説明

電気的伝導性エラストマ、それを製造する方法及びそれを含む物品

印加されたストレスのかなりの範囲にわたる、伸びのパーセンテージ特性に対する明確に定義された予測できる電気抵抗及び弾性ストレッチ及び回復特性を有する電気的伝導性弾性体的構造。電気抵抗特性は、伸びのレート、伸びのパーセンテージを供給する印加された力、または弾性ストレッチ及び回復サイクルの回数によらない。該構造は、テキスタイルと適合性があり、中に分散された電気的伝導性粒子を有するスパンデックスから形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変の抵抗を示す電気的伝導性エラストマ(弾性体)の構成物、及びそれをそのような電気的伝導性エラストマの構成物を含む伝導性で伸縮性のある物品に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歪みを検知する可変抵抗センサを採用するシステムが知られている。これらのシステムの間の周知の変数は、弾性ストレッチ(すなわち、負荷がかけられたときの伸び(elongation)またはストレス)及び回復(すなわち、負荷が除かれたときのストレス)上の可変電気的抵抗を示す、電気的伝導性エラストマ材料に基づく。
【0003】
電気的伝導性複合物における伝導の主なメカニズムは、その複合物内の伝導性粒子の連続的ネットワークである配列の構成である。このメカニズムの1つの例は「ピエゾ抵抗現象」として言及される。ピエゾ抵抗現象では、電気的伝導性材料の電気的抵抗は、その材料に加えられるストレスに関連する。特にその中に伝導性粒子を伴う非伝導性ポリマー マトリクスからなる、電気的伝導性エラストマは、伝導性粒子間の電気的接触の連続的ネットワークを形成する。これらの材料において、連続的ネットワークの分断は、エラストマにストレッチが加えられた(すなわち、伸ばされ、または変形された)とき、伝導性粒子間の接触の損失と、抵抗の増加という結果になる。これは、複合材料の電気的抵抗における変化のためのメカニズムである。
【0004】
米国特許第4,444,205号(ジャクソン)は、ジョイントの可能性を評価する装置を開示する。分散されたカーボン粒子を含む、非伝導性シリコンゴムに基づく伝導性エラストマは、1つのコンポーネントである。伝導性エラストマは、伸長及び収縮でその電気的抵抗を変化させる。
【0005】
米国特許第4,505,847号(ジャクソン)は、その材料上に加えられる応力に関連する電気的低効率を持つ電気的伝導性材料を開示する。特に使用された材料は、高レベルのカーボン グラファイト(例えば50%〜90%)と油(例えば植物油、落花生油)を含む非伝導性シリコン ゴムである。明らかに、加えられた油は、そのような油無しのシリコン ゴムと比較して加えられたより高いカーボン グラファイト混合材料の機械的特性(例えば破壊に到る伸び)を強める。図1(ジャクソンの847から再び示される)は、カーボン グラファイトを含み、油を含まない非伝導性シリコン ゴムの電気的抵抗対印加応力特性を示す。図1に示されるように、ストレッチと回復の各サイクルは、実質的なヒステリシス(履歴)効果を示す。さらに正確に言えば、図1に見ることができるように、ヒステリシス ループは、各ストレッチ及び回復サイクルと異なる。このヒステリシス効果によると、電気的抵抗値対1つのストレッチ及び回復サイクルから次へ加えられる応力は、受け入れ得る程度に断定できない。
【0006】
ジャクソンは、油が材料に加えられたとき、電気的抵抗対混合された材料にかかる応力の予測可能性が高まることを開示する。特にこの高められた予測可能性は、油の存在におけるストレッチ及び回復の間のヒステリシス ループにおける減少によって証明される。図2(ジャクソンの847から再び示される)は、落花生油の存在下における90%のグラファイトを持ち、毎分10、20及び50のストレッチ レートの伝導性シリコン ゴムを示す。図2からわかり得るように、ヒステリシス ループは、図1に示されるヒステリシス ループに関連して小さい。加えて、混合された材料のかかる応力を伴う抵抗の変化は、弾性ストレッチ及び回復のどの繰り返しのサイクルについてまったく一貫している。そのようなふるまいは、混合された材料における電気的抵抗の変化のさらに予測できる測定のために必要なものを与える。「847」特許は、油の成分の化学的性質が、柔軟にする効果または混合された材料の組成内の伝導性粒子のための分散媒体としての機能を得る。
【0007】
米国特許第5,086,785号(ジェンティル他)は、ストレッチ、位置またはかけられた力での電気的抵抗、抵抗、コンダクタンス、または伝導性における変化による角度の変位を測定する角度の変位センサ装置を開示する。ジェンティル他は、電気的伝導性エラストマ センサ(例えばカーボンが含有された弾性体的(elastomeric)ゴム、シリコンまたはプラスチック)及び伝導性インク センサを含む、可変の抵抗の特性を得る様々な方法を開示する。特にジェンティル他は、直線的な位置に向かって曲げられるとき、曲げるための伝導性インク センサが「記憶」を示さないことを開示する。加えて、ジェンティル他のインク センサは、曲げの各サイクルの後のまっすぐ/曲がらない位置における同じ初期の抵抗値に戻る。すなわち、電気的伝導性エラストマーと違って、ジェンティル他の伝導性インク センサは、ヒステリシス効果と初期の抵抗値へ戻ることを伴う問題を示さない。
【0008】
米国特許第5,858,291号(リ)は、電気的導電性歪みゲージ材料を作る方法を開示する。ポリオレフィンに基づく、20wt%〜50wt%の量の伝導性材料(例えば粉末金属、カーボン ブラック)がドープされた、エチレン及びビニル アセテート(EVA)のオレフィン コポリマーを基にした電気的伝導性エラストマが、乾燥混合とフラッシュ加熱により準備される。特にリは、たった2%〜8%の伸長発生ポイントの材料を開示する。
【0009】
さらにリは、コンディショニング サイクルの後、伝導体が、繰り返される弾性ストレッチ及び回復サイクル上にヒステリシス効果がない、繰り返され得る結果を与えた。リによれば、伝導性材料の温度を3〜5秒間、600°Fに伝導性材料の温度を上げるフラッシュ加熱プロセスは、伝導体の抵抗を安定させる。しかしながら、もしフラッシュ加熱が採用されなかったら、伝導性材料の抵抗は、繰り返されるエラスティックストレッチ及び回復サイクルの元で、一定しない。加えて、リは、フラッシュ加熱処理の後、繰り返し得、予測できるやり方で変化する、電気的特性を提供するのに必要なコンディショニング サイクルの最小限の数(すなわち、20より少ない)があるということを開示する。
【0010】
上で検討された背景技術は、十分な量でエラストマに付加する伝導性粒子は、(1)エラストマに電気的伝導性を与える、及び(2)ストレッチ及び回復における材料の電気的抵抗値を変化させる、可変抵抗材料を提供する、ことができるということを示す。しかしながら、背景技術は、他の材料(例えば落花生油)を加えるか、または追加のプロセス(例えば加熱プロセス)を遂行することのいずれか無しに、そのような電気的伝導性エラストマからヒステリシス効果をいかに除去するかまたは限定するかを開示しない。
【0011】
さらに、研究努力はまた、歪み検知材料を開発することへのアプローチを考察した。ピサの大学の研究グループ(ドゥ ロシ教授の指導の元)は、ピエゾ抵抗特性を持つテキスタイル(織物)を提供する、2つのアプローチを提案した。これらはドゥ ロシ他による「ドレスウェア:ウェアラブル ハードウェア」、マテリアル サイエンス アンド エンジニアリング C7、31-35、1999年、及びマゾルディ他による「スマート テクスタイルズ フォー ウェアラブル モーション キャプチャー システムズ」、AUTEX リサーチ ジャーナル、ボリューム2、ナンバー4、2002年12月に開示される。この研究では、ドゥ ロシ他は、Lycra(登録商標)を有するポリピロール(Ppy)を被覆した伸縮性ファブリック(織物)またはファイバー(繊維)が約13の高い「ゲージ ファクター」(GF)を提供するということを開示する(すなわち、ゲージ ファクターは、GF=ΔR/εRとして定義され、ΔRは電気的抵抗における変化、Rは無負荷のときの抵抗、及びεは印加された歪みである)。しかしながら、これらの被覆されたファブリック/ファイバーに関する問題は以下を含む。(1)超時間におけるセンサ抵抗のドリフトという結果になる、被覆しているPpyのエージング、及び(2)センサの遅い応答時間。
【0012】
加えて、ドゥ ロシ他は、機械的刺激の突然の印加の後、これらのPpyで被覆されたファブリックは、たった数分後に、定常状態に達するということを開示する。さらに、得られた抵抗の定常状態値は、初期の抵抗値と同じではなかった。ドゥ ロシ他は、独立した方法において抵抗値によって歪みをコード化するために開発された特別なアルゴリズムによってこの欠陥を解決した。
【0013】
これらの研究努力によって開発された第2のアプローチは、カーボン入りのゴムで被覆され、Lycra(登録商標)スパンデックスを有するストレッチ ファブリックまたはファイバーを開示する。この研究では、ファブリックのGFは約2.5であった。しかしながら、第1のアプローチとして、この第2のアプローチのストレッチ ファブリックの重大な欠陥は、ストレッチからの回復後、抵抗が、初期の抵抗値に戻らないということである。
【0014】
付加された研究努力は、英国、レッドヒル(オランダ、アムステルダムのロイヤル フィリップ エレクトロニクス NV)のフィリップ リサーチ ラボラトリーによって報告された。この研究努力の2つの例は以下を含む。
【0015】
(1)ビカートン(Bickerton)による、2003年10月のユーロウェアラブル2003の「編まれた(knitted)ストレッチ センサ内のファイバーの相互作用」、及び
(2)ファーリングドン他による、ISWC1999年の「ウェアラブル センサ バッジ アンド センサ ジャケット フォー コンテキスト アウェアネス」
このラボラトリーによって報告された最近の開発は、2つのファイバーがいっしょに走る、2つのファイバー、1つは伝導性(例えばカーボン)、1つは弾性(例えばLycra(登録商標) スパンデックス)に基づくニット構造について述べている。このニット構造はストレッチされるので、最大抵抗が得られるまで緩められた状態における初期の抵抗値の5〜10倍の係数によって、長さの抵抗が増す。このストレッチを伴う抵抗の増加は、ファブリックを介する伝導パスの長さの、及び内側ファイバー接触の数の減少における増加によるかもしれない。
【0016】
上で論じられたニット構造の不利な点は、以下を含む。(1)60%を越えるニット構造のストレッチは、抵抗の減少を引き起こす。また、(2)ニット構造で使用された伝導性カーボン ファイバーは、硬くて、もしそのニット構造が衣服に作られるなら、皮膚と直接接触することはできない。
【0017】
加えて、フィリップ リサーチ ラボラトリーの研究者はまた、ステープル ファイバー(staple
fiber)の混入によってストレッチされたとき、実際に抵抗の減少を示すストレッチ ニット ファブリック センサを製造することを提案した。このストレッチ ニット ファブリック センサは、少なくとも1つが伝導性(例えばカーボンまたはステンレス スチール)であるファイバーの混合からなる。このストレッチ ニット ファブリック センサがストレッチされたとき、歪みは、カレント パスの数が増加するように伝導性糸(ヤーン:yarn)のループを引っ張る。
【0018】
しかしながら、上で論じられたニット ファブリック センサの不利な点は、抵抗値が頭打ちになるまで、抵抗の減少が後に続くストレッチを伴う抵抗の初期の上昇である。伸び(elongation)のパーセンテージに対する抵抗のグラフにおけるこの負の勾配は、同じ抵抗値を結果として生じる伸びのパーセンテージの複合的な値の可能性による抵抗の予測を困難にするだろう。さらに、このニット ファブリック センサの追加の不利な点は、抵抗の変化が、センサの伸びのパーセンテージばかりではなく、センサの伸びのパーセンテージにおける変化率にもよるということである。加えて、他の背景技術努力は、本来、テキスタイルに適用できない、ストレッチ テキスタイル、テキスタイルに適用可能なプロセスまたは材料に基づくストレス/歪み検知テキスタイルを開発するためになされた。例えば、PCT特許出願番号WO 2003/060449-A1(スメラ)は、本来テキスタイルと共用できない「着用可能なイフェクト−エミッティング歪みゲージ デバイス」を開示する。
【特許文献1】米国特許第4,444,205号
【特許文献2】米国特許第4,505,847号
【特許文献3】米国特許第5,086,785号
【特許文献4】米国特許第5,858,291号
【特許文献5】PCT特許出願番号WO 2003/060449-A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記の考察から、背景技術も以前の研究努力も、エラストマへの伝導性粒子の追加のみが、特にその材料の弾性の機械的性能を維持する間、ストレッチの機能として電気的抵抗の予測できる特性へ導くだろうということを開示しない。
【0020】
加えて、背景技術も以前の研究努力も、弾性ストレッチ及び回復の間、材料の低いヒステリシスを示すまたはヒステリシスを何も示さない(すなわち、繰り返しのサイクル上の予測できる抵抗の変化)電気的伝導性弾性体的構造を、追加材料(例えば落花生油)または処理ステップ(例えばフラッシュ加熱)のいずれか一方を加えること無しに獲得することができるということを開示しない。
【0021】
さらに、背景技術も以前の研究努力も、広範囲(すなわち、10オーダーの大きさより大きい)にわたるストレッチ機能が達成可能なので、テキスタイルに適用可能な、電気的伝導性弾性体的構造の、抵抗の変化の大きさを制御することを開示しない。
【0022】
それゆえ、編まれ(knitted)または織られた(woven)伝統的なテキスタイル ファブリック及びそのような材料と構造を形成する方法に適用できる、弾性ストレッチ及び回復特性を有する、電気的に伝導性の弾性体の材料及び構造を提供する技術において必要がある。特に予測できるストレス負荷センサとして働き、製造するのが簡単な、テキスタイルに適用可能な材料についての技術において必要がある。そのような共用できるテキスタイル材料の望ましい性能特性は以下を含む。
【0023】
(1)ストレス負荷及び抵抗の大きな範囲にわたる、明確に定義された、予測可能な伸び/弾性(elasticity)対電気抵抗特性
(2)伸び率によらないストレッチ及び回復を有する電気抵抗、伸びのパーセンテージを提供する印加された力、またはストレッチ及び回復サイクルの数
【課題を解決するための手段】
【0024】
第1の面の本発明の第1の実施例は、弾性ストレッチ及び回復と共に変わる電気抵抗値を有する電気的伝導性の弾性体的構造に向けられる。電気的伝導性の弾性体的構造は、エラストマ ポリマーに対する電気的伝導性粒子の重量比として表される、あらかじめ決められた濃度において提供された、電気的伝導性粒子と組み合わされたエラストマ ポリマーからなる。電気的伝導性の弾性体的構造は、ストレッチ及び回復の一サイクルの間及び弾性ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、電気抵抗へのヒステリシス効果を除去するかまたは実質的に制限するかの少なくとも一つの、弾性ストレッチ及び回復特性を有する。加えて、弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、ストレッチ及び回復の一サイクルの間及び弾性ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、初期の抵抗値に等しいかまたは実質的に等しいかの少なくとも一つの、0%ストレッチへの回復後の電気抵抗を提供する。さらに、弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、実質的に永久的に物理的に変形及び初期の電気抵抗において実質的に永久的な変化が、電気的伝導性弾性体的構造の弾性限界(すなわち、破断時の伸びよりも小さい伸びにおいて)以内の伸びの結果として生じないことを提供する。さらに、弾性ストレッチ及び回復特性、エラストマ ポリマー及び電気的伝導性粒子の化学的性質並びに電気的伝導性弾性体的構造を獲得する方法はさらに、弾性ストレッチ及び回復サイクルの繰り返しにおいて、伸びを伴う電気抵抗の初期値、働き及び変化の大きさを制御することを提供する。
【0025】
第2の面においては、本発明は、エラストマに対する電気的伝導性粒子のあらかじめ決められた濃度が2:1より小さく、電気的伝導性エラストマ構造が100%より大きい破断時の伸びを有する、電気的伝導性弾性体的構造に向けられる。
【0026】
第3の面においては、本発明は、電気的伝導性弾性体的構造の弾性限界に至るまでの伸びの結果として、抵抗が、初期の抵抗の10オーダーの大きさに至るまでの範囲にわたって変化した後、負荷がかけられている間、抵抗値が平均して0%〜10%の伸び範囲以内に期待される値以内に戻り、好ましくは、弾性のサイクルの間、初期の抵抗の10%以内に戻る、電気的伝導性弾性体的構造に向けられる。好ましくは、電気的伝導性弾性体的構造は上で論じれらた150%に至るまでの伸びのパーセンテージを有する性能を提供する。
【0027】
第4の面においては、本発明は、ファイバー、ファブリック及びフィルムからなる電気的伝導性弾性体的構造、またはファイバー、ファブリック及びフィルムからなり、エラストマ ポリマーで被覆され、電気的伝導性粒子が分散された電気的伝導性弾性体的構造に向けられる。
【0028】
本発明の他の実施例は、電気的伝導性弾性体的構造を作る方法である。好ましい方法(A)によれば、エラストマ ポリマーが単一溶媒または混合溶媒の中に溶解される。電気的伝導性粒子は、溶解されたエラストマ ポリマーへ加えられ、混合物が生成される。その混合物は、電気的伝導性弾性体的構造を形成するために、好ましくは180℃よりも低い温度で、表面上に置かれ(deposit)、乾燥される。
【0029】
他の方法(B)においては、エラストマ ポリマーが溶媒または溶媒の混合物の中に溶解される。電気的伝導性粒子が溶液の中に分散され、その溶液は高速で混合される。その後、電気的伝導性粒子の溶液は、溶解されたエラストマ ポリマーへ加えられ、混合物が生成される。その混合物は、電気的伝導性弾性体的構造を形成するために、好ましくは180℃よりも低い温度で、表面上に置かれ、乾燥される。その表面がストレッチに耐える能力を持つ場合、方法(A)または方法(B)のいずれか一方の混合物は、ストレッチされている間、その表面上に置かれ、その後、弛緩状態で乾燥される。他の実施例においては、方法(A)または方法(B)のいずれか一方によって生成された混合物は、電気的伝導性特性を持つ弾性体的ファイバーを形成するために、スピナレットを通して導入される。
【0030】
しかし、他の実施例においては、電気的伝導性粒子の溶液は、好ましくはストレッチされた状態で、エラストマ ポリマー構造の表面の上に置かれ、その後、好ましくは180℃よりも低い温度で、緩められた状態で乾燥される。
【0031】
好ましくは、エラストマ ポリマーはスパンデックス(spandex)で、電気的伝導性粒子は10平方メートルより小さい平均粒子寸法を有する。さらに好ましくは、エラストマ ポリマーはLycra(登録商標) スパンデックスである。
【0032】
発明の他の実施例は、混合物を生成するために、エラストマ ポリマーへ電気的伝導性粒子を加える、電気的伝導性粒子及びエラストマ ポリマーの混合物を溶融する、表面の上に溶融した混合物を置き、及び電気的伝導性弾性体的構造を形成するためにその混合物を押し出し成型(extrude)する、からなる電気的伝導性弾性体的構造を作る方法である。
【0033】
「乾燥」が、ある温度の元で「乾燥」のプロセスが該システムのどの溶媒も除去するという効果を有する、溶媒を基体とするシステムに適用されるということが留意されるべきである。さらに、溶融システム(melt-system)において溶媒が存在しないことは、「乾燥」または「押し出し成型」という用語を適用することを困難にする。あるいは溶融システムについての乾燥にさらに直接関連付けられる、用語「冷却」を用いることができる。すなわち、我々が溶融物を生成するとき、我々は典型的に材料の溶融点より高い温度にその材料を加熱する。それから、その材料を固化させるために、我々はそれを冷却領域に通さなければならない。
【0034】
しかし、発明の他の実施例は、混合物を生成するために、エラストマ ポリマーへ電気的伝導性粒子を加える、電気的伝導性粒子及びエラストマ ポリマーの混合物を融かす、1つ以上のファイバーを形成するために、混合物をスピナレットの中へ押し込む、及び電気的伝導性弾性体的構造を形成するためにそのファイバーを押し出し成型する、からなる電気的伝導性弾性体的構造を作る方法である。
【0035】
この発明の好ましい実施例においては、エラストマ ポリマー及び伝導性添加物の間の適合性は、エラストマ ポリマーまたは伝導性添加物または両方のうちのいずれかの表面の機能化(functionalization)によってさらに高められる。そのような機能化は、一緒に混合されたとき、より均質で一様な混合物という結果となり得る、粒子及びポリマー マトリクス間、または伝導性粒子がエラストマ ポリマー基体の表面上に加えられたとき、改良された保護被覆への強い引力が生じることができる。しかしながら、そのような機能化は、エラストマの弾性特性を決して制限すべきではないし、伝導性粒子の機械的強度(strength)及び電気的伝導性に何も影響するべきではない。しかし、表面の機能化の方法は、中性またはイオン性種(species)を伴う共有結合的変性(modification)、金属グループの付加、分子の表面吸着、酸化または還元、及びプラズマ技術のような、有機的な機能化を含むことができるが、それに限定されないだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、50%カーボン添加の電気的伝導性エラストマのヒステリシス効果を示す、応力/伸びに対する電気抵抗のグラフの背景技術例である。
図2は、90%カーボン及び落花生油添加の電気的伝導性エラストマの低減されたヒステリシス効果を示す、応力/伸びに対する電気抵抗のグラフの背景技術例である。
図3は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造の実施例についての%伸び(すなわち、応力印加)に対する電気抵抗のグラフである。
図4は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造の他の実施例についての%伸びに対する電気抵抗のグラフである。
図5は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造のさらに他の実施例についての%伸びに対する電気抵抗のグラフである。
図6は、電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明の方法の流れ図である。
図7は、電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明の他の方法の流れ図である。
図8は、電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明のさらに他の方法の流れ図である。
図9は、比較するための実施例1に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。
図10は、実施例14に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。
図11は、実施例15に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。
【0037】
本発明に従うと、電気的伝導性弾性体的構造は、初期の電気抵抗値、及び当然の方法における弾性ストレッチ及び回復に伴って変わる電気抵抗値を有する。電気的伝導性弾性体的構造は、その中に分散された電気的伝導性粒子を備えたエラストマ ポリマーを有する。電気的伝導性粒子は、あらかじめ決められた濃度に供給される。加えて、電気的伝導性弾性体的構造は、周知の電気的伝導性弾性体的構造に比較してヒステリシス効果を除去または制限の少なくとも1つを行う、弾性ストレッチ及び回復特性を有する。さらに、電気的伝導性弾性体的構造の弾性ストレッチ及び回復特性は、弾性ストレッチ及び回復の5サイクル後の初期の抵抗値に等しいか、実質的に等しいの少なくとも1つである電気抵抗を提供する。さらに、ストレッチ及び回復サイクルの間の伸びを伴う電気抵抗の変化の機能及び大きさを制御する。
【0038】
一般に、電気的伝導性構造の形状は、5μm(マイクロメーター)〜400μmの範囲の厚さを有するフィルムである。例えば、そのようなフィルムは、そのフィルムの幅がそのフィルムの厚さのオーダーにあり、その長さが実質的に制限されない、長く細い平坦なフィラメントの形状を取ることができる。そのような場合、フィルムは連続的なフィラメントと呼ばれる。あるいは、電気的伝導性構造の形状は、少なくとも1つのフィラメントを含み、実質的に制限されない長さを有する紡糸されたファイバーである。あるいは、電気的伝導性構造の形状は、液体の被覆である。本発明の範囲内の電気的伝導性弾性体的構造は、ファイバー、ファブリック及びフィルム、並びにファイバー、ファブリック及びフィルムに適用された被覆を含む。
【0039】
好ましくは、エラストマは、スパンデックスまたは断片化されたポリウレタン−尿素と呼ばれるそれらのエラストマから選択される。特に好ましいスパンデックスは、Lycra(登録商標)商標の元で提供され、INVISTA(登録商標)インコーポレーテッド、19805 デラウェア ウィルミントン
ランカスター パイク 4417から入手される。Lycra(登録商標)スパンデックスの好ましいグレードは、タイプT-162C、タイプT-902C及びタイプT-178Cを含むが、これらに限定されない。
【0040】
電気的伝導性粒子の実施例は、伝導性金属、伝導性及び半導体金属酸化物及び塩、カーボンを基体とする導電性材料、ナノ粒子(例えばカーボン チューブ、ロッド、ワイヤ)、及び一般に、ポリマー マトリクスにおける「パーコレーション機構(percolation mechanism)」に基づいて電流を通すそれらの伝導性粒子を含むが、これに限定されない。特に好ましい電気的伝導性粒子は、米国 サウス カロリナ スパータンバーグのメリケン ケミカル カンパニーから入手し得る、Zelec(登録商標)ECPの元で販売されるアンチモンがドープされたスズ酸化物粒子である。パーコレーション機構は、さらに以下で論じられる。
【0041】
ポリマー マトリクス内の電気的伝導体の低い濃度で、ポリマー マトリクスの伝導体のサイトは、小さいクラスターを形成してもよいし、またはそれらの最も近い隣のサイトから隔離されるようになってもよい。2つの伝導体のサイトは、最も近い隣の伝導体のサイトのパス(path)によって接続されるとき、同じクラスターに属する。この場合、電流は、伝導体のサイト間を流れ得る。ポリマー マトリクス内の電気的伝導体が絶縁されるとき、マトリクスは絶縁物である。すなわち、ポリマー マトリクス内のすべての点を接続する伝導性パスは存在しない。
【0042】
これに対比して、電気的伝導体の高い濃度では、ポリマー マトリクス内の伝導体のサイトを接続する、たくさんの伝導パスが存在する。この場合、電流は流れ、ポリマー マトリクスは伝導体である。
【0043】
上で論じれらた伝導体の低濃度及び高濃度の極端な場合の間の電気的伝導体の濃度で、電気的伝導体の閾値濃度は、電流がポリマー マトリクス内を「パーコレート(percolate)」し得るように存在する。このパーコレーション機構の結果として、もし、伝導体の濃度が閾値濃度よりも低いなら、ポリマー マトリクスは絶縁物である。もし、伝導体の濃度がこの閾値濃度よりも高いなら、ポリマー マトリクスは伝導体である。好ましくは、本発明の電気的伝導性弾性体的構造は、あらかじめ決められた濃度(すなわち、少なくともパーコレーション閾値)で電気的伝導性粒子によって提供される。なお、電気的伝導性粒子の3次元ネットワークが電気的伝導性弾性体的構造内に(すなわち、弾性(elastic)ポリマー マトリクスの形で)存在するように、該電気的伝導性弾性体的構造は提供される。また、該電気的伝導性弾性体的構造は、その構造における伝導パスを、弾性ポリマー マトリクスの3次元ネットワークを通して電気抵抗を提供する方法で保つ。
【0044】
加えて、好ましい電気的伝導性粒子は、電気的伝導性弾性体的構造において「低いパーコレーション閾値」を提供する、それらの粒子からなるグループから選ばれる。上で論じれらたパーコレーション機構は、伝導体または絶縁体が存在する弾性ポリマー マトリクス内のサイトからなる不規則性のシステムについての単純なモデルである。もっと正確に言えば、「低いパーコレーション閾値」は、0.5:1よりも小さい、さらに好ましくは0.05:1よりも小さい重量比における、エラストマに対する電気的伝導性粒子のあらかじめ決められた比によって特徴付けられる。
【0045】
テキスタイルが適合する特定の領域において、少なくとも10%〜約50%の伸びの範囲における予測できる電気抵抗のふるまいを有することが好ましい。電気抵抗のふるまいは、単位長さにおける変化当りの抵抗における変化(ΔR/ΔL)として表される。電気抵抗の変化(ΔR)は、100%の伸びにおける変化(ΔL)の間、少なくとも50%であることが好ましい。加えて、材料は、各弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、予測できる制限されたヒステリシス効果を有することが好ましい。
【0046】
加えて、ストレッチされない(すなわち、弛緩)状態における電気抵抗の初期値は、意図された応用及び関連するエレクトロニクスによるだろうことは留意されるべきである。矛盾しないテキスタイルの特定の領域において、1MΩ(メガオーム)より小さく、好ましくは100kΩ(キロオーム)より小さい初期の電気抵抗のために好ましい場合がある。一般に、この発明の方法の元で作られた電気伝導性エラストマ構造は、あつらえの初期の抵抗及び単位長さにおける変化当りの電気抵抗の変化を有する。1つの実施例として、ストレッチされない状態における抵抗は、1kΩ〜15,000GΩ(ギガオーム)に及ぶことができる。100%の伸びの範囲以内で電気的伝導性弾性体的構造をストレッチするまたは変形させることは典型的に、抵抗値を10オーダーの大きさに増加させる。
【0047】
一般に、この発明の方法の元で作られた電気伝導性エラストマ構造は、あつらえの初期の抵抗及び単位長さにおける変化当りの電気抵抗の変化を有する。1つの実施例として、負荷がかけられたサイクルにわたる伸びに対する電気抵抗の変化は、数学的増加関数の形を取ることができる。該関数は、以下表され得る関数を含むことができるが、これに限定されない。:
LogR=a+b*(ΔL/L*100)(関数1)
aとbは、初期の抵抗値及び伸びに対する電気抵抗の対数の変化の勾配を表す定数である。典型的に、伸びを伴う抵抗の変化は、次の関数により表される。:
LogR=a+b*Exp(−c(ΔL/L*100))(関数2)
aは伸びが増加するときの電気抵抗の漸近値、bは初期値と漸近値との間の電気抵抗における変化、nは抵抗が漸近値に以下に速く近づくかを決定する指数、及びcは伸びが増加するとき、抵抗値がいかに速く増加するかを決定するnの値に基づく定数である(典型的にn≧1及び典型的にn=2)。典型的に、伸びを伴う抵抗変化のグラフ的関数は、抵抗成分の合計として表すことができる。 R=ΣA(関数3)
は上で論じれらた関数2の形の関数によって表され、Aは定数である。典型的にI=1〜2である。
【0048】
さらに、上で論じられたように、本発明の電気的伝導性粒子は、あらかじめ決められた濃度における電気的伝導性弾性体的構造中に提供される。このあらかじめ決められた濃度は、エラストマに対する電気的伝導性粒子の重量の比として表される。本発明の好ましい実施例においては、電気的伝導性弾性体的構造は、エラストマに対する電気的伝導性粒子の2:1よりも小さいあらかじめ決められた濃度を有する。加えて、電気的伝導性弾性体的構造の破断時の伸びは、100%よりも大きい。
【0049】
加えて、電気的伝導性弾性体的構造は、予測できる弾性ストレッチ及び回復特性を有する。この弾性ストレッチ及び回復特性は、弾性限界以内の(すなわち、破断時の伸びよりも小さい伸びでの)伸びのパーセンテージは、伸びに対する電気抵抗の明確に定義された関数という結果になることにおいて特徴付けられる。この弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、弾性限界以内の(すなわち、破断時の伸びよりも小さい伸びでの)伸びのパーセンテージは、電気抵抗の初期値において実質的に永久的な物理的変形及び実質的に永久的な変化しないという結果になることにおいて特徴付けられる。
【0050】
加えて、弾性ストレッチ及び回復特性は、電気的伝導性弾性体的構造の電気抵抗によって特徴付けられる。なお、該値は、ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、初期の電気抵抗値と等しい及び実質的に等しい値に戻る。また、その中で、伸びの最大のパーセンテージは、弾性限界、好ましくは少なくとも20%の伸びでの範囲内であった。好ましくは実質的に等しいというのは、平均して負荷の元での0%〜10%の伸びの範囲以内、好ましくは初期の抵抗の10%以内で示される抵抗値以内である、ストレッチされない抵抗値として定義される。
【0051】
さらに、弾性ストレッチ及び回復特性は、ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、ストレッチ(すなわち、負荷の元での%伸び)及び回復(すなわち、無負荷の%伸び)が除去され、または実質的に制限される(すなわち、無負荷の抵抗値が、平均して負荷がかけられた抵抗の30%よりも小さい)間、抵抗値におけるヒステリシス効果によって特徴付けられる。なお、その中で、伸びの最大のパーセンテージは、弾性限界、好ましくは少なくとも20%の範囲内であった。好ましくは、実質的に制限するというのは、平均して、負荷がかけられた抵抗値の10%以内である、無負荷の抵抗値に対応するだろう。
【0052】
図3は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造の弾性ストレッチ及び回復特性の特徴のいくつかを示すグラフである。このグラフに示される特定のデータはさらに、以下の図6において論じられる。図3のグラフ上の「×」の記号は、ストレッチ(負荷の元でのストレス)の間、伸びの異なるパーセンテージでのギガオームにおける測定された抵抗を表す。図3のグラフ上の「○」の記号は、回復(無負荷のときのストレス)の間、伸びの異なるパーセンテージでのギガオームにおける測定された抵抗を表す。図3内に記されたデータは、実施例6の表2内に示される。
【0053】
図3に示されるように、電気的伝導性弾性体的構造は、0%の伸びでの初期の電気抵抗と実質的に等しい値へ戻る。加えて、図3は、ヒステリシス効果が0%〜50%の範囲における伸びの種々のパーセンテージで実質的に除去されることを示す。このことはさらに、図3中に記される実施例6の表2のデータにおいて示され、さらに以下の実施例6において論じられる。しかしながら、「負荷がかけられた」(すなわち、ストレッチされた)状態の元での抵抗値及び0%の伸びでの「無負荷の」(すなわち、回復)抵抗は、初期の抵抗値と等しいかまたは実質的に等しいことは留意されるべきである。特に平均して、無負荷の抵抗は初期の抵抗の10%以内である。測定された伸び範囲にわたる電気抵抗の変化は、初期の抵抗の約3倍である。それゆえ、初期の抵抗値からの無負荷の抵抗値における変化は、本発明によって実質的に除去される。
【0054】
さらに、表1及び表2は、パーセンテージ範囲0%〜50%である、伸びの種々のパーセンテージで「負荷」及び「無負荷」状態の元での抵抗値を載せる。表1及び表2のデータから見ることができるように、抵抗値におけるヒステリシス効果は、ストレッチ及び回復サイクルの伸びの%の範囲にわたって、除去されるか実質的に制限されるか(すなわち、平均して無負荷の抵抗は、負荷がかかっている抵抗の30%以内である)の少なくとも1つである。それゆえ、ヒステリシス効果は、本発明によって実質的に除去される。
【0055】
図4は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造の他の実施例の弾性ストレッチ及び回復特性を示す。図4に見ることができるように、無負荷の抵抗は、0%の伸びでの初期の電気抵抗に実質的に等しい値に戻る。加えて、図4は、ヒステリシス効果が0%〜50%の範囲内の伸びの種々のパーセンテージで実質的に除去されることを示す。このことはさらに、図4のグラフ内に記された、実施例3の表1のデータ内に示され、さらに以下実施例3の中で論じられる。しかしながら、「負荷がかけられた」(すなわち、ストレッチされた)状態の元での抵抗値及び0%の伸びでの「無負荷の」(すなわち、回復)抵抗は、初期の抵抗値と等しいかまたは実質的に等しいことは留意されるべきである。加えて、平均して、「無負荷の」抵抗は「負荷がかけられた」抵抗の10%以内である。測定された伸び範囲にわたる電気抵抗の変化は、初期の抵抗の約4倍である。それゆえ、「無負荷の」抵抗値は、初期の抵抗値と等しい及び実質的に等しいの少なくとも1つであり、ヒステリシス効果は、本発明によって除去され及び実質的に制限されるの少なくとも1つである。
【0056】
図5は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造のさらに他の実施例の弾性ストレッチ及び回復特性を示す。図5に見ることができるように、無負荷の抵抗は、0%の伸びでの初期の電気抵抗に実質的に等しい値に戻る。加えて、図5は、ヒステリシス効果が0%〜50%の範囲内の伸びの種々のパーセンテージで実質的に除去されることを示す。このことはさらに、図5のグラフ内に記された、実施例5の表1のデータ内に示され、さらに以下実施例5の中で論じられる。しかしながら、「負荷がかけられた」(すなわち、ストレッチされた)状態の元での抵抗値及び0%の伸びでの「無負荷の」(すなわち、回復)抵抗は、初期の抵抗値の30%以内であり、0%〜10%の伸び範囲内に予期される抵抗値以内であることは留意されるべきである。加えて、平均して、「無負荷の」抵抗は「負荷がかけられた」抵抗の20%以内である。このことは、測定された伸び範囲における抵抗の変化が重要であり、6オーダーの大きさより大きいので、この実施例において特に重要である。それゆえ、「無負荷の」抵抗値は、初期の抵抗値に等しく、ヒステリシス効果は、本発明によって実質的に制限される。
【0057】
好ましくは、抵抗値が、100%の伸びにわたる最小の50%の変化の範囲にわたる初期の抵抗値から変化し、電気的伝導性弾性体的構造の弾性限界に至るまでの伸びを伴う10オーダーの大きさに至る電気的伝導性弾性体的構造が提供される。最も好ましくは、抵抗が、100%に至るまでの伸びのパーセンテージを伴う初期の抵抗値から10オーダーの大きさに至るまでの範囲にわたる初期の抵抗値から変化する電気的伝導性弾性体的構造が提供される。
【0058】
図6は、本発明による電気的伝導性弾性体的構造を作る方法の流れ図を示す。特に図6は、電気的伝導性弾性体的フィルム、またはコーティングを作る方法を示す。特に本発明の電気的伝導性弾性体的構造は、図6のステップ601に示されたように、溶媒または溶媒混合物内のエラストマ ポリマーを最初に溶解し、または分散させることによって製造することができる。エラストマ ポリマーは、好ましくはLycra(登録商標)スパンデックスであるが、これに限定されない。Lycra(登録商標)スパンデックスの溶液は、溶媒環境における適したLycra(登録商標)スパンデックス ポリマーを溶解し、または分散させることによって得られる。第1の溶媒は好ましくは、N-ジメチルアセタミド(DMAc)、N-ジメチルフォルマミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、水のリストから選ばれるが、これらに限定されない。第2の溶媒は好ましくは、2-ブタノン、トルエンのリストから選ばれるが、これらに限定されない。第2の溶媒の濃度は好ましくは、溶媒混合物の容積にして50%より低い。さらに溶液は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10重量パーセントの好ましい固体濃度を有する。
【0059】
図6のステップ603において、電気的伝導性粒子の分散は、溶液中で調合される。電気的伝導性粒子は好ましくは、Zelec(登録商標)電気的伝導性粒子、または単一壁のカーボン ナノチューブであるが、これらに限定されない。さらに、粒子が中に分散された溶液は好ましくは、DMAc、DMF、NMP、2-ブタノン、水のリストから選ばれるが、これらに限定されない。第1の溶媒は、電気的伝導性粒子の均一な凝集しない分散であり、エラストマ ポリマーの溶媒と混和できる結果となるように選ばれる。さらにまた、溶液は、溶媒の混合物の容積にして約少なくとも1%である、エラストマ ポリマー溶液の第1の溶媒の好ましい濃度を有する。
【0060】
図6のステップ605は、溶液内で高速での重さが測られた電気的伝導性粒子の混合である。限定されない実施例として、ステップ605の混合プロセスの速度は、約15分の継続の間、分当たり1000〜11000回転の範囲であることができる。
【0061】
図6のステップ607において、電気的伝導性粒子の混合された溶液が、2つの材料の混合物を作るために、溶解されたエラストマ ポリマーに加えられる。特に該混合物は、溶解されたエラストマ ポリマーに対して分散された電気的伝導性粒子のあらかじめ決められた比で、2つの材料をいっしょに加えることによって作られる。あるいは、電気的伝導性粒子を、エラストマ ポリマーの溶液の中へ直接加えることができ、このようにしてステップ603及び605を避ける。これは、エラストマ ポリマーの溶液が電気的伝導性粒子を均一な凝集しない状態にさせる能力があるとき、好ましい方法である。
【0062】
図6のステップ609は、好ましくは被覆紙(コーティング ペーパー)、ミラー(Mylar) フィルム、またはファブリックであるが、これらに限定されない、表面上へ電気的伝導性粒子の混合物及び溶解されたエラストマ ポリマー(それぞれ例えばZelec(登録商標)及びLycra(登録商標))を置く(deposit)ことである。該表面がストレッチ特性を示す場合、該表面上へ混合物を置くことは好ましくは、テンションがかけられ、及び好ましくは少なくとも10%のストレッチのテンションがかけられる間の表面に適用されるが、これに限定されない。例えば、ステップ609における混合物を置くことは、ウェット フィルムについて制御された厚さを提供するフィルム アプリケータを用いて成し遂げることができる。ウェット フィルムの制御された厚さは好ましくは、20mil(0.5mm)〜100mil(2.5mm)の範囲であるが、これに限定されない。
【0063】
図6のステップ609において、ウェット フィルムは、好ましくは180℃より低い温度で空気中で乾燥される。乾燥されたフィルムは、以下の望ましい特性を有する電気的伝導性弾性体的構造を形成する。
【0064】
(1)印加されたストレス(すなわち、%伸び)のかなりの範囲にわたる、弾性ストレッチ及び回復特性に対する明確に定義された予測できる電気抵抗、及び
(2)伸びのレート、伸びのパーセンテージを提供する印加された力、または弾性ストレッチ及び回復サイクルの数によらない、弾性ストレッチ及び回復特性を有する電気抵抗。
【0065】
図7は、本発明による電気的伝導性弾性体的構造を作る方法の流れ図を示す。特に図7は、電気的伝導性弾性体的スパン(spun) ファイバーを作る方法を示す。さらにとりわけ、本発明の電気的伝導性弾性体的構造は、図7のステップ701に示されたように、溶媒内のエラストマ ポリマーを最初に溶解させることによって製造することができる。エラストマ ポリマーは、好ましくはLycra(登録商標)スパンデックスであるが、これに限定されない。Lycra(登録商標)スパンデックスの溶液は、溶媒環境における適したLycra(登録商標)スパンデックス ポリマーを溶解し、または分散させることによって得られる。溶媒は好ましくは、N-ジメチルアセタミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)のリストから選ばれるが、これらに限定されない。溶液は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20重量パーセントの好ましい固体濃度を有する。
【0066】
図7のステップ703において、電気的伝導性粒子のスラリーが溶液内に作られる。電気的伝導性粒子は好ましくは、Zelec(登録商標)電気的伝導性粒子、または単一壁のカーボン ナノチューブであるが、これらに限定されない。粒子のスラリーは好ましくは、ステップ701で述べられるように、エラストマ ポリマーの溶液の中へ電気的伝導性粒子を加えることによって作られる。該溶液は、重量にして少なくとも10%、好ましくは重量にして少なくとも20%の電気的伝導性粒子の好ましい濃度を有する。該溶液は、電気的伝導性粒子の均一な凝集しない分散であり、エラストマ ポリマーの溶媒と混和できる結果となるように選ばれる溶媒をさらに含む。該溶媒は、2-ブタノン、トルエンのリストであることができるが、これらに限定されない。
【0067】
図7のステップ705は、溶液内で高速での重さが測られた電気的伝導性粒子の混合である。限定されない実施例として、ステップ705の混合プロセスの速度は、約15分の継続の間、分当たり1000〜11000回転の範囲であることができる。混合プロセスは、粒子スラリーのグラインド(grind)もまた含むことができる。
【0068】
図7のステップ707において、気的伝導性粒子のスラリーは、2つの材料の混合物を生成するために、紡糸ヘッダの導入によって、溶解されたエラストマ ポリマーに加えられる。特に該混合物は、溶解されたエラストマ ポリマーに対して分散された電気的伝導性粒子のあらかじめ決められた比で、2つの材料をいっしょに加えることによって作られる。
【0069】
図7のステップ709は、電気的伝導性粒子及び溶解されたエラストマ ポリマー(それぞれ例えばZelec(登録商標)及びLycra(登録商標))の混合物をスピナレットを介して押し込む(force)ことである。例えば、紡糸するプロセスは、連続的なファイバーの生成に導く乾式紡糸プロセスであることができる。
【0070】
図7のステップ711において、ファイバーはボビン上に巻かれ、紡糸フィニッシュ(spin finish)を適用することができる。ファイバーは少なくとも1フィラメントを含むことができる。ファイバーは、以下の望ましい特性を有する電気的伝導性弾性体的構造を形成する。
【0071】
(1)印加されたストレス(すなわち、%伸び)のかなりの範囲にわたる、弾性ストレッチ及び回復特性に対する明確に定義された予測できる電気抵抗、及び
(2)伸びのレート、伸びのパーセンテージを提供する印加された力、または弾性ストレッチ及び回復サイクルの数によらない、弾性ストレッチ及び回復特性を有する電気抵抗。
【0072】
図8は、本発明による電気的伝導性弾性体的構造を作る方法の流れ図を示す。特に図8は、電気的伝導性弾性体的被覆ファイバーを作る方法を示す。弾性体的ファイバーは、好ましくはLycra(登録商標)スパンデックスであるが、これに限定されない。
【0073】
図8のステップ803において、電気的伝導性粒子の分散が溶液内に作られる。電気的伝導性粒子は好ましくは、Zelec(登録商標)電気的伝導性粒子、または単一壁のカーボン ナノチューブであるが、これらに限定されない。さらに粒子が中に分散された溶液は好ましくは、2-ブタノン及び水のリストから選ばれるが、これらに限定されない。第1の溶媒は、電気的伝導性粒子の均一な凝集しない分散であり、濡れ易さを有するが、弾性体的ファイバーの表面と溶解し合わない結果となるように選ばれる。さらにまた、溶液は、溶媒の混合物の容積にして約少なくとも1%である、エラストマ ポリマー溶液の第1の溶媒の好ましい濃度を有する。さらに該溶液は、弾性体的ファイバーのための良溶媒の、溶媒混合物の容積にして少なくとも約10%及び50%より低い好ましい濃度を有する。
【0074】
図8のステップ805は、溶液内で高速での重さが測られた電気的伝導性粒子の混合である。限定されない実施例として、ステップ805の混合プロセスの速度は、約15分の継続の間、分当たり1000〜11000回転の範囲であることができる。
【0075】
図8のステップ809は、弾性体的ファイバーの表面上へ電気的伝導性粒子の混合物を置くことである。表面上へ混合物を置くことは好ましくは、これがテンションの元に、及び好ましくは少なくとも10%のストレッチのテンションの元にある間の表面に適用されるが、これに限定されない。例えば、ステップ809における混合物を置くことは、ウェット被覆フィルムについて制御された厚さを提供するナイフ アプリケータを伴う液体ポンプ アプリケータを用いて成し遂げることができる。制御されたテンションを提供するように好ましい速度でファイバーがローラー間で運ばれる間、この利用はなされる。
【0076】
図8のステップ811において、ウェット ファイバーはオンラインの加熱されたオーブンを通って運ばれ、好ましくは180℃より低い温度で乾燥される。オーブンから出たら、乾燥されたファイバーはその後ボビン上に巻かれる。被覆ファイバーは、以下の望ましい特性を有する電気的伝導性弾性体的構造を形成する。
【0077】
(1)印加されたストレス(すなわち、%伸び)のかなりの範囲にわたる、弾性ストレッチ及び回復特性に対する明確に定義された予測できる電気抵抗、及び
(2)伸びのレート、伸びのパーセンテージを提供する印加された力、または弾性ストレッチ及び回復サイクルの数によらない、弾性ストレッチ及び回復特性を有する電気抵抗。
【0078】
該発明の実施例によると、電気的伝導性粒子は、あらかじめ決められた量で、エラストマ ポリマーへ加えられ、フィラメントへさらに処理される。電気的伝導性粒子で変性されたフィラメントを作るプロセスは、スパンデックス フィラメントの製造のための湿式(ウェット)紡糸、乾式(ドライ)紡糸及び反応紡糸プロセスの中から選択可能である。ここに参照として具体化されているように、デュポン 東レ カンパニー リミッティド(DuPont Toray Co. Ltd.)に権利化された米国特許第6,623,585号の開示は、すぐ準備できる発明の実施に有用なエラストマ ポリマー及びスパンデックス フィラメントを紡糸する方法を提供する。
【0079】
一般的に実施される紡糸方法において、電気的伝導性粒子が、セグメント化されたポリウレタンの、重量にして少なくとも85%からなる長鎖の合成ポリマーである、例えばポリ(ウレタン-尿素) ポリマーのようなエラストマ ポリマーへ加えられる。そのようなポリ(ウレタン-尿素) ポリマーは、高分子ジオール及びジイソシアネートからプレポリマーを生成し、このプレポリマー(「キャップされたグリコール」)を溶媒中のジアミンと反応させることによって作られる。適した溶媒は、ジメチルアセタミド(DMAc)、ジメチルフォルマミド、N-メチルピロリドン及びそれらに類するものを含む。この「プレポリマー方法」は、チェイン エクステンダーがジアミンのとき、用いられる。
【0080】
あるいは、チェイン エクステンダーとしてジオールを使用し、溶融重号させることが知られている。すべての構成要素の反応はまた、ジアミン-及びジオールで延ばされたポリマーの溶液内で実行することができる。紡糸溶液は、ポリウレタンの1タイプもしくはポリウレタンの2タイプまたはそれ以上のタイプから作ることができる。該技術で実施されているように、ポリマー溶液は、1つまたはそれ以上の開口を有するスピナレット板を介して圧力下で押し込まれる。スピナレットの各開口は、単一フィラメントに対応する。スピナレットから押し出された単一フィラメントまたは複数フィラメントは、ポリマー溶媒が新たに形成されたフィラメントから蒸発されるところのカラムに入る。
【0081】
上で論じられたプロセスにより形成されたフィラメントは、電気的に伝導性の弾性体的構造を有するものである。そのようなフィラメントは、以下のそれらの特性のために望ましい。
【0082】
(1)印加されたストレス(すなわち、%伸び)の広い範囲にわたる、弾性ストレッチ及び回復特性に対する明確に定義された予測できる電気抵抗を有し、及び
(2)伸びのレート、伸びを提供する印加された力、または弾性ストレッチ及び回復サイクルの数によらない、弾性ストレッチ及び回復特性と共に変化する電気抵抗を有する。
【0083】
以下の実施例は、上で論じられた望ましい特性が、本発明の電気的伝導性弾性体的構造及び方法にあることの証拠として提供される。
【0084】
試験方法
フィルムの伝導性の測定
テストされる各フィルム サンプルは、2cm×10cmの寸法の細長片にカットされた。適切なピンセットを用いて、フィルムは、米国 02021 MA カントン ロイヤル ストリート 100 ヘッドクォーターズのインストロン コーポレーション(Instron Corporation)から入手できるインストロン(INSTRON) ダイナモメーター上に置かれた。初期のゲージ長さは、機械的特性測定のために5cmにセットされ、電気的特性測定のために1cmにセットされた。
【0085】
英国 AVOリミッティドから250 N Avo.から入手できるスーパー メグオーム計 モデルRM170は、10と500ボルトの間の範囲で、0.35*(V/100)キロオーム〜2000*(V/100)ギガオームの値の抵抗を測定する能力がある。この場合は、110ボルトが選ばれた。
【0086】
電極の特別な構造は、テスト フィルムを参照して、安定した再現可能な電極の位置にさせるように作られた。電極間の間隔は1cmに選ばれた。それからこの構成を用いて、サイクルのストレッチ及び回復の両方の部分の間、制御された方法で、フィルムの抵抗を測定することが可能である。
【0087】
加えて、インストロン(INSTRON)のコンピュータ制御は、フィルムの表面上に位置された電極と共にフィルムを望ましい伸びにストレッチさせ、抵抗値はスーパー メグオーム計 モデルRM170を用いて観察された。伸びのサイクリング実験の場合、各フィルム サンプルは、50%の伸びで5回繰り返され、抵抗は、両方のストレッチ及び回復のサイクルについて10%ずつの伸びの変化で測定された。
【実施例】
【0088】
本発明の実施例1
Lycra(登録商標)スパンデックスは、DMAc溶媒中で10wt%の濃度で44dtexのLycra(登録商標)T-162Cポリマーを溶解させることによって用意された。米国 南カリフォルニア スパータンバーグのミリケン ケミカル カンパニーから入手できる、電気的伝導性粒子の分散(例えばZelec(登録商標)電気的伝導性粒子(ECP))は、次のレシピにより用意された。:50mlのブタノン、5mlのDMAc及び15gのZelec(登録商標)パウダー。この分散は、ミキサーで分当たり11000回転で15分間混合された。その後、該Zelec(登録商標)分散溶液は、Lycra(登録商標)に対するZelec(登録商標)粒子の比が0.25:1(wt/wt)となるように、溶解されたLycra(登録商標)で混合された。この混合物は、良い均一性を確保するため、磁気かき混ぜ棒でかき混ぜられた。ウェット フィルムは、このLycra(登録商標)及びZelec(登録商標)混合物を、フィルム アプリケータを用いて被覆紙上に置くことによって、20mil(0.5mm)の制御されたウェット フィルム厚さに作られた。ウェット フィルムは、フードの元で一晩中実験室の温度と気圧下で乾燥された。フィルムの乾燥厚さを測定したら、45マイクロメータ(μm)であった。このフィルムは、1050GΩのストレッチされない状態で高い抵抗を示した。このフィルムを100%の伸び範囲以内でストレッチすることは、初期の抵抗値の約4倍を越える抵抗の増加を引き起こした。
【0089】
表1に示されるように、平均して、該フィルムの無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復のサイクルの間、50%の伸びを繰り返した後、負荷がかけられた抵抗の10%以内に戻った。加えて、該フィルムの無負荷の抵抗は、サイクルの回復部分後(すなわち、0%伸びに戻った後)の初期の抵抗値の10%以内に戻った。この結果は、パーコレーション閾値より下のレベルにおいてさえ、本発明のフィルムは、抵抗値によって弾性応答を伴うストレイン-ゲージ(歪み計)のふるまいを有するということを示す。したがって、本発明のフィルムは、ストレイン-ゲージ効果が重要である応用のために使用することができる。
【0090】
本発明の実施例2
実施例1のLycra(登録商標)及びZelec(登録商標)混合物は、50mil(1.3mm)の厚さを有するウェット フィルムを置くのに使用された。ドライ フィルム厚さを測定したら、180μmであった。該フィルムの初期の抵抗値は、330GΩであることが観察された。この値は、実施例1のより薄いフィルム(すなわち、45μmで1050GΩ)の初期抵抗値よりも多少低かった。
【0091】
この実施例のフィルムの抵抗は、100%の伸び範囲以内で約4倍の総計の増加を示した。表1に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復のサイクルの間、50%の伸びを繰り返した後、負荷がかけられた抵抗の20%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、サイクルの回復部分後の0%の伸びで初期の抵抗値の10%以内に戻った。
【0092】
本発明の実施例3
この実施例のLycra(登録商標)及びZelec(登録商標)混合物は、実施例1と同様にして用意された。しかしながら、0.5:1(wt/wt)のZelec(登録商標)に対するLycra(登録商標)の異なる比が、実施例3のために使用された。ウェット フィルムは、ウェット フィルム厚さが20mil(0.5mm)で置かれた(deposit)。乾燥後、ドライ フィルム厚さを測定したところ、60μmであった。ストレッチされないフィルムの初期の抵抗値は465GΩであり、このように実施例1のフィルムの値よりも低いことが観察された。両方の実施例におけるフィルムが同じウェット フィルム厚さ(すなわち、20mil)を有したけれども、実施例3のフィルムのZelec(登録商標)に対するLycra(登録商標)の比は、実施例1のフィルムよりも2倍高い。実施例3のフィルムはまた、実施例1と比較して、%伸びに対する抵抗値のより高い増加を有する。特に、抵抗は、100%の伸びでのストレッチされないフィルムの40倍に達した。表1に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復のサイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の10%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、サイクルの回復部分後、初期の抵抗値の10%以内に戻った。
【0093】
本発明の実施例4
実施例3のLycra(登録商標)及びZelec(登録商標)混合物は、50mil(1.3mm)のウェット フィルム厚さに置かれた。ドライ フィルム厚さを測定したところ、210μmであった。この実施例において、実施例3のより薄いフィルムと比較して、表面フィルム抵抗の劇的な低減が、ストレッチされない状態(すなわち、0.017GΩ)において観察された。そのような表面フィルム抵抗の劇的な低減は、4オーダーの大きさを越える変化(すなわち、10)を表す。このフィルムはストレッチされたので、%伸びに対する抵抗値の劇的な増加(すなわち、約2000倍)が0%〜30%の伸びの範囲以内で観察された。この伸び範囲を越えたところでは、フィルム抵抗が増加し続けたが、抵抗の勾配のより小さい変化を伴った。表1に示されるように、30%〜100%の伸び範囲では、このフィルムは、実施例3のより薄いフィルム(すなわち、20mil)と同等のふるまいを示した。このフィルムの測定された抵抗は、フィルムの表面での抵抗を表す。
【0094】
Lycra(登録商標)ポリマー及びZelec(登録商標)粒子濃度の同じ状態で、フィルム表面抵抗上のフィルム厚さ効果が観察されることは意外である。この観察は、フィルム構造内のZelec(登録商標)粒子の分布の相違を示すことが信じられる。より大きなフィルム厚さで、Zelec(登録商標)粒子は、より多くの接触点を生成するような構造を持たされる。より多くの接触点がフィルムの初期の抵抗値を下げる。上で論じられたように、%伸びに対する抵抗の劇的な変化があるけれども、フィルムの弾性ストレッチ及び回復の繰り返しは、ストレッチ及び回復サイクルの間の抵抗における有限のヒステリシス効果を有することは非常に意外である。表1に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復のサイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の10%以内に戻った。加えて、該フィルムの無負荷の抵抗は、回復サイクルの後、初期の抵抗の20%以内に、また0%〜10%の伸び範囲内で予期される抵抗値以内に戻った。これらの結果は、本発明のこの実施例のための電気抵抗による高い弾性性能を示す。
【0095】
本発明の実施例5
実施例1のフィルムに類似するフィルムが実施例5において製造された。しかしながら、実施例5では、最初のDMAcにおけるLycra(登録商標)溶液は、15wt%の濃度を有し、またLycra(登録商標)に対するZelec(登録商標)の比が1:1(wt/wt)であった。ドライ フィルム厚さは120μmであった。該フィルムは、エラストマーに対する電気的伝導性粒子のより小さい比を有する、実施例1、2、3及び4の発明に比較して、初期の抵抗値においてさらなる低減を示した。加えて、実施例5のフィルムの抵抗は、ストレッチによって劇的に変化した。表1に示されるように、40%の伸びに至るまで、このフィルムは7オーダーの大きさよりも大きい抵抗の変化を示した。負荷がかけられた抵抗値は増加し続けたが、100%の伸びに至るまで、抵抗における勾配はより小さかった。それにもかかわらず、Lycra(登録商標)に対するZelec(登録商標)のこの高い負荷においてさえ、このフィルムは、弾性ストレッチ及び回復のサイクルの間、堅実で広いダイナミック レンジの抵抗変化を示した。表1に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の20%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値の30%以内、及び0%〜10%に予期される抵抗値以内に戻った。
【0096】
本発明の実施例6
実施例1のフィルムに類似するフィルムが、実施例6において製造された。しかしながら、Lycra(登録商標)グレードは、実施例6において変えられた。選ばれたLycra(登録商標)グレードは、主として柔らかいセグメントの化学的性質及び分子量においてタイプT-162Cと異なる、タイプT-902Cであった。このLycra(登録商標)グレードは、より長い柔らかいセグメントを有し、より高いエラストマ伸び範囲を提供する。ドライ フィルム厚さは50μmであった。このフィルムは、実施例1のふるまいと非常に類似するふるまいを示したが、同じ伸び範囲にわたって多少大きい抵抗の増加を示した。表2に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値に戻った。
【0097】
本発明の実施例7
実施例2のフィルムに類似するフィルムが、実施例7において製造された。しかしながら、Lycra(登録商標) T-902Cが、実施例7において用いられた。ドライ フィルム厚さは180μmであった。このフィルムは、実施例6のより薄いフィルム(すなわち、ドライ フィルム厚さが50μm)と類似のふるまいを示したが、伸びを伴うわずかに高い抵抗の増加を有する。表2に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の10%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値の10%以内に戻った。
【0098】
本発明の実施例8
実施例3のフィルムに類似するフィルムが、実施例8において製造された。しかしながら、Lycra(登録商標) T-902Cが、実施例8において用いられた。ドライ フィルム厚さは60μmであった。該フィルムは、実施例3の462GΩに比較して著しく低い0.14GΩの初期抵抗を示した。0%〜20%の伸び範囲において、%伸びに対する抵抗特性における大きな勾配が観察された。そのような劇的な変化にもかかわらず、該フィルムは限られたヒステリシス効果を示し、実質的に初期の抵抗値に戻った。表2に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の20%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値の25%以内に、また0%〜10%の伸び範囲において予期される抵抗値以内に戻った。
【0099】
本発明の実施例9
Lycra(登録商標)及びZelec(登録商標)混合物は、実施例1により用意されたLycra(登録商標)溶液の中に直接Zelec(登録商標)を加えることによって作られた。すなわち、Lycra(登録商標) T-902Cに対するZelec(登録商標)の比は、1:1(wt/wt)に制御された。適用されたウェット フィルム厚さは20mil(0.5mm)であった。測定されたドライ フィルム厚さは90μmであった。このフィルムは、同じポリマーだが、低いZelec(登録商標)濃度に基づいた実施例6、7及び8と比較して、著しい低い初期抵抗値(すなわち、0.40MΩ)を示した。実施例9のフィルムの初期抵抗は、実施例5における同じZelec(登録商標)粒子濃度(すなわち、0.77MΩ)でのLycra(登録商標) T-162Cポリマーについて観察されたような同じオーダーの大きさであった。しかしながら、実施例5で観察された0%〜50%の伸び範囲の抵抗における極端な変化(transition)が、伸びに対して抵抗のより緩やかな増加を示す、実施例9では存在しない。表2に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の10%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値の10%以内に戻った。
【0100】
本発明の実施例10
実施例9のフィルムに類似するフィルムが、実施例10において製造された。しかしながら、ドライ フィルム厚さは210μm〜240μmに測定された。このフィルムの%伸びに対する抵抗のふるまいは、実施例9のより薄いフィルム(すなわち、90μm)のふるまいに類似した。表2に示されるように、平均して、無負荷の抵抗は、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、50%の伸びの後、負荷がかけられた抵抗の15%以内に戻った。加えて、無負荷の抵抗は、該サイクルの回復部分の後、初期の抵抗値の15%以内に、また0%〜10%の伸び範囲において予期される抵抗値以内に戻った。
【0101】
本発明の実施例11
実施例1のフィルムに類似するフィルムが、実施例11において製造された。しかしながら、Lycra(登録商標)に対するZelec(登録商標)の1:1(wt/wt)の異なる比が、実施例11において用いられた。このフィルムの測定されたドライ フィルム厚さは60μmであった。100%の伸びに至るまでの第1の負荷サイクルについてのこのフィルムの%伸びに対する抵抗のふるまいが表3に示される。表3に示されるように、0%の伸びでの初期の抵抗は、より低いZelec(登録商標)濃度での実施例1及び3のフィルムの抵抗よりも著しく低い、220kΩであった。このフィルムは、40%〜70%の伸び範囲の抵抗において急激な増加を示した。
【0102】
本発明の実施例12
実施例11のフィルムに類似するフィルムが、実施例12において製造された。しかしながら、電気的伝導性粒子Zelec(登録商標)の分散は、以下のような異なるレシピを有した。:50mlのブタノン、及び15gのZelec(登録商標)パウダー。すなわち、このレシピは、Lycra(登録商標)ポリマー溶液の基本的な溶媒であるDMAc溶媒をまったく含まなかった。100%の伸びに至るまでの第1の負荷サイクルについてのこのフィルムの%伸びに対する抵抗のふるまいが表3に示される。表3に示されるように、0%の伸びでの初期の抵抗は、実施例11のフィルムの抵抗と同じ大きさである176kΩであった。しかしながら、このフィルムは、実施例11と比較して著しく低い伸び範囲の方への、抵抗の変化(transition)におけるシフトを明示する、10%〜30%の伸び範囲の抵抗において急激な増加を示した。これらの結果は、伸びに対する電気抵抗のグラフ関数を決定する際の、電気的伝導性粒子の分散とエラストマ溶液の間の溶媒の選択の重要性を明示する。同じ状態の元で、電気的伝導性粒子の分散の中へのエラストマ ポリマーの主な溶媒の混合は、ポリマー及び電気的伝導性粒子の間のより良い適合性を許し、このようにして電気的伝導性粒子間の拡張された接続ネットワークを促進する。
【0103】
本発明の実施例13
実施例12のフィルムに類似するフィルムが、実施例13において製造された。しかしながら、Lycra(登録商標)グレードは、実施例13において変えられた。選ばれたLycra(登録商標)グレードは、主として化学的性質においてタイプT-162Cと異なる、タイプT-178Cであり、タイプT-178Cはセグメント化されたポリウレタンであり、一方、タイプT-162Cはセグメント化されたポリウレタン-尿素である。100%の伸びに至るまでの第1の負荷サイクルについてのこのフィルムの%伸びに対する抵抗のふるまいが表3に示される。表3に示されるように、0%の伸びでの初期の抵抗は、実施例12のフィルムの抵抗より低い54kΩであった。しかしながら、このフィルムは、40%〜70%の伸び範囲の抵抗において急激な増加を示し、それより大きい伸びでは該フィルムは破れた。このことは、実施例12に比較して著しくより高い伸び範囲の方への抵抗変化におけるシフトを明示する。これらの結果は、伸びに対する電気抵抗のグラフ関数を決定する際の、エラストマの化学的性質の重要性を明示する。同じ状態の元で、単一のポリウレタン タイプの化学的性質は、ポリウレタン-尿素タイプの化学的性質と比較してより拡張された伸び範囲にわたる電気抵抗の変化(バリエーション)を許す。
【0104】
本発明の比較実施例1
電気的伝導性粒子Zelec(登録商標)の分散は、以下のレシピに基づいて用意された。:50mlのメタノール、5mlのDMAc及び15gのZelec(登録商標)パウダー。この分散は、ミキサーで分当たり11000回転で15分間混合された。その後、該Zelec(登録商標)分散は、100%のストレッチを保持したLycra(登録商標)ファイバーの表面上に適用された。Lycra(登録商標)はタイプT-136C、22dtexの単一(mono-)フィラメントであった。被覆後、被覆されたファイバーは、0%ストレッチに弛緩させ、180℃で15分間加熱されたオーブン内で乾燥させた。図9に見ることができるように、この場合の主な分散溶媒、メタノールの選択は、ファイバー表面上に適用されたとき、Zelec(登録商標)粒子の凝集という結果となり、凝集体はパーコレーション ネットワークを形成しない。そのような集合は、ファイバー上への該粒子の均一な分散を許さず、それゆえ、可変抵抗材料としてのこのファイバーの使用を許さない。
【0105】
本発明の実施例14
電気的伝導性粒子Zelec(登録商標)の分散は、比較実施例1におけるように用意され、Lycra(登録商標)ファイバーの表面上に適用された。しかしながら、それは以下のレシピに基づいた。:50mlの2-ブタノン、5mlのDMAc及び15gのZelec(登録商標)パウダー。図10に見ることができるように、この方法は、ファイバー表面上へ適用されたようなZelec(登録商標)粒子の実質的に均一な分散を生じさせ、該分散は比較実施例1と比較して著しくより均一である。表3に見ることができるように、このファイバーは伸びを伴う電気抵抗の再現可能な変化を生じさせ、それゆえ、可変抵抗ファイバーとして用いることができる。比較実施例1と実施例14との間の主な分散溶媒の相違が、電気的伝導性粒子間のパーコレーション ネットワークの創造に導くことができ、それはファイバー表面上に作られ、それゆえ、可変抵抗材料としてのエラストマ ファイバーの適用における著しい進歩に導くことが理解されることができる。
【0106】
本発明の実施例15
電気的伝導性粒子Zelec(登録商標)の分散は、実施例14におけるように用意され、Lycra(登録商標)ファイバーの表面上に適用された。しかしながら、それはLycra(登録商標)ファイバーがストレッチされない状態(すなわち、0%ストレッチ)における間適用された。図11に見ることができるように、この方法は、ファイバー表面上へのZelec(登録商標)粒子の集合体を生じさせ、実施例14に比較したとき均一でない表面を作る。固体表面上への電気的伝導性粒子の分散の適用方法の相違は、均一な被覆された表面及びパーコレーション ネットワークの創造においてかなりの重要性を有することが理解されることができる。表3から見ることができるように、観察されたふるまいは、増加された初期抵抗、及び実施例14に比較して低い伸び範囲(10%〜20%の伸び)における電気抵抗の非常に急激な増加に導く。
【0107】
本発明の実施例16
本発明の実施例9のフィルムは、LCRメーター タイプEscort ELC-131Dを用いて測定した。電極間の初期の間隔は1cmにセットされ、この間隔は印加されたストレッチに比例して増加した。表4に示されるように、このフィルムへの電極の接続は、120Hzの低い周波数範囲で驚くほど高いインダクタンスを示した。該フィルムのインダクタンス値がストレッチによって著しく変化し、また実際、増加するストレッチによって増加することもまた非常に驚くべきことである。特に、120Hzでの100%伸びに対するインダクタンスの変化は、初期のインダクタンス値の200倍を越える数値を出す。1kHzの増加した周波数でのインダクタンスは著しく低減されるが、しかしながらそれでもそれはストレッチによるかなりの増加を示す。これらの結果は、上で論じたように可変抵抗のふるまいと同時に可変インダクタンス材料としての、この発明の電気的伝導性弾性体的構造の適用可能性を明示する。
【0108】
本発明の実施例17
本発明の実施例10のフィルムは、該発明の実施例16で適用された方法と同様に、LCRメーター タイプEscort ELC-131Dを用いて測定した。本発明の表4に示されるように、このフィルムは、実施例16でなされた観察による、驚くほど高いインダクタンス及び可変インダクタンスのふるまいを示した。実施例16と17のフィルムを比較することによって、主な相違は、フィルムの厚さにある。表4から、大きな厚さを有する実施例17のフィルムは、実施例16のより薄いフィルムに比較して同じ伸び範囲に対して、概して低いインダクタンス及びインダクタンスのより小さい変化を示すことが観察される。インダクタンスに関する同様な観察は、表2に示されるように、これらの2フィルム間の可変抵抗のふるまいについて、以前になされた。
【0109】
本発明の実施例18
本発明の実施例5のフィルムは、該発明の実施例16で適用された方法と同様に、LCRメーター タイプEscort ELC-131Dを用いて測定した。本発明の表4に示されるように、このフィルムは、実施例16と17でなされた観察による、驚くほど高いインダクタンス及び可変インダクタンスのふるまいを示した。実施例16と18を比較することによって、実施例18は、著しく高いインダクタンス値を明示することが観察される。このフィルムはまた、実施例18のフィルムに比較して、伸びに対する抵抗の急激な増加を明示したことが上で論じられた。
【0110】
本発明の実施例19
本発明の実施例8のフィルムは、該発明の実施例16で適用された方法と同様に、LCRメーター タイプEscort ELC-131Dを用いて測定した。本発明の表4に示されるように、このフィルムは、実施例16、17及び18でなされた観察による、驚くほど高いインダクタンス及び可変インダクタンスのふるまいを示した。しかしながら、このフィルムは、どの実施例16、17及び18と比較して、最も高いインダクタンス値を示すことが観察された。表2から、このフィルムの可変抵抗のふるまいの観察は、このフィルムが実施例16、17及び18の中で本当に最も高い電気抵抗を示す。これらの結果は、本発明の電気的伝導性弾性体的構造が、誘導的回路に接続されたとき、伸びによって変化するインドクタンスと同様に、高いインダクタンス特性を誘起することができることを示す。このことはまた、電気的伝導性弾性体的構造において、電気的伝導性粒子の分離の傾向がある印加されたストレッチによる弱いパーコレーション ネットワークと同様に、パーコレーション閾値に対する電気的伝導性粒子の濃度による弱いパーコレーション ネットワークの両方によって、該構造が、弱いパーコレーション ネットワークを示すことが確証される。検討されたすべての実施例及び周波数において、誘導的リアクタンスが電気抵抗に比較して著しく低いことが観察される。
【0111】
特有の可変抵抗性能に基づくことができる本発明の材料及び構造の可能性のある応用は、以下のことに見つけることができる。:
バイオ-モニタリングの応用(例えば手足(limb)の曲げ、呼吸、心拍数)、着用可能な医療デバイス、呼吸誘起プレチスモグラフィー(plethysmography)、スイッチ、制御(例えばオン-オフ制御、アナロク-ログ ドメイン)、身体的テラピー、センサ(例えば位置センサ、知的相互対話方式通信に使用され得る動き及びポーズ自覚センサ、安全、スポーツ、リハビリ、予防薬またはバイオ-モニタリングの応用、圧力センサ)、効果をトリガーするもの(おもちゃ、組み込まれた電子的デバイス、光、音)、フィードバック デバイス、コネクタ、相互連結。さらに、この発明の材料及び構造は、例えば呼吸誘起プレチスモグラフィーに基づく着用可能な医療デバイス、誘導的ループ検知器、可変トランス、電力、アンテナ、周波数フィルター等の可変インダクタンスに基づく応用に使用することが可能である。
【0112】
本発明の好ましい実施例の前の記述は、図示および記載を提供するが、開示された正確な形に発明を網羅的または制限する意図はない。上記教示の権利内で修正及び変形が可能であり、または該発明の実施から得ることができる。該発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの同等物によって定義される。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】50%カーボン添加の電気的伝導性エラストマのヒステリシス効果を示す、応力/伸びに対する電気抵抗のグラフの背景技術例である。
【図2】90%カーボン及び落花生油添加の電気的伝導性エラストマの低減されたヒステリシス効果を示す、応力/伸びに対する電気抵抗のグラフの背景技術例である。
【図3】本発明の電気的伝導性弾性体的構造の実施例についての%伸び(すなわち、応力印加)に対する電気抵抗のグラフである。
【図4】本発明の電気的伝導性弾性体的構造の他の実施例についての%伸びに対する電気抵抗のグラフである。
【図5】本発明の電気的伝導性弾性体的構造のさらに他の実施例についての%伸びに対する電気抵抗のグラフである。
【図6】電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明の方法の流れ図である。
【図7】電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明の他の方法の流れ図である。
【図8】電気的伝導性弾性体的構造を作る本発明のさらに他の方法の流れ図である。
【図9】比較するための実施例1に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。
【図10】実施例14に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。
【図11】実施例15に基づくZelec(登録商標)の分散体によって被覆されたLycra(登録商標)ファイバーの表面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期の電気抵抗及び、伸びにより変化する電気抵抗を有する電気的伝導性弾性体的構造であって、
エラストマ ポリマー、及び
前記エラストマ ポリマー内に分散された電気的伝導性粒子を含み、
あらかじめ決められた仕様の前記エラストマ ポリマーで、あらかじめ決められた仕様の前記電気的伝導性粒子が、あらかじめ決められた濃度で混合され、電気抵抗におけるヒステリシス効果の除去及び実質的な制限の少なくとも1つで、弾性ストレッチ及び回復特性を有する電気的伝導性弾性体的構造が提供される電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項2】
前記弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、弾性ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、初期の抵抗値と同じ及び実質的に同じの少なくとも1つで、電気抵抗を提供する、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項3】
前記弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、弾性ストレッチ及び回復の少なくとも5サイクルの後、弾性ストレッチ及び回復サイクルの間、ストレッチされない抵抗値と同じ及び実質的に同じの少なくとも1つで、電気抵抗を提供する
、請求項2記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項4】
前記弾性ストレッチ及び回復特性はさらに、初期の電気抵抗における実質的に永久的でない物理的変形及び実質的に永久的でない変化が、前記エラストマ ポリマーの弾性限界以内の伸びから生じることを提供する、請求項3記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項5】
前記あらかじめ決められた濃度が、前記エラストマ ポリマーに対する前記電気的伝導性粒子の重量比として表される、請求項4記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項6】
前記あらかじめ決められた濃度が、2:1よりも低く、前記電気的伝導性弾性体的構造が100%より大きい破断時の伸びを有する、請求項5記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項7】
電気抵抗が、前記電気的伝導性弾性体的構造の弾性限界に至るまでの伸びを伴う、少なくとも50%で、10オーダーの大きさに至るまでの範囲にわたり変化する、請求項6記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項8】
電気抵抗が、100%の伸びに至るまでの伸びを伴う、初期の電気抵抗から、少なくとも50%で、10オーダーの大きさに至るまでの範囲にわたり変化する、請求項7記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項9】
最も低い電気抵抗から最も高い電気抵抗への変化が、材料の弾性限界以内の望まれるどの伸び範囲でも生じるように、電気抵抗が、あつらえの伸びに関する関数を示す、請求項8記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項10】
初期の誘導的リアクタンス及び、伸びに伴って変化する誘導的リアクタンスをさらに有する、請求項9記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項11】
前記電気的伝導性粒子のあらかじめ決められたフォーミュラが、伝導性金属、金属合金、金属酸化物、及び塩;金属、金属酸化物及び塩でめっきされた粒子;金属、金属酸化物及び塩でめっきされたポリマーを基体とする粒子;元来伝導性のポリマー及びポリマー粒子;カーボンを基体とする伝導性材料及びナノ粒子;半導体材料;電子的分子のグループから選ばれる、請求項10記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項12】
前記電気的伝導性粒子の分散は、溶液及び前記エラストマ ポリマーの分散の少なくとも1つで混合される、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項13】
前記電気的伝導性粒子は、溶液及び前記エラストマ ポリマーの分散の少なくとも1つで混合される、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項14】
前記電気的伝導性粒子の分散は、前記エラストマ ポリマーの表面上に適用される、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項15】
前記電気的伝導性粒子は、前記エラストマ ポリマーの表面上に適用される、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項16】
前記電気的伝導性粒子は、前記エラストマ ポリマーと溶融した状態で混合される、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項17】
初期の電気抵抗及び、圧力で変化する電気抵抗を有する、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項18】
前記電気的伝導性粒子は、アンチモンをドープしたスズ酸化物からなる、請求項1記載の電気的伝導性弾性体的構造。
【請求項19】
請求項9記載の電気的伝導性弾性体的構造で形成されたファイバー、ファブリックまたはフィルム。
【請求項20】
請求項9記載の電気的伝導性弾性体的構造の被覆を有するファイバー、ファブリックまたはフィルム。
【請求項21】
溶液中でエラストマ ポリマーを溶解する、及び分散するの少なくとも1つを行い、
溶液中で電気的伝導性粒子を分散し、
高速で前記電気的伝導性粒子の分散物を混合し、
前記電気的伝導性粒子の分散物を前記エラストマ ポリマーに加えて、混合物を生成し、
前記電気的伝導性粒子及び前記エラストマ ポリマーの混合物を表面上に置き、及び
前記混合物を180℃より低い温度で乾燥して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項22】
前記混合は、毎分1000〜11000回転に及ぶ速度で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記混合物を置くのに、制御されたウェット フィルム厚さが得られるように構成されたフィルム アプリケータを用いる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記表面が、被覆紙、ミラー フィルム、及びファブリックの少なくとも1つである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記混合物を置くのは、20mil〜100milの範囲の厚さでウェット フィルムを生成することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記表面がストレッチ可能な表面である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記混合物を置くのは、少なくとも10%の伸びに前記表面をストレッチすることを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記混合物を乾燥するのは、0%の伸びに前記被覆表面を弛緩させることを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
溶媒溶液中でエラストマ ポリマーを溶解する、及び分散するの少なくとも1つを行い、
溶液中で電気的伝導性粒子を分散し、分散物を生成し、
高速で前記電気的伝導性粒子の分散物を混合し、
前記電気的伝導性粒子の分散物を溶解された前記エラストマ ポリマーに加えて、混合物を生成し、
前記電気的伝導性粒子及び溶解された前記エラストマ ポリマーの混合物をスピナレットの中へ押し込み、及び
ファイバーを180℃より低い温度で乾燥して、電気的伝導性弾性体的ファイバーを形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項30】
紡糸は、ドライ紡糸プロセスまたはウェット紡糸プロセスのいずれか一方または両方の組み合わせで行う、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記電気的伝導性粒子の分散物の混合の後、グラインディング分散を行う、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記電気的伝導性粒子の分散は、紡糸ヘッダの導入によって溶解された前記エラストマ ポリマーに加えられる、請求項29記載の方法。
【請求項33】
さらに電気的伝導性弾性体的ファイバーをボビン上に巻き、巻く前に前記ファイバーの表面上に紡糸フィニッシュが適用される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
溶液中でエラストマ ポリマーを溶解または分散し、
電気的伝導性粒子を溶解されたエラストマ ポリマーへ加えて、混合物を形成し、
前記電気的伝導性粒子及び前記エラストマ ポリマーの混合物を表面上に置き、及び
前記混合物を180℃より低い温度で乾燥して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項35】
前記混合物を置くのに、制御されたウェット フィルム厚さが得られるように構成されたフィルム アプリケータを用いる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記表面が、被覆紙、ミラー フィルム、及びファブリックの少なくとも1つである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記混合物を置くのは、20mil〜100milの範囲の厚さでウェット フィルムを生成することを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記表面がストレッチ可能な表面である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記混合物を置くのは、少なくとも10%の伸びに前記表面をストレッチすることを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記混合物を乾燥するのは、0%の伸びに前記被覆表面を弛緩させることを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
溶液中で電気的伝導性粒子を分散する、
前記電気的伝導性粒子の分散物をエラスト ポリマー表面上に置き、及び
該混合物を180℃より低い温度で乾燥して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項42】
前記電気的伝導性粒子の分散物を置くのは、物理的または化学的グラフティングを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記エラスト ポリマー表面、前記電気的伝導性粒子または両方は、該粒子と表面間の強い相互作用を生成するように、表面機能化されている、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記エラスト ポリマーは、ファイバー、ヤーン、ファブリック及びフィルムの少なくとも1つの形状となっている、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記混合物を置くのは、少なくとも10%の伸びに前記表面をストレッチすることを含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
前記混合物を乾燥するのは、0%のストレッチに前記被覆表面を弛緩させることを含む、請求項42記載の方法。
【請求項47】
前記電気的伝導性粒子をエラスト ポリマー表面上に置き、及び
該混合物を180℃より低い温度で乾燥して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項48】
前記電気的伝導性粒子の分散物を置くのは、物理的または化学的融合を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記エラスト ポリマー表面及び前記電気的伝導性粒子の少なくとも1つは、該粒子と表面間の強い相互作用を生成するように、表面機能化されている、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記エラスト ポリマーは、ファイバー、ヤーン、ファブリック及びフィルムの少なくとも1つの形状となっている、請求項47記載の方法。
【請求項51】
前記混合物を置くのは、少なくとも10%の伸びに前記表面をストレッチすることを含む、請求項47記載の方法。
【請求項52】
前記混合物を乾燥するのは、0%のストレッチに前記被覆表面を弛緩させることを含む、請求項47記載の方法。
【請求項53】
電気的伝導性粒子をエラスタマ ポリマーに加えて、混合物を生成し、
前記電気的伝導性粒子及び前記エラスタマ ポリマーの混合物を溶融させ、
溶融された前記混合物を表面上に置き、及び
前記混合物を押し出し成型して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。
【請求項54】
電気的伝導性粒子をエラスタマ ポリマーに加えて、混合物を生成し、
前記電気的伝導性粒子及び前記エラスタマ ポリマーの混合物を溶融させ、
スピナレットの中へ前記混合物を押し込んで、1本または素礼状のファイバーを形成し、及び
前記ファイバーを押し出し成型して、電気的伝導性弾性体的構造を形成する
工程を含む電気的伝導性弾性体的構造を作る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−533109(P2007−533109A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508606(P2007−508606)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/013027
【国際公開番号】WO2005/117030
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(505470889)テクストロニクス, インク. (17)
【Fターム(参考)】