説明

電気機器及び照明器具

【課題】電解コンデンサの電解液の蒸発・噴霧ガスの噴出を外見上見えなくすることができる、電気機器及び照明器具を提供する。
【解決手段】電解コンデンサが実装された回路基板20と、略矩形状を有する底板13と、この底板13の二長辺から立ち上がるように折曲げられて形成された側壁とを有し、回路基板20を保持するベースケース11と、ベースケース11の蓋であって天板17及び側壁を有し、回路基板20及び回路基板20に実装された部品を内包するためのカバーケース12と、回路基板20において上記電解コンデンサを挟む位置に実装され、少なくとも一部が前記カバーケース12の天板17及び側壁面に沿った形状を有する一対の電気部品であるトランス21bとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解コンデンサを有する点灯装置等の電気機器及び、この電気機器を用いて構成した照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器である例えば放電ランプを点灯させる点灯装置には、直流電源の平滑を行う電解コンデンサが設けられている。
【0003】
電解コンデンサは、経年変化により電解液が蒸発等の原因により減少し、寿命末期になると、電解液の減少による容量低下に加えて電解液の等価直列抵抗が上昇し、温度が上昇する。更に、発熱が大きくなって熱暴走を引き起こすことから、急激に温度上昇して電解液の沸点を超えて電解液の蒸発ガスが発生し、その圧力でケースが破裂する危険がある。
【0004】
そこで、電解コンデンサにおけるケースの一部に安全弁が設けられたものが提供されており、電解液の蒸発ガスによってケース内圧が所定以上に達した場合には、安全弁が作動して電解液の蒸発ガスを外部に噴出させ、ケースの破裂を防止するようにしている。安全弁が作動することによって、ケース内の異常な圧力上昇を抑えることができるが、外部に噴出した電解液の蒸発ガスまたは噴霧ガス(ミスト)が煙のように見えるため、使用者が発煙と誤認し、火災などと判断し易い。
【0005】
そこで、上記のような現象を防止するため、安全弁から外部に放出された気体を収容する外側気密手段を備えた電解コンデンサが知られている(特許文献1参照)。更に、収容部、縦伸縮部及び環状伸縮部からなるキャップを取付けた電解コンデンサも提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に示されたものは、電解液の蒸発ガスの噴出力に対応するには不十分であり、外側気密手段やキャップが蒸発ガスまたは噴霧ガスの噴出力によって金属ケースから離脱してしまう可能性がある。また、キャップを有さない電解コンデンサが実装された放電ランプの点灯装置に対して、後にキャップを取り付けることは困難であり、予めキャップを有する上記電解コンデンサを用いることが必要となる。
【0007】
本発明は、上記のような電気機器の現状に鑑みなされたもので、電解コンデンサから噴出した電解液の蒸発ガスが外部に放出し難くすることによって使用者が発煙と誤認することを防止可能な電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気機器は、電解コンデンサが実装された回路基板と;略矩形状を有する底板と、この底板の二長辺から立ち上がるように折曲げられて形成された側壁とを有し、回路基板を保持するベースケースと;ベースケースの蓋であって天板及び側壁を有し、回路基板及び回路基板に実装された部品を内包するためのカバーケースと;回路基板において上記電解コンデンサを挟む位置に実装され、少なくとも一部が前記カバーケースの天板及び側壁面に沿った形状を有する一対の電気部品とを具備することを特徴とする。
【0009】
カバーケースの天板及び側壁面に沿った形状とは、一対の電気部品の一部が天板と側壁面に直接或いは間接に接し、電解コンデンサの蒸発・噴霧ガスを留めることができれば良い。従って、一対の電気部品と天板及び側壁面とは、完全に同一形状であっても良いし、僅かに間隙が生じても良い。電解コンデンサの蒸発・噴霧ガスを留めるために、一対の電気部品と天板及び側壁面との間に、例えば絶縁性の樹脂によるスペーサを介在させることを許容する。
【0010】
本発明に係る電気機器では、カバーケースの天板が、最上部の平坦な中央天板と、この中央天板の二長辺から傾斜するように延びるサイド天板とにより構成され、一対の電気部品が、前記中央天板及び前記サイド天板に沿った平坦部及び陵部を有するボビンを具備するコイル部品により構成されていることを特徴とする。
【0011】
コイル部品としては、電源回路に用いられるトランスを挙げることができるが、トランスに限定されるものではない。陵部は、ボビンと一体の部材で形成されても別体の部材で形成されても良い。
【0012】
本発明に係る照明器具は、点灯装置として使用される請求項1または2に記載の電気機器と;点灯装置により点灯される光源と;前記点灯装置及び光源を配置している器具本体とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電気機器は、一対の電気部品が、回路基板において上記電解コンデンサを挟む位置に実装され、少なくとも一部が前記カバーケースの天板及び側壁面に沿った形状を有し、電解コンデンサの蒸発・噴霧ガスを留めることから、電解液の蒸発ガス・噴霧が噴出した場合にも当該ガスがベースケースとカバーケースにより構成される筐体外に漏れ出し難くなり、使用者が発煙と誤認することを防止可能である。
【0014】
本発明に係る電気機器では、一対の電気部品が、前記中央天板及び前記サイド天板に沿った平坦部及び陵部を有するボビンを具備するコイル部品により構成されているので、一対のコイル部品を用いている現状の点灯装置にそのまま適用可能であり、また、平坦部及び陵部を有するボビンを採用することで、的確に電解コンデンサの蒸発・噴霧ガスを留め、当該ガスが筐体外に漏れ出し難くなる。
【0015】
本発明に係る照明器具は、点灯装置として使用される請求項1または2に記載の電気機器を備えているので、電解液の蒸発・噴霧ガスが噴出した場合にも当該ガスがベースケースとカバーケースにより構成される筐体外に漏れ出し難くなり、使用者が発煙と誤認することを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電気機器の実施形態としての点灯装置における電気部品を内包した状態の斜視図。
【図2】本発明に係る電気機器の実施形態としての点灯装置における組み立て状態の斜視図。
【図3】本発明に係る電気機器の実施形態としての点灯装置における側面図。
【図4】図3のA−A断面図。
【図5】本発明に係る電気機器の実施形態としての点灯装置を用いて構成した照明器具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照して、本発明に係る電気機器及び照明器具の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。実施形態に係る照明器具は、放電ランプの点灯装置として使用されるものである。点灯装置10は、組み立て完成状態において図1に示されるようであり、ベースケース11とカバーケース12とを備えている。
【0018】
ベースケース11は、略矩形状を有する底板13と、この底板13の二長辺から立ち上がるように折曲げられて形成された側壁14とを有している。図2及び図4に示されるように、ベースケース11内には、絶縁シート15が敷設され、回路基板20が設けられている。絶縁シート15は、ベースケース11の底板13に沿って敷設され、底板13と側壁14とにより形成される角においてベースケース11の内側へ折り曲げられ、底板13から僅かに上の位置において、長手方向に延びる折目15aによってベースケース11の外側へ折り曲げられ、回路基板20を載置する棚部16が形成されている。
【0019】
カバーケース12は天板17及び側壁18を有し、ベースケース11の蓋となるものであって、回路基板20及び回路基板20に実装された電気部品21を内包するものである。カバーケース12の天板17は、最上部の平坦な中央天板17aと、この中央天板17aの二長辺から傾斜するように延びるサイド天板17bとにより構成されている。カバーケース12の長手方向の両端部には、開口部の形状に合致する蓋19が中央天板17aから折り曲げられて設けられている。
【0020】
図2に示すように回路基板20には、点灯装置の電子回路を構成する電気部品21が実装されている。回路基板20の中央付近には電解コンデンサ21aが実装され、回路基板20の一方の端部には入力側コネクタ22が実装され、回路基板20の他方の端部には出力側コネクタ23が実装されている。図2及び図3に示すように、電解コンデンサ21aを挟む位置には、コイル部品としての一対のトランス21bが実装されており、一方のトランス21bの近傍にはパワートランジスタ21cが実装されている。上記入力側コネクタ22に供給される例えば商用交流が点灯装置の電子回路を構成する電気部品21により所定の電源電圧とされて出力側コネクタ23に出力される。
【0021】
図4に示す通り、本実施形態では、一対のトランス21bのボビン24における上鍔24aの少なくとも中央部と、コア25における頭頂部25aとの間が、ボビン24と一体の樹脂により形成された陵部26となっている。コア25における頭頂部25aは中央天板17aに沿った平坦部を構成し、この陵部26はサイド天板17bに沿った陵部を構成する。
【0022】
以上の通りに構成されていることにより、図1に示した点灯装置10をトランス21bの部分において断面図とした図4に示されているように、一対のトランス21bはカバーケース12の天板17及び側壁18の内面に沿った形状を有し、カバーケース12の両端部側へ連通する隙間が殆ど形成されないので、電解コンデンサ21aの蒸発・噴霧ガスを留められることになる。また、トランス21bにおいて、カバーケース12の天板17及び側壁18の内面に沿った部分において、カバーケース12の天板17及び側壁18の間に間隙が生じる場合には、覆われている絶縁シート15とトランス21bとの間に絶縁性の樹脂などを充填して間隙を塞ぐようにしても良い。
【0023】
図4に示されているように、ベースケース11における底板13の幅寸法が短く、トランス21bの側方には他の電子部品が実装されることもないので、側壁14がトランス21bにおけるボビン24の下側フランジ24dの端面に沿っている。トランス21bにおけるコイル部28の側面と上記側壁14(或いはカバーケースの側壁18)との間隙29は極めて狭く、筐体が小型に形成されている。
【0024】
従って、図3及び図4により明らかな通り、電解コンデンサ21aにおける電解液の蒸発・噴霧ガスが噴出した場合にも当該ガスが一対のトランス21bの間の空間に留まり、上記間隙29を介して蓋19へ漏れる量は極めて僅かである。このため、組成が概ね水分である電解液の蒸発・噴霧ガスは噴出当初において一対のトランス21bの間の空間に存在するものの、時間経過と共に冷却されて水となり、目視可能な蒸発・噴霧ガスとして筐体外に漏れ出す虞は少ない。
【0025】
このように本実施例では、回路基板20に実装された電気部品である一対のトランス21bを利用して電解液の蒸発・噴霧ガスのトラップ構造を構築するため、構成が複雑となることがなく、しかも安価に済ませることができる。また、ボビン24と一体の樹脂により形成された陵部26を別体の構成とする場合には、トランス21bのボビン24についても現状のものを用いることができ、既に実装されているトランス21bに後から加工をすれば良く便利である。
【0026】
図5に、本発明に係る照明器具の実施形態を示す。照明器具30は、天井面などに直付けされる照明器具であり、略枠状の器具本体37の両端に一対のランプソケット38、38が設けられている。このランプソケット38、38には、放電ランプである直管形蛍光ランプ39が装着されている。また、器具本体31は、蛍光ランプ39に対向して平面状の反射板32を取り付けており、この反射板32の表面は反射面32aとなっている。
【0027】
また、器具本体31は、反射板32の内側において、図1に示した放電ランプの点灯装置10をベースケース11の底板13に設けた取付孔13aに通したねじにより固定している。そして、放電ランプの点灯装置10に給電されることにより、蛍光ランプ39が点灯する。
【0028】
照明器具30は、放電ランプの小型な点灯装置10が備えられるので、狭い配設スペースに実装することができ、放電ランプの点灯装置10の電解コンデンサ21aにおける電解液の蒸発・噴霧ガスが噴出した場合にも当該ガスが筐体外に漏れ出す虞は少ない。このため、使用者が発煙と誤認することを防止可能であるので、使用者に誤った不安を与えることなく安心して使用されるものである。
【符号の説明】
【0029】
10 点灯装置
11 ベースケース
12 カバーケース
15 絶縁シート
20 回路基板
21 電気部品
21a 電解コンデンサ
21b トランス
26 陵部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2005−44868号公報
【特許文献2】特開2006−286969号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサが実装された回路基板と;
略矩形状を有する底板と、この底板の二長辺から立ち上がるように折曲げられて形成された側壁とを有し、回路基板を保持するベースケースと;
ベースケースの蓋であって天板及び側壁を有し、回路基板及び回路基板に実装された部品を内包するためのカバーケースと;
回路基板において上記電解コンデンサを挟む位置に実装され、少なくとも一部が前記カバーケースの天板及び側壁面に沿った形状を有する一対の電気部品と
を具備することを特徴とする電気機器。
【請求項2】
カバーケースの天板は、最上部の平坦な中央天板と、この中央天板の二長辺から傾斜するように延びるサイド天板とにより構成され、
一対の電気部品が、前記中央天板及び前記サイド天板に沿った平坦部及び陵部を有するボビンを具備するコイル部品により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
点灯装置として使用される請求項1または2に記載の電気機器と;
点灯装置により点灯される光源と;
前記点灯装置及び光源を配置している器具本体と
を具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−258163(P2010−258163A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105544(P2009−105544)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】