説明

電気機器収納箱

【課題】 薄型鋼板を使用して扉板を作製し軽量化しても、扉板の剛性を維持して変形し難い構造の電気機器収納箱を提供する。
【解決手段】内部に機器収納空間を有した金属製箱本体1と、箱本体1に蝶着して前面開口部8を閉塞する金属製扉板2とを有し、扉板2は裏面のほぼ全域に亘り発泡樹脂層を主層とする合成樹脂板3が貼着され、この合成樹脂板3は、ポリプロピレン又はポリエチレンで形成された発泡樹脂層の両面に、発泡樹脂層に比して十分薄い同一成分の高密度層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や通信機器等を収納する電気機器収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配電用の電気機器や通信機器等の電子機器を収納する電気機器収納箱は、箱本体をアングル枠等を溶接接続してフレームを形成し、その周囲各面に閉塞板を溶接やネジ止めにより取り付けて形成したり、鋼板を折り曲げて各面を形成し、溶接等により隣接する板を連結してフレームレスで箱本体を形成していた。そして、箱本体の開口された前面に扉板を蝶着し、開閉可能としていた(例えば、特許文献1参照)。
一方で、溶接することなくネジ止め等で各面を連結して箱本体を作製する構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−16712号公報
【特許文献2】特開2000−152430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電気機器収納箱のうち配電用の電気機器を収納する収納箱は、主に壁面に取り付けられるため軽量な箱が望まれ、金属板同士を直接連結した収納箱が広く使用されていた。しかし、収納箱の大型化による取付作業時の作業者の負担や、壁面の強度の点で更なる軽量化が望まれている。
この点、使用する鋼板を収納箱の剛性を維持する強度限界まで薄くすれば更に軽量化を進めることができるが、溶接して作製される収納箱の場合、薄くすることで溶接による変形が発生してしまうし、箱本体に比べて扉板は強度の維持が難しく、箱本体の強度限界まで鋼板の厚みを下げることができなかった。
【0005】
一方、特許文献2に示すように溶接工程のない収納箱の場合、溶接による変形の心配がないので、箱本体は強度限界まで鋼板を薄くすることが可能となるが、扉板は上述したように剛性の維持が難しく薄くすることができない。そのため、収納箱の主要部を成す箱本を強度限界まで薄くできなかった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、箱本体の強度限界に合わせた薄型鋼板を使用して扉板を作製し軽量化しても、扉板の剛性を維持して変形し難い構造の電気機器収納箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、前面を開口して内部に機器収納空間を有した金属製箱本体と、箱本体に蝶着して前面開口部を閉塞する金属製扉板とを有する電気機器収納箱において、前記扉板は、裏面のほぼ全域に亘り発泡樹脂層を主層とする合成樹脂板が貼着されてなることを特徴とする。
この構成により、扉板を薄い鋼板で作製しても、十分な強度を得ることができる。そして、貼着した合成樹脂板は発泡樹脂層を主層とするので軽量化を図ることでき、合成樹脂板を貼着しても、収納箱の十分な軽量化を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、合成樹脂板は、ポリプロピレン又はポリエチレンで形成された発泡樹脂層の両面に、発泡樹脂層に比して十分薄い同一樹脂の高密度層を備えて成ることを特徴とする。
この構成により、発泡樹脂層を有しても十分な強度を得ることができるし、発泡樹脂層の両面を高密度層とすることで全体を堅牢にでき、扱いやすく作業し易い。また、ポリプロピレンやポリエチレンの発泡体は安価であり、コスト負担を小さくできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、扉板を薄い鋼板で作製しても、十分な強度を得ることができる。そして、貼着した合成樹脂板は発泡樹脂層を主層とするので軽量化を図ることでき、合成樹脂板を貼着しても、収納箱の十分な軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1,図2は本発明に係る電気機器収納箱の一例を示し、図1は扉板を開けた状態の斜視図、図2は図1の状態で合成樹脂板を外した状態を示している。1は箱本体、2は扉板、3は合成樹脂板である。
【0011】
箱本体1は、左右側板4,4、天板5、底板6、及び背板7を有し、前面に大きな開口部8を有している。各面を構成する板は、夫々独立した鋼板で作製され、夫々周囲4辺を所定形状に折り曲げて形成し、隣接する板同士が係合して連結するため爪片及び爪片を挿入する挿入孔等から成る係合部(図示せず)を備えている。また、必要に応じてネジ止めして連結される。
こうして5枚の板体を連結して形成された箱本体1は、背板7をボルト等で壁面に固定することで壁面に取り付けられる。そして、必要に応じて天板5或いは底板6に電線等の配線挿通孔穴が穿設されて使用される。
【0012】
扉板2も同様に鋼板を折り曲げて形成され、右端部の上下端部に回動軸が突設され、箱本体開口部8の右端部に設けられた軸着片に軸着されて蝶着される。また、左側中央部にはハンドル(図示せず)が取り付けられ、ハンドルに連動するよう設置された係止部材10を有し、ハンドルを操作して閉塞時に箱本体1にロックされるよう構成されている。
【0013】
そして、合成樹脂板3は扉板2の裏面のほぼ全体に至る大きさを有し、接着剤により貼着されている。この合成樹脂板3は、ポリプロピレン又はポリエチレンで作製され、図3の断面説明図に示すように、中央の主層3aが発泡樹脂層で構成され、上下両面は圧縮した高密度層3bとなっている。
尚、合成樹脂板の厚みは、例えば10mmのものが使用されるが、8mm程度の厚みでも、扉板の強度アップには有効であるし、更に厚いものであれば更なる強度アップを図ることができる。また、ポリプロピレンやポリエチレンでなくてもよく、例えばポリスチレンやウレタンから成る発泡プラスチックを使用しても良い。
【0014】
このように、扉板を薄い鋼板で作製しても、十分な強度を得ることができる。そして、貼着した合成樹脂板は発泡樹脂層を主層とするので軽量化を図ることでき、合成樹脂板を貼着しても、収納箱の十分な軽量化を図ることができる。
また、主層をポリプロピレン又はポリエチレンで形成された発泡樹脂層とすることで、発泡樹脂層を有しても十分な強度を得ることができるし、発泡樹脂層の両面を高密度層とすることで全体を堅牢にでき、扱いやすく作業し易い。また、ポリプロピレンやポリエチレンの発泡体は安価であり、コスト負担を小さくできる。
また、発泡樹脂層を有することで、断熱効果や防音効果も合わせて発揮できる。
【0015】
尚、上記実施形態は、壁面に取り付ける構成を説明しているが、据置タイプの電気機器収納箱であっても、上記構成の合成樹脂板を貼着する構成は、扉板の強度アップに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電気機器収納箱の実施形態の一例を示す斜視図であり、扉を開けた状態を示している。
【図2】図1の扉に設けた合成樹脂板を分離した状態を示している。
【図3】合成樹脂板の断面説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・箱本体、2・・扉板、3・・合成樹脂板、3a・・主層(発泡樹脂層)、3b・・高密度層、4・・側板、5・・天板、6・・底板、7・・背板、8・・開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を開口して内部に機器収納空間を有した金属製箱本体と、箱本体に蝶着して前面開口部を閉塞する金属製扉板とを有する電気機器収納箱において、
前記扉板は、裏面のほぼ全域に亘り発泡樹脂層を主層とする合成樹脂板が貼着されてなることを特徴とする電気機器収納箱。
【請求項2】
合成樹脂板は、ポリプロピレン又はポリエチレンで形成された発泡樹脂層の両面に、発泡樹脂層に比して十分薄い同一樹脂の高密度層を備えて成る請求項1記載の電気機器収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−171893(P2008−171893A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1681(P2007−1681)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】