説明

電気機器および電気掃除機

【課題】耐衝撃性を向上しつつ、製造コストを抑制し製造性を向上した制御回路部を提供する。
【解決手段】PTCサーミスタ52のリード部65,65のクリンチ部66,66にはんだSを盛ってはんだ盛り部68,68を形成することで、リード部65,65を安価なはんだSで確実かつ容易に補強でき、耐衝撃性を向上しつつ製造コストを抑制できるとともに、はんだ盛り部68,68を形成するはんだSは、クリンチ部66,66に盛った後、すぐに冷却して固まるので、製造性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード部を備えた電気素子を有する電気機器およびこれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気機器は、電気掃除機の掃除機本体に収容された電動送風機の吸込側に、ホース体および延長管などを介して連通接続される。そして、この電気機器は、中空なケース体を備えている。このケース体には、床面に対向して吸込口が開口され、この吸込口には、回転ブラシが回転可能に臨んでいる。また、ケース体内には、回転ブラシを回転させるモータと、このモータの駆動を制御する制御部とが設けられている。この制御部は、回路基板を有し、この回路基板には、リード部を備えた電気素子などが実装されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−337863号公報(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の電気機器では、電気素子が比較的大きい場合に、電気機器に外部から衝撃が加わると、電気素子の重量によりリード部が断線したり、電気素子が破損したりするおそれがある。
【0004】
そこで、リード部を回路基板に沿って屈曲させて電気素子を回路基板に沿って倒し、電気素子を回路基板に接着して衝撃に対する強度を向上することが考えられる。
【0005】
しかしながら、このような電気機器では、接着剤が比較的高価となり、製造コストを抑制することが容易でないとともに、接着剤が乾燥するまで時間がかかり、製造性を向上することが容易でないという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、耐衝撃性を向上しつつ、製造コストを抑制し製造性を向上した電気機器およびこれを備えた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回路基板に実装される際の位置決め用のクリンチ部を有するリード部を備えた電気素子と、クリンチ部にはんだを盛って形成されたはんだ盛り部とを具備したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気素子のリード部のクリンチ部にはんだを盛ってはんだ盛り部を形成することで、電気素子のリード部を安価なはんだで確実かつ容易に補強でき、耐衝撃性を向上しつつ、製造コストを抑制できるとともに製造性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
【0010】
図3において、1は掃除機本体で、この掃除機本体1は、内部に収容された電動送風機2の駆動にて生じる吸気風とともに吸い込んだ塵埃を、着脱可能な図示しない集塵パックにて集塵する。
【0011】
また、この掃除機本体1には、外部から空気を吸引する本体吸込口3が開口されている。この本体吸込口3には、可撓性を有し湾曲可能な細長略円筒状のホース体4が連通接続されている。このホース体4の先端には、電動送風機2の動作モードなどが選択可能な手元操作部5が設けられている。この手元操作部5には、掃除機本体1内の電動送風機2などを複数の駆動モードに設定する複数の設定ボタン6が設けられているとともに、掃除する際に作業者が把持する把持部7が基端側に向けて突設されている。
【0012】
さらに、この手元操作部5の先端には、伸縮可能な細長略円筒状の延長管8が着脱可能に連通接続されている。またさらに、この延長管8の先端には、例えば室内の床面の絨毯などの上に載置させて、この絨毯上の塵埃を吸い込む電気機器としての吸込口体である床ブラシ9が着脱可能に連通接続されている。
【0013】
そして、この床ブラシ9は、本体としてのケース体11と、このケース体11内に回動可能に設けられた回転清掃体としての回転ブラシ12と、この回転ブラシ12を回転させる電動機としてのモータ13と、このモータ13の駆動を制御する制御部としての制御回路部14とを有している。
【0014】
ケース体11は、横長に形成され、上側が開放された下ケース21と、この下ケース21の上側に取り付けられる上ケース22と、下ケース21と上ケース22との間に挟持されるバンパ23および連通管24とを備えている。そして、このケース体11内には、図2に示すように、回転ブラシ12を収容するブラシ収容部25と、モータ13を収容するモータ収容部26と、制御回路部14を収容する回路収容部27とが内部に区画形成されている。
【0015】
ここで、ブラシ収容部25は、ケース体11内の前側に横長に形成されている。また、モータ収容部26は、ケース体11内の後側かつ連通管24の一側方である図2に示す右側に設けられている。さらに、回路収容部27は、ケース体11内の後側かつ連通管24の他側方である図2に示す左側に設けられている。
【0016】
また、下ケース21は、床面に対向する下側に吸込口28がブラシ収容部25の下部に開口形成されている。
【0017】
さらに、上ケース22は、下ケース21の上側を閉塞するものである。
【0018】
またさらに、バンパ23は、床ブラシ9が障害物などに衝突した際などの緩衝部材であり、ケース体11の一側部から他側部へとケース体11の前側を経由して連続して設けられている。
【0019】
そして、連通管24は、基端部がブラシ収容部25の後側に連通して回動可能に軸支され、先端部がケース体11から後方に突出して延長管8に着脱可能に連通接続される。
【0020】
また、回転ブラシ12は、細長円筒状の軸体としてのブラシ台31と、このブラシ台31の周囲に取り付けられた複数の清掃部材32とを有し、ブラシ収容部25に収容されて吸込口28に臨んでいる。
【0021】
ブラシ台31は、外周面に螺旋状の係合凹部35が清掃部材32の個数に対応して複数設けられ、これら係合凹部35は、ブラシ台31の周方向に略等間隔に離間されている。そして、このブラシ台31の両端部には、軸受36がそれぞれ取り付けられ、これら軸受36が下ケース21内の左右両端部に回転可能に軸支されている。
【0022】
また、清掃部材32は、毛ブラシであるブラシ部材41と、ゴムブレードであるブレード部材42とで構成され、これらブラシ部材41とブレード部材42とは、ブラシ台31の係合凹部35にそれぞれ基端部が係合されて先端部がブラシ台31の径方向に突出している。
【0023】
一方、モータ13は、モータ収容部26に収容され、回転軸がモータ13の回転を減速する減速機45と、この減速機45と軸受36との間に巻き掛けられたベルト46とを介して軸受36に連結されている。
【0024】
そして、制御回路部14は、回路基板51を有し、この回路基板51には、制御回路を構成する電気素子としての保護素子であるPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ52、電気素子53,54と、回路保護用の図示しないヒューズと、この制御回路とモータ13および設定ボタン6とをリード線56,57により電気的に接続するコネクタ58,59などとがそれぞれ実装されている。
【0025】
また、回路基板51は、例えば横長四角形状に形成され、下ケース21に対向する下側の主面が、制御回路が設けられたはんだ面61であり、上ケース22に対向する上側の主面が、部品面62となっている。
【0026】
さらに、PTCサーミスタ52は、図1に示すように、扁平な円柱状に形成されPTCサーミスタ52の重量の殆どを占める素子本体64と、この素子本体64に電気的に接続されこの素子本体64の側部からそれぞれ突設された一対のリード部65,65とを有し、回路基板51の部品面62に沿って扁平となるように、言い換えると軸方向が部品面62に対して略垂直となるように、配置されている。
【0027】
そして、リード部65,65は、互いに離間され、はんだ面61にてはんだ付けされ、かつ、部品面側で回路基板51の部品面62に沿ってそれぞれ屈曲されている。また、これらリード部65,65の基端部と先端部との間には、屈曲部としてのクリンチ部66,66がそれぞれ形成されている。
【0028】
これらクリンチ部66,66は、それぞれリード部65,65の所定の位置を互いに接近する方向に向けて鋭角状に突出するように屈曲され、PTCサーミスタ52を回路基板51に実装するために、部品面62側からリード部65,65を回路基板51の所定の穴部67,67にリード部65,65を挿入する際に穴部67,67の周囲に当接してストッパとなることで、PTCサーミスタ52を位置決めし、素子本体64を回路基板51の部品面62に沿って屈曲するための部品面62側のリード部65,65を確保するためのものである。
【0029】
また、これらクリンチ部66,66には、はんだSが盛られてはんだ盛り部68,68がそれぞれ形成されている。これらはんだ盛り部68,68は、クリンチ部66,66全体を覆うように形成され、リード部65,65の太さを太くしてこれらリード部65,65を保護している。
【0030】
次に、上記一実施の形態のはんだ盛り部68,68の製造方法を説明する。
【0031】
まず、PTCサーミスタ52のリード部65,65を、回路基板51の部品面62側から穴部67,67に、クリンチ部66,66が穴部67,67の周囲に当接するまでそれぞれ挿入する。
【0032】
次いで、リード部65,65の先端部を回路基板51のはんだ面61にてはんだ付けし、リード部65,65を部品面62側で屈曲させるようにPTCサーミスタ52の素子本体64を回路基板51の部品面62に沿って倒す。
【0033】
この後、クリンチ部66,66にはんだSを盛ってはんだ盛り部68,68を形成する。
【0034】
次に、上記一実施の形態の掃除動作を説明する。
【0035】
まず、作業者は、掃除機本体1の本体吸込口3に、ホース体4、延長管8および床ブラシ9を順次連通接続する。
【0036】
さらに、作業者が、掃除機本体1から電源コードを引き出して図示しないコンセントに接続した後、把持部7を把持して所定の設定ボタン6を操作すると、この設定ボタン6により設定された動作モードに応じて電動送風機2が駆動される。
【0037】
そして、作業者は、把持部7を把持して床面上で床ブラシ9を前後に走行させ、吸込口28から床面の塵埃を吸い込む。
【0038】
また、掃除の際に、作業者が所定の設定ボタン6を適宜操作すると、この操作の信号がリード線57により制御回路部14へと伝達され、この信号に基づいて制御回路部14からリード線56を介して出力された信号により、モータ13が駆動され、このモータ13の駆動が減速機45、ベルト46および軸受36を介して回転ブラシ12に伝達されて、回転ブラシ12が回転する。
【0039】
そして、床面が絨毯などの場合には、回転ブラシ12のブラシ部材41が床面の塵埃を掻き出す。
【0040】
また、床面がフローリングなどの場合には、回転ブラシ12のブレード部材42が床面を磨く。
【0041】
そして、床ブラシ9の吸込口28から空気とともに吸い込まれた塵埃は、床ブラシ9から延長管8およびホース体4を順次通過した後、掃除機本体1の本体吸込口3へと導かれて、この掃除機本体1内に収容された図示しない集塵パックに捕集される。
【0042】
塵埃が捕集された空気は、電動送風機2へと吸気されて排気風となり、掃除機本体1の図示しない排気口から外部へと排気される。
【0043】
上述したように、上記一実施の形態では、PTCサーミスタ52のリード部65,65のクリンチ部66,66にはんだSを盛ってはんだ盛り部68,68を形成する構成とした。
【0044】
この結果、例えばPTCサーミスタの素子本体を回路基板に接着する従来の場合と比較して、リード部65,65を安価なはんだSで確実かつ容易に補強でき、耐衝撃性を向上しつつ製造コストを抑制できるとともに、はんだ盛り部68,68を形成するはんだSは、クリンチ部66,66に盛った後、すぐに冷却されて固まるので、接着剤が乾くまで養生しなければならない従来の場合と比較して、製造性を向上でき、出荷までの時間を短縮できる。
【0045】
特に、制御回路部14は、掃除作業中に障害物、あるいは壁などに頻繁に勢いよく衝突して衝撃が加わり易い電気掃除機の床ブラシ9に設けられるものであるから、上記一実施の形態のようにリード部65,65を補強することで、リード部65,65の断線およびPTCサーミスタ52の破損などを確実に防止でき、信頼性を向上できる。
【0046】
また、PTCサーミスタ52の位置決め用のクリンチ部66,66を有効に利用することで、はんだ盛り部68,68用の部分をリード部65,65に新たに設ける必要もない。
【0047】
しかも、クリンチ部66,66は幅方向に沿って形成されているため、これらクリンチ部66,66にはんだSを盛ることで、はんだ盛り部68,68を充分な大きさに確保できる。
【0048】
さらに、PTCサーミスタ52は、リード部65,65の太さ(強度)に対して素子本体64の重量が比較的大きいため、制御回路部14に衝撃などが加わった際にリード部65,65に負荷が加わり易いので、上記のようにはんだ盛り部68,68にてリード部65,65を補強することで、PTCサーミスタ52の破損などを、より確実に防止できる。
【0049】
なお、上記一実施の形態において、振動が大きい機器に制御回路部14を用いる場合など、PTCサーミスタ52を、回路基板51に、より確実に固定する必要がある際には、図4に示すように、例えばシリコーン系などの接着剤GにてPTCサーミスタ52の素子本体64の後端部とリード部65,65側とをそれぞれ回路基板51に接着してもよい。
【0050】
また、電気機器としては、電気掃除機の床ブラシ9に設けられるもの以外でも、振動、あるいは衝撃などが加わるおそれがある機器などに好適に利用できる。
【0051】
さらに、電気素子としては、PTCサーミスタ52以外のものと設定することも可能である。
【0052】
そして、電気掃除機としては、キャニスタ型の電気掃除機に限らず、床ブラシ9が掃除機本体1の下面に直接形成されたアップライト型、その他、掃除機本体1と床ブラシ9とが一体化された自走式の電気掃除機あるいはハンディ型などであっても対応させて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態の電気機器の一部を拡大して示す斜視図である。
【図2】同上電気機器の内部を示す斜視図である。
【図3】同上電気機器を備えた電気掃除機を示す斜視図である。
【図4】同上電気機器の他の実施の形態の電気機器の一部を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 掃除機本体
2 電動送風機
9 電気機器としての床ブラシ
12 回転清掃体としての回転ブラシ
13 電動機としてのモータ
14 制御部としての制御回路部
28 吸込口
51 回路基板
52 電気素子としてのPTCサーミスタ
65 リード部
66 クリンチ部
68 はんだ盛り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
この回路基板に実装される際の位置決め用のクリンチ部を有するリード部を備えた電気素子と、
前記クリンチ部にはんだを盛って形成されたはんだ盛り部と
を具備したことを特徴とした電気機器。
【請求項2】
電動送風機を収容した掃除機本体と、
前記電動送風機の吸込側に連通し被掃除面と対向して設けられた吸込口、この吸込口に臨んで設けられ回転可能な回転清掃体、この回転清掃体を回転駆動させる電動機、および、この電動機を制御する制御部を備えた請求項1記載の電気機器と
を具備したことを特徴とした電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−110087(P2006−110087A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300469(P2004−300469)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】