説明

電気機器の梯子取付構造

【課題】電気機器本体に梯子を取り付ける際、電気機器本体の振動が梯子に伝わりにくくするとともに、電気機器全体を安価に構成することができるようにする。
【解決手段】変圧器タンク1に昇降用の梯子2を取り付ける際、変圧器タンク1において発生する振動が梯子2に伝わらないようにするために、変圧器タンク1と梯子2の間に振動を吸収するためのリング状のばね3を設置するとともに、梯子昇降時には、変圧器タンク1側の梯子支え5と梯子2側の梯子支え6をボルト21等によって固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変圧器及びリアクトル等の電気機器において保守点検作業などに使用するための昇降用梯子の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器及びリアクトル等の電気機器本体の保守等の際に使用する昇降用梯子の電気機器本体への取り付け方において、電気機器本体側に取り付けた踏み板付支え及び支えに、昇降用梯子をU字ボルトを使用して締め付ける方式で取り付けた構造があった(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平04−062900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の梯子取付構造は以上のように構成されているので、変圧器及びリアクトル本体の運転する際に発生する振動が梯子に伝達し、梯子が共振により大きく振動する恐れがあった。振動が大きければ騒音も大きくなり、更に振動が繰り返されることによって発生する荷重の影響により、梯子及び支えが疲労し、破壊してしまう恐れもある。
【0005】
特にリアクトルは本体の振動が大きく、梯子が大きく振動する恐れがある為、梯子の支持間隔を狭くして梯子自体を強固にする必要がある。このため梯子を取り付けるための金具を増やしたり、あるいは梯子の重量を大きくするために、梯子の材料を中空状の1B管からφ32の中実丸棒に変更したりしている。このような対策を行わねばならないので、対策検討時間も多くかかり、梯子自体も高価なものになってしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、電気機器本体と梯子との間にばねを介在させることにより、電気機器本体の振動が梯子に伝わりにくくするとともに、装置全体を安価に構成することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電気機器の梯子取付構造は、電気機器の振動が梯子に伝わらないようにするためのばねを電気機器と梯子の間に設置したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電気機器の梯子取付構造によれば、電気機器の振動が梯子に伝わらないようにするためのばねを電気機器と梯子の間に設置したので、電気機器本体の振動が梯子に伝わり難くなり、梯子の振動を抑えることにより、梯子に対する特別な振動対策が不要となり、安価な梯子を用いることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電気機器の梯子取付構造を示す側面図、図2は図1のA方向から見た正面図である。図において、変圧器タンク1にはばね3を介して梯子2が取り付けられている。
【0010】
梯子2は背籠2a及び手摺り2bからなっており、又ばね3は梯子2が振動するのを抑制するために取り付けられたものであり、梯子2を使用しないときはこのばね3によって梯子2を支えている。尚図においては変圧器タンク1に梯子2を取り付ける場合ついて説明しているが、他の電気機器、例えばリアクトル等に梯子2を取り付ける場合であっても同様に構成される。
【0011】
図3はばね3部を示す拡大側面図であり、ばね3はリング状に形成されるとともに、ボルト4によって梯子2及び変圧器タンク1に固定されている。このばね3は商用周波数である50Hzあるいは60Hzの倍(100Hz,120Hz)のn倍(即ち100n、120n:nは自然数)の周波数と共振しないようなばね定数Kを持っているものである。
【0012】
このようなばね3で梯子2を支える事により、ばね3が変圧器タンク1で発生した振動を吸収するので、変圧器タンク1の振動が梯子2に伝わり難くなるものである。変圧器タンク1には梯子2昇降時に使用される梯子支え5が設置されているとともに、梯子2にも昇降時に使用される梯子支え6が設置されている。
【0013】
図4は梯子支え部を示す拡大側面図であり、梯子2を使用していないときの状態を示している。
梯子2を使用していないときには、図4に示すように、梯子支え5,6の間には隙間があり、この箇所からは変圧器タンク1の振動は梯子2には全く伝わらない。
【0014】
変圧器タンク1には梯子昇降時揺れ止め用のストッパー7が設けられているとともに、梯子2にも梯子昇降時揺れ止め用のストッパー8が設けられている。図5はストッパー部を示す拡大側面図であり、これらストッパー7,8間にも隙間が設けられており、この箇所からも変圧器タンク1の振動は梯子2には全く伝わらない。
【0015】
上記変圧器タンク1からの振動とは、図1に矢印Bで示されるように、変圧器タンク1のタンク側板に対し垂直な方向に伝達される主に縦波成分からなる振動であり、その振幅は最大50μm程度のものである。そしてこの程度の振幅であれば、図5に示す隙間aは、タンク側板に対し垂直方向で10mmあれば十分である。
【0016】
又図5に示すように、上下方向の隙間bについては、変圧器タンク1の組立性などを考慮して10mm程度設ける必要がある。梯子2が振動することを抑制するためのばね3のばね定数Kは、商用周波数および梯子2の重量により変わる為、次の式に基づいて、梯子2の固有振動数fが100nあるいは120nとならないようにばね定数Kの値を定める。
【0017】
【数1】

【0018】
ここでfは梯子2の固有振動数、Kはばね1個のばね定数、Mは、梯子2の重量/ばね個数である。例えば梯子2の重量を100kg、ばね個数を4,梯子2の固有振動数fを54.6(Hz)としたとき、ばね定数Kは300となり、ばね定数Kが300となるばね3が使用されることになる。
【0019】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2による電気機器の梯子取付構造を示す側面図である。本実施形態においては、ばねの代わりにニトリル等からなる防振ゴム11を使用したものである。防振ゴム11は実施の形態1の場合と同様、商用周波数50Hzあるいは60Hzの倍(100Hz,120Hz)のn倍(即ち100n、120n:nは自然数)の周波数と共振しないようなばね定数Kを持ったものである。
【0020】
図7は防振ゴム11部を示す拡大側面図であり、防振ゴム11はボルト12によって梯子2及び変圧器タンク1に固定されている。
【0021】
このような防振ゴム11で梯子2を支える事により、防振ゴム11が変圧器タンク1で発生した振動を吸収するので、変圧器タンク1の振動が梯子2に伝わり難くなるものである。変圧器タンク1には梯子2昇降時に使用される梯子支え5が設置されているとともに、梯子2にも昇降時に使用される梯子支え6が設置されている。
【0022】
梯子2を使用していないときには、実施の形態1の場合と同様に、梯子支え5、6の間には隙間があり、この箇所からは変圧器タンク1の振動は梯子2には全く伝わらない。変圧器タンク1には梯子2昇降時揺れ止め用のストッパー7が設けられているとともに、梯子2にも梯子2昇降時揺れ止め用のストッパー8が設けられている。
【0023】
そして実施の形態1の場合と同様、これらストッパー7,8間にも隙間が設けられており、この箇所からも変圧器タンク1の振動は梯子2には全く伝わらない。
【0024】
上記変圧器タンク1からの振動とは、変圧器タンク1のタンク側板に対し垂直な方向に伝達される主に縦波成分からなる振動であり、その振幅は最大50μm程度のものである。そしてこの程度の振幅であれば、隙間はタンク側板に対し垂直方向で10mmあれば十分である。
【0025】
又上下方向の隙間については、変圧器タンク1の組立性などを考慮して10mm程度設ける必要がある。梯子2が振動することを抑制するための防振ゴム11のばね定数Kは、商用周波数および梯子2の重量により変わる為、次の式に基づいて、梯子2の固有振動数fが100nあるいは120nとならないようにばね定数Kの値を定める。
【0026】
【数2】

【0027】
ここでfは梯子2の固有振動数、Kは防振ゴム1個のばね定数、Mは、梯子2の重量/防振ゴム個数である。例えば梯子2の重量を100kg、防振ゴムの個数を4,梯子2の固有振動数fを54.6(Hz)としたとき、ばね定数Kは300となり、ばね定数Kが300となる防振ゴム11が使用されることになる。
【0028】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3による梯子支え部を示す拡大側面図であり、本実施形態は梯子昇降時における梯子固定構造に関するものである。図8において、梯子昇降時においては、梯子支え5,6はボルト21,ワッシャ22,ばね座金23及びナット24により梯子2を変圧器タンク1に固定する。
【0029】
そしてこのような固定構造は図2のC部に示すように、4カ所設ける。このように梯子昇降時においては、梯子2を強固に変圧器タンク2に固定することができることとなり、梯子昇降時における安全性を高めることができる。
【0030】
更にストッパー7,8は梯子昇降時の上下方向及び前後方向の揺れが大きくならない様にストッパーの役目をしている。左右方向の揺れについては、梯子2の強度が充分である為、特に考慮する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1による電気機器の梯子取付構造を示す側面図である。
【図2】図1のA方向から見た正面図である。
【図3】ばね部を示す拡大側面図である。
【図4】梯子支え部を示す拡大側面図である。
【図5】ストッパー部を示す拡大側面図である。
【図6】この発明の実施の形態2による電気機器の梯子取付構造を示す側面図である。
【図7】防振ゴム部を示す拡大側面図である。
【図8】この発明の実施の形態3による梯子支え部を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 梯子、3 ばね、5,6 梯子支え、11 防振ゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に昇降用の梯子を取り付けるための電気機器の梯子取付構造であって、上記電気機器の振動が上記梯子に伝わらないようにするためのばねを上記電気機器と上記梯子の間に設置したことを特徴とする電気機器の梯子取付構造。
【請求項2】
電気機器に昇降用の梯子を取り付けるための電気機器の梯子取付構造であって、上記電気機器の振動が上記梯子に伝わらないようにするための防振ゴムを上記電気機器と上記梯子の間に設置したことを特徴とする電気機器の梯子取付構造。
【請求項3】
昇降時に電気機器側に設けた梯子支えと梯子側に設けた梯子支えとを固定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気機器の梯子取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−124359(P2008−124359A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308863(P2006−308863)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】