説明

電気接続箱

【課題】
本発明は、メタルコア配線基板を用いて、中電流ヒューズの搭載を可能にしてメンテナンスの作業効率を向上させ、ワイヤハーネスを不要にした電気接続箱を提供する。
【解決手段】
本発明の実施の形態に係る電気接続箱は、所定のパターン幅Hの回路6が形成されたメタルコア配線基板1と、メタルコア配線基板1に半田付け等で取り付けられた第1の装着用端子2及び第2の装着用端子3と、第1の装着用端子2に装着される中電流ヒューズ4と、第2の装着用端子3に装着されるミニヒューズ5とを有する。回路6のパターン幅Hは、通電開始からの発煙時間が所定の基準時間以上となるパターン幅に形成されている。中電流ヒューズ4の上流側又は下流側に電気的に接続され、メタルコア配線基板1に設けられたリレー7を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に用いられる電気接続箱に関し、特に、配線基板に中電流ヒューズを搭載した電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車等の車両においては、乗車時の快適性に対するニーズの高まりに伴い、例えば、オーディオ機器,ナビゲーション装置,テレビ,電動アンテナ,エアコンディショナ,リアウインドヒータ,シートヒータ,パワーシート,サスペンションの硬さ制御装置等、多くの車載電装品が使用されている。
【0003】
これらの車載電装品は、エンジンルーム内のバッテリー近傍に配置された電気接続箱を経由してワイヤハーネス等から電源が供給される。このとき、電気接続箱内には、何らかの不具合によりワイヤハーネス等とボディとが短絡した時やモータ等の負荷が故障した時等に過大な電流が流れることを防止するヒューズや、各種操作スイッチ等と連動し、車載電装品への電源供給を制御するリレー等の電気部品が搭載されている。
【0004】
従来の電気接続箱は、例えば、特開昭59−28818号公報に開示されたように、放熱性を考慮して、配線基板の間にバスバーで所望形状の回路が形成され、ヒューズやリレー等が取り付けられる構造のものが知られている。ここで、バスバーは、銅,銅合金或いは黄銅等からなる電気伝導性の導電板を所望の回路形状に打ち抜いて折り曲げたもので、電気回路はこれらのバスバーを互いに接触しないように配置したものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−28818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気接続箱には、配線基板の回路に過電流が通電した場合に、回路保護装置であるヒューズの溶断後に、ヒューズを交換して、配線基板の再利用が可能であることが求められている。そのため、少なくともヒューズの溶断時間以上は、過電流に対する溶断・損傷に耐え得るパターン幅になるように配線基板の回路設計を行う必要がある。しかし、中電流ヒューズの溶断時間は、ミニヒューズよりも長いため、中電流ヒューズ回路は大きな導体パターン幅を必要とし、配線基板の銅箔で担うのは困難である。
【0007】
そこで、従来の電気接続箱では、配線基板にはミニヒューズのみを搭載し、中電流ヒューズを別の電気接続箱(J/B)等に搭載していた。そのため、ヒューズの交換作業に時間を要し、メンテナンスの作業効率を低下させるという不具合があった。
【0008】
また、中電流ヒューズを別の電気接続箱(J/B)等に搭載していたため、ミニヒューズを搭載した電気接続箱との間をワイヤハーネス等で接続する必要がある。そのため、組付の作業効率を低下させるとともに、コスト高になるという不具合があった。
【0009】
さらに、中電流ヒューズの回路では、どれだけのパターン幅が必要なのかのデータがこれまで無かった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、メタルコア配線基板を用いて、中電流ヒューズの搭載を可能にしてメンテナンスの作業効率を向上させ、ワイヤハーネスを不要にした電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電気接続箱は、所定のパターン幅の回路が形成されたメタルコア配線基板と、前記メタルコア配線基板に装着された中電流ヒューズとを有することを特徴とするものである。
【0012】
前記回路のパターン幅は、通電開始からの発煙時間が所定の基準時間以上となるパターン幅に形成されているのが好ましい。
【0013】
前記中電流ヒューズの上流側又は下流側に電気的に接続され、前記メタルコア配線基板に設けられたリレーを有してもよい。
【0014】
前記メタルコア配線基板上に、前記中電流ヒューズを含む複数のヒューズを複数段に装着し、前記回路に電気的に接続される複数の端子を備えたヒューズ保持部材が設けられ、前記中電流ヒューズを装着する端子は、前記ヒューズ保持部材の最上段の位置に配置され、前記ヒューズ保持部材から離れた外側の回路に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電気接続箱によれば、放熱性の優れたメタルコア配線基板を用いているので、ミニヒューズと中電流ヒューズを一緒に搭載することができる。その結果、ヒューズの交換作業が容易になり、メンテナンスの作業効率を向上させることができる。
【0016】
また、ワイヤハーネス等の接続具が不要となるので、組付の作業効率を向上させるとともに、コストを低減することができる。
【0017】
さらに、中電流ヒューズに電気的に接続されるリレーも搭載可能であるので、プラグインタイプリレーよりも小型で低発熱な基板リレーを採用でき、車両上の必要搭載スペースの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(A)は、本発明の実施の形態に係る電気接続箱を示す斜視図、(B)はメタルコア配線基板上に形成される回路を示す断面図である。
【0019】
図1(A)に示すように、本発明の実施の形態に係る電気接続箱は、メタルコア配線基板1と、メタルコア配線基板1に半田付け等で取り付けられた第1の装着用端子2及び第2の装着用端子3と、第1の装着用端子2に装着される中電流ヒューズ4と、第2の装着用端子3に装着されるミニヒューズ5とを有し、これらが図示しないケース等に収容されている。
【0020】
第1の装着用端子2及び第2の装着用端子3は、例えば逆L字状に直角に折曲して形成され、メタルコア配線基板1上に設けられたヒューズ保持部材8に固定して取り付けられている。また、第1の装着用端子2及び第2の装着用端子3の基板1側の端部は、メタルコア配線基板1上に形成された回路6に電気的に接続されている。
【0021】
メタルコア配線基板1は、図1(B)に示すように、銅又はアルミニウム等からなる金属コア1aに、樹脂等からなる絶縁層1bを形成し、印刷等で回路6が形成されたものであり、基板に搭載される電子回路や電子部品からの放出熱を挿入された金属コア1aに伝導することにより放熱特性を高めている。メタルコア配線基板1を採用することにより、銅箔の回路6から発生する大きなジュール熱を基板面方向に効率よく伝熱させることができるので、有効放熱面積を広げることができ、中電流ヒューズ4の装着と、その回路のパターンの配策が可能となる。
【0022】
図1(B)に示すように、メタルコア配線基板1に形成される回路6のパターン幅Hは、通電開始からの発煙時間が所定の基準時間以上となるパターン幅に形成されている。このパターン幅Hの決定は、例えば以下に述べるようなパターン幅評価試験から得られるデータに基づいて行った。
【0023】
パターン幅評価試験では、例えばパターン長が100mm、厚さが70μm、金属コア材JISC1100 1/4H、厚さが0.4mmのメタルコア基板からなるサンプル基板を用意し、そのサンプル基板に対し、中電流ヒューズ4の各電流定格での過電流を通電させて、回路のパターン幅に対する通電開始からの発煙時間を調べた。
【0024】
図2は、パターン幅評価試験の結果として、サンプル基板のパターン幅に対する通電からの発煙時間を示すグラフであり、(A)は中電流ヒューズ30A定格電流での過電流150A通電した場合、(B)は中電流ヒューズ40A定格電流での過電流200A通電した場合、(C)は中電流ヒューズ50A定格電流での過電流250A通電した場合をそれぞれ示す。
【0025】
図2のグラフから、通電開始から所定時間(この例では1秒)以上通電して、回路が溶断・発煙に耐久するために必要なパターン幅を決定する。この場合、中電流ヒューズ4の各定格電流における必要パターン幅は、他の回路を配策できるためのスペースを確保するための上限値を考慮して、30A定格では、図2(A)のグラフから4.0mm〜8.0mm、40A定格では、図2(B)のグラフから、5.5mm〜10.0mm、50A定格では、図2(C)のグラフから6.5mm〜12.0mmと決定した。
【0026】
以上のように決定された各中電流ヒューズ4に対するパターン幅に基づいてメタルコア配線基板1上の回路6が形成される。
【0027】
本発明の実施の形態に係る電気接続箱は、中電流ヒューズ4の下流側に電気的に接続され、メタルコア配線基板1に設けられたリレー7を有してもよい。なお、リレー7は、中電流ヒューズ4の上流側に電気的に接続されてもよい。
【0028】
本発明の実施の形態に係る電気接続箱によれば、放熱性の優れたメタルコア配線基板1を用いているので、ミニヒューズ5と中電流ヒューズ4を一緒に搭載することができる。その結果、ヒューズの交換作業が容易になり、メンテナンスの作業効率を向上させることができる。
【0029】
また、ワイヤハーネス等の接続具が不要となるので、組付の作業効率を向上させるとともに、コストを低減することができる。
【0030】
さらに、中電流ヒューズ4に電気的に接続されるリレー7も搭載可能であるので、プラグインタイプリレーよりも小型で低発熱な基板リレーを採用でき、車両上の必要搭載スペースの小型化を図ることができる。
【0031】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば2以上の中電流ヒューズ4をメタルコア配線基板1に装着してもよい。
【0032】
また、図3(A)に示すように、ヒューズ保持部材8は、中電流ヒューズ4及びミニニューズ5を複数段(例えば2段)に装着するように構成してもよい。
【0033】
その際、中電流ヒューズ4を装着し保持する第1の装着用端子2は、最上段の位置に配置されるのが好ましい。これによって、第1の装着用端子2の回路側の端部は、図3(B)に示すように、ヒューズ保持部材8から離れた外側の回路6aに電気的に接続させることができるので、中電流ヒューズ4に対応する回路6aのパターン幅が広くても、他の装着用端子3とのピッチ間の距離を広げる必要がなくなる。その結果、電気接続箱の小型化を図ることができ、製造コスト等を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば自動車等の車両に用いられる電気接続箱に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係る電気接続箱を示す斜視図、(B)はメタルコア基板上に形成される回路を示す断面図である。
【0036】
【図2】パターン幅評価試験の結果として、サンプル基板のパターン幅に対する通電からの発煙時間を示すグラフであり、(A)は中電流ヒューズ30A定格電流での過電流150A通電した場合、(B)は中電流ヒューズ40A定格電流での過電流200A通電した場合、(C)は中電流ヒューズ50A定格電流での過電流250A通電した場合をそれぞれ示す。
【0037】
【図3】(A)はヒューズを複数段に装着したヒューズ保持部材を示す正面図、(B)はメタルコア配線基板上の回路配置例を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:メタルコア配線基板
2:第1の装着用端子
3:第2の装着用端子
4:中電流ヒューズ
5:ミニヒューズ
6:回路
7:リレー
8:ヒューズ保持部材
H:パターン幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターン幅の回路が形成されたメタルコア配線基板と、
前記メタルコア配線基板に装着された中電流ヒューズと、
を有することを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記回路のパターン幅は、通電開始からの発煙時間が所定の基準時間以上となるパターン幅に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記中電流ヒューズの上流側又は下流側に電気的に接続され、前記メタルコア配線基板に設けられたリレーを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記メタルコア配線基板上に、前記中電流ヒューズを含む複数のヒューズを複数段に装着し、前記回路に電気的に接続される複数の端子を備えたヒューズ保持部材が設けられ、
前記中電流ヒューズを装着する端子は、前記ヒューズ保持部材の最上段の位置に配置され、前記ヒューズ保持部材から離れた外側の回路に接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つの項に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−42583(P2006−42583A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28315(P2005−28315)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】