説明

電気接続箱

【課題】電気接続箱を防水構造とすることだけでは防ぎきれない、電気接続箱内での水に起因する障害発生を予め防止することができる電気接続箱を提供する。
【解決手段】機器に設置される電気接続箱において、該電気接続箱の内壁の、機器に設置されたときに上部となる部分に断熱層が設けられたことを特徴とする電気接続箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、各種装置などの機器に設置されて、内部にリレー、ヒューズ、ジョイントコネクタなどの電気部品を収納し、各種電気接続のために使用される電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
電気接続箱は自動車などの機器において、各種の電気的接続のために用いられるが、その内部の機器及び電気接続保護のために、例えば特開2004−166362号公報(特許文献1)等で提案されているように、防水構造となっていることが多い。
【0003】
しかしながら、このような防水構造の電気接続箱を用いているにもかかわらず、水が原因と思われる、その内部の機器の故障、接点の腐食、あるいは、内部での電気的ショートが発生することがある。
【特許文献1】特開2004−166362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、電気接続箱を防水構造とすることだけでは防ぎきれない、電気接続箱内での水に起因する障害発生を予め防止することができる電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、電気接続箱の防水性について検討を行ったところ、例えば、電気接続箱の、被水に対する防水性については問題がなくても、電気接続箱の開閉により、あるいは、気圧の変化(自動車の場合、日常の気象の変化に伴う気圧の変化のみならず、高所への移動に伴う気圧の変化(例えば渋峠(標高:2172m)では東京都心部に比して200hPa以上の気圧低下が生じる)等に伴って生じる、わずかな空気の出入りにより、例えば、梅雨や夏の多湿期に湿気として内部に入り込んだ水分が、気温の変化により結露することがあることが判った。
【0006】
しかし、結露が生じても、わずかな結露であれば、電気接続箱内部の電気機器や、電気接続に対して障害を起こすことはないと考えられるが、さらに検討を行ったところ、電気接続箱の内側上部に結露が生じた場合、特に自動車などの用途の場合では電気接続箱に与えられた振動により、それら露粒が互いに結合し、大きくなって、電気接続箱内の電気機器へ滴下し障害を引き起こす場合があることが判った。本発明はこのような知見に基づきなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明の電気接続箱は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、機器に設置される電気接続箱において、該電気接続箱の内壁の、機器に設置されたときに上部となる部分に断熱層が設けられた電気接続箱である。
【0008】
また、本発明の電気接続箱は上記課題を解決するため、請求項4に記載の通り、機器に設置された電気接続箱であって、該電気接続箱の内壁の上部部分に断熱層が設けられた電気接続箱である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気接続箱によれば、万一内部に水が侵入した場合であっても、電気接続箱内部の上部における結露を防止でき、そのため、結露の水滴滴下による電気接続箱内部の機器、電気接続への障害の発生を効果的に防止するとことができ、例えば、自動車の電気接続箱に応用した場合には、予期せぬ故障や、安全な運行に対する障害を予め防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、断熱層は、電気接続箱の内壁の、少なくとも、機器に設置されたときに上部となる部分に設ける必要がある。このとき、断熱層を電気接続箱の外壁に設けた場合、充分な効果が得られない場合がある。
【0011】
断熱層として、半独立半連続発泡体を用いることが望ましい。半独立半連続発泡体の場合、表面が結露しにくい上に充分な断熱性を有するため、本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0012】
その他、断熱層を構成する素材としてフェルトなどの繊維集合体等、あるいは、独立気泡を有する発泡体や連続気泡を有する発泡体等などを用いることができるが、表面に結露が生じやすく、あるいは、断熱性が不足するなどの理由により本発明の効果が得られないことがある。
【0013】
ここで、本発明における半独立半連続発泡体とは、1つの発泡体の中に独立気泡と連続気泡とが共存する発泡体であり、かつ、これらが均一にランダムに配置された(即ち、独立気泡のみが集中・偏在した箇所や連続気泡のみが集中・偏在した箇所がない)発泡体である。
【0014】
本発明で用いる半独立半連続発泡体としては、例えば、日東電工社から「エプトシーラー」として供給されている発泡体のうち、EE−1000シリーズのものが挙げられる。なお、独立単独発泡体(連続気泡のない、単独気泡のみの発泡体)として「エプトシーラー」にNo.6800シリーズがある。
【0015】
さらに、これら断熱層として用いる素材は、電気接続箱の内壁に両面粘着テープにより、断熱層として設けるようにしてあると、断熱層形成が迅速に行うことができる。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の電気接続箱の実施例についてモデル図を用いて説明する。図1に、断熱層形成前の、自動車用の電気接続箱の一例Cを示す。電気接続箱Aには防水密閉が可能なように、蓋(図示しない)が付属する。
【0017】
図2に断熱層として用いる半独立半連続発泡体(日東電工社製エプトシーラーEE−1000)からなるシートB(厚さ:3mm)を示す。シートBの片面には両面粘着テープB1が付いていて、電気接続箱Aへの断熱層の設置作業が容易になっている。
【0018】
図3には、電気接続箱Cの、機器に設置されたときに上部となる部分(厚さ:約2mm)にシートBからなる断熱層を設けて得た、本発明に係る電気接続箱Aを示す。
【0019】
ここで、電気接続箱Aの結露防止効果について検討を行った。この結露防止効果評価には、比較のため、断熱材無しの電気接続箱A、半独立半連続発泡体からなる断熱層の代わりに、同寸法の独立単独発泡体であるエプトシーラーNo.6800を断熱層として設けた電気接続箱D、また、電気接続箱Aと同様に断熱材無しの電気接続箱であって、機器に設置されたときに上部となる部分の厚さを電気接続箱Aの2倍(4mm)とした電気接続箱E、半独立半連続発泡体からなる断熱層の代わりに、同寸法の、連続気泡発泡体である日東電工社製難燃性エプトシーラーEC−200を断熱層として設けた電気接続箱Fの、4つの比較用電気接続箱と共に結露防止効果について調べた。
【0020】
これら電気接続箱のそれぞれ内部に、実際でのトラックでの使用を想定した、リレー等の電気部品が実装された電気基板をセットし、次いで、その基板に直接触れないようにしてそれぞれ10mLの水を入れ、蓋により密閉し、自動車に取り付けた状態に保って、60℃に設定した恒温槽内に2時間いれた後、取り出し、さらに、それぞれの電気接続箱の上部に氷を乗せた後2時間放置した(氷は適宜追加した)。
【0021】
その後蓋を開けて内部の状態を観察した。その結果、本発明に係る電気接続箱Cでは、内部の基板に実装された電気部品は濡れておらず、また、断熱層表面にも結露が認められなかったが、電気接続箱D及びFでは内部の基板に実装された電気部品にこそ水滴はついていなかったが、断熱層表面には結露が認められ、このため、電気接続箱D及びFでは本発明の効果はある程度は得られるもの、振動等の悪条件が伴った場合には、これら電気部品へ水滴が落下する可能性があると認められた。
【0022】
また、電気接続箱A及びEでは、これらの内部の基板に実装された電気部品の上方の内壁に結露が認められると共に、電気部品自体も濡れていて、充分な効果が得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は機器に設置される電気接続箱において好適に利用され、さらに、環境の気圧の変化や天候の変化が大きく、電気接続箱へ振動が伝わりやすい、自動車など移動機器の電気接続箱において、最適な技術であり、内部での結露による障害の発生を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術に係る電気接続箱Aを示すモデル図である。
【図2】本発明で断熱層として用いる半独立半連続発泡体からなるシートBを示すモデル図である。
【図3】本発明に係る電気接続箱Cを示すモデル図である。
【符号の説明】
【0025】
A 従来技術に係る電気接続箱
B 断熱層として用いる半独立半連続発泡体からなるシート
B1 両面粘着テープ
C 本発明に係る電気接続箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設置される電気接続箱において、該電気接続箱の内壁の、機器に設置されたときに上部となる部分に断熱層が設けられたことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
上記断熱層が、半独立半連続発泡体からなることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
上記断熱層が両面粘着テープにより上記電気箱の壁に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
機器に設置された電気接続箱であって、該電気接続箱の内壁の上部部分に断熱層が設けられたことを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−136111(P2006−136111A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321654(P2004−321654)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】