電気泳動表示シートおよびその製造方法
【課題】可とう性を有しながら信頼性が高く、優れた表示特性を発揮することのできる表示装置及び電子機器に好適な電気泳動表示シート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】第1基板10の一方の面に開口する隔壁部40を形成し、第2基板20の一方の面にバインダー層30を塗布形成後、黒色粒子5及び白色粒子6を分散媒50に分散した電気泳動分散液51をバインダー層30に浸透させて、電気泳動分散液51が浸透されたバインダー層30の面と、隔壁部40の面を対向させた方向で、第1基板10と第2基板20とを貼り合わせて製造する電気泳動表示シート及びその製造方法である。隔壁部40の頂上部41と第2基板20との間がバインダー層30の一部(高密度バインダー層31)により、接着されているため、信頼性に優れている。
【解決手段】第1基板10の一方の面に開口する隔壁部40を形成し、第2基板20の一方の面にバインダー層30を塗布形成後、黒色粒子5及び白色粒子6を分散媒50に分散した電気泳動分散液51をバインダー層30に浸透させて、電気泳動分散液51が浸透されたバインダー層30の面と、隔壁部40の面を対向させた方向で、第1基板10と第2基板20とを貼り合わせて製造する電気泳動表示シート及びその製造方法である。隔壁部40の頂上部41と第2基板20との間がバインダー層30の一部(高密度バインダー層31)により、接着されているため、信頼性に優れている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子ペーパーの画像表示部を構成するものとして、粒子の電気泳動を利用した電気泳動表示シートが知られている。電気泳動表示シートは、優れた可とう性および省電力性を有しており、電子ペーパーの画像表示部として特に適している。
電気泳動表示シートは、対向配置された一対の電極と、これらの間に設けられた表示層とを有しており、表示層には、例えば正に帯電する白色粒子と、負に帯電する黒色粒子とを液相分散媒に分散してなる分散液が充填されている。このような電気泳動表示シートは、一対の電極間に電圧を印加し、白色粒子および黒色粒子を所望の方向へ泳動させることにより所望の画像を表示するように構成されている。
【0003】
ここで、電気泳動表示シートの構成としては、電気泳動粒子を含む分散媒を封入したマイクロカプセルを用いる構成(以下MC方式)と、特許文献1のように、同様な分散媒を隔壁で区画された領域ごとに充填する構成(以下隔壁方式)とが知られている。
MC方式は、電気泳動粒子をカプセル殻で閉じ込めるため偏析や沈降が少ない、カプセル殻周辺にバインダー樹脂が設けられるため基板間の接着性が得られる、表示に関与する開口率が大きく取れる、などの利点がある反面、カプセル殻及びバインダー樹脂による透明性の低下、電気泳動粒子が移動する空間が狭くなることによる表示性能の低下、タッチパネル入力など表示面の押し圧に対してカプセル殻が変形しやすい、などの課題がある。
他方、隔壁方式は、電気泳動粒子が移動する空間が広く、隔壁構造により表示面の押し圧に強い、高い透明性による表示性能が良い、などの利点がある。特許文献1では、この利点に加えて、隔壁の高さを最適化することにより、電気泳動粒子の凝縮を防ぎ、優れた表示特性を実現することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−65288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の隔壁方式の電気泳動表示シートでは、シート強度が得難く、また、十分な表示品位や信頼性を確保することが困難であるという課題があった。
詳しくは、図11(a)に示すように、従来の電気泳動表示シート90を構成する一対の第1基板10と第2基板20とは、基本的にその周縁部のシール剤60のみによって接着される構成であったため、十分な実用強度を確保することが困難であった。さらに、第1基板10に形成された隔壁140の頂と、第2基板20(共通電極21)との間に間隙(流路)gが確保されており、隔壁が電気泳動分散液を完全に分離していないため電気泳動粒子の偏析や沈降が起き易かった。
これらの現象は、図11(b)に示すように、特に、基板自体が変形するフレキシブル基板を用いた場合に顕著となり、対向する2つの基板の接触する箇所が少ないため十分なシート強度を確保することが困難であった。さらに、隔壁140と第2基板20との間の間隙gが大きく開いて、電気泳動分散液が漏洩してしまう恐れがあり、所期の表示品位を確保することが難しく、信頼性に乏しかった。
そのため、電子ペーパーとしての大きな特徴である、軽量で屈曲性に優れた高い信頼性の電気泳動表示シート、およびそれらを用いた表示装置および電子機器を提供することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例]本適用例に係る電気泳動表示シートの製造方法は、第1基板に、複数の領域に区画する隔壁部を形成する第1工程と、第2基板に、バインダー層を塗布する第2工程と、バインダー層に、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を浸透させる第3工程と、第2基板のバインダー層を塗布した面と、第1基板の隔壁部が形成された面を対向させ、隔壁部の頂上部と第2基板との間をバインダー層の一部により、貼り合わせる第4工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、電気泳動表示シートの端部以外でも、隔壁部の頂上部と、第2基板が、バインダー層を介して接着されることにより、電気泳動表示シートの強度を高めることができる。また、バインダー層及び電気泳動分散液は、領域ごとに塗り分ける必要が無く全面(端は除く)に一度に塗ることができるため、製造工程の増加を防ぐことができる。
よって、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、屈曲時においても、優れた表示品位を確保することができる。従って、高い信頼性かつ製造コストを抑えた電気泳動表示シートを提供することができる。
【0009】
また、上記記載の電気泳動表示シートの製造方法において、第4工程では、少なくとも2つの熱ロールの間で搬送による貼り合わせが行われることが好ましい。
【0010】
これによれば、第1及び第2基板を搬送しながら2つの熱ロールにより第1及び第2基板を加熱することで、バインダー層を軟化させ、同時に熱ロールから与えられる圧力により隔壁部がバインダー層の一部を変形させながら接合される。これによって、搬送しながら連続的に第1基板側の隔壁部の頂上部と第2基板とを、バインダー層を介して接着することができる。
従って、短時間で大量に電気泳動表示シートを作成することができ、製造コストを抑えながら電気泳動表示シートの強度を高めることができる。
【0011】
また、上記記載の電気泳動表示シートの製造方法において、第4工程では、減圧雰囲気下で熱圧着の貼り合わせが行われることが好ましい。
【0012】
これによれば、減圧雰囲気下で加熱圧着することにより、より確実に収容部(セル)の内部に残留する気泡を除去しながら、バインダー層と隔壁部の頂上部の接着ができる効果が得られる。これによって、電気泳動分散液中に気泡が残らない信頼性の高い電気泳動表示シートを得ることができる。
【0013】
また、本適用例に係る電気泳動表示シートは、複数の領域に区画する隔壁部が設けられた第1基板と、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子が分散された電気泳動分散液を含むバインダー層が形成された第2基板と、を備え、第1基板と第2基板とが、少なくとも隔壁部の頂上部と第2基板との間に挟持されたバインダー層の一部により接着されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、収容部(セル)の内部にもバインダー層が配置され、第1基板または第2基板から垂直方向に押される力が加わったとき、バインダー層と隔壁部の頂上部の接着がされているため、電気泳動表示シート自身の強度が強くなる。また、第1及び第2基板が外部応力で屈曲した場合にも、隔壁部が浮き上がらずに電気泳動分散液の移動を防ぐことができる。これによって、基板が屈曲しても表示性能の低下を防ぐ効果が得られる。
従って、高い信頼性の電気泳動表示シートを得ることができる。
【0015】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層が、繊維状の状態で第2基板側に積層されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、バインダー層が多数の繊維として積み重なって第2基板上に形成されることで、バインダー層の内部の空間率を高めることができ、分散媒が多く浸透することで電気泳動粒子が移動しやすくなるため、表示性能が向上できる。
また、繊維状の構造物が外圧や温度変化で発生する分散媒の自然対流を防ぎ、電気泳動粒子の保持性が向上する。さらに、第1基板側の隔壁部が押し込まれて接着する際に、変形がより容易にできることで接着面積を増やすことができる。これによって、隔壁部との接着性が向上する。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0017】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層が、粒子状の状態で第2基板側に積層されていることが好ましい。
【0018】
これによれば、バインダー層が多数の粒子として積み重なって第2基板上に形成されることで、バインダー層の内部の空間率を高めることができ、分散媒が多く浸透することで電気泳動粒子が移動しやすくなるため、表示性能が向上できる。
また、粒子状の構造物が外圧や温度変化で発生する分散媒の自然対流を防ぎ、電気泳動粒子の保持性が向上する。さらに、粒子状の場合は、着色する場合に顔料材料などをより多く添加することが出来るため、白色濃度の向上など表示性能の向上が期待できる。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性と高い表示性能の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0019】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層は、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)、アクリル樹脂、ブタジエン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする。
【0020】
これによれば、バインダー層が上述の熱可塑性樹脂であることで、第2基板を加熱することでバインダー層が軟化し、隔壁部に沿って形状を変化させて接着面積を上げることができる。そして、温度が下がることでバインダー層が再び硬化するため、接着強度を向上させることができる。これによって、隔壁部と第2の基板の接着をおこなうことができる。
また、隔壁部によりバインダー層が押し込まれた領域は空間率が下がり、電気泳動分散液が浸透しにくくなる。これによって、それぞれの収容部(セル)が隔離に近い状態となり、電気泳動分散液の漏洩により信頼性が低下することを防ぐ。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0021】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、第1基板及び/または第2基板が、可とう性を有していることが好ましい。
【0022】
これによれば、隔壁部とバインダー層が十分に接着されていることで、第1基板及び/または第2基板が薄く屈曲しやすい状態でも、シート強度を十分に確保することができる。これによって、外部応力によって第1基板及び/または第2基板が屈曲や伸縮した場合でも、隔壁部が浮き上がって電気泳動分散液が隔壁を越えて漏洩することなく、電気泳動表示シートの表示性能を維持することができ、信頼性の高い電気泳動表示シートが得られる。さらに、第1基板と第2基板の双方が可とう性を有する場合は、電気泳動表示シートの可とう性は極めて大きくなる。
従って、可とう性を有しつつ、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができ、軽量かつフレキシブル性に優れた電子ペーパーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る電気泳動表示シートの断面図。
【図2】(a)隔壁の一態様における平面図、(b),(c)異なる態様の平面図。
【図3】電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図。
【図4】(a)〜(d)電気泳動表示シートの製造工程における一態様の断面図。
【図5】実施形態2に係る電気泳動表示シートの断面図。
【図6】(a)変形例に係る電気泳動表示シートの断面図、(b)電気泳動表示シートにおける異なる態様の断面図。
【図7】書き込み装置の一例を示す斜視図。
【図8】電子機器としての電子ペーパーの一例を示す斜視図。
【図9】電子機器としての電子ブックの一例を示す斜視図。
【図10】電子機器としてのスマートフォンの一例を示す斜視図。
【図11】(a)従来の電気泳動表示シートの断面図、(b)電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電気泳動表示シート及びその製造方法を、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0025】
(実施形態1)
1.電気泳動表示シートの構成。
まず、本発明の電気泳動表示シートについて説明する。
図1は、実施形態1に係る電気泳動表示シートの断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1に正対したときの上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0026】
図1に示す電気泳動表示シート100は、電気泳動粒子の泳動を利用して所望の画像を表示するものである。この電気泳動表示シート100は、表示面となる第2基板(フロントプレーン)20と、駆動回路や配線などを有する第1基板(バックプレーン)10とを有している。
電気泳動表示シート100には、第1基板10と第2基板20とが存在し、それぞれ一方の面には、それぞれ画素電極と呼ばれる第1電極11と、光透過性を有する第2電極21とが設けられている。これらの2種類の電極の間には、隔壁部40が存在し、隔壁部40によって区分された複数の収容部(セル)42には、電気泳動粒子である黒色粒子5と、白色粒子6と、分散媒50とからなる電気泳動分散液51が、充填されている。
このような電気泳動表示シート100では、第2基板20の上面が表示面22を構成している。なお、表示面22とは、電気泳動表示シート100の平面視にて、第2基板20の上面におけるシール剤60で囲まれた内側の領域を指している。
【0027】
第1基板10は、平板状の基部1の上面に設けられた画素を構成する複数の第1電極11と、それらを区分する隔壁部40とを備えるもので、さらには図示しない回路部を有している。回路部は、例えば、マトリックス状に配列された少なくとも1つ以上のTFT(スイッチング素子)と、TFTに対応して形成されたゲート線およびデータ線と、ゲート線に所望の電圧を印加するゲートドライバーと、データ線に所望の電圧を印加するデータドライバーと、ゲートドライバーとデータドライバーの駆動を制御する制御部とを有している。
【0028】
一方、第2基板20には、平板状の基部2の上面に光透過性を有する第2電極21と、バインダー層30とが設けられ、さらに隔壁部の頂上部41と接する領域はバインダー材料の密度が高くなっている高密度バインダー層31が存在する。そして、第2基板20の端部を覆いながら、第1基板10とも周辺部で接するようにシール剤60が設けられている。なお、詳しくは後述するが、バインダー層30は、電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を内包可能な構成となっており、当該層の中で、電気泳動粒子が移動可能な状態となっている。
【0029】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。基部1,2は、それぞれ、可とう性を有するもの、または硬質なもの、のいずれであってもよいが、より薄く、可とう性を有するものであるのが好ましい。可とう性を有する基部1,2を用いることにより、可とう性を有する、特に電子ペーパーを構築する上で好適な電気泳動表示シート100を得ることができる。
【0030】
基部(基材層)1,2が可とう性を有するものとする場合、その構成材料としては、光透過性や耐熱性、寸法安定性に優れたものが好ましく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン、COP(環状ポリオレフィン)等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂等のプラスチックや、圧延された金属箔、フレキシブルガラス等が挙げられる。特に、表示面22を有する基部2については、上記材料の中でも光透過性を優先して用いられる。
【0031】
このような基部1,2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可とう性を有するものとする場合、20μm以上、500μm以下程度であるのが好ましく、50μm以上、200μm以下であるのがより好ましい。これにより、電気泳動表示シート100の柔軟性と強度との調和を図りつつ、電気泳動表示シート100の薄型化(さらには軽量化)を図ることができる。
【0032】
これらの基部1,2の電気泳動分散液51に接する面、すなわち、基部1の上面および基部2の下面に、それぞれ、膜状をなす第1電極11および第2電極21が設けられている。本実施形態では、第2電極21が共通電極とされ、第1電極11がマトリックス状に分割された個別電極(TFTに接続された画素電極)とされている。この電気泳動表示シート100では、1つの第1電極11と第2電極21とが重なる領域が1つの画素を構成することになる。
【0033】
第1電極11、第2電極21の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CF3SO3)2等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、酸化スズ(SnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
特に、第2電極21の構成材料としては、これらの中でも、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料であるのが好ましい。これにより、後述するように、第2電極21とバインダー層30との接着性を高めることができるため、電気泳動表示シート100の機械的強度が向上する。
【0035】
また、第1電極11、第2電極21の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.01μm以上、10μm以下程度であるのが好ましく、0.02μm以上、5μm以下であるのがより好ましい。
本実施形態では、表示面22に配置される第2基板20を構成する基部2および第2電極21は、それぞれ光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)の材料が選ばれる。これにより、分散媒50中における黒色粒子5および白色粒子6の状態、すなわち、電気泳動表示シート100に表示された情報(画像)を表示面22側から目視により容易に認識することができる。
【0036】
また、第2電極21の表面には、バインダー層30との接着性を向上させるため、界面接着層(図示せず)と呼ばれる接着性の薄膜層が設けられていても良い。界面接着層の材料としては、接着性を考慮してバインダー層30と同じような種類の材料系でも良く、エーテル樹脂やウレタン樹脂、エステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などの熱可塑性接着樹脂や、アクリル系樹脂やエポキシ化合物、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂などの熱硬化性接着樹脂でも良い。
また、第2電極21が無機材料からなる場合は、シランカップリング剤や有機チタネートなどの有機無機カップリング化合物を用いると接着性がさらに向上するので好適である。厚さとしては、光透過性と導電性を考慮して、0.001μm以上、1μm以下程度の薄膜で形成されるのが好ましい。
【0037】
第1基板10と第2基板20との周辺部には、表示面22を囲むようにシール剤60が設けられている。このシール剤60により、分散媒50が表示面22の内側に気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示シート100の外部へ分散媒50の漏出や、電気泳動表示シート100内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示シート100の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
シール剤60の構成材料としては、耐水性の高い接着材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性または紫外線硬化性の樹脂が挙げられ、さらに耐水性や強度を保つために無機粒子充填剤のような添加剤を加えても良い。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
前述したように、電気泳動表示シート100は、電気泳動分散液51に含まれる黒色粒子5、及び白色粒子6が、隔壁部40で区画された収容部42から隣の収容部に漏洩しないように、隔壁部40の上部で高密度バインダー層31により接着されている。
しかし、高密度バインダー層31は、黒色粒子5及び白色粒子6のある程度の移動規制はできるものの、元となるバインダー層30は分散媒50が非常に浸透しやすい材料であることから、加圧して高密度化しても浸透性の高い分散媒50を完全に密封することは難しい。そのため、シール剤60による封止構造が必要となる。なお、電気泳動分散液51は、正または負に帯電した黒色粒子5及び白色粒子6を、分散媒50に分散させたものである。
【0039】
分散媒50としては、温度による粘度変化が少ない、親油性及び電気絶縁性を有するものが好適に使用される。また、分散媒50の沸点としては、特に限定されないが、150℃以上であるのが好ましい。かかる分散媒50としては、例えば、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソブチルケトン等のケトン類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサンやノルボルネン等の脂環式炭化水素類、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、シリコーンオイルまたはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0040】
中でも、分散媒50としては、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)またはシリコーンオイルを主成分とするものが好ましい。流動パラフィン、またはシリコーンオイルを主成分とする分散媒50は、透明性や耐熱性、耐水性に優れており、黒色粒子5および白色粒子6の凝集抑制効果も高いことから好ましい。これにより、電気泳動表示シート100の表示性能が温度や湿度などによって経時的に劣化するのをより確実に防止または抑制することができる。また、流動パラフィンまたはシリコーンオイルは、不飽和炭素共有結合を有さないため耐候性に優れ、および安全性も高いという点からも好ましい。
【0041】
また、分散媒50中には、必要に応じて、例えば電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。また、分散媒50を着色する場合には、分散媒50に必要に応じてアントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0042】
黒色粒子5は、荷電を有し、電界が作用することにより分散媒50中を電気泳動し得る粒子である。黒色粒子5は、それぞれ、黒色顔料粒子で荷電を有するものであればいかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0043】
白色粒子6は、黒色粒子5と反対の荷電を有し、同様に電界が作用することにより分散媒50中を電気泳動し得る粒子である。白色粒子6は、それぞれ、白色顔料粒子で荷電を有するものであればいかなるものをも用いることができる。さらに、分散媒50が白色に着色されている場合や、バインダー層30が白色を有しているような場合には、必要に応じて使わなくても良い。
【0044】
顔料粒子を構成する顔料材料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック、亜クロム酸銅等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
なお、黒色粒子5としては、カーボンブラック粒子またはその表面を有機化合物で被覆した粒子を好適に用いることができる。
【0046】
また、黒色粒子5の形状は、それぞれ、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。また、黒色粒子5の平均粒子径は、それぞれ、特に限定されるものではないが、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上300nm以下である。黒色粒子5の平均粒子径が10nm未満であると充分な色度が得られず、コントラストが低下して表示が不鮮明になることがある。逆に、黒色粒子5の平均粒子径が300nmを超えると、1粒子あたりの重量が重くなることで沈降や偏析がしやすくなることや、表示のために電圧を印加した部分で粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度が低下することがある。なお、黒色粒子5の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、製品名:LB−500、(株)堀場製作所製)で測定した体積平均粒子径を意味する。
【0047】
次いで、隔壁部40について説明する。隔壁部40は、第1基板10上に収容部42を区分するために形成され、バインダー層30を加熱しながら押し込むことで第2基板20(第2電極21)と接着させる役割を有する。そのため、材料としては耐熱性が高く、比較的硬度の高い樹脂材料が好適である。例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂が好ましい。隔壁部40の軟化温度は150℃以上が好ましい。これは、バインダー層30が軟化して接着する温度領域で、隔壁部40が一緒に軟化しないようにするためである。隔壁部40の形成方法としては、グラビア印刷やスクリーン印刷で形成する印刷法や、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法、などが高精度で形成できるため好適である。
【0048】
収容部42を区画する隔壁部40の高さは、電気泳動粒子の移動と隠蔽性を考慮して10〜50μmが好ましく、隔壁部の頂上部41の幅は、開口部の開口率を高めたいため少しでも狭い方が好ましく、高密度バインダー層31の形成される限界と隔壁部40の強度を考慮して1〜5μmが好ましい。アスペクト比としては2〜50が好ましい。また、隔壁部40が第1基板10と接する底部よりも、隔壁部の頂上部41の幅の方が狭くなるように隔壁部40の断面構造をテーパー形状にする方が、表示性能を損なわずに強度を上げることができるためより好ましい。
【0049】
図2(a)は、隔壁の一態様における平面図である。図2(b),(c)は、異なる態様の平面図である。
さらに、隔壁部40の平面形状の例としては、図2(a)に示すような隔壁形状が好適である。詳しくは、複数の矩形の収容部42がマトリックス状になるように、隔壁部40を格子状に形成する。理想的な隔壁形状は、隔壁部の頂上部41が視認する正面から少しでも見えない方が好ましく、開口率が高い方が良い。
そのため、図2(a)に示すように、収容部42の平面形状(開口部)を四角形の連続した形状とすることにより、隔壁部40の頂上部41の面積を抑えられて、開口率をより高くすることができる。なお、収容部42の平面形状は、四角形に限定するものではなく、多角形の連続構造であれば良い。例えば、図2(b)のように六角形の連続したハニカム構造であっても良いし、三角形の連続した構造であっても良い。これらの構造であっても、同様に、開口率を高めることができる。
【0050】
また、1つの収容部42が1つの画素となることに限定するものではなく、隔壁部40は、表示部(表示面22)を複数の領域に区画するものであれば良い。例えば、1つの収容部42の中に第1電極11を複数持たせることで、複数の画素を設ける構成であっても良い。
また、図2(c)に示すように、連続する多角形の角部に間隙sを設けて、気泡が抜けやすいように角部を不連続にしてもよい。この構造によれば、収容部42に気泡が残留している場合であっても、貼り合せ工程において、効率的に気泡を抜くことができる。
【0051】
次いで、バインダー層30について説明するが、それに先立って、バインダー層30を省略した場合(すなわち、従来の「隔壁方式」の表示シート)に起きる問題点について、図11を用いて、再度説明する。
【0052】
図11(a)に示したバインダー層が存在しない隔壁方式による従来の電気泳動表示シート90では、当該シートを外力で屈曲させると、図11(b)に示すように、シート中央部で隔壁部140と第2基板20との間隙gが拡大する。その状態で、電極の間に所定の電圧を印加して書き換えをおこなうと、矢印で示すように、隔壁部140を越えて隣接する収容部42に黒色粒子5、および/または、白色粒子6が移動してしまい、収容部42ごとの粒子量が変化してしまい、ムラのある画像となってしまう。
さらに、電気泳動表示シート90を手に持って本のようにして傾けたりした状態で視認された場合には、重力が働くことで、収容部42を渡りながら鉛直方向に向かって下方に黒色粒子5、および/または、白色粒子6が移動(沈降)して、さらに顕著なムラが発生してしまう。このような移動(沈降)によって黒色粒子5の数が減少した画素では、黒表示での低反射率(黒が沈む状態)を得ることができなくなるため、コントラストが低下してしまう。このように、従来の電気泳動表示シート90では、優れた表示特性を発揮することが困難であった。
【0053】
また、黒色粒子5の偏析が大きく生じてしまうと、収容部42ごとに黒色粒子5を均一に再び分散させるのは困難である。そのため、表示特性を回復させるためにリセットを繰り返すなどが必要になり、電気泳動表示シート90の利便性も悪いものとなる。
このような問題に加えて、従来の電気泳動表示シート90では、当該シートが屈曲したときの厚さの変化を抑制する機能を有する部材が何ら設けられていないため、屈曲した際に当該シートの厚さが部分的に大きく変化してしまい、これにより、表示特性が悪化してしまうという問題もあった。さらに、第1基板10、及び第2基板20の間の接合をシール剤60でのみ行っているため、電気泳動表示シート90の機械的強度を高めることが難しかった。
【0054】
バインダー層30は、このような問題を解消、すなわち、電気泳動表示シート100の機械的強度を高めつつ、黒色粒子5、および/または、白色粒子6の鉛直方向下側への移動(沈降)を防止または抑制することにより、電気泳動表示シート100に優れた表示特性を発揮させる機能を有している。
以下、バインダー層30について詳細に説明する。
【0055】
図1に示すように、バインダー層30は、第2基板20の一方の面に形成されて収容部42内に設けられる。隔壁部40の頂上部41と接触する部分については高密度バインダー層31によって、隔壁部40を介して第1基板10(第2電極21)と接着される。
また、高密度バインダー層31は、黒色粒子5、および/または、白色粒子6がそれぞれの収容部42から、隔壁部40を超えて移動しないようにする機能を有している。
【0056】
バインダー層30は、三次元に網目状に形成された樹脂を主成分とする弾性体で、形成された空間領域には分散媒50が非常に浸透しやすい特徴を有する。具体的には、バインダー層30は、繊維または粒子の集合体等で構成することができる。
繊維の場合、繊維の長さとしては、0.01〜1000μm長のものが好ましい。
また、粒子の場合、粒径は0.01〜10μmのものが好ましい。粒径0.01μm以下では、隔壁部の頂上部41と電極間の接着性と50%以上の空間率の両立が得られにくく、粒径10μm以上では隔壁部と電極間で潰れた際に隔壁部の頂上部41の幅よりも大きくはみ出す量が増えてしまうので好ましくない。
本実施形態では、好適例として、繊維の太さが粒子状と同じ範囲の0.01〜10μmの繊維を用いている。
【0057】
これにより、上記機能に優れ、かつ比較的簡単な構成のバインダー層30が得られる。なお、繊維の集合体としては、所定の繊維を織って形成される織物体、所定の繊維同士を織り込まずに形成される不織体等が挙げられる。また、バインダー層30をウレタン系樹脂などの発泡特性を利用して形成しても良い。
【0058】
バインダー層30の空間率としては、特に限定されないが、50%以上、99%以下程度であることが好ましい。これにより、電気泳動粒子の移動経路を充分に確保することができ、バインダー層30の中を、分散媒50を介して黒色粒子5、および白色粒子6がスムーズに移動することができる。また、高密度バインダー層31の空間率としては、1%以上、50%未満に低下させることが好ましい。これは、電気泳動分散液51の収容部42間の移動を規制して、粒子の偏析による表示特性の低下を防ぐためである。
【0059】
また、バインダー層30の弾性率としては、特に限定されないが、0.01MPa以上、1000MPa以下程度であることが好ましい。これにより、バインダー層30の柔軟性を充分に高めることができるため、隔壁部40を押し込むことで形成される高密度バインダー層31を短時間で容易に形成することができるだけでなく、第1基板10および第2基板20との線膨張係数の違いや、屈曲などの外力によって生じる基板間のひずみを、変形しながら効果的に吸収することができる。
【0060】
このようなバインダー層30を構成する樹脂材料としては、特に限定されないが、分子量10000以上の樹脂であるのが好ましい。これにより、空間率が高く柔軟性に優れたバインダー層30が得られ、可とう性を阻害せずに電気泳動表示シート100の強度を高めることができる。
また、バインダー層30を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましい。これにより、後述するように、高密度バインダー層31を形成する貼り合せ工程において、第1基板10及び第2基板20を加熱及び加圧して、隔壁部40を押し当てることにより、バインダー層30を変形及び接着させることが容易となり、隔壁部40との接着強度だけでなく、電気泳動粒子の移動を阻害するだけの高密度バインダー層31が得られる。
【0061】
また、バインダー層30を構成する樹脂材料としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基などの親油基と、水酸基、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレア基、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホニル基、スルホ基、シロキサン基などの親水基の両方を併せ持つ樹脂であるのが好ましい。これにより、分散媒50との親和性に優れると共に、分散媒50への溶解が防止されたバインダー層30を得ることができる。
【0062】
このような樹脂材料としては、軟化温度が50℃〜150℃の間であることが好ましい。これは、高密度バインダー層31を形成する上で重要であり、軟化温度が50℃以下の樹脂では使用温度域で十分な接着性が確保できず、また、軟化温度が150℃以上の樹脂では貼り合せ時に分散媒50が蒸発してしまい信頼性において問題となるためである。具体的には、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、アミド樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)やエチレンアクリル酸共重合体(EAA樹脂)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA樹脂)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)などのエチレン系共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
バインダー層30の形成方法としては、揮発性の希釈液と分散して溶液化して、塗布及び乾燥をおこなうことが好適である。塗布方法としては、グラビアコートやコンマコート、リップコート、ダイコート、スクリーン印刷などが挙げられ、熱乾燥工程としては、熱風乾燥やホットプレート乾燥、減圧オーブン乾燥などが挙げられる。また、光硬化性材料の場合は紫外線照射などをおこなってもよい。熱乾燥工程の後にさらに熱ロール処理などで発泡させる工程を設けても良い。このように、空間率の高いバインダー層30を設けることで、表示性能を向上させつつ、隔壁部の頂上部41に押し込まれる高密度バインダー層31の形成を容易にすることができる。
また、バインダー層30の厚さは、隔壁部40よりも低くする必要があり1〜49μmの範囲が良い。バインダー層30は、第2基板20側における電気泳動粒子の保持性を有すれば良いため、第1基板10の第1電極11に到達するまで厚く設けなくてもよい。
【0064】
また、バインダー層30は、白色に着色されていても良い。これにより、コントラストなどの表示性能を向上することができる。このように、バインダー層30を着色することにより、黒色粒子5のみで2色表示(白黒表示)が可能となるため、電気泳動表示シート100の構成がより簡単となる。
なお、バインダー層30を着色する方法としては、例えば、バインダー層30を構成する樹脂材料に有機顔料、無機顔料等の顔料を混ぜ合わせる方法が挙げられる。
【0065】
図3は、本実施形態の電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図であり、図11(b)に対応している。
図3に示すように、バインダー層30を有する電気泳動表示シート100では、屈曲した状態で書き換えを行った場合であっても、高密度バインダー層31と隔壁部40とが十分接着されているため、隔壁部40を越えて電気泳動粒子が移動しない。
そのため、常にそれぞれの収容部42ごとの粒子数はほぼ均一に確保され、ムラのない良好な表示特性が得られる。さらに、高密度バインダー層31は分散媒50をわずかながら浸透するため、高密度バインダー層31にも電気泳動粒子がわずかながら浸透する。そのため、隔壁部40の頂上部41の形状をぼかすことで頂上部41を目視で認識させにくくできるため、開口率の向上がさらに得られるなどの利点もある。
また、図示していないが、第2基板20の一部にカラーフィルター層を設けることで、カラー表示をおこなうことも可能である。グリーン、レッド、ブルー、または任意の透光性を有するカラーフィルター層を設けることができる。
【0066】
2.電気泳動表示シートの駆動方法。
このような電気泳動表示シート100は、次のようにして駆動する。
【0067】
図1に戻る。
第1電極11と、第2電極21との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界に従って、例えば負荷電させた黒色粒子5は、2つの電極のいずれかに向かって移動(電気泳動)する。また、白色粒子6は、反対の正荷電を持たせているので反対の電極側へ移動する。
このような現象をそれぞれの収容部42(画素)の内部にておこない、多数の白黒の画素を組み合わせて表示を行う。また、収容部42を1つの画素として用いるだけでなく、1つの収容部42の中に第1電極11を複数持たせることで、複数の画素を設けることもできる。
【0068】
なお、バインダー層30または分散媒50が白色に着色された場合には、黒色粒子5のみを使用して同様の表示駆動を行うことができる。すなわち、表示面22側の第2電極21に黒色粒子5を集めれば黒表示となり、第1電極11側に黒色粒子5を集めれば、着色したバインダー層30が見えるようになるため白表示となる。
【0069】
3.電気泳動表示シートの製造方法。
次いで、電気泳動表示シート100の製造方法について、図4を用いて説明する。
【0070】
図4(a)〜(d)は、本実施形態に係る電気泳動表示シートの製造工程における一態様の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、第2基板20の上にバインダー層30を形成する。好適例としては、PET製の基部2の一方の面に、第2電極21となるITO薄膜をスパッタ法で形成した第2基板20を準備し、第2電極21の上に、バインダー層30を形成する。
バインダー層30は、第2電極21の上に、例えば、水/エタノール混合溶媒で分散したウレタン製樹脂からなる繊維状分散溶液をダイコートで塗布した後、熱風乾燥による溶媒除去を行うことにより形成する。
【0071】
次いで、図4(b)に示すように、バインダー層30に対して、黒色粒子5、および白色粒子6をバインダー層30に含浸させるように、電気泳動分散液51を塗布する。
電気泳動分散液51の塗布方法としては、例えば、ダイコート、コンマコート、グラビアコート、リップコート、スクリーン印刷、インクジェット塗布、ディッピング法等の各種塗布方法を用いることができる。
また、含浸を促すため、塗布の前にバインダー層30を加圧ロールなどで押し込んで空気を除いてから、バインダー層30の復元力を使って含浸を促進するような前処理をおこなっても良い。
【0072】
次いで、図4(c)に示すように、あらかじめ隔壁部40までが形成された第1基板10を、第2基板20に貼り合わせる。詳しくは、第2基板20のバインダー層30と、第1基板10の隔壁部40とを、向かい合わせて貼り合わせる。
貼り合せは、例えば0.5MPa程度に加圧した少なくとも2本以上の熱ロールラミネーターにて搬送しながら行なう。こうすることで、バインダー層30が隔壁部40に押されながら軟化及び変形することで高密度バインダー層31となって接合される。熱ロールラミネーターによる加熱温度は、バインダー層の軟化温度よりも高く、隔壁部40の軟化温度よりも低く設定し、例えば80〜120℃に設定される。
これにより、分散媒50の蒸発を防ぎながら、隔壁部40の軟化を防止しつつ、高密度バインダー層31の形成と接合とを一緒に行うことができる。
【0073】
他のラミネート方式としては、減圧雰囲気下で貼り合わせを行うことで、より完全に気泡を除去して貼り合せをすることが可能である。この場合は、ホットプレートテーブル上でダイヤフラム方式の変形板により加圧を行うことが好適である。
この方式は、熱ロールラミネーターと異なり、加圧時間と加熱時間を十分にかけることが可能となり、図2(c)のように隔壁部40を不連続にするなどの気泡抜け対策を行わなくても、より確実に気泡を取り除くことができる。こうして、信頼性の高い電気泳動表示シート100を作成することができる。
【0074】
次いで、図4(d)に示すように、第1基板10および第2基板20の周辺部に、例えば紫外線硬化型エポキシ系接着剤からなるシール剤60を塗布する。
この工程で、前工程の温度付近にまで再び加熱をおこなえばバインダー層30及び高密度バインダー層31は再び軟化するので、基板間の小さな位置ずれを修正しながら、シール剤60を紫外線照射により硬化して固定化することも可能である。こうして、完全に封止された電気泳動表示シート100が得られる。
なお、上述した製造方法において、第1基板10に、画素を区画する隔壁部40を形成する工程を第1工程とし、第2基板20に、バインダー層30を塗布する工程を第2工程としている。また、バインダー層30に、電気泳動分散液51を浸透させる工程を第3工程とし、隔壁部40の頂上部41と第2基板20との間をバインダー層30の一部により、貼り合わせる工程を第4工程としている。
【0075】
このような製造方法によれば、比較的簡単かつ安価に電気泳動表示シート100を製造することができる。
なお、バインダー層30の形成方法としては、前述の方法に限定されず、例えば、次のような方法であっても良い。
すなわち、まず、水分散系イソシアネートプレポリマーに熱可塑性を持たせるためにポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール等のエマルションを添加してなる塗布液を塗布し、その後、高温高圧下に置き、三次元ウレア架橋によって発生する炭酸ガスによって発泡を行うことによりバインダー層30を形成してもよい。また、予め、用意しておいたシート状のバインダー層30を熱ロール等で第2基板20の表面に貼り付けてもよい。
【0076】
以上述べたように、本実施形態に係る電気泳動表示シート100によれば、以下の効果を得ることができる。
第1基板10と第2基板20とが、周縁部のシール剤60での接合に加えて、隔壁部40の頂上部41においても高密度バインダー層31を介して接着されている。
これにより、電気泳動表示シート100の強度を高めることができる。
さらに、屈曲した状態で書き換えを行った場合であっても、隔壁部40の頂上部41が高密度バインダー層31により、第2基板20に接着されているため、電気泳動粒子が隣の収容部42へ移動することを防止することができる。
よって、常にそれぞれの収容部42ごとの粒子数はほぼ均一に確保され、ムラのない良好な表示特性が得られる。
【0077】
また、バインダー層30、及び電気泳動分散液51は、領域ごとに塗り分ける必要が無く全面(端は除く)に一度に塗ることができるため、製造工程の増加を防ぐことができる。
よって、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、屈曲時においても、優れた表示品位を確保することができる。従って、優れた製造効率と、高信頼性とを実現した電気泳動表示シート100を提供することができる。
【0078】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る電気泳動表示シートの断面図であり、図1に対応している。
以下、本実施形態に係る電気泳動表示シート110について、図5を用いて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
電気泳動表示シート110は、バインダー層30の形状が、粒子状になっていること以外は、実施形態1の電気泳動表示シート100と同様である。
【0079】
図5に示すように、電気泳動表示シート110では、バインダー層30の樹脂が繊維状ではなく、粒子状となっている。
また、こうすることで、実施形態1の繊維状と比べて、粒子状の方がバインダー層30を白色に着色する場合に有利となる。粒子状のため、白色顔料の添加量が増やせることや、分散媒50とバインダー層30の屈折率を変えて光の散乱をより均一に起こさせることも容易となる。さらに、粒子状の場合には中空構造にして気体を封じ込めることで光の散乱を高めて、白色度を上げることもできる。
このように、白色を呈した粒子状のバインダー層30を用いることで、1粒子のみでもコントラストの高い表示性能を得ることができる。黒色粒子5のみを分散媒50に分散し、実施形態1と同様の製造方法と駆動方法を用いることができる。このように、部材が削減されることで、より低コストでの電気泳動表示シート110の製造が可能となる。
【0080】
以上述べたように、本実施形態に係る電気泳動表示シート110によれば、以下の効果を得ることができる。
バインダー層30の形状が粒子状であっても、繊維状のバインダー層と同様の作用効果が得られる。
従って、優れた製造効率と、高信頼性とを実現した電気泳動表示シート110を提供することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0082】
(変形例)
図6(a)は、変形例に係る電気泳動表示シートの断面図であり、図1に対応している。図6(b)は、変形例に係る電気泳動表示シートにおける異なる態様の断面図であり、図5に対応している。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
【0083】
図6(a)の本変形例に係る電気泳動表示シート120は、回路部、第1電極11、第2電極21が存在しないこと以外は、実施形態1の電気泳動表示シート100と同様である。つまり、電気泳動表示シート120では、各画素(収容部42)の書き換えを行うための電極や配線、スイッチング素子等が存在しない。
このような電気泳動表示シート120は、外部表示入力装置を用いて書き換えをおこなうもので、外部表示入力装置の端子と接触させることで、電気泳動表示シートに配列された多数の画素に、それぞれ任意に電流を印加して書き換えをおこなうものである。換言すれば、電気泳動表示シート120はリライタブルシートであり、単品では表示の書換え機能(構成)を備えていないが、専用のリライタブルプリンターを用いて表示の書換え可能な電気泳動表示シートである。
【0084】
また、同様に、図5の電気泳動表示シート110も、リライタブルシート化することができる。具体的には、図6(b)に示すように、電気泳動表示シート110の構成から、第1電極11、第2電極21および各電極に駆動電圧を供給する回路部を削除すれば良い。
これにより、本変形例に係るリライタブルシートとしての電気泳動表示シート130が構成される。なお、電気泳動表示シート120と電気泳動表示シート130との違いは、バインダー層30の構成材料として繊維を用いているか、粒子を用いているかという点である。
【0085】
図7は、書き込み装置の一例を示す斜視図である。
上述のリライタブルプリンターの一例として、書き込み装置200を挙げる。
書き込み装置200は、上記電気泳動表示シート120に所望の画像(模様、色彩、文字、絵またはこれらの組み合わせ等)を書き込む際に使用する装置である。
図7に示すように、書き込み装置200は、台座190と、台座190上に設けられたシート状の共通電極191、先端に部分電極193が設けられた書き込みペン(入力具)194、共通電極191、および部分電極193間に電圧を印加する電圧印加手段195などから構成されている。
【0086】
書き込み装置200による電気泳動表示シート120への書き込みは次のように行う。
まず、表示面22の全域が白色表示状態の電気泳動表示シート120を、表示面22が上になるように、書き込み装置200の共通電極191上に載置する。
次いで、電圧印加手段195によって共通電極191および部分電極193間に、部分電極193側が低電位となる電圧を印加する。
この状態で、書き込みペン194を表示面22に接触させつつ、所望の軌跡で移動させることにより、その軌跡に対応する領域にて粒子の泳動が生じ、表示色が白色から黒色に変化する。
【0087】
このような書き込み装置200によれば、紙に鉛筆で文字等を描くのと同様の感覚で、電気泳動表示シート120の表示面22に所望の文字や、絵等の情報を描くことができる。
また、電気泳動表示シート120は台座190から自在に着脱することが可能であるため、情報が表示された状態の電気泳動表示シート120を紙と同様の感覚で簡単に持ち運ぶことができる。
なお、電気泳動表示シート130を用いた場合であっても、電気泳動表示シート120と同様に扱うことができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
また、ここでは、手書き入力方式のリライタブルプリンターについて説明したが、PC(Personal Computer)で作成した文書や、図などの画像データを書き込む装置であっても良い。
この場合、共通電極191の替わりに、電気泳動表示シート120の各画素(収容部)に対応した複数の画素電極からなる画素電極部を配置する。また、書き込みペン194の替わりに、表示面22を覆う共通電極を配置する。
そして、実施形態1での説明と同様に、各画素電極、および共通電極に駆動電圧を供給する。なお、このときの駆動電圧は、PCからの画像データ(階調データ)に基づいた駆動電圧とする。これにより、PCで作成した画像データを電気泳動表示シート120(130)に簡便に書き込むことができる。
【0089】
(電子機器)
また、本発明の電気泳動表示シートは、それぞれ、各種電子機器に組み込むことができる。電気泳動表示シートを備える本発明の電子機器としては、例えば、電子ペーパー、電子ブック、テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができる。
【0090】
これらの電子機器のうちから、電子ペーパーを例に挙げ、具体的に説明する。
【0091】
図8は、電子機器としての電子ペーパーの一例を示す斜視図である。
フレキシブル型の電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、上述した電気泳動表示シート100〜130に該当する。
【0092】
次に、上述した電気泳動表示シートを電子機器のディスプレイとして用いた場合の実施形態について説明する。
【0093】
図9は、電子機器としての電子ブックの一例を示す斜視図である。
電子ブック1000は、バッテリーや通信機器、駆動IC等が内蔵された本体部1001に、複数枚の電気泳動表示シート100a,100bを綴じ込んだ携帯型の電子ブックである。図9では、電子ブックのページとなる電気泳動表示シートが2枚の構成を示しているが、枚数は3枚以上であっても良い。これらのシートは、本体1001に対して着脱自在に設けられており、単体で持ち運ぶこともできる。
【0094】
図10は、電子機器としてのスマートフォンの一例を示す斜視図である。
スマートフォン2000は、矩形状の筐体700内に、表示部701、複数の操作ボタン702、クリックホイールボード703などを一体化させた携帯型情報端末装置である。また、筐体700の内部には、バッテリー、マイク、スピーカー、通信機器、駆動IC等が内蔵されている。この表示部701には、上述の電気泳動表示シート100(110)が搭載されている。
【0095】
以上、本発明の電気泳動表示シート、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、分散液に含まれる粒子が黒色の場合、または、白色と黒色が混ざっているものについて説明したが、粒子の色は、これに限定されず、例えば、青、赤、緑等の有彩色であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,2…基部、5…電気泳動粒子としての黒色粒子、6…電気泳動粒子としての白色粒子、10…第1基板、11…第1電極(画素電極)、20…第2基板、21…第2電極(共通電極)、30…バインダー層、31…バインダー層の一部としての高密度バインダー層、40…隔壁部、41…隔壁部の頂上部、50…分散媒、51…電気泳動分散液、60…シール剤、100〜130…電気泳動表示シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子ペーパーの画像表示部を構成するものとして、粒子の電気泳動を利用した電気泳動表示シートが知られている。電気泳動表示シートは、優れた可とう性および省電力性を有しており、電子ペーパーの画像表示部として特に適している。
電気泳動表示シートは、対向配置された一対の電極と、これらの間に設けられた表示層とを有しており、表示層には、例えば正に帯電する白色粒子と、負に帯電する黒色粒子とを液相分散媒に分散してなる分散液が充填されている。このような電気泳動表示シートは、一対の電極間に電圧を印加し、白色粒子および黒色粒子を所望の方向へ泳動させることにより所望の画像を表示するように構成されている。
【0003】
ここで、電気泳動表示シートの構成としては、電気泳動粒子を含む分散媒を封入したマイクロカプセルを用いる構成(以下MC方式)と、特許文献1のように、同様な分散媒を隔壁で区画された領域ごとに充填する構成(以下隔壁方式)とが知られている。
MC方式は、電気泳動粒子をカプセル殻で閉じ込めるため偏析や沈降が少ない、カプセル殻周辺にバインダー樹脂が設けられるため基板間の接着性が得られる、表示に関与する開口率が大きく取れる、などの利点がある反面、カプセル殻及びバインダー樹脂による透明性の低下、電気泳動粒子が移動する空間が狭くなることによる表示性能の低下、タッチパネル入力など表示面の押し圧に対してカプセル殻が変形しやすい、などの課題がある。
他方、隔壁方式は、電気泳動粒子が移動する空間が広く、隔壁構造により表示面の押し圧に強い、高い透明性による表示性能が良い、などの利点がある。特許文献1では、この利点に加えて、隔壁の高さを最適化することにより、電気泳動粒子の凝縮を防ぎ、優れた表示特性を実現することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−65288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の隔壁方式の電気泳動表示シートでは、シート強度が得難く、また、十分な表示品位や信頼性を確保することが困難であるという課題があった。
詳しくは、図11(a)に示すように、従来の電気泳動表示シート90を構成する一対の第1基板10と第2基板20とは、基本的にその周縁部のシール剤60のみによって接着される構成であったため、十分な実用強度を確保することが困難であった。さらに、第1基板10に形成された隔壁140の頂と、第2基板20(共通電極21)との間に間隙(流路)gが確保されており、隔壁が電気泳動分散液を完全に分離していないため電気泳動粒子の偏析や沈降が起き易かった。
これらの現象は、図11(b)に示すように、特に、基板自体が変形するフレキシブル基板を用いた場合に顕著となり、対向する2つの基板の接触する箇所が少ないため十分なシート強度を確保することが困難であった。さらに、隔壁140と第2基板20との間の間隙gが大きく開いて、電気泳動分散液が漏洩してしまう恐れがあり、所期の表示品位を確保することが難しく、信頼性に乏しかった。
そのため、電子ペーパーとしての大きな特徴である、軽量で屈曲性に優れた高い信頼性の電気泳動表示シート、およびそれらを用いた表示装置および電子機器を提供することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例]本適用例に係る電気泳動表示シートの製造方法は、第1基板に、複数の領域に区画する隔壁部を形成する第1工程と、第2基板に、バインダー層を塗布する第2工程と、バインダー層に、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を浸透させる第3工程と、第2基板のバインダー層を塗布した面と、第1基板の隔壁部が形成された面を対向させ、隔壁部の頂上部と第2基板との間をバインダー層の一部により、貼り合わせる第4工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、電気泳動表示シートの端部以外でも、隔壁部の頂上部と、第2基板が、バインダー層を介して接着されることにより、電気泳動表示シートの強度を高めることができる。また、バインダー層及び電気泳動分散液は、領域ごとに塗り分ける必要が無く全面(端は除く)に一度に塗ることができるため、製造工程の増加を防ぐことができる。
よって、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、屈曲時においても、優れた表示品位を確保することができる。従って、高い信頼性かつ製造コストを抑えた電気泳動表示シートを提供することができる。
【0009】
また、上記記載の電気泳動表示シートの製造方法において、第4工程では、少なくとも2つの熱ロールの間で搬送による貼り合わせが行われることが好ましい。
【0010】
これによれば、第1及び第2基板を搬送しながら2つの熱ロールにより第1及び第2基板を加熱することで、バインダー層を軟化させ、同時に熱ロールから与えられる圧力により隔壁部がバインダー層の一部を変形させながら接合される。これによって、搬送しながら連続的に第1基板側の隔壁部の頂上部と第2基板とを、バインダー層を介して接着することができる。
従って、短時間で大量に電気泳動表示シートを作成することができ、製造コストを抑えながら電気泳動表示シートの強度を高めることができる。
【0011】
また、上記記載の電気泳動表示シートの製造方法において、第4工程では、減圧雰囲気下で熱圧着の貼り合わせが行われることが好ましい。
【0012】
これによれば、減圧雰囲気下で加熱圧着することにより、より確実に収容部(セル)の内部に残留する気泡を除去しながら、バインダー層と隔壁部の頂上部の接着ができる効果が得られる。これによって、電気泳動分散液中に気泡が残らない信頼性の高い電気泳動表示シートを得ることができる。
【0013】
また、本適用例に係る電気泳動表示シートは、複数の領域に区画する隔壁部が設けられた第1基板と、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子が分散された電気泳動分散液を含むバインダー層が形成された第2基板と、を備え、第1基板と第2基板とが、少なくとも隔壁部の頂上部と第2基板との間に挟持されたバインダー層の一部により接着されていることを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、収容部(セル)の内部にもバインダー層が配置され、第1基板または第2基板から垂直方向に押される力が加わったとき、バインダー層と隔壁部の頂上部の接着がされているため、電気泳動表示シート自身の強度が強くなる。また、第1及び第2基板が外部応力で屈曲した場合にも、隔壁部が浮き上がらずに電気泳動分散液の移動を防ぐことができる。これによって、基板が屈曲しても表示性能の低下を防ぐ効果が得られる。
従って、高い信頼性の電気泳動表示シートを得ることができる。
【0015】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層が、繊維状の状態で第2基板側に積層されていることが好ましい。
【0016】
これによれば、バインダー層が多数の繊維として積み重なって第2基板上に形成されることで、バインダー層の内部の空間率を高めることができ、分散媒が多く浸透することで電気泳動粒子が移動しやすくなるため、表示性能が向上できる。
また、繊維状の構造物が外圧や温度変化で発生する分散媒の自然対流を防ぎ、電気泳動粒子の保持性が向上する。さらに、第1基板側の隔壁部が押し込まれて接着する際に、変形がより容易にできることで接着面積を増やすことができる。これによって、隔壁部との接着性が向上する。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0017】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層が、粒子状の状態で第2基板側に積層されていることが好ましい。
【0018】
これによれば、バインダー層が多数の粒子として積み重なって第2基板上に形成されることで、バインダー層の内部の空間率を高めることができ、分散媒が多く浸透することで電気泳動粒子が移動しやすくなるため、表示性能が向上できる。
また、粒子状の構造物が外圧や温度変化で発生する分散媒の自然対流を防ぎ、電気泳動粒子の保持性が向上する。さらに、粒子状の場合は、着色する場合に顔料材料などをより多く添加することが出来るため、白色濃度の向上など表示性能の向上が期待できる。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性と高い表示性能の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0019】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、バインダー層は、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)、アクリル樹脂、ブタジエン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする。
【0020】
これによれば、バインダー層が上述の熱可塑性樹脂であることで、第2基板を加熱することでバインダー層が軟化し、隔壁部に沿って形状を変化させて接着面積を上げることができる。そして、温度が下がることでバインダー層が再び硬化するため、接着強度を向上させることができる。これによって、隔壁部と第2の基板の接着をおこなうことができる。
また、隔壁部によりバインダー層が押し込まれた領域は空間率が下がり、電気泳動分散液が浸透しにくくなる。これによって、それぞれの収容部(セル)が隔離に近い状態となり、電気泳動分散液の漏洩により信頼性が低下することを防ぐ。
従って、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができる。
【0021】
また、上記記載の電気泳動表示シートにおいて、第1基板及び/または第2基板が、可とう性を有していることが好ましい。
【0022】
これによれば、隔壁部とバインダー層が十分に接着されていることで、第1基板及び/または第2基板が薄く屈曲しやすい状態でも、シート強度を十分に確保することができる。これによって、外部応力によって第1基板及び/または第2基板が屈曲や伸縮した場合でも、隔壁部が浮き上がって電気泳動分散液が隔壁を越えて漏洩することなく、電気泳動表示シートの表示性能を維持することができ、信頼性の高い電気泳動表示シートが得られる。さらに、第1基板と第2基板の双方が可とう性を有する場合は、電気泳動表示シートの可とう性は極めて大きくなる。
従って、可とう性を有しつつ、高い信頼性の電気泳動表示シートを提供することができ、軽量かつフレキシブル性に優れた電子ペーパーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る電気泳動表示シートの断面図。
【図2】(a)隔壁の一態様における平面図、(b),(c)異なる態様の平面図。
【図3】電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図。
【図4】(a)〜(d)電気泳動表示シートの製造工程における一態様の断面図。
【図5】実施形態2に係る電気泳動表示シートの断面図。
【図6】(a)変形例に係る電気泳動表示シートの断面図、(b)電気泳動表示シートにおける異なる態様の断面図。
【図7】書き込み装置の一例を示す斜視図。
【図8】電子機器としての電子ペーパーの一例を示す斜視図。
【図9】電子機器としての電子ブックの一例を示す斜視図。
【図10】電子機器としてのスマートフォンの一例を示す斜視図。
【図11】(a)従来の電気泳動表示シートの断面図、(b)電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電気泳動表示シート及びその製造方法を、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0025】
(実施形態1)
1.電気泳動表示シートの構成。
まず、本発明の電気泳動表示シートについて説明する。
図1は、実施形態1に係る電気泳動表示シートの断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1に正対したときの上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0026】
図1に示す電気泳動表示シート100は、電気泳動粒子の泳動を利用して所望の画像を表示するものである。この電気泳動表示シート100は、表示面となる第2基板(フロントプレーン)20と、駆動回路や配線などを有する第1基板(バックプレーン)10とを有している。
電気泳動表示シート100には、第1基板10と第2基板20とが存在し、それぞれ一方の面には、それぞれ画素電極と呼ばれる第1電極11と、光透過性を有する第2電極21とが設けられている。これらの2種類の電極の間には、隔壁部40が存在し、隔壁部40によって区分された複数の収容部(セル)42には、電気泳動粒子である黒色粒子5と、白色粒子6と、分散媒50とからなる電気泳動分散液51が、充填されている。
このような電気泳動表示シート100では、第2基板20の上面が表示面22を構成している。なお、表示面22とは、電気泳動表示シート100の平面視にて、第2基板20の上面におけるシール剤60で囲まれた内側の領域を指している。
【0027】
第1基板10は、平板状の基部1の上面に設けられた画素を構成する複数の第1電極11と、それらを区分する隔壁部40とを備えるもので、さらには図示しない回路部を有している。回路部は、例えば、マトリックス状に配列された少なくとも1つ以上のTFT(スイッチング素子)と、TFTに対応して形成されたゲート線およびデータ線と、ゲート線に所望の電圧を印加するゲートドライバーと、データ線に所望の電圧を印加するデータドライバーと、ゲートドライバーとデータドライバーの駆動を制御する制御部とを有している。
【0028】
一方、第2基板20には、平板状の基部2の上面に光透過性を有する第2電極21と、バインダー層30とが設けられ、さらに隔壁部の頂上部41と接する領域はバインダー材料の密度が高くなっている高密度バインダー層31が存在する。そして、第2基板20の端部を覆いながら、第1基板10とも周辺部で接するようにシール剤60が設けられている。なお、詳しくは後述するが、バインダー層30は、電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を内包可能な構成となっており、当該層の中で、電気泳動粒子が移動可能な状態となっている。
【0029】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。基部1,2は、それぞれ、可とう性を有するもの、または硬質なもの、のいずれであってもよいが、より薄く、可とう性を有するものであるのが好ましい。可とう性を有する基部1,2を用いることにより、可とう性を有する、特に電子ペーパーを構築する上で好適な電気泳動表示シート100を得ることができる。
【0030】
基部(基材層)1,2が可とう性を有するものとする場合、その構成材料としては、光透過性や耐熱性、寸法安定性に優れたものが好ましく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン、COP(環状ポリオレフィン)等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂等のプラスチックや、圧延された金属箔、フレキシブルガラス等が挙げられる。特に、表示面22を有する基部2については、上記材料の中でも光透過性を優先して用いられる。
【0031】
このような基部1,2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可とう性を有するものとする場合、20μm以上、500μm以下程度であるのが好ましく、50μm以上、200μm以下であるのがより好ましい。これにより、電気泳動表示シート100の柔軟性と強度との調和を図りつつ、電気泳動表示シート100の薄型化(さらには軽量化)を図ることができる。
【0032】
これらの基部1,2の電気泳動分散液51に接する面、すなわち、基部1の上面および基部2の下面に、それぞれ、膜状をなす第1電極11および第2電極21が設けられている。本実施形態では、第2電極21が共通電極とされ、第1電極11がマトリックス状に分割された個別電極(TFTに接続された画素電極)とされている。この電気泳動表示シート100では、1つの第1電極11と第2電極21とが重なる領域が1つの画素を構成することになる。
【0033】
第1電極11、第2電極21の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CF3SO3)2等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、酸化スズ(SnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
特に、第2電極21の構成材料としては、これらの中でも、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素系材料であるのが好ましい。これにより、後述するように、第2電極21とバインダー層30との接着性を高めることができるため、電気泳動表示シート100の機械的強度が向上する。
【0035】
また、第1電極11、第2電極21の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.01μm以上、10μm以下程度であるのが好ましく、0.02μm以上、5μm以下であるのがより好ましい。
本実施形態では、表示面22に配置される第2基板20を構成する基部2および第2電極21は、それぞれ光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)の材料が選ばれる。これにより、分散媒50中における黒色粒子5および白色粒子6の状態、すなわち、電気泳動表示シート100に表示された情報(画像)を表示面22側から目視により容易に認識することができる。
【0036】
また、第2電極21の表面には、バインダー層30との接着性を向上させるため、界面接着層(図示せず)と呼ばれる接着性の薄膜層が設けられていても良い。界面接着層の材料としては、接着性を考慮してバインダー層30と同じような種類の材料系でも良く、エーテル樹脂やウレタン樹脂、エステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などの熱可塑性接着樹脂や、アクリル系樹脂やエポキシ化合物、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂などの熱硬化性接着樹脂でも良い。
また、第2電極21が無機材料からなる場合は、シランカップリング剤や有機チタネートなどの有機無機カップリング化合物を用いると接着性がさらに向上するので好適である。厚さとしては、光透過性と導電性を考慮して、0.001μm以上、1μm以下程度の薄膜で形成されるのが好ましい。
【0037】
第1基板10と第2基板20との周辺部には、表示面22を囲むようにシール剤60が設けられている。このシール剤60により、分散媒50が表示面22の内側に気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示シート100の外部へ分散媒50の漏出や、電気泳動表示シート100内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示シート100の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
シール剤60の構成材料としては、耐水性の高い接着材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性または紫外線硬化性の樹脂が挙げられ、さらに耐水性や強度を保つために無機粒子充填剤のような添加剤を加えても良い。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
前述したように、電気泳動表示シート100は、電気泳動分散液51に含まれる黒色粒子5、及び白色粒子6が、隔壁部40で区画された収容部42から隣の収容部に漏洩しないように、隔壁部40の上部で高密度バインダー層31により接着されている。
しかし、高密度バインダー層31は、黒色粒子5及び白色粒子6のある程度の移動規制はできるものの、元となるバインダー層30は分散媒50が非常に浸透しやすい材料であることから、加圧して高密度化しても浸透性の高い分散媒50を完全に密封することは難しい。そのため、シール剤60による封止構造が必要となる。なお、電気泳動分散液51は、正または負に帯電した黒色粒子5及び白色粒子6を、分散媒50に分散させたものである。
【0039】
分散媒50としては、温度による粘度変化が少ない、親油性及び電気絶縁性を有するものが好適に使用される。また、分散媒50の沸点としては、特に限定されないが、150℃以上であるのが好ましい。かかる分散媒50としては、例えば、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソブチルケトン等のケトン類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサンやノルボルネン等の脂環式炭化水素類、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、シリコーンオイルまたはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0040】
中でも、分散媒50としては、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)またはシリコーンオイルを主成分とするものが好ましい。流動パラフィン、またはシリコーンオイルを主成分とする分散媒50は、透明性や耐熱性、耐水性に優れており、黒色粒子5および白色粒子6の凝集抑制効果も高いことから好ましい。これにより、電気泳動表示シート100の表示性能が温度や湿度などによって経時的に劣化するのをより確実に防止または抑制することができる。また、流動パラフィンまたはシリコーンオイルは、不飽和炭素共有結合を有さないため耐候性に優れ、および安全性も高いという点からも好ましい。
【0041】
また、分散媒50中には、必要に応じて、例えば電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。また、分散媒50を着色する場合には、分散媒50に必要に応じてアントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0042】
黒色粒子5は、荷電を有し、電界が作用することにより分散媒50中を電気泳動し得る粒子である。黒色粒子5は、それぞれ、黒色顔料粒子で荷電を有するものであればいかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0043】
白色粒子6は、黒色粒子5と反対の荷電を有し、同様に電界が作用することにより分散媒50中を電気泳動し得る粒子である。白色粒子6は、それぞれ、白色顔料粒子で荷電を有するものであればいかなるものをも用いることができる。さらに、分散媒50が白色に着色されている場合や、バインダー層30が白色を有しているような場合には、必要に応じて使わなくても良い。
【0044】
顔料粒子を構成する顔料材料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック、亜クロム酸銅等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
なお、黒色粒子5としては、カーボンブラック粒子またはその表面を有機化合物で被覆した粒子を好適に用いることができる。
【0046】
また、黒色粒子5の形状は、それぞれ、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。また、黒色粒子5の平均粒子径は、それぞれ、特に限定されるものではないが、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは20nm以上300nm以下である。黒色粒子5の平均粒子径が10nm未満であると充分な色度が得られず、コントラストが低下して表示が不鮮明になることがある。逆に、黒色粒子5の平均粒子径が300nmを超えると、1粒子あたりの重量が重くなることで沈降や偏析がしやすくなることや、表示のために電圧を印加した部分で粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度が低下することがある。なお、黒色粒子5の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、製品名:LB−500、(株)堀場製作所製)で測定した体積平均粒子径を意味する。
【0047】
次いで、隔壁部40について説明する。隔壁部40は、第1基板10上に収容部42を区分するために形成され、バインダー層30を加熱しながら押し込むことで第2基板20(第2電極21)と接着させる役割を有する。そのため、材料としては耐熱性が高く、比較的硬度の高い樹脂材料が好適である。例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂が好ましい。隔壁部40の軟化温度は150℃以上が好ましい。これは、バインダー層30が軟化して接着する温度領域で、隔壁部40が一緒に軟化しないようにするためである。隔壁部40の形成方法としては、グラビア印刷やスクリーン印刷で形成する印刷法や、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法、などが高精度で形成できるため好適である。
【0048】
収容部42を区画する隔壁部40の高さは、電気泳動粒子の移動と隠蔽性を考慮して10〜50μmが好ましく、隔壁部の頂上部41の幅は、開口部の開口率を高めたいため少しでも狭い方が好ましく、高密度バインダー層31の形成される限界と隔壁部40の強度を考慮して1〜5μmが好ましい。アスペクト比としては2〜50が好ましい。また、隔壁部40が第1基板10と接する底部よりも、隔壁部の頂上部41の幅の方が狭くなるように隔壁部40の断面構造をテーパー形状にする方が、表示性能を損なわずに強度を上げることができるためより好ましい。
【0049】
図2(a)は、隔壁の一態様における平面図である。図2(b),(c)は、異なる態様の平面図である。
さらに、隔壁部40の平面形状の例としては、図2(a)に示すような隔壁形状が好適である。詳しくは、複数の矩形の収容部42がマトリックス状になるように、隔壁部40を格子状に形成する。理想的な隔壁形状は、隔壁部の頂上部41が視認する正面から少しでも見えない方が好ましく、開口率が高い方が良い。
そのため、図2(a)に示すように、収容部42の平面形状(開口部)を四角形の連続した形状とすることにより、隔壁部40の頂上部41の面積を抑えられて、開口率をより高くすることができる。なお、収容部42の平面形状は、四角形に限定するものではなく、多角形の連続構造であれば良い。例えば、図2(b)のように六角形の連続したハニカム構造であっても良いし、三角形の連続した構造であっても良い。これらの構造であっても、同様に、開口率を高めることができる。
【0050】
また、1つの収容部42が1つの画素となることに限定するものではなく、隔壁部40は、表示部(表示面22)を複数の領域に区画するものであれば良い。例えば、1つの収容部42の中に第1電極11を複数持たせることで、複数の画素を設ける構成であっても良い。
また、図2(c)に示すように、連続する多角形の角部に間隙sを設けて、気泡が抜けやすいように角部を不連続にしてもよい。この構造によれば、収容部42に気泡が残留している場合であっても、貼り合せ工程において、効率的に気泡を抜くことができる。
【0051】
次いで、バインダー層30について説明するが、それに先立って、バインダー層30を省略した場合(すなわち、従来の「隔壁方式」の表示シート)に起きる問題点について、図11を用いて、再度説明する。
【0052】
図11(a)に示したバインダー層が存在しない隔壁方式による従来の電気泳動表示シート90では、当該シートを外力で屈曲させると、図11(b)に示すように、シート中央部で隔壁部140と第2基板20との間隙gが拡大する。その状態で、電極の間に所定の電圧を印加して書き換えをおこなうと、矢印で示すように、隔壁部140を越えて隣接する収容部42に黒色粒子5、および/または、白色粒子6が移動してしまい、収容部42ごとの粒子量が変化してしまい、ムラのある画像となってしまう。
さらに、電気泳動表示シート90を手に持って本のようにして傾けたりした状態で視認された場合には、重力が働くことで、収容部42を渡りながら鉛直方向に向かって下方に黒色粒子5、および/または、白色粒子6が移動(沈降)して、さらに顕著なムラが発生してしまう。このような移動(沈降)によって黒色粒子5の数が減少した画素では、黒表示での低反射率(黒が沈む状態)を得ることができなくなるため、コントラストが低下してしまう。このように、従来の電気泳動表示シート90では、優れた表示特性を発揮することが困難であった。
【0053】
また、黒色粒子5の偏析が大きく生じてしまうと、収容部42ごとに黒色粒子5を均一に再び分散させるのは困難である。そのため、表示特性を回復させるためにリセットを繰り返すなどが必要になり、電気泳動表示シート90の利便性も悪いものとなる。
このような問題に加えて、従来の電気泳動表示シート90では、当該シートが屈曲したときの厚さの変化を抑制する機能を有する部材が何ら設けられていないため、屈曲した際に当該シートの厚さが部分的に大きく変化してしまい、これにより、表示特性が悪化してしまうという問題もあった。さらに、第1基板10、及び第2基板20の間の接合をシール剤60でのみ行っているため、電気泳動表示シート90の機械的強度を高めることが難しかった。
【0054】
バインダー層30は、このような問題を解消、すなわち、電気泳動表示シート100の機械的強度を高めつつ、黒色粒子5、および/または、白色粒子6の鉛直方向下側への移動(沈降)を防止または抑制することにより、電気泳動表示シート100に優れた表示特性を発揮させる機能を有している。
以下、バインダー層30について詳細に説明する。
【0055】
図1に示すように、バインダー層30は、第2基板20の一方の面に形成されて収容部42内に設けられる。隔壁部40の頂上部41と接触する部分については高密度バインダー層31によって、隔壁部40を介して第1基板10(第2電極21)と接着される。
また、高密度バインダー層31は、黒色粒子5、および/または、白色粒子6がそれぞれの収容部42から、隔壁部40を超えて移動しないようにする機能を有している。
【0056】
バインダー層30は、三次元に網目状に形成された樹脂を主成分とする弾性体で、形成された空間領域には分散媒50が非常に浸透しやすい特徴を有する。具体的には、バインダー層30は、繊維または粒子の集合体等で構成することができる。
繊維の場合、繊維の長さとしては、0.01〜1000μm長のものが好ましい。
また、粒子の場合、粒径は0.01〜10μmのものが好ましい。粒径0.01μm以下では、隔壁部の頂上部41と電極間の接着性と50%以上の空間率の両立が得られにくく、粒径10μm以上では隔壁部と電極間で潰れた際に隔壁部の頂上部41の幅よりも大きくはみ出す量が増えてしまうので好ましくない。
本実施形態では、好適例として、繊維の太さが粒子状と同じ範囲の0.01〜10μmの繊維を用いている。
【0057】
これにより、上記機能に優れ、かつ比較的簡単な構成のバインダー層30が得られる。なお、繊維の集合体としては、所定の繊維を織って形成される織物体、所定の繊維同士を織り込まずに形成される不織体等が挙げられる。また、バインダー層30をウレタン系樹脂などの発泡特性を利用して形成しても良い。
【0058】
バインダー層30の空間率としては、特に限定されないが、50%以上、99%以下程度であることが好ましい。これにより、電気泳動粒子の移動経路を充分に確保することができ、バインダー層30の中を、分散媒50を介して黒色粒子5、および白色粒子6がスムーズに移動することができる。また、高密度バインダー層31の空間率としては、1%以上、50%未満に低下させることが好ましい。これは、電気泳動分散液51の収容部42間の移動を規制して、粒子の偏析による表示特性の低下を防ぐためである。
【0059】
また、バインダー層30の弾性率としては、特に限定されないが、0.01MPa以上、1000MPa以下程度であることが好ましい。これにより、バインダー層30の柔軟性を充分に高めることができるため、隔壁部40を押し込むことで形成される高密度バインダー層31を短時間で容易に形成することができるだけでなく、第1基板10および第2基板20との線膨張係数の違いや、屈曲などの外力によって生じる基板間のひずみを、変形しながら効果的に吸収することができる。
【0060】
このようなバインダー層30を構成する樹脂材料としては、特に限定されないが、分子量10000以上の樹脂であるのが好ましい。これにより、空間率が高く柔軟性に優れたバインダー層30が得られ、可とう性を阻害せずに電気泳動表示シート100の強度を高めることができる。
また、バインダー層30を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましい。これにより、後述するように、高密度バインダー層31を形成する貼り合せ工程において、第1基板10及び第2基板20を加熱及び加圧して、隔壁部40を押し当てることにより、バインダー層30を変形及び接着させることが容易となり、隔壁部40との接着強度だけでなく、電気泳動粒子の移動を阻害するだけの高密度バインダー層31が得られる。
【0061】
また、バインダー層30を構成する樹脂材料としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基などの親油基と、水酸基、エステル基、ウレタン基、アミド基、ウレア基、エーテル基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホニル基、スルホ基、シロキサン基などの親水基の両方を併せ持つ樹脂であるのが好ましい。これにより、分散媒50との親和性に優れると共に、分散媒50への溶解が防止されたバインダー層30を得ることができる。
【0062】
このような樹脂材料としては、軟化温度が50℃〜150℃の間であることが好ましい。これは、高密度バインダー層31を形成する上で重要であり、軟化温度が50℃以下の樹脂では使用温度域で十分な接着性が確保できず、また、軟化温度が150℃以上の樹脂では貼り合せ時に分散媒50が蒸発してしまい信頼性において問題となるためである。具体的には、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、アミド樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)やエチレンアクリル酸共重合体(EAA樹脂)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA樹脂)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)などのエチレン系共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
バインダー層30の形成方法としては、揮発性の希釈液と分散して溶液化して、塗布及び乾燥をおこなうことが好適である。塗布方法としては、グラビアコートやコンマコート、リップコート、ダイコート、スクリーン印刷などが挙げられ、熱乾燥工程としては、熱風乾燥やホットプレート乾燥、減圧オーブン乾燥などが挙げられる。また、光硬化性材料の場合は紫外線照射などをおこなってもよい。熱乾燥工程の後にさらに熱ロール処理などで発泡させる工程を設けても良い。このように、空間率の高いバインダー層30を設けることで、表示性能を向上させつつ、隔壁部の頂上部41に押し込まれる高密度バインダー層31の形成を容易にすることができる。
また、バインダー層30の厚さは、隔壁部40よりも低くする必要があり1〜49μmの範囲が良い。バインダー層30は、第2基板20側における電気泳動粒子の保持性を有すれば良いため、第1基板10の第1電極11に到達するまで厚く設けなくてもよい。
【0064】
また、バインダー層30は、白色に着色されていても良い。これにより、コントラストなどの表示性能を向上することができる。このように、バインダー層30を着色することにより、黒色粒子5のみで2色表示(白黒表示)が可能となるため、電気泳動表示シート100の構成がより簡単となる。
なお、バインダー層30を着色する方法としては、例えば、バインダー層30を構成する樹脂材料に有機顔料、無機顔料等の顔料を混ぜ合わせる方法が挙げられる。
【0065】
図3は、本実施形態の電気泳動表示シートを屈曲した場合の断面図であり、図11(b)に対応している。
図3に示すように、バインダー層30を有する電気泳動表示シート100では、屈曲した状態で書き換えを行った場合であっても、高密度バインダー層31と隔壁部40とが十分接着されているため、隔壁部40を越えて電気泳動粒子が移動しない。
そのため、常にそれぞれの収容部42ごとの粒子数はほぼ均一に確保され、ムラのない良好な表示特性が得られる。さらに、高密度バインダー層31は分散媒50をわずかながら浸透するため、高密度バインダー層31にも電気泳動粒子がわずかながら浸透する。そのため、隔壁部40の頂上部41の形状をぼかすことで頂上部41を目視で認識させにくくできるため、開口率の向上がさらに得られるなどの利点もある。
また、図示していないが、第2基板20の一部にカラーフィルター層を設けることで、カラー表示をおこなうことも可能である。グリーン、レッド、ブルー、または任意の透光性を有するカラーフィルター層を設けることができる。
【0066】
2.電気泳動表示シートの駆動方法。
このような電気泳動表示シート100は、次のようにして駆動する。
【0067】
図1に戻る。
第1電極11と、第2電極21との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界に従って、例えば負荷電させた黒色粒子5は、2つの電極のいずれかに向かって移動(電気泳動)する。また、白色粒子6は、反対の正荷電を持たせているので反対の電極側へ移動する。
このような現象をそれぞれの収容部42(画素)の内部にておこない、多数の白黒の画素を組み合わせて表示を行う。また、収容部42を1つの画素として用いるだけでなく、1つの収容部42の中に第1電極11を複数持たせることで、複数の画素を設けることもできる。
【0068】
なお、バインダー層30または分散媒50が白色に着色された場合には、黒色粒子5のみを使用して同様の表示駆動を行うことができる。すなわち、表示面22側の第2電極21に黒色粒子5を集めれば黒表示となり、第1電極11側に黒色粒子5を集めれば、着色したバインダー層30が見えるようになるため白表示となる。
【0069】
3.電気泳動表示シートの製造方法。
次いで、電気泳動表示シート100の製造方法について、図4を用いて説明する。
【0070】
図4(a)〜(d)は、本実施形態に係る電気泳動表示シートの製造工程における一態様の断面図である。
まず、図4(a)に示すように、第2基板20の上にバインダー層30を形成する。好適例としては、PET製の基部2の一方の面に、第2電極21となるITO薄膜をスパッタ法で形成した第2基板20を準備し、第2電極21の上に、バインダー層30を形成する。
バインダー層30は、第2電極21の上に、例えば、水/エタノール混合溶媒で分散したウレタン製樹脂からなる繊維状分散溶液をダイコートで塗布した後、熱風乾燥による溶媒除去を行うことにより形成する。
【0071】
次いで、図4(b)に示すように、バインダー層30に対して、黒色粒子5、および白色粒子6をバインダー層30に含浸させるように、電気泳動分散液51を塗布する。
電気泳動分散液51の塗布方法としては、例えば、ダイコート、コンマコート、グラビアコート、リップコート、スクリーン印刷、インクジェット塗布、ディッピング法等の各種塗布方法を用いることができる。
また、含浸を促すため、塗布の前にバインダー層30を加圧ロールなどで押し込んで空気を除いてから、バインダー層30の復元力を使って含浸を促進するような前処理をおこなっても良い。
【0072】
次いで、図4(c)に示すように、あらかじめ隔壁部40までが形成された第1基板10を、第2基板20に貼り合わせる。詳しくは、第2基板20のバインダー層30と、第1基板10の隔壁部40とを、向かい合わせて貼り合わせる。
貼り合せは、例えば0.5MPa程度に加圧した少なくとも2本以上の熱ロールラミネーターにて搬送しながら行なう。こうすることで、バインダー層30が隔壁部40に押されながら軟化及び変形することで高密度バインダー層31となって接合される。熱ロールラミネーターによる加熱温度は、バインダー層の軟化温度よりも高く、隔壁部40の軟化温度よりも低く設定し、例えば80〜120℃に設定される。
これにより、分散媒50の蒸発を防ぎながら、隔壁部40の軟化を防止しつつ、高密度バインダー層31の形成と接合とを一緒に行うことができる。
【0073】
他のラミネート方式としては、減圧雰囲気下で貼り合わせを行うことで、より完全に気泡を除去して貼り合せをすることが可能である。この場合は、ホットプレートテーブル上でダイヤフラム方式の変形板により加圧を行うことが好適である。
この方式は、熱ロールラミネーターと異なり、加圧時間と加熱時間を十分にかけることが可能となり、図2(c)のように隔壁部40を不連続にするなどの気泡抜け対策を行わなくても、より確実に気泡を取り除くことができる。こうして、信頼性の高い電気泳動表示シート100を作成することができる。
【0074】
次いで、図4(d)に示すように、第1基板10および第2基板20の周辺部に、例えば紫外線硬化型エポキシ系接着剤からなるシール剤60を塗布する。
この工程で、前工程の温度付近にまで再び加熱をおこなえばバインダー層30及び高密度バインダー層31は再び軟化するので、基板間の小さな位置ずれを修正しながら、シール剤60を紫外線照射により硬化して固定化することも可能である。こうして、完全に封止された電気泳動表示シート100が得られる。
なお、上述した製造方法において、第1基板10に、画素を区画する隔壁部40を形成する工程を第1工程とし、第2基板20に、バインダー層30を塗布する工程を第2工程としている。また、バインダー層30に、電気泳動分散液51を浸透させる工程を第3工程とし、隔壁部40の頂上部41と第2基板20との間をバインダー層30の一部により、貼り合わせる工程を第4工程としている。
【0075】
このような製造方法によれば、比較的簡単かつ安価に電気泳動表示シート100を製造することができる。
なお、バインダー層30の形成方法としては、前述の方法に限定されず、例えば、次のような方法であっても良い。
すなわち、まず、水分散系イソシアネートプレポリマーに熱可塑性を持たせるためにポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール等のエマルションを添加してなる塗布液を塗布し、その後、高温高圧下に置き、三次元ウレア架橋によって発生する炭酸ガスによって発泡を行うことによりバインダー層30を形成してもよい。また、予め、用意しておいたシート状のバインダー層30を熱ロール等で第2基板20の表面に貼り付けてもよい。
【0076】
以上述べたように、本実施形態に係る電気泳動表示シート100によれば、以下の効果を得ることができる。
第1基板10と第2基板20とが、周縁部のシール剤60での接合に加えて、隔壁部40の頂上部41においても高密度バインダー層31を介して接着されている。
これにより、電気泳動表示シート100の強度を高めることができる。
さらに、屈曲した状態で書き換えを行った場合であっても、隔壁部40の頂上部41が高密度バインダー層31により、第2基板20に接着されているため、電気泳動粒子が隣の収容部42へ移動することを防止することができる。
よって、常にそれぞれの収容部42ごとの粒子数はほぼ均一に確保され、ムラのない良好な表示特性が得られる。
【0077】
また、バインダー層30、及び電気泳動分散液51は、領域ごとに塗り分ける必要が無く全面(端は除く)に一度に塗ることができるため、製造工程の増加を防ぐことができる。
よって、フレキシブル基板等を用いてもシート強度が強く、屈曲時においても、優れた表示品位を確保することができる。従って、優れた製造効率と、高信頼性とを実現した電気泳動表示シート100を提供することができる。
【0078】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る電気泳動表示シートの断面図であり、図1に対応している。
以下、本実施形態に係る電気泳動表示シート110について、図5を用いて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
電気泳動表示シート110は、バインダー層30の形状が、粒子状になっていること以外は、実施形態1の電気泳動表示シート100と同様である。
【0079】
図5に示すように、電気泳動表示シート110では、バインダー層30の樹脂が繊維状ではなく、粒子状となっている。
また、こうすることで、実施形態1の繊維状と比べて、粒子状の方がバインダー層30を白色に着色する場合に有利となる。粒子状のため、白色顔料の添加量が増やせることや、分散媒50とバインダー層30の屈折率を変えて光の散乱をより均一に起こさせることも容易となる。さらに、粒子状の場合には中空構造にして気体を封じ込めることで光の散乱を高めて、白色度を上げることもできる。
このように、白色を呈した粒子状のバインダー層30を用いることで、1粒子のみでもコントラストの高い表示性能を得ることができる。黒色粒子5のみを分散媒50に分散し、実施形態1と同様の製造方法と駆動方法を用いることができる。このように、部材が削減されることで、より低コストでの電気泳動表示シート110の製造が可能となる。
【0080】
以上述べたように、本実施形態に係る電気泳動表示シート110によれば、以下の効果を得ることができる。
バインダー層30の形状が粒子状であっても、繊維状のバインダー層と同様の作用効果が得られる。
従って、優れた製造効率と、高信頼性とを実現した電気泳動表示シート110を提供することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0082】
(変形例)
図6(a)は、変形例に係る電気泳動表示シートの断面図であり、図1に対応している。図6(b)は、変形例に係る電気泳動表示シートにおける異なる態様の断面図であり、図5に対応している。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
【0083】
図6(a)の本変形例に係る電気泳動表示シート120は、回路部、第1電極11、第2電極21が存在しないこと以外は、実施形態1の電気泳動表示シート100と同様である。つまり、電気泳動表示シート120では、各画素(収容部42)の書き換えを行うための電極や配線、スイッチング素子等が存在しない。
このような電気泳動表示シート120は、外部表示入力装置を用いて書き換えをおこなうもので、外部表示入力装置の端子と接触させることで、電気泳動表示シートに配列された多数の画素に、それぞれ任意に電流を印加して書き換えをおこなうものである。換言すれば、電気泳動表示シート120はリライタブルシートであり、単品では表示の書換え機能(構成)を備えていないが、専用のリライタブルプリンターを用いて表示の書換え可能な電気泳動表示シートである。
【0084】
また、同様に、図5の電気泳動表示シート110も、リライタブルシート化することができる。具体的には、図6(b)に示すように、電気泳動表示シート110の構成から、第1電極11、第2電極21および各電極に駆動電圧を供給する回路部を削除すれば良い。
これにより、本変形例に係るリライタブルシートとしての電気泳動表示シート130が構成される。なお、電気泳動表示シート120と電気泳動表示シート130との違いは、バインダー層30の構成材料として繊維を用いているか、粒子を用いているかという点である。
【0085】
図7は、書き込み装置の一例を示す斜視図である。
上述のリライタブルプリンターの一例として、書き込み装置200を挙げる。
書き込み装置200は、上記電気泳動表示シート120に所望の画像(模様、色彩、文字、絵またはこれらの組み合わせ等)を書き込む際に使用する装置である。
図7に示すように、書き込み装置200は、台座190と、台座190上に設けられたシート状の共通電極191、先端に部分電極193が設けられた書き込みペン(入力具)194、共通電極191、および部分電極193間に電圧を印加する電圧印加手段195などから構成されている。
【0086】
書き込み装置200による電気泳動表示シート120への書き込みは次のように行う。
まず、表示面22の全域が白色表示状態の電気泳動表示シート120を、表示面22が上になるように、書き込み装置200の共通電極191上に載置する。
次いで、電圧印加手段195によって共通電極191および部分電極193間に、部分電極193側が低電位となる電圧を印加する。
この状態で、書き込みペン194を表示面22に接触させつつ、所望の軌跡で移動させることにより、その軌跡に対応する領域にて粒子の泳動が生じ、表示色が白色から黒色に変化する。
【0087】
このような書き込み装置200によれば、紙に鉛筆で文字等を描くのと同様の感覚で、電気泳動表示シート120の表示面22に所望の文字や、絵等の情報を描くことができる。
また、電気泳動表示シート120は台座190から自在に着脱することが可能であるため、情報が表示された状態の電気泳動表示シート120を紙と同様の感覚で簡単に持ち運ぶことができる。
なお、電気泳動表示シート130を用いた場合であっても、電気泳動表示シート120と同様に扱うことができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
また、ここでは、手書き入力方式のリライタブルプリンターについて説明したが、PC(Personal Computer)で作成した文書や、図などの画像データを書き込む装置であっても良い。
この場合、共通電極191の替わりに、電気泳動表示シート120の各画素(収容部)に対応した複数の画素電極からなる画素電極部を配置する。また、書き込みペン194の替わりに、表示面22を覆う共通電極を配置する。
そして、実施形態1での説明と同様に、各画素電極、および共通電極に駆動電圧を供給する。なお、このときの駆動電圧は、PCからの画像データ(階調データ)に基づいた駆動電圧とする。これにより、PCで作成した画像データを電気泳動表示シート120(130)に簡便に書き込むことができる。
【0089】
(電子機器)
また、本発明の電気泳動表示シートは、それぞれ、各種電子機器に組み込むことができる。電気泳動表示シートを備える本発明の電子機器としては、例えば、電子ペーパー、電子ブック、テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができる。
【0090】
これらの電子機器のうちから、電子ペーパーを例に挙げ、具体的に説明する。
【0091】
図8は、電子機器としての電子ペーパーの一例を示す斜視図である。
フレキシブル型の電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、上述した電気泳動表示シート100〜130に該当する。
【0092】
次に、上述した電気泳動表示シートを電子機器のディスプレイとして用いた場合の実施形態について説明する。
【0093】
図9は、電子機器としての電子ブックの一例を示す斜視図である。
電子ブック1000は、バッテリーや通信機器、駆動IC等が内蔵された本体部1001に、複数枚の電気泳動表示シート100a,100bを綴じ込んだ携帯型の電子ブックである。図9では、電子ブックのページとなる電気泳動表示シートが2枚の構成を示しているが、枚数は3枚以上であっても良い。これらのシートは、本体1001に対して着脱自在に設けられており、単体で持ち運ぶこともできる。
【0094】
図10は、電子機器としてのスマートフォンの一例を示す斜視図である。
スマートフォン2000は、矩形状の筐体700内に、表示部701、複数の操作ボタン702、クリックホイールボード703などを一体化させた携帯型情報端末装置である。また、筐体700の内部には、バッテリー、マイク、スピーカー、通信機器、駆動IC等が内蔵されている。この表示部701には、上述の電気泳動表示シート100(110)が搭載されている。
【0095】
以上、本発明の電気泳動表示シート、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、分散液に含まれる粒子が黒色の場合、または、白色と黒色が混ざっているものについて説明したが、粒子の色は、これに限定されず、例えば、青、赤、緑等の有彩色であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,2…基部、5…電気泳動粒子としての黒色粒子、6…電気泳動粒子としての白色粒子、10…第1基板、11…第1電極(画素電極)、20…第2基板、21…第2電極(共通電極)、30…バインダー層、31…バインダー層の一部としての高密度バインダー層、40…隔壁部、41…隔壁部の頂上部、50…分散媒、51…電気泳動分散液、60…シール剤、100〜130…電気泳動表示シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に、複数の領域に区画する隔壁部を形成する第1工程と、
第2基板に、バインダー層を塗布する第2工程と、
前記バインダー層に、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を浸透させる第3工程と、
前記第2基板のバインダー層を塗布した面と、前記第1基板の隔壁部が形成された面を対向させ、前記隔壁部の頂上部と前記第2基板との間を前記バインダー層の一部により、貼り合わせる第4工程と、
を含むことを特徴とする電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程では、少なくとも2つの熱ロールの間で搬送による貼り合わせが行われることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項3】
前記第4工程では、減圧雰囲気下で熱圧着の貼り合わせが行われることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項4】
複数の領域に区画する隔壁部が設けられた第1基板と、
正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子が分散された電気泳動分散液を含むバインダー層が形成された第2基板と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板とが、少なくとも前記隔壁部の頂上部と前記第2基板との間に挟持された前記バインダー層の一部により接着されていることを特徴とする電気泳動表示シート。
【請求項5】
前記バインダー層は、繊維状の状態で第2基板側に積層されていることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項6】
前記バインダー層は、粒子状の状態で第2基板側に積層されていることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項7】
前記バインダー層は、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)、アクリル樹脂、ブタジエン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項8】
前記第1基板及び/または前記第2基板が、可とう性を有していることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項1】
第1基板に、複数の領域に区画する隔壁部を形成する第1工程と、
第2基板に、バインダー層を塗布する第2工程と、
前記バインダー層に、正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液を浸透させる第3工程と、
前記第2基板のバインダー層を塗布した面と、前記第1基板の隔壁部が形成された面を対向させ、前記隔壁部の頂上部と前記第2基板との間を前記バインダー層の一部により、貼り合わせる第4工程と、
を含むことを特徴とする電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項2】
前記第4工程では、少なくとも2つの熱ロールの間で搬送による貼り合わせが行われることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項3】
前記第4工程では、減圧雰囲気下で熱圧着の貼り合わせが行われることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動表示シートの製造方法。
【請求項4】
複数の領域に区画する隔壁部が設けられた第1基板と、
正または負に帯電する少なくとも1種の電気泳動粒子が分散された電気泳動分散液を含むバインダー層が形成された第2基板と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板とが、少なくとも前記隔壁部の頂上部と前記第2基板との間に挟持された前記バインダー層の一部により接着されていることを特徴とする電気泳動表示シート。
【請求項5】
前記バインダー層は、繊維状の状態で第2基板側に積層されていることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項6】
前記バインダー層は、粒子状の状態で第2基板側に積層されていることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項7】
前記バインダー層は、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エステル樹脂、エーテル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン環状オレフィン共重合体(COC樹脂)、アクリル樹脂、ブタジエン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【請求項8】
前記第1基板及び/または前記第2基板が、可とう性を有していることを特徴とする請求項4に記載の電気泳動表示シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−163894(P2012−163894A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25928(P2011−25928)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]