説明

電気機器収納用箱

【課題】吊り上げ時にアイボルトの周辺に作用する負荷を分散し、箱の変形や破断のおそれをなくした電気機器収納用箱を提供する。
【解決手段】天井部に吊下げアイボルト5を係止金具6を利用して取付けた電気機器収納用箱である。係止金具6は、天井面側のアイボルト取付面7と、下方に垂下する補強取付面8とを備えたもので、補強取付面8を箱本体内部に電気機器を取付けるための機器取付手段に固定した。機器取付手段としては、機器取付基板、マウントレール、マウントレール固定用フレーム部材等を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部に吊下げアイボルトを取付けた電気機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型の電気機器収納用箱には、設置工事の際にクレーン等によって吊り上げるための吊下げアイボルトが天井部に取付けられている。特許文献1に記載されているように、箱本体の天井面に補強板を当てて吊下げアイボルトを貫通させ、箱本体の内側のナットにより固定する構造が一般的である。
【0003】
しかしこのような従来構造では、吊り上げ時に、アイボルトが取付けられた天井部のみに負荷が掛かることとなり、天井板や、天井板と側面板あるいは背面板との溶接部などに負荷が集中し、これらの部分が変形したり破断したりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−87254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、吊り上げ時に天井部に作用する負荷を分散し、箱の変形や破断のおそれをなくした電気機器収納用箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、天井部に吊下げアイボルトを取付けた電気機器収納用箱であって、天井面側のアイボルト取付面と、下方に垂下する補強取付面とを備えた係止金具を箱本体の天井部内面に配置し、この係止金具のアイボルト取付面に吊下げアイボルトを固定した構造を有し、この係止金具の補強取付面を、箱本体内部に電気機器を取付けるための機器取付手段に固定したことを特徴とするものである。
【0007】
なお請求項2のように、係止金具の補強取付面が固定される機器取付手段が、箱本体の内面に固定された機器取付部、マウントレール、マウントレール固定用フレーム部材のいずれかであることが好ましい。また請求項3のように、機器取付部は、背面板の内面に取付ボルトの頭部を保持できる取付板によって固定されており、取付ボルトに電気機器を取り付けるための機器取付基板及び係止金具を固定したものが好ましい。また請求項4のように、係止金具がアイボルト取付面の1辺に補強取付面を垂下させたL字状のもの、あるいは請求項5のように、アイボルト取付面の2辺に補強取付面を垂下させたものであることが好ましい。さらに請求項6のように、係止金具がアイボルト取付面と補強取付面との間に補強部を備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気機器収納用箱は、天井面側のアイボルト取付面と、箱本体内部に電気機器を取付けるための機器取付手段に固定される補強取付面とを備えた係止金具を用いて吊下げアイボルトを取付けたものであるので、吊り上げ時に電気機器収納用箱の重量によって受ける負荷が天井以外にも分散される。このため従来のように天井部に負荷が集中することが防止され、変形や破断のおそれをなくすることができる。また請求項6のように係止金具のアイボルト取付面と補強取付面との間に補強部を形成しておけば、係止金具自体が変形したり破断したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】係止金具を示す斜視図である。
【図3】要部の拡大断面図である。
【図4】箱本体の内部構造を示す斜視図である。
【図5】他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】実施形態を示す斜視図である。
【図7】他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】係止金具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1から図3は本発明の第1の実施形態を示すもので、1は箱本体であり、2はその天井板、3は背面板、4は側面板である。この箱本体1はモノコック式と呼ばれる骨格フレームのない構造のものである。図3に示されるように箱本体1の天井部には、吊下げアイボルト5が取付けられている。吊下げアイボルト5は周知のとおり、頭部をリング状として吊り上げ用フックを引っ掛けることができるようにしたボルトである。
【0011】
6は吊り上げの際に吊下げアイボルト5に作用する荷重を受けるための係止金具であり、箱本体1の天井部の内面に配置されている。係止金具6は天井面側のアイボルト取付面7と、下方に垂下する補強取付面8とを備えたものであり、鋼鉄のような強度のある金属製とすることが好ましい。図2に示されるように、アイボルト取付面7と補強取付面8との間には補強部9を形成して強度を高めておくことが好ましい。補強部9は図示のような肉盛溶接のほか、鋼板を溶接するなど、任意の手段を採用することができる。なお10はアイボルト取付面7に形成されたアイボルト挿通孔、11は補強取付面8に形成されたボルト挿通孔である。
【0012】
この実施形態の係止金具6は図2に示すようなL字状のものであり、アイボルト取付面7を天井板2の内面に密着させて配置される。吊下げアイボルト5は天井板2を貫通させ、さらにアイボルト取付面7に形成されたアイボルト挿通孔10を貫通させたうえ、ナット12を螺合させることによって天井面2に固定される。本発明ではこの係止金具6の下方に垂下した補強取付面8は、箱本体1の内部に電気機器を取付けるための機器取付手段に固定される。
【0013】
図3に示すように、この実施形態では機器取付手段は、箱本体1の内面に固定された機器取付部13である。具体的には、背面板3の内面に取付ボルト14がそのボルト頭部を保持できる取付板15によって固定されており、この取付ボルト14に基板保持具16を介して鋼板製の機器取付基板17が固定されている。この機器取付基板17は各種の電気機器を取付けるための機器取付部13である。この実施形態では係止金具6の補強取付面8に形成されたボルト挿通孔11に取付ボルト14を通してナット18で固定することによって、補強取付面8を機器取付基板17に固定している。
【0014】
このように構成された本発明の電気機器収納用箱は、吊下げアイボルト5によって吊り上げたときに天井部に作用する負荷を、係止金具6によって天井板2と箱本体1の内面に固定された機器取付部13や背面板3に分散することができるので、従来のように電気機器収納用箱の天井部に負荷が集中することが防止され、変形や破断のおそれをなくすることができる。またこの実施形態のように機器取付基板17の表面に係止金具6の補強取付面8を固定した場合には、据え付け工事の完了後に係止金具6を容易に取り外すことができる別の利点がある。なお、係止金具6を取り外した後は天井板2に形成した孔部は樹脂製のキャップなどで防ぐものである。
【0015】
しかし係止金具6の補強取付面8を固定する位置やその形状については様々な変形が可能である。例えば図4に示すように、箱本体1の内部にはマウントレール20や、このマウントレール20の上下端部を取付けるための奥行き方向のマウントレール固定用フレーム部材21などが設けられているが、係止金具6の補強取付面8をマウントレール20やマウントレール固定用フレーム部材21などに固定することもできる。係止金具6の補強取付面8をマウントレール20やマウントレール固定用フレーム部材21に対して固定した場合には、その固定位置を変更し易いため、吊り上げ時の重心位置に応じて吊下げアイボルト5の位置調節が可能となる別の利点がある。
【0016】
また図5に示すように、係止金具6の補強取付面8を鋼板製の機器取付基板17の裏側に固定することもできる。この実施形態のように固定した場合には、機器取付基板17をを容易に取り外すことができる別の利点がある。この場合には、係止金具6の補強取付面8を箱本体1の背面板3に直接溶接することも可能である。その他に、機器取付部13として背面板3や側面板4の内面に設けたボススタッドなどに固定するものであっても良い。
【0017】
また図6に示すように、係止金具6の補強取付面8を幅広にして機器取付基板17として用いることもできる。このように係止金具6の補強取付面8と機器取付基板17とを兼用させれば、部品点数を削減することができ、コストダウンを図ることができる。
【0018】
さらに図7、図8に示すように、係止金具6として、矩形のアイボルト取付面7の2辺に補強取付面8,8を垂下させ、一方を背面板3側に取り付け、他方を側面板4側に取付けることもできる。これらの補強取付面8,8間は溶接により一体化しておくことが好ましい。このような構造とすれば、負荷を天井板2、背面板3、側面板4の3面に分散させることができ、変形や破断のおそれをより確実に防止することができる利点がある。
【符号の説明】
【0019】
1 箱本体
2 天井板
3 背面板
4 側面板
5 吊下げアイボルト
6 係止金具
7 アイボルト取付面
8 補強取付面
9 補強部
10 アイボルト挿通孔
11 ボルト挿通孔
12 ナット
13 機器取付部
14 取付ボルト
15 取付板
16 基板保持具
17 機器取付基板
18 ナット
20 マウントレール
21 マウントレール固定用フレーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部に吊下げアイボルトを取付けた電気機器収納用箱であって、
天井面側のアイボルト取付面と、下方に垂下する補強取付面とを備えた係止金具を箱本体の天井部内面に配置し、この係止金具のアイボルト取付面に吊下げアイボルトを固定した構造を有し、
この係止金具の補強取付面を、箱本体内部に電気機器を取付けるための機器取付手段に固定したことを特徴とする電気機器収納用箱。
【請求項2】
係止金具の補強取付面が固定される機器取付手段が、箱本体の内面に固定された機器取付部、マウントレール、マウントレール固定用フレーム部材のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の電気機器収納用箱。
【請求項3】
機器取付部は、背面板の内面に取付ボルトの頭部を保持できる取付板によって固定されており、取付ボルトに電気機器を取り付ける機器取付基板及び係止金具を固定したものである請求項2記載の電気機器収納用箱。
【請求項4】
係止金具が、アイボルト取付面の1辺に補強取付面を垂下させたL字状のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気機器収納用箱。
【請求項5】
係止金具が、アイボルト取付面の2辺に補強取付面を垂下させたものであることを特徴とする請求項4記載の電気機器収納用箱。
【請求項6】
係止金具が、アイボルト取付面と補強取付面との間に補強部を備えたものであることを特徴とする請求項4もしくは5記載の電気機器収納用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228389(P2011−228389A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94984(P2010−94984)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】