電気接続箱
【課題】本発明は、優れた放熱性を有する電気接続箱を提供する。
【解決手段】充填材16は、注入口18に連通して形成された注入筒部19の端部からケース13内に充填される。この注入筒部19は、充填材16の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材16は、充填時に底部となる部分に近い領域から、ケース13内に充填される。これにより、充填材13が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材16の中に空隙が生成することを抑制できる。このように空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【解決手段】充填材16は、注入口18に連通して形成された注入筒部19の端部からケース13内に充填される。この注入筒部19は、充填材16の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材16は、充填時に底部となる部分に近い領域から、ケース13内に充填される。これにより、充填材13が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材16の中に空隙が生成することを抑制できる。このように空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されて車載電装品の通断電を制御する電気接続箱として、特許文献1記載のものが知られている。このものは、回路構成体をハウジング内に収容し、ハウジングの壁面に形成された貫通孔を上側に向けた姿勢で、この貫通孔から、回路構成体を埋める充填材を充填してなる(特許文献1の図8参照)。この電気接続箱においては、回路構成体から発生した熱は充填材に伝達され、この充填材の中を伝わってハウジングの壁面にまで達し、このハウジングの壁面から外部に放散される。
【特許文献1】特開2003−31979公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記の構成によると、充填材を、ハウジングの上側に位置する注入口から注入するので、充填方法によっては、充填材がハウジングの上面から底部に達するまでの間に乱流状態になって空気を巻き込んでしまうことが懸念される。充填材の中に巻き込まれた空気により発生した気泡が充填材の中にとどまったまま充填材が固化すると、充填材の中に空隙が生じてしまう。空気は比熱が比較的大きいから、回路構成体から発生した熱は充填材に伝達された後、空隙中の空気に妨げられて、ハウジングの壁面にまで伝達されにくくなってしまう。この結果、電気接続箱の放熱性が低下することが懸念される。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、優れた放熱性を有する電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成体をハウジング内に収容してなり、そのハウジング内に前記回路構成体を埋める充填材を充填してなる電気接続箱において、前記ハウジングの壁部のうち前記充填材の充填時に上部に位置する部分には前記充填材の注入口が形成されており、前記ハウジング内には前記注入口に連通して前記充填材の充填時に底部となる方向に向かって延びる注入筒部を形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記ハウジングは前記回路構成体の板面に沿った面が広い扁平形状をなすと共に前記回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケースと、このケースの前記開口を塞ぐ蓋部材とからなり、前記ハウジングは前記蓋部材を上にした縦型配置で前記充填材が充填されるようになっており、前記注入口及び前記注入筒部は前記蓋部材に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載のものにおいて、前記回路構成体は、回路基板とこれに貼り付けたバスバーとを備え、前記回路基板には前記バスバーとは反対側の面に電子部品が実装されており、前記注入筒部は前記電子部品の実装面側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
ハウジングに形成された注入口から充填材を注入すると、充填材は、注入口に連通して形成された注入筒部の端部からハウジング内に充填される。この注入筒部は、充填材の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材は、ハウジングの上面に形成された注入口よりも、充填時に底部となる部分に近い領域から、ハウジング内に充填される。これにより、充填材が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材の中に空隙が生成することを抑制できる。このように、請求項1の発明によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱の放熱性を向上させることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
ハウジングを縦型配置して充填材を充填すると、充填時におけるハウジングの上部から底部までの深さ寸法が大きくなるため、空気を巻き込みやすくなることが懸念される。この点に鑑み請求項2の発明では、ハウジングのうち、回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケース内に回路構成体を収容し、この開口を塞ぐ蓋部材に注入口及び注入筒部が形成される構成とした。これにより、ハウジングを縦型配置して充填材を充填した場合でも、充填材は充填時に底部となる部分に近い領域からハウジング内に充填されるから、空気の巻き込みを防止できる。
【0010】
<請求項3の発明>
電子部品を回路基板に実装するためには、回路基板のうち電子部品の実装面側の領域に、少なくとも電子部品の高さ寸法の分だけ、電子部品を実装するための空間を確保する必要がある。この空間内に電子部品を実装するわけであるが、電子部品と接続される回路の構成や、電子部品の大きさ等により、この空間内において電子部品が実装されない領域、すなわち、デッドスペースが発生してしまうことがある。請求項3の発明によれば、注入筒部は電子部品の実装面側に設けられているから、このデッドスペースを有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を車両用の電気接続箱10に適用した一実施形態について図1ないし図19を参照して説明する。このものは、バッテリー等の電源(図示せず)とヘッドランプ、ワイパー等の車載電装品(図示せず)との間に接続されて、各種車載電装品の通断電制御を行うようになっている。この電気接続箱10は、扁平形状をなすハウジング11内に回路構成体12を収容してなる。このハウジング11は、開口を有すると共に扁平形状をなすケース13と、この開口を塞ぐと共にフード部14を備えたコネクタハウジング(本発明に係る蓋部材に該当)15とを備えてなる。ケース13内には回路構成体12を埋めるように充填材16が充填されている。また、ハウジング11にはコネクタハウジング15のフード部14を覆うカバー17が取付けられている。この電気接続箱10は車両(図示せず)に対して任意の姿勢で取り付け可能であり、例えば図1のようにカバー17を下側に向けた姿勢で車両に取り付けて使用できる。
【0012】
(ケース)
ケース13は合成樹脂製であって、扁平な形状をなすと共に下方に開口している。ケース13の下端部には、図3における左右方向外方に広がって段差部20が形成されている。段差部20の外面には、外方に突出するロック爪21が形成されており、後述するカバー17のロック爪受け部22と弾性的に係合することで、ケース13とカバー17とが組み付けられるようになっている。段差部20のうち、図2における右端部は下方に垂下して形成されており、カバー17が組み付けられたときに図示しない電線を案内するための電線案内部23とされる。
【0013】
図2に示すように、ケース13の段差部20の下端部には、ケース13の開口縁から上方にスリット24が形成されることで外方に撓み変形可能な複数の弾性ロック片25が形成されている。この弾性ロック片25には、弾性ロック片25の肉厚方向に貫通するロック凹部26が設けられており、後述するコネクタハウジング15のロック突部27と係合することで、ケース13と、コネクタハウジング15とが組み付けられるようになっている。
【0014】
ケース13のうち図3における段差部20の上方には、回路構成体12の板面に沿った一対の面が広く扁平な形状をなして形成されており、回路構成体12から発せられた熱を外部に放散するための放熱面60とされる。
【0015】
ケース13のうち図1における左斜め奥側の端部には、上下方向に延びると共に図1における左斜め手前側に突出して、後述する注入筒部19を収容するための注入筒部収容部62が形成されている。また、ケースのうち図1における右斜め手前側の端部は、図1に示すように、ケースの図1における右斜め奥側に引っ込んで形成されており、後述するコネクタハウジング15のガイドレール31を収容するガイドレール収容部63とされる。
【0016】
(カバー)
カバー17は合成樹脂製であって、上方に開口を有すると共に、ケース13の下端部を下方から覆う形状をなしている。カバー17の下縁部は図2における右方に向けて下方に傾斜して形成されており、カバー17の下端部のうち図2における右端部には、図示しない電線が導出される電線導出口28が形成されており(図1参照)、ケース13の電線案内部23との間の空間を通って、電線が導出されるようになっている。。カバー17の上端部には、上述したケース13のロック爪21と係合するロック爪受け部22が形成されており、このロック爪受け部22とロック爪21とが弾性的に係合することで、ケース13とカバー17とが組み付けられるようになっている。
【0017】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング15は合成樹脂製であって、図6に示すように、略直方体状をなす本体部30と、本体部30のうち図6の左右両端部から上方に延設されて、回路構成体12とコネクタハウジング15とを組み付ける際に回路構成体12をガイドする一対のガイドレール31とを備えてなる。
【0018】
本端部30の外面には、上述したケース13の弾性ロック片25に設けられたロック凹部26と係合するロック突部27が、外方に突設されている。
【0019】
図3に示すように、本体部30の下面には下方に開口する複数のフード部14が形成されており、図示しない相手方コネクタと嵌合可能になっている。相手方コネクタには電線(図示せず)が接続されており、この電線は、ケース13の電線案内部23に案内されて、カバー17の電線案内部23と電線導出口28との間から電気接続箱10の外部に導出されるようになっている。
【0020】
図14、図16、及び図17に示すように、フード部14の奥壁には、凹部61が形成されている。この凹部61の底壁には、後述する回路構成体12のバスバー32の延出部33が貫通するための挿通孔34が、上下方向に貫通して形成されている。この挿通孔34は、充填材16がケース13内に充填される際に、ケース13内の空気が逃げるための逃げ孔にもなっている。
【0021】
後に詳述するが、充填材16がケース13内に所定の液位にまで充填されると、挿通孔34から充填材16が凹部61内に溢れ出すようになっており、これにより充填材16が所定液位にまで充填されたことを確認できるようになっている。そして、挿通孔34から溢れた充填材16は凹部61内に収容されてフード部14内に溢れ出ないようになっているから、相手方コネクタとの嵌合面に充填材16が介在することで嵌合不良が発生することを防止できるようになっている。
【0022】
本体部30の上面側には、図4における挿通孔34の右側縁から上方に延びて、バスバー32の延出部33を図4における右方から受ける受板部35が形成されている。図6に示すように、受板部35は、図6における本体部30の左右方向の略全幅に亘って形成されている。
【0023】
受板部35のうち図3及び図4における左側面からは、左方に突出すると共に上方に延びるリブ43が形成されている。このリブ43は、隣り合う挿通孔34間に形成されており、隣接する延出部33同士の間に入り込むようになっている。リブ43は、延出部33が挿通孔34に挿入された状態で、加熱、加圧することで図4における左方から圧潰されて延出部33に密着すると共に受板部35との間で延出部33を挟み付けることで、延出部33の抜け止めを図るようになっている。
【0024】
本体部30の上面のうち、図8における左右両端部寄りの位置には、受板部35の上端縁から下方に向けて設けられた一対のスリット24に囲まれた領域に、上方に向けて延びる一対の弾性係合部36が形成されている。この弾性係合部36は、図7における左右方向に弾性撓み変形可能になっている。弾性係合部36の上端部には、図7における左方に突出して係合突部37が形成されており、回路構成体12の係合孔38と係合可能になっている。
【0025】
ガイドレール31は上方から見て略コ字状をなしており、このコ字状に囲まれた空間内に回路構成体12の左右両端部が挿入されて、回路構成体12を上下方向に案内可能になっている。また、ガイドレール31は、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる際に、ケース13のガイドレール収容部63の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15を案内するようになっている。
【0026】
(回路構成体)
図5に示すように、回路構成体12は、回路基板39の表面に例えばプリント配線技術により形成された導電路(図示せず)に電子部品40を実装し、裏面には複数のバスバー32を絶縁性の接着層(図示せず)を介して接着してなる。回路基板39には開口部41が形成されており、この開口部41内にはバスバー32が露出している。開口内には電子部品40が収容されており、この電子部品40のうちバスバー32側の面には接続端子(図示せず)が設けられており、この接続端子とバスバー32とが接続されるようになっている。また、電子部品40のうち、図7における下面側には、下方へ延出された後、回路基板39側に略直角曲げされた複数の接続端子42が形成されている。図7に示すように、各電子部品40に設けられた接続端子42の一部は開口から露出するバスバー32に接続されており、他の接続端子42は回路基板39の表面に形成された導電路に接続されている。
【0027】
図4に示すように、回路基板39の下端縁からは、下方に向けてバスバー32が延出されており、延出部33とされる。延出部33の下部は、図3及び図4に示すように、コネクタハウジング15のフード部14の奥壁に形成された挿通孔34内に挿通されて、フード部14内に突出するようになっており、相手方コネクタと嵌合可能になっている。延出部33の外表面は挿通孔34と接するようになっている。
【0028】
図6及び図8に示すように、回路基板39及びバスバー32の双方には、回路構成体12がコネクタハウジング15に対して正規位置に保持された状態で、後述する弾性係合部36の係合突部37に対応する位置に、係合孔38が形成されている。図7に示すように、この係合孔38に係合突部37が係合することで、回路構成体12が図7における上方への抜け止めがなされる。そして、回路基板39は、コネクタハウジング15に一体に形成された弾性係合部36と係合することで、コネクタハウジング15に固定された状態になっている。
【0029】
図5に示すように、延出部33のうち回路基板39寄りの位置には、隣接する延出部33のうち互いに対向する面に、係合凹部44が形成されている。図6に示すように、リブ43が圧潰されることで、リブ43は係合凹部44内に膨出し、リブ43と係合凹部44とが係合して延出部33の抜け止めが図られるようになっている。
【0030】
図3、図4、及び図18に示すように、ケース13内には、延出部33を残して回路基板39の全体を埋める充填材16が充填されている。充填材16は、図10及び図18に示すように、ケース13を下側にし、コネクタハウジング15を上側にした姿勢でケース13内に充填されるようになっている。この充填材16により回路基板39全体が埋められることで、回路構成体12の防水が図られるようになっている。また、回路構成体12の電子部品40及びバスバー32から発せられた熱は、充填材16に伝達され、この充填材16中を伝わって、ケース13の放熱面60から外部に放散されるようになっている。
【0031】
さて、コネクタハウジング15の本体部30のうち図10における右端部には、図10における上方に開口して、充填材16をケース13内に注入するための注入口18が形成されている。注入口18の断面は略矩形状をなしており、略直方体状をなす本体部30において、スペースを有効利用できるようになっている。
【0032】
図10及び図15に示すように、コネクタハウジング15の本体部30には、上記の注入口18に連通して、注入筒部19が形成されている。この注入筒部19は、図6における左側のガイドレール31に対して、紙面を貫通する方向手前側に重なるようにして形成されている。充填材16は、図9ないし図10に示すように、注入口18を上方に向けた姿勢でケース13内に注入されるようになっており、注入筒部19は、図10における下方に向けて延設されており、注入筒部19の図10における下端縁は、ケース13のうち図10における下壁の近傍にまで延びて形成されている。注入筒部19の断面は略矩形状をなしており、略直方体状をなす本体部30において、スペースを有効利用できるようになっている。
【0033】
また、図6に示すように、回路構成体12がコネクタハウジング15に組み付けられた状態では、注入筒部19は、回路基板39のうち、電子部品40が実装された実装面側(表面側)に配置されるようになっている。
【0034】
また、注入筒部19は、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる際に、ケース13の注入筒部収容部62の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15を案内するようになっている。
【0035】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。まず、回路構成体12をコネクタハウジング15に組み付ける。図11に示すように、コネクタハウジング15のガイドレール31内に、回路構成体12の回路基板39の両端縁部を挿入する。組み付け工程が進行して、図12に示すように、延出部33の先端が受板部35に達すると、延出部33と受板部35とを摺接させながら回路構成体12をさらに挿入する。すると、受板部35に案内されて、延出部33が挿通孔34内に挿入される。組み付けが進行すると、コネクタハウジング15の弾性係合部36がバスバー32と当接し、回路基板39の裏面側に弾性撓み変形する。
【0036】
図13に示すように、回路構成体12がコネクタハウジング15に対して正規位置に組み付けられた状態では、弾性係合部36が復帰変形し、弾性係合部36の係合突部37が回路構成体12の係合孔38に係止する。このとき、延出部33が挿通孔34と接しているから延出部33は挿通孔34の内壁面に支持されることで、回路構成体12が弾性係合部36から逃げる方向に撓み変形することを防止できる。この結果、回路構成体12は、コネクタハウジング15と一体に形成された弾性係合部36により、コネクタハウジング15に固定される。
【0037】
続いて、リブ43を加熱溶融して圧潰する。すると、リブ43は、延出部33と密着する。そして、延出部33は、リブ43と受板部35との間に挟み付けられる。さらに、リブ43は、延出部33に形成された係合凹部44内に膨出することで接触して係合する。これにより、バスバー32は、コネクタハウジング15に固定される。
【0038】
その後、図19に示すように、回路構成体12を組み付けたコネクタハウジング15をケース13内に収容する。すると、ガイドレール31がガイドレール収容部63の内壁と摺接すると共に、注入筒部19が注入筒部の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15がケース13内に案内される。さらにコネクタハウジング15とケース13との組み付けが進行すると、コネクタハウジング15のロック突部27とケース13の弾性ロック片25とが当接し、弾性ロック片25が弾性撓みした後に復帰変形し、ロック突部27が弾性ロック片25のロック凹部26内に係合することで、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる。
【0039】
コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられた状態で、ケース13を下側にすると共にコネクタハウジング15を上側にした縦型姿勢(図10参照)で、コネクタハウジング15の注入口18から液状の充填材16を注入する。この注入口18は、上側に配されたコネクタハウジング15に形成されているから、注入口18から、図10におけるケース13の下壁までの間隔が比較的大きくなってしまい、充填材16が乱流状態となって空気を巻き込んでしまうことが懸念される。
【0040】
この点に鑑み、本実施形態では、注入口18と連通する注入筒部19は図10における下壁の近傍に開口が形成されている。これにより、充填材16は注入口18から注入筒部19内を流下し、図10におけるケース13の下壁の近傍に形成された開口からケース13内に注入される。この結果、充填材16は乱流状態となることが規制されるから、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっている。
【0041】
注入口18から注入された充填材16は注入筒部19の開口から流出し、図10におけるケース13の下壁の内面に広がり、ケース13の下壁の内面が充填材16で覆われる。さらに充填材16を注入すると、充填材16の液位は、ケース13の側壁の内面に接しながら上昇してゆく。これにより、充填材16とケース13の放熱面60の内面との間には、隙間が形成されないようになっている。ケース13内の空気は、充填材16により押され、コネクタハウジング15の挿通孔34から上方に逃げる。これにより、充填材16をケース13内にスムーズに注入できる。
【0042】
さらに充填材16を注入すると、延出部33を除いて回路基板39の全体が充填材16に埋没する。これにより回路構成体12の防水及び絶縁を図ることができる。充填材16の液位がコネクタハウジング15の挿通孔34にまで達すると、挿通孔34から充填材16が凹部61内に溢れ出る。これにより、充填材16が、ケース13内に正規量だけ充填されたことを目視により確認できる。このように挿通孔34から充填材16が溢れ出たら、充填材16の注入を終了する(図18参照)。なお、図2及び図3においては、充填材16により凹部61内が全て充填された状態になっているが、充填材16は、挿通孔34から凹部61内に溢れ出た状態であれば、凹部61内が全て充填材16により充填されていなくてもよい。
【0043】
充填材16がケース13内に正規の量だけ充填されたら、充填材16を固化する。上述したように、充填材16は、ケース13内への充填時にを空気を巻き込まないようになっているから、固化された充填材16内に空隙が生成することを抑制できる。このように本実施形態によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【0044】
その後、フード部14内に相手方コネクタを嵌合する。コネクタハウジング15のうちフード部14が形成された側からカバー17を組み付ける。すると、ケース13のロック爪21と、カバー17のロック爪受け部22とが当接し、ロック爪21が弾性変形した後に復帰変形し、ロック爪21とロック爪受け部22とが弾性的に係合することで、カバー17とコネクタハウジング15とが組み付けられる。
【0045】
以上説明したように、充填材16は、注入口18に連通して形成された注入筒部19の端部からケース13内に充填される。この注入筒部19は、充填材16の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材16は、充填時に底部となる部分に近い領域から、ケース13内に充填される。これにより、充填材13が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材16の中に空隙が生成することを抑制できる。このように本実施形態によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、ハウジング11を縦型配置して充填材16を充填すると、充填時における注入口18から、充填時におけるケース13の底部までの深さ寸法が大きくなるため、空気を巻き込みやすくなることが懸念される。この点に鑑み本実施形態では、ハウジング11のうち、回路構成体12の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケース13内に回路構成体12を収容し、この開口を塞ぐコネクタハウジング15に注入口18及び注入筒部19が形成される構成とした。これにより、ハウジング11を縦型配置して充填材16を充填した場合でも、充填材16は充填時に底部となる部分に近い領域からケース13内に充填されるから、空気の巻き込みを一層防止できる。
【0047】
また、電子部品40を回路基板39に実装するためには、回路基板39のうち電子部品40の実装面側の領域に、少なくとも電子部品40の高さ寸法の分だけ、電子部品40を実装するための空間を確保する必要がある。この空間内に電子部品40を実装するわけであるが、電子部品40と接続される回路の構成や、電子部品40の大きさ等により、この空間内において電子部品40が実装されない領域、すなわち、デッドスペースが発生してしまうことがある。この点に鑑み本実施形態では、注入筒部19は電子部品40の実装面側に設けられているから、このデッドスペースを有効に利用できる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(1)ハウジング11のうち、回路構成体12の板面に沿った面に、注入口18が形成される構成としてもよい。
【0050】
(2)回路構成体12は、回路基板39の表裏両面に電子部品40が実装されるものであってもよく、この場合には、注入筒部19は回路基板39の表裏いずれの面側に設けられていてもよい。
【0051】
(3)本実施形態では、注入筒部19の先端部は、充填材16の充填時におけるケース13の底壁の近傍にまで延びる構成としたが、これに限られず、充填材16を充填する際に空気の巻き込みが防止可能であれば、注入筒部19の先端部はハウジング11内の任意の位置に設けることができる。
【0052】
(4)充填材16としては、例えばエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、又はシリコーン系樹脂など、回路構成体12から発生する熱を伝達可能な材料であれば任意の材料を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の斜視図
【図2】電気接続箱の正面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】図2におけるB−B線断面図
【図5】回路構成体12を示す斜視図
【図6】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付けた状態を示す正面図
【図7】図6におけるC−C線断面図
【図8】コネクタハウジングを回路構成体とを組み付けた状態を示す背面図
【図9】コネクタハウジングとケースとを組み付けた状態を示す側面図
【図10】図9におけるE−E線断面図
【図11】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付ける前の状態を示す斜視図
【図12】コネクタハウジングと回路構成体との組み付け作業の途中状態を示す斜視図
【図13】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付けた状態を示す斜視図
【図14】コネクタハウジングとケースとを組み付けた状態を示す底面図
【図15】図14におけるF−F線断面図
【図16】図14におけるG−G線断面図
【図17】図14におけるH−H線断面図
【図18】充填材をケース内に充填した後の状態を示す、図9におけるE−E線断面図
【図19】コネクタハウジングとケースとを組み付ける前の状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0054】
10…電気接続箱
11…ハウジング
12…回路構成体
13…ケース
15…コネクタハウジング(蓋部材)
16…充填材
18…注入口
19…注入筒部
32…バスバー
39…回路基板
40…電子部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載されて車載電装品の通断電を制御する電気接続箱として、特許文献1記載のものが知られている。このものは、回路構成体をハウジング内に収容し、ハウジングの壁面に形成された貫通孔を上側に向けた姿勢で、この貫通孔から、回路構成体を埋める充填材を充填してなる(特許文献1の図8参照)。この電気接続箱においては、回路構成体から発生した熱は充填材に伝達され、この充填材の中を伝わってハウジングの壁面にまで達し、このハウジングの壁面から外部に放散される。
【特許文献1】特開2003−31979公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記の構成によると、充填材を、ハウジングの上側に位置する注入口から注入するので、充填方法によっては、充填材がハウジングの上面から底部に達するまでの間に乱流状態になって空気を巻き込んでしまうことが懸念される。充填材の中に巻き込まれた空気により発生した気泡が充填材の中にとどまったまま充填材が固化すると、充填材の中に空隙が生じてしまう。空気は比熱が比較的大きいから、回路構成体から発生した熱は充填材に伝達された後、空隙中の空気に妨げられて、ハウジングの壁面にまで伝達されにくくなってしまう。この結果、電気接続箱の放熱性が低下することが懸念される。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、優れた放熱性を有する電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、回路構成体をハウジング内に収容してなり、そのハウジング内に前記回路構成体を埋める充填材を充填してなる電気接続箱において、前記ハウジングの壁部のうち前記充填材の充填時に上部に位置する部分には前記充填材の注入口が形成されており、前記ハウジング内には前記注入口に連通して前記充填材の充填時に底部となる方向に向かって延びる注入筒部を形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記ハウジングは前記回路構成体の板面に沿った面が広い扁平形状をなすと共に前記回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケースと、このケースの前記開口を塞ぐ蓋部材とからなり、前記ハウジングは前記蓋部材を上にした縦型配置で前記充填材が充填されるようになっており、前記注入口及び前記注入筒部は前記蓋部材に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載のものにおいて、前記回路構成体は、回路基板とこれに貼り付けたバスバーとを備え、前記回路基板には前記バスバーとは反対側の面に電子部品が実装されており、前記注入筒部は前記電子部品の実装面側に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
ハウジングに形成された注入口から充填材を注入すると、充填材は、注入口に連通して形成された注入筒部の端部からハウジング内に充填される。この注入筒部は、充填材の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材は、ハウジングの上面に形成された注入口よりも、充填時に底部となる部分に近い領域から、ハウジング内に充填される。これにより、充填材が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材の中に空隙が生成することを抑制できる。このように、請求項1の発明によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱の放熱性を向上させることができる。
【0009】
<請求項2の発明>
ハウジングを縦型配置して充填材を充填すると、充填時におけるハウジングの上部から底部までの深さ寸法が大きくなるため、空気を巻き込みやすくなることが懸念される。この点に鑑み請求項2の発明では、ハウジングのうち、回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケース内に回路構成体を収容し、この開口を塞ぐ蓋部材に注入口及び注入筒部が形成される構成とした。これにより、ハウジングを縦型配置して充填材を充填した場合でも、充填材は充填時に底部となる部分に近い領域からハウジング内に充填されるから、空気の巻き込みを防止できる。
【0010】
<請求項3の発明>
電子部品を回路基板に実装するためには、回路基板のうち電子部品の実装面側の領域に、少なくとも電子部品の高さ寸法の分だけ、電子部品を実装するための空間を確保する必要がある。この空間内に電子部品を実装するわけであるが、電子部品と接続される回路の構成や、電子部品の大きさ等により、この空間内において電子部品が実装されない領域、すなわち、デッドスペースが発生してしまうことがある。請求項3の発明によれば、注入筒部は電子部品の実装面側に設けられているから、このデッドスペースを有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を車両用の電気接続箱10に適用した一実施形態について図1ないし図19を参照して説明する。このものは、バッテリー等の電源(図示せず)とヘッドランプ、ワイパー等の車載電装品(図示せず)との間に接続されて、各種車載電装品の通断電制御を行うようになっている。この電気接続箱10は、扁平形状をなすハウジング11内に回路構成体12を収容してなる。このハウジング11は、開口を有すると共に扁平形状をなすケース13と、この開口を塞ぐと共にフード部14を備えたコネクタハウジング(本発明に係る蓋部材に該当)15とを備えてなる。ケース13内には回路構成体12を埋めるように充填材16が充填されている。また、ハウジング11にはコネクタハウジング15のフード部14を覆うカバー17が取付けられている。この電気接続箱10は車両(図示せず)に対して任意の姿勢で取り付け可能であり、例えば図1のようにカバー17を下側に向けた姿勢で車両に取り付けて使用できる。
【0012】
(ケース)
ケース13は合成樹脂製であって、扁平な形状をなすと共に下方に開口している。ケース13の下端部には、図3における左右方向外方に広がって段差部20が形成されている。段差部20の外面には、外方に突出するロック爪21が形成されており、後述するカバー17のロック爪受け部22と弾性的に係合することで、ケース13とカバー17とが組み付けられるようになっている。段差部20のうち、図2における右端部は下方に垂下して形成されており、カバー17が組み付けられたときに図示しない電線を案内するための電線案内部23とされる。
【0013】
図2に示すように、ケース13の段差部20の下端部には、ケース13の開口縁から上方にスリット24が形成されることで外方に撓み変形可能な複数の弾性ロック片25が形成されている。この弾性ロック片25には、弾性ロック片25の肉厚方向に貫通するロック凹部26が設けられており、後述するコネクタハウジング15のロック突部27と係合することで、ケース13と、コネクタハウジング15とが組み付けられるようになっている。
【0014】
ケース13のうち図3における段差部20の上方には、回路構成体12の板面に沿った一対の面が広く扁平な形状をなして形成されており、回路構成体12から発せられた熱を外部に放散するための放熱面60とされる。
【0015】
ケース13のうち図1における左斜め奥側の端部には、上下方向に延びると共に図1における左斜め手前側に突出して、後述する注入筒部19を収容するための注入筒部収容部62が形成されている。また、ケースのうち図1における右斜め手前側の端部は、図1に示すように、ケースの図1における右斜め奥側に引っ込んで形成されており、後述するコネクタハウジング15のガイドレール31を収容するガイドレール収容部63とされる。
【0016】
(カバー)
カバー17は合成樹脂製であって、上方に開口を有すると共に、ケース13の下端部を下方から覆う形状をなしている。カバー17の下縁部は図2における右方に向けて下方に傾斜して形成されており、カバー17の下端部のうち図2における右端部には、図示しない電線が導出される電線導出口28が形成されており(図1参照)、ケース13の電線案内部23との間の空間を通って、電線が導出されるようになっている。。カバー17の上端部には、上述したケース13のロック爪21と係合するロック爪受け部22が形成されており、このロック爪受け部22とロック爪21とが弾性的に係合することで、ケース13とカバー17とが組み付けられるようになっている。
【0017】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング15は合成樹脂製であって、図6に示すように、略直方体状をなす本体部30と、本体部30のうち図6の左右両端部から上方に延設されて、回路構成体12とコネクタハウジング15とを組み付ける際に回路構成体12をガイドする一対のガイドレール31とを備えてなる。
【0018】
本端部30の外面には、上述したケース13の弾性ロック片25に設けられたロック凹部26と係合するロック突部27が、外方に突設されている。
【0019】
図3に示すように、本体部30の下面には下方に開口する複数のフード部14が形成されており、図示しない相手方コネクタと嵌合可能になっている。相手方コネクタには電線(図示せず)が接続されており、この電線は、ケース13の電線案内部23に案内されて、カバー17の電線案内部23と電線導出口28との間から電気接続箱10の外部に導出されるようになっている。
【0020】
図14、図16、及び図17に示すように、フード部14の奥壁には、凹部61が形成されている。この凹部61の底壁には、後述する回路構成体12のバスバー32の延出部33が貫通するための挿通孔34が、上下方向に貫通して形成されている。この挿通孔34は、充填材16がケース13内に充填される際に、ケース13内の空気が逃げるための逃げ孔にもなっている。
【0021】
後に詳述するが、充填材16がケース13内に所定の液位にまで充填されると、挿通孔34から充填材16が凹部61内に溢れ出すようになっており、これにより充填材16が所定液位にまで充填されたことを確認できるようになっている。そして、挿通孔34から溢れた充填材16は凹部61内に収容されてフード部14内に溢れ出ないようになっているから、相手方コネクタとの嵌合面に充填材16が介在することで嵌合不良が発生することを防止できるようになっている。
【0022】
本体部30の上面側には、図4における挿通孔34の右側縁から上方に延びて、バスバー32の延出部33を図4における右方から受ける受板部35が形成されている。図6に示すように、受板部35は、図6における本体部30の左右方向の略全幅に亘って形成されている。
【0023】
受板部35のうち図3及び図4における左側面からは、左方に突出すると共に上方に延びるリブ43が形成されている。このリブ43は、隣り合う挿通孔34間に形成されており、隣接する延出部33同士の間に入り込むようになっている。リブ43は、延出部33が挿通孔34に挿入された状態で、加熱、加圧することで図4における左方から圧潰されて延出部33に密着すると共に受板部35との間で延出部33を挟み付けることで、延出部33の抜け止めを図るようになっている。
【0024】
本体部30の上面のうち、図8における左右両端部寄りの位置には、受板部35の上端縁から下方に向けて設けられた一対のスリット24に囲まれた領域に、上方に向けて延びる一対の弾性係合部36が形成されている。この弾性係合部36は、図7における左右方向に弾性撓み変形可能になっている。弾性係合部36の上端部には、図7における左方に突出して係合突部37が形成されており、回路構成体12の係合孔38と係合可能になっている。
【0025】
ガイドレール31は上方から見て略コ字状をなしており、このコ字状に囲まれた空間内に回路構成体12の左右両端部が挿入されて、回路構成体12を上下方向に案内可能になっている。また、ガイドレール31は、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる際に、ケース13のガイドレール収容部63の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15を案内するようになっている。
【0026】
(回路構成体)
図5に示すように、回路構成体12は、回路基板39の表面に例えばプリント配線技術により形成された導電路(図示せず)に電子部品40を実装し、裏面には複数のバスバー32を絶縁性の接着層(図示せず)を介して接着してなる。回路基板39には開口部41が形成されており、この開口部41内にはバスバー32が露出している。開口内には電子部品40が収容されており、この電子部品40のうちバスバー32側の面には接続端子(図示せず)が設けられており、この接続端子とバスバー32とが接続されるようになっている。また、電子部品40のうち、図7における下面側には、下方へ延出された後、回路基板39側に略直角曲げされた複数の接続端子42が形成されている。図7に示すように、各電子部品40に設けられた接続端子42の一部は開口から露出するバスバー32に接続されており、他の接続端子42は回路基板39の表面に形成された導電路に接続されている。
【0027】
図4に示すように、回路基板39の下端縁からは、下方に向けてバスバー32が延出されており、延出部33とされる。延出部33の下部は、図3及び図4に示すように、コネクタハウジング15のフード部14の奥壁に形成された挿通孔34内に挿通されて、フード部14内に突出するようになっており、相手方コネクタと嵌合可能になっている。延出部33の外表面は挿通孔34と接するようになっている。
【0028】
図6及び図8に示すように、回路基板39及びバスバー32の双方には、回路構成体12がコネクタハウジング15に対して正規位置に保持された状態で、後述する弾性係合部36の係合突部37に対応する位置に、係合孔38が形成されている。図7に示すように、この係合孔38に係合突部37が係合することで、回路構成体12が図7における上方への抜け止めがなされる。そして、回路基板39は、コネクタハウジング15に一体に形成された弾性係合部36と係合することで、コネクタハウジング15に固定された状態になっている。
【0029】
図5に示すように、延出部33のうち回路基板39寄りの位置には、隣接する延出部33のうち互いに対向する面に、係合凹部44が形成されている。図6に示すように、リブ43が圧潰されることで、リブ43は係合凹部44内に膨出し、リブ43と係合凹部44とが係合して延出部33の抜け止めが図られるようになっている。
【0030】
図3、図4、及び図18に示すように、ケース13内には、延出部33を残して回路基板39の全体を埋める充填材16が充填されている。充填材16は、図10及び図18に示すように、ケース13を下側にし、コネクタハウジング15を上側にした姿勢でケース13内に充填されるようになっている。この充填材16により回路基板39全体が埋められることで、回路構成体12の防水が図られるようになっている。また、回路構成体12の電子部品40及びバスバー32から発せられた熱は、充填材16に伝達され、この充填材16中を伝わって、ケース13の放熱面60から外部に放散されるようになっている。
【0031】
さて、コネクタハウジング15の本体部30のうち図10における右端部には、図10における上方に開口して、充填材16をケース13内に注入するための注入口18が形成されている。注入口18の断面は略矩形状をなしており、略直方体状をなす本体部30において、スペースを有効利用できるようになっている。
【0032】
図10及び図15に示すように、コネクタハウジング15の本体部30には、上記の注入口18に連通して、注入筒部19が形成されている。この注入筒部19は、図6における左側のガイドレール31に対して、紙面を貫通する方向手前側に重なるようにして形成されている。充填材16は、図9ないし図10に示すように、注入口18を上方に向けた姿勢でケース13内に注入されるようになっており、注入筒部19は、図10における下方に向けて延設されており、注入筒部19の図10における下端縁は、ケース13のうち図10における下壁の近傍にまで延びて形成されている。注入筒部19の断面は略矩形状をなしており、略直方体状をなす本体部30において、スペースを有効利用できるようになっている。
【0033】
また、図6に示すように、回路構成体12がコネクタハウジング15に組み付けられた状態では、注入筒部19は、回路基板39のうち、電子部品40が実装された実装面側(表面側)に配置されるようになっている。
【0034】
また、注入筒部19は、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる際に、ケース13の注入筒部収容部62の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15を案内するようになっている。
【0035】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。まず、回路構成体12をコネクタハウジング15に組み付ける。図11に示すように、コネクタハウジング15のガイドレール31内に、回路構成体12の回路基板39の両端縁部を挿入する。組み付け工程が進行して、図12に示すように、延出部33の先端が受板部35に達すると、延出部33と受板部35とを摺接させながら回路構成体12をさらに挿入する。すると、受板部35に案内されて、延出部33が挿通孔34内に挿入される。組み付けが進行すると、コネクタハウジング15の弾性係合部36がバスバー32と当接し、回路基板39の裏面側に弾性撓み変形する。
【0036】
図13に示すように、回路構成体12がコネクタハウジング15に対して正規位置に組み付けられた状態では、弾性係合部36が復帰変形し、弾性係合部36の係合突部37が回路構成体12の係合孔38に係止する。このとき、延出部33が挿通孔34と接しているから延出部33は挿通孔34の内壁面に支持されることで、回路構成体12が弾性係合部36から逃げる方向に撓み変形することを防止できる。この結果、回路構成体12は、コネクタハウジング15と一体に形成された弾性係合部36により、コネクタハウジング15に固定される。
【0037】
続いて、リブ43を加熱溶融して圧潰する。すると、リブ43は、延出部33と密着する。そして、延出部33は、リブ43と受板部35との間に挟み付けられる。さらに、リブ43は、延出部33に形成された係合凹部44内に膨出することで接触して係合する。これにより、バスバー32は、コネクタハウジング15に固定される。
【0038】
その後、図19に示すように、回路構成体12を組み付けたコネクタハウジング15をケース13内に収容する。すると、ガイドレール31がガイドレール収容部63の内壁と摺接すると共に、注入筒部19が注入筒部の内壁と摺接することで、コネクタハウジング15がケース13内に案内される。さらにコネクタハウジング15とケース13との組み付けが進行すると、コネクタハウジング15のロック突部27とケース13の弾性ロック片25とが当接し、弾性ロック片25が弾性撓みした後に復帰変形し、ロック突部27が弾性ロック片25のロック凹部26内に係合することで、コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられる。
【0039】
コネクタハウジング15とケース13とが組み付けられた状態で、ケース13を下側にすると共にコネクタハウジング15を上側にした縦型姿勢(図10参照)で、コネクタハウジング15の注入口18から液状の充填材16を注入する。この注入口18は、上側に配されたコネクタハウジング15に形成されているから、注入口18から、図10におけるケース13の下壁までの間隔が比較的大きくなってしまい、充填材16が乱流状態となって空気を巻き込んでしまうことが懸念される。
【0040】
この点に鑑み、本実施形態では、注入口18と連通する注入筒部19は図10における下壁の近傍に開口が形成されている。これにより、充填材16は注入口18から注入筒部19内を流下し、図10におけるケース13の下壁の近傍に形成された開口からケース13内に注入される。この結果、充填材16は乱流状態となることが規制されるから、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっている。
【0041】
注入口18から注入された充填材16は注入筒部19の開口から流出し、図10におけるケース13の下壁の内面に広がり、ケース13の下壁の内面が充填材16で覆われる。さらに充填材16を注入すると、充填材16の液位は、ケース13の側壁の内面に接しながら上昇してゆく。これにより、充填材16とケース13の放熱面60の内面との間には、隙間が形成されないようになっている。ケース13内の空気は、充填材16により押され、コネクタハウジング15の挿通孔34から上方に逃げる。これにより、充填材16をケース13内にスムーズに注入できる。
【0042】
さらに充填材16を注入すると、延出部33を除いて回路基板39の全体が充填材16に埋没する。これにより回路構成体12の防水及び絶縁を図ることができる。充填材16の液位がコネクタハウジング15の挿通孔34にまで達すると、挿通孔34から充填材16が凹部61内に溢れ出る。これにより、充填材16が、ケース13内に正規量だけ充填されたことを目視により確認できる。このように挿通孔34から充填材16が溢れ出たら、充填材16の注入を終了する(図18参照)。なお、図2及び図3においては、充填材16により凹部61内が全て充填された状態になっているが、充填材16は、挿通孔34から凹部61内に溢れ出た状態であれば、凹部61内が全て充填材16により充填されていなくてもよい。
【0043】
充填材16がケース13内に正規の量だけ充填されたら、充填材16を固化する。上述したように、充填材16は、ケース13内への充填時にを空気を巻き込まないようになっているから、固化された充填材16内に空隙が生成することを抑制できる。このように本実施形態によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【0044】
その後、フード部14内に相手方コネクタを嵌合する。コネクタハウジング15のうちフード部14が形成された側からカバー17を組み付ける。すると、ケース13のロック爪21と、カバー17のロック爪受け部22とが当接し、ロック爪21が弾性変形した後に復帰変形し、ロック爪21とロック爪受け部22とが弾性的に係合することで、カバー17とコネクタハウジング15とが組み付けられる。
【0045】
以上説明したように、充填材16は、注入口18に連通して形成された注入筒部19の端部からケース13内に充填される。この注入筒部19は、充填材16の充填時に底部となる方向に延びて形成されているから、充填材16は、充填時に底部となる部分に近い領域から、ケース13内に充填される。これにより、充填材13が乱流状態となることが抑制される。この結果、充填材16を充填する際に、空気が巻き込まれないようになっているから、固化した充填材16の中に空隙が生成することを抑制できる。このように本実施形態によれば、空隙による伝熱性の低下を抑制できるから、電気接続箱10の放熱性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のように、ハウジング11を縦型配置して充填材16を充填すると、充填時における注入口18から、充填時におけるケース13の底部までの深さ寸法が大きくなるため、空気を巻き込みやすくなることが懸念される。この点に鑑み本実施形態では、ハウジング11のうち、回路構成体12の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケース13内に回路構成体12を収容し、この開口を塞ぐコネクタハウジング15に注入口18及び注入筒部19が形成される構成とした。これにより、ハウジング11を縦型配置して充填材16を充填した場合でも、充填材16は充填時に底部となる部分に近い領域からケース13内に充填されるから、空気の巻き込みを一層防止できる。
【0047】
また、電子部品40を回路基板39に実装するためには、回路基板39のうち電子部品40の実装面側の領域に、少なくとも電子部品40の高さ寸法の分だけ、電子部品40を実装するための空間を確保する必要がある。この空間内に電子部品40を実装するわけであるが、電子部品40と接続される回路の構成や、電子部品40の大きさ等により、この空間内において電子部品40が実装されない領域、すなわち、デッドスペースが発生してしまうことがある。この点に鑑み本実施形態では、注入筒部19は電子部品40の実装面側に設けられているから、このデッドスペースを有効に利用できる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(1)ハウジング11のうち、回路構成体12の板面に沿った面に、注入口18が形成される構成としてもよい。
【0050】
(2)回路構成体12は、回路基板39の表裏両面に電子部品40が実装されるものであってもよく、この場合には、注入筒部19は回路基板39の表裏いずれの面側に設けられていてもよい。
【0051】
(3)本実施形態では、注入筒部19の先端部は、充填材16の充填時におけるケース13の底壁の近傍にまで延びる構成としたが、これに限られず、充填材16を充填する際に空気の巻き込みが防止可能であれば、注入筒部19の先端部はハウジング11内の任意の位置に設けることができる。
【0052】
(4)充填材16としては、例えばエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、又はシリコーン系樹脂など、回路構成体12から発生する熱を伝達可能な材料であれば任意の材料を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気接続箱の斜視図
【図2】電気接続箱の正面図
【図3】図2におけるA−A線断面図
【図4】図2におけるB−B線断面図
【図5】回路構成体12を示す斜視図
【図6】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付けた状態を示す正面図
【図7】図6におけるC−C線断面図
【図8】コネクタハウジングを回路構成体とを組み付けた状態を示す背面図
【図9】コネクタハウジングとケースとを組み付けた状態を示す側面図
【図10】図9におけるE−E線断面図
【図11】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付ける前の状態を示す斜視図
【図12】コネクタハウジングと回路構成体との組み付け作業の途中状態を示す斜視図
【図13】コネクタハウジングと回路構成体とを組み付けた状態を示す斜視図
【図14】コネクタハウジングとケースとを組み付けた状態を示す底面図
【図15】図14におけるF−F線断面図
【図16】図14におけるG−G線断面図
【図17】図14におけるH−H線断面図
【図18】充填材をケース内に充填した後の状態を示す、図9におけるE−E線断面図
【図19】コネクタハウジングとケースとを組み付ける前の状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0054】
10…電気接続箱
11…ハウジング
12…回路構成体
13…ケース
15…コネクタハウジング(蓋部材)
16…充填材
18…注入口
19…注入筒部
32…バスバー
39…回路基板
40…電子部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構成体をハウジング内に収容してなり、そのハウジング内に前記回路構成体を埋める充填材を充填してなるものにおいて、前記ハウジングの壁部のうち前記充填材の充填時に上部に位置する部分には前記充填材の注入口が形成されており、前記ハウジング内には前記注入口に連通して前記充填材の充填時に底部となる方向に向かって延びる注入筒部を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ハウジングは前記回路構成体の板面に沿った面が広い扁平形状をなすと共に前記回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケースと、このケースの前記開口を塞ぐ蓋部材とからなり、
前記ハウジングは前記蓋部材を上にした縦型配置で前記充填材が充填されるようになっており、
前記注入口及び前記注入筒部は前記蓋部材に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記回路構成体は、回路基板とこれに貼り付けたバスバーとを備え、前記回路基板には前記バスバーとは反対側の面に電子部品が実装されており、前記注入筒部は前記電子部品の実装面側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気接続箱。
【請求項1】
回路構成体をハウジング内に収容してなり、そのハウジング内に前記回路構成体を埋める充填材を充填してなるものにおいて、前記ハウジングの壁部のうち前記充填材の充填時に上部に位置する部分には前記充填材の注入口が形成されており、前記ハウジング内には前記注入口に連通して前記充填材の充填時に底部となる方向に向かって延びる注入筒部を形成したことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ハウジングは前記回路構成体の板面に沿った面が広い扁平形状をなすと共に前記回路構成体の板面に沿った面とは異なる面を開口させたケースと、このケースの前記開口を塞ぐ蓋部材とからなり、
前記ハウジングは前記蓋部材を上にした縦型配置で前記充填材が充填されるようになっており、
前記注入口及び前記注入筒部は前記蓋部材に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記回路構成体は、回路基板とこれに貼り付けたバスバーとを備え、前記回路基板には前記バスバーとは反対側の面に電子部品が実装されており、前記注入筒部は前記電子部品の実装面側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電気接続箱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−209048(P2007−209048A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21347(P2006−21347)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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