説明

電気接続箱

【課題】小型化及び軽量化を可能にすることができる電気接続箱を提供する。
【解決手段】電気接続箱1は、メインカバー2と、ロアカバー3と、これらのカバー2,3内に収容される電源分配回路としての印刷配線板4とを備えている。印刷配線板4は、流れる電流の強さに応じて膜厚と幅とが異なる複数の配線パターン42A,42B,42Cが、絶縁基板41上に形成されているとともに、これらの配線パターン42A,42B,42Cそれぞれの表面が同一平面上に配置されている。印刷配線板4には、バスバに用いられるものよりも小型タイプの電装品6がろう付けなどの溶接手段によって実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体としての自動車などに搭載される電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載されている。このため、前記自動車は、前記電子機器に電力を供給するために、ワイヤハーネスを配索するとともに、電気接続箱を適宜箇所に配置してきた。
【0003】
ワイヤハーネスは、複数の電線とコネクタなどからなる。電線は、導電性の芯線と、この芯線を被覆した絶縁性の被覆部とを備えた所謂被覆電線である。コネクタは、電線の端末などに取り付けられかつ芯線と接続する端子金具と、この端子金具を収容する箱状のコネクタハウジングとを備えている。前記ワイヤハーネスのコネクタは、電気接続箱のコネクタや各電子機器のコネクタ、電源などと接続する。
【0004】
電気接続箱101は、図4に示すように、上カバー102と、下カバー103と、これらのカバー102,103の間に収容される本体部106及び配線盤109とを備えて構成されている。本体部106は、基板105上に、ワイヤハーネスのコネクタと接続するためのコネクタ部104Aや、ヒューズやリレーなどの電装品と接続するための電装品コネクタ部104Bなどを備えている。配線盤109は、互いに重ねられる複数の絶縁板108と絶縁板108間に配されるバスバ107を備えている。バスバ107は、導電性の板金に打ち抜き加工などのプレス加工が施されて得られ、その先端部が垂直方向の上方または下方に屈曲されたタブ部107Aを有している。配線盤109は、バスバ107のタブ部107Aがコネクタ部104A及び電装品コネクタ部104Bの内部に挿し込まれることで、コネクタ部104Aに取り付けられるコネクタと電装品コネクタ部104Bに取り付けられる電装品とをバスバ107で構成される接続回路に電気的に接続する。このような電気接続箱101は、ワイヤハーネスから供給される電源からの電力を、ヒューズやリレーなどの電装品に流した後、ワイヤハーネスを介して、前記自動車の各電子機器に供給する(特許文献1を参照。)。
【0005】
ところで、上述した電気接続箱101は、車室内のスペース確保の目的から、その小型化及び軽量化が要望されている。しかしながら、従来の電気接続箱101は、電源回路や信号回路などの、各接続回路全てがバスバ107によって構成されていた。そして、現在のプレス加工技術で成形されるバスバ107は、板厚・幅・パターン間ピッチをある程度確保する必要があるため実装密度が低く、電気接続箱101の小型化及び軽量化を妨げる要因となっていた。
【0006】
そこで、電気接続箱の小型化・軽量化の要望を満足させるために、電源回路にバスバを用いるとともに、弱電流が流される回路や信号回路などに印刷配線板を用いて小型化・軽量化を図った電気接続箱が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。しかしながらこの電気接続箱では、バスバが依然として残されており、さらなる小型化・軽量化の余地があった。
【0007】
また、従来の印刷配線板では、異なる膜厚の配線パターン(接続回路)を単一の絶縁基板上に形成することができなかったため、多層の絶縁基板を積層させるとともに、これらの基板間を接続させるためにスルーホールを設けるなどしていた。このように従来の印刷配線板は、スルーホールを設けるためのスペースや、絶縁基板を積層させるために生じる無駄な部分など、電気接続箱の小型化及び軽量化を妨げる要因を含んでいた。
【特許文献1】実公平7−36426号公報
【特許文献2】特開平7−241020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、小型化及び軽量化を可能にすることができる電気接続箱を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電源と負荷との間に配される電気接続箱であって、電源からの電力を各負荷ごとに分配するとともに、分配した電力を電装品を介して負荷側に供給する電源分配回路が、印刷配線板で形成されたことを特徴とする電気接続箱である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記印刷配線板が、各負荷ごとに分配される前の電力が流される第1の配線パターンと、各負荷ごとに分配された電力が流される前記第1の配線パターンよりも膜厚の薄い第2の配線パターンと、を備え、かつ、前記第1の配線パターンと第2の配線パターンとが同一の絶縁基板上に形成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記第1の配線パターンの一部が前記絶縁基板に埋設されているとともに、前記第2の配線パターンが前記絶縁基板に重ねられ、かつ、前記第1の配線パターンの表面と前記第2の配線パターンの表面とが同一平面上に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、電気接続箱が、印刷配線板を電源分配回路として用いているので、溶接によって印刷配線板に取り付けることが可能な小型の電装品を実装することができ、そのために、小型化及び軽量化が可能な電気接続箱を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、電気接続箱が、各負荷ごとに分配される前の電力が流される第1の配線パターンと、各負荷ごとに分配された電力が流される第1の配線パターンよりも膜厚の薄い第2の配線パターンとが同一の絶縁基板上に形成された印刷配線板を電源分配回路として用いているので、印刷配線板を構成する絶縁基板の積層数を減らすことができ、そのためにスルーホールを設けるためのスペースや、絶縁基板を積層させるために生じる合成樹脂の無駄な部分などを省くことができる。したがって、さらに小型化及び軽量化が可能でかつ加工コストの低い電気接続箱を提供することができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、印刷配線板は、第1の配線パターンの一部が絶縁基板に埋設されていることで絶縁基板の表面と第1の配線パターンの表面との高低差が極めて小さく形成されているとともに、第1の配線パターンの表面と第2の配線パターンの表面とが同一平面上に配置されているので、電装品の印刷配線板への実装がさらに容易になり、印刷配線板の位置精度が向上して接続信頼性の高い電気接続箱を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態にかかる電気接続箱1を、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる電気接続箱1の分解斜視図であり、図2は、電気接続箱1の一部の回路図であり、図3は、電気接続箱1に備えられた印刷配線板4を示す斜視図である。
【0016】
図1などに示す電気接続箱1は、ワイヤハーネスW(図1に一部示す)と協働して、自動車に搭載されて、バッテリや発電機などの電源200(図2に示す)からの電力を、負荷としての各電子機器300(図2に示す)に供給(分配)するものである。
【0017】
ワイヤハーネスWは、図1に示すように、電線10とこの電線10の端末などに取り付けられたコネクタ11とを備えている。ワイヤハーネスWは、コネクタ11が電気接続箱1の後述の接続部5や、各電子機器300に設けられたコネクタと結合することで、電源200などから供給される電力を、各電子機器300に供給する。
【0018】
電気接続箱1は、図1に示すように、メインカバー2と、ロアカバー3と、これらのカバー2,3内に収容される電源分配回路としての印刷配線板4と、を備えて構成されている。印刷配線板4の縁部には、前述したワイヤハーネスWとの接続部5が複数設けられている。カバー2,3は、絶縁性の合成樹脂からなり、周知の射出成形により成形される。また、これらのカバー2,3は、互いの間に印刷配線板4を挟む格好で重ね合わされるとともに、印刷配線板4に実装されるヒューズやリレーなどの電装品6などを覆う。
【0019】
印刷配線板4は、図1及び図3に示すように、絶縁基板41と、この絶縁基板41上に予め定められたパターンにしたがって形成された複数の配線パターン42A,42B,42Cとを備えている。配線パターン42A,42B,42Cは、銅又は銅合金などの導電性の金属を箔状に形成したものであり、本実施形態ではこの金属として銅を用いている。
【0020】
上記配線パターン42Aは、図2に示すように、ワイヤハーネスWを介して電源200と接続した各負荷としての電子機器300ごとに分配される前の電力が流される接続回路である。この配線パターン42Aは膜厚が400μmから500μmに設定されており、最大50アンペアの電流を通電可能としている。また、この配線パターン42Aは、図3に示すように、その一部が絶縁基板41に埋設される格好で絶縁基板41に積層されている。このため、絶縁基板41の表面と配線パターン42Aの表面との高低差が極めて小さくなっている。
【0021】
上記配線パターン42Bは、図2に示すように、配線パターン42Aから各負荷としての電子機器300ごとに分配された電力が流される接続回路であり、電装品6よりも電源200寄りに配されている。この配線パターン42Bは、図3に示すように、膜厚が配線パターン42Aよりも薄く形成されているとともに、幅が配線パターン42Aよりも狭く形成されている。また、この配線パターン42Bは、絶縁基板41に重ねられる格好で絶縁基板41に積層されている。
【0022】
上記配線パターン42Cは、図2に示すように、電装品6を介して配線パターン42Bから各負荷としての電子機器300ごとに分配された電力が流される接続回路である。この配線パターン42Cは、図3に示すように、膜厚が配線パターン42Bと等しく形成されているとともに、幅が配線パターン42Bよりも狭く形成されている。また、この配線パターン42Cは、配線パターン42Bと同様に絶縁基板41に重ねられる格好で絶縁基板41に積層されている。
【0023】
このように、配線パターン42A,42B,42Cは、流れる電力に応じて膜厚と幅、即ち断面積、が設定されているとともに、これらが同一の絶縁基板41上に形成されている。また、これらの配線パターン42A,42B,42Cは、図3に示すように、それぞれの表面が同一平面上に配置されている。なお、配線パターン42Aは、特許請求の範囲に記載した第1の配線パターンをなしており、配線パターン42B,42Cは、特許請求の範囲に記載した第2の配線パターンをなしている。
【0024】
さらに、このような印刷配線板4の表面にはヒューズやリレーなどの電装品6が実装される。この電装品6は、リード端子が配線パターン42A,42B,42Cにろう付けされるなどして取り付けられる。なお、この電装品6は、従来の電気接続箱に用いられていたバスバに接続するタイプのものよりも小型タイプのものを用いることができ、例えばリレーの場合、バスバに接続するタイプのリレーよりも約50%小型化したものを用いることができる。また、電装品6を配線パターン42A,42B,42Cにろう付けすることにより、これらの配線パターン42A,42B,42Cを、電源供給部材としてだけでなく電装品6を冷却する放熱板としても利用することができる。
【0025】
上述した印刷配線板4は以下のようにして製造される。まず、厚膜の層と薄膜の層との2層の銅箔とこれらの銅箔間に挟まれる膜厚1μm程度のニッケル箔とを積層してクラッドメタル材を形成する。次に、このクラッドメタル材の2層の銅箔のうち厚膜の層の銅箔にエッチングを施して配線パターン42Aになる部分以外を除去する。そして、このエッチングが施されたクラッドメタル材の厚膜の層の表面にプリプレグなどの接着シートと絶縁性の合成樹脂からなる板とを順に積層し、これらを接着する。そして、このクラッドメタル材の薄膜の層の銅箔、にエッチングを施して配線パターン42A,42B,42Cになる部分以外を除去し、配線パターン42A,42B,42Cを形成する。この際、薄膜の層を削るので、配線パターン42A,42B,42Cのパターン間ピッチを狭くすることが可能となる。なお、この接着シートは、クラッドメタル材の一方の表面のエッチングにより除去された部分を埋めるとともに熱硬化することにより前記合成樹脂からなる板と一体化して絶縁基板41となる。こうして上述した印刷配線板4が製造される。
【0026】
本実施形態によれば、電気接続箱1が、印刷配線板4を電源分配回路として用いているので、溶接によって印刷配線板4に取り付けることが可能な従来よりも小型の電装品6を実装することができる。
【0027】
また、この印刷配線板4が、流れる電流の強さに応じて膜厚と幅とが異なる、即ち断面積の異なる、複数の配線パターン42A,42B,42Cを同一の絶縁基板41上に有しているので、絶縁基板41の積層数を減らすことができる。また、これらの複数の配線パターン42A,42B,42Cは、厚膜の層と薄膜の層との2層の銅箔とこれらの銅箔間に挟まれるニッケル箔とを積層したクラッドメタル材の両面を削ることで形成されるが、この薄膜の層を削ることで配線パターン42A,42B,42Cのパターン間ピッチを狭く形成することができるので、狭ピッチの電装品6、即ち小型の電装品6、を実装することができる。したがって、高密度実装が可能で小型化及び軽量化が可能な電気接続箱1を提供することができる。
【0028】
さらに、配線パターン42Aの一部が絶縁基板41に埋設されていることで絶縁基板41の表面と配線パターン42Aの表面との高低差が極めて小さく形成されているとともに、複数の配線パターン42A,42B,42Cそれぞれの表面が同一平面上に配置されているので、電装品6の印刷配線板4への実装がさらに容易になる。したがって、印刷配線板4の位置精度が向上して接続信頼性の高い電気接続箱1を提供することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、印刷配線板4は、絶縁基板41の片面のみに配線パターン42A,42B,42Cが形成されていたが、本発明の印刷配線板は、絶縁基板の両面に配線パターンが形成されていても良いし、これらの絶縁基板が複数枚積層されて形成されていても良い。その場合は、前記絶縁基板にスルーホールを設けて、異なる層間の配線パターン同士を接続させる。このような印刷配線板を備えた本発明の電気接続箱は、従来の印刷配線板に比べて積層数を少なくすることができるので、その分、絶縁基板の重量及び面積、スルーホールの数も少なくすることができ、さらに高密度実装が可能で小型化及び軽量化が可能な電気接続箱を低い加工コストで提供することができる。
【0030】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電気接続箱の分解斜視図である。
【図2】図1に示された電気接続箱の一部の回路図である。
【図3】図1に示された電気接続箱に備えられた印刷配線板を示す斜視図である。
【図4】従来の電気接続箱を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 電気接続箱
4 印刷配線板
6 電装品
41 絶縁基板
42A 配線パターン(第1の配線パターン)
42B,42C 配線パターン(第2の配線パターン)
200 電源
300 電子機器(負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に配される電気接続箱であって、
電源からの電力を各負荷ごとに分配するとともに、分配した電力を電装品を介して負荷側に供給する電源分配回路が、印刷配線板で形成されたことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記印刷配線板が、各負荷ごとに分配される前の電力が流される第1の配線パターンと、各負荷ごとに分配された電力が流される前記第1の配線パターンよりも膜厚の薄い第2の配線パターンと、を備え、かつ、
前記第1の配線パターンと第2の配線パターンとが同一の絶縁基板上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記第1の配線パターンの一部が前記絶縁基板に埋設されているとともに、前記第2の配線パターンが前記絶縁基板に重ねられ、かつ、
前記第1の配線パターンの表面と前記第2の配線パターンの表面とが同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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