説明

電気推進車両に装備される暖房、換気、および/または空調設備に内蔵される熱力学的な空調ループ

本発明は、冷媒の循環を生ずる熱力学的な空調ループ(4)に関し、四方弁(6)の第1の孔(9)と第2の孔(10)との間に配置された熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)の内部で、冷媒の循環方向を逆転可能な四方弁(6)と、少なくとも1つの第1の空冷式熱交換器(11)と、第1の減圧装置(12)とを含んでいる。熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)は、第1の減圧装置(12)と四方弁(6)の第2の孔(10)との間に配置された内部熱交換器(15)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の暖房、換気、および/または空調設備の分野に関する。本発明は、自動車、中でも電気推進式の自動車に装備される上記設備に内蔵される熱力学的な空調ループを特に目的としている。本発明は、また、このような空調ループを含む暖房、換気、および/または空調設備を目的としている。
【背景技術】
【0002】
電気推進式の自動車には、一般に、自動車の乗員室内部に分配される空気における空気熱パラメータを修正するために、暖房、換気、および/または空調設備が装備されている。このような設備は、たとえばR134a、または同等物等の亜臨界冷媒、あるいはたとえば二酸化炭素または同等物等の超臨界冷媒が内部で流れる熱力学的な空調ループを含んでいる。
【0003】
熱力学的な空調ループの一部の内部で、冷媒が流れる方向を逆転することによって、「暖房」モードまたは「冷房」モードで動作可能である上記の熱力学的な空調ループは、特許文献1により公知である。そのため、熱力学的な空調ループは、四方弁、圧縮機、第1、第2、第3および第4の熱交換器、第1および第2の減圧装置を含んでいる。
【0004】
圧縮機は、冷媒を圧縮するように構成されている。第1の熱交換器は、外気流と、圧縮機から送られる冷媒との間で熱交換できるように構成されている。第2の熱交換器は、外気流と冷媒との間で熱交換することができるようになっている。第1の減圧装置は、第2の熱交換器から送られる冷媒の圧力を低下させるように構成されている。第3の熱交換器は、第1の減圧装置によって圧力が下げられる冷媒の蒸発により空気流を冷却するように構成されている。第2の減圧装置は、圧縮機により圧縮される冷媒の圧力を下げるように構成されている。第4の熱交換器は、冷媒と、燃料電池から送られるガス流との間の熱交換を可能にする。
【0005】
四方弁は、第2の熱交換器、第4の熱交換器、および第2の減圧装置を含むループ部分を通る冷媒の通過方向を逆転させることができる。
【0006】
冷媒は、熱力学的な空調ループの内部で、一般にはモリエ線図で表わされる熱力学的なサイクルに従う。モリエ線図から、熱力学的な空調ループの成績係数「COP」(英語の頭語)を導くことが知られている。熱力学的な空調ループの成績係数は、再生される有効パワーと、冷媒を圧縮するために圧縮機により消費されるエネルギーとの比として定義されている。
【0007】
しかしながら、従来技術から公知の熱力学的な空調ループは、高い成績係数に達することができないので、特に、車両のユーザに対して、最小の消費エネルギーで最適な熱快適性を提供しようとする場合に支障を生じる。
【0008】
より一般的には、このような熱力学的な空調ループは、その利用のために著しくエネルギーを消費する場合に支障を生じ、こうした過度の消費は、車両が電気推進式である場合には、ますます危機的な状態となり、その結果、熱力学的な空調ループを利用するために消費される電気エネルギーは、自動車の連続動作能力(autonomie)を低下させる。
【0009】
さらに、電気推進車両という特定の事例では、エンジンの冷却回路がないために熱源を設置できないので、著しい熱不足に陥る。このような熱不足は、「暖房」モードおよび/または、空気流を冷却してから再び加熱することが必要な「再暖房」モードで、熱力学的な空調ループを利用する場合、エネルギー消費を増やしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開第2008/0152976号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、自動車、特に電気推進式の自動車に装備するための暖房、換気、および/または空調設備の一部をなす熱力学的な空調ループを提案することにあり、この空調ループは「冷房」モードと「暖房」モードで動作可能である。さらに、本発明における熱力学的な空調ループは、車両の外部の気候、中でも外気温に応じて、2以上、特に3〜4の高い成績係数「COP」を有する。
【0012】
本発明の第2の目的は、このような熱力学的な空調ループを含み、車両前方に配置された熱交換器から送られる凝縮パワーを減少するように構成された、暖房、換気、および/または空調設備を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、熱力学的な空調ループは、冷媒の循環を生じ、また、四方弁を備えており、この四方弁の第1の孔と第2の孔との間に設けられた熱力学的な空調ループの第1の部分の内部で、冷媒の循環方向を逆転可能である。熱力学的な空調ループの第1の部分は、少なくとも1つの第1の空冷式熱交換器と、第1の減圧装置とを含んでいる。
【0014】
特に、熱力学的な空調ループの第1の部分は、第1の減圧装置と四方弁の第2の孔との間に配置された内部熱交換器を含んでいる。
【0015】
熱力学的な空調ループの第1の部分は、第1の減圧装置に並列接続される第1のバイパスを含んでいると有利である。
【0016】
さらに、第2の空冷式熱交換器は、熱力学的な空調ループの第1の部分で、内部熱交換器と、四方弁の第2の孔との間に配置されている。
【0017】
また、第2の減圧装置は、熱力学的な空調ループの第1の部分で、内部熱交換器と第2の空冷式熱交換器との間に配置されている。第2のバイパスは第2の減圧装置に並列接続されているのが好ましい。
【0018】
本発明によれば、四方弁は、
第1の部分の内部で、四方弁の第1の孔から、第1の空冷式熱交換器、第1のバイパス、内部熱交換器、第2の減圧装置、第2の空冷式熱交換器、および四方弁の第2の孔を通って冷媒が連続して流れる熱力学的な空調ループの第1の動作位置、いわゆる「冷房モード」と、
第1の部分の内部で、四方弁の第2の孔から、第2の空冷式熱交換器、第2のバイパス、内部熱交換器、第1の減圧装置、第1の空冷式熱交換器、および第1の孔を通って、冷媒が連続して流れる熱力学的な空調ループの第2の動作位置、いわゆる「暖房モード」とをとる。
【0019】
熱力学的な空調ループは、四方弁の第3の孔と第4の孔との間に配置された第2の部分を有し、この第2の部分は、少なくとも1つの圧縮機を有するのが好ましい。熱力学的な空調ループの第2の部分は、また、圧縮機と四方弁の第4の孔との間に配置された第3の熱交換器を有する。第3の熱交換器には、冷媒と第1の熱伝達流体とが流れる。
【0020】
熱力学的な空調ループの第2の部分が、第3の孔と圧縮機との間に配置された内部熱交換器を含んでいると有利である。
【0021】
本発明の変形実施形態によれば、熱力学的な空調ループの第1の部分が、第2の空冷式熱交換器と、四方弁の第2の孔との間に配置された第4の熱交換器を含んでいる。第4の熱交換器には、冷媒と第2の熱伝達流体とが流れる。
【0022】
本発明は、また、このような熱力学的な空調ループを含む暖房、換気、および/または空調設備に関する。
【0023】
暖房、換気、および/または空調設備は、内部で第1の熱伝達流体が流れる第1の二次ループを含んでいると有利である。第1の二次ループは、たとえば熱保存モジュールを含んでいる。
【0024】
暖房、換気、および/または空調設備は、内部で第2の熱伝達流体が流れるラジエータを含む第2の二次ループを有する。
【0025】
ラジエータが、第1の管路の内部に収容されており、この管路は、ラジエータを通る空気流が第1の管路の内部で、一定方向に導かれる閉鎖位置と、空気流の少なくとも一部が、第1の管路から外部に排出される開放位置との間で操作可能な、少なくとも1つの空気分配部材を備えていると有利である。
【0026】
さらに、第2の二次ループが、2個の三方弁を介して、車両のエンジンの冷却ループに接続されている。
【0027】
本発明の、限定的ではない例として挙げる添付図面に関する以下の変形実施形態の説明を読めば、本発明はいっそうよく理解され、その細部が明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】「冷房」モードに従う本発明による熱力学的な空調ループを示す図である。
【図2】「暖房」モードに従う本発明による熱力学的な空調ループを示す図である。
【図3】上記の2つの図に示された熱力学的な空調ループの内部を流れる冷媒が被る熱力学的なサイクルを示すモリエ線図である。
【図4】図1と図2に示したような熱力学的な空調ループの第1の変形実施形態を示す図である。
【図5】図1と図2に示したような熱力学的な空調ループの第2の変形実施形態を示す図である。
【図6】「冷房」モードに従って、図1に示したような熱力学的な空調ループの第3の変形実施形態を示す図である。
【図7】「暖房」モードに従って、図2に示したような熱力学的な空調ループの第3の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1、図2と図4〜図7は、自動車の乗員室の内部に拡散される空気流の空気熱パラメータを修正するための自動車の暖房、換気、および/または空調設備1を示している。この自動車は、電気バッテリ、および/または燃料電池等の電源を備える電気推進式の車両である。
【0030】
電気車両の第1の特徴は、熱推進車両に装備される熱機関、特に内燃機関が発生する熱を通常は発散するように構成された冷却回路がないことにある。そのため、常に簡単に利用可能な熱源がない電気推進車両の場合、乗員室の内部に送るための空気流2の加熱、および/または再加熱機能を確保しようとする場合に、制約が生じる。
【0031】
電気車両の第2の特徴は、暖房、換気、および/または空調設備1の不可欠な一部となる熱力学的な空調ループ4の内部で循環する冷媒を圧縮するために、電気式圧縮機3を使用することにある。圧縮機3を利用するには、電源から給電することが必要である。そのため、電気車両の移動の連続動作能力には、圧縮機3を利用することによって、直接的な悪影響が及ぼされる。
【0032】
さらに、電気車両の第3の特徴は、暖房、換気、および/または空調設備1、特に空調ループ4が、できるだけ高い成績係数、すなわちCOPを提供することによって、全体として、できるだけ高い効率であることが望ましいことにある。特に、成績係数は、車両外部の気候に応じて、特に外気温に応じて、2以上、特に3〜4であることが望ましい。
【0033】
本発明により提案される熱力学的な空調ループ4は、上記の特徴を考慮して、2以上、特に3〜4の成績係数を提供することにより、熱力学的な空調ループ4に組み込まれる素子の利用に必要な電気消費量を最小化することができる。
【0034】
熱力学的な空調ループ4は、この空調ループ4が、空気流2を冷却してから車両の乗員室の内部に分配可能にする「冷房」モードと、熱力学的な空調ループ4が空気流2を再加熱してから車両の乗員室の内部に分配可能にする「暖房」モードとで動作することができる。
【0035】
熱力学的な空調ループ4は、また、空気流2が最初に冷却されて除湿され、次いで、再加熱されて車両の乗員室の内部に分配される「再暖房」モードで動作することができる。
【0036】
本発明によれば、熱力学的な空調ループ4は、「冷房」モードでの使用と「暖房」モードでの使用との間で、2つの動作モードに対して、熱力学的な空調ループ4の第2の部分8の内部における冷媒の循環方向を同じ方向に保持しながら、熱力学的な空調ループ4の第1の部分7の内部で、冷媒の循環方向を逆転可能な四方弁6を含んでいる。
【0037】
四方弁6は、熱力学的な空調ループ4の第1の部分7と、第2の部分8との接続を確保する第1の孔9、第2の孔10、第3の孔18、および第4の孔19とを有する。
【0038】
熱力学的な空調ループ4の第1の部分7は、四方弁6に加えて、第1の空冷式熱交換器11と、好適には凝縮器またはガス冷却器と、第1の減圧装置12と、第1のバイパス13と、内部熱交換器15と、第2の減圧装置16と、第2のバイパス17と、第2の空冷式熱交換器5、特に蒸発器またはラジエータとを含んでいる。
【0039】
図1の実施形態では、第1のバイパス13は、第1の減圧装置12の並列分岐線に配置されている。同様に、第2のバイパス17は、第2の減圧装置16の並列分岐線に配置されている。
【0040】
熱力学的な空調ループ4の第2の部分8は、四方弁6に加えて、内部熱交換器15と、圧縮機3と、第3の熱交換器21とを含んでいる。
第3の熱交換器21は、熱力学的な空調ループ4で循環する冷媒と、第1の二次ループ22内で循環する第1の熱伝達流体との間での熱交換を確保する。
【0041】
「冷房」モードおよび「暖房」モードでは、冷媒は、熱力学的な空調ループ4の第2の部分8の内部で、四方弁6の第3の孔18から、内部熱交換器15に向かって流れ、次いで、連続して、圧縮機3、第3の熱交換器21、さらに四方弁6の第4の孔19に向かって流れる。
【0042】
図1は、「冷房」モードにおける熱力学的な空調ループ4の1つの構成を示している。この構成では、四方弁6は、第1の孔9と第4の孔19とを接続している。そのため、冷媒は、四方弁6から、第1の空冷式熱交換器11に向かって流れる。
【0043】
その後、「冷房」モードでは、冷媒は、第1の減圧装置12を迂回しながら第1のバイパス13を通る。次いで、冷媒は、内部熱交換器15を通る。同モードにおいて、冷媒は、その後、第2のバイパス17を迂回して第2の減圧装置16を通って流れ、次いで、連続して、第2の空冷式熱交換器5を通り、四方弁6の第2の孔10へ戻る。
【0044】
この構成では、四方弁6は、第2の孔10と第3の孔18とを接続している。
【0045】
このようにして、「冷房」モードでは、圧縮機3は、第3の熱交換器21を通る冷媒を圧縮する。第3の熱交換器21は、第1のポンプ23の作動によって第1の熱伝達流体が内部で流れる第1の二次ループ22に同様に組み込まれている。第3の熱交換器21は、冷媒が第1の熱伝達流体に熱を付与するように構成されている。
【0046】
また、冷媒は、第1の空冷式熱交換器11を通過し、それによって、第1の空冷式熱交換器11を通過する周囲の空気流に熱を付与する。さらに、冷媒は、その後、第1のバイパス13と内部熱交換器15に流れ、内部熱交換器で、四方弁6から送られて内部熱交換器15に存在する冷媒に熱を付与する。同様に、冷媒は、第2の減圧装置16を通過することにより減圧され、温度が下げられる。最後に、冷媒は、通過する空気流2を冷却可能な第2の空冷式熱交換器5に到達する。従って、「冷房」モードでは、第2の空冷式熱交換器5が蒸発器を構成する。
【0047】
第1の二次ループ22は、また、空気流2が通過するラジエータ24を含み、このラジエータは、空気流2が流れる方向で第2の空冷式熱交換器5の下流に配置されている。
【0048】
「冷房」モードでは、第1のポンプ23が停止され、ラジエータ24による空気流2の再加熱を回避する。「再暖房」モードでは、ポンプ24が作動されて、空気流2が、第2の空冷式熱交換器5により最初に冷却されてから、ラジエータ24により再加熱されるようにする。
【0049】
「再暖房」モードの動作原理は、暖房、換気、および/または空調設備で公知の「空冷式」の混合機能と同一視することができる。しかしながら、「再暖房」モードの動作原理は、また、暖房、換気、および/または空調設備で公知の「水冷式」の混合機能と同一視することもできる。
【0050】
図2は、「暖房」モードにおける熱力学的な空調ループ4の構成を示している。この構成では、四方弁6が、第4の孔19と第2の孔10とを接続している。このようにして、冷媒は、四方弁6から第2の空冷式熱交換器5に向かって流れる。
【0051】
「暖房」モードでは、冷媒が、その後、第2の減圧装置16を迂回しながら第2のバイパス17を通る。同モードにおいて、冷媒は、内部熱交換器15を通って流れ、次いで、第1のバイパス13を迂回して第1の減圧装置12に流れ、第1の空冷式熱交換器11を通過し、最後に、四方弁6の第1の孔9へ連続して流れる。その後、冷媒は、第1の孔9から第3の孔18に流れる。
【0052】
このようにして、「暖房」モードでは、圧縮機3が、第3の熱交換器21を通る冷媒を圧縮する。第3の熱交換器21の内部で、冷媒は、第1の二次ループ22で循環する第1の熱伝達流体に熱を付与する。第1の二次ループ22の第1のポンプ23が作動されて、第1の熱伝達流体が、ラジエータ24を通る空気流2に熱を付与する。
【0053】
本発明の好適な実施形態によれば、第3の熱交換器21は、いっそう高温の冷媒が第3の熱交換器21を通過するように、圧縮機3の出力に直接配置され、それによって、ラジエータ24による空気流2の再加熱を最適化する。
【0054】
この構成によれば、冷媒は、第2の空冷式熱交換器5を通過する。従って、「暖房」モードでは、第2の空冷式熱交換器5がラジエータを構成する。第2の空冷式熱交換器5は、空気流2が流れる方向でラジエータ24の上流に配置されるので、空気流2は、第2の空冷式熱交換器5により、次いでラジエータ24により、連続して再加熱される。
【0055】
特に有利な実施形態では、第2の空冷式熱交換器5およびラジエータ24において、それぞれの温度が上昇する。
【0056】
冷媒は、その後、第2のバイパス17を通過してから、内部熱交換器15に流れ、そこで、四方弁6から送られて内部熱交換器15内に存在する冷媒に熱を付与する。最後に、冷媒は、第1の減圧装置12に至り、減圧されて温度を下げられる。次いで、冷媒は、第1の空冷式熱交換器11に達し、第1の空冷式熱交換器11を通る周囲の空気を冷却する。
【0057】
「冷房」モードでは、第1の空冷式熱交換器11が、ラジエータと同様に作用し、「暖房」モードでは、第1の空冷式熱交換器11が、蒸発器と同様に作用する。
【0058】
同じく、「冷房」モードでは、第2の空冷式熱交換器5が、蒸発器と同様に作用し、「暖房」モードでは、第2の空冷式熱交換器5が、ラジエータと同様に作用する。
【0059】
図1と図4に示す構成の実施形態によれば、第2の空冷式熱交換器5とラジエータ24は、暖房、換気、および/または空調設備1のハウジング40の内部に配置されている。
【0060】
図3は、熱力学的な空調ループ4の内部で冷媒が受ける変化を識別するモリエ線図を表わしており、上記の構成は、この図に示された熱力学的なサイクルに従って動作する熱力学的な空調ループ4の成績係数が、内部熱交換器15によって改善されるような構成とされている。
【0061】
図示の実施形態では、冷媒は、特に二酸化炭素または同等物等の超臨界冷媒である。しかし、冷媒を、本発明の範囲を逸脱することなく、亜臨界流体または同等物とすることができる。
【0062】
熱力学的なサイクルは、「冷房」モードでは、圧縮機3、第3の熱交換器21、第1の空冷式熱交換器11、内部熱交換器15、第2の減圧装置16、第2の空冷式熱交換器5、および、再び内部熱交換器15の内部で、それぞれ実施される連続ステップAB、BC、CD、DE、EF、FGおよびGAを含んでいる。熱力学的な空調ループ4に内部熱交換器15が存在することにより、車両外部の気候、特に外気温に応じて、できるだけ高い成績係数、特に2以上で、さらに3〜4の範囲にある成績係数を得るために、変化ステップFAとBEを延長可能であることは、明らかであると思われる。
【0063】
「暖房」モードでは、図2の構成部品を介して、冷媒により、同様の熱力学的なサイクルが、冷媒により実施される。
【0064】
図4は、図1と図2に示したような熱力学的な空調ループの第1の変形実施形態を示している。この実施形態では、第1の二次ループ22は、相変化材料を備えた熱保存モジュール25を備えており、熱量を蓄積して、これを後で再生する。こうした構成により、第3の熱交換器21は、熱力学的な空調ループ4から送られる熱の回収が不十分である状況を含めて、空気流2の温度を上昇させることができる。
【0065】
暖房、換気、および/または空調設備1は、さらに、第4の熱交換器27を介して熱力学的な空調ループ4の第1の部分7に接続される第2の二次ループ26を含んでいる。第2の二次ループは、また、この第2の二次ループ26の内部で第2の熱伝達流体を循環させて、同様に第2の二次ループ26に配置される電気バッテリまたは同等物等の付属部材29に冷気を送ることができる第2のポンプ28を含んでいる。
【0066】
第1の実施形態によれば、第4の熱交換器27は、「冷房」モードで熱力学的な空調ループ4から「冷気」を取り出して、第2の二次ループ26に送ることができる。「暖房」モードでは、第4の熱交換器27は、熱力学的な空調ループ4から「暖気」を取り出して、第2の二次ループ26に送ることができ、これによって、「暖気」を付属部材29に供給することができる。
【0067】
図4は、図1の装置に相当する構成による「冷房」モードの配置を示している。図2について記載されたものに相当する装置を用いて、「暖房」モードによる配置にすることも、同様に可能である。
【0068】
図5から図7は、図1と図2に示したような熱力学的な空調ループの第2および第3の変形実施形態を示している。
【0069】
これらの変形実施形態によれば、ラジエータ24が、暖房、換気、および/または空調設備1のハウジング40の第1のエアダクト30の内部に収容される一方で、第2の空冷式熱交換器5は、暖房、換気、および/または空調設備1のハウジング40の第2のエアダクト31の内部に収容されている。このような構成は、特に「空冷式」の混合に適している。しかし、暖房、換気、および/または空調設備1のハウジング40を用いるこのような構成によって、本発明により、また、「水冷式」の混合も検討可能である。
【0070】
第1のエアダクト30と第2のエアダクト31には、それぞれ、空気流2の第1の部分32と第2の部分33とが流れる。「冷房」モードでは、空気流2の第1の部分32が、ラジエータ24により再加熱され、空気流2の第2の部分33が、第2の空冷式熱交換器5によって冷却される。第1のエアダクト30は、空気流2の第1の部分32が、第1のエアダクト30の内部で一定方向に導かれる閉鎖位置(図5から7の破線で示した位置)と、空気流2の第1の部分32が、全体的または部分的に車両の外部に向けて、第1のエアダクト30の外に排出される第2の位置(図5から7の実線で示した位置)との間で操作される空気配分部材34、35を備えている。
【0071】
これらの構成によって、第1の空冷式熱交換器11により外部に付与される高温パワーを減少することができる。その結果、第1の空冷式熱交換器11の外形寸法を小さくし、および/または第3の熱交換器21の出力で取り出される冷媒の温度を下げることができる。
【0072】
空気配分部材34、35は、第1の空気分配フラップ34と第2の空気分配フラップ35とから構成可能である。図5〜図7の実施形態によれば、フラップは、図示のようなフラッグタイプである。フラップは、また、ドラムタイプの単一分配フラップにまとめてもよい。さらには、特に「フラッグ」タイプ、「スロットルバルブ(papillon)」タイプ、または「ドラム」タイプなど、フラップの他のあらゆる形態をとることが可能である。
【0073】
図6と図7に示す第3の変形実施形態によれば、第1の二次ループ22が、特に車両の推進を可能にする電気モータ38の冷却ループ37により、第1の二次ループ22と接続するための2個の3方弁36を備えている。電動機38は、付随的に、インバータ39を備えている。
【0074】
冷却ループ37は、第5の空冷式熱交換器42を含んでいる。第5の空冷式熱交換器42は、電動換気装置41に接続され、第5の空冷式熱交換器42、次いで第1の空冷式熱交換器11を通って、外気を循環させる。第5の空冷式熱交換器42と、第1の空冷式熱交換器11は、車両の前面に配置されているのが好ましい。
【0075】
図6に示したような「冷房」モードでは、三方弁36が、第2の二次ループ22と冷却ループ37との間で、第1の熱伝達流体の循環を可能にする。従って、空気流2の第1の部分32は、ラジエータ24により再加熱されてから、空気配分部材34、35を介して、第1のエアダクト30から排出され、その一方、空気流2の第2の部分33は、このモードで乗員室の内部への分配に先立って、蒸発器を構成する第2の空冷式熱交換器5により、冷却される。
【0076】
たとえば車両の停止が延長されるときに、凝縮パワーがゼロになりうる電気車両の場合、第5の空冷式熱交換器42を用いて、凝縮パワーを少なくとも部分的に排出可能であり、これによって、圧縮機3の電気消費を少なくし、その結果、車両の連続動作能力を高めることができる。
【0077】
図7に示した「暖房」モードでは、車両の始動段階で、三方弁36は、冷却ループ37を介して第1の冷媒の最小流量を可能にし、第1の二次ループ22が速やかに温度上昇できるようにする。電動換気装置41は、第5の空冷式熱交換器42の出力で、第1の熱伝達流体の最高温度に基づいて散逸される凝縮エネルギーを最適化できるように、動作速度を調整可能である。これらの構成により、第1の二次ループ22により回収される熱パワーを最大化し、特に、ラジエータ24から送られる熱パワーを最大化することによって、空気流2の第1の部分32を再加熱することができる。従って、空気流2の第1の部分32は、乗員室の内部への分配に先立って、ラジエータ24により再加熱され、このような分配は、空気配分部材34、35により可能にされる。その一方で、空気流2の第2の部分33は、このモードでは、乗員室内部への分配に先立ってラジエータを同様に構成する第2の空冷式熱交換器5によって、再加熱される。
【0078】
さらに、上記のような本発明の範囲を逸脱することなく、第1のバイパス13に並列接続される第1の減圧装置12と、第2のバイパス17に並列接続される第2の減圧装置16との代わりに、それぞれ、サーモスタットバルブまたは同等物等の、単一部品を用いることができる。
【0079】
当然のことながら、本発明は、例としてのみ挙げられた上記の実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲で当業者が検討可能な他の変形実施形態を包括し、特に、上記の様々な実施形態のあらゆる組み合わせを含むものである。
【符号の説明】
【0080】
1 暖房、換気、および/または空調設備
3 圧縮機
4 熱力学的な空調ループ
5 第2の空冷式熱交換器
6 四方弁
7 熱力学的な空調ループの第1の部分
9 四方弁の第1の孔
10 四方弁の第2の孔
11 第1の空冷式熱交換器
12 第1の減圧装置
13 第1のバイパス
15 内部熱交換器
16 第2の減圧装置
17 第2のバイパス
18 四方弁の第3の孔
19 四方弁の第4の孔
21 第3の熱交換器
22 第1の二次ループ
24 ラジエータ
25 熱保存モジュール
26 第2の二次ループ
27 第4の熱交換器
30 第1のエアダクト/第1の管路
34、35 空気分配部材
36 三方弁
37 冷却ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四方弁(6)の第1の孔(9)と第2の孔(10)との間に配置された熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)の内部で、冷媒の循環方向を逆転可能な四方弁(6)と、少なくとも1つの第1の空冷式熱交換器(11)と、第1の減圧装置(12)とを含み、熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)が、第1の減圧装置(12)と四方弁(6)の第2の孔(10)との間に配置された内部熱交換器(15)、および、この内部熱交換器(15)と四方弁(6)の第2の孔(10)との間に配置された第2の空冷式熱交換器(5)を含み、熱力学的な空調ループ(4)は、四方弁(6)の第3の孔(18)と第4の孔(19)との間に配置された第2の部分(8)を有し、この第2の部分は、少なくとも1つの圧縮機(3)、およびこの圧縮機(3)と四方弁(6)の第4の孔(19)との間に配置された第3の熱交換器(21)を含む、冷媒の循環ための熱力学的な空調ループ(4)において
熱力学的な空調ループの第1の部分(7)は、内部熱交換器(15)と第2の空冷式熱交換器(5)との間に配置された第2の減圧装置(16)を含み、第3の熱交換器(21)に、冷媒と第1の熱伝達流体とが流れることを特徴とする、熱力学的な空調ループ。
【請求項2】
熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)は、第1の減圧装置(12)に並列接続される第1のバイパス(13)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項3】
熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)は、第2の減圧装置(16)に並列接続される第2のバイパス(17)を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項4】
四方弁(6)が、
−第1の部分(7)の内部で、四方弁(6)の第1の孔(9)から、第1の空冷式熱交換器(11)、第1のバイパス(13)、内部熱交換器(15)、第2の減圧装置(16)、第2の空冷式熱交換器(5)、および四方弁(6)の第2の孔(10)を通って、冷媒が連続して流れる熱力学的な空調ループ(4)の第1の動作位置と、
−第1の部分(7)の内部で、四方弁(6)の第2の孔(10)から、第2の空冷式熱交換器(5)、第2のバイパス(17)、内部熱交換器(15)、第1の減圧装置(12)、第1の空冷式熱交換器(11)、および第1の孔(9)を通って、冷媒が連続して流れる熱力学的な空調ループ(4)の第2の動作位置をとることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項5】
熱力学的な空調ループ(4)の第2の部分(8)は、第3の孔(18)と圧縮機(3)との間に配置された内部熱交換器(15)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項6】
熱力学的な空調ループ(4)の第1の部分(7)は、第2の空冷式熱交換器(5)と四方弁(6)の第2の孔(10)との間に配置された第4の熱交換器(27)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項7】
第4の熱交換器(27)に冷媒と第2の熱伝達流体とが流れることを特徴とする、請求項6に記載の熱力学的な空調ループ(4)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱力学的な空調ループ(4)を含む、暖房、換気、および/または空調設備(1)。
【請求項9】
暖房、換気、および/または空調設備(1)は、第1の熱伝達流体が内部で循環する第1の二次ループ(22)を含むことを特徴とする、請求項8に記載の暖房、換気、および/または空調設備(1)。
【請求項10】
第1の二次ループ(22)が、熱保存モジュール(25)を含んでいることを特徴とする、請求項9に記載の暖房、換気、および/または空調設備(1)。
【請求項11】
暖房、換気、および/または空調設備(1)は、第2の熱伝達流体が内部で循環するラジエータ(24)を含む第2の二次ループ(26)を有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の暖房、換気、および/または空調設備(1)。
【請求項12】
ラジエータ(24)は、第1の管路(30)の内部に収容されており、この管路は、ラジエータ(24)を通る空気流(2)が、第1の管路(30)の内部で一定方向に導かれる閉鎖位置と、空気流(2)の少なくとも一部が、第1の管路(30)から外部に排出される開放位置との間で操作可能な、少なくとも1つの空気分配部材(34、35)を備えていることを特徴とする、請求項11に記載の暖房、換気、および/または空調設備(1)。
【請求項13】
第2の二次ループ(26)が、2個の三方弁(36)を介して、車両のエンジン(38)の冷却ループ(37)に接続されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の暖房、換気、および/または空調設備(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−506820(P2012−506820A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533681(P2011−533681)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063817
【国際公開番号】WO2010/049332
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】