説明

電気機械スイッチ

【課題】低駆動電圧で高速なスイッチング応答をすることができる電気機械スイッチを提供する。
【解決手段】MEMSスイッチである電気機械スイッチ本体10は、シリコン基板2上に形成された第1アンカー12及び第2アンカー13にて両端を固定かつ装架された第1可動電極14及び第2可動電極16と、これら可動電極に対面した固定電極18とを有し、相対的に弱いばね力の第1可動電極14と固定電極18とにより低電圧駆動可能な第1の電気機械スイッチ22が構成され、相対的に強いばね力の第2可動電極16と固定電極18とにより低電圧駆動でラッチ可能な第2の電気機械スイッチ24が構成されることにより、低駆動電圧により第1可動電極14が高速で変位して第1の電気機械スイッチが高速でオンし、第2可動電極16が復元力により高速に固有振動して第2の電気機械スイッチが高速でオフし、戻ってきた第2可動電極16を低駆動電圧でラッチして、第2の電気機械スイッチがオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ・エレクトロメカニカル・システムズ・スイッチ(以下、「MEMSスイッチ」という)に関し、特に低駆動電圧で高速な応答を可能にするための電気機械スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFスイッチ(Radio Frequency and Micro-wave Switch)は、現在GaAs基板を利用したHEMT、MESFET、PINダイオードなどの半導体RFスイッチが主力である。
しかし無線端末のさらなる高性能化、低消費電力化を図るため、従来の半導体素子だけではなく、微小な電気機械素子を用いたデバイスを活用することが提案されている。
【0003】
これは微小な電極を静電力等で駆動させ、電極間の相対距離をメカニカルに制御することで、信号のオン、オフを行う電気機械スイッチである。オン時には電極が電気的に接触しているため、電極間の損失は極めて微小となり、低損失のスイッチを実現することができる。
【0004】
特に無線端末のフロントエンド部に適用されるRFスイッチは、低損失及び低消費電力が要求されるため、このような微小な電気機械素子を用いたデバイスは、有用な解決手法として期待されている。
従来の電気機械素子を用いたスイッチとしては、多くの種類のスイッチが考案されており、非特許文献1に大半が網羅されている。
【0005】
例えば、非特許文献1に記載のRFMEMS(Radio Frequency Microelectoromechanical Systems)を使用したスイッチは、一つの可動電極と、一つの固定電極で構成されており、可動電極と固定電極間に駆動制御電圧としてDC電圧を印加すれば、静電力が発生し、その静電力を駆動力として可動電極が固定電極に引き込まれ、物理的に電極が接触し、可動電極側の入力端子からの入力信号が固定電極側の出力端子へと出力し、信号が結合する。
【0006】
結合の方法として、メタルとメタルを直接接触させる方式と、絶縁体を介して、容量的に結合させる方式とがあるが、何れも低損失の結合を可能としている。
電極間に印加した駆動制御電圧を0にすれば静電力が解消され、可動電極が持つばね力を駆動力として、可動電極は元の位置に復帰する。このとき、可動電極と固定電極間との距離は十分離れているため、電極間の容量値も小さく、容量結合しないので、電極間で結合する信号を遮蔽することが可能となる。
【0007】
このように、電極間距離を十分にとれば、アイソレーションを十分確保でき、かつ、損失も極めて小さくなるため、従来の半導体を用いたRFスイッチと比べて、電気的な特性は大変優れている。
【0008】
またこの種のMEMSスイッチとして特許文献1の提案がある。
特許文献1記載のMEMSスイッチでは、応答時間及び印加電圧の低電圧化等を目的として、互いに僅かに離れた間隔で配置された第1、第2及び第3の梁と、これらの梁に静電力を印加させるための電圧印加手段とを備え、静電力によって各梁の位置及び梁間の容量を変化させるように構成されており、第1の梁及び第2の梁の両方とも可動させることで、梁がより高速で電気的に結合することができ、かつ、高速でオフさせるために、第2の梁に対面する第3の梁に静電力を発生させ、第1及び第2の梁に予め近づけておくことで、第2と第3の梁間に強い静電力を印加でき、より高速に応答することが示されている。
【0009】
さらに梁に同形状の湾曲を設けることで、梁の内部応力変化に対応するプルイン電圧の変化を緩和させ、梁の歪みによる梁間の静電容量変化も緩和させることができることが示されている。
【0010】
【非特許文献1】Gabriel M.Rebeiz著、"RF MEMS THEORY、 DESIGN、 AND、 TECHNOLOGY"、 John Wiley & Sons刊、 2003年2月1日、p.122
【特許文献1】特開2004-111360号公報 (第5頁から第6頁、第1図、第3図及び第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1に示すMEMSスイッチでは、有限の質量を持った可動電極を、静電力を駆動力として動かすため、強い静電力が必要となり、またスイッチがオン・オフする応答時間についても、従来の半導体素子を用いたスイッチでは、ナノセカンド(ns)オーダーであるのに比べ、MEMSスイッチの応答時間は数10μs以上であり、応答時間が極めて遅いという問題がある。
【0012】
例えば非特許文献1には、既に公表されている電気機械スイッチの駆動電圧と応答時間とがまとめられている。最も早い応答時間は4μsであるが、それを実現するためには40V以上の極めて高い電圧を印加している(非特許文献1、p.16)。
【0013】
MEMSスイッチを無線通信端末に適用する場合、駆動電圧が制限され、数ボルト以下で駆動させなければならない。また適用する無線システムにもよるが、例えば無線LANシステムなどでは、0.2μsの極めて短い時間でオン・オフすることが要求される場合もあるが、非特許文献1に示す例では4μs程度に止まっている。
【0014】
これは、無線通信端末の駆動電圧の制限に加え、所望のアイソレーションを確保するためには、電極間距離を大きくする必要があるが、電極間距離が大きいと必然的に応答時間が遅くなることに基づくものである。
【0015】
さらに、MEMSスイッチの可動電極を固定電極に引き込む際には静電力を用いているが、可動電極を引き離す場合には、可動電極が有するばね力を用いる。オンとオフとの応答時間を同じにしようとすれば、可動電極のばね力をある一定以上の大きさにする必要がある。駆動力としてのばね力を強くすると、可動電極を引き込む際には、このばね力に抗して静電力を印加しなければならないので、更に大きな駆動電圧が必然的に要することになる。
したがって、非特許文献1に示すMEMSスイッチでは、駆動電圧が極めて高いという問題がある。
【0016】
また特許文献1に示す例では、各梁を全て可動にすることにより高速にスイッチングかつ低直流電位での動作を可能にしているが、さらに、より高速にスイッチングかつ低駆動電圧を持つスイッチへの要求が高まっている。
【0017】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、低駆動電圧で高速スイッチング応答の可能な電気機械スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の電気機械スイッチは、MEMSスイッチにおいて、相対的に弱いばね力で復元可能な少なくとも第1の梁の変位に基づいてオン・オフする第1の電気機械スイッチと、相対的に強いばね力で復元可能な少なくとも第2の梁の変位に基づいてオン・オフする第2の電気機械スイッチとを備え、初期状態において第1の電気機械スイッチがオフであり、第2の電気機械スイッチがオンであることによりオフ状態となる構成を有している。
【0019】
この構成により、第1の電気機械スイッチは高速にオンし、また第2の電気機械スイッチは高速にオフして、低電圧駆動が可能で高速にスイッチング応答することができる電気機械スイッチを提供することができる。
さらにメカニカルなスイッチング動作をするので、低損失で、高いアイソレーションを確保することができる。
【0020】
さらに本発明の電気機械スイッチは、初期状態から、駆動力の印加及び解除のいずれかにより第1の梁が高速に変位して第1の電気機械スイッチが高速応答してオンになることにより、高速にオン状態となるものを含む。
この構成により、メカニカルなスイッチングのオン応答を高速にすることができる。
【0021】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチがともにオンであるとき、第1の梁及び第2の梁の変位を同時に解消させ、第2の梁が強いばね力のために高速に復元動作して第2の電気機械スイッチが高速にオフとなることにより、高速にオフ状態になるものを含む。
この構成により、メカニカルなスイッチングのオフ応答を高速にすることができる。
【0022】
さらに本発明の電気機械スイッチは、第2の梁が第2の電気機械スイッチをオフにしたことにより固有振動を開始し、第2の電気機械スイッチをオフにしている変位位置近くまで戻ってきたときに、印加及び解除のいずれかによる駆動力で第2の梁をラッチするものを含む。
この構成により、低電力動作でラッチすることができる。
【0023】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁の変位及び第2の梁の変位の少なくとも一方が、静電力に基づくものを含む。
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁の変位及び第2の梁の変位の少なくとも一方が、電磁力に基づくものを含む。
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁の変位及び第2の梁の変位の少なくとも一方が、圧電気に基づくものを含む。
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁の変位及び第2の梁の変位の少なくとも一方が、熱膨張に基づくものを含む。
この構成により、低電力動作で梁を変位させることができる。
【0024】
さらに本発明の電気機械スイッチは、第1の梁及び第2の梁のいずれもが空隙を介して平行に対面する共通の固定電極を有しており、固定電極と第1の梁とで第1の電気機械スイッチを構成し、固定電極と第2の梁とで第2の電気機械スイッチを構成したものを含む。
この構成により、第1の梁及び第2の梁が固定電極と電気的に結合する動作速度を異なるものに調節でき、双極双投のスイッチングが可能になる。
【0025】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁及び第2の梁の各固有振動の最大振幅に基づいて固定電極との空隙を設けたものを含む。
この構成により、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの動作速度を異なるものに設定することができ、アイソレーションの確保が可能になる。
【0026】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の電気機械スイッチがオンかつ第2の電気機械スイッチがオンであるときのみオン状態となるものを含む。
この構成により、初期状態から第1の梁が高速に変位して第1の電気機械スイッチをオンするだけで電気機械スイッチがオン状態になるため、高速にオン応答をすることができる。
【0027】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁と第2の梁とを平行に配設するとともに、第2の梁よりも相対的に弱いばね力で復元可能な第3の梁を平行にして設けており、第1の梁と第2の梁とで第1の電気機械スイッチを構成し、第2の梁と第3の梁とで第2の電気機械スイッチを構成したものを含む。
この構成により、第2の電気機械スイッチの第2の梁が高速に変位するので、高速にオン・オフ動作することができる。
【0028】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁及び第3の梁と第2の梁との空隙を、第2の梁の固有振動の最大振幅に基づいて形成したものを含む。
この構成により、第2の梁の固有振動数を設定して高速応答可能にできる。
【0029】
また本発明の電気機械スイッチは、第3の梁の変位が、静電力に基づくものを含む。
この構成により、低電力動作で第3の梁を変位させることができる。
また本発明の電気機械スイッチは、第3の梁の変位が、電磁力に基づくものを含む。
この構成により、上記効果に加えて変位位置(ギャップ)に依存しない線形的な変化を与えることができる。これは静電力による変化はプルインという現象があり、ギャップの1/3程度しか、線形的に変化できないが、電磁力の場合、距離に依存しない力となるためである。
また本発明の電気機械スイッチは、第3の梁の変位が、圧電効果に基づくものを含む。
この構成により、上記効果に加えて両方向への変位が容易となることができる。
また本発明の電気機械スイッチは、第3の梁の変位が、熱膨張に基づくものを含む。
この構成により、上記効果に加えてより強い接触力を確保することができる。
【0030】
また本発明の電気機械スイッチは、梁が圧電素子、形状記憶合金、バイモルフ素子及び電磁歪素子のいずれか、或いは複数の梁がこれらの組合せであるものを含む。
この構成により、各梁が低電力で動作し、動作電圧を低くすることができる。
【0031】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の梁、第2の梁及び第3の梁のいずれの変位もが解消しているとき、メカニカルプローブにより第2の梁を第3の梁に近づけるとともに、駆動力の印加及び解除のいずれかにより第3の梁を変位させて第2の梁をラッチするものを含む。
この構成により、電圧印加することなく第2の梁が変位して第3の梁に近づくので、第3の梁を低電力で動作することができる。
【0032】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチが、気圧が大気圧と異なる環境下及び乾燥したヘリウムを充填した環境下のいずれかに置かれているものを含む。
この構成により、高速な動作をする梁に対する空気などの流体の影響を抑え、ダンピング効果を低減することができる。
【0033】
また本発明の電気機械スイッチは、第1の電気機械スイッチが、所定のアイソレーションを得るのに要するまでに必要な時間だけ、第2の電気機械スイッチがオフとなるものを含む。
この構成により、高いアイソレーションを確保できるとともに、確実にオフ動作をすることができる。
【0034】
また本発明の電気機械スイッチは、第2の梁の固有振動による周期が、第1の梁が十分にアイソレーションを得るための位置に達する時間と、同じ時間であるものを含む。
【0035】
第1の電気機械スイッチがオンであって、信号を通過状態から遮断状態にスイッチングさせる場合は、第1の梁が所定のアイソレーションを得るために必要な位置に到達するまでの間に、第2の梁が、所定の時間内に、必要アイソレーションを得るための位置に到達し、かつ、再び元のラッチ状態に戻る構成を有している。
この構成により、高速で動作する第2の梁がアイソレーションを確保するとともに、相対的に低速で動作する第1の梁のアイソレーションを確保してから第2の梁をラッチすることができる。
【0036】
また本発明は、上記電気機械スイッチにおいて、電気機械スイッチは、互いに平行となるように配設された、第1の梁で構成された第1の低ばね可動電極と、第2の梁で構成された高ばね可動電極と、第3の梁で構成された第2の低ばね可動電極とを備え、前記第1の電気機械スイッチは、第1の梁で構成された第1の低ばね可動電極と、前記第1の梁に相対向して配設された第1の固定電極とを具備し、前記第3の電気機械スイッチは、第3の梁で構成された第2の低ばね可動電極と、前記第2の梁に相対向して配設された第3の固定電極とを具備し、前記第2の電気機械スイッチは、第2の梁で構成された高ばね可動電極と、前記第1の固定電極から延長せしめられ、前記高ばね可動電極と相対向する第1の領域と、前記第2の固定電極から延長せしめられ、前記高ばね可動電極と相対向する第2の領域と、を具備し、前記第3の梁と、前記第1および第2の梁は、連結部を介して機械的に接続されたものを含む。
また本発明は、上記電気機械スイッチにおいて、前記第2の梁が入力端子に接続されるとともに、前記第1および第2の梁がそれぞれ第1および第2の出力端子に接続されたものを含む。
この構成により、第3の梁は、第1及び第2の梁の変位に連動して変位するため、第1低ばね可動電極が何らかの不具合で第1の固定電極にラッチされた場合にも、強いばね力を有する高ばね可動電極がオフ状態から電極を引き込むことができず、最終的に中間位置、すなわち第1および第2の低ばね可動電極、高ばね可動電極ともにオフ状態になるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電気機械スイッチでは、低電圧駆動で動作可能な第1の電気機械スイッチが高速でオンし、低電圧駆動でラッチ可能な第2の電気機械スイッチが高速でオフするので、第1の電気機械スイッチと第2の電気機械スイッチとの組合せにより低駆動電圧で動作することができかつ高速にオン・オフすることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の電気機械スイッチは、空気の粘性などのダンピング効果が十分に弱くなる環境下として減圧下またはヘリウムガス雰囲気下に設置された電気機械スイッチで、弱いばね力の可動電極が固定電極に高速で引き込まれる第1の電気機械スイッチと、強いばね力を有する可動電極が高速に固定電極から引き離される第2の電気機械スイッチとで構成されるもので、定常状態では、第1の電気機械スイッチのオン・オフのみで、信号を切り替えることができる。
【0039】
さらに、信号を遮断する際の過渡状態において、第1の電気機械スイッチが十分なアイソレーションを得るためには、十分電極位置が離れるまでに要する時間内のアイソレーションを確保するため、第2の電気機械スイッチが高速にオフ状態となることで、過渡状態でのアイソレーションを確保する。
また第2の電気機械スイッチは、信号を遮蔽する場合、一瞬だけ、可動電極が引き離されるが、強いばね力と弱いダンピング効果により、可動電極は固有振動で振動するため、可動電極は再び、初期位置付近に戻る。このため微小な電圧で、強いばね力の可動電極を有する第2の電気機械スイッチをラッチすることができる。
【0040】
このように本発明の電気機械スイッチは、微小な電気機械素子を用いたスイッチにおいて、弱いばね力を有した電極を用いて、高速に引き込まれるが低速に戻る第1の電気機械スイッチと、強いばね力を有した電極を用いて、一瞬、ラッチから解除されるがすぐにラッチされる第2の電気機械スイッチとを組み合わせることで、低駆動電圧で、高速に信号をオン・オフすることができる。
【0041】
以下、図面を参照しつつ本発明による電気機械スイッチの好適な実施の形態を詳細に説明する。なお図中、実質的に同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【0042】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における電気機械スイッチの一単位素子を示す外観構成図である。
図2は実施の形態1の第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの要部構成一部断面図である。
図1及び図2において、実施の形態1の電気機械スイッチ1は、シリコン基板2上に形成され封止カバーガラス3で覆われた電気機械スイッチ本体10と、入出力端子となる第1電極端子4、第2電極端子5、第3電極端子6、第4電極端子7、第5電極端子8及び第6電極端子9とを備えている。
【0043】
図2において電気機械スイッチ本体10は、シリコン基板2上に形成された第1アンカー12及び第2アンカー13にて両端を固定かつ装架された第1可動電極14及び第2可動電極16と、これら第1可動電極14及び第2可動電極16と所定の空隙を設けて対面して形成された固定電極18とを有している。
本実施の形態1では、第1可動電極14及び第2可動電極16が両持ち梁として構成されており、相対的に、第1可動電極14が弱いばね力を、第2可動電極16が強いばね力を有するように構成されている。
第1可動電極14と固定電極18とにより第1の電気機械スイッチ22が構成され、第2可動電極16と固定電極18とにより第2の電気機械スイッチ24が構成され、これらは直列接続されている。
【0044】
第1可動電極14及び第2可動電極16は印加された電圧に基づく静電力と、これら可動電極自体のばね力とにより固有振動するが、その最大振幅以上の空隙が確保されている。
この空隙には、ダンピング効果を低減するために乾燥したヘリウムが充填され、又は、真空に保持されている。
【0045】
なお、第1可動電極14の入出力端子となるのが第1電極端子4と第5電極端子8であり、第2可動電極16の入出力端子となるのが第2電極端子5と第4電極端子7であり、固定電極18の入出力端子となるのが第3電極端子6と第6電極端子9である。
例えば、第5電極端子8を信号入力端子とすると、第2電極端子5又は第4電極端子7が信号出力端子になる。
また各電極端子には、第1可動電極14及び第2可動電極16と固定電極18との間に静電力を印加するための制御電圧源が接続可能になっている。
【0046】
図3は図2に示すA-A断面図である。
図2及び図3において、第1可動電極14及び第2可動電極16の長さL1、L2(図示せず)は同じ長さLで400μm、幅はw1が2.5μm、w2が5μm、厚さD1、D2は同じ0.4μm、固定電極18との電極間ギャップはg1が0.2μm、g2が1.5μmに、それぞれ設定されている。
【0047】
図4は本発明の電気機械スイッチの等価回路図である。
図4に示すように、本発明の電気機械スイッチ40は、第1の電気機械スイッチ22と、第2の電気機械スイッチ24とを備え、初期状態において第1の電気機械スイッチ22がオフ状態であり、第2の電気機械スイッチ24がオン状態となっており、初期状態において電気機械スイッチ40はオフになっている。
すなわち、初期状態において、第2可動電極16には駆動制御電圧が印加され、静電力により固定電極18と電気的に結合しているが、第1可動電極14には駆動制御電圧は印加されていない。
【0048】
次に実施の形態1における電気機械スイッチの動作について説明する。
図2及び図4を参照して、初期状態から第1可動電極14に駆動制御電圧を印加すると、ばね力の弱い第1可動電極14が静電力により高速動作して固定電極18に引き込まれ電気的に結合し、第1の電気機械スイッチ22がオン状態となり、電気機械スイッチ40がオンになる。
【0049】
第1可動電極14及び第2可動電極16に印加している駆動制御電圧を解除すると、各可動電極の持つばねの復元力により、第1可動電極14及び第2可動電極16が固定電極18から引き離れ、最初に第2の電気機械スイッチ24がオフ状態となり、電気機械スイッチ40がオフになる。
【0050】
このとき、ばねの復元力の強い第2可動電極16は、ばねの復元力の弱い第1可動電極14よりも高速動作して固定電極18から離れ、固有振動を開始する。
この振動する第2可動電極16が、固定電極18付近に戻ってきた時に駆動制御電圧を印加すると、静電力により第2可動電極16が固定電極18にラッチする。この間に、第1可動電極14が固定電極18から十分に離れ、第1の電気機械スイッチ22がオフ状態となっており、第2可動電極16がラッチされて第2の電気機械スイッチ24がオン状態になっても、電気機械スイッチ40はオフのままである。
【0051】
このように実施の形態1における電気機械スイッチでは、高速にオン状態になる第1の電気機械スイッチと高速にオフ状態になる第2の電気機械スイッチとの組合せにより、高速でオン・オフ応答することができる。
【0052】
次に、実施の形態1で示した可動電極が両持ち梁の場合を例にあげ、本発明の電気機械スイッチの動作を詳細に説明する。
実施の形態1のように可動電極が両持ち梁で構成されている場合、可動電極のばね定数kは式(1)で示される。
【0053】
k=Ew(D/L)+8σ(1ーν)w(D /L) …(1)
【0054】
ここで、Eはヤング率、wは可動電極の線幅、Dは可動電極の厚さ、Lは可動電極の長さ、σは内部応力、νはポアソン比をそれぞれ示す。
【0055】
式(1)から明らかなように、可動電極の形状、材質、物性値を変化させることで、ばね定数kを変化させることができる。
【0056】
次に、可動電極に外力Fが印加された場合の運動方程式を式(2)に示す。
【0057】
mdZ(t)2/dt2+b(1.2ーZ(t)/g)ー3/2Z(t)+kZ(t)=F …(2)
【0058】
ここで、Z(t)は時刻tでの固定電極からみた可動電極の位置、Fは外力、mは可動電極の質量、bはダンピング係数、gは電極間距離の初期値、kは可動電極のばね定数をそれぞれ示す。
【0059】
第1の電気機械スイッチ22では第1可動電極14のばね力が極めて弱く、僅かな駆動力でも応答するように設計されている。そのため、第1可動電極14を引き込む際には、僅かな駆動力でも、高速に応答して、引き込むことが可能となる。
【0060】
例えば、第1可動電極14の材質にアルミニウム(内部応力が50MPa、ヤング率70GPa、ポアソン比0.25、密度2.69kg/m3)を用い、形状は幅w1が2.5μm、厚さDが0.4μm、長さLが500μm、電極間ギャップg1が0.2μmの場合、8Vを印加すれば、0.2μsで第1可動電極14は固定電極18に引き込まれる。
【0061】
図5は、式(2)の運動方程式を解いて、横軸に時間、縦軸に第1可動電極の固定電極からの位置を示したもので、時刻0で駆動電圧を印加した際の第1可動電極の位置変化の過渡現象を示したもので、電極位置が0の状態は、固定電極18と第1可動電極14とが接触した位置を示す。
【0062】
図5に示すように、0.2μs以内に第1可動電極14が固定電極18に引き込まれて、接触していることが判る。
このとき、第1可動電極14のような薄い構造物に高速な動作を行わせる場合、その周りの空気などの流体の影響を受けて動作が複雑になるため、この流体の影響を無視できない。
したがって、このようなダンピング効果を軽減するため、スイッチを構成する梁などが形成された内部に密閉空間を形成し、大気中でのダンピング効果と比べて、25分の1となるようにしている。
【0063】
次に、第1の電気機械スイッチのオフ動作について説明する。
式(2)からも明らかなように、制御電圧を切り、駆動力を解除すれば、第1可動電極は自身のばね力を駆動力とし、元の位置に復元する。しかし、ばね力が弱いため、応答時間はオンの時よりも遅くなる。
【0064】
図6は第1可動電極と固定電極とが接触している位置で、駆動制御電圧をオフにした時の第1可動電極位置の過渡応答を示す図である。
図6に示すように、第1可動電極14と固定電極18とが接触している位置の時刻0で静電力を解除すると、第1可動電極14のばね力を復元力として、初期位置の0.2μmへと1.6μs(約2μs)の時間で復帰しており、オン動作の0.2μsに比べて約10倍程度の応答時間を要することが判る。
このため第1の電気機械スイッチ22だけでは、高速オンは可能でも、高速オフは困難となる。
【0065】
次に、第2の電気機械スイッチ24の構造及び動作について説明する。
第2の電気機械スイッチの第2可動電極16は、ばね力が極めて強くなるように構成されている。第1の電気機械スイッチ22と同じ形状の可動電極にする場合には、電極間ギャップg2を大きくすればよく、また式(1)からばね定数を強くするような可動電極構造にしてもよい。
【0066】
例えば、第2可動電極の材質にアルミニウム(内部応力が50MPa、ヤング率70GPa、ポアソン比0.25、密度2.69kg/m)を用い、形状は幅w2が5μm、厚さDが0.4μm、長さLが500μm、電極間ギャップg2が1.5μmの構成にしてもよい。
この第2の電気機械スイッチでは、何も外力を加えない場合(ラッチしない場合)、第2可動電極と固定電極とが接触している位置で制御電圧を解除した時の第2可動電極位置の過渡応答は、図7と図8に示すようになる。なお、図8は図7の1μs以下のふるまいを拡大したものである。
【0067】
このような第2の電気機械スイッチの構成では、第1の電気機械スイッチの第1可動電極のばね力よりも第2可動電極のばね力の方が強く、さらにダンピング力も弱いため、図7に示すように第2可動電極は固有振動数で振動しながら、固定電極からの位置を変化させる。
図8に示すように、0.2μs以内に、第2可動電極の電極位置は0.16μm(約0.2μm)に達し、さらに図7に示すように1μs以内に初期位置の1.5μmを通過し、さらにオーバーシュートして、1.5μsで最大変位の3μm、2.5μsで変位0μm付近まで戻ってくる。
このように第2可動電極のダンピングを抑えた環境であるため、電極位置は徐々に1.5μmの位置に収束していく。
【0068】
次に、以上のような第1の電気機械スイッチと第2の電気機械スイッチとを組み合わせた本発明の電気機械スイッチのスイッチ動作について詳細に説明する。
先ず、本発明の電気機械スイッチのオフ状態からオン状態への動作を説明する。
図9は電気機械スイッチのオン状態とオフ状態とを等価回路で示した図である。
図9(a)に示すように、本発明の電気機械スイッチのオフ状態は、第1の電気機械スイッチ22がオフ、第2の電気機械スイッチ24がオン状態となっている。つまり第1の電気機械スイッチ22は制御電圧が0、第2の電気機械スイッチ24には制御電圧を印加し、第2可動電極を固定電極にラッチしている。
【0069】
この状態から、第1の電気機械スイッチ22に駆動制御電圧を印加すると、第1可動電極が固定電極に引き込まれ、第1可動電極と固定電極とが接触して電気的に結合し、図9(b)に示すように電気機械スイッチはオン状態となる。このとき、先に述べたように、第1の電気機械スイッチの第1可動電極は、0.2μsの高速で引き込まれるため、信号は0.2μsで伝達される。
【0070】
図9(a)及び(b)に示すように、第2の電気機械スイッチ24は、第1の電気機械スイッチ22がオフ状態からオン状態へ切り替える過渡状態においては、常に駆動制御電圧を印加した状態、すなわちオン状態を保っている。
【0071】
次に、電気機械スイッチのオン状態からオフ状態へ切り替える動作について説明する。
図10は第1の電気機械スイッチと第2の電気機械スイッチの可動電極位置を併せて示したもので、曲線31が第1の電気機械スイッチ、曲線32が第2の電気機械スイッチの可動電極位置をそれぞれ示している。
図11(a)から(d)は各時刻における第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの状態を等価回路で示したものである。
本発明の電気機械スイッチのオン状態では、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの両方ともオン状態、すなわち可動電極位置は固定電極と接触して0となっており、ともに駆動制御電圧が印加されている。
【0072】
時刻0で第1の電気機械スイッチ22と第2の電気機械スイッチ24とに印加している駆動制御電圧を0にすると、図10に示すように、時刻t1(約0.25μs)において、第2の電気機械スイッチ24の第2可動電極の位置は0.2μmとなり、第2の電気機械スイッチ24単体でアイソレーションを確保することが可能になるとともに、本発明の電気機械スイッチは高速動作してオフ状態になる。
【0073】
時刻t2(約2μs)では、第2の電気機械スイッチ24の第2可動電極の位置は初期位置の1.5μm程度であるが、第1の電気機械スイッチ22の第1可動電極が0.2μmの位置に達し、第1の電気機械スイッチ22単体でも十分なアイソレーションを確保することができる。
時刻t3(約2.5μs)において、第2の電気機械スイッチ24の第2可動電極は、再びラッチ位置に、すなわち変位0の付近に戻ってくる。
【0074】
この時刻t3においては、第1の電気機械スイッチ22は既に単体で十分なアイソレーションを確保した状態となっているため、この状態において、第2の電気機械スイッチ24に駆動制御電圧を印加して第2可動電極をラッチしても、本発明の電気機械スイッチ全体として高周波信号のアイソレーションは十分確保される。
【0075】
このラッチに要する制御電圧は、戻ってきた第2可動電極と固定電極間のギャップが小さくなっているため、僅かな電圧にすることこができる。
このようにして、本発明では第1の電気機械スイッチと第2の電気機械スイッチとを組み合わせることにより、高速な応答特性を有する電気機械スイッチを実現することができる。
【0076】
実施の形態1では、図12(a)に示すように、固定電極62及び可動電極64が平行平板型60で構成したが、図12(b)に示すように固定電極66と可動電極68とが櫛歯型69の構造でしてもよい。
可動電極と固定電極とが対向する面のいずれか、或いは両方に誘電体を形成し、容量型スイッチとしてもよい。
【0077】
さらに可動電極としてアルミニウムを例に挙げたが、Alでなくとも他の金属材料、例えばMo、Ti、Au、Cuでもよく、また導電性材料を用いてもよい。
また可動電極として、板状シリコンの表面にナノメータサイズで金属を堆積させた梁構造体であってもよく、さらに圧電素子、形状記憶合金、電磁歪素子及びバイモルフ効果を利用したバイモルフ素子でもよい。
【0078】
この平行平板型及び櫛歯型では、可動電極が基板に形成された固定電極側に静電力により引き込まれるが、基板に対して水平方向に動作する構造でもよい。
【0079】
次に、本発明の実施の形態1の変形例について説明する。図13は可動電極が水平方向に動作する電気機械スイッチの概略図である。
図13において電気機械スイッチ70は、シリコン基板2上に形成された第1アンカー72及び第2アンカー73にて、両端を固定かつ装架された第1可動電極74及び第2可動電極76と、これらの可動電極の間に形成され、かつ、各可動電極の厚さよりも厚く形成された固定電極78とを有し、この固定電極78に対して第1可動電極74及び第2可動電極76が平行に所定間隙を有して形成されている。
【0080】
第1可動電極74と固定電極78との間隙は固有振動する第1可動電極74の最大振幅であり、第2可動電極76と固定電極78との間隙は固有振動する第2可動電極76の最大振幅であり、異なる間隙である。
第1可動電極74と固定電極78とで第1の電気機械スイッチが構成され、第2可動電極76と固定電極78とで第2の電気機械スイッチが構成されている。
【0081】
例えば、第1可動電極14の形状は、厚さが2.5μm、幅が0.4μm、長さが500μm、固定電極とのギャップが0.2μmであり、第2可動電極76の形状は、厚さが5μm、幅が0.4μm、長さが500μm、固定電極とのギャップが1.5μmである。このような形状であれば実施の形態1と同様の作用効果を有する。
なお、図2と実質的に同一の部材には同一の符号を付した。
【0082】
この構成の電気機械スイッチ70では、第1可動電極74及び第2可動電極76が基板に対して水平方向に動作する。
またこのように基板に対して水平方向に動作する構成であれば、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの固定電極との異なる空隙を容易に形成できる。その他の動作については実施の形態1と同様である。
【0083】
以上説明した電気機械スイッチは必ずしも静電力で駆動させる必要はなく、例えば電磁力、熱源を用いた加熱、圧電素子などを駆動力としてもよい。
また特に高速で切り替えを要求する無線LANなどのアンテナダイバーシティ用DPDT(Dual Pole Double Throw、双極双投)スイッチに用いることができる。
【0084】
次に実施の形態1の電気機械スイッチの製造方法について説明する。
図14は電気機械スイッチの一単位素子を形成するシリコン基板の外観図である。
図14に示すシリコン基板2は、シリコン基板に、レジスト膜を塗布し、所定マスクパターンで露光し、現像エッチング後、レジスト膜を除去し、所定形状に形成したものである。
【0085】
シリコン基板2には、第1可動電極を固定かつ装架するための一対の第1凹部82と、第2可動電極16を固定かつ装架するための一対の第2凹部84と、固定電極端子を取り出すための一対の第3凹部86と、固定電極18を形成するための第4凹部88とが形成されている。
【0086】
図15は封止カバーガラスの外観図である。
封止カバーガラス3は板状であり、シリコン基板2の第1凹部82、第2凹部84及び第3凹部86に対応したそれぞれ一対の突起部92,94,96を有している。
【0087】
図16(a)乃至(e)はこの電気機械スイッチの製造工程図であり、(a)は図14のB−B線に対応する断面図であり、各製造工程は(a)と同一の断面を示す断面図である。
先ず、シリコン基板2上にAl層を真空蒸着又はスパッタリングにより堆積し、所定パターンのレジスト膜を塗布し、このレジスト膜をマスクとしてAl層をウエットエッチング又はドライエッチングし、固定電極18、第3電極端子6及び第6電極端子9を形成する(図2及び図16(b)参照)。
【0088】
次に、レジストで犠牲層102を形成し(図16(c)参照)、この上層にAl層をスパッタリングにより堆積後、所定パターンのレジスト膜104をマスクとしてAl層をECRプラズマによりドライエッチングし、第1可動電極14及び第2可動電極16を形成する(図16(d)参照)。
【0089】
そして、レジスト膜104及び犠牲層102をプラズマアッシングにより除去し、第1可動電極14及び第2可動電極16の梁構造を形成し、減圧装置内又はヘリウム充填装置内において、封止カバーガラス3の突起部でシリコン基板2との位置合わせをした後、封止カバーガラス3とシリコン基板2とを陽極接合する(図16(e)参照)。
【0090】
このようにして、第1可動電極14及び第2可動電極16のような薄膜状の梁構造体を形成することができるとともに、高速動作をする各可動電極の周囲の空隙を減圧あるいは乾燥したヘリウムで充填した電気機械スイッチを製造することができる。
【0091】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
図17は実施の形態2の一例を示す概略構成図である。
電気機械スイッチの構造、材質には制限がなく、可動電極の形状、材質を設定して、固有振動が所望の応答時間以下となればよい。実施の形態2では相対的にばね力を変化させている。
【0092】
図17において、実施の形態2の電気機械スイッチ200は、シリコン基板2上に形成された第1アンカー201及び第2アンカー203にて、両端を固定かつ装架された第1可動電極202、第2可動電極204及び第3可動電極206を有し、各可動電極はそれぞれ対面かつ平行に所定間隙を設けて形成されている。各可動電極は両持ち梁としてそれぞれ異なるばね力を有するように構成され、第2可動電極204のばね力は第1可動電極202及び第3可動電極206のばね力よりも強く形成され、第1可動電極202のばね力と第3可動電極206のばね力とは同一又は異なって構成されている。
【0093】
図17に示す例では、信号入力端子とする第2電極端子212と、信号出力端子とする第4電極端子214及び第6電極端子216とを有し、SPDT(Single Pole Dual Throw、単極双投)スイッチが構成可能である。
さらに、第1電極端子211と第6電極端子216とが第1可動電極202の端に、第2電極端子212と第5電極端子215とが第2可動電極204の端に、第3電極端子213と第4電極端子214とが第3可動電極206の端に形成されており、各電極端子にはそれぞれ対面する可動電極との間に静電力を印加するための制御電圧源が接続可能になっている。
【0094】
図17に示す電気機械スイッチ200では、第1可動電極202と第2可動電極204とにより第1の電気機械スイッチが構成され、第2可動電極204と第3可動電極206とにより第2の電気機械スイッチが構成されている。
なお、図示していないが電気機械スイッチ200は、封止カバーガラスで覆われ、内部は乾燥したヘリウムガスで充填又は減圧下に維持されている。
【0095】
また、第1可動電極202及び第3可動電極206に電気的に結合可能な第2可動電極204の固有振動数は、所望の応答時間以下となるように構成され、所定の応答時間で可動電極を変位させることができるようになっている。
【0096】
例えば所望の応答時間を0.2μsとすれば、固有振動数を5MHz以上にしなければならない。
具体的に説明すると、上記の式(1)、式(2)を用いて、固有振動数を5MHzにするためには、例えば、可動電極の材質にアルミニウム(内部応力が250MPa、ヤング率70GPa、ポアソン比0.25、密度2.69kg/m3)を用い、形状は幅wが1μm、厚さDが10μm、長さLが50μmとすれば、固有振動数は5MHzとなる。また各可動電極間の空隙は2.4μmとしている。
【0097】
基本的には第2可動電極204は、初期状態において常に第1可動電極202及び第3可動電極206のいずれかと電気的に結合した状態を保っている。つまり、電気機械スイッチ200は、第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチのいずれかがオン状態であり、他方がオフ状態を保っている。
【0098】
図17に示す例では、第3可動電極206に駆動制御電圧を印加して、第2可動電極204と第3可動電極206とは静電力で接触又は容量結合している。このとき、第2可動電極204及び第1可動電極202には駆動制御電圧を印加していない。
【0099】
図18は第2可動電極の変位を示す図である。
図17に示す初期状態から第3可動電極206の駆動制御電圧を0にして、静電力をリリースすると、図18に示すように、第2可動電極204はそれ自体の復元力により固有振動数で第1可動電極202と9第3可動電極206との間を振動する。このとき、ダンピング効果を軽減するため、大気中でのダンピング効果と比べて、25分の1となるようにしている。
【0100】
次に実施の形態2のスイッチング動作について説明する。
いま、駆動制御電圧を第3可動電極214に印加していて第2可動電極204と第3可動電極214とが接触している状態から、時刻0で、第3可動電極214に印加している駆動制御電圧を0にすると同時に、第1可動電極202に駆動制御電圧を印加する。
このとき、第2可動電極204は、強いばね力により第1可動電極202方向に高速に変位し、さらに第1可動電極202と第2可動電極204との間に働く静電力によって、相対的に弱いばね力を持つ第1可動電極202が、高速に応答して第2可動電極204を迎えにいきラッチする。このときの駆動制御電圧は3Vで十分ラッチできる。
このような構成の電気機械スイッチによれば、低駆動電圧ながら高速にスイッチング動作を行うことができる。
【0101】
ところで、何らかの原因で駆動制御電圧が印加されない状態になれば、第2可動電極204が第1可動電極202又は第3可動電極206にラッチされず、第2可動電極204が変位0の状態になることもあり得る。
この第2可動電極204の変位0の状態から、静電力を印加して第2可動電極204を第1可動電極202又は第3可動電極206に引き込むためには、相当な駆動制御電圧が必要となる。上記の可動電極の場合、44Vを印加する必要がある。
【0102】
このため、上記の第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチのいずれかをオン状態にするために、可動電極間に電圧を印加して発生させる静電力ではなく、別の駆動機構をも用いて第2可動電極を引き込めるようにする。
【0103】
駆動機構として電圧の印加により構造体素子自体が変形する、例えば、圧電素子、形状記憶合金、バイモルフ素子及び電磁歪素子を用いても良い。
例えば、第2可動電極204に代えて初期電圧の印加により変形する第2可動体を設け、この第2可動体が第3可動電極206に近づいた時に、第3可動電極206に駆動制御電圧を印加して静電力により第2可動体をラッチ後、第2可動体の電圧を解除するようにしてもよい。
【0104】
またメカニカルなプローブを用いて、第2可動電極204を第1可動電極202又は第3可動電極206に引き込んでも良い。この第2可動電極204を引き込んだときに第1可動電極202又は第3可動電極206に駆動制御電圧を印加する。
【0105】
この構成によれば、第1可動電極202及び第3可動電極206に印加する駆動電圧を低電圧にすることができ、高速スイッチング特性の電気機械スイッチを提供することができる。
【0106】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。図19に本発明の実施の形態3の上面図を示す。本実施の形態の電気機械スイッチにおいても、実施の形態1と同様に、異なるばね力を有する複数のスイッチで構成されているが、本実施の形態では、実施の形態1で、第1可動電極が何らかの不具合で固定電極にラッチされた場合にも、強いばね力を有する第2可動電極がオフ状態から電極を引き込むことができず、最終的に中間位置、すなわち第1可動電極、第2可動電極ともにオフ状態になるのを回避する構造である。
【0107】
すなわち、第1可動電極が何らかの不具合で固定電極にラッチするために、必要な電圧が外部から供給されないと、第1可動電極、第2可動電極は、自由振動を経て、最終的に中間位置、すなわち第1可動電極、第2可動電極ともにオフ状態になる。
このとき第2可動電極はばね力が強いため、オフ状態から電極を引き込み、ラッチするためには高い引き込み電圧を要することになる。
【0108】
本実施の形態3では上記問題を回避するために、次のような構造を提供する。
本スイッチは、図19に概略構成を示すように、入力端子303と、2つの出力端子301,302とで構成されている。
入力端子303は、高ばね可動電極306と、出力端子301、302は第1の低ばね可動電極304,第2の低ばね可動電極305とそれぞれ接続されている。この高ばね可動電極と第1および第2の低ばね可動電極のばね力は相対的に異なり、ばね定数は、実施の形態1と同様にばねの形状、材料特性、ギャップで制御可能である。可動電極304−306は、それぞれポスト部310で基板に固定されている。また第1の低ばね可動電極304と高ばね可動電極306とは連結部307で機械的に連結されている。同様に、高ばね可動電極306と第2の低ばね可動電極とは連結部307で機械的に連結されている。さらに、第1の低ばね可動電極が基板方向に変位した際に接触する領域と、高ばね可動電極306が基板方向に変位した際に一部接触する領域とに、第1の固定電極308が形成されている。
連結部307は、ばね力が第1および第2の低ばね可動電極よりも小さく、かつ絶縁性部材で構成されている。第1の固定電極308と第2の固定電極309とは空間的に分離されており、両電極は電気的に十分分離されており、高ばね可動電極306と第1または第2の固定電極308、309とが接触しない限りは、第1の固定電極308及び第2の固定電極309のアイソレーションは十分とれている。
【0109】
次に、スイッチの基本動作について説明する。本実施の形態は、SPDTスイッチとして適用しているが、SPSTスイッチとしても適用できる。入力端子303から入力した信号を出力端子301へ出力する方法について説明する。高ばね可動電極306および第1の低ばね可動電極304間に外部から制御信号を印加して、可動電極と固定電極間に電位差を設け、静電力を発生させると、第1の低ばね可動電極304および高ばね可動電極306は、固定電極方向に引き込まれ、高ばね可動電極306と第1の低ばね可動電極304は、第1の固定電極308と接触し、電気的に結合し、入力端子303から入力した信号は、高ばね可動電極306−第1の固定電極308−第1の低ばね可動電極305を介し、出力端子301を経て出力される。同様に出力端子302へ出力する場合は、第2の低ばね可動電極305と高ばね可動電極306を基板方向に引き込み、第2の固定電極309と電気的に結合させれば良い。
【0110】
次に、図20を用いて、スイッチの遷移動作について説明する。図20は図19のA-A'の断面をそれぞれ示したものである。時刻(a)において、第1と第2の低ばね可動電極304,305はオフ状態となっており、高ばね可動電極306はラッチされ、第1および第2の固定電極308,309と接触している。この状態では、第1および第2の低ばね可動電極はオフ状態となっているので、信号は遮断されている。
このとき、第1および第2の低ばね可動電極と第1および第2の固定電極に制御信号を印加し、電位差を設け、静電力を発生させると、第1の低ばね可動電極と第2の低ばね可動電極304,305は、基板方向に引き込まれ、第1の低ばね可動電極304は第1の固定電極308と、第2の低ばね可動電極305は、第2の固定電極309とそれぞれ接触し、電気的に結合する。第1第2の低ばね可動電極304,305と第1および第2の固定電極308,309のそれぞれの対応する電極の少なくとも一方の接触面には、絶縁膜が形成されており、直流電位が流れないように構成されている。
【0111】
第1、第2の低ばね可動電極304,305はばね力が小さいため、僅かな電位差で高速に引き込まれ、スイッチはオン状態となる。時刻(b)
【0112】
次にこのオン状態からスイッチをオフにする動作を説明する。オン状態である時刻(b)において、第1、第2の低ばね可動電極304,305および高ばね可動電極306をラッチしている電位差を解消すると、ばね力により、第1、第2の低ばね可動電極304,305および高ばね可動電極306は、リリースされ、自由振動を開始する。
【0113】
このとき、ばね力が強い高ばね可動電極306は高速でリリースされるが、連結部307によって第1および第2の低ばね可動電極304、305と連結されているため、第1、第2の低ばね可動電極304,305を上方に引き上げる力となり、第1および第2の低ばね可動電極304、305を高速にリリースすることをアシストする。時刻(c)
【0114】
また時刻(d)において、高ばね可動電極306は大きくオーバーシュートするが、このときは連結部307で結合された第1、第2の低ばね可動電極304,305が大きくオーバーシュートすることを阻止することになる。
さらに時刻(f)において、高ばね可動電極306が固定電極側(第1および第2の固定電極308,309)に戻ってきたところをラッチすればよい。
【0115】
このように、高ばね可動電極306と第1および第2の低ばね可動電極304、305を連結部307で連結することにより、オーバーシュートを軽減でき、かつ、低ばね可動電極304、305がより高速にリリースすることをアシストすることが可能となる。
【0116】
また、図21に示すように、高ばね可動電極306をラッチする電極が何らかの不具合により、印加されずにリリースされ、自由振動を経て、図21(a)の状態となる場合が想定される。この状態から、高ばね可動電極306をラッチするために、固定電極側(第1および第2の固定電極308,309)に引き込むためには、高い電圧を要する。
このため、まず図21(b)のように、第1、第2の低ばね可動電極304,305を固定電極側(第1および第2の固定電極308,309)に引き込む。この時、高ばね可動電極と第1、第2の低ばね可動電極304、305とは連結されているので、高ばね可動電極306は基板方向に変位する。静電力は距離の−2乗に比例するため、高ばね可動電極306を引き込むために必要な電圧を低下させることができる。
【0117】
またこの動作でも、所望の引き込み電圧以下にならない場合は、第1、第2の低ばね可動電極の引き込み及びリリースを、高ばね可動電極の固有振動で繰り返せば、高ばね可動電極が励振され、振動の振幅が増大し、所望の引き込み電圧でラッチすることが可能となる。
【0118】
さらに、連結部307によって、連結された高ばね可動電極と第1、第2の低ばね可動電極の結合状態は、連結部307の取り付け位置により制御することが可能である。
両端を固定された可動電極は、全領域において、一様な振幅で振動しているのではなく、可動電極としての梁中心付近では最大の振幅、ポスト部310付近では殆ど振動しない。このため、梁のどの位置で連結するかによって、可動電極の結合状態が変化する。振幅の最も大きな位置で連結させた場合、互いに連結する場合にお互いに与える影響は最も大きくなるため、強い結合となる。すなわち、図20の時刻(c)で高ばね可動電極306をリリースする際に、強い力で第1、第2の低ばね可動電極304、305がリリースすることをサポートしている。逆に互いの振動が阻害されることになり、高ばね可動電極306の振動エネルギーが損なわれ、自由振動での振幅が減少し、ラッチ電圧が高くなる。
【0119】
逆に、振幅があまりない、ポスト部310付近で連結した場合は、連結部307がない状態と近い状態となり、第1、第2の低ばね可動電極304、305がリリースする際のアシストとならない。このため、要求仕様に満たすように、連結部307の位置を調整する必要がある。
なお、本実施の形態では、低ばね可動電極を2つ用いて説明したが、低ばね可動電極を1つで構成しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の電気機械スイッチは、低駆動電圧で動作かつ高速にオン・オフすることができ、RFMEMSスイッチ、特に高速で切り替えを要求する無線LANなどのアンテナダイバーシティ用DPDT(Dual Pole Double Throw、双極双投)スイッチなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施の形態1における電気機械スイッチの一単位素子を示す外観構成図である。
【図2】実施の形態1の第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの要部構成一部断面図である。
【図3】図2に示すA-A断面図である。
【図4】本発明の電気機械スイッチの等価回路図である。
【図5】縦軸に第1可動電極の固定電極からの位置、横軸に時刻を示した図である。
【図6】第1可動電極と固定電極とが接触している位置で駆動制御電圧をオフにした時の第1可動電極位置の過渡応答を示す図である。
【図7】第2の電気機械スイッチにおける第2可動電極位置の過渡応答を示す図である。
【図8】第2可動電極位置の過渡応答を示す図7の1μs以下の振る舞いを拡大した図である。
【図9】実施の形態1にかかる電気機械スイッチのオン状態とオフ状態とを等価回路で示した図であり、(a)はオフ状態を、(b)はオン状態を示す図である。
【図10】第1の電気機械スイッチと第2の電気機械スイッチの可動電極位置の過渡応答を併せて示した図である。
【図11】各時刻における第1の電気機械スイッチ及び第2の電気機械スイッチの状態を等価回路で示した図であり、(a)は時刻0、(b)は時刻t1、(c)は時刻t2、(d)は時刻t3を示したずである。
【図12】平行平板型の電極と櫛歯型の電極の構造を示す図である。
【図13】可動電極が水平方向に動作する電気機械スイッチの概略図である。
【図14】電気機械スイッチの一単位素子を形成するシリコン基板の外観図である。
【図15】封止カバーガラスの外観図である。
【図16】実施の形態1にかかる電気機械スイッチの製造工程図であり、各製造工程は図14のBーB線に対応する断面図である。
【図17】実施の形態2の一例を示す概略構成図である。
【図18】実施の形態2における第2可動電極の変位を示す図である。
【図19】実施の形態3にかかる電気機械スイッチの概略図である。
【図20】実施の形態3にかかる動作説明図である。
【図21】実施の形態3にかかる動作説明図である。
【符号の説明】
【0122】
1、40、70、200 電気機械スイッチ
2 シリコン基板
3 封止カバーガラス
4、211 第1電極端子
5、212 第2電極端子
6、213 第3電極端子
7、214 第4電極端子
8、215 第5電極端子
9、216 第6電極端子
10 電気機械スイッチ本体
12、72、201 第1アンカー
13、73、203 第2アンカー
14、74、202 第1可動電極
16、76、204 第2可動電極
18、62、66、78 固定電極
22 第1の電気機械スイッチ
24 第2の電気機械スイッチ
31、32 曲線
60 平行平板型
64、68 可動電極
69 櫛歯型
82 第1凹部
84 第2凹部
86 第3凹部
88 第4凹部
92、94、96 突起部
102 犠牲層
104 レジスト膜
206 第2可動電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に弱いばね力で復元可能な第1の梁の変位に基づいてオン・オフする第1の電気機械スイッチと、相対的に強いばね力で復元可能な第2の梁の変位に基づいてオン・オフする第2の電気機械スイッチとを備え、
初期状態において上記第1の電気機械スイッチがオフであり、上記第2の電気機械スイッチがオンであることにより、オフ状態となっているようにした電気機械スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記初期状態から、駆動力の印加及び解除のいずれかにより前記第1の梁が変位して、前記第1の電気機械スイッチが応答してオンになることにより、オン状態となるように構成した電気機械スイッチ。
【請求項3】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の電気機械スイッチ及び前記第2の電気機械スイッチがともにオンである場合、前記第1の梁及び前記第2の梁の変位を同時に解消させることで復元動作して、前記第2の電気機械スイッチがオフとなり、オフ状態になる電気機械スイッチ。
【請求項4】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第2の梁が前記第2の電気機械スイッチをオフにすることで固有振動を開始し、前記第2の電気機械スイッチをオフにしている変位位置近傍まで戻ってきた場合に、印加及び解除のいずれかによる駆動力で前記第2の梁をラッチする電気機械スイッチ。
【請求項5】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁の変位及び前記第2の梁の変位の少なくとも一方が、静電力に基づくものである電気機械スイッチ。
【請求項6】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁の変位及び前記第2の梁の変位の少なくとも一方が、電磁力に基づくものである電気機械スイッチ。
【請求項7】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁の変位及び前記第2の梁の変位の少なくとも一方が、圧電効果によるものである電気機械スイッチ。
【請求項8】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁の変位及び前記第2の梁の変位の少なくとも一方が、熱膨張によるものである電気機械スイッチ。
【請求項9】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁及び前記第2の梁が、空隙を介して平行に対面する共通の固定電極を有しており、この固定電極と前記第1の梁とで前記第1の電気機械スイッチを構成し、この固定電極と前記第2の梁とで前記第2の電気機械スイッチを構成する電気機械スイッチ。
【請求項10】
請求項9記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁及び前記第2の梁の各固有振動の最大振幅よりも小さくなるように前記固定電極との空隙を設定した電気機械スイッチ。
【請求項11】
請求項9記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の電気機械スイッチがオンであって前記第2の電気機械スイッチがオンであるときのみオン状態となる電気機械スイッチ。
【請求項12】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁と前記第2の梁とを平行に配設するとともに、前記第2の梁よりも相対的に弱いばね力で復元可能な第3の梁を平行に配設しており、前記第1の梁と前記第2の梁とで前記第1の電気機械スイッチを構成し、前記第2の梁と当該第3の梁とで前記第2の電気機械スイッチを構成した電気機械スイッチ。
【請求項13】
請求項12記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁及び前記第3の梁と前記第2の梁との空隙を、前記第2の梁の固有振動の最大振幅に基づいて形成した電気機械スイッチ。
【請求項14】
請求項12記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の梁、前記第2の梁及び前記第3の梁のいずれの変位も解消している場合、メカニカルプローブにより前記第2の梁を前記第3の梁に近づけるとともに、駆動力の印加及び解除のいずれかにより第3の梁を変位させて当該第2の梁をラッチする電気機械スイッチ。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の電気機械スイッチ及び前記第2の電気機械スイッチが、気圧が大気圧と異なる環境下に置かれている電気機械スイッチ。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれかに記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の電気機械スイッチが、所定のアイソレーションを得るのに要するまでに必要な時間だけ、前記第2の電気機械スイッチがオフとなる電気機械スイッチ。
【請求項17】
請求項1乃至14のいずれかに記載の電気機械スイッチであって、
前記第2の梁の固有振動による周期が、前記第1の梁が十分にアイソレーションを得るための位置に達する時間と、同じである電気機械スイッチ。
【請求項18】
請求項1乃至14のいずれかに記載の電気機械スイッチであって、
前記第2の梁の固有振動による周期が、前記第1の梁が十分にアイソレーションを得るための位置に達する時間より長い電気機械スイッチ。
【請求項19】
請求項1乃至14のいずれかに記載の電気機械スイッチであって、
前記第2の梁の固有振動による周期が、前記第1の梁が十分にアイソレーションを得るための位置に達する時間より短い電気機械スイッチ。
【請求項20】
請求項1に記載の電気機械スイッチであって、
前記第1の電気機械スイッチがオンであって、信号を通過状態から遮断状態にスイッチングさせる場合は、前記第1の梁が所定のアイソレーションを得るために必要な位置に到達するまでの間に、前記第2の梁が、所定の時間内に、必要アイソレーションを得るための位置に到達し、かつ、再び元のラッチ状態に戻るように構成された電気機械スイッチ。
【請求項21】
請求項1記載の電気機械スイッチであって、
互いに平行となるように配設された、第1の梁で構成された低ばね可動電極と、第2の梁で構成された高ばね可動電極と、前記第1の梁および第2の梁に相対向して配設された固定電極とを備え、
前記第1の電気機械スイッチは、第1の梁で構成された低ばね可動電極と、前記第1の固定電極とを具備し、
前記第2の電気機械スイッチは、第2の梁で構成された高ばね可動電極と、前記第1の固定電極とを具備し、
前記第1および第2の梁は、連結部を介して機械的に接続され、前記第2の梁は、前記第1の梁の変位に連動して変位する電機機械スイッチ。
【請求項22】
請求項21記載の電気機械スイッチであって、
前記第2の梁が入力端子に接続されるとともに、
前記第1および第2の梁がそれぞれ第1および第2の出力端子に接続された電気機械スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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