説明

電気泳動表示装置および電子機器

【課題】電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置および電子機器電気光学装置、電気光学装置の駆動方法、電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、第1基板と第2基板との間に電気泳動層が挟持されてなる電気泳動素子と、前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1の防湿フィルムと、前記第1基板および前記第2基板の外側にそれぞれ配置される一対のカバーシートと、前記一対のカバーシート間に配置され前記電気泳動素子の周囲を囲むコアシートと、少なくとも前記第1の防湿フィルムと前記コアシートと一方の前記カバーシートとが基板面方向で重畳し互いに貼り合わされてなる封止部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的な電子ペーパーであるマイクロカプセル型の電気泳動表示装置は、帯電粒子が分散した溶媒をマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルの上下に形成した電極に電圧印加して電界を発生させることにより帯電粒子の分布を変化させてコントラストを得る表示体である。電圧印加を停止しても静電気力や分子間力によって引きつけられた帯電粒子が電極付近に留まることから、電力を消費せずに表示画像を保持し続けられるという特長を有する。さらに、液晶ディスプレイのような透過光や有機ELディスプレイのような発光ではなく、帯電粒子や溶媒そのものの色(反射光)を観察するため、視野角の依存がなく紙のように目に優しく長時間の凝視にも耐えられるといった利点がある。このような特徴を活かし、表示機能付きカードへの応用、さらに、フレキシブル化による曲面ディスプレイ等への応用が期待されている。
【0003】
EPD(電気泳動表示装置)をはじめとするフレキシブルモジュールは、屈曲性の高さという特長を活かして曲げた状態で表示を行う製品、例えばリング形状時計への応用が実現されている。さらに、曲面ディスプレイに代表される形状固定型モジュールだけでなく、屈曲性をより活かした、繰り返し曲げに耐えうる製品、例えば表示機能付きカード等を視野に入れた開発が進められている。
このような表示機能付きカードにEPDモジュールを内蔵する場合、カード規格に準拠する厚み(総厚0.76±0.08μm以下)を実現するための薄型化のみならず、限られたエリア(54.0×85.6mm)を有効活用する表示、すなわち狭額縁化を実現することが非常に重要である。
通常EPDには、電気泳動材料中に存在する水分量が変化することに伴って表示特性も変化してしまうといった課題がある。
【0004】
そこで、従来のEPDモジュールにおいては周辺環境信頼性を確保する目的で、たとえば特許文献1に示されているような防湿構造が提案されている。また、ICチップ等の電子デバイスを内蔵するカード製品においては、実使用を想定した曲げや落下衝撃に耐えられる構造として特許文献2に示されるような実装構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−72128号公報
【特許文献2】特開2001−101375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このカード実装構造に従来のEPDモジュールを適用した場合、表示エリアからカード端までの長さはEPDモジュールの防湿性を確保するために必要な表示エリアから防湿封止部端までのEPD封止幅と、カード実装において必要なカード封止幅(EPDモジュールを内蔵して周辺固定するために必要な接着固定幅)と、の両方を足し合わせた額縁幅が必要となり、狭額縁構造の実現は極めて困難である。すなわち、限られた表示エリアの有効活用が要求されるカード等の商品においては、額縁幅の広がりは著しく商品性を低下させてしまうといった課題がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置および電子機器を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、第1基板と第2基板との間に電気泳動層が挟持されてなる電気泳動素子と、前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1のカバーシートと、前記第2基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第2のカバーシートと、前記電気泳動素子の周囲を囲むようにして前記第1のカバーシート及び第2のカバーシート間に配置されるコアシートと、前記第1基板と前記第1のカバーシートとの間に配置される第1の防湿フィルムと、を有し、前記電気泳動素子を封止する封止領域では、少なくとも前記第1の防湿フィルムの周縁部と前記コアシートと前記第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、少なくとも第1の防湿フィルムとコアシートと第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していることから、電気泳動素子を封止する封止領域において第1の防湿フィルムの周縁部とコアシートとカバーシートとが互いに重畳していない従来の構成に比べて額縁幅を大幅に狭くすることが可能となる。
したがって、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置を提供することができる。
【0010】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、第1基板と第2基板との間に電気泳動層が挟持されてなる電気泳動素子と、前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1のカバーシートと、前記第2基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第2のカバーシートと、前記電気泳動素子の周囲を囲むようにして前記第1のカバーシート及び第2のカバーシート間に配置されるコアシートと、前記第1基板と前記第1のカバーシートとの間に配置される第1の防湿フィルムと、前記第2基板と前記第2のカバーシートとの間に配置される第2の防湿フィルムと、を有し、前記電気泳動素子を封止する封止領域では前記第1及び第2の防湿フィルムの周縁部と前記コアシートと前記第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1の防湿フィルムと第2の防湿フィルムとコアシートと第2のカバーシートとが互いに重畳していることから、電気泳動素子を封止する封止領域において第1及び第2の防湿フィルムの周縁部とコアシートと第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していない従来の構成に比べて額縁幅を大幅に狭くすることができる。また、第2基板側にも第2の防湿フィルムを設けたことから、第1の防湿フィルム及び第2の防湿フィルムとにより電気泳動素子の厚さ方向両側の防湿性が確保されて、電気泳動素子に対する防湿性が高まる。
したがって、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置を提供することができる。
【0012】
また、前記第1の防湿フィルムの前記周縁部、又は、前記第1および第2の防湿フィルムの前記周縁部どうしが、前記第1のカバーシートと前記コアシートとの間に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、第1の防湿フィルムの周縁部、又は、第1および第2の防湿フィルムの周縁部どうしが、第1のカバーシートとコアシートとの間に配置されているため、電気泳動素子に対する防湿性を長期的に維持することができる。また、製造時に第2のカバーシート上にコアシートを先に配置してから電気泳動素子を配置することができる。
【0014】
また、前記第1の防湿フィルムの前記周縁部、又は、前記第1および第2の防湿フィルムの前記周縁部どうしが、前記第2のカバーシートと前記コアシートとの間に配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、第1の防湿フィルムの周縁部、又は、第1及び第2の防湿フィルムの周縁部どうしが、第2のカバーシートとコアシートとの間に配置されているため、電気泳動素子に対する防湿性を長期的に維持することができる。また、製造時に第2のカバーフィルム上に電気泳動素子を先に配置してからコアシートを配置することができる。
【0016】
また、前記コアシートが厚さ方向に積層された一対のコア材からなり、これらコア材どうしの間に前記第1の防湿フィルムの前記周縁部と前記第2の防湿フィルムの前記周縁部とが配置されていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、電気泳動表示装置を湾曲した場合にコア材と防湿フィルムとの間に応力がかかりにくくなる。これにより、電気泳動表示装置の耐久性が向上し高信頼性となる。
【0018】
また、前記第2基板がガラス基板からなり、少なくとも前記第1の防湿フィルムの前記周縁部が前記コアシートと前記第2のカバーシートとの間に配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、第1の防湿フィルムと第2のカバーシートとで電気泳動素子の封止を行うことができる。ガラス基板は防湿性が高いため第2基板側の第2の防湿フィルムを省くことが可能となる。また、第1の防湿フィルムの周縁部を第2のカバーシート側に配置することで電気泳動素子の側方を第1の防湿フィルムで覆うことができ、電気泳動素子の周方向における防湿性も第1の防湿フィルムで十分に確保される。
【0020】
また、前記第1の防湿フィルムの前記周縁部が前記第2のカバーシートに直接貼り合わされていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、第1の防湿フィルムの周縁部が第2基板側のカバーシートに直接貼り合わされていることから、部材同士の接着部分が少なくなるので防湿性が向上する。
【0022】
また、少なくとも前記第1の防湿フィルムと前記第2のカバーシートとが同じ材料あるいは融点が近い材料からなり、前記第1の防湿フィルムと前記第2のカバーシートとが熱溶着によって接着されていることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、少なくとも第1の防湿フィルムと第2のカバーシートとが熱溶着によって接着されていることから、接着剤等を介すことなく部材どうしを直接接着させることができる。これにより、製造が容易になるとともに封止性がより一層向上する。
【0024】
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る表示部を備えたことにより、信頼性に優れた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ICカードを示す分解斜視図。
【図2】(a)第1実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図、(b)マイクロカプセルの模式断面図。
【図3】第2実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図。
【図4】第3実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図。
【図5】第4実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図。
【図6】電子機器の一例を示す図。
【図7】電子機器の一例を示す図。
【図8】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の電気泳動表示装置の一実施形態であるICカードの構成について図を参照して説明する。図1は、ICカードを示す分解斜視図である。
ICカード100(電気泳動表示装置)は、図1に示すように、電気泳動表示デバイス2(電気泳動表示素子)およびICチップ3と、コアシート4と、カバーシート5(第1のカバーシート)及びカバーシート6(第2のカバーシート)とを備えており、これらを重ね合わせることにより形成される。
【0028】
ICチップ3は、各種演算を行うCPU、ROM、RAM、メモリ等を備えている。そして、CPUからの指令に基づいて、電気泳動表示デバイス2の表示部に所望の文字、数字或いは記号を表示させる。このICチップ3は、外部装置と一定周波数の電波を受信・送信する非接触型ICアンテナ9が形成された基材10上に搭載されている。基材10上には、各種配線の他、カード端末等の外部装置(不図示)との情報交換を行うインターフェイスとして外部装置と直接接触する接触用IC端子11等も形成されている。接触用IC端子11は、ICチップ3の上面に、基材10の上面に露出するように形成される。一方、非接触型ICアンテナ9は、基材10上にコイル状に形成される。
【0029】
電気泳動表示デバイス2は、静止画や動画等の画像を表示する表示部7が設けられている。表示部7内にはマトリクス状に配列された複数の画素が設けられており、画素毎に表示が行われるようになっている。表示部7の周囲の領域は画像が表示されない非表示部8となっている。この非表示部8には画素が設けられておらず、不図示の駆動回路素子、端子などが設けられている。この電気泳動表示デバイス2はその表裏面を覆う一対の防湿フィルム12,13によって全体が封止されている。
【0030】
コアシート4には、電気泳動表示デバイス2およびICチップ3が収容される開口4a、4bが設けられており、カバーシート5,6の間に配置される。
【0031】
カバーシート5,6は、電気泳動表示デバイス2およびICチップ3と、コアシート4とを挟み込むようにして最も外側に配置される保護シートであって、ポリカーホネートやPET等からなる。これらカバーシート5,6のうち、コアシート4上に配置されるカバーシート5は電気泳動表示デバイス2の画像表示面側であるため透明である必要があるが、カバーシート6は電気泳動表示デバイス2の画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。
なお、カバーシート5には、接触用IC端子11を露出させるための開口部5aが設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、接触用IC端子と非接触型IC用アンテナとを備えるコンビカード(デュアルインターフェイス)について説明するが、接触用IC端子のみを備える場合(ISO7816参照)や、非接触型IC用アンテナのみを備える場合(ISO14443等参照)、或いは、接触用ICチップと非接触用ICチップを備えるハイブリッドカードであってもよい。
【0033】
図2(a)は、本実施形態にかかるICカード100の概略構成を示す部分断面図、図2(b)は、マイクロカプセルの模式断面図である。
本実施形態のICカード100は、図2(a)に示すように、一対の防湿フィルム12,13によって封止された電気泳動表示デバイス2がさらにカバーシート5,6によって二重封止された構成となっている。
電気泳動表示デバイス2は、透明基板14(第1基板)と素子基板15(第2基板)との間に複数のマイクロカプセル20を配列してなる電気泳動層31が挟持されて構成されている。
【0034】
素子基板15は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。素子基板15の表面上には、不図示の選択トランジスタ、走査線、データ線などが形成された回路層(不図示)が形成されており、この回路層の最表層に画素電極35が配列形成されている。画素電極35は、MgAg、ITO、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。
本実施形態では、素子基板15として、厚さ100μmの無アルカリガラスAN100(旭硝子社製)を用いている。
【0035】
一方、透明基板14は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示側に配置されるため透明基板とされる。透明基板14の電気泳動層31側には複数の画素電極35と対向する共通電極(図示略)が形成されており、共通電極上に電気泳動層31が設けられている。共通電極は、画素電極35とともに電気泳動層31に電圧を印加する電極であり、MgAg(マグネシウム銀)、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。
【0036】
電気泳動層31は、透明基板14と、透明基板14上に固定された複数のマイクロカプセル20とにより電気泳動シートとして取り扱われるのが一般的である。製造工程において、電気泳動シートは接着層33の表面に保護用の離型シートが貼り付けられた状態で取り扱われる。そして、別途製造された素子基板15(画素電極35や各種回路などが形成されている)に対して離型シートを剥がした電気泳動シートを貼り付けることによって表示部7が形成される。本実施形態における電気泳動層31の厚さは約230μmである。
【0037】
マイクロカプセル20は、図2(b)に示すように、例えば50μm程度の粒径を有しており、内部に分散媒21と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入した球状体である。マイクロカプセル20は、共通電極と画素電極35とで挟持され、1つの画素40内に1つ又は複数のマイクロカプセル20が配置される。
【0038】
マイクロカプセル20の外殻部(壁膜)は、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアゴムなどの透光性を持つ高分子樹脂などを用いて形成される。
分散媒21は、白色粒子27と黒色粒子26とをマイクロカプセル20内に分散させる液体である。分散媒21としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0039】
白色粒子27は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子26は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
また、黒色粒子26および白色粒子27に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、表示部7に赤色、緑色、青色などを表示することができる。
【0040】
このような構成の電気泳動表示デバイス2は、図2(a)に示すように一対の防湿フィルム12,13によって被覆され、その全体が封止されている。
【0041】
防湿フィルム12,13は、電気泳動表示デバイス2の平面視における面積よりも大きい形状とされ、その周縁部12a,13aが電気泳動表示デバイス2から張り出している。防湿フィルム12(第1の防湿フィルム)は電気泳動表示デバイス2の画像表示面側であって透明基板14の外面(電気泳動層31とは反対側の面)上であって透明基板14とカバーシート5との間に配置され、防湿フィルム13(第2の防湿フィルム)は素子基板15の外面(電気泳動層とは反対側の面)上であって素子基板15とカバーシート6との間に配置され、各々が不図示の接着剤を介して各基板と貼り合わされている。
【0042】
防湿フィルム12,13は、無機膜が形成された複数のフィルムが接着剤を介して積層されてなる多層フィルムタイプの防湿フィルムであって、例えば、シリカやアルミナ等の透明で且つ防湿性を有する無機膜をポリカーボネートやPETのような有機フィルムに形成することによって防湿性能を付加したフィルムを用いる。
【0043】
防湿フィルム12,13は、これらの周縁部12a,13a同士がこれらの間に配置された接着層17を介して貼り合わされている。接着層17としては、例えばエチレンメタクリル酸共重合体ホットメルト剤等の熱可塑性接着材、エポキシ系接着剤のような熱硬化型接着材、あるいはアクリル系接着剤のようなUV効果型接着材等が適宜選択される。
【0044】
このような防湿フィルム12,13は真空ラミネート処理を行って貼り合わせることが好ましい。これにより空気等を内包させることなく隙間なく貼り合わせることができる。
【0045】
電気泳動表示デバイス2は、防湿フィルム12,13によって封止された状態でコアシート4に形成された開口4a内に配置されている。開口4aは、電気泳動表示デバイス2に対応した大きさで形成されている。なお、コアシート4の他方の開口4b内にはICチップ3が収容されている。
【0046】
コアシート4の開口4a内に収容された電気泳動表示デバイス2は、コアシート4の表裏面側に配置された一対のカバーシート5,6によってさらに封止されている。この際、ICカード100の周縁の封止領域(非表示部8)において、防湿フィルム12,13の周縁部どうしが貼り合わされてなる封止部16の一部あるいは全体をコアシート4及びカバーシート5,6と重畳させた状態で封止されている。本実施形態では、コアシート4とカバーシート5との間に封止部16が配置されている。
【0047】
カバーシート5は、電気泳動表示デバイス2の画像表示面側であって防湿フィルム12上に配置され、カバーシート6は、電気泳動表示デバイス2の画像表示面とは反対の裏面側であって防湿フィルム13上に配置され、防湿フィルム12,13によって封止された電気泳動表示デバイス2のさらなる封止および保護の役割を担う。
【0048】
カバーシート5,6の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどが用いられる。少なくとも画像表示面側に配置されるカバーシート5は透光性を有するものを用いて構成される。
【0049】
カバーシート5、コアシート4および封止部16は接着剤層18を介して貼り合わされている。また、カバーシート5、6と防湿フィルム12、13との対向面どうしは不図示の接着剤層を介して貼り合わされている。接着剤層としては上記接着剤層18と同じ材料からなるものを用いてもいいし、別の接着材料を用いてもよい。また、接着剤層を介すことなく溶融接着されていてもよい。上述したように、カバーシート5,6と防湿フィルム12,13とを同じ材料あるいは融点が近い材料で構成することで、熱溶着によって直接接着させることが可能である。
なお、カバーシート6とコアシート4との貼り合わせにも上記接着剤層18と同じ接着剤を用いることができる。
【0050】
ここで、電気泳動表示デバイス2の封止に必要な封止幅L1は封止部16端部からの水分の侵入を確実に防止し得る幅に適宜設定される。なお、封止幅L1とは、素子基板15の周縁部に配置された画素電極35の端部から防湿フィルム12,13の端部までの長さである。また、カード実装に必要な封止幅L2は、カバーシート5,6とコアシート4との間からの水分の浸入を防止し得る幅に設定される。
【0051】
このようにして本実施形態のICカード100が構成されている。
【0052】
本実施形態のICカード100は、防湿フィルム12,13と、カバーシート5,6およびコアシート4とによって電気泳動表示デバイス2を封止した多重封止構造とされている。
従来のICカードの額縁幅Lは、電気泳動表示デバイスに対する防湿性を確保するために必要な封止幅L1と、カード実装において、電気泳動表示デバイスを内蔵して周辺を固定するために必要な封止幅L2(接着固定幅)とを足し合わせた幅であったため、狭額縁構造の実現は困難であった。
本実施形態では、電気泳動表示デバイス2をカード実装させる際に、防湿フィルム12,13の封止部16とカバーシート5,6およびコアシート4とを平面視において互いに重畳させることにより狭額縁化を実現している。
これにより、限られた表示エリアの有効活用が要求されるICカード等の商品においては額縁幅を狭くすることによって商品性を向上させることができる。
また、封止部がコアシート4とカバーシート5とで挟持されているため防湿フィルム12,13の剥離も防止され、防湿性も高まる。
したがって、電気泳動表示デバイス2に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得るICカード100を提供することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の電気泳動表示装置にかかるICカードの第2実施形態について述べる。
図3は、第2実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図である。
図3に示すように、本実施形態のICカード200は先の実施形態と基本構成は同様であるが、封止構造において異なっている。
第1実施形態においては、防湿フィルム12,13の封止部16を電気泳動表示デバイス2の透明基板14側、つまりカバーシート5側においてコアシート4と重畳させた構造となっていたが、本実施形態においては、電気泳動表示デバイス2の素子基板15側、つまりカバーシート6側においてコアシート4と重畳させた構成となっている。
【0054】
このように、防湿フィルム12,13の周縁部12a,13aどうしを貼り合わせてなる封止部16をコアシート4とカバーシート6との間に配置した構成とすることにより、上記実施形態と同様の封止効果が得られるとともに狭額縁構造とすることができる。
また、製造時にカバーシート6上に電気泳動表示デバイス2を先に配置してからコアシートを配置することができるので、コアシート4で封止部16をある程度固定した状態でカバーシート5を配置して封止することができる。これにより、封止部16の浮きが防止されて封止作業を円滑かつ容易に行える。
また、封止部16を電気泳動表示デバイス2の裏面側に配置することで、貼り合わせに使用した接着剤が表示領域側にはみ出して表示に影響を及ぼすおそれがない。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明にかかる電気泳動表示装置にかかるICカードの第3実施形態について述べる。
図4は、第3実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図である。
図4に示すように、本実施形態のICカード300は、第2実施形態において使用されていたカバーシート6側の防湿フィルム13が省略された構成となっている。
【0056】
本実施形態のICカード300は、カバーシート6上に載置された電気泳動表示デバイス2が1枚の防湿フィルム12とカバーシート6とによって封止されている。防湿フィルム12は、非表示部8においてその周縁部12aがカバーシート6上に直接ラミネートされている。防湿フィルム12とカバーシート6とは同質の材料あるいは融点の近い材料によって構成されていることから、接着剤を用いることなく、双方を熱溶融させることにより溶着させることができる。
【0057】
ここで、電気泳動表示デバイス2は、ガラス基板からなる素子基板15と透明基板14との間に電気泳動層31が挟持されてなるものであることから、ガラス基板からなる素子基板15は防湿性がそもそも高い構成となっている。このため、素子基板15側の防湿フィルムを省いたとしても十分な防湿性が確保される。また、電気泳動表示デバイス2の周囲は防湿フィルム12によって覆われているため、側方における防湿性も防湿フィルム12によって十分に確保可能である。
また、素子基板15の側面と防湿フィルム12とが密着していることが好ましい。この構成によれば、電気泳動層31が防湿性を有する素子基板15及び防湿フィルム12によって密閉されるため、外部からの水分がカバーシート6を透過した場合であっても、水分が電気泳動層31に浸入するのを防止することができる。
【0058】
コアシート4は、開口4a内に電気泳動表示デバイス2を収容させるとともに、防湿フィルム12とカバーシート6との封止部19上に重なるように配置される。このコアシート4とカバーシート6とは、防湿フィルム12の周縁部12aを挟み込むようにして、相互間に配置された接着剤層18を介して貼り合わされている。
【0059】
本実施形態の構成によれば、1枚の防湿フィルム12とカバーシート6とによって電気泳動表示デバイス2の封止が可能である。部材同士の貼り合わせ箇所が少なくなることで防湿性がより一層高まる。さらに、部品点数の削減に伴いコスト削減が図れるとともに、防湿フィルム12,13同士の封止工程を削減できるため製造も容易になる。
【0060】
[第4実施形態]
次に、本発明にかかる電気泳動表示装置にかかるICカードの第4実施形態について述べる。
図5は、第4実施形態のICカードの概略構成を示す部分断面図である。
図5に示すように、本実施形態のICカード400は、その厚さ方向に積層された一対のコア材54a,54aからなるコアシート54を備えている。コア材54a,54aは、互いに同形状をなし、平面視における外形の大きさはカバーシート5,6の外形の大きさに等しい。これらコア材54a,54aは、各々に形成された開口4a,4aどうしが基板面方向で一致するように互いに積層させた状態でカバーシート6上に配置されている。そして、各開口4a,4a内に電気泳動表示デバイス2が収容されている。
そして、これらコア材54a,54aの間に防湿フィルム12,13の封止部16の全部又は一部が配置され、接着剤層18によってコア材54a,54aどうしが接着されている。
【0061】
本実施形態の構成によれば、先の実施形態と同様の防湿効果が得られるとともに狭額縁構造とすることが可能である。また、ICカード400を湾曲させた場合に、カバーシート5,6とコアシート54どうしの境界部分、さらにコア材54a,54aと防湿フィルム12,13の封止部16との境界部分にせん断応力がかかりにくくなり、これら部材同士の接合部分に剥離等が生じることが防止される。これにより、ICカード400の耐久性が向上して電気泳動表示デバイス2に対する防湿性を長期的に確保できる。
【0062】
(電子機器)
次に、上記実施形態の電気泳動装置(ICカード100,200,300,400)を、電子機器に適用した場合について説明する。
図6は、腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備えている。
時計ケース1002の正面には、上記各実施形態の電気光学装置からなる表示部1005と、秒針1021と、分針1022と、時針1023とが設けられている。時計ケース1002の側面には、操作子としての竜頭1010と操作ボタン1011とが設けられている。竜頭1010は、ケース内部に設けられる巻真(図示は省略)に連結されており、巻真と一体となって多段階(例えば2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられている。表示部1005では、背景となる画像、日付や時間などの文字列、あるいは秒針、分針、時針などを表示することができる。
【0063】
図7は電子ペーパー1100の構成を示す斜視図である。電子ペーパー1100は、上記実施形態の電気光学装置を表示領域1101に備えている。電子ペーパー1100は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感および柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1102を備えて構成されている。
【0064】
図8は、電子ノート1200の構成を示す斜視図である。電子ノート1200は、上記の電子ペーパー1100が複数枚束ねられ、カバー1201に挟まれているものである。カバー1201は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力する図示は省略の表示データ入力手段を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0065】
以上の腕時計1000、電子ペーパー1100、および電子ノート1200によれば、本発明に係る電気泳動装置が採用されているので、防湿性および耐久性に優れ、信頼性の高い表示部を備えた電子機器となる。また、狭額縁化とされた電気泳動表示装置を備えているので、視認性の良好な表示部を備えた電子機器となる。
【0066】
なお、上記の電子機器は、本発明に係る電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部にも、本発明に係る電気泳動表示装置は好適に用いることができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
100,200,300,400…ICカード(電気泳動表示装置)、2 電気泳動表示デバイス(電気泳動素子)3 ICチップ、4,54 コアシート、4a 開口、4b 開口、5、6 カバーシート、5a 開口部、7 表示部、8 非表示部、9 非接触型ICアンテナ、L 額縁幅、10 基材
11 接触用IC端子、12 防湿フィルム(第1の防湿フィルム)、12a 周縁部、13 防湿フィルム(第2の防湿フィルム)、14 透明基板(第1基板)、15 素子基板(第2基板)、16,19 封止部、17 接着層、18 接着剤層、31 電気泳動層、35 画素電極、40 画素、54a コア材、L1 EPD封止幅、L2 カード封止幅、1000 腕時計、1100 電子ペーパー(電子機器)、1200 電子ノート(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に電気泳動層が挟持されてなる電気泳動素子と、
前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1のカバーシートと、
前記第2基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第2のカバーシートと、
前記電気泳動素子の周囲を囲むようにして前記第1のカバーシート及び第2のカバーシート間に配置されるコアシートと、
前記第1基板と前記第1のカバーシートとの間に配置される第1の防湿フィルムと、を有し、
前記電気泳動素子を封止する封止領域では、少なくとも前記第1の防湿フィルムの周縁部と前記コアシートと前記第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
第1基板と第2基板との間に電気泳動層が挟持されてなる電気泳動素子と、
前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1のカバーシートと、
前記第2基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第2のカバーシートと、
前記電気泳動素子の周囲を囲むようにして前記第1のカバーシート及び第2のカバーシート間に配置されるコアシートと、
前記第1基板と前記第1のカバーシートとの間に配置される第1の防湿フィルムと、
前記第2基板と前記第2のカバーシートとの間に配置される第2の防湿フィルムと、を有し、
前記電気泳動素子を封止する封止領域では前記第1及び第2の防湿フィルムの周縁部と前記コアシートと前記第1及び第2のカバーシートとが互いに重畳していることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記第1の防湿フィルムの前記周縁部、又は、前記第1および第2の防湿フィルムの前記周縁部どうしが、前記第1のカバーシートと前記コアシートとの間に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記第1の防湿フィルムの前記周縁部、又は、前記第1および第2の防湿フィルムの前記周縁部どうしが、前記第2のカバーシートと前記コアシートとの間に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記コアシートが厚さ方向に積層された一対のコア材からなり、これらコア材どうしの間に前記第1の防湿フィルムの前記周縁部と前記第2の防湿フィルムの前記周縁部とが配置されていることを特徴とする請求項2記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記第2基板がガラス基板からなり、
少なくとも前記第1の防湿フィルムの前記周縁部が前記コアシートと前記第2のカバーシートとの間に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記第1の防湿フィルムの前記周縁部が前記第2のカバーシートに直接貼り合わされていることを特徴とする請求項6記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
少なくとも前記第1の防湿フィルムと前記第2のカバーシートとが同じ材料あるいは融点が近い材料からなり、
前記第1の防湿フィルムと前記第2のカバーシートとが熱溶着によって接着されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−158702(P2011−158702A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20219(P2010−20219)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】