説明

電気機器の報知音の決定方法

【課題】電気機器に共通する操作の確認や状態を報知するための一連の複数の報知音をどの操作の確認音かあるいはいかなる状態の報知音かを確実に認識できるようにし、人に優しく明解で高質な報知音を発生する電気機器の報知音の決定方法を提供する。
【解決手段】電気機器の報知音の決定方法は、電気機器の操作の確認と動作状態の報知を行うために相互に異なる複数種類の報知音を発生する電気機器の報知音の決定方法であって、報知音は、楽譜に音符を用いて記載して表現可能な音であり、かつ、音階とリズムと強弱という分解された複数の音楽的要素を組み合わせたものであり、複数種類の報知音のそれぞれの意味を区別して当該電気機器の使用者が連想することができるように、一つの分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてを他の分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてと異ならせるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の産業用、家庭用等の電気機器のスイッチ入力操作の確認や動作状態の報知を行う電気機器の報知音の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般の電気機器のスイッチ入力操作を受け付けたときや電気機器の動作状態を表示したり報知するときに電気機器に内蔵する報知装置によりスイッチ入力や動作状態に特有の報知音や警報や音声を発生したりして操作者や周囲の人が聴覚で確認するようにしている。
【0003】
例えば、スイッチ入力操作に応じて確認のための報知音を発生する従来の技術として、特開平5−61559号公報(特許文献1)にあるように、物理的に一つのスイッチが設定された動作モードに応じて二つの動作モードをもつときスイッチを押すとそれぞれの動作モードに応じて異なる音色の操作音を発生するものがあり、特開平6−86736号公報(特許文献2)にあるように、浴槽の湯の温度などを使用者が選択操作したとき各温度毎に相違する音階の音声信号を発声することにより操作部に対する誤操作の有無を利用者の聴覚器に容易に確認できるようにするものがあり、また、特開平6−318290号公報(特許文献3)にあるように、電気機器のスイッチの操作状態に応じて周波数を変えたり発生回数を変えることによって異なる確認音を発声しスイッチの操作状態を確実に判別できるようにするものがある。
【0004】
また、例えば電気機器の動作状態を報知したり警告したりする従来の技術として、特開平4−187979号公報(特許文献4)にあるように冷蔵庫のドアの開放警告装置において開放経過時間が長くなったとき開放経過時間の短いときに比べて大音量もしくは高音の開放警告音を出力するものがあり、特開昭61−146218号公報(特許文献5)にあるようにやかんが沸騰したとき沸騰音以上の十分な大きさの音楽の旋律を発生し、特開昭62−53618号公報(特許文献6)にあるように煮沸器の感温センサーが85℃以上を感知すると旋律音を発し110℃以上を感知すると別の旋律音を発するものがあり、特開平4−188023号公報(特許文献7)にあるように、変化する物理量を測定して発音、演奏、表示する警報装置があり、特開平4−338436号公報(特許文献8)にあるように、ごみセンサーを備えた掃除機でごみの量を検出して所定の量より少なくなれば床面の清掃状態がよくなったとして音声発声器を駆動し「きれいになりました」という声を発声するものがあり、また、特開平3−207393号公報(特許文献9)にあるように、動作に異常があると短調の陰気なメロディーを鳴らす電気洗濯機がある。
【0005】
さらに、電気機器が置かれた周囲の環境や操作者に対応して報知装置の発音条件を最適化するものがあり、例えば特開平4−338420号公報(特許文献10)にあるように
可聴領域の狭くなった人にも識別が容易な音域を選んだり、高音域の聞き取りが困難になった高齢者などにも容易に聞き取れるように基本周波数を分周器で分周して低音域にしたり、他の電気機器の報知音と混同しないように報知音のリズムを変えたり、周囲の音を検知し周囲音に応じて発音体の音圧を変える報知装置を備えた電気調理器があり、特開平5−204387号公報(特許文献11)にあるように周囲の騒音度、湿度、温度、明るさ等の環境情報を定期的に入力するとその環境情報に適合した曲目調整、音色調整、音量調整、テンポ調整、残響調整等を行って複数のスピーカーから放音する音響発生装置もある。
【特許文献1】特開平5−61559号公報
【特許文献2】特開平6−86736号公報
【特許文献3】特開平6−318290号公報
【特許文献4】特開平4−187979号公報
【特許文献5】特開昭61−146218号公報
【特許文献6】特開昭62−53618号公報
【特許文献7】特開平4−188023号公報
【特許文献8】特開平4−338436号公報
【特許文献9】特開平3−207393号公報
【特許文献10】特開平4−338420号公報
【特許文献11】特開平5−204387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の例では、個々の電気機器に対応した固有の確認音や警告音やメロディーを単独に発生するようなものはあるが、多くの電気機器が備えている共通の機能である操作の確認と状態の複数の一連の報知に関し、それらのひとつひとつを何人もが区別して認識でき容易に連想することのできるような報知音を発生する報知装置はない。
【0007】
しかも、高齢者に容易に聞き取れるように発生音を低音域にするときにも基本周波数を単に分周するのみで複数の世代が同居したりするとき互いに音に対する違和感を感じてしまうときがある。
【0008】
さらに、発生する音の音量や音程、テンポ、残響等が調整できる音響発生装置では、周囲の環境によって調整された特定の曲目を周囲の騒音度に応じて騒音が小さければ音量を小さく曲全体の残響を深くして優しい音にし、騒音が大きければ音量を大きく曲全体の残響を浅くして歯切れよく聞こえやすい音を発生するものであり個々の音階に対してこまやかな調整を行うものではない。
【0009】
そこで本発明は、電気機器に共通する操作の確認や状態を報知するための一連の複数の報知音をどの操作の確認音かあるいはいかなる状態の報知音かを確実に認識できるようにするとともに、人に優しく明解で高質な報知音を発生することのできる電気機器の報知音の決定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った電気機器の報知音の決定方法は、電気機器の操作の確認と動作状態の報知を行うために相互に異なる複数種類の報知音を発生する電気機器の報知音の決定方法であって、報知音は、楽譜に音符を用いて記載して表現可能な音であり、かつ、音階とリズムと強弱という分解された複数の音楽的要素を組み合わせたものであり、複数種類の報知音のそれぞれの意味を区別して当該電気機器の使用者が連想することができるように、一つの分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてを他の分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてと異ならせるものである。
【0011】
この発明の電気機器の報知音の決定方法においては、音階は、高音階、中音階、低音階、または、それらの組み合わせを含み、リズムは、長音、短音、または、それらの組み合わせを含み、強弱は、漸強もしくは漸弱の変化、または、アクセントによる強調を含むように構成されることが好ましい。
【0012】
また、この発明の電気機器の報知音の決定方法においては、複数種類の報知音を電気機器の複数の使用者に試聴させ、複数種類の報知音のそれぞれの分類を区別して当該電気機器の使用者が連想することができるように複数の報知音を電気機器の報知音として設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のようにこの発明によれば、報知音は音階とリズムと強弱という分解された複数の音楽的要素を組み合わせたものであり、複数種類の報知音のそれぞれの意味を区別して当該電気機器の使用者が了解することができるように、一つの分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてを他の分類の報知音に含まれる音楽的要素のすべてと異ならせるので、使用者が異なる報知音の目的の違いを了解できるように意味付けでき、異なる音楽的要素を含む複数種類の報知音を人が聞いても混同したり誤認識することなくその意味を容易に連想することができる。したがって、報知音の意味を容易に連想し区別して認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般に、電気機器を運転しようとすると人が電源スイッチをONしたり電気機器が備えている操作部の各種の操作スイッチを操作することによって電気機器の制御部に運転条件の設定や運転プログラムの実施を行うようにしており、電気機器はまた、運転プログラムの実施を行うと運転状態の表示や報知、さらに誤操作や誤動作がないかどうか、異常な動作状態でないかどうかなどの警報などをすることにより使用者や周囲の人に運転プログラムが正しく実施されているかどうか電気機器が正常かどうかなどを知らせる必要があり、このため、電気機器は操作部や制御部に視覚による表示装置とともに聴覚による報知装置を備えている。
【0015】
本発明は、電子レンジ、電気炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、空気調和機、テレビジョン、ビデオテープレコーダやファクシミリなどの家庭で使用される電気機器から、一般の産業用の各種の電気機器や機械装置などが備えた報知装置の報知音に関するもので、電気機器の発生する報知音を聞けばどの電気機器がいかなる動作状態であるか何人もが違和感なく容易に認識できるように有機的に形成した報知音であり、このために人が生まれて以来日常生活で学習してきた数々の既存の音から共通に認識され共通の概念を懐くことのできる部分を抽出して誤りなく連想したり認識できるように、明解で単純に区分された音の要素もしくはそれらの組み合わせからなる記号化した報知音である。
【0016】
図1は本発明の電気機器の報知装置の報知音の概要を示す説明図である。
【0017】
図1の報知音の分類の欄に示されるこれらの報知音は、電気機器を運転あるいは条件設定などの操作をしようとして操作部にスイッチ入力などの操作入力があるとそれが正しく操作され正しく入力されて電気機器に受け付けられたときなどに確認のために発せられる受付音などの操作音と、電気機器の出力増減の調節や大小の調節可能な設定条件の設定や変更などを行うときに発せられる調節音と、電気機器の運転を開始したりあるいは特定の動作プログラムが開始したときに発せられるスタート音と、運転中あるいは動作中に一時停止させたり設定条件を取り消したりすると発せられる停止音ないしは取り消し音と、電源をOFFしたり運転が完了したりすべての動作が完了したときなどに発せられる運転終了音と、運転状態が異常なときや誤動作や何らかの操作の変更や入力を人に要求するとき
に発せられる警告音と、その他電気機器の使用に伴って発生する各種のガイダンスや、運転の進行中残り時間を事前に知らせたり設定した温度などに到達したことを知らせたり、その他の情報を人に知らせるときに発せられるお知らせ音とに分類して区別することができる。
【0018】
報知音をこのような分類に区別すれば、何人も誤りなく認識でき明解で単純に区分された音の要素もしくはそれらの組み合わせからなる記号化した報知音をそれぞれの分類に対応して形成することが容易となる。
【0019】
さらに、これらの報知音にはそれぞれの分類を区別して連想させる音階とリズムと抑揚が付加されることによって報知音自身が意味を持つように意味付けられるので、これらの報知音を人がはじめて聞いても混同したり誤認識することなくその意味を容易に連想することができる。
【0020】
図1の音階の欄に示されるように、これらの報知音にはそれぞれの分類を区別して連想させる音階が付加される。操作音は人が聞きやすい一定の中音であり、調節音は出力を増大するときあるいは設定条件を大きくするときには音階を高めてゆき、出力を減少するときあるいは設定条件を小さくするときにはには音階を下げてゆく。
【0021】
スタート音は静から動へ始動するように音階を高めて行くか、あるいは静を強調し開始直後の拘束から解放されて躍動するように一旦音階を低めた後高めてゆく。停止音ないし取り消し音は同じレベルの音階で、運転終了音は動から静に音階を高から低へと低めて行くか、あるいは運転終了の安息感を与えるように高から低に音階を変化させた後音階を高める。警告音は変転を連想させるように高から低へと音階を変化させる。そして、お知らせ音は野の鹿を呼ぶようにあるいはラッパ手の集合ラッパのように高く低く音階を高低に変化させる。
【0022】
また、図1のリズムの欄に示されるように、これらの報知音にはそれぞれの分類を区別して連想させるリズムが付加される。操作音はキーを叩いたかのような歯切れのよい短音のリズムであり、調節音は変化と伸長を連想させる短音に続く長音のリズムとする。スタート音はファンファーレや映画の新たなシーンに採用される独特のメロディーのように複数の3つの短音に続く長音のリズムとする。
【0023】
停止音ないし取り消し音は走行を即座に停止するときのように短音を2つ続ける。運転終了音は交響曲や童謡の終わりのように動から静へと4つの短音につづく長い長音のリズムとする。警告音は最も注意を喚起するように短音2つを3回連続するか短音3つを3回連続するリズムとする。そして、お知らせ音は注意を喚起し遠くに伝えるような3つの短音につづく長音のリズムとする。
【0024】
同様にして、図1の抑揚の欄に示されるように、これらの報知音にはそれぞれの種類を区別して連想させるように全体に抑揚や強弱が付加される。操作音は歯切れよくスタッカートで、調節音は出力を増大するときあるいは設定条件を大きくするときにはだんだん強くなるクレッシェンドで、出力を減少あるいは設定条件を小さくするときにはだんだん弱くなるデクレッシェンドにする。
【0025】
スタート音は運転速度が上がるようにクレッシェンド、停止音ないし取り消し音は歯切れよいスタッカート2つとし、運転終了音は運転速度が下がるようにデクレッシェンドかアダージョでそれらにスタッカートを付す。警告音はアクセントを最初の音に付け短いデクレッシェンドを3つ続ける。お知らせ音はアクセントを最後の音に付けたクレッシェンドを3つ続ける。
【0026】
さらに、これらの報知音には報知音の最後尾かあるいは報知音を形成する個々の音の後尾に余韻を付加している。報知音に余韻、即ち個々の音の後尾にその音の出力レベルが漸減する音の要素を付加すれば報知音はまろやかになり自然で高質な報知音になる。
【0027】
このようにして記号化されて複数の種類に分類され、音階を付加され、リズムを付加され、抑揚を付加されかつ、余韻を付加されたこれらの報知音は時間に対する周波数と音圧をパラメターとする波形で表されるとともに、音階とリズムと抑揚とを組み合わせたものは楽譜に音符で記載して表現することができる。
【実施例】
【0028】
図2は本発明の電気機器の報知装置の報知音の実施例を示す図である。
【0029】
図2の音符の欄と波形の欄に示されるように、それぞれの報知音を4分の4拍子の1小節とすればハ長調で表すと、操作音はソの音で4分音符のみ、周波数783Hzの波形が0.15秒で0.35秒の余韻が続く。調節音は出力を大きくするときソの音の16分音符に続き高いドの音の4分音符の組み合わせで、周波数783Hzの波形が0.12秒続き周波数1046Hzの波形が0.12秒で0.36秒の余韻が続き、出力を小さくするときにはソの音で16分音符に続き低いドの音の4分音符の組み合わせで、周波数783Hzの波形が0.12秒続き周波数523Hzの波形が0.12秒で0.36秒の余韻が続き、中間あるいは標準値の設定は操作音と同様とする。
【0030】
スタート音はミ、ソ、ド、ミと32分音符の後に同じミの音の4分音符が続き周波数659Hz、周波数783Hz、周波数1046Hzの波形がそれぞれ0.06秒続き周波数1318Hzの波形が余韻を含めて0.3秒続く。停止音ないし取り消し音はソの音と高いミの音との和音の8分音符が2つあり、周波数783Hzと周波数1318Hzの波形の合成音が0.36秒の余韻のあるべきものが消滅することなく0.24秒あり、続いて余韻とともに和音が0.36秒で消滅する。
【0031】
運転終了音はシの音の8分音符とソの音とラの音の16分音符とシの音とソの音の8分音符と高いドの音の4分音符が2つ続き、終わりが減衰する周波数987Hzの波形が0.24秒、ただちに減衰する周波数783Hzの波形と周波数880Hzの波形がそれぞれ0.12秒づつ、終わりが減衰する周波数987Hzと周波数783Hzの波形がそれぞれ0.24秒づつ、さらに周波数1046Hzの波形が0.35秒の余韻を含んで0.48秒間2つ続くが、電気機器の設置場所や遠近により休止時間を加えて複数回繰り返してもよい。警告音は高いミの音の16分音符とドの音の8分音符と16分音符の組みが3回連続し、周波数1318Hzの波形が0.12秒でただちに減衰し0.36秒の余韻を含む周波数1046Hzの波形が0.36秒続く組みが3回連続し休止時間の後継続して
あるいは複数回繰り返す。
【0032】
お知らせ音はソ、レ、シ、ソと16分音符の後に同じソの音の4分音符が続く組み合わせが2回連続し、周波数783Hzと周波数587Hzと周波数987Hzと周波数783Hzの波形が0.06秒づつ続き同じ周波数783Hzの波形が0.36秒の余韻を含んで0.48秒続く組み合わせが2回連続し休止時間の後これらを複数回繰り返す。
【0033】
図3はこれら7種類の報知音の識別率に関する聞き取り試験を行った結果を示すもので、26人の被試験者それぞれに操作音からお知らせ音までの7種類の報知音をランダムな順序で合計3回発生してどの報知音と認識するかを試験したものであり、一回目はスタート音とお知らせ音の識別率がそれぞれ26人中8人で30.8%と低く、取り消し音の識別率が26人中3人で11.5%と特に低いが、その他の報知音は一回目すなわち、はじめて聞いたのにもかかわらず60%以上の高い識別率を示している。
【0034】
さらに、2回目や3回目になると識別率はすべて60%以上の高い値を示し操作音や調節音では100%を示している。また、2回目と3回目で識別率が飽和して高い値になってしまうことは、1回目が例外を除いて比較的高い識別率であることとあいまって、本発明の報知装置の報知音は、はじめて聞いた人でも誤認識なく識別できるような報知音であることを示すことにほかならない。
【0035】
さらに、図4は報知音の個々からその意味を感じとれるかどうかについて聞き取り試験した結果を示すもので、これまで報知音として用いられてきた現行音と本発明の報知装置の報知音とを26人の被試験者それぞれに調節音からお知らせ音まで順番に発生し、感じない、やや感じない、普通、やや感じる、感じるの5段階に評価してデータを採取し意味を感じた人の割合を算出したものである。この聞き取り試験でやや感じる人と感じると答えた人とを報知音自信のもつ意味を感じ取った人として、その割合を現行音と本発明の報知音とを比較して示している。
【0036】
図4のグラフに付記された数字が示すように、調節音では現行音が26人中4人で15.4%でそれに比べ本発明の報知音が17人で65.4%、同様にスタート音と取り消し音は現行音が約10%の値でそれに比べて本発明の報知音ははるかに高い値を示している。終了音と警告音とお知らせ音の場合は現行音とともに本発明の報知音も高い値を示している。このように本発明の報知音では現行音に比べてはるかに高いか、同等であれば極めて高い割合で意味を感じたとする結果が得られており、このことは本発明の報知装置の報知音自身が強く意味付けされていることを示すことにほかならない。
【0037】
ここで、現行音の周波数はすべて2.5kHzであり、調節音とスタート音と取り消し音とが同一で0.1秒の単音、終了音が2秒間の連続する音で、警告音エラー音が0.1秒の音が1秒周期で10回続く音、お知らせ音は0.5秒の音が1秒周期で10回続く音であって現行音に電子レンジなどで用いられている報知音を採用した。
【0038】
この聞き取り試験の結果をみれば、本発明の報知装置の報知音はスタート音を除いてすべて50%以上の高い値を示しており、あきらかに報知音そのものが意味付けされていることを示している。
【0039】
図5は操作音の長さに関する聞き取り試験と警告音とお知らせ音の周期に関する聞き取り試験を行った結果を示すもので、特定の長さの操作音を聞いたときに56人の被試験者のそれぞれが長いと感じるとき+1を示し、少し長いと感じるとき+0.5を示し、短いと感じるとき−1を示し、少し短いと感じるとき−0.5を示すように決めて、操作音の発生時間を変えたときの被試験者全員の示す数値の平均値を示したものであり、それらの平均値が長くも短くもない普通と感じる最適な発生時間の長さは図3の平均値0の近辺の領域にあるように0.45秒から0.65秒の間にあり、0.7秒や0.9秒では少し長いと感じる結果が示されている。
【0040】
警告音は同じ音の組み合わせが3個続いて一旦休止することを継続的にあるいは複数回繰り返すものであるが、同じ音の発生時間の周期を変えたとき24人の被試験者の80%以上が最適と感じる周期は0.3秒から0.4秒であることが示されている。そして、同様にお知らせ音は同じメロディーを2個連続し一旦休止することを複数回繰り返すものであるが、同じメロディーの周期を変えたとき56人の被試験者の80%以上が最適と感じる周期は1.0秒から2.0秒であることが示されている。
【0041】
これらの報知音は余韻を含み、それがまろやかさと高質感を与えているが、お知らせ音の特に短い音の要素を除いてそれぞれの報知音を形成する音の要素のほとんどに余韻を含んでおり、余韻の長さは余韻を含む個々の音の発生時間のそれぞれ1/3以上の時間を占めている。
【0042】
さらに、運転終了音と警告音とお知らせ音は休止時間を加えて複数回あるいは継続的に発生されるが、聞き取り試験によれば休止時間についても2秒を越えると違和感を覚える結果が得られたので、休止時間を2秒以内に設定した。 本発明はまた、複数の電気機器のそれぞれに固有の似つかわしい音色を割り当てることにより、複数の電気機器が同時に動作しても異なる音色の報知音によりそれぞれの動作の確認が容易になる。
【0043】
例えば、電子レンジはピアノ調、洗濯機はビブラホーン調、エアコンはハープ調なりピッコロ調にし、さらに、楽器の音色のみならず、各種の音響的な加工を行い衣類乾燥機にはかすれた乾いた音を、加湿機には重い湿った音を割り当てたり、動物の鳴き声を割り当ててもよく冷蔵庫には象かカバの鳴き声を、ドアホンやインターホンにはキツツキの木を穿つ音を割り当ててもよい。
【0044】
報知音を作成する方法として、これら動物の鳴き声などを録音しよく知られたサンプリング再生手段によって音階をもつ報知音にする方法と、シンセサイザーを用いた人工加工音によるものなどもある。
【0045】
図6に本発明の電気機器の報知装置の回路ブロック図を示す。
【0046】
本発明の報知装置は発音手段として半導体回路や半導体メモリからなるよく知られたメロディーIC1と増幅部2とスピーカ等の発音体3とからなる。メロディーIC1は発生したい音の基本的な波形を生成する音源の選択とその周波数と発生時間と減衰や拡大などのデータを(図示しない)専用の設定手段を用いて一連の曲としてあらかじめ設定入力でき、複数の曲をそれぞれデジタル情報として曲目音符データ(1)から曲目音符データ(n)まで内部のメモリ11に記憶することができる。
【0047】
図2の報知音を(図示しない)専用の設定手段を用いて順次、操作音を曲目音符データ(1)として記憶し、調節音を曲目音符データ(2)に、同様にしてお知らせ音を曲目音符データ(7)としてメモリ11に記憶する。いま、電気機器の制御全体を行う主制御部4が特定の報知音を発生しようとして曲選択信号と曲演奏開始信号を出力し、メロディーIC1がそれらの信号を受信すると制御部12はメモリ11の中から特定の曲目音符データを選択し、音源部13を制御して選択された曲をデジタル信号形式の曲目に変換する。デジタル信号形式の曲目はDA変換部14でアナログ信号となり、外部の増幅部2に出力され増幅されてスピーカ等からなる発音体3を駆動して選択された特定の報知音を発生する。
【0048】
さらに、電気機器の設置環境や周囲の騒音度に応じて報知音の音色と音圧と音長を変えてもよく、これらは、メロディーIC1にあらかじめ報知音のそれぞれに音色と音圧と音調の互いに異なる複数の報知音を(図示しない)専用の設定手段によって設定入力しておき、音符に表現されるような報知音の有機的な関係を失うことなく各種の調節は報知音の選択を変えることにより容易に実現される。
【0049】
このようにして、周囲の騒音に含まれない周波数帯に着目して音階を転調させ、低い音を発生して聞き取りやすくしたり、電気機器の使用者が近くにいるときは小さい音で、離れているときには大きな音にすることもでき、使用者が応答しないときには音圧や音長を次第に大きくしたり速いテンポにするようなこともでき、報知音に重み付けをして警告音のような重要な報知音ほど大きくすることもできる。
【0050】
スタート音や終了音では設定した運転時間が長かったり自動運転の時間が長いときには普通より長く大きくしてもよい。さらに、報知音を新たな迫力のあるものにしたり、楽器をつぎつぎに加えて音を喧噪化してゆく方法もあり、音声合成回路を設ければ報知音によっては音を音声に変えることもできて一層認識しやすくなる。
【0051】
これらの報知音や報知音のいくつかの音の要素を複数の周波数の音で合成すれば、単一の周波数のみによる透明ゆえの物足りなさを生ずることもなく自然な感じを与えることができる。特に、報知音が和音や不協和音に合成されれば高質化し表現力が拡大する。
【0052】
そして、難聴の高齢者でも比較的容易に聞き分けることのできる1.5kHz以下の低い周波数を主成分とする音を報知音の一部あるいは全部に含むように合成すれば、同じ報知装置であっても他の世代にも違和感なく受け入れられ、この周波数を含まないときのように報知音を特別に大きくしたりする必要がない。
【0053】
ほかにも、電気機器のテストモードで電気機器の状態を表示装置に表示しようとして表示能力が不足するとき、報知装置の報知音を利用することにより表示能力の不足を補って多くのテスト結果を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の報知装置の報知音の概要を示す説明図
【図2】本発明の報知装置の報知音の実施例を示す図
【図3】本発明の報知装置の報知音の識別率に関する聞き取り試験の結果を示す図
【図4】本発明の報知装置の報知音の意味付けに関する聞き取り試験の結果を示す図
【図5】本発明の報知装置の報知音の長さと周期に関する聞き取り試験の結果を示す図
【図6】本発明の報知装置の回路ブロック図
【符号の説明】
【0055】
1 メロディーIC
2 増幅部
3 発音体
4 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の操作の確認と動作状態の報知を行うために相互に異なる複数種類の報知音を決定する電気機器の報知音の決定方法であって、
前記報知音は、楽譜に音符を用いて記載して表現可能な音であり、かつ、音階とリズムと強弱という分解された複数の音楽的要素を組み合わせたものであり、前記複数種類の報知音のそれぞれの意味を区別して当該電気機器の使用者が連想することができるように、一つの分類の報知音に含まれる前記音楽的要素のすべてを他の分類の報知音に含まれる前記音楽的要素のすべてと異ならせることを特徴とする、電気機器の報知音の決定方法。
【請求項2】
前記音階は、高音階、中音階、低音階、または、それらの組み合わせを含み、前記リズムは、長音、短音、または、それらの組み合わせを含み、前記強弱は、漸強もしくは漸弱の変化、または、アクセントによる強調を含むように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の電気機器の報知音の決定方法。
【請求項3】
前記複数種類の報知音を前記電気機器の複数の使用者に試聴させ、前記複数種類の報知音のそれぞれの分類を区別して当該電気機器の使用者が連想することができるように複数の報知音を電気機器の報知音として設定することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電気機器の報知音の決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−217026(P2008−217026A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96766(P2008−96766)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【分割の表示】特願2003−9257(P2003−9257)の分割
【原出願日】平成7年10月4日(1995.10.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】