説明

電気機器

【課題】本発明は、電気部品に対するシールドを完全なものとするとともに、電気部品周囲の空間距離を必要最小限に短縮してシールド領域を最小化した電気機器を提供する。
【解決手段】一面に電気部品である半導体装置2が接続される配線パターンHを有し、他の面にグランドパターン3を有する多層配線基板1と、互いに所定間隔を存し多層配線基板の一面における電気部品の周囲部位とグランドパターンとの間に亘って設けられる複数のスルーホール4と、半導体装置を囲むように配設され各々がスルーホールと電気的に接続される複数のはんだボール5と、これらはんだボールと電気的に接続され半導体装置を覆う導電性天板6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品である、たとえば半導体装置から発生する電磁波による妨害を阻止するためのシールド構造を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器である、たとえば多種機能を有する携帯電話等においては、動作周波数の高周波化が進むとともに、パワー増加が顕著であり、それにともない強い電磁波が放射されるようになった。配線基板上に実装されるコイル等の電気部品相互間の距離が短くなっていることも一因であるが、他の周辺電気部品に電磁波障害を及ぼし易い。
【0003】
[特許文献1]には、半導体パッケージ基板が実装される実装用基板と半導体パッケージ基板の外部端子との接合部分から放射される電磁波を遮蔽する状態に、金属以外の材質からなる電磁波吸収体を設けたことを特徴とする半導体パッケージ基板の電磁シールド構造が開示されている。
【0004】
[特許文献2]には、表面実装型のBGAである被シールド部品の信号端子から基板に引き込む信号線のみを、グランドと導通を取ったBGAボールでシールドし、前記被シールド部品自身のシールドは、別部品である金属シールド板からなるシールドケースで覆う構造が開示されている。
【0005】
しかしながら、[特許文献1]で電磁波吸収体として用いられるフェライトは加工性が悪く、高加工精度が得られないので量産的に劣る。また、フェライト粉を樹脂に混ぜた流動性のあるフェライト樹脂を、基板本体の周縁に沿って流し込み、硬化させる実施例が記載されているが、基板本体周辺にフェライト樹脂が流出して、必要面積が大になる。
【0006】
[特許文献2]のシールドケースは、金属板であるので、板金加工すれば良く、量産性には問題がない。ただし、前記シールドケースを配線基板に取付ける構造に係る詳細な記載がなく、不明である。そこで、シールドケースを配線基板に取付けるには、図6に示す構造が考えられる。
【特許文献1】特開2001−160605号公報
【特許文献2】特開平 8− 64983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図中aは金属板からなる配線基板であり、所定の配線パターン部位に半導体装置bが実装される。半導体装置b底面と配線基板a表面との間に、狭小で部分的な隙間が存在し、そのまま放置すると隙間に湿気や有害ガスが侵入し残留する。長期の使用に亘れば、残留湿気や残留有害ガスが半導体装置や配線基板を腐蝕する等の悪影響を及ぼす。
【0008】
そこで、前記半導体装置b底面と配線基板a表面との隙間に樹脂材cをアンダーフィルし、悪影響の発生を阻止する。同時に、アンダーフィルした樹脂材cによって半導体装置bの配線基板aに対する取付け強度が強化され、半導体装置bを実装する配線基板aを備えた電気機器に多少の接触衝撃や落下衝撃がかかっても、充分耐えられる。
【0009】
図に示すように、前記アンダーフィルをなす樹脂材cの一部が半導体装置bの周面から浸出(はみ出す)状態となって残る。この浸出範囲は他の電子部品を設けることができない、いわゆるアンダーフィル禁止領域Naであり、通常2mmは必要である。アンダーフィル禁止領域Na外部に、フレームeの下端部が配線基板aにはんだ付けzされる。
【0010】
前記フレームeは板厚が0.2〜0.5mmの金属板を板金加工してなり、半導体装置bを囲む平面矩形状の枠体であって上端が内側に折曲される。このフレームeを配線基板aにはんだ付けzするのに必要な幅であるパターン幅Nbは、最低1mmを確保しなければならない。
【0011】
フレームeには複数の孔部gが設けられ、各孔部gへ嵌り込むエンボス(突起)hを備えたカバーiが、フレームeに被せられる。このカバーiもフレームeと同一板厚の板金加工品であり、カバーiとフレームeとでシールドケースQが構成される。前記シールドケースQは、半導体装置bから発生する電磁波が外部へ漏れないようシールドする。
【0012】
しかしながら、板金加工品は高精度の平面度を得るのは困難であり、フレームeと配線基板aとのはんだ付けzが不均一になり易い。いわゆる、未はんだ部が部分的に生じる虞れがあり、そこから電磁波が漏れて完全シールド性を確保できなくなる。そのため、多量のはんだを盛って対応しなければならず、パターン幅Nbの拡大につながる。
【0013】
また、半導体装置bの全周囲に沿ってアンダーフィル禁止領域Naとパターン幅Nbを必要とし、これらの合計が少なくとも3mmの幅となる。複数の半導体装置bを実装する配線基板aであれば、当然、配線基板aの大型化を招いてしまう。そして、この配線基板aを備えた電気機器である、たとえば携帯電話等の小型化を規制することとなる。
【0014】
本発明は前記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、電気部品に対するシールドを完全なものとするとともに、電気部品周囲の空間距離を必要最小限に短縮して、シールド領域を最小化した電気機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を満足するため本発明は、一面に電気部品が接続される配線パターンを有し他の面にグランドパターンを有する多層配線基板と、互いに所定間隔を存し多層配線基板の一面における電気部品の周囲部位とグランドパターンとの間に亘って設けられる複数のスルーホールと、電気部品を囲むように配設され各々がスルーホールと電気的に接続される複数のはんだボールと、これらはんだボールと電気的に接続され電気部品を覆う天板部材とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気部品に対するシールドを完全化し、電気部品の周囲に必要な空間距離を必要最小限に短縮して、シールド領域を最小化するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1(A)(B)は、本発明における第1の実施の形態での電気部品(以下、「半導体装置」と呼ぶ)2を備えた電気機器10の概略の平面図と断面図である。前記半導体装置2は、ここでは1個のみ示しているが、実際には複数個の半導体装置2を備えている。
【0018】
図中1は多層配線基板であり、この多層配線基板1表面(図1(B)の上面)の所定部位には配線パターンHが設けられている。この配線パターンHには、BGAタイプの半導体装置2が実装される。
【0019】
前記半導体装置2は、所定の厚さ寸法で、平面視で矩形状をなす。底面部にはリードの代用となる球形のはんだ(以下、「はんだボール」と呼ぶ)2aがアレイ状に突設されていて、配線基板1にフリップチップボンディングされている。具体的には、半導体装置2底面のはんだボール2aが金属バンプを形成し、これを多層配線基板1の配線パターンH上に設けられる電極パッドに押付けて接続する。
【0020】
前記多層配線基板1裏面には、グランド(GND)に接地されるグランドパターン3が設けられる。さらに多層配線基板1には、多層配線基板1裏面に設けられる前記グランドパターン3と多層配線基板1表面との間に亘って、複数のスルーホール4が互いに所定間隔を存して設けられる。
【0021】
なお説明すると、多層配線基板1の表面にスルーホール4の一端部が露出していて、その露出位置は前記半導体装置2の各辺周縁から所定間隔だけ離間している。したがって、スルーホール4は多層配線基板1の表面における半導体装置2の周囲部位とグランドパターン3との間に亘って設けられることになる。
【0022】
このようなスルーホール4の一端部に、はんだボール5が接合される。前記はんだボール5を、図1(A)では“破線の楕円”で表し、図1(B)では“実線の楕円”で表したうえに断面のハッチングを入れている。
前記はんだボール5は、半導体装置2の底面に突出する前記はんだボール2aとは相違して、より大径のものである。そして、半導体装置2全体の厚み(高さ)寸法よりも、はんだボール5の直径が大である。互いに多層配線基板1の表面に載置された状態となっていて、その上端部は半導体装置2上面よりも上方に突出する。
【0023】
前記スルーホール4の直径よりも前記はんだボール5の直径が大であるが、スルーホール4に接続された状態ではんだボール5相互は互いに接触することはない。すなわち、後述するように組立てられた電気機器10を加熱炉に収容して加熱し、加熱完了の状態ではんだボール5相互の間隔が1mm以下になるように、スルーホール4相互の間隔およびはんだボール5の直径が設定されている。
【0024】
全てのはんだボール5に亘って1枚の天板部材6が支持されている。図1(A)を参照すると分かるように、平面視で矩形状に形成される前記天板部材6の各辺部に沿って複数のはんだボール5が位置する。そして、はんだボール5の直径と半導体装置2の厚み寸法との大小関係から、天板部材6は半導体装置2の上方部位を間隙を存して覆う。
【0025】
前記天板部材6は、矩形平板状の樹脂材6aと、この平板樹脂材6aの下面全面に亘って被覆される導電性を有する金属膜6bとから構成される。すなわち、天板部材6は導電性を有するところから、以後、これを「導電性天板」と呼ぶ。
導電性天板6の下面全面に、金属膜6bからなるベタパターンが形成されることになる。図1(B)に示すように、導電性天板6を構成する金属膜6bはソルダレジスト膜7で覆われ、前記スルーホール4と対向する位置のみ開口部として形成される電極パッド8が設けられる。電極パッド8は、図1(A)では“実線の真円”で表し、図1(B)ではソルダレジスト膜7の“切れ目”で表している。
【0026】
前記導電性天板6の中心位置は前記半導体装置2の中心位置と略一致していて、半導体装置2の周面から導電性天板6の周面が同一寸法だけ突出する。換言すれば、半導体装置2に対して導電性天板6は相似形をなしていて、導電性天板6の面積は半導体装置2の面積よりも大に形成される。
【0027】
このように、多層配線基板1に半導体装置2を実装するのに、半導体装置2底面から突出する前記はんだボール2aが用いられ、多層配線基板1に導電性天板6を取付けるのにも、前記はんだボール5が用いられる。
そこで、はんだの特性に応じて、多層配線基板1に半導体装置2および導電性天板6を位置決めして加熱炉に入れ、双方のはんだボール2a,5を同時に溶融させる。あるいは、先にはんだボール2aを溶融させて多層配線基板1に半導体装置2を実装し、そのあと、はんだボール5を溶融させて多層配線基板1に導電性天板6を取付ける。
【0028】
前記多層配線基板1に半導体装置2を実装した状態で、従来構造と同様、半導体装置2底面と多層配線基板1表面との間に狭小の隙間が存在している。一方、はんだボール5の直径が0.65mmのものを選択し、はんだボール5が溶融したとき多層配線基板1と導電性天板6との間に約0.4mmの隙間が存在するように寸法設定されている。
【0029】
さらに、隣接するはんだボール5相互が溶融した状態で接触する、いわゆるブリッジ状にならないように、各スルーホール4と電極パッド8相互間の距離が設定される。実際に、はんだボール5の直径と重量、加熱炉における加熱温度、導電性天板6の面積重量等の条件から、溶融したはんだボール5相互の隙間が、1mm以下になるよう設定される。
【0030】
溶融した状態でのはんだボール5相互の隙間を1mm以下とする理由については、後述する。この隙間を利用して、溶融した樹脂材9を配線基板1表面と半導体装置2底面との間に注入し、アンダーフィルする。多層配線基板1と半導体装置2との間に充分な量のアンダーフィルをなした後も、樹脂材9の注入を継続する。
【0031】
樹脂材9は導電性天板6底面の金属膜6bと半導体装置2上面との隙間に充填されるとともに、半導体装置2周面外部と導電性天板6周面との間にも充填される。この状態で樹脂材9の注入を停止すると、結果として、半導体装置2の全周面に亘って樹脂材9が充填され、半導体装置2は樹脂封止される。
【0032】
したがって、多層配線基板1に対する半導体装置2の取付け強度が大となる。多層配線基板1と導電性天板6との間にも樹脂材9が充填されるので、多層配線基板1に対する導電性天板6の取付け強度が大となる。図1(B)では、樹脂材9が導電性天板6周面から突出した状態としているが、実際には、はんだボール5相互の隙間を埋める程度でよく、導電性天板6周面から突出しない。
【0033】
このようにして、半導体装置2を実装する多層配線基板1と、この多層配線基板1に所定間隔を存して設けられグランドパターン3に接続する複数のスルーホール4と、これらスルーホール4に接続され半導体装置2の周囲を囲むように配置される複数のはんだボール5と、これらはんだボール5に電気的に接続され前記半導体装置2の上面を覆う導電性天板6とで、電気機器10が構成される。
【0034】
前記はんだボール5は多層配線基板1のグランドパターン3とスルーホール4を介して導電性天板6に電気的に接続されている。換言すれば、導電性天板6と多層配線基板1のグランドパターン3との電気的な導通を、スルーホール4とはんだボール5で取ることになる。
【0035】
半導体装置2から出る電磁波は、導電性天板6の下面全面を覆う金属膜6bによってシールド(遮蔽)され、さらに導電性天板6を取付けるはんだボール5によってシールドされる。隣接するはんだボール5相互の隙間を1mm以下に設定してあるので、後述する理由によりこの隙間から電磁波が漏れることはない。
【0036】
なお、前記導電性天板6は樹脂材6aの下面全面を金属膜6bで覆う構成とすることにより、導電性天板6は比較的、高い平面度を得る。一方、多層配線基板1は、文字通り多層に形成され、ある程度の板厚を有することで高い平面度を得る。多層配線基板1に導電性天板6を取付けた状態で、互いの隙間が均一になり、従来構造のような未はんだ部分は発生し難い。
【0037】
たとえ、何らかの理由により導電性天板6が変形していて平面度の精度が低くなっても、はんだボール5が溶融にともなって導電性天板6の変形を吸収する。すなわち、導電性天板6の変形がある程度の範囲内であれば、導電性天板6を配線基板1に取付けた状態で、導電性天板6と多層配線基板1との隙間を一定範囲内に確保できる。
【0038】
半導体装置2の周面からはんだボール5による取付け幅までの距離M1は、配線基板1に実装される電子部品相互の必要最低限な距離と同一であればよい。前記距離M1を、「部品間実装禁止領域」と呼ぶとすると、この領域幅M1は0.2mmあればよい。また、はんだボール5による導電性天板6の取付け幅M2は、はんだボール5の直径と同じ0.65mmあればよい。
【0039】
結局、導電性天板6は半導体装置2の周面から、部品間実装禁止領域M1である0.2mmと、はんだボール5による導電性天板6の取付け幅M2である0.65mmとの合計の、0.85mmだけ突出する面積となる。
図6に示す従来構造の電気機器Qにおいては、上述したように半導体装置b周面から3mm突出している。本発明では0.85mmであるから、従来構造と比較すると、はるかに小型化を図れることとなる。
【0040】
さらに、多層配線基板1に半導体装置2をアンダーフィルする樹脂材9を、そのまま多層配線基板1に対する導電性天板6の取付け強度増大化に用いた。この樹脂材9は半導体装置2と導電性天板6との間に充填すればよく、従来構造のように半導体装置の周面から外方へ浸出させるのに必要なアンダーフィル禁止領域を確保しなくてすむ。
前記はんだボール5と導電性天板6からなる電気機器10が占有する領域が最小となり、複数の前記半導体装置2を備えた携帯電話等の電気機器10の小型化を確実に推進できる。
【0041】
はんだボール5が溶融した状態で、隣接するはんだボール5相互の隙間を1mm以下としながら電磁波の漏れを防止できる理由は、図5のシールド効果(シールド量)を示すグラフから説明できる。
このグラフは、横軸にはんだボール5相互の隙間に相当するスリットの大きさ(mm)を取り、縦軸に半導体装置2を搭載する電気機器に用いられる信号の周波数(dB)を取る。
【0042】
詳しくは、無限平面金属板に空いた長方形スリットのシールド量Sを示していて、
S = 20log(λ/2/d)
の式から算出される。
なお、λ=C/fであり、λ:波長、C:光束、f:周波数。
d:スリットが矩形状をなしている場合に、長い方の寸法。
グラフは、 d<<λ/2 のときの、スリット寸法対シールド量を表している。
【0043】
電気機器は種類や用途に応じて、用いられる信号の周波数が相違している。そこで、図のように、100MHZをLa変化として、1GHZをLb変化として、2GHZをLc変化として、5GHZをLd変化として、それぞれ信号の周波数別に測定した。
いずれの電気機器においても必要なシールド効果(dB)は、経験値から、最低限30dBは確保しなければならない。好ましくは、それ以上のシールド効果を得たい。
図の結果から、同じスリットの大きさであっても、信号の周波数の長い方がシールド効果(dB)が大であり、周波数が短くなるにしたがって、シールド効果が小さくなっていることが分かる。
【0044】
上述した電気機器である携帯電話の場合は、周波数が5GHZの極短波長電波が用いられている。そして、上述のように30dB以上のシールド効果を確保したいので、5GHZのライン(Ld変化)と、縦軸のシールド効果において30dBのラインとが交差する横軸のスリットの大きさを読むと、「約1mm」となっている。
【0045】
すなわち、多層配線基板1に対して導電性天板6を取付ける溶融した状態のはんだボール5は、隣接するはんだボール5との隙間を1mm以下になるように設定する。したがって、隣接するはんだボール5相互間の隙間から電磁波が漏れることはなく、シールド効果を確保できて周囲の半導体装置等の電気部品に与える影響がない。
【0046】
図2(A)(B)は、本発明における第2の実施の形態での、多層配線基板1に実装される厚形半導体装置2Aと電気機器10Aの概略の平面図と断面図である。前記第1の実施の形態と同一の構成部品は、同番号を付して新たな説明を省略する。
そして、配線基板1に形成される配線パターンHとグランドパターン3およびスルーホール4と、導電性天板6Aに形成されるソルダレジスト膜7および電極パッド8と、多層配線基板1と半導体装置2Aおよび導電性天板6Aをアンダーフィルする樹脂材9は省略して示す。(以下、同じ)
この実施の形態は、電気機器10Aとして占有する面積に変りがないが、特に厚形の半導体装置2Aを用いた場合に有効である。すなわち、第1の実施の形態における構成のまま、厚形半導体装置2Aを導電性天板6で覆うとすると全体的に厚いものとなって、電気機器10の面積を減少させたことの効果と相殺してしまう。
【0047】
そこで、以下に述べるように、電気機器10Aの背低化を図っている。
すなわち、導電性天板6Aは先に説明したものと同一の板厚と同一の面積であってよく、部品間実装禁止領域M1が0.2mm、取付け幅M2が0.65mmを確保する。そのうえで、導電性天板6Aの下面における部品間実装禁止領域M1から内側全てを座ぐり加工して、導電性天板6A下面に凹陥部12を設ける。
【0048】
凹陥部12の全面に亘って金属膜6bで被覆することは勿論である。半導体装置2Aを多層配線基板1に実装したうえで、導電性天板6Aにおける凹陥部12を下面側として、厚形半導体装置2Aの上端部を凹陥部12に挿入する。
【0049】
導電性天板6Aと、はんだボール5とからなる電気機器10Aにおいては、第1の実施の形態と同様のシールド効果を得る。そして、配線基板1から導電性天板6A上面に至るまでの電気機器10Aの高さ寸法が、半導体装置2Aを導電性天板6Aの凹陥部12に挿入する分だけ低くなり、電気機器10Aの背低化を得られる。
【0050】
図3(A)(B)は、本発明における第3の実施の形態での、配線基板1に実装される厚形半導体装置2Aと電気機器10Bの概略の平面図と断面図である。
この実施の形態も、電気機器10Bとして占有する面積に変りがないが、特に厚形の半導体装置2Aに適用される。ただし、第2の実施の形態で述べたような導電性天板6Aに凹陥部12を設ける加工では手間がかかるので、これを不要としたい。
【0051】
はんだボール5を介して取付けられる平板状の導電性天板6で厚形半導体装置2Aを覆う基本構成では、本来、半導体装置2Aが厚形になった分、はんだボール5は直径が大なるものを用いなければならない。
ただし、多層配線基板1に設けられるスルーホール4の相互間隔を変えると大幅な設計変更となり、多層配線基板1から製造し直す必要があるので、少なくともスルーホール4の相互間隔は変えられない。
【0052】
そのため、相互間隔を変えないスルーホール4のそれぞれに、直径を大としたはんだボール5を接続しようとしても、はんだボール5は球形なので、最も突出する部分が隣接するはんだボール5の最も突出する部分に接触してしまい、スルーホール4に対する接続ができない。
【0053】
たとえ接触しない範囲内の直径のはんだボール5を用いたとしても、はんだボール5が大型になるから、加熱温度や加熱時間を調整し直す必要があり、手間がかかる。溶融した状態ではんだボール5相互のブリッジ現象を防止し、かつ互いの隙間が1mm以下になるように完成できる可能性はほとんどない。
【0054】
そこで、導電性天板6に対する凹陥加工を不要としたうえで、スルーホール4の相互間隔を変えず、はんだボール5も何ら変更せずにそのまま用いて、電気機器10Bがある程度厚形になることは認めたうえで、厚形電気部品2Aに対応した構成を図3(A)(B)にもとづいて述べる。
【0055】
具体的には、同一の手段で厚形半導体装置2Aを多層配線基板1に実装する。その一方で、前記した取付け幅M2と同一幅寸法で、かつ通常の半導体装置2と厚形半導体装置2Aとの厚さの差に相当する厚さ寸法の金属片からなり、導電性を有するスペーサ15を用意し、これを多層配線基板1に先付け(はんだ付け)する。
【0056】
スペーサ15の上面にパッドが設けられ、そこにはんだボール5が接合され、はんだボール5を介して導電性天板6が取付けられる。スペーサ15はスルーホールを介してグランドパターンと電気的に接続され、かつはんだボール5を介して導電性天板6と電気的に接続される。したがって、導電性天板6と多層配線基板1のグランドパターンとの電気的な導通を、スルーホールとスペーサ15およびはんだボール5で取ることになる。
【0057】
完成した電気機器10Bは、半導体装置2Aの周囲をスペーサ15と複数のはんだボール5が囲み、半導体装置2Aを導電性天板6が覆う。前記スペーサ15の板厚分、すなわち通常の半導体装置2と厚形半導体装置2Aとの厚さの差分だけ、電気機器10Bとして厚形になることはやむを得ない。
【0058】
しかしながら、スルーホール4相互の間隔を変えずにすむので、多層配線基板1は勿論のこと、はんだボール5および導電性天板6は図1で用いたものをそのまま用いることができる。しかも、溶融した状態ではんだボール5相互の隙間が確実に1mm以下になり、半導体装置2Aから発生する電磁波が外部に漏れないように確実にシールドする。
【0059】
図4(A)(B)は、本発明における第4の実施の形態での、多層配線基板1に実装される半導体装置2と電気機器10Cの概略の平面図と断面図である。
この実施の形態では、先に第1の実施の形態で説明した通常タイプの半導体装置2に適用される。また、電気機器10Cとして、半導体装置2から発生する電磁波を確実にシールドすることは変りがないが、この薄型化を実現している。
【0060】
すなわち、電気機器10Cは、グランドパターンとスルーホールを有するとともに半導体装置2を実装する多層配線基板1と、はんだボール5および、後述する導電性天板6Cとから構成される。多層配線基板1とはんだボール5は上述のものをそのまま用いる。ここでの導電性天板6Cは、全体が導電性のよい金属板からなる。
【0061】
したがって、前記金属製導電性天板6Cは、上述した導電性天板6よりも薄肉ですみ、平板樹脂材6aを被覆する金属膜6bの加工が不要となるばかりか、電気機器10Cとして背低化を得られる。ただし、この導電性天板6Cは前記導電性天板6よりも重量がかさみ、部品費としてある程度高価になることはやむを得ない。
【0062】
なお、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る、配線基板に実装される半導体装置と、この半導体装置をシールドする電気機器の平面図と断面図。
【図2】本発明における第2の実施の形態に係る、配線基板に実装される半導体装置と、この半導体装置をシールドする電気機器の平面図と断面図。
【図3】本発明における第3の実施の形態に係る、配線基板に実装される半導体装置と、この半導体装置をシールドする電気機器の平面図と断面図。
【図4】本発明における第4の実施の形態に係る、配線基板に実装される半導体装置と、この半導体装置をシールドする電気機器の平面図と断面図。
【図5】スリット寸法対シールド量の特性図。
【図6】本発明の従来例の、配線基板に実装される半導体装置と、取付けられるシールド板の一部断面図。
【符号の説明】
【0064】
2…半導体装置(電気部品)、H…配線パターン、3…グランドパターン、1…多層配線基板、4…スルーホール、5…はんだボール、6…導電性天板(天板部材)、9…(アンダーフィルされる)樹脂材、12…凹陥部、15…スペーサ、6a…樹脂製平板、6b…金属膜、6C…金属製導電性天板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に電気部品が接続される配線パターンを有し、他の面にグランドパターンを有する多層配線基板と、
互いに所定間隔を存し、かつ前記多層配線基板の一面における前記電気部品の周囲部位と前記グランドパターンとの間に亘って設けられる複数のスルーホールと、
前記電気部品を囲むように配設され、各々が前記スルーホールと電気的に接続される複数のはんだボールと、
これらはんだボールと電気的に接続され、前記電気部品を覆う天板部材と
を具備することを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記電気部品と前記多層配線基板との間の隙間と、多層配線基板と前記天板部材との間隙に、樹脂材が充填されていることを特徴とする請求項1記載の電気機器。
【請求項3】
前記天板部材は、前記電気部品の一部が挿入する凹陥部を有することを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載の電気機器。
【請求項4】
前記多層配線基板一面と前記はんだボールとの間に、はんだボールを介して天板部材と電気的に接続するとともに、スルーホールを介してグランドパターンと電気的に接続する、導電性を有するスペーサが介在されることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載の電気機器。
【請求項5】
前記天板部材は、合成樹脂材からなる平板と、この平板樹脂材の一面を覆う導電性を有する金属膜とからなり、前記金属膜が前記はんだボールに接続されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電気機器。
【請求項6】
前記天板部材は、導電性を有する金属板からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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