説明

電気器具

【課題】器具ケーシングの胴部に一体化される底部材にコードリールを設置可能でありながら、底部材のプラグ孔に圧入嵌合される器具用カプラの逆付けを防止する。
【解決手段】電気器具ケーシングを構成する底部材2の内面にコードリール3を縦向きに保持するリール設置部5を形成し、底部材2の側面にプラグ孔7を形成し、リール設置部5をコードリール3の巻取りケース部9を保持可能に設け、リール設置部5とプラグ孔7との間に底部材外方向に段差をもった膨出部15を形成し、プラグ孔7に対し外部から3端子形の器具用カプラ16を圧入嵌合され、膨出部15に形成されたリブ20が各端子17、18、19と非接触の状態で対し、両極端子17、18が反転する向きで器具用カプラ16が嵌入されると、リブ20が底部材内側に位置する端子17と当って嵌入を阻止する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気炊飯器などの電気器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国内仕様の電気炊飯器では、内鍋を収容する器具ケーシングの胴部と鉛直に嵌合一体化される底部材が設けられる。この底部材は、一般に絶縁樹脂の一体成形品とされており、その内底面には、コードリールをこの巻き軸が水平方向を向くように保持するリール設置部が形成されている。一般的に、コードリールには、円形の巻取りケース部を有し、この外周下端から水平方向にコード出口が形成されたものが利用される。
【0003】
リール設置部は、底部材の内底面に形成された平坦部またはリブと胴部側に突出するリブとでコードリールを鉛直に挟持する構造や、これに加えて、円形ケース部の両側面をリブや底部材の側壁で挟む構造となっている。また、巻取りケース部の外周下端よりも下方に突出する板片部を有するコードリールを利用する場合には、底部材の内底面に板片部の差込み口が形成されることもある。
【0004】
上記のようなリール設置部にコードリールが支持された状態で、コード出口は、上記底部材の側面にプラグを通すように形成されたプラグ孔近傍に位置し、このプラグ孔からプラグが露出するようになっている(特許文献1参照)。
【0005】
海外ではアースコードを必要とする地域が多く、この地域で電気器具を使用するには3芯の電源コード(以下、3芯コードという)が必要になる。3芯コードは、2芯のものよりもコード自体が太く、上記巻取りケース部に収納することが寸法上不可能である。このため、器具用カプラを底部材に取付ることにより外付けの3芯コードにより電源を供給する方式が採用されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−267016号公報(図2、図3、図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、器具用カプラのケース部は、この背面に3角配置で突出する内部配線用の両極端子(正極端子、負極端子)とアース端子を有し、両極間で対称形状となっている。このため、上記プラグ孔に対し器具用カプラを底部材外方から圧入嵌合する構成を採用する場合、器具用カプラが上記両極端子と上記アース端子の位置関係が反転する向きに嵌合される、いわゆる逆付けが起こり得る。これを防止するには、プラグ孔近傍に器具用カプラの逆付け防止構造を設けることが考えられるが、上記コード出口の設置空間を確保することができなくなる。したがって、海外仕様の底部材を別途用意することが強いられており、金型コストの増大や、国内仕様と海外仕様の底部材を取り違えた製品組立を招く原因となっていた。
【0008】
そこで、この発明の課題は、器具ケーシングの胴部に一体化される底部材にコードリールを設置可能でありながら、底部材のプラグ孔に圧入嵌合される器具用カプラの逆付けを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明は、器具ケーシングの胴部に一体化される底部材を有しており、この底部材の内面にコードリールをこの巻き軸が水平方向を向く縦向きに保持するリール設置部が形成されており、上記底部材の側面に上記コードリールのプラグを通すプラグ孔が形成されている電気器具において、上記リール設置部が上記コードリールの巻取りケース部を保持可能に設けられており、上記リール設置部と上記プラグ孔との間に底部材外方向に段差をもった膨出部が形成されており、上記膨出部には、上記プラグ孔に対し器具用カプラがこの背面に3角配置で突出する両極端子およびアース端子を先にして外部から圧入嵌合された場合に上記両極端子および上記アース端子と当らないようにリブが形成されており、このリブと上記両極端子の一方側の端子とが、上記器具用カプラの向きが上記両極端子と上記アース端子の位置関係が反転する向きになったと仮定したとき当り合う位置関係にある構成とした。
【0010】
上記リール設置部が上記コードリールの巻取りケース部を保持可能に設けられた構成によれば、コードリールは、コード出口を支持されない状態でも縦向きに保持される。このため、上記リール設置部と上記プラグ孔との間に底部材外方向に段差をもった膨出部の形成が可能になる。そして、この膨出部の形成に伴い、縦向きに保持されたコードリールのコード出口と底部材との間に余裕空間を得ることができる。
【0011】
そして、上記プラグ孔に対し器具用カプラがこの背面に3角配置で突出する両極端子およびアース端子を先にして外部から圧入嵌合されている構成を採用すれば、両極端子のそれぞれとアース端子間に膨出部内面に対する絶縁距離差が設けられた状態で、上記余裕空間内に器具用カプラが位置決めされる。
【0012】
ここで、上記余裕空間を利用することにより、コードリール採用時に上記コード出口と干渉しないようにして、上記膨出部に上記両極端子および上記アース端子と当らないようにリブを形成することが可能になる。
【0013】
そして、上記絶縁距離差が存在するため、上記リブと上記両極端子の一方側の端子とが、上記器具用カプラの向きが上記両極端子と上記アース端子の位置関係が反転する向きになったと仮定したときに当り合う位置関係を設定することが可能になる。この結果、上記器具用カプラが上記両極端子と上記アース端子の位置関係が反転する向き(逆付けの向き)でプラグ孔に嵌入されると、圧入嵌合状態となる前に上記リブと上記一方の端子とが上記リブに先当りすることになる。すなわち、器具用カプラの逆付けが防止される。
【0014】
上記構成においては、上記リブが上記膨出部の段差高と同一高さに形成されている構成を採用することができる。この構成によれば、膨出部を形成しても、コードリールの採用時に上記コード出口をリブで受けられるので、コードリールのガタツキが防止される。
【0015】
上記構成においては、上記膨出部の内底面に外部に連通する水抜き孔が形成されている構成を採用することができる。この構成によれば、上記膨出部に浸水があった場合の排水性が確保されるので、両極端子の電気的安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、この発明の電気器具は、器具ケーシングの胴部に一体化される底部材にコードリールを設置可能でありながら、底部材のプラグ孔に圧入嵌合される器具用カプラの逆付けを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の第1実施形態に係る電気器具を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この電気器具の外観を斜め上方から示している。この電気器具は、図1に示すように、器具ケーシングを構成する胴部1と鉛直に一体化される底部材2を有する電気炊飯器として構成されている。
【0018】
図2、図3に上記底部材2を示すように、底部材2の内面には、コードリール3をこの巻き軸4が水平方向を向く縦向きに保持するリール設置部5が形成されている。また、底部材2の側面には、上記コードリール3のプラグ6を通すプラグ孔7が、長手方向が鉛直方向に向く略矩形状に形成されている
【0019】
リール設置部5は、底部材2の内底面に形成された平坦部8でコードリール3の巻取りケース部9の外周下面を支持し、平坦部8に形成された突起部10と、巻取りケース部9の外周下端よりも下方に突出する板片部11が嵌る差込み口12とで構成されている。コードリール3は、板片部11を差込み口12に嵌められると、平坦部8上に載った状態で突起部10および板片部11と差込み口12の係合により位置ずれと横倒れが規制される。このため、コードリール3は、コード出口13が支持されない状態でもリール設置部5により縦向きに保持される。
【0020】
コード出口13は、巻取りケース部9の外周下端から水平方向に向けて形成されており、その先端外周14が付け根よりも外側に突出するラッパ状になっている。コード出口13の先端は、プラグ孔7の孔縁上に位置しており、プラグ6が外部に露出している。
【0021】
上記リール設置部5と上記プラグ孔7との間に鉛直方向下向き(底部材外方向)に段差をもった膨出部15が形成されている。膨出部15は、その内面の大部分が水平面とされており、この面がプラグ孔7の孔縁下辺に連続している。平坦部8を基準とした膨出部15の鉛直方向の段差高H1は、上記コード出口13の先端広がり形状よりも大きく設けられている。
【0022】
図4は、コードリール3に代えて、着脱式の電源コード(図示省略)を採用し、上記プラグ孔7に対し外部から器具用カプラ16が圧入嵌合された様子を示す。図4に示すように、膨出部15は、上記器具用カプラ16の下面を支持し、プラグ孔7の孔縁と共に器具用カプラ16を位置決めしている。
【0023】
図5、図6に示すように、器具用カプラ16は、プラグ孔7に嵌合する外周部16aと器具用カプラ16の背面を構成する背面壁16bとで形成されたプラグ受け口16cを有する3端子形のものであり、3芯の電源コードのプラグ受けとして機能する。
【0024】
外周部16aには、正面側上がりのテーパ部16dが対向配置で形成されており、このテーパ部16dがプラグ孔7の孔縁を通過するのと同時的に、プラグ孔7が開口する底部材2の側壁2aとプラグ受け口16cの外周に突出する鍔部16eとが当り、器具用カプラ16の圧入嵌合が完了する。
【0025】
上記背面壁16bには、内部配線が接続される両極端子17、18およびアース端子19が3角配置で突出するように設けられている。このため、器具用カプラ16は、上記プラグ孔7へ外周部16aを嵌入する際、器具用カプラ16は両極端子17、18およびアース端子19を先にして圧入嵌合される。
【0026】
具体的には、図4に示すように、各端子17、18、19は、端子面が水平方向を向いている。上記の圧入嵌合状態で、両極端子17、18は、プラグ孔7の孔中心を通り、器具用カプラ16の嵌入方向に平行な鉛直面S1を境として一方側に位置し、これと反対側にアース端子19が位置している。また、両極端子17、18は、プラグ孔7の孔中心を通り、器具用カプラ16の嵌入方向に平行な水平面S2に対する鉛直距離が等距離となっている。一方、アース端子19は、平坦部8よりも高い位置にあり、上記水平面S2上にある。したがって、上記両極端子17、18のうち、鉛直方向下方側(底部材外方側ともいえる)に位置する端子18の膨出部15に対する鉛直方向の絶縁距離L1は、アース端子19の鉛直方向の絶縁距離L2よりも小さくなる。上記両極端子17、18のそれぞれの上記鉛直面S1に対する水平距離、アース端子19の上記鉛直面S1に対する水平距離は等しい。
【0027】
上記膨出部15には、上記段差高H1を超えない高さのリブ20が上記両極端子17、18および上記アース端子19と非接触の状態に形成されている。より具体的には、リブ20は、段差高H1と同一高で、アース端子19の鉛直方向下方に位置している。このため、器具用カプラ16が図4に示す向き、すなわち、この第1実施形態における正規の向きでプラグ孔7に嵌入されると、アース端子19がリブ20の鉛直方向上方(底部材内方ともいえる)を通過することになる。
【0028】
また、リブ20は、上記鉛直面S1を境としてアース端子側に片寄せて形成されており、上記正規の向きでプラグ孔7に嵌入される限り、上記鉛直面S1を境としてアース端子19と反対側にある両極端子17、18と接触することはない。
【0029】
ここで、器具用カプラ16の向きが両極端子17、18とアース端子19の位置関係が反転する向きになったと仮定したとき、端子17の方が鉛直方向下側に位置することになるが、両端子17、18の水平面S2に対する鉛直距離が等距離のため、端子17の膨出部15に対する絶縁距離も絶縁距離L1となる。そして、リブ20は、鉛直方向上向きにアース端子19の絶縁距離L2よりも小さく上記端子18の絶縁距離L1よりも大きい長さに対応する高さをもたされており、上記の仮定条件下では、リブ20と端子17とは鉛直方向に関し重なる位置関係にある。
【0030】
また、上記の仮定条件下では、端子17が上記鉛直面S1を境としてリブ20側に位置することになるが、端子17の上記鉛直面S1に対する水平距離と、アース端子19の上記鉛直面S1に対する水平距離とは等しいため、アース端子19の鉛直方向下方に位置するリブ20と端子17とは水平方向に関し重なる位置関係にある。
【0031】
上記リブ20と上記端子17とは、上記の仮定条件下で水平方向および鉛直方向に重なる関係にあり、かつ上記器具用カプラ16と上記プラグ孔7の嵌合形状は長手方向が鉛直方向に向く略矩形のため、上記の仮定条件下で当り合う位置関係にある。
【0032】
したがって、上記器具用カプラ16が両極端子17、18とアース端子19の位置関係が反転する向き(逆付けの向き)でプラグ孔7に嵌入されると、圧入嵌合状態となる前に上記リブ20と上記端子17(一方側の端子)とが嵌入方向に先当りすることになる。これにより、器具用カプラ16の逆付けが防止される。
【0033】
また、コードリール3を採用した場合、リブ20は、平坦部8を基準とした段差高H1と同一高さなので、コード出口13がリブ20に受けられる。これにより、コード出口13のガタツキが抑制される(図3参照)。なお、リブ20の端面形状は、コード出口の形状に合わせて変更することができる。
【0034】
また、上記のように膨出部15を形成すると、底部材2内に浸水があった場合に液滴が流れ込み易くなる。このため、膨出部15の内面に外部に連通する水抜き孔21が、隅部を含む複数個所に形成されている。このため、液滴が速やかに排水される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る電気器具を後方斜め上方から示した全体斜視図
【図2】(a)図1の底部材を後方から見た側面図、(b)図1の底部材を左側から見た側面図
【図3】(a)は図2(a)の底部材のコードリール付近を上方から示す部分拡大平面図、(b)は図3(a)のIII−III線の断面図
【図4】(a)は図3(a)のコードリールを外し、底部材のプラグ孔に器具用カプラを取り付けた状態を示す部分拡大平面図、(b)は図4(a)のIV−IV線の断面図
【図5】図4(a)の分解斜視図
【図6】図4(a)の底部材を左側から見た側面図
【符号の説明】
【0036】
1 胴部
2 底部材
2a 側壁
3 コードリール
4 巻き軸
5 リール設置部
6 プラグ
7 プラグ孔
8 平坦部
9 巻取りケース部
10 突起部
11 板片部
12 差込み口
13 コード出口
14 先端外周
15 膨出部
16 器具用カプラ
16a 外周部
16b 背面壁
16c プラグ受け口
16d テーパ部
16e 鍔部
17、18 両極端子
19 アース端子
20 リブ
21 水抜き孔
H1 段差高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具ケーシングの胴部に一体化される底部材を有しており、この底部材の内面にコードリールをこの巻き軸が水平方向を向く縦向きに保持するリール設置部が形成されており、上記底部材の側面に上記コードリールのプラグを通すプラグ孔が形成されている電気器具において、上記リール設置部が上記コードリールの巻取りケース部を保持可能に設けられており、上記リール設置部と上記プラグ孔との間に底部材外方向に段差をもった膨出部が形成されており、上記膨出部の内面には、上記プラグ孔に対し器具用カプラがこの背面に3角配置で突出する両極端子およびアース端子を先にして外部から圧入嵌合された場合に上記両極端子および上記アース端子と当らないようにリブが形成されており、このリブと上記両極端子の一方側の端子とが、上記器具用カプラの向きが上記両極端子と上記アース端子の位置関係が反転する向きになったと仮定したとき当り合う位置関係にあることを特徴とする電気器具。
【請求項2】
上記リブが上記膨出部の段差高と同一高さに形成されている請求項1に記載の電気器具。
【請求項3】
上記膨出部の内底面に外部に連通する水抜き孔が形成されている請求項1または2に記載の電気器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−68657(P2007−68657A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256823(P2005−256823)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】