電気噴霧/電気紡績を行う装置および方法
本発明は、ファイバ状材料を製造するための装置および方法に関するものであって、本発明による装置は、ファイバ状材料の形成原料をなす物質を受領し得るよう構成された導入口を有した容器と;この容器内に配置された共通電極と;この共通電極に対向しつつ容器の壁内に形成された複数の押出部材であるとともに、これら押出部材と共通電極との間に導入口に連通したスペースを形成するものとされ、これにより、このスペース内に物質を受領し得るものとされたような、複数の押出部材と;を具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、“Electrospinning of Fibers Using a Rotating Spray Head ”と題して2004年4月8日付けで出願された特許文献1(代理人参照番号245015US−2025−2025−20)に関連するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。また、本出願は、“Electrospinning in a Controlled Gaseous Environment ”と題して2004年4月8日付けで出願された特許文献2(代理人参照番号245016US−2025−2025−20)に関連するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリマー溶液からファイバまたはファイバ状材料を電気噴霧して電気紡績するという技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ナノファイバは、衣類産業から軍事応用まで様々な分野において有用である。例えば、バイオマテリアルの分野においては、ナノファイバに基づいた構造であるとともに生きた細胞を効果的に支持して組織を成長させるための足場を提供し得るような構造の開発に、大きな関心が持たれている。織物の分野においては、ナノファイバが単位質量あたりにつき大きな表面積を有しており、そのため、軽量かつ耐磨耗性の大きな衣類を提供し得ることのために、ナノファイバに大きな関心が持たれている。また、カーボンナノファイバは、例えば、補強された複合物や、熱管理や、エラストマーの補強、において使用されている。ば使われている。様々な物理的性質や化学的性質を生成したり制御したりし得ることのために、ナノファイバに関しては、多くの潜在的な応用が開発されている。
【0004】
電気噴霧/電気紡績技術を使用することにより、長軸方向において1ナノメートルと同じくらい小さな粒子およびファイバを形成することができる。電気噴霧という現象においては、ニードルの端部のところにおいてポリマー融液の液滴を形成し、その液滴を帯電させ、電荷に起因する電気的反発力を利用して液滴の一部を放出させる。電気噴霧の際には、液滴の一部内に存在する溶媒が蒸発し、小さな粒子が形成されるものの、これは、ファイバではない。電気紡績技術は、電気噴霧技術と同様の技術である。しかしながら、電気紡績においては、放出時に、吐出される液体からファイバが形成される。
【0005】
ガラスファイバは、場合によっては、サブミクロンという大きさで存在する。小さな直径で電気紡績されたナノファイバが製造され、20年以上にわたって、エア濾過用途において市販されている。最近になって、ポリマー融液の吹付によるファイバが製造された。このファイバは、1ミクロン未満という直径を有している。濾過やバリア織物や拭取繊維や介護用品や医療用途や薬学用途も含めて、付加価値を有したいくつかの不織布応用は、市販されているナノファイバおよびナノファイバの興味深い技術的特性のために、有益なものとすることができる。電気紡績されたナノファイバは、ある方向において1μm未満という寸法を有しており、好ましくは、その方向において、100nm未満という寸法を有している。ナノファイバウェブは、典型的には、適切な機械的特性を有するようになおかつナノファイバウェブに対して相補的な機能を提供し得るように選択された様々な基板上に適用される。ナノファイバフィルタ媒体の場合には、基板は、プリーツ加工という点において、また、フィルタ製造という点において、また、使用の耐久性という点において、また、フィルタクリーニングという点において、選択されてきた。
【0006】
ナノファイバの製造のための基本的な電気紡績装置10が、図1に示されている。装置10は、電界12を生成し、この電界12が、ポリマー融液すなわちポリマー溶液14を案内して、ニードル18の先端16から電極20へと、放出させる。容器/シリンジ22は、ポリマー溶液14を収容している。従来技術においては、電圧源HVの一端が、ニードル18に対して直接的に電気接続され、電圧源HVの他端が、電極20に対して電気的に接続されている。先端16と電極20との間に形成された電界12により、ポリマー溶液14は、ポリマー溶液を保持している結合力に対して打ち勝つことができる。ポリマー14からなるジェットが、電界12(すなわち、抽出用の電界)によって、先端16から電極20に向けて引かれ、そして、ニードル18から電極20までの飛行の間に乾燥し、これにより、ポリマーファイバを形成する。形成されたポリマーファイバは、電極20上から下流側において収集することができる。
【0007】
電気紡績プロセスに関しては、様々なポリマーについて、文献が存在する。ナノファイバを形成するための1つのプロセスは、例えば、非特許文献1に記載されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。適切なポリマーと溶液との組合せを選択することにより、1ミクロン未満という直径を有したナノファイバを形成することができる。
【0008】
電気噴霧して電気紡績するのに適した流体の例には、溶融ピッチや、ポリマー溶液や、ポリマー融液や、セラミクスの前駆体をなすポリマーや、溶融ガラス材料、がある。これらポリマーは、ナイロンや、フッ素系ポリマーや、ポリオレフィンや、ポリイミドや、ポリエステルや、他のエンジニアリングポリマーや、織物形成ポリマー、とすることができる。上記以外の様々な流体または材料を使用することによって、ファイバを形成することができる。例えば、純粋な液体や、ファイバ溶液や、小さな粒子との混合物や、生物学的ポリマーとの混合物、を形成することができる。ファイバを形成するために使用される材料の一覧およびリストは、特許文献3,4および非特許文献2に記載されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。特許文献3には、電気処理の対象をなす生物学的材料および生体適合性材料と、これら材料に対して使用し得る溶媒と、が記載されている。特許文献4には、ナノファイバのために使用される溶媒および材料の他に、小さなスペースで溶媒を蒸発させる手法でのナノファイバの製造に関し、大規模化の困難さが記載されている。非特許文献2には、ナノファイバを製造するために使用し得る材料/溶媒のリストの一部が記載されている。
【0009】
さらに、特許文献5には、単一のまたは複数の電圧印加されたニードルを使用して電気紡績を行うための金属ニードルが開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。これに代えて、電気紡績は、細い端部を有した容器から行うことができる。その場合、細い端部を通して、容器から流体を抽出するとともに、流体内に含浸させた長尺尖端電極を使用して、流体に電圧を印加する。例えば、特許文献6には、上述したような単純な噴霧ヘッドが開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0010】
さらに、特許文献3,4,7,8,9には、電圧が印加された複数のニードルを使用することによって、ナノファイバ製造のための噴霧領域を増大させることが記載されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。これら特許文献には、複数のニードルに対してポリマーファイバを供給するための方法が記載されており、各ニードルは、高電圧を有した1つまたは複数の導電性基板に対して接続されている。例えば、特許文献8においては、その第2a図に、電気紡績装置が例示されており、2つの導電性基板26,30が、各ニードル32に対して電気的に接触している。高電圧が、各ニードル32に対して、ニードルに対して直接的に接触している導電性基板26,30を介して印加される。さらに、特許文献8,9の双方においては、ポリマー溶液の電気紡績は、少なくとも1つの導電プレート上に配置された1つまたは複数の帯電した導電性ノズルを通して行われる。
【0011】
よって、互いに個別に電圧印加された複数のニードルおよび/または複数の溶液リザーバを使用した従来技術は、大規模での製造には適していない。各ニードルのところにおける電界を制御するのに必要な制御機構の数は、ニードルの数に応じたものとなり、大規模な製造に際しては、100本のニードルを軽く超えることとなり得る。さらに、各ニードルリザーバに対してポリマー溶液を個別的に供給して制御することは、大規模なナノファイバ製造へとスケールアップすることを困難なものとする。
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号第10/819,916号明細書
【特許文献2】米国特許出願シリアル番号第10/819,945号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2002/0090725A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2002/0100725A1号明細書
【特許文献5】米国特許第3,280,229号明細書
【特許文献6】米国特許第705,691号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2002/0007869A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2002/0122840A1号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2002/0175449A1号明細書
【非特許文献1】“Structure Formation in Polymeric Fibers”, by D. Salem, Hanser Publishers, 2001
【非特許文献2】Huang et al., Composites Science and Technology, v63, 2003
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、大規模な製造を容易とし得るような、ファイバおよび/またはファイバ状材料の製造のための装置および方法を提供することである。
【0013】
他の目的は、従来技術における上記問題点を改良し得るよう、並列的な製造プロセスでもってファイバおよび/またはファイバ状材料を製造し得るような装置および方法を提供することである。
【0014】
したがって、本発明のさらなる目的は、電気噴霧ヘッドから複数のファイバおよび/またはファイバ状材料を同時に押し出すような装置および方法を提供することである。
【0015】
よって、本発明の1つの見地においては、ファイバ状材料を製造するための新規な装置が提供され、この装置は、ファイバ状材料の形成原料をなす物質を受領し得るよう構成された導入口を有した容器と;この容器内に配置された共通電極と;この共通電極に対向しつつ容器の壁内に形成された複数の押出部材であるとともに、これら押出部材と共通電極との間に導入口に連通したスペースを形成するものとされ、これにより、このスペース内に物質を受領し得るものとされたような、複数の押出部材と;を具備している。
【0016】
本発明の第2の見地においては、新規な方法が提供され、この方法においては、ファイバ状材料の形成原料をなす物質を、複数の押出部材を有した容器に対して、供給し;物質を押し出す方向において複数の押出部材に対して共通電界を印加し;複数の押出部材を通して複数の押出部材の先端のところへと物質を案内し;複数の押出部材の先端のところにおいて物質を電気噴霧し、これにより、ファイバ状材料を形成する。また、共通電界内において、押出部材を通して物質を押し出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ならびに、本発明に付随する多くの利点は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより、完全に明瞭となるであろう。
【0018】
添付図面においては、複数の図面にわたって、互いに同一の部材または互いに同様の部材には、同じ参照符号が付されている。図2は、ファイバおよび/またはファイバ状材料を製造するための電気噴霧/電気紡績を行う装置21を概略的に示す図である。本明細書においては、ファイバ状材料という用語は、短いファイバとして電気噴霧された材料と、より長い連続的なファイバとして電気紡績された材料と、の双方を意味する。本発明の一実施形態においては、噴霧ヘッド24は、容器28内に収容された電極26を備えている。容器28は、絶縁材料から、あるいは、電気的に透過性の材料から、形成することができる。噴霧ヘッド24は、アレイ状をなす複数の押出部材30と、アレイ状をなす噴霧開口30に対して電気噴霧媒体14を供給するための通路32と、を備えている。押出部材30は、電極26に対して対向しつつ容器28の壁内に設けられている。これにより、押出部材30と電極26との間に、通路32(導入口)に対して連通したスペース34を形成することができる。これにより、容器28のスペース34内へと、電気噴霧媒体14(すなわち、押出可能な材料)を受領することができる。電気噴霧媒体14は、ナノファイバ材料の押出も含めてファイバの押出に関して従来技術において公知であるような、ポリマー溶液および/またはポリマー融液を備えている。実際、本発明において好適なポリマーおよび溶媒には、例えば、ジメチルホルムアミドと塩化メチレンとの混合溶液(20/80 w/w)内のポリカプロラクトン、蒸留水内のポリエチレンオキサイド、蒸留水内のポリアクリル酸、アセトン内のポリメチルメタクリレート(PMMA)、アセトン内の酢酸セルロース、ジメチルホルムアミド内のポリアクリロニトリル、ジクロロメタンまたはジメチルホルムアミド内のポリラクチド、蒸留水内のポリビニルアルコール、がある。
【0019】
本発明の一実施形態においては、電極26は、容器内において中央に配置されており、電気噴霧媒体を押し出すための共通電界を生成する共通電極を形成している。好ましくは、電極26は、押出部材30に対して接触しないようにしつつ、押出部材30の近くに配置することができる。外部電極35が、容器28の外部において、電極26に対向しつつ、設けられている。電極26,35間にわたっての電位差が、図2に示すような電界12を生成する。電界12は、容器28を貫通してさらに容器28を超えて、外部電極35にまで延在する。電極26と外部電極35との幾何学的な構成が、電界強度と電界配布とを決定する。電気噴霧媒体14は、押出部材30からの押出時には、外部電極35に向けて電界12に沿って案内される。
【0020】
本発明の1つの実施形態においては、噴霧ヘッド24は、好ましくは、互いに個別とされた複数の押出部材30を備えている。押出部材30は、例えば、キャピラリや、キャピラリ束や、ニードルや、ニードル束や、チューブや、チューブ束や、ロッドや、ロッド束や、同心チューブや、フリットや、開放セルを有した発泡体や、これらの組合せや、あるいは、容器28の壁内に形成された適切な形状のチャネル、とすることができる。個々の押出部材は、噴霧ヘッド24から噴霧ヘッド24の外部にまで電気噴霧媒体14を放出するのに適切なサイズとされたような、金属製のまたはガラス製のまたはプラスチック製のキャピラリチューブから形成することができる。放出時には、電気噴霧媒体14には、電圧が印加される。さらに、本発明の1つの実施形態においては、図2に示すように、押出部材30は、容器28を超えて延出されている。他の実施形態においては、噴霧部材は、容器28の外壁を超えないものとされる。各押出部材30は、容器28の内部に位置した第1開口28と、容器28の外部に位置した第2開口と、を備えている。
【0021】
図3Aは、押出部材30の一例を示しており、この例においては、押出部材30は、例えば、50〜250μmという内径(ID)と、約260μmという外径と、を有している。チューブやキャピラリやニードルやチャネルやその他に関して、例えば矩形横断面形状といったような、他の横断面形状を適用することもできる。50〜250μmという内径は、ナノファイバの電気噴霧を容易なものとする。矩形横断面形状の場合には、400μm未満という内部寸法が、好ましい。他の例においては、図3Bは、チューブ30の開口をカバーするフリット36を有しているチューブ30を示している。ポンプ(図示せず)が、各部材30を通しての電気噴霧媒体14の流速を、キャピラリの直径と長さとキャピラリの数と電気噴霧媒体の粘性とに応じた所望値に、維持する。ポンプと容器28との間に、フィルタを配置することができる。これにより、押出部材30の所定寸法よりも大きな不純物および/または分子を、濾過することができる。また、各部材を通しての流速は、キャピラリから導出される液滴の形状を一定に維持し得るよう、電界強度と平衡化しているべきである。Hagen-Poisseuille 法則を使用すれば、100μmという内径と約1cmという長さとを有したキャピラリを通しての圧力降下は、1ml/hrという流速に対しては、物質の粘性に応じて、約100〜700kPaである。
【0022】
一般に、より小さな直径のチューブは、より細いナノファイバをもたらす。また、複数のチューブ(複数の噴霧ヘッド)を、単一の装置内に収容し得るけれども、互いに隣接するチューブどうしの間には、これらチューブどうしの間における電気的な干渉を回避し得るよう、ある種の最小離間距離を設けなければならない。この最小離間距離は、使用されるポリマー/溶媒の組合せや、電界密度や、チューブ直径の、といったような1つまたは複数の要因によって変わることとなる。互いにあまりに近づけすぎて配置されたチューブどうしの場合には、溶媒の除去速度が遅くなってしまい、ファイバ品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0023】
押出部材30は、本発明の一実施形態においては、1つまたは複数の方向において互いに隣接してあるいは互いに近接して配置されたアレイ状をなす複数のチャネルとされている。これらチャネルは、互いに近接配置された個々の部材からなる束とすることができ、個々の部材は、例えば、キャピラリまたはロッドとすることができる。個々の部材は、例えば、非導電性材料から形成することができる。例えば、ガラスや、セラミクスや、テフロン(登録商標)や、ポリエチレン、といったような材料から形成することができる。しかしながら、個々の部材は、導電性材料から形成することもできる。電気絶縁性材料あるか非導電性材料から形成された多数の電気絶縁性押出部材30を使用した場合には、電極26と外部電極35との間に確立される電界12を変えることがない。
【0024】
図4に示す他の実施形態においては、電気噴霧媒体14を噴霧または紡績するためのチャネルは、押出部材30として形成される。複数のチャネルが、複数の(金属製)ニードルまたは複数の中実ワイヤを互いに当接させつつ配置し、これにより、ニードルどうしの間においてまたは中実ワイヤどうしの間において複数の押出チャネルを形成することによって、形成されている。例えば、図4に示すように、複数の中実ニードルワイヤ38は、互いに近接して配置され、これにより、電気噴霧媒体14が流通する複数のチャネル40を形成している。しかしながら、本発明の他の実施形態においては、導電性材料または非導電性材料からなる複数のキャピラリ束を使用する。本発明のさらに他の実施形態においては、ガラスやセラミクスや金属や有機材料からなるフリットを使用して、あるいは、電気噴霧ヘッド24のベースプレート内において適切な形状のものとして形成されたマイクロマシン穴を使用して、複数のチャネルを形成する。機械加工されたプレートは、シリコン製である場合には、その後、酸化することによって、二酸化ケイ素を形成することができる。その後、容器28の底部材として取り付けることができる。本発明のさらに他の実施形態においては、任意の有機材料または任意の無機材料から形成された開放セル発泡体を容器28の底部材として使用することにより、容器28を貫通させて複数のチャネルを形成する。上述した様々な実施形態は、本発明のいくつかの非限定的な例示に過ぎない。
【0025】
複数の押出部材30を使用した構成と組み合わせて電極26を使用することにより、各押出部材のところにおける電界を個別的かつ選択的に制御するという複雑さが不要であり、このため、大きな処理速度が可能である。さらに、図5は、電極26aを使用しているという変形例を示している。電極26aは、部材30に対向したところにおいては非平坦であるような表面を有している。上記と同様に、電極26aは、複数の押出部材30を駆動し得るよう構成されている。しかしながら、電極26aは、好ましくは個々の押出部材30に対向した場所に、複数の突起42を有している。これにより、個々の押出部材30のところにおいて、電界強度を増強することができる。
【0026】
さらに、本発明の他の実施形態において、図6Aは、押出部材として複数のフリット30を有した容器28を示している。1つのフリット30は、図2に示すキャピラリの場合と同様に、電気噴霧媒体14のための1つの流通チャネルを提供する。
【0027】
図2の実施形態においては、図2に示すように、電極26は、フラットな形状を有している。フラットな電極26は、容器28内において電気噴霧媒体14に対して電圧を印加する。図2に示すように、電界12は、高電圧電源HVを使用することによって、電極26から、部材30を有している容器28の壁を貫通して、外部電極35にまで、延在している。高電圧電源HVは、任意の市販のDC電源とすることができ、例えば、Bertan
Model 105-20R(登録商標)(Bertan, Valhalla, NY) や、あるいは、Gamma High Voltage Research Model ES30P(登録商標)(Gamma High Voltage Research Inc., Ormond Beach) とすることができる。
【0028】
高電圧電源HVは、図6Aに示すように、リード線44を介して電極26に対して接続されているとともに、他のリード線46を介して外部電極35に対して接続されている。外部電極35は、電極26から、好ましくは5〜50cmだけ離間したところに、配置されている。外部電極35は、プレートまたはスクリーンとすることができる。典型的には、高電圧電源によって、2,000〜400,000V/mという電界強度が確立される。
【0029】
典型的には、外部電極35は、接地される。押出部材30からの押出によって形成されたファイバは、電界12によって、外部電極35に向けて案内される。本発明の1つの実施形態においては、電気紡績されたファイバまたは電気噴霧されたファイバ状材料は、図6Aに概略的に示すような例えばコンベヤベルト50といったような収集機構によって、収集することができる。収集機構は、除去ステーション48のところにおいて、収集されたファイバまたはファイバ状材料を搬送する。除去ステーション48のところにおいては、電気紡績されたファイバが、ベルト50から除去される。その後、ベルト50は、さらなるファイバを収集する目的で、戻ってくる。収集機構48は、個別の部材とすることも、あるいは、電極とコンベヤベルトとの組合せとすることも、できる。収集機構は、また、電気紡績されたファイバまたは電気噴霧されたファイバ状材料を収集し得るよう、ベルトに代えて、メッシュや、回転ドラムや、フォイル、を使用することもできる。他の実施形態においては、電気紡績されたファイバは、外部電極35上に堆積して集積し、その後、バッチプロセスの後に、除去される。
【0030】
外部電極35と電極26との間の距離は、いくつかの要因のバランスに基づいて決定される。そのような要因には、例えば、溶媒の蒸発速度や、電界強度や、ファイバ直径の低減化のために十分であるような距離および/または時間、がある。これら要因およびそれらの決定は、本発明においては、従来技術における単一のニードル噴霧部材の場合と、同様である。本発明者らは、溶媒の急速な蒸発によって、nmサイズのファイバ直径よりも大きくなってしまうことを、見出した。
【0031】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、溶媒の蒸発は、図6Aに示すように、チャンバ52内に容器28を配置することによって、制御される。この場合、温度と、圧力と、雰囲気をなす組成物と、が制御される。
【0032】
押出部材30の周囲における気体雰囲気の制御は、ナノファイバの直径分布に関して、および、より細い直径のナノファイバの製造に関して、電気紡績されるファイバの品質を改良する。本発明者らは、押出部材の周囲における気体雰囲気内へと、負に帯電したガスを導入することにより、例えば、二酸化炭素や、六フッ化硫黄や、フレオンや、溶媒蒸気および/またはイオンおよび/または帯電粒子を含有した混合気体を導入することにより、電気紡績されたファイバの品質が改良されることを見出した(すなわち、ファイバの直径が細くなるとともに、直径サイズの分布がより一様になる)。
【0033】
例えば二酸化炭素といったような負に帯電したガスは、材料の粒子および液滴を形成する目的で電気噴霧において利用されてきたけれども、本発明以前においては、電気紡績の雰囲気内において負に帯電したガスを利用することの効果は、一切示されていない。実際、押出部材の周囲の雰囲気内においてとりわけ押出部材の先端のところにおける液体液滴のところにおいて自由に溶媒の蒸発が起こるという電気紡績の性質は、負に帯電したガスの追加によっても紡績ファイバの特性に影響を与えないことを、示唆する。
【0034】
さらに、電気噴霧に際して使用されているポリマー溶液の流体的特性の相違と、電気噴霧における相違とは、例えば伝導率の相違や粘性の相違や表面張力の相違は、電気噴霧装置および電気紡績装置の周囲の気体雰囲気を、全く異なるものとする。例えば、電気噴霧プロセスにおいては、流体ジェットは、大きなDC電圧でもってキャピラリから放出され、即座に複数の液滴へと分裂する。複数の液滴は、蒸発によって表面電荷力が引き起こされて表面張力を超えたとき(レイリー限界)には、粉々になることができる。電気噴霧された液滴または液滴残留物は、静電引力によって収集表面(すなわち、典型的には、接地されている)へと移動する。一方、電気紡績においては、大きな粘性の流体が使用され、この流体が、流体内引力に基づいて、一体的なジェットとして連続物として引っ張られ(すなわち、放出され)、長尺のファイバへと引き伸ばされ、乾燥して、後述するような不安定性を受ける。乾燥および蒸発プロセスは、1000分の1以下へと、ファイバの直径を低減させる。電気紡績に際し、本発明においては、比較的低い粘性のポリマー溶液および固体含有物を使用することによって非常に細いファイバ(すなわち、直径が100nm未満)を形成する場合には、プロセスの複雑性が、引っ張られたファイバを囲んでいる気体雰囲気によって影響されることを、認識している。
【0035】
図1においては、電界12が、キャピラリ(例えば、ニードル18の先端16)から、流体フィラメントまたは流体ジェットとして、ポリマー溶液14を引っ張る。決定的な相違点は、先端であり、この先端は、従来技術においては、テイラー円錐と称されている。液体ジェットが乾燥するにつれて、単位面積あたりについての電荷が、増大する。多くの場合、キャピラリの先端から2〜3cmの範囲内において、乾燥液体ジェットは、電気的に不安定となる(すなわち、レイリー不安定性が進展する)。乾燥し続ける液体ジェットは、変動し、ファイバを急速に引き伸ばし、これにより、ファイバ上の表面積の関数として、電荷密度を減少させる。
【0036】
キャピラリを囲んでいる気体雰囲気を修正することにより、本発明においては、印加電圧を増大させることができ、キャピラリから液体のジェットの引っ張りを改良することができる。特に、負に帯電したガスは、キャピラリの周囲におけるコロナ放電のしきい値を低減させるものと考えられる。これにより、大きな電圧の印加により、静電力を増強することができる。キャピラリの周囲におけるコロナの形成は、電気紡績プロセスを中断させることとなる。さらに、本発明においては、絶縁性ガスが、レイリー不安定性領域内における電荷の放出可能性を低減させ、これにより、ファイバの引き伸ばしを増強する。相互参照される関連出願である特許文献2には、電気紡績時の気体雰囲気の制御および修正に関するさらなる詳細が記載されている。
【0037】
電気紡績プロセス時における電気紡績ファイバに関する乾燥速度は、ファイバを囲んでいる気体内における液体蒸気の分圧を変えることによって調節することができる。乾燥速度を遅くすることは、有利なことである。なぜなら、不安定性領域内におけるファイバの滞留時間が長くなるにつれて、延伸度合いがより大きなものとされ、これにより、得られるファイバの直径が、より細いものとなるからである。封入チャンバの高さ、および、大きなDC電圧の印加時における接地からのキャピラリの絶縁は、本発明においては、ファイバの乾燥速度と互換的なものである必要がある。また、DC電圧は、好ましくは、約3KV/cmという電界勾配を維持し得るように、調節される。
【0038】
本発明の電気紡績プロセスの例示として、以下の非限定的な例においては、ポリマーと、溶媒と、押出部材と収集表面との間の離間と、溶媒のポンピング速度と、負に帯電したガスの追加と、に関する選択について、例示する。本発明において、ポリマーと、溶媒と、押出部材と、収集表面分離と、溶媒のポンピング速度と、負に帯電したガスの追加と、に関する選択の例は、以下のようである。
ポリマー溶液のモル重量:350kg/モル。
溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)。
押出部材の先端の直径:1000μm。
収集部材:Alプレート。
ポリマー溶液のポンピング供給速度:約0.5ml/hr。
負に帯電したガス流:CO2で、8lpm。
電界強度:2KV/cm。
先端と収集表面との間の離間距離:17.5cm。
【0039】
低減したファイバサイズは、ポリマー溶液の分子量を1000kg/モルへと増大させることにより、および/または、負に帯電したガス(例えば、フレオン)の追加量を増大させることにより、および/または、ガス流速を例えば20lpmへと増大させることにより、および/または、先端の直径を150μmへと減少させることにより(例えば、テフロン(登録商標)製先端の場合)、得ることができる。
【0040】
よって、電気紡績時に押出部材を囲んでいる気体雰囲気は、製造されるファイバの品質に影響を与える。実際、本発明者らは、負に帯電したガス(あるいは、電気陰性ガス)の供給のオンまたはオフによって、電気紡績プロセスを開始または停止させ得ることを観測した。異なる電気特性を有したガスとの混合により、性能を最適化することができる。混合ガスの1つの例は、アルゴン(4lpm)が混合されたCO2(4lpm)である。
【0041】
さらに、例えば塩化メチレンといったような溶媒または混合溶媒を使用してポリマーを溶解させた場合には、溶媒の蒸発速度は、ファイバと周囲ガスとの間の蒸気圧勾配に依存する。溶媒の蒸発速度は、ガス中における溶媒蒸気の濃度を変えることによって、制御することができる。蒸発速度は、レイリー不安定性に影響を及ぼす。そして、溶媒の電気的性質と、その溶媒の蒸気とが、電気紡績プロセスに影響を及ぼす。例えば、チャンバの底部に、液体溶媒の溜まりを維持することによって、電気紡績を行っている雰囲気内に存在する溶媒蒸気の量が、チャンバおよび/または溜まりの温度を変えることによって制御される。これにより、電気紡績時における気体雰囲気内の溶媒分圧を制御することができる。電気紡績チャンバ内に溶媒蒸気を有していることは、ファイバの乾燥速度に影響を及ぼし、紡績溶液内において使用されている溶媒とは異なる溶媒がチャンバ内で使用されているときには、ファイバの表面特性を変更する。
【0042】
電気紡績用の押出部材の周囲雰囲気の制御に関する影響を、図1を参照して例示したけれども、雰囲気の制御は、他の電気紡績装置においても重要であり、例えば、本発明による図2〜図5に示す装置においても重要である。
【0043】
さらに、図6Aは、容器28を囲んでいるチャンバ52を示している。パイプ54が、外部ガス供給源(図示せず)に対して接続されており、所定のガス流によって、チャンバ52の内部を、特定の温度と圧力とを有した雰囲気56に維持している。チャンバ52は、密封シールされたチャンバとすることができる。このチャンバの内部に、図2〜図5において説明したような容器28や外部電極35や他の部材が収容される。あるいは、チャンバ52は、チャンバからのガスを排気を行っているチャンバとすることができる。
【0044】
図6Bは、シュラウド53が噴霧ヘッド24を囲んでいる例を示している。これにより、各部材30の周囲雰囲気の組成を制御し得るものとされている。必要に応じて、シュラウド53は、チャンバ52の内部に配置することができる。これにより、各部材30の周囲の温度および圧力をさらに制御することができる。
【0045】
非平面的な電極構成が、図7および図8に示されている。図7および図8に図示された幾何形状は、平面的な構成以外の構成を例示するための非制限的な一例に過ぎない。図7および図8に示す電極26は、平面的な幾何形状とされた円形ディスク58を備えている。円形ディスク58は、円形ディスク58の周縁部に形成されたリップ60(すなわち、周辺リム)と、円形ディスク58の中心位置に形成された穴62と、を有している。本発明者らは、リップ60が、電気紡績に際して必要とされる電界強度を低減させることによって、製造される電気紡績ファイバの品質を改良することを見出した。リップ60は、好ましくは、図8に示すように、尖鋭な自由端を有している。穴62は、円形ディスク58を、例えばチューブ64に対して、接続する。この例においては、チューブは、約0.75〜0.175cmという内径と、約0.28cmという外径と、約2.6cmという長さと、を有している。リップ60の高さは、約0.20cmであり、リップの厚さは、約0.125cmである。円形ディスク58は、約1.5cmという外径を有している。チューブ64と円形ディスク58とを含めた電極26の全長は、約2.8cmである。
【0046】
本発明の1つの実施形態においては、容器28は、アルミニウムまたはシリコンからなるフラットな形状のまたは適切な形状のプレートに、適切な形状の微小機械加工穴を形成することによって、形成することができる。穴は、その後、二酸化ケイ素へと酸化される。本発明においては、アルミニウム製のまたはシリコン製のプレートに対して微小機械加工を行うに際して、レーザーを使用することができる。その場合、有意の熱伝導やマスフローが起こってしまう前に、レーザービームの焦点内のほとんどすべての材料を選択的に蒸発させる。これにより、ごくわずかの熱損傷しか付随させることなく、正確な機械加工を行うことができる。例えば、QスイッチされるNd:YAGレーザーおよびエキシマーレーザーを使用することにより、5μmという焦点を有した60fsにわたるレーザーによって、SiO2 においては800nmという小さな穴を開けることができ、金属フィルムにおいては300nmという直径の穴を開けることができる。本発明において容器28や他の部材を微小機械加工するに際しては、当該技術分野において公知の他のレーザーや製造技術を使用することができる。例えば、限定するものではないけれども、化学的エッチングや、電気的機械的機械加工、を使用することができる。
【0047】
典型的な例示を行うならば、図2に示すように、複数の押出部材を有した電極26は、以下の手順によって形成することができる。
【0048】
この典型的な例示においては、電極26は、機械加工プロセスまたは旋削プロセス(例えば、金属ディスクを1.75cmという外径にまで旋削し、その後、ディスクをスライスし、スライス後のディスクを、例えば0.25cmといったような所定厚さにまで機械加工する)によって、金属材料から、形成することができる。金属は、ソフトな金属とすることも、また、耐火性金属とすることも、できる。リード線を、電極に対して、半田付けまたは溶接することができる。
【0049】
電極の形成後に、容器は、2つの個別部材の製作によって形成することができる。図9Aに示すように、第1構成部材66は、例えば、真性の(すなわち、軽くドーピングされた)Siウェハから、または、シリカディスクから、形成することができる。Siウェハまたはシリカディスクが、適切な外径を有していない場合には、ダイヤモンド旋削を使用することにより、外径をセットすることができる。したがって、第1構成部材66は、内部を除去してキャビティ68を形成するように処理される。これにより、図9Aに示すような内部寸法を形成することができる。また、電気噴霧媒体14を容器内へと導入するための開口32を形成することができる。図9Aに示す第1構成部材66は、約2.5cmという外径OD1と、約1.8cmという内径ID1と、約2cmという高さH1と、を有することができる。例えば図9Aに示すように、第1構成部材66のキャビティ68は、約1.8cmという高さH2を有することができる。さらに、第1構成部材66は、約0.27cmという直径ID2とされた内部通路32を有している。さらに、係止部70を、第1構成部材の下面から約0.5cmという高さ位置H3のところに、配置することができる。係止部70は、電極26がこの係止部70を超えて移動し得るようなサイズとされている。上記の内部処理に際しては、内部部分の機械加工のために、リソグラフィー技術およびエッチング技術または上記レーザー処理を使用することができる。
【0050】
容器28の第1構成部材66の形成後に、第2構成部材72(すなわち、容器28のうちの、複数の押出部材30を有している壁)を形成することができる。この場合にも、真性Siウェハまたはシリカディスクを使用することができる。いずれにせよ、外径が過剰であれば、ダイヤモンド旋削またはレーザー機械加工を使用することにより、ID1に対してクリアランスを有した外径(すなわち、1.8cm未満)へとセットすることができる。レーザー穿孔またはリソグラフィー/エッチングを使用することにより、図9Bに示すようにして、第2構成部材72に、アレイ状をなす複数の開口を形成することができる。上述したように、これら開口は、様々なチューブやキャピラリやフリットのうちのいずれかを受領して押出部材30を形成し得るよう、第2構成部材72内において機械加工される。
【0051】
噴霧ヘッド24の主要部材の形成後に、電極26を、係止部70を超えてキャビティ68内へと挿入する。ゴム製係止部74を使用することにより、図9Bに示すように、電極26を係止部70の上方に配置することができる。電極26は、係止部70を挿通し得るような外径を有している。キャビティ68の側壁内に形成された凹凸形状により、あるいは、電極26に形成されたスリットにより、電極26の周囲における電気噴霧媒体の流れを容易なものとすることができる。容器の第2構成部材72は、その後、第1構成部材内へと挿入され、係止部70に対して当接する。これにより、電気噴霧ヘッド28が完成する。上述したように、第1構成部材および第2構成部材の双方がシリコンから形成されている場合には、酸化反応器を使用して、これら構成部材どうしを組み付けることができる。あるいは、例えばシリコーンゴムといったようなシール部材や、ネジや、または、他の公知手法、を使用することにより、第1構成部材と第2構成部材とを組み付けることができる。
【0052】
上述した以外の他の材料を使用しても、噴霧ヘッドを形成することができる。例えば、本発明者らは、プラスチックおよびポリテトラフルオロエチレンを、容器の第1構成部材66のために、また、第2構成部材72のために、使用し得ることを見出した。さらに、上記構成部材のために、シリコーンゴムを、同様に使用することができる。ゴム壁が第2構成部材72のために使用される場合には、ゴム壁は、第1構成部材66の開口よりもわずかに大きなものとして形成される。これにより、第1構成部材66に対して摩擦係合することができる。さらに、押出部材30は、例えば市販のガラスチューブから製造することができる。その場合、ガラスチューブを、所望の内径にまで薄肉化し、複数の部材へとカットし、ゴム壁内に挿入する。
【0053】
よって、本発明は、ファイバ状材料を製造するための様々な装置および方法を提供する。図10に示すように、本発明による方法のステップ1002においては、ファイバ状材料を形成するための原料物質を、複数の押出部材を有した容器内へと供給し、ステップ1004においては、物質の押出方向において押出部材に対して共通の電界を印加し、ステップ1006においては、押出部材を通して押出部材の先端へと物質を案内し、そして、ステップ1008においては、複数の押出部材の先端から物質を電気噴霧し、これにより、ファイバ状材料を形成する。
【0054】
電気噴霧は、様々な押出部材から押し出した物質を電気紡績することができ、これにより、ファイバまたはナノファイバを形成することができる。電気噴霧は、好ましくは、2,000〜400,000V/mという電界強度で行われる。押出部材から電気噴霧されるファイバ状材料は、コレクタ上に収集される。押出部材から電気紡績されたファイバも、また、コレクタ上に収集することができる。製造されるファイバは、ナノファイバとすることができる。
【0055】
本発明によって製造されるファイバおよびナノファイバには、限定するものではないけれども、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、コラーゲン、DNA、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ナイロン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルビニルアセテート)、ポリ(エチル−コ−ビニルアセテート)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(メタクリル酸)塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(スチレンスルホン酸)塩、ポリ(スチレンスルホニルフルオライド)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアニリン、ポリベンソイミダゾール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン−コ−ポリエチレンオキサイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリラクチド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、タンパク質、SEBSコポリマー、絹、および、スチレン/イソプレンコポリマー、がある。
【0056】
加えて、2つ以上のポリマーが共通の溶媒に溶ける限りにおいては、ポリマーブレンドを形成することもできる。いくつかの例としては、ポリ(フッ化ビニリデン)−ブレンド−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−ブレンド−ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(メチルメタクリレート)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−ブレンド−ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、タンパク質−ブレンド−ポリエチレンオキサイド、ポリラクチド−ブレンド−ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−ブレンド−ポリエステル、ポリエステル−ブレンド−ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキサイド)−ブレンド−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシスチレン)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、がある。
【0057】
事後的なアニール処置により、電気紡績されたポリマーファイバから、カーボンファイバを得ることができる。
【0058】
上記開示に基づき、様々な修正や変更が可能である。したがって、特に断らない限り、本発明は、特許請求の範囲内において実施されることは、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来技術による電気紡績装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図3A】本発明における押出部材の一実施形態を概略的に示す図である。
【図3B】本発明における押出部材の他の実施形態を概略的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における押出部材を概略的に示す図であって、複数の中実部材が、押出部材の複数のチャネルを形成している。
【図5】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図6A】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図であって、この実施形態においては、装置が、チャンバ内に収容されている。
【図6B】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図であって、この実施形態においては、装置が、シュラウドを備えている。
【図7】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置における共通電極を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7の電極を概略的に示す側面図である。
【図9A】本発明による電気噴霧/電気紡績を行う装置における容器の一部を概略的に示す図である。
【図9B】本発明の一実施形態における電気噴霧/電気紡績ヘッドの組立状況を概略的に示す図である。
【図10】本発明による方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
21 電気噴霧/電気紡績を行う装置
24 噴霧ヘッド
26 電極(共通電極)
28 容器
30 押出部材
35 外部電極
【技術分野】
【0001】
本出願は、“Electrospinning of Fibers Using a Rotating Spray Head ”と題して2004年4月8日付けで出願された特許文献1(代理人参照番号245015US−2025−2025−20)に関連するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。また、本出願は、“Electrospinning in a Controlled Gaseous Environment ”と題して2004年4月8日付けで出願された特許文献2(代理人参照番号245016US−2025−2025−20)に関連するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリマー溶液からファイバまたはファイバ状材料を電気噴霧して電気紡績するという技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ナノファイバは、衣類産業から軍事応用まで様々な分野において有用である。例えば、バイオマテリアルの分野においては、ナノファイバに基づいた構造であるとともに生きた細胞を効果的に支持して組織を成長させるための足場を提供し得るような構造の開発に、大きな関心が持たれている。織物の分野においては、ナノファイバが単位質量あたりにつき大きな表面積を有しており、そのため、軽量かつ耐磨耗性の大きな衣類を提供し得ることのために、ナノファイバに大きな関心が持たれている。また、カーボンナノファイバは、例えば、補強された複合物や、熱管理や、エラストマーの補強、において使用されている。ば使われている。様々な物理的性質や化学的性質を生成したり制御したりし得ることのために、ナノファイバに関しては、多くの潜在的な応用が開発されている。
【0004】
電気噴霧/電気紡績技術を使用することにより、長軸方向において1ナノメートルと同じくらい小さな粒子およびファイバを形成することができる。電気噴霧という現象においては、ニードルの端部のところにおいてポリマー融液の液滴を形成し、その液滴を帯電させ、電荷に起因する電気的反発力を利用して液滴の一部を放出させる。電気噴霧の際には、液滴の一部内に存在する溶媒が蒸発し、小さな粒子が形成されるものの、これは、ファイバではない。電気紡績技術は、電気噴霧技術と同様の技術である。しかしながら、電気紡績においては、放出時に、吐出される液体からファイバが形成される。
【0005】
ガラスファイバは、場合によっては、サブミクロンという大きさで存在する。小さな直径で電気紡績されたナノファイバが製造され、20年以上にわたって、エア濾過用途において市販されている。最近になって、ポリマー融液の吹付によるファイバが製造された。このファイバは、1ミクロン未満という直径を有している。濾過やバリア織物や拭取繊維や介護用品や医療用途や薬学用途も含めて、付加価値を有したいくつかの不織布応用は、市販されているナノファイバおよびナノファイバの興味深い技術的特性のために、有益なものとすることができる。電気紡績されたナノファイバは、ある方向において1μm未満という寸法を有しており、好ましくは、その方向において、100nm未満という寸法を有している。ナノファイバウェブは、典型的には、適切な機械的特性を有するようになおかつナノファイバウェブに対して相補的な機能を提供し得るように選択された様々な基板上に適用される。ナノファイバフィルタ媒体の場合には、基板は、プリーツ加工という点において、また、フィルタ製造という点において、また、使用の耐久性という点において、また、フィルタクリーニングという点において、選択されてきた。
【0006】
ナノファイバの製造のための基本的な電気紡績装置10が、図1に示されている。装置10は、電界12を生成し、この電界12が、ポリマー融液すなわちポリマー溶液14を案内して、ニードル18の先端16から電極20へと、放出させる。容器/シリンジ22は、ポリマー溶液14を収容している。従来技術においては、電圧源HVの一端が、ニードル18に対して直接的に電気接続され、電圧源HVの他端が、電極20に対して電気的に接続されている。先端16と電極20との間に形成された電界12により、ポリマー溶液14は、ポリマー溶液を保持している結合力に対して打ち勝つことができる。ポリマー14からなるジェットが、電界12(すなわち、抽出用の電界)によって、先端16から電極20に向けて引かれ、そして、ニードル18から電極20までの飛行の間に乾燥し、これにより、ポリマーファイバを形成する。形成されたポリマーファイバは、電極20上から下流側において収集することができる。
【0007】
電気紡績プロセスに関しては、様々なポリマーについて、文献が存在する。ナノファイバを形成するための1つのプロセスは、例えば、非特許文献1に記載されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。適切なポリマーと溶液との組合せを選択することにより、1ミクロン未満という直径を有したナノファイバを形成することができる。
【0008】
電気噴霧して電気紡績するのに適した流体の例には、溶融ピッチや、ポリマー溶液や、ポリマー融液や、セラミクスの前駆体をなすポリマーや、溶融ガラス材料、がある。これらポリマーは、ナイロンや、フッ素系ポリマーや、ポリオレフィンや、ポリイミドや、ポリエステルや、他のエンジニアリングポリマーや、織物形成ポリマー、とすることができる。上記以外の様々な流体または材料を使用することによって、ファイバを形成することができる。例えば、純粋な液体や、ファイバ溶液や、小さな粒子との混合物や、生物学的ポリマーとの混合物、を形成することができる。ファイバを形成するために使用される材料の一覧およびリストは、特許文献3,4および非特許文献2に記載されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。特許文献3には、電気処理の対象をなす生物学的材料および生体適合性材料と、これら材料に対して使用し得る溶媒と、が記載されている。特許文献4には、ナノファイバのために使用される溶媒および材料の他に、小さなスペースで溶媒を蒸発させる手法でのナノファイバの製造に関し、大規模化の困難さが記載されている。非特許文献2には、ナノファイバを製造するために使用し得る材料/溶媒のリストの一部が記載されている。
【0009】
さらに、特許文献5には、単一のまたは複数の電圧印加されたニードルを使用して電気紡績を行うための金属ニードルが開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。これに代えて、電気紡績は、細い端部を有した容器から行うことができる。その場合、細い端部を通して、容器から流体を抽出するとともに、流体内に含浸させた長尺尖端電極を使用して、流体に電圧を印加する。例えば、特許文献6には、上述したような単純な噴霧ヘッドが開示されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0010】
さらに、特許文献3,4,7,8,9には、電圧が印加された複数のニードルを使用することによって、ナノファイバ製造のための噴霧領域を増大させることが記載されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。これら特許文献には、複数のニードルに対してポリマーファイバを供給するための方法が記載されており、各ニードルは、高電圧を有した1つまたは複数の導電性基板に対して接続されている。例えば、特許文献8においては、その第2a図に、電気紡績装置が例示されており、2つの導電性基板26,30が、各ニードル32に対して電気的に接触している。高電圧が、各ニードル32に対して、ニードルに対して直接的に接触している導電性基板26,30を介して印加される。さらに、特許文献8,9の双方においては、ポリマー溶液の電気紡績は、少なくとも1つの導電プレート上に配置された1つまたは複数の帯電した導電性ノズルを通して行われる。
【0011】
よって、互いに個別に電圧印加された複数のニードルおよび/または複数の溶液リザーバを使用した従来技術は、大規模での製造には適していない。各ニードルのところにおける電界を制御するのに必要な制御機構の数は、ニードルの数に応じたものとなり、大規模な製造に際しては、100本のニードルを軽く超えることとなり得る。さらに、各ニードルリザーバに対してポリマー溶液を個別的に供給して制御することは、大規模なナノファイバ製造へとスケールアップすることを困難なものとする。
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号第10/819,916号明細書
【特許文献2】米国特許出願シリアル番号第10/819,945号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2002/0090725A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願第2002/0100725A1号明細書
【特許文献5】米国特許第3,280,229号明細書
【特許文献6】米国特許第705,691号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2002/0007869A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2002/0122840A1号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2002/0175449A1号明細書
【非特許文献1】“Structure Formation in Polymeric Fibers”, by D. Salem, Hanser Publishers, 2001
【非特許文献2】Huang et al., Composites Science and Technology, v63, 2003
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、大規模な製造を容易とし得るような、ファイバおよび/またはファイバ状材料の製造のための装置および方法を提供することである。
【0013】
他の目的は、従来技術における上記問題点を改良し得るよう、並列的な製造プロセスでもってファイバおよび/またはファイバ状材料を製造し得るような装置および方法を提供することである。
【0014】
したがって、本発明のさらなる目的は、電気噴霧ヘッドから複数のファイバおよび/またはファイバ状材料を同時に押し出すような装置および方法を提供することである。
【0015】
よって、本発明の1つの見地においては、ファイバ状材料を製造するための新規な装置が提供され、この装置は、ファイバ状材料の形成原料をなす物質を受領し得るよう構成された導入口を有した容器と;この容器内に配置された共通電極と;この共通電極に対向しつつ容器の壁内に形成された複数の押出部材であるとともに、これら押出部材と共通電極との間に導入口に連通したスペースを形成するものとされ、これにより、このスペース内に物質を受領し得るものとされたような、複数の押出部材と;を具備している。
【0016】
本発明の第2の見地においては、新規な方法が提供され、この方法においては、ファイバ状材料の形成原料をなす物質を、複数の押出部材を有した容器に対して、供給し;物質を押し出す方向において複数の押出部材に対して共通電界を印加し;複数の押出部材を通して複数の押出部材の先端のところへと物質を案内し;複数の押出部材の先端のところにおいて物質を電気噴霧し、これにより、ファイバ状材料を形成する。また、共通電界内において、押出部材を通して物質を押し出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ならびに、本発明に付随する多くの利点は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより、完全に明瞭となるであろう。
【0018】
添付図面においては、複数の図面にわたって、互いに同一の部材または互いに同様の部材には、同じ参照符号が付されている。図2は、ファイバおよび/またはファイバ状材料を製造するための電気噴霧/電気紡績を行う装置21を概略的に示す図である。本明細書においては、ファイバ状材料という用語は、短いファイバとして電気噴霧された材料と、より長い連続的なファイバとして電気紡績された材料と、の双方を意味する。本発明の一実施形態においては、噴霧ヘッド24は、容器28内に収容された電極26を備えている。容器28は、絶縁材料から、あるいは、電気的に透過性の材料から、形成することができる。噴霧ヘッド24は、アレイ状をなす複数の押出部材30と、アレイ状をなす噴霧開口30に対して電気噴霧媒体14を供給するための通路32と、を備えている。押出部材30は、電極26に対して対向しつつ容器28の壁内に設けられている。これにより、押出部材30と電極26との間に、通路32(導入口)に対して連通したスペース34を形成することができる。これにより、容器28のスペース34内へと、電気噴霧媒体14(すなわち、押出可能な材料)を受領することができる。電気噴霧媒体14は、ナノファイバ材料の押出も含めてファイバの押出に関して従来技術において公知であるような、ポリマー溶液および/またはポリマー融液を備えている。実際、本発明において好適なポリマーおよび溶媒には、例えば、ジメチルホルムアミドと塩化メチレンとの混合溶液(20/80 w/w)内のポリカプロラクトン、蒸留水内のポリエチレンオキサイド、蒸留水内のポリアクリル酸、アセトン内のポリメチルメタクリレート(PMMA)、アセトン内の酢酸セルロース、ジメチルホルムアミド内のポリアクリロニトリル、ジクロロメタンまたはジメチルホルムアミド内のポリラクチド、蒸留水内のポリビニルアルコール、がある。
【0019】
本発明の一実施形態においては、電極26は、容器内において中央に配置されており、電気噴霧媒体を押し出すための共通電界を生成する共通電極を形成している。好ましくは、電極26は、押出部材30に対して接触しないようにしつつ、押出部材30の近くに配置することができる。外部電極35が、容器28の外部において、電極26に対向しつつ、設けられている。電極26,35間にわたっての電位差が、図2に示すような電界12を生成する。電界12は、容器28を貫通してさらに容器28を超えて、外部電極35にまで延在する。電極26と外部電極35との幾何学的な構成が、電界強度と電界配布とを決定する。電気噴霧媒体14は、押出部材30からの押出時には、外部電極35に向けて電界12に沿って案内される。
【0020】
本発明の1つの実施形態においては、噴霧ヘッド24は、好ましくは、互いに個別とされた複数の押出部材30を備えている。押出部材30は、例えば、キャピラリや、キャピラリ束や、ニードルや、ニードル束や、チューブや、チューブ束や、ロッドや、ロッド束や、同心チューブや、フリットや、開放セルを有した発泡体や、これらの組合せや、あるいは、容器28の壁内に形成された適切な形状のチャネル、とすることができる。個々の押出部材は、噴霧ヘッド24から噴霧ヘッド24の外部にまで電気噴霧媒体14を放出するのに適切なサイズとされたような、金属製のまたはガラス製のまたはプラスチック製のキャピラリチューブから形成することができる。放出時には、電気噴霧媒体14には、電圧が印加される。さらに、本発明の1つの実施形態においては、図2に示すように、押出部材30は、容器28を超えて延出されている。他の実施形態においては、噴霧部材は、容器28の外壁を超えないものとされる。各押出部材30は、容器28の内部に位置した第1開口28と、容器28の外部に位置した第2開口と、を備えている。
【0021】
図3Aは、押出部材30の一例を示しており、この例においては、押出部材30は、例えば、50〜250μmという内径(ID)と、約260μmという外径と、を有している。チューブやキャピラリやニードルやチャネルやその他に関して、例えば矩形横断面形状といったような、他の横断面形状を適用することもできる。50〜250μmという内径は、ナノファイバの電気噴霧を容易なものとする。矩形横断面形状の場合には、400μm未満という内部寸法が、好ましい。他の例においては、図3Bは、チューブ30の開口をカバーするフリット36を有しているチューブ30を示している。ポンプ(図示せず)が、各部材30を通しての電気噴霧媒体14の流速を、キャピラリの直径と長さとキャピラリの数と電気噴霧媒体の粘性とに応じた所望値に、維持する。ポンプと容器28との間に、フィルタを配置することができる。これにより、押出部材30の所定寸法よりも大きな不純物および/または分子を、濾過することができる。また、各部材を通しての流速は、キャピラリから導出される液滴の形状を一定に維持し得るよう、電界強度と平衡化しているべきである。Hagen-Poisseuille 法則を使用すれば、100μmという内径と約1cmという長さとを有したキャピラリを通しての圧力降下は、1ml/hrという流速に対しては、物質の粘性に応じて、約100〜700kPaである。
【0022】
一般に、より小さな直径のチューブは、より細いナノファイバをもたらす。また、複数のチューブ(複数の噴霧ヘッド)を、単一の装置内に収容し得るけれども、互いに隣接するチューブどうしの間には、これらチューブどうしの間における電気的な干渉を回避し得るよう、ある種の最小離間距離を設けなければならない。この最小離間距離は、使用されるポリマー/溶媒の組合せや、電界密度や、チューブ直径の、といったような1つまたは複数の要因によって変わることとなる。互いにあまりに近づけすぎて配置されたチューブどうしの場合には、溶媒の除去速度が遅くなってしまい、ファイバ品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0023】
押出部材30は、本発明の一実施形態においては、1つまたは複数の方向において互いに隣接してあるいは互いに近接して配置されたアレイ状をなす複数のチャネルとされている。これらチャネルは、互いに近接配置された個々の部材からなる束とすることができ、個々の部材は、例えば、キャピラリまたはロッドとすることができる。個々の部材は、例えば、非導電性材料から形成することができる。例えば、ガラスや、セラミクスや、テフロン(登録商標)や、ポリエチレン、といったような材料から形成することができる。しかしながら、個々の部材は、導電性材料から形成することもできる。電気絶縁性材料あるか非導電性材料から形成された多数の電気絶縁性押出部材30を使用した場合には、電極26と外部電極35との間に確立される電界12を変えることがない。
【0024】
図4に示す他の実施形態においては、電気噴霧媒体14を噴霧または紡績するためのチャネルは、押出部材30として形成される。複数のチャネルが、複数の(金属製)ニードルまたは複数の中実ワイヤを互いに当接させつつ配置し、これにより、ニードルどうしの間においてまたは中実ワイヤどうしの間において複数の押出チャネルを形成することによって、形成されている。例えば、図4に示すように、複数の中実ニードルワイヤ38は、互いに近接して配置され、これにより、電気噴霧媒体14が流通する複数のチャネル40を形成している。しかしながら、本発明の他の実施形態においては、導電性材料または非導電性材料からなる複数のキャピラリ束を使用する。本発明のさらに他の実施形態においては、ガラスやセラミクスや金属や有機材料からなるフリットを使用して、あるいは、電気噴霧ヘッド24のベースプレート内において適切な形状のものとして形成されたマイクロマシン穴を使用して、複数のチャネルを形成する。機械加工されたプレートは、シリコン製である場合には、その後、酸化することによって、二酸化ケイ素を形成することができる。その後、容器28の底部材として取り付けることができる。本発明のさらに他の実施形態においては、任意の有機材料または任意の無機材料から形成された開放セル発泡体を容器28の底部材として使用することにより、容器28を貫通させて複数のチャネルを形成する。上述した様々な実施形態は、本発明のいくつかの非限定的な例示に過ぎない。
【0025】
複数の押出部材30を使用した構成と組み合わせて電極26を使用することにより、各押出部材のところにおける電界を個別的かつ選択的に制御するという複雑さが不要であり、このため、大きな処理速度が可能である。さらに、図5は、電極26aを使用しているという変形例を示している。電極26aは、部材30に対向したところにおいては非平坦であるような表面を有している。上記と同様に、電極26aは、複数の押出部材30を駆動し得るよう構成されている。しかしながら、電極26aは、好ましくは個々の押出部材30に対向した場所に、複数の突起42を有している。これにより、個々の押出部材30のところにおいて、電界強度を増強することができる。
【0026】
さらに、本発明の他の実施形態において、図6Aは、押出部材として複数のフリット30を有した容器28を示している。1つのフリット30は、図2に示すキャピラリの場合と同様に、電気噴霧媒体14のための1つの流通チャネルを提供する。
【0027】
図2の実施形態においては、図2に示すように、電極26は、フラットな形状を有している。フラットな電極26は、容器28内において電気噴霧媒体14に対して電圧を印加する。図2に示すように、電界12は、高電圧電源HVを使用することによって、電極26から、部材30を有している容器28の壁を貫通して、外部電極35にまで、延在している。高電圧電源HVは、任意の市販のDC電源とすることができ、例えば、Bertan
Model 105-20R(登録商標)(Bertan, Valhalla, NY) や、あるいは、Gamma High Voltage Research Model ES30P(登録商標)(Gamma High Voltage Research Inc., Ormond Beach) とすることができる。
【0028】
高電圧電源HVは、図6Aに示すように、リード線44を介して電極26に対して接続されているとともに、他のリード線46を介して外部電極35に対して接続されている。外部電極35は、電極26から、好ましくは5〜50cmだけ離間したところに、配置されている。外部電極35は、プレートまたはスクリーンとすることができる。典型的には、高電圧電源によって、2,000〜400,000V/mという電界強度が確立される。
【0029】
典型的には、外部電極35は、接地される。押出部材30からの押出によって形成されたファイバは、電界12によって、外部電極35に向けて案内される。本発明の1つの実施形態においては、電気紡績されたファイバまたは電気噴霧されたファイバ状材料は、図6Aに概略的に示すような例えばコンベヤベルト50といったような収集機構によって、収集することができる。収集機構は、除去ステーション48のところにおいて、収集されたファイバまたはファイバ状材料を搬送する。除去ステーション48のところにおいては、電気紡績されたファイバが、ベルト50から除去される。その後、ベルト50は、さらなるファイバを収集する目的で、戻ってくる。収集機構48は、個別の部材とすることも、あるいは、電極とコンベヤベルトとの組合せとすることも、できる。収集機構は、また、電気紡績されたファイバまたは電気噴霧されたファイバ状材料を収集し得るよう、ベルトに代えて、メッシュや、回転ドラムや、フォイル、を使用することもできる。他の実施形態においては、電気紡績されたファイバは、外部電極35上に堆積して集積し、その後、バッチプロセスの後に、除去される。
【0030】
外部電極35と電極26との間の距離は、いくつかの要因のバランスに基づいて決定される。そのような要因には、例えば、溶媒の蒸発速度や、電界強度や、ファイバ直径の低減化のために十分であるような距離および/または時間、がある。これら要因およびそれらの決定は、本発明においては、従来技術における単一のニードル噴霧部材の場合と、同様である。本発明者らは、溶媒の急速な蒸発によって、nmサイズのファイバ直径よりも大きくなってしまうことを、見出した。
【0031】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、溶媒の蒸発は、図6Aに示すように、チャンバ52内に容器28を配置することによって、制御される。この場合、温度と、圧力と、雰囲気をなす組成物と、が制御される。
【0032】
押出部材30の周囲における気体雰囲気の制御は、ナノファイバの直径分布に関して、および、より細い直径のナノファイバの製造に関して、電気紡績されるファイバの品質を改良する。本発明者らは、押出部材の周囲における気体雰囲気内へと、負に帯電したガスを導入することにより、例えば、二酸化炭素や、六フッ化硫黄や、フレオンや、溶媒蒸気および/またはイオンおよび/または帯電粒子を含有した混合気体を導入することにより、電気紡績されたファイバの品質が改良されることを見出した(すなわち、ファイバの直径が細くなるとともに、直径サイズの分布がより一様になる)。
【0033】
例えば二酸化炭素といったような負に帯電したガスは、材料の粒子および液滴を形成する目的で電気噴霧において利用されてきたけれども、本発明以前においては、電気紡績の雰囲気内において負に帯電したガスを利用することの効果は、一切示されていない。実際、押出部材の周囲の雰囲気内においてとりわけ押出部材の先端のところにおける液体液滴のところにおいて自由に溶媒の蒸発が起こるという電気紡績の性質は、負に帯電したガスの追加によっても紡績ファイバの特性に影響を与えないことを、示唆する。
【0034】
さらに、電気噴霧に際して使用されているポリマー溶液の流体的特性の相違と、電気噴霧における相違とは、例えば伝導率の相違や粘性の相違や表面張力の相違は、電気噴霧装置および電気紡績装置の周囲の気体雰囲気を、全く異なるものとする。例えば、電気噴霧プロセスにおいては、流体ジェットは、大きなDC電圧でもってキャピラリから放出され、即座に複数の液滴へと分裂する。複数の液滴は、蒸発によって表面電荷力が引き起こされて表面張力を超えたとき(レイリー限界)には、粉々になることができる。電気噴霧された液滴または液滴残留物は、静電引力によって収集表面(すなわち、典型的には、接地されている)へと移動する。一方、電気紡績においては、大きな粘性の流体が使用され、この流体が、流体内引力に基づいて、一体的なジェットとして連続物として引っ張られ(すなわち、放出され)、長尺のファイバへと引き伸ばされ、乾燥して、後述するような不安定性を受ける。乾燥および蒸発プロセスは、1000分の1以下へと、ファイバの直径を低減させる。電気紡績に際し、本発明においては、比較的低い粘性のポリマー溶液および固体含有物を使用することによって非常に細いファイバ(すなわち、直径が100nm未満)を形成する場合には、プロセスの複雑性が、引っ張られたファイバを囲んでいる気体雰囲気によって影響されることを、認識している。
【0035】
図1においては、電界12が、キャピラリ(例えば、ニードル18の先端16)から、流体フィラメントまたは流体ジェットとして、ポリマー溶液14を引っ張る。決定的な相違点は、先端であり、この先端は、従来技術においては、テイラー円錐と称されている。液体ジェットが乾燥するにつれて、単位面積あたりについての電荷が、増大する。多くの場合、キャピラリの先端から2〜3cmの範囲内において、乾燥液体ジェットは、電気的に不安定となる(すなわち、レイリー不安定性が進展する)。乾燥し続ける液体ジェットは、変動し、ファイバを急速に引き伸ばし、これにより、ファイバ上の表面積の関数として、電荷密度を減少させる。
【0036】
キャピラリを囲んでいる気体雰囲気を修正することにより、本発明においては、印加電圧を増大させることができ、キャピラリから液体のジェットの引っ張りを改良することができる。特に、負に帯電したガスは、キャピラリの周囲におけるコロナ放電のしきい値を低減させるものと考えられる。これにより、大きな電圧の印加により、静電力を増強することができる。キャピラリの周囲におけるコロナの形成は、電気紡績プロセスを中断させることとなる。さらに、本発明においては、絶縁性ガスが、レイリー不安定性領域内における電荷の放出可能性を低減させ、これにより、ファイバの引き伸ばしを増強する。相互参照される関連出願である特許文献2には、電気紡績時の気体雰囲気の制御および修正に関するさらなる詳細が記載されている。
【0037】
電気紡績プロセス時における電気紡績ファイバに関する乾燥速度は、ファイバを囲んでいる気体内における液体蒸気の分圧を変えることによって調節することができる。乾燥速度を遅くすることは、有利なことである。なぜなら、不安定性領域内におけるファイバの滞留時間が長くなるにつれて、延伸度合いがより大きなものとされ、これにより、得られるファイバの直径が、より細いものとなるからである。封入チャンバの高さ、および、大きなDC電圧の印加時における接地からのキャピラリの絶縁は、本発明においては、ファイバの乾燥速度と互換的なものである必要がある。また、DC電圧は、好ましくは、約3KV/cmという電界勾配を維持し得るように、調節される。
【0038】
本発明の電気紡績プロセスの例示として、以下の非限定的な例においては、ポリマーと、溶媒と、押出部材と収集表面との間の離間と、溶媒のポンピング速度と、負に帯電したガスの追加と、に関する選択について、例示する。本発明において、ポリマーと、溶媒と、押出部材と、収集表面分離と、溶媒のポンピング速度と、負に帯電したガスの追加と、に関する選択の例は、以下のようである。
ポリマー溶液のモル重量:350kg/モル。
溶媒:ジメチルホルムアミド(DMF)。
押出部材の先端の直径:1000μm。
収集部材:Alプレート。
ポリマー溶液のポンピング供給速度:約0.5ml/hr。
負に帯電したガス流:CO2で、8lpm。
電界強度:2KV/cm。
先端と収集表面との間の離間距離:17.5cm。
【0039】
低減したファイバサイズは、ポリマー溶液の分子量を1000kg/モルへと増大させることにより、および/または、負に帯電したガス(例えば、フレオン)の追加量を増大させることにより、および/または、ガス流速を例えば20lpmへと増大させることにより、および/または、先端の直径を150μmへと減少させることにより(例えば、テフロン(登録商標)製先端の場合)、得ることができる。
【0040】
よって、電気紡績時に押出部材を囲んでいる気体雰囲気は、製造されるファイバの品質に影響を与える。実際、本発明者らは、負に帯電したガス(あるいは、電気陰性ガス)の供給のオンまたはオフによって、電気紡績プロセスを開始または停止させ得ることを観測した。異なる電気特性を有したガスとの混合により、性能を最適化することができる。混合ガスの1つの例は、アルゴン(4lpm)が混合されたCO2(4lpm)である。
【0041】
さらに、例えば塩化メチレンといったような溶媒または混合溶媒を使用してポリマーを溶解させた場合には、溶媒の蒸発速度は、ファイバと周囲ガスとの間の蒸気圧勾配に依存する。溶媒の蒸発速度は、ガス中における溶媒蒸気の濃度を変えることによって、制御することができる。蒸発速度は、レイリー不安定性に影響を及ぼす。そして、溶媒の電気的性質と、その溶媒の蒸気とが、電気紡績プロセスに影響を及ぼす。例えば、チャンバの底部に、液体溶媒の溜まりを維持することによって、電気紡績を行っている雰囲気内に存在する溶媒蒸気の量が、チャンバおよび/または溜まりの温度を変えることによって制御される。これにより、電気紡績時における気体雰囲気内の溶媒分圧を制御することができる。電気紡績チャンバ内に溶媒蒸気を有していることは、ファイバの乾燥速度に影響を及ぼし、紡績溶液内において使用されている溶媒とは異なる溶媒がチャンバ内で使用されているときには、ファイバの表面特性を変更する。
【0042】
電気紡績用の押出部材の周囲雰囲気の制御に関する影響を、図1を参照して例示したけれども、雰囲気の制御は、他の電気紡績装置においても重要であり、例えば、本発明による図2〜図5に示す装置においても重要である。
【0043】
さらに、図6Aは、容器28を囲んでいるチャンバ52を示している。パイプ54が、外部ガス供給源(図示せず)に対して接続されており、所定のガス流によって、チャンバ52の内部を、特定の温度と圧力とを有した雰囲気56に維持している。チャンバ52は、密封シールされたチャンバとすることができる。このチャンバの内部に、図2〜図5において説明したような容器28や外部電極35や他の部材が収容される。あるいは、チャンバ52は、チャンバからのガスを排気を行っているチャンバとすることができる。
【0044】
図6Bは、シュラウド53が噴霧ヘッド24を囲んでいる例を示している。これにより、各部材30の周囲雰囲気の組成を制御し得るものとされている。必要に応じて、シュラウド53は、チャンバ52の内部に配置することができる。これにより、各部材30の周囲の温度および圧力をさらに制御することができる。
【0045】
非平面的な電極構成が、図7および図8に示されている。図7および図8に図示された幾何形状は、平面的な構成以外の構成を例示するための非制限的な一例に過ぎない。図7および図8に示す電極26は、平面的な幾何形状とされた円形ディスク58を備えている。円形ディスク58は、円形ディスク58の周縁部に形成されたリップ60(すなわち、周辺リム)と、円形ディスク58の中心位置に形成された穴62と、を有している。本発明者らは、リップ60が、電気紡績に際して必要とされる電界強度を低減させることによって、製造される電気紡績ファイバの品質を改良することを見出した。リップ60は、好ましくは、図8に示すように、尖鋭な自由端を有している。穴62は、円形ディスク58を、例えばチューブ64に対して、接続する。この例においては、チューブは、約0.75〜0.175cmという内径と、約0.28cmという外径と、約2.6cmという長さと、を有している。リップ60の高さは、約0.20cmであり、リップの厚さは、約0.125cmである。円形ディスク58は、約1.5cmという外径を有している。チューブ64と円形ディスク58とを含めた電極26の全長は、約2.8cmである。
【0046】
本発明の1つの実施形態においては、容器28は、アルミニウムまたはシリコンからなるフラットな形状のまたは適切な形状のプレートに、適切な形状の微小機械加工穴を形成することによって、形成することができる。穴は、その後、二酸化ケイ素へと酸化される。本発明においては、アルミニウム製のまたはシリコン製のプレートに対して微小機械加工を行うに際して、レーザーを使用することができる。その場合、有意の熱伝導やマスフローが起こってしまう前に、レーザービームの焦点内のほとんどすべての材料を選択的に蒸発させる。これにより、ごくわずかの熱損傷しか付随させることなく、正確な機械加工を行うことができる。例えば、QスイッチされるNd:YAGレーザーおよびエキシマーレーザーを使用することにより、5μmという焦点を有した60fsにわたるレーザーによって、SiO2 においては800nmという小さな穴を開けることができ、金属フィルムにおいては300nmという直径の穴を開けることができる。本発明において容器28や他の部材を微小機械加工するに際しては、当該技術分野において公知の他のレーザーや製造技術を使用することができる。例えば、限定するものではないけれども、化学的エッチングや、電気的機械的機械加工、を使用することができる。
【0047】
典型的な例示を行うならば、図2に示すように、複数の押出部材を有した電極26は、以下の手順によって形成することができる。
【0048】
この典型的な例示においては、電極26は、機械加工プロセスまたは旋削プロセス(例えば、金属ディスクを1.75cmという外径にまで旋削し、その後、ディスクをスライスし、スライス後のディスクを、例えば0.25cmといったような所定厚さにまで機械加工する)によって、金属材料から、形成することができる。金属は、ソフトな金属とすることも、また、耐火性金属とすることも、できる。リード線を、電極に対して、半田付けまたは溶接することができる。
【0049】
電極の形成後に、容器は、2つの個別部材の製作によって形成することができる。図9Aに示すように、第1構成部材66は、例えば、真性の(すなわち、軽くドーピングされた)Siウェハから、または、シリカディスクから、形成することができる。Siウェハまたはシリカディスクが、適切な外径を有していない場合には、ダイヤモンド旋削を使用することにより、外径をセットすることができる。したがって、第1構成部材66は、内部を除去してキャビティ68を形成するように処理される。これにより、図9Aに示すような内部寸法を形成することができる。また、電気噴霧媒体14を容器内へと導入するための開口32を形成することができる。図9Aに示す第1構成部材66は、約2.5cmという外径OD1と、約1.8cmという内径ID1と、約2cmという高さH1と、を有することができる。例えば図9Aに示すように、第1構成部材66のキャビティ68は、約1.8cmという高さH2を有することができる。さらに、第1構成部材66は、約0.27cmという直径ID2とされた内部通路32を有している。さらに、係止部70を、第1構成部材の下面から約0.5cmという高さ位置H3のところに、配置することができる。係止部70は、電極26がこの係止部70を超えて移動し得るようなサイズとされている。上記の内部処理に際しては、内部部分の機械加工のために、リソグラフィー技術およびエッチング技術または上記レーザー処理を使用することができる。
【0050】
容器28の第1構成部材66の形成後に、第2構成部材72(すなわち、容器28のうちの、複数の押出部材30を有している壁)を形成することができる。この場合にも、真性Siウェハまたはシリカディスクを使用することができる。いずれにせよ、外径が過剰であれば、ダイヤモンド旋削またはレーザー機械加工を使用することにより、ID1に対してクリアランスを有した外径(すなわち、1.8cm未満)へとセットすることができる。レーザー穿孔またはリソグラフィー/エッチングを使用することにより、図9Bに示すようにして、第2構成部材72に、アレイ状をなす複数の開口を形成することができる。上述したように、これら開口は、様々なチューブやキャピラリやフリットのうちのいずれかを受領して押出部材30を形成し得るよう、第2構成部材72内において機械加工される。
【0051】
噴霧ヘッド24の主要部材の形成後に、電極26を、係止部70を超えてキャビティ68内へと挿入する。ゴム製係止部74を使用することにより、図9Bに示すように、電極26を係止部70の上方に配置することができる。電極26は、係止部70を挿通し得るような外径を有している。キャビティ68の側壁内に形成された凹凸形状により、あるいは、電極26に形成されたスリットにより、電極26の周囲における電気噴霧媒体の流れを容易なものとすることができる。容器の第2構成部材72は、その後、第1構成部材内へと挿入され、係止部70に対して当接する。これにより、電気噴霧ヘッド28が完成する。上述したように、第1構成部材および第2構成部材の双方がシリコンから形成されている場合には、酸化反応器を使用して、これら構成部材どうしを組み付けることができる。あるいは、例えばシリコーンゴムといったようなシール部材や、ネジや、または、他の公知手法、を使用することにより、第1構成部材と第2構成部材とを組み付けることができる。
【0052】
上述した以外の他の材料を使用しても、噴霧ヘッドを形成することができる。例えば、本発明者らは、プラスチックおよびポリテトラフルオロエチレンを、容器の第1構成部材66のために、また、第2構成部材72のために、使用し得ることを見出した。さらに、上記構成部材のために、シリコーンゴムを、同様に使用することができる。ゴム壁が第2構成部材72のために使用される場合には、ゴム壁は、第1構成部材66の開口よりもわずかに大きなものとして形成される。これにより、第1構成部材66に対して摩擦係合することができる。さらに、押出部材30は、例えば市販のガラスチューブから製造することができる。その場合、ガラスチューブを、所望の内径にまで薄肉化し、複数の部材へとカットし、ゴム壁内に挿入する。
【0053】
よって、本発明は、ファイバ状材料を製造するための様々な装置および方法を提供する。図10に示すように、本発明による方法のステップ1002においては、ファイバ状材料を形成するための原料物質を、複数の押出部材を有した容器内へと供給し、ステップ1004においては、物質の押出方向において押出部材に対して共通の電界を印加し、ステップ1006においては、押出部材を通して押出部材の先端へと物質を案内し、そして、ステップ1008においては、複数の押出部材の先端から物質を電気噴霧し、これにより、ファイバ状材料を形成する。
【0054】
電気噴霧は、様々な押出部材から押し出した物質を電気紡績することができ、これにより、ファイバまたはナノファイバを形成することができる。電気噴霧は、好ましくは、2,000〜400,000V/mという電界強度で行われる。押出部材から電気噴霧されるファイバ状材料は、コレクタ上に収集される。押出部材から電気紡績されたファイバも、また、コレクタ上に収集することができる。製造されるファイバは、ナノファイバとすることができる。
【0055】
本発明によって製造されるファイバおよびナノファイバには、限定するものではないけれども、アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、コラーゲン、DNA、フィブリノゲン、フィブロネクチン、ナイロン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(エチルビニルアセテート)、ポリ(エチル−コ−ビニルアセテート)、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(メタクリル酸)塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(スチレンスルホン酸)塩、ポリ(スチレンスルホニルフルオライド)、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアニリン、ポリベンソイミダゾール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン−コ−ポリエチレンオキサイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリラクチド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、タンパク質、SEBSコポリマー、絹、および、スチレン/イソプレンコポリマー、がある。
【0056】
加えて、2つ以上のポリマーが共通の溶媒に溶ける限りにおいては、ポリマーブレンドを形成することもできる。いくつかの例としては、ポリ(フッ化ビニリデン)−ブレンド−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−ブレンド−ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(メチルメタクリレート)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−ブレンド−ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、タンパク質−ブレンド−ポリエチレンオキサイド、ポリラクチド−ブレンド−ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−ブレンド−ポリエステル、ポリエステル−ブレンド−ポリ(ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキサイド)−ブレンド−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシスチレン)−ブレンド−ポリ(エチレンオキサイド)、がある。
【0057】
事後的なアニール処置により、電気紡績されたポリマーファイバから、カーボンファイバを得ることができる。
【0058】
上記開示に基づき、様々な修正や変更が可能である。したがって、特に断らない限り、本発明は、特許請求の範囲内において実施されることは、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来技術による電気紡績装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図3A】本発明における押出部材の一実施形態を概略的に示す図である。
【図3B】本発明における押出部材の他の実施形態を概略的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における押出部材を概略的に示す図であって、複数の中実部材が、押出部材の複数のチャネルを形成している。
【図5】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図である。
【図6A】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図であって、この実施形態においては、装置が、チャンバ内に収容されている。
【図6B】本発明の他の実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置を概略的に示す図であって、この実施形態においては、装置が、シュラウドを備えている。
【図7】本発明の一実施形態による電気噴霧/電気紡績を行う装置における共通電極を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7の電極を概略的に示す側面図である。
【図9A】本発明による電気噴霧/電気紡績を行う装置における容器の一部を概略的に示す図である。
【図9B】本発明の一実施形態における電気噴霧/電気紡績ヘッドの組立状況を概略的に示す図である。
【図10】本発明による方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
21 電気噴霧/電気紡績を行う装置
24 噴霧ヘッド
26 電極(共通電極)
28 容器
30 押出部材
35 外部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ状材料を製造するための装置であって、
ファイバ状材料の形成原料をなす物質を受領し得るよう構成された導入口を有した容器と;
この容器内に配置された共通電極と;
この共通電極に対向しつつ前記容器の壁内に形成された複数の押出部材であるとともに、これら押出部材と前記共通電極との間に前記導入口に連通したスペースを形成するものとされ、これにより、このスペース内に前記物質を受領し得るものとされたような、複数の押出部材と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、アレイ状をなす複数の押出部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に対して等距離のところに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
さらに、前記容器の外部に配置された外部電極を具備し、
これにより、前記共通電極と前記外部電極との間に電圧が印加されたときには、前記共通電極から前記壁を貫通して前記外部電極にまで延在するような電界が生成されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、前記ファイバ状材料を収集し得るように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
さらに、収集機構を具備し、
この収集機構が、前記容器と前記外部電極との間に配置されているとともに、前記ファイバ状材料を収集し得るように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、プレートとスクリーンとのうちの少なくとも一方を備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、電気アースを備えていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、前記共通電極から5〜50cmだけ離間したところに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項4記載の装置において、
さらに、前記共通電極と前記外部電極との間にわたって電気的に接続されていて前記電界を生成するための電源を具備していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記電源が、2,000〜400,000V/mという電界強度を生成し得るよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、前記容器を貫通する複数の開口を備えていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記開口の内部寸法が、50〜250μmという範囲であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、チューブを備えていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記チューブが、1900〜50,000μm2 の内部横断面積を有していることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14記載の装置において、
前記チューブが、400μm未満という外部寸法を有していることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、複数の中実部材を備え、
これら中実部材が、互いに当接して配置されており、これにより、これら中実部材どうしの間に複数の押出チャネルを形成していることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、前記容器の前記壁内に、2〜100個の開口を形成していることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、キャピラリと、フリットと、ニードルと、発泡体と、のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、前記容器の外表面を超えて延出されていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、金属部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、絶縁部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に対向したフラットな表面を有していることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に向けて延出された複数の突起を有していることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、フラットな表面を備え、
このフラットな表面が、前記複数の押出部材に対向した周縁リムを有していることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記容器の中央に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項1記載の装置において、
前記壁が、電気的に透過性の材料を備えていることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、絶縁体を備えていることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、フリットを備えていることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、シリコンを備えていることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項1記載の装置において、
さらに、少なくとも前記容器を囲んでいるチャンバを具備していることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項1記載の装置において、
さらに、少なくとも前記容器を囲んでいるシュラウドを具備していることを特徴とする装置。
【請求項33】
ファイバ状材料を製造するための装置であって、
ファイバ状材料を押出形成する原料をなす物質を収容し得るよう構成された容器と;
この容器内に配置された共通電極と;
複数の場所において前記容器から前記物質を電気噴霧するための電気噴霧手段であるとともに、前記共通電極に対向して配置された電気噴霧手段と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、前記物質からファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、前記物質からナノファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項33記載の装置において、
さらに、前記電気噴霧手段から前記ファイバ状材料を収集するための収集手段を具備していることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、2,000〜400,000V/mという電界強度のもとにおいて、前記物質からファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項38】
ファイバ状材料を製造するための方法であって、
ファイバ状材料の形成原料をなす物質を、複数の押出部材を有した容器に対して、供給し;
前記物質を押し出す方向において前記複数の押出部材に対して共通電界を印加し;
前記複数の押出部材を通して前記複数の押出部材の先端のところへと前記物質を案内し;
前記複数の押出部材の前記先端のところにおいて前記物質を電気噴霧し、これにより、前記ファイバ状材料を形成する;
ことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、前記複数の押出部材から押し出された前記物質を電気紡績し、これにより、ファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、前記複数の押出部材から押し出された前記物質を電気紡績し、これにより、ナノファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、2,000〜400,000V/mという前記共通電界内において前記ファイバ状材料を電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項38記載の方法において、
コレクタ上に前記ファイバ状材料を収集することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、
前記収集に際しては、押し出された前記物質からなるファイバを収集することを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、ポリマーファイバを電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、
さらに、前記ポリマーファイバをアニールすることにより、カーボンファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、ポリマーナノファイバを電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、
さらに、前記ポリマーナノファイバをアニールすることにより、カーボンナノファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項1】
ファイバ状材料を製造するための装置であって、
ファイバ状材料の形成原料をなす物質を受領し得るよう構成された導入口を有した容器と;
この容器内に配置された共通電極と;
この共通電極に対向しつつ前記容器の壁内に形成された複数の押出部材であるとともに、これら押出部材と前記共通電極との間に前記導入口に連通したスペースを形成するものとされ、これにより、このスペース内に前記物質を受領し得るものとされたような、複数の押出部材と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、アレイ状をなす複数の押出部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に対して等距離のところに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
さらに、前記容器の外部に配置された外部電極を具備し、
これにより、前記共通電極と前記外部電極との間に電圧が印加されたときには、前記共通電極から前記壁を貫通して前記外部電極にまで延在するような電界が生成されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、前記ファイバ状材料を収集し得るように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
さらに、収集機構を具備し、
この収集機構が、前記容器と前記外部電極との間に配置されているとともに、前記ファイバ状材料を収集し得るように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、プレートとスクリーンとのうちの少なくとも一方を備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、電気アースを備えていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項4記載の装置において、
前記外部電極が、前記共通電極から5〜50cmだけ離間したところに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項4記載の装置において、
さらに、前記共通電極と前記外部電極との間にわたって電気的に接続されていて前記電界を生成するための電源を具備していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記電源が、2,000〜400,000V/mという電界強度を生成し得るよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、前記容器を貫通する複数の開口を備えていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記開口の内部寸法が、50〜250μmという範囲であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、チューブを備えていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、
前記チューブが、1900〜50,000μm2 の内部横断面積を有していることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項14記載の装置において、
前記チューブが、400μm未満という外部寸法を有していることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、複数の中実部材を備え、
これら中実部材が、互いに当接して配置されており、これにより、これら中実部材どうしの間に複数の押出チャネルを形成していることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、前記容器の前記壁内に、2〜100個の開口を形成していることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材が、キャピラリと、フリットと、ニードルと、発泡体と、のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、前記容器の外表面を超えて延出されていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、金属部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項1記載の装置において、
前記複数の押出部材のうちの少なくとも1つが、絶縁部材を備えていることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に対向したフラットな表面を有していることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記複数の押出部材に向けて延出された複数の突起を有していることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、フラットな表面を備え、
このフラットな表面が、前記複数の押出部材に対向した周縁リムを有していることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項1記載の装置において、
前記共通電極が、前記容器の中央に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項1記載の装置において、
前記壁が、電気的に透過性の材料を備えていることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、絶縁体を備えていることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、フリットを備えていることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項27記載の装置において、
前記電気的に透過性の材料が、シリコンを備えていることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項1記載の装置において、
さらに、少なくとも前記容器を囲んでいるチャンバを具備していることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項1記載の装置において、
さらに、少なくとも前記容器を囲んでいるシュラウドを具備していることを特徴とする装置。
【請求項33】
ファイバ状材料を製造するための装置であって、
ファイバ状材料を押出形成する原料をなす物質を収容し得るよう構成された容器と;
この容器内に配置された共通電極と;
複数の場所において前記容器から前記物質を電気噴霧するための電気噴霧手段であるとともに、前記共通電極に対向して配置された電気噴霧手段と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、前記物質からファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、前記物質からナノファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項33記載の装置において、
さらに、前記電気噴霧手段から前記ファイバ状材料を収集するための収集手段を具備していることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項33記載の装置において、
前記電気噴霧手段が、2,000〜400,000V/mという電界強度のもとにおいて、前記物質からファイバを電気紡績することを特徴とする装置。
【請求項38】
ファイバ状材料を製造するための方法であって、
ファイバ状材料の形成原料をなす物質を、複数の押出部材を有した容器に対して、供給し;
前記物質を押し出す方向において前記複数の押出部材に対して共通電界を印加し;
前記複数の押出部材を通して前記複数の押出部材の先端のところへと前記物質を案内し;
前記複数の押出部材の前記先端のところにおいて前記物質を電気噴霧し、これにより、前記ファイバ状材料を形成する;
ことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、前記複数の押出部材から押し出された前記物質を電気紡績し、これにより、ファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、前記複数の押出部材から押し出された前記物質を電気紡績し、これにより、ナノファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、2,000〜400,000V/mという前記共通電界内において前記ファイバ状材料を電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項38記載の方法において、
コレクタ上に前記ファイバ状材料を収集することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、
前記収集に際しては、押し出された前記物質からなるファイバを収集することを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、ポリマーファイバを電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、
さらに、前記ポリマーファイバをアニールすることにより、カーボンファイバを形成することを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項38記載の方法において、
前記電気噴霧に際しては、ポリマーナノファイバを電気紡績することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、
さらに、前記ポリマーナノファイバをアニールすることにより、カーボンナノファイバを形成することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図2A】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公表番号】特表2007−532791(P2007−532791A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507383(P2007−507383)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011036
【国際公開番号】WO2006/043968
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(500240896)リサーチ・トライアングル・インスティチュート (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011036
【国際公開番号】WO2006/043968
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(500240896)リサーチ・トライアングル・インスティチュート (36)
【Fターム(参考)】
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