説明

電気機器の巻き線用の連結装置

【課題】向上された冷却が達成される連結装置を提供する。
【解決手段】電気機器の固定子巻き線用の連結装置が、複数の相連結部11を有する。各相連結部11は、複数の導管12を有する。各導管12は、環状の形又は環状の扇形を成し且つ複数の連結端部20a,20bを有する。各相連結部11のこれらの導管12が、半径方向に位置をずらされている。半径方向に位置をずらされた導管12は、半径方向に積み重ねられている。導管12と好ましくは連結端部20a,20bとは、冷媒を通流させてこれらの導管12と連結端部20a,20bと冷却するために管状の形を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の巻き線用の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器は、双方ともケーシング内に収容される固定子及び回転子を有する。
【0003】
当該固定子は、相リングに連結されていて、次いでケーシングを貫通しているブッシングに連結されている固定子の巻き線を有する。
【0004】
従来では、固定子の巻き線は、各相に対して1つの巻き線を有し(図9)、相リングが、各相に対して1つの導管を有する。
【0005】
発電出力を増大させるため、各相に対する複数の並列巻き線が提供され得る(図10)。同様に、各相に対する複数の平行導管を有する相リングが提供され得る。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0188030号明細書は、3つの相を有する複数の相リングを開示する。各相は、縦軸方向に揃えられた3つの平行な、曲げられたバー又は板から作られた導管を有する。
【0007】
導管の冷却が、電気機器内で循環するガス(水素又は空気)によって達成される。
【0008】
これらの相リングが、運転中に良好であることが実証されているものの、発電出力をさらに増大させるためには、冷却が向上されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0188030号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、向上された冷却が達成される連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題及びその他の課題は、特許請求の範囲に記載の連結装置によって解決される。
【0012】
利点として、当該連結装置は、縦軸方向に小さいサイズを有する。
【0013】
さらなる特徴及び利点が、付随する図中の限定しない例によって示された好適であるものの限定的でない連結装置の実施の形態から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】連結装置の正面図である。
【図2】連結装置の第1方向からの第1側面図である。
【図3】連結装置の第2方向からの拡大された第2側面図である(この第2方向は、第1方向に対して90°を成す)。
【図4】本発明による連結装置を有する電気機器の一部を示す。
【図5】導管の断面図である。
【図6】連結装置を有する電気機器の端部を概略的に示す。
【図7】連結装置の保持器の正面図である。
【図8】連結装置の保持器の側面図である。
【図9】1相当たり1つの巻き線を有する単相の巻き線図である。
【図10】1相当たり3つの巻き線を有する単相の巻き線図である。
【図11】連結装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
電気機器1は、異なる実施の形態では発電機又は電動機でもよい。以下では、タービン同期発電機(つまり、ガスタービン又は蒸気タービンに連結される発電機)のような発電機について説明する。
【0016】
電気機器1は、双方ともケーシング4内に収容された固定子2と回転子3とを有する。
【0017】
固定子3は、複数の相を有する(例えば、この固定子3は、三相の固定子又は3つ以上の相を有する多相の固定子である)。
【0018】
各相は、複数の巻き線6を有する。各巻き線6は、(固定子2のスロット内に収容された)複数のバー7から成る。
【0019】
これらの巻き線6は、電気機器1の巻き線用の連結装置10に接続されている。
【0020】
この連結装置10は、複数の相連結部11を有し、各相連結部11は、複数の導管12を有する。図4は、図11の線IV−IVに沿った位置での連結装置10の断面図である。図11では、(1つの相連結部11を示す)各線が、複数の導管12(この例では、図4中に示された3つの導管12)を示す。これらの導管12が2つ又は4つ以上でもよいことは明らかである。
【0021】
これらの導管12は、互いに隔絶していて且つ電気的に並列な導管である。
【0022】
各導管12は、好ましくは半径方向Rを画定する環状の形又は環状の扇形を成し且つ連結端部20a,20bを有する。
【0023】
各相連結部11の導管12が、半径方向に位置をずらされている(つまり、これらの導管12の、電気機器1の縦軸16と連結装置10の縦軸19とからの距離が異なる)。
【0024】
利点となるように、当該半径方向に位置をずらされた導管12は、半径方向に積み重ねられている。つまり、各相連結部11の導管12が、連結装置10の縦軸19(この縦軸19は、縦軸16と一致する)に対して垂直な平面17内にほぼ存在する。
【0025】
これらの連結端部は、巻き線6用の内側連結端部20aとブッシング21(これらのブッシング21は、ケーシング4の内部をこのケーシング4の外部に繋げる)用の連結端部20bとから成る。
【0026】
導管12と好ましくは連結端部20a,20bとは、冷媒を通流させてこれらの導管12と連結端部20a,20bと冷却するために管状の形を成す。
【0027】
当該冷媒が、導管12に到達し及び/又は連結端部20a,20bを経由してこれらの導管12から流出できるものの、この特徴は必須でない。
【0028】
これに加えて又はこれとは別に、導管12及び/又は連結端部20a,20bは、これらの導管12の内部をこれらの導管12の外部に繋げる孔22,23,24を有してもよい。これらの孔22−24は、これらの導管に流入させてこれらの導管を冷却するために電気機器の内部に含まれているガスを冷却することを可能にする。図11は、これらの孔が形成され得る複数の位置を1つの相連結部11(つまり、この相連結部11を構成する3つの導管12)に対して示す。
【0029】
異なる相連結部11の複数の導管12が、縦軸方向に互いに隣接している(図4参照)。
【0030】
連結装置10は、導管12用の幾つかの保持器25も有する。これらの保持器25は、円周に沿って互いに離れていて且つ互いに同じ間隔を成してもよいし又は互いに異なる間隔を成してもよい。
【0031】
各保持器25は、複数の継鉄26を有する。各継鉄26は、導管12用の座部27を有する。
【0032】
特に、各継鉄26の異なる座部27a,27b,27c,27dが、異なる相連結部11の導管12を収容するために配置されている(図8参照)。
【0033】
例えば、これらの継鉄26は、ボルト30又はその他の取り外し可能な構成要素によって互いに連結される。
【0034】
以下に、本発明の連結装置の主な作用を示す。
【0035】
各導管12が、巻き線6に接続されていて且つブッシング21にも接続され得る(図11)。
【0036】
当該連結装置10は、大規模な冷却を可能にし、したがって大電力を送電できる。
【0037】
大規模な冷却が、第一に導管の配置によって達成される。半径方向に積み重ねられた導管12、及び、(電気的な理由のために)縦軸方向に隣接した異なる相の複数の導管間の距離が、発電機内で循環する冷却ガスGの冷却効果を著しく向上させる。このことは、全ての導管12の大規模な冷却を可能にする。
【0038】
さらに、導管12の管状の形が、冷却をさらに向上させるための冷媒を導管12に通流させることを可能にする。
【0039】
導管12に通流する当該冷媒は、発電機の冷媒と同じ冷媒Gでもよい。図中では、LPが、より低い圧力にある発電機の区域を示し、HPが、より高い圧力にある発電機の区域を示す。さらに、テフロンパイプ31が、発電機の内部(HP区域)から導管12及び連結端部20a,20bを経由してLP区域に向かって循環する冷媒を可能にするために使用される。
【0040】
第1の例では、ガスが、導管12の中央部の孔23(これらの孔は、HP区域内で開いている)を通じてこれらの導管12に流入でき、導管12の端部の孔22,24(これらの孔は、テフロンパイプ31を経由してLP区域に繋げられている)を通じて流出できる。
【0041】
第2の例では、ガスが、導管12の端部の孔22,24(これらの孔は、HP区域内で開いている)を通じてこれらの導管12に流入でき、これらの導管12の中央部の孔23(これらの孔23は、テフロンパイプ31を通じてLP区域に繋げられている)を通じて流出できる。
【0042】
第3の例では、ガスが、導管12の複数の端部のうちの1つの端部の孔22(これらの孔は、HP区域内で開いている)を通じてこれらの導管12に流入でき、その他の端部の孔24(これらの孔24は、テフロンパイプ31を通じてLP区域に繋げられている)を通じて流出できる。
【0043】
半径方向に積み重ねられた導管を有する当該特別な配置が、連結装置10の縦軸方向のサイズを減少させる結果、(定められた発電機の長さに対して)縦軸方向により大きい能動部分又は(定められた能動部分の長さに対して)縦軸方向により小さい発電機が製造され得る。
【0044】
特に、使用される材料及び寸法が、要求及び従来の技術に応じて任意に選択され得る。
【符号の説明】
【0045】
1 電気機器
2 固定子
3 回転子
4 ケーシング
6 固定子の巻き線
7 固定子の巻き線のバー
10 連結装置
11 連結装置の相連結部
12 連結装置の相連結部の導管
16 電気機器の縦軸
17 平面
19 連結装置の縦軸
20a 連結装置の相連結部の導管の内側連結端部
20b 連結装置の相連結部の導管の外側連結端部
21 ブッシング
22 孔
23 孔
24 孔
25 保持器
26 保持器の継鉄
27 保持器の継鉄の座部
27a,27b,27c,27d 保持器の継鉄の保持器
30 ボルト
31 テフロンパイプ
C1,C2,C3 矢印
G 冷却ガス
HP 高圧区域
LP 低圧区域
R 半径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相連結部(11)を有する電気機器(1)の巻き線(6)用の連結装置(10)であって、各相連結部(11)が、隔絶された複数の導管(12)を有する当該連結装置(10)において、
各相連結部(11)の当該隔絶された複数の導管(12)が、半径方向に位置をずらされていることを特徴とする連結装置(10)。
【請求項2】
当該隔絶された複数の導管(12)の各々が、環状の形又は環状の扇形を成し且つ複数の連結端部(20a,20b)を有することを特徴とする請求項1に記載の連結装置(10)。
【請求項3】
当該隔絶された複数の導管は、電気的に並列な複数の導管であることを特徴とする請求項2に記載の連結装置(10)。
【請求項4】
当該半径方向に位置をずらされている複数の導管(12)は、半径方向に積み重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の連結装置(10)。
【請求項5】
前記導管(12)は、管状の形を成すことを特徴とする請求項1に記載の連結装置(10)。
【請求項6】
異なる相連結部(11)の前記複数の導管(12)が、縦軸方向に互いに隣接していることを特徴とする請求項1に記載の連結装置(10)。
【請求項7】
前記複数の連結端部(20a,20b)は、前記電気機器(1)の巻き線(6)用の内側連結端部(20a)及び前記電気機器(1)のブッシング(21)用の外側連結端部(20b)を有することを特徴とする請求項2に記載の連結装置(10)。
【請求項8】
前記連結装置(10)は、前記複数の導管(12)用の少なくとも1つの保持器(25)を有し、各保持器(25)は、複数の継鉄(26)を有し、各継鉄(26)は、前記複数の導管(12)用の複数の座部(27,27a,27b,27c,27d)を有することを特徴とする請求項1に記載の連結装置(10)。
【請求項9】
各継鉄(26)の異なる複数の座部(27a,27b,27c,27d)が、異なる複数の位相連結部(11)の複数の導管(12)を収容するために配置されていることを特徴とする請求項8に記載の連結装置(10)。
【請求項10】
固定子(2)と回転子(3)とを有する電気機器(1)において、
前記固定子(2)が、複数の相を有し、
各相が、複数の巻き線(6)を有し、
これらの巻き線(6)が、請求項1に記載の連結装置(10)に接続されている当該電気機器(1)。
【請求項11】
前記複数の導管(12)及び/又は前記複数の連結端部(20a,20b)は、管状の形を成し且つ冷却用の複数の孔(22,23,24)を有することを特徴とする請求項10に記載の電気機器(1)。
【請求項12】
前記電気機器(1)は、発電機であることを特徴とする請求項10に記載の電気機器(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−63015(P2013−63015A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200088(P2012−200088)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】