるものであってもよい。
【0050】
(3)上記した各実施形態において、電気化学装置として非水電解質二次電池10を例示したが、これに限られず、例えば水系電解質二次電池であってもよいし、その他の電解質を用いる電池であってもよい。また、リチウムイオンキャパシタのような電気化学現象を伴うキャパシタであってもよい。
【0051】
(4)上記した各実施形態において、貫通孔30,33,38は、すべての孔径を同一として、有孔部21B,26B,50B、又は低開口部35A、高開口部35Bの各領域内において形成間隔も等しいものとしたが、これに限られず、孔径が異なっていてもよいし、形成間隔が異なっていてもよい。
【0052】
(5)上記した各実施形態において、上述の利点や効果の各々の全てが本願発明の必須の構成要件につながるものではなく、本願発明は、上述の利点や効果の各々を簡易に実現させる設計自由度を与えるものであって、少なくとも一つの利点あるいは効果を実現させるものであれば良い。
【符号の説明】
【0053】
10:非水電解質二次電池(電気化学装置)、11:正極端子(外部端子)、12:負極端子(外部端子)、13:正極集電体、14:負極集電体、15:クリップ(挟持部)、20:発電要素、21,31,35,50:正極板(電極板)、21A,26A,50A:帯状無孔部、21B,26B,50B:有孔部、22,27,34,39,51:塗工部(活物質塗工部)、23,28,32,36,52:未塗工部、23A,28A,37:溶接部(集電体接続部)、25:セパレータ、26(31,35):負極板(電極板)、30,33,38:貫通孔、40:プレスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔及び一対の端縁部を有する帯状の金属箔と、前記金属箔に一方の端縁部を残して活物質を塗布した活物質塗工部とを有する電極板を積層してなる発電要素と、
前記金属箔の前記一方の端縁部に接続された集電体と、
前記集電体に接続された外部端子と、を備え、
前記金属箔における前記貫通孔の開口率は、前記一対の端縁部においてそれ以外の部分よりも低い電気化学装置。
【請求項2】
前記金属箔の一対の端縁部は、前記貫通孔が形成されていない帯状の無孔部とされていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記金属箔の一方の端縁部のうち、前記集電体が接続される集電体接続部は、前記貫通孔が形成されていない無孔部とされていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記集電体は、前記金属箔の一方の端縁部を挟みつける挟持部を備え、その挟持部が前記金属箔に超音波溶接されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記貫通孔の孔径は0.1mm〜1mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記金属箔において貫通孔が形成されている領域の開口率は10%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電気化学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65517(P2013−65517A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204624(P2011−204624)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】