説明

電気機器の電力管理方法

【課題】複数の電気機器により消費される電力量を管理するには特別な管理装置が必要になるか、特定の電気機器に電力管理の負荷が集中すること。
【解決手段】各電気機器は、各電気機器の消費電力を書き込む領域を有するデータ構造体を受け取ると、データ構造体の自電気機器に対応する領域に自電気機器の現在の消費電力を書き込んで、他の電気機器にデータ構造体を渡して巡回させるステップを有する。また、上記ステップでは、自電気機器の現在の消費電力とデータ構造体に書き込まれている他の電気機器の消費電力とから複数の電気機器の合計の消費電力を算出し、算出した合計の消費電力を閾値と比較し、比較の結果に基づいて自電気機器の消費電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気機器により消費される電力量を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力管理方法の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の電力管理方法では、管理装置または特定の電気機器が、システム全体の合計の消費電力の計算、省エネモードに移行させる機器の選択とその機器に対する指令の送信を集中管理することにより、システム全体の消費電力が閾値を超えないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力管理方法では、各電気機器の電力管理を担う特別な管理装置が必要になるか、或いは特定の電気機器が管理装置を兼ねる場合には特定の電気機器に電力管理のための余分な負荷がかかるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、上述したような課題、すなわち複数の電気機器により消費される電力量を管理するには特別な管理装置が必要になるか、特定の電気機器に電力管理の負荷が集中する、という課題を解決する電気機器の電力管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態にかかる電気機器の電力管理方法は、
複数の電気機器の消費電力を管理する方法であって、
各電気機器が、各電気機器の消費電力を書き込む領域を有するデータ構造体を受け取ると、上記データ構造体の自電気機器に対応する領域に自電気機器の現在の消費電力を書き込んで、他の電気機器に上記データ構造体を渡して巡回させるステップを有し、
上記ステップでは、
自電気機器の現在の消費電力と上記データ構造体に書き込まれている他の電気機器の消費電力とから上記複数の電気機器の合計の消費電力を算出し、
上記算出した合計の消費電力を閾値と比較し、
上記比較の結果に基づいて自電気機器の消費電力を制御する、といった構成を採る。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述したような構成を有するため、複数の電気機器により消費される電力量を管理する際に特別な管理装置が不要になり、また特定の電気機器に電力管理の負荷が集中することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における各サーバのハードウェア制御部のブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における各サーバのハードウェア制御部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるテーブルを用いた電力監視方法と電力を抑え込む制御の具体例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるテーブルを用いた電力監視方法と電力を抑え込む制御の具体例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるテーブルを用いた電力監視方法と電力を抑え込む制御の具体例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態においてサーバ全体の消費電力が閾値を下回るまでの過程を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の説明図である。
【図10】複数のサーバを共有の電源で稼働するシステムの一般的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態は、複数の電気機器U1〜Unから構成されている。各電気機器Uは、自律分散的に、全ての電気機器Uによって消費される電力の合計が予め設定された閾値を超えないように、自電気機器の消費電力を制御する機能を有する。
【0010】
各電気機器Uは、IT機器、家電製品などである。各電気機器Uは、図示しない電源から供給される電力によって動作する。
【0011】
また各電気機器Uは、他の電気機器Uと通信する通信手段T1〜Tnを有する。通信手段Tによる通信は、有線であっても良いし、無線であっても良い。複数の電気機器Uは、通信手段Tを使用して、データ構造体Dを電気機器U間で巡回させる制御手段C1〜Cnを有する。
【0012】
データ構造体Dは、各電気機器Uの消費電力を書き込む領域を有している。このデータ構造体Dの巡回は、各電気機器Uに他の電気機器Uの消費電力を認識させる情報共有の働きがある。
【0013】
各電気機器Uの制御手段Cは、データ構造体Dを受け取ると、データ構造体Dの自機器に対応する領域に自機器の現在の消費電力を書き込んで、他の電気機器Uにデータ構造体Dを渡して巡回させる。
【0014】
また制御手段Cは、データ構造体Dを受け取ると、自機器の現在の消費電力とデータ構造体Dに書き込まれている他の電気機器Uの消費電力とから、全ての電気機器Uの合計の消費電力を算出する機能と、算出した合計の消費電力を閾値と比較する機能とを有する。さらに制御手段Cは、比較の結果に基づいて自機器の消費電力を制御する機能を有する。例えば制御手段Cは、合計の消費電力が閾値を超えていれば、自機器を電力消費量のより少ない動作状態に切替える機能を有する。
【0015】
自機器を電力消費量のより少ない動作状態に切替える方法は、任意である。例えば電気機器UがCPUを有するIT機器等である場合、CPUを駆動するクロックの周波数を低下させることで、電力消費量を下げるようにしてもよい。また、電気機器Uが冷却用のファンを有する場合、ファンの回転数を低下させることで、電力消費量を下げるようにしても良い。
【0016】
次に本実施形態の動作を説明する。
【0017】
データ構造体Dを巡回させるルートを、電気機器U1→電気機器U2→電気機器U3→…→電気機器Un→電気機器U1とすると、1巡したデータ構造体Dが出発点の電気機器U1に戻って来た時点で、全ての電気機器Uの消費電力がデータ構造体Dに書き込まれている。
【0018】
電気機器U1の制御手段C1は、データ構造体Dを受け取ると、自機器U1の現在の消費電力とデータ構造体Dに書き込まれている他の電気機器U2〜Unの消費電力とから全ての電気機器Uの合計の消費電力を算出する。そして、電気機器U1の制御手段C1は、合計の消費電力を閾値と比較し、比較の結果に基づいて自機器U1の消費電力を制御する。例えば、合計の消費電力が閾値を超えていれば、電気機器U1の制御手段C1は、全電気機器合計の消費電力を下げるために、自機器を電力消費量のより少ない動作状態に切替える。そして、電気機器U1の制御手段C1は、データ構造体Dの自機器に対応する領域に自機器の現在の消費電力を書き込んで、電気機器U2にデータ構造体Dを渡す。
【0019】
データ構造体Dを受け取った電気機器U2の制御手段C2は、電気機器U1の制御手段C1と同様の動作を行う。これにより、合計の消費電力がなおも閾値を超えていれば、電気機器U2の制御手段C2は、全電気機器合計の消費電力を下げるために、自機器を電力消費量のより少ない動作状態に切替える。そして、電気機器U2の制御手段C2は、データ構造体Dの自機器に対応する領域に自機器の現在の消費電力を書き込んで、電気機器U3にデータ構造体Dを渡す。
【0020】
同様の動作が電気機器U3以降の電気機器で繰り返されることにより、全電気機器合計の消費電力は閾値を下回るように低減されていく。
【0021】
このように本実施形態によれば、複数の電気機器Uにより消費される電力量を管理する際に特別な管理装置が不要になり、また特定の電気機器に電力管理の負荷が集中することがなくなる。
【0022】
また、データ構造体Dの巡回は、各電気機器Uに他の電気機器Uの消費電力を認識させる情報共有の働きに加えて、消費電力を抑え込む電気機器を一時には一つの電気機器に限定する働きがある。このため、消費電力を抑え込む制御が原因で全電気機器の合計消費電力が急激に変動することを防止することができる。
【0023】
本実施形態は各種の付加変更が可能である。例えば、電気機器Uの制御手段Cは、全電気機器合計の消費電力が閾値を超えていなければ、自機器を電力消費量のより多い動作状態に切替える機能を有していても良い。このとき使用する閾値は、電力消費量のより少ない動作状態に切替える際の閾値と同じ値であっても良いし、それより小さな値であっても良い。
【0024】
[第2の実施形態]
[概要]
本実施形態は、複数のサーバ(情報処理装置)が、電源を共有しているハードウェア構成であるとき、各サーバは共有電源の容量を超えないように電力制御を行うことができ、サーバ間の通信によって各サーバの消費電力を情報共有することができる。
【0025】
そのために本実施形態では、各サーバ内にそれぞれテーブルを持たせる。このテーブルには、自サーバを含む全サーバの消費電力測定値を記録するエントリがあり、これを参照すれば、どのサーバがどれだけ電力を消費しているかが分かる。
【0026】
また、この消費電力の情報を共有するため、サーバ内にあるBMC(Base Management Controller)などのハードウェア制御回路が、テーブル内の情報を、通信で他サーバと受け渡しする。
【0027】
また、サーバがこのテーブル情報を受け取ったとき、以下の処理を実行する。
・自サーバの現在の消費電力が何Wなのかをテーブルに書き込む。
・テーブルを参照し、全サーバの合計消費電力を確認する。
・全サーバの消費電力と電力閾値を比較し、消費電力が閾値を超えた場合(=電源の余力が無い場合)は、電力を抑え込み、消費電力を下げる省電力制御を行う。
【0028】
本実施形態は、以上のような制御を行うことで、動的に電力監視・制御を行い、小さい容量の電源での運用を可能にする。
【0029】
[構成の説明]
図10は複数のサーバ1、2、3が、電源4を共有しているハードウェア構成であるときの一般的な構成を示す図である。分電盤などの電力設備から電源4に給電し、電源4から分配ケーブル5を経由してサーバ1、2、3に給電される。また、サーバ1、2、3は内部にハードウェア制御部11、12、13を持っている。ただし、CPU、メモリ等の本発明と直接関連が無い部品については省略している。例えば最大消費電力が300Wのサーバ3台(サーバ1〜3)が1台の電源4を共有しているとき、3台全てが最大負荷の時を考慮し、電源容量が900W以上の電源4を選定することが一般的である。
【0030】
図2は本発明の第2の実施形態の構成例を示すブロックである。サーバ1、2、3が電源6を共有している。電源6の容量は、3台のサーバ1,2,3の最大消費電力の合計900Wより少ない700Wである。
【0031】
サーバ内にあるハードウェア制御部11、12、13は、相互の通信のため信号線7で接続し、他サーバのハードウェア制御部と通信可能である。通信は、LANなど、一般的な通信の手段を利用することができる。本実施形態では、各サーバで通信を行いながら、全サーバの消費電力の合計が700Wを超えないように制御する。
【0032】
図3は、ハードウェア制御部11のブロック図である。他のハードウェア制御部12、13も同じ構成である。図3においては、本発明と直接関連が無い部分については省略している。
【0033】
ハードウェア制御部11は、プロセッサ101とプログラムROM102とローカルメモリ103とを有している。ハードウェア制御部11は、BMC(Base Management Controller)のような、サーバ内のハードウェアを管理するコントローラーを想定している。また、サーバには省電力制御を行う機能があることが前提となる。
【0034】
なお、本実施形態で使用するテーブルTBは、サーバの識別番号とそのサーバの消費電力を組にして保持できるデータ構造体であり、ローカルメモリ103内に格納されている。更に他サーバとテーブル情報の送受信ができるようになっている。
【0035】
[動作の説明]
図4は本実施形態の動作を示すフローチャートである。図5〜図7はテーブルを用いた電力監視方法と電力を抑え込む制御の具体例を示す。以下図4〜図7を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0036】
まず、図4を参照して本実施形態の全体の動作について説明する。図3のプログラムROM102には、図4のフローを実現するプログラムが格納されており、プロセッサ101がこのプログラムを読み込んで処理を行う。
【0037】
まず、プロセッサ101が、消費電力のテーブル情報を受け取っている状態であるか否かを確認する(ステップS1)。例えばサーバ1のハードウェア制御部11内のプロセッサ101が、通信インターフェースを通して他サーバからテーブル情報を受け取ると、その情報をローカルメモリ103に保存する。この処理が終わって初めて、次の処理(ステップS2)に進むことができる。そのため、サーバ2、3は他サーバからテーブル情報を受け取るまで次の処理(ステップS2)に進まない。
【0038】
次にプロセッサ101は、自サーバの現在の消費電力をローカルメモリ103のテーブルに書き込む(ステップS2)。サーバ1のプロセッサ101がテーブルを受け取っている場合、プロセッサ101は電力センサ(図示せず)から、現在自サーバが何Wを消費しているかを確認し、ローカルメモリ103のテーブルに消費電力を書き込む。テーブルの構造は、図5〜図7に示してあるように、サーバ1の消費電力はxW、サーバ2の消費電力はyW、…と各サーバの消費電力がそれぞれ保持される構造になっている。この処理により、テーブル内の自サーバの消費電力情報が最新の状態に更新される。
【0039】
図5および図6では、テーブルの状態遷移について例示している。状態(1)(図面では丸付き数字。以下同じ)では、サーバ1が現在の消費電力をテーブルに入力し、次のサーバ2にテーブル情報を渡す。状態(2)では状態(1)と同様に、サーバ2が現在の消費電力をテーブルに入力し、次のサーバ3にテーブル情報を渡す。状態(3)も同様に、サーバ3が現在の消費電力をテーブルに入力し、次のサーバ1にテーブル情報を渡す。このように、(1)、(2)、(3)、…とテーブル情報のやり取りを繰り返す。2週目以降は、電力は上書きされていく。
【0040】
次にプロセッサ101は、各サーバの消費電力がローカルメモリ103のテーブルに保持されているか否かを確認する(ステップS3)。サーバ起動直後は、テーブルに何も情報が入っておらず、各サーバは現在何Wを消費しているか分からない。テーブル内の情報受け渡しがサーバ1、2、3、1と1週することにより、全サーバで前述の消費電力の書き込み処理(ステップS2)が行われ、各サーバの消費電力がテーブルに保持された状態になる。現在の技術では、テーブルへの値の書き込みと他サーバとの受け渡しの処理時間をミリ秒単位まで短くできるので、テーブル内の各サーバの消費電力値はほぼ現在の値とみなすことができる。
【0041】
各サーバの消費電力がテーブルに保持されると、プロセッサ101がローカルメモリ103のテーブルを参照することで、全サーバ合計の消費電力が何Wなのかを計算して求められ、確認が可能となる(ステップS4)。
【0042】
次にプロセッサ101は、全サーバ合計の消費電力が、閾値を超えていないか確認する(ステップS5)。合計の消費電力が、電源容量の700Wを超えないように、ここでは例として680Wを閾値と設定している。この閾値は、ローカルメモリ103に格納されており、ユーザがハードウェア制御部11にアクセスして、閾値を任意に設定できるようになっている。
【0043】
確認した結果、合計の消費電力が閾値を超えていなければ、自サーバの処理は終了し、プロセッサ101は通信インターフェースを通して次のサーバにテーブル情報を渡す(ステップS7)。
【0044】
閾値を超えていれば、電源6の電力供給の余力が無い状態であることを意味するので、プロセッサ101はサーバの省電力制御機能を持った回路に対して、消費電力を抑える(省電力レベルを1段階上げる)制御をするよう命令を出す(ステップS6)。その後、次のサーバにテーブル情報を渡す(ステップS7)。
【0045】
以上のように、サーバは自分の消費電力と全サーバの消費電力を監視し、電力不足になる場合に独立して省電力制御を行う。
【0046】
(省電力レベルについて)
図7では、サーバ2がテーブル情報を受け取り、次のサーバ3にテーブル情報を渡すまでのプロセスを例示している。
【0047】
サーバ1からテーブル情報を受け取り、テーブルに保持されている現在の消費電力をアップデートする。前回書き込んだ時は200Wであったが、現在250Wを消費しているためテーブルのサーバ2の値を250Wに変更している。この結果、サーバ1,2,3合計の消費電力が700Wとなり、閾値の680Wを超えた状態、つまり電源の電力供給の余力が無い状態であることが分かる。
【0048】
サーバ2は省電力機能を持っており、消費電力の急上昇を防ぐと共に、電力の天井制御(上限制御)を行うことができる。また、天井値は複数段階設定できる。本実施形態では、現在サーバがどれだけ消費電力を抑えている状態なのかを示す指標として省電力レベルを定義している。サーバ自身の省電力制御方法については、既存の技術としてCPUのクロック周波数制御、コア制御など公知の技術のうち任意の1つあるいは複数の組合せを使用することができる。
【0049】
図7では、サーバ2は天井値260Wの省電力レベル3の状態である。しかしサーバ1、2、3合計の消費電力が700Wとなり、閾値を超えた状態であるため、サーバ2は省電力レベルを3から4へ上げ、更にサーバ2自身の消費電力を抑え込む制御を行う。本明細書では、消費電力の抑え込みを強化するとき省電力レベルを上げる、抑え込みを緩和するときに省電力レベルを下げる、という表現を用いる。
【0050】
(サーバ全体の消費電力が閾値を下回るまでの過程)
サーバの消費電力の下がり幅にはばらつきがあり、1台のサーバが1度省電力レベルを上げただけでは合計消費電力が閾値まで低下しきらないことが想定される。そのため、図8で示すように、各サーバが閾値以下になるまで段階的に消費電力を下げ続けることになる。
【0051】
また、負荷の急増加により消費電力が電源容量を超えてしまう可能性があるが、高速でテーブル情報の通信・電力制御を行うため、超過する時間は数秒以内に抑えることが可能であり、問題はない。その理由は、一般的に電源容量にはマージンがあり、消費電力が電源容量を超えたとしても短時間なら耐えられるよう設計されているためである。
【0052】
(省電力レベルを下げる制御)
本実施形態では、全サーバ合計の消費電力が閾値を下回っている場合に限り、省電力レベルを下げる、つまり消費電力の天井値を高くすることができる。
【0053】
(テーブル情報受け渡しの順序)
初めてシステム構築や立ち上げを行った直後は、各サーバのローカルメモリ103のテーブルには自サーバの情報以外入っていない。そこで、この場合のみ、ユーザがサーバのハードウェア制御部にアクセスし、電力監視・制御を行うサーバの情報を入力する必要がある。ユーザがある1台のサーバのハードウェア制御部にアクセスし、各サーバが識別でき、かつ通信が可能となる情報(物理アドレスなど)を入力していく。このデータ入力されたサーバは、入力順に、ローカルメモリ103のテーブルにサーバ情報を格納する。テーブル情報の受け渡しはこのサーバから開始し、以下テーブルに入力された順に情報を受け渡していく。
【0054】
(故障により通信が不可能となった場合の制御)
故障などで、あるサーバが通信できなくなった場合、テーブルの受け渡しができなくなり、サーバ全体で何Wを消費しているのかが分からなくなる。この場合、通信不能のサーバが最大消費電力で稼動していると仮定して運用を行う。具体例としては、電源を3台のサーバ(1台の最大消費電力300W)で共有している場合、通信不能のサーバ1台を最大消費電力300Wで稼動していると想定し、テーブル内の故障サーバの電力値を300Wと固定し、残り2台でテーブルの受け渡しを行う。
【0055】
テーブル情報受け渡しの順序については、故障サーバを飛ばして、さらに次のサーバにテーブル情報を受け渡す。例えば、テーブル情報の受け渡しの際に、受信元のサーバから送り元のサーバに対してACKを返すようにし、送信元のサーバはACKを受信できたか否かによって相手サーバが故障していないか否かを判定する。若し、ACKを受信できなかった場合、その相手サーバを故障サーバと判断し、さらに次のサーバにテーブル情報を送信する。
【0056】
[効果の説明]
サーバは、小型化・高密度化が進み、床面積当たり・ラック当たりに設置できるサーバの台数が増加している。例として、データセンターなどでは、より大量のサーバを導入し運用することが可能になっている。しかし、サーバ台数が増加することにより、データセンター全体の電力消費量が増加し、電力不足に陥るという問題が出てきている。その対策としてデータセンターの電力設備増設があるが、コストが非常にかかるため、サーバの消費電力を抑えることや、電源効率を改善するといったサーバ側での対策が期待されている。本実施形態によれば、リアルタイムで電力を監視する動的な消費電力の天井制御が可能になり、全サーバの最大消費電力よりも容量の小さな電源を使用することができ、電力効率が向上する。
【0057】
合計消費電力を把握し、各サーバの電力管理を行う特別な制御モジュールを必要とせず、一般的な電子回路で実現できる。
【0058】
[その他の実施形態]
本発明は以上の実施形態にのみ限定されず、その他各種の付加変更が可能である。例えば、図9(a)に示すように、全サーバ合計の消費電力が閾値Tを上回っている場合、省電力レベルを上げて消費電力を抑え込むが、閾値Tを下回った直後から省電力レベルを下げることが可能になり、またすぐ閾値Tを上回ることがある。このように、全サーバの消費電力が、閾値T付近で前後し続けることを避けるため、消費電力の抑え込みが開始するときと、解除するときの閾値にギャップを持たせる。例えば、図9(b)のように、抑え込み開始の閾値Thと、抑え込み解除の閾値Tlをそれぞれ別の値に設定することで、頻繁に制御が切り替わることを防ぐような実施形態も本発明に含まれる。
【0059】
また、例えば、ラックに複数のサーバを搭載する時、そのラックへ給電する設備(分電盤)の能力に応じて、ラック全体での消費電力に上限を設定したい場合がある。そのような用途にも、本発明を適用できる。テーブルを用いて電力監視・制御を行う点は同じであり、電源容量を基に閾値設定していた点が、分電盤の給電能力を基に閾値設定した点に変わっただけである。
【符号の説明】
【0060】
1〜3…サーバ
5…信号線
6…電源
11〜13…ハードウェア制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気機器の消費電力を管理する方法であって、
各電気機器が、各電気機器の消費電力を書き込む領域を有するデータ構造体を受け取ると、前記データ構造体の自電気機器に対応する領域に自電気機器の現在の消費電力を書き込んで、他の電気機器に前記データ構造体を渡して巡回させるステップを有し、
前記ステップでは、
自電気機器の現在の消費電力と前記データ構造体に書き込まれている他の電気機器の消費電力とから前記複数の電気機器の合計の消費電力を算出し、
前記算出した合計の消費電力を閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて自電気機器の消費電力を制御する
ことを特徴とする電気機器の電力管理方法。
【請求項2】
前記自電気機器の消費電力の制御では、合計の消費電力が閾値を超えていれば、自電気機器を電力消費量のより少ない動作状態に切替える
ことを特徴とする請求項1に記載の電気機器の電力管理方法。
【請求項3】
前記自電気機器の消費電力の制御では、合計の消費電力が閾値を超えていなければ、自電気機器を電力消費量のより多い動作状態に切替える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器の電力管理方法。
【請求項4】
前記複数の電気機器は電源を共有し、前記閾値は前記電源の電力供給能力のほぼ最大値に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電気機器の電力管理方法。
【請求項5】
前記電気機器は、IT機器である
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電気機器の電力管理方法。
【請求項6】
各電気機器の消費電力を書き込む領域を有するデータ構造体を受け取ると、前記データ構造体の自電気機器に対応する領域に自電気機器の現在の消費電力を書き込んで、他の電気機器に前記データ構造体を渡して巡回させる制御手段を備え、
前記制御手段は、
自電気機器の現在の消費電力と前記データ構造体に書き込まれている他の電気機器の消費電力とから前記複数の電気機器の合計の消費電力を算出し、
前記算出した合計の消費電力を閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて自電気機器の消費電力を制御する
ことを特徴とする電気機器。
【請求項7】
コンピュータを、
各コンピュータの消費電力を書き込む領域を有するデータ構造体を受け取ると、前記データ構造体の自コンピュータに対応する領域に自コンピュータの現在の消費電力を書き込んで、他のコンピュータに前記データ構造体を渡して巡回させる制御手段であって、
自電気機器の現在の消費電力と前記データ構造体に書き込まれている他の電気機器の消費電力とから前記複数の電気機器の合計の消費電力を算出し、
前記算出した合計の消費電力を閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて自電気機器の消費電力を制御する制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165549(P2012−165549A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23655(P2011−23655)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】