説明

電気素子を製造する方法

素子50は、第1の電極51と、単分子層である又は有する自己組織化システム52と、第2の電極54とを有する。湿性化学堆積された高分子接触層53は、自己組織化システム52と第2の電極54との間に存在する。適切には、自己組織化システム52及び接触層53の両方が、空洞40内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1及び第2の電極並びに中間の自己組織化システム(self-assembled system)を有する電気素子を製造する方法、並びにこのような素子を有する電子デバイスを製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、更に、第1及び第2の電極並びに中間の自己組織化システムを持つ電気素子、並びに前記電気素子を持つ電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
自己組織化システムの第1の例は、SAMとも称される自己組織化単分子層である。このような単分子層及びこれらの作成は既知である。特に、鎖及び末端基を持つ有機化合物が、表面に付着される。これは、前記表面に対する前記末端基の結合をもたらし、前記鎖は、アレイのような形で前記表面に対して実質的に垂直に向けられる。有機化合物の一例はチオール、例えばC16−SHであり、表面の一例は金である。
【0004】
自己組織化単分子層の研究は、幾つかの応用を指摘する。第1の応用において、前記単分子層は、前記表面上にパターニングされた形で設けられる。これは、特に金である前記表面を構築するのにエッチレジストとして後で使用される。この技術は、ミクロ接触プリンティングとして既知である。他の応用は、例えば、バイオセンサの分野であり、前記単分子層は、選択的表面を保護することができるか、又はラベル若しくは測定されるべき化合物は、自己組織化単分子層として表面上に設けられる。
【0005】
更に他の応用において、前記自己組織化単分子層の限定的な厚さは、電気的な目的に対して利用される。キャパシタの容量が、前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離、したがって中間の誘電体の厚さとともに減少することは一般に知られている。前記単分子層を前記誘電体として使用することは、したがって、非常に高い容量を持つキャパシタを結果的に生じる。このようなシステムは、例えば、Reed et al, Science, 278(1997), 252から既知である。ここで、前記単分子層としてAr−Ac−Nar−Nar−Ac−Ar−Sが使用され、ここでArはフェニレン、Acはアセチレン及びNarは2−アミノ−1,6−フェニレンである。
【0006】
この応用は実際に興味深いが、適切に動作するキャパシタを製造するのに問題があることが分かる。金の底部電極と、チオール単分子層と、蒸着又はスパッタリングされた金の上部電極とを持つこのようなキャパシタを形成した後に、前記キャパシタ内に短絡回路が形成されることが分かる。換言すると、前記単分子層が遮断され、前記第1の電極が前記第2の電極に直接的に接触する領域が存在する。これは、不完全な製造の結果であることができる。代替的には、結果のキャパシタが非常に限定的な絶縁破壊電圧を持ち、これにより前記単分子層に対する電圧の印加が前記単分子層を通る近道を形成するのに十分であるということがありうる。更に、結果の単分子層は、実質的な負性微分抵抗(NDR)を持つ。印加バイアス電圧を0から2.5ボルトに増加する場合、電流密度は、第1のセクションにおいて0と1Vとの間で増加し、第2のセクションにおいて1と1.5ボルトとの間で減少し、最終的に再び増加する。これは、実際的応用を妨げる不所望な効果である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の第1の目的は、自己組織化システム上の最小の電圧差に耐えることができる適切に動作する素子を結果的に生じる、冒頭の段落で述べられた種類の電気素子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、有機材料を有する組成が、高分子接触層を形成するために前記自己組織化システム上の湿性化学堆積(wet chemical deposition)により付着され、前記第2の電極が、導電接触層上に堆積されることで達成される。
【0009】
本発明の発明者は、本発明に至るプロセスにおいて、前記キャパシタの故障が、前記第2の電極の蒸着により引き起こされることを観測した。堆積された金粒子は、前記単分子層の垂直に向けられた鎖間で拡散するのに十分に小さい。前記単分子層におけるこの拡散又は孔を形成するプロセスは、前記金粒子が前記単分子層の無極性有機鎖に適切に接着しないことで強められる。前記金粒子が前記単分子層に拡散することができることは、堆積方法、例えばスパッタリング又は蒸着の結果であると理解される。この堆積方法は、相当なエネルギを持つ粒子を提供する。したがって、前記単分子層の分子が前記分子の反対側における2つの末端基を設けられるとしても、依然として、前記金粒子は、前記鎖内に露出された末端基に沿って拡散するのに十分なエネルギを持つ。
【0010】
改良された上部電極の作成の結果として生じる問題は、この場合、前記誘電体の一部ではなく、前記電極表面上の一様性の欠如又は実質的に増加された接触抵抗のような電気的アーチファクトを前記電気素子に持ち込まない追加の接触層の使用により解決された。このような接触層は、前記単分子層に対する十分な接着を持つ必要があり、このような接触層の利用は、前記単分子層の変形を引き起こしえない。これは、前記上部電極に対する適切な接着をも持たなくてはならない。加えて、前記接触層の使用は、使用中に故障を引き起こしえず、例えば、前記キャパシタは、十分な絶縁破壊電圧を持たなくてはならない。
【0011】
この接触層は、高分子材料を有するように選択された。高分子材料は、粘弾性システムであるが、これは、前記自己組織化システムの安定性に対して問題ではない。実際に、前記接触層の高分子の運動は、前記接触層内の他の分子の存在により限定される。溶液及び他のシステムにおいて可能にされる3次元運動の代わりに、前記鎖の方向における前記高分子の1次元運動のみが存在する。この運動の処理は、理論的文献において評判として既知である。
【0012】
更に、前記接触層は、湿性化学堆積により付着される。気相から前記接触層を付着する場合、本質的に個別の分子を堆積する。これは、依然として、前記自己組織化システムへの拡散のリスクを持つ。一般に、湿性化学堆積された材料は、前記接触層の高分子である。しかしながら、多重化が、前記自己組織化システム上の有機材料の堆積後のみに行われることは、除外されない。ここで適切な処理は、EP−A615256から既知である。
【0013】
前記接触層は、更に、導電性であるように選択された。しかしながら、本質的に導電性の高分子は既知ではない。導通は、前記高分子に対するドーパントの提供から結果として生じる。これらのドーパントが、前記自己組織化システムに拡散することができ、依然として前記電気素子の絶縁破壊を引き起こすことができると思われる。しかしながら、本発明者は、導電性有機材料内のドーパントが前記材料の鎖に結合され、したがって、前記接触層を通って前記自己組織化システム内に自由に拡散することができないことを理解している。ここで、前記接触層が、前記自己組織化システム上の堆積後のみに導電性にされることを除外しないことが観測される。
【0014】
導電性の観点から、前記接触層は、適切にパターニングされる。前記接触層と前記素子内の前記第1の電極との間に直接的な接触は、これが短絡を引き起こすので、存在しないと理解される。しかしながら、これは、前記素子の外側では異なってもよく、前記接触層は、例えば、縦の相互接続の一部であってもよく、前記第1の電極に至る導体路を持つ接触面を持ちうる。
【0015】
適切には、本発明の前記自己組織化システムは、自己組織化により形成される単分子層を有する。これは、前記第1の電極に対する前記自己組織化システムの適切な接着に適切であると分かっている。しかしながら、ラングミュアブロジェット堆積のような単分子層の堆積に対する他の方法の使用は除外されない。更に、前記自己組織化システムは、以下に論じられるように、単一より多くの単分子層を有しうる。
【0016】
前記有機材料が、極性溶媒において、前記溶媒が前記自己組織化システムの有機の、一般に無極性である鎖に引きつけられないように堆積されることは高度に適切である。前記溶媒が前記鎖に引き付けられる場合、前記自己組織化システムの分子間の前記接触層の分子の拡散が可能にされ、絶縁破壊の増加されたリスクを引き起こす。適切な溶媒は、例えば、水、アルコール、蟻酸及び酢酸のような有機酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、並びにこれらの適切な混合物である。
【0017】
前記接触層は、幾つかの方法で堆積されうる。第1の実施例において、材料が前記接触層に対して選択され、これは局所的に導電性にされることができる。このような材料は、例えば、WO−A99/10939から既知であるポリアニリンである。前記接触層は、この場合、前記自己組織化システムの領域において堆積され、導電性にされる。この領域の外側において、前記材料は除去されてもよいが、これは必要ではない。
【0018】
第二に、及び最も好ましくは、前記接触層は、誘電材料の以前に作成された空洞に堆積される。適切には、前記誘電材料は、フォトレジスト材料である。これは、信頼性のある方法であることが分かった。この場合、前記単分子層が堆積される前に前記空洞が作成されることは、実際的な理由から有利である。
【0019】
第三に、前記第1の電極を持つ基板は、溝形状又は空洞形状のような3次元形状を持ちうる。溝は、ドライエッチングにより半導体基板に適切に作成されることができ、キャパシタの作成に対するこのような溝の仕様はこれ自体既知である。前記第1の電極が複数の表面上に延在する空洞は、例えば銅導体を持つ犠牲層のホイルのようなホイルの変形により作成されることができる。このようなホイル及び変形は、パッケージングの分野においてこれ自体既知である。
【0020】
前記接触層の材料は、最も好ましくは、導電性高分子、例えば、導電性が、前記高分子材料及び特にその中の導電性基に対する前記ドーパントの相互作用の結果として生じる高分子材料である。これらの材料の例は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールであり、これらは、アルコキシル基、アルキル基、及びアリール基等のような側基で置換されてもよい。代わりに、前記接触層の材料は、銀、グラファイト等で充填されたエポキシ又は他の高分子のような、導電性元素が組み込まれた材料であってもよい。これら後者の材料は、しかしながら、前記層の一様性が実質的に小さく、したがって表面積上の前記元素の一様性が減少される点で、明確により好ましくない。
【0021】
より好ましくは、前記接触層の材料は、内在するドーパントとしてポリ酸と組み合わせた導電性高分子である。この材料は、水内のポリ酸を持つ導電性高分子の組成が、懸濁又は乳濁の代わりに溶液と称されることができる範囲で、前記溶媒として水を用いて堆積されることができるという利点を持つ。
【0022】
最も好ましくは、前記導電性高分子としてポリ−(3,4−置換チオフェン)が使用される。このクラスの高分子の最も知られた例は、通常はPEDOTと称される、3,4−アルキレンジオキシ基置換を持つものである。アルキレン基は、適切には、随意に置換されたC1−C4−アルキレン基であり、好ましくは、随意にC1ないしC12−アルキル又はフェニル置換メチレン基、随意にC1ないしC12−アルキル又はフェニル置換1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基及び1,2−シクロヘキシレン基からなるグループからここで選択される。添加剤が、導電性を増加し、表面活性剤のような処理性質を増加するように追加されることができる。
【0023】
一例において、光化学開始剤が、前記導電性高分子及びポリ酸の組成に加えられる。この開始剤は、この場合、堆積後に前記材料の架橋結合を可能にするために使用される。前記架橋結合は、前記材料が、元の溶媒にこれ以上溶解されることができず、したがって他の処理ステップにおいてより多様な溶媒を使用することを可能にするという利点を持つ。更に、前記架橋結合は、前記層の導電性を増加するためにソルビトールのような多価アルコールを用いて後処理を行うことを可能にする。この処理は、WO−A01/20691から既知である。前記開始剤の他の利点は、前記自己組織化システムと前記接触層との間の結合が形成されることができることである。
【0024】
幾つかの方法が、前記接触層の堆積及び適切にはパターニングに対して使用されることができる。一例において、スピン又はウェブコーティング及び後のエッチングステップが使用される。このエッチングステップは、前記第2の電極が前記接触層のパターニングに対するエッチングマスクとして機能するように、前記第2の電極の提供後に実行されることができる。他の例に置いて、前記接触層のスピン又はウェブコーティングが使用される。この場合、後にパターニングされる。これを行う1つの方法は、前記接触層に対する組成への光化学開始剤の包含であり、所望のパターンによってこの後にこれを照射し、最も適切には非照射領域である不所望な領域を除去する。これを行う他の方法は、空洞内の前記接触層の提供及び前記空洞の外側の材料の除去である。他の例において、前記接触層のプリンティングが使用され、適切にはインクジェットプリンティングが使用される。
【0025】
前記第2の電極は、導電性材料を有することができる。材料の選択は、電子デバイスへの一体化により主に決定される。金が容易に堆積されることができる。これは、他の自己組織化単分子層の提供を可能にする。金は、更に、例えば前記電気素子が回路基板、スマートカード又はパッケージ基板の一部にされる場合に、又は前記電気素子が結合パッドの真下に提供される場合に、はんだ材料の提供を可能にする。銅及びアルミニウム並びにこれらの通常の合金は、集積回路及びディスプレイ、センサ、プリント回路基板等のような他の構成要素内の相互接続の提供に対する標準的な材料である。インジウムスズ酸化物のような導電性酸化物は透明であり、ディスプレイのような光電子アプリケーションにおいて導通材料として使用される。代わりに、導電性有機材料は、前記第2の電極に対して使用されることができるが、これらの材料の導電性は、依然として相互接続として使用するには低めである。
【0026】
前記第1の電極及び前記第1の電極に結合される前記自己組織化システムにおける化合物の材料は、十分な結合を形成するように選択される。前記第1の電極に適した材料は、金、銅、導電性酸化物、アルミニウム、ドープシリコンGaAs、他のIII−V半導体、水銀、ニッケル、プラチナ及びパラジウム等を含む。対応する前記化合物は、当業者に既知であるように、例えばWhitesides and Xia, Angewandte Chem. Int. Ed., 37, 1998, 550-575に述べられるように、選択される末端基に対して異なる。例は、チオール、イソシアネート、二硫化物、チオエーテル、チオ酸であり、これらの分子は、追加の末端基を提供されることができる。
【0027】
より好ましくは、前記自己組織化システムは、第1及び第2の官能基を備え、前記第1の官能基は、前記単分子層を形成する化合物の一部であり、自己組織化後に前記第1の電極に結合され、前記第2の官能基は、前記自己組織化システム上に露出され、前記有機接触層との結合の形成を可能にする。前記自己組織化システムと前記有機接触層との間に結合を提供することは、必要ではないことが分かっているが、前記素子の安定性及び性能に対して非常に適切である。
【0028】
この結合は、前記第2の官能基が前記有機接触層のネットワークに組み込まれる点で化学結合であることができる。これは、光化学開始剤の助けで架橋結合、及び前記接触層における結合部位をも用いて達成されることができる。適切な結合部位は、凝縮反応による結合の形成に基づく。前記第2の官能基がチオール、アルコール又は窒化物(−NH2)である場合、適切な結合部位は、例えば酸性基である。前記第2の官能基が酸である場合、前記結合部位は、適切には塩基である。
【0029】
前記結合は、好適な例として水素結合を持つ物理的結合でもありうる。例えばポリ酸を持つシステムは、水素結合を可能にする十分な基を持つ。これは、追加的に、導電性高分子としてPEDOTのようなポリ−3,4−置換チオフェンの場合でもある。
【0030】
前記第1の電極に接着する化合物が一般に単分子層であることが観測される。しかしながら、単分子層分子の混合物を使用することは除外されない。特に、前記化合物は、異なる鎖の長さを持ちうる。前記混合物は、前記混合物は、特にそうでなければ良い機械的安定性を持つことができない電気的に興味深い単分子層化合物に対して、前記自己組織化システムを安定化することができる。例は、例えば、極度に薄い単分子層を形成するオクタンチオール及びヘキサンチオールである。理解されるように、チオール官能基は、他の官能基により置換されることができ、単一の官能基を持つ化合物は、2つの官能基を持つ化合物により置換されることができる。
【0031】
適切には、前記電気素子の製造は、電子デバイスの製造における1つのステップを構成する。このような電子デバイスは、本発明により作成される複数の電気素子、並びに適切には、他のパッシブ及びアクティブ素子をも有することができる。本発明の素子は、メモリの製造を可能にするアレイに一体化されることもできる。前記電子デバイスが、集積回路である場合に、前記相互接続構造内に又は更に適切に保護層の上に本発明の前記素子を一体化することは適切と思われる。前記第1及び第2の電極が、相互接続、電極及び結合パッド等のような、他のパターンが規定される層の部分として適切に設けられると理解される。これに関する製造は、プレートレベルで適切に実行され、この後に個別のデバイスが互いから分離される。
【0032】
本発明の他の目的は、第1の電極と第2の電極との間に自己組織化システムを有する電気素子を提供することである。この目的は、高分子導電接触層が、前記自己組織化システムと前記第2の電極との間に存在することにより達成される。
【0033】
上で説明されたように、高分子接触層の使用は、信頼できる形でこのような素子の製造を可能にし、非実用的に低い絶縁破壊電圧又は短絡無しで高い容量密度を持つ素子を生じる。前記素子は、特に本発明の前記方法で得られ、前記方法を参照して論じられる考察及び実施例は、前記素子にも適用し、逆も同様である。
【0034】
前記自己組織化システムは、適切には単にアルカンチオール又はアルカンジチオールのような単一の単分子層である。明らかに、前記単分子層は、他の末端基を持ってもよく、イソシアネート、二硫化物、チオエーテル、ヒドロキシシラン、クロロシランであってもよい。この化合物は、適切には、アルカン鎖を持つ自己組織化単分子層であるが、従来技術は、代替物が利用可能であることを明らかにしている。当業者に理解されるように、アルカンは一般にC6−C20アルカンであるが、主な鎖は、アミド基、アミノ基、エステル基、エーテル基、ケト基、シリル基等のような様々な構造又は官能基を含むことができる。これらの基は、オリゴ(エチレングリコール)基(OCH2CH2)nのような鎖の主要部分を構成しうる。更に、前記アルカンは、好ましくは線形であるが、メチル又はエチル側基が存在することができる。前記アルカンは、如何なる形にも分岐又は置換されることができる。しかしながら、ほとんどの場合、非線形アルキル鎖を用いると前記単分子層のあまりよくないパッキングが得られる。例外は、水素結合官能基で変更される鎖である。これらの水素結合官能基は、個別の単分子層形成分子間の相互作用を大幅に増大することができる。これにより、前記単分子層の安定化を引き起こす。結果として生じる素子は、この場合、キャパシタである。しかしながら、これに限定されない。ここで、電流密度が前記単分子層の鎖の長さに逆指数的に依存することが観測され、すなわち、29オングストロームの鎖の長さを持つアルカンチオールに対して、約105A/m2の電流密度が0.2Vのバイアス電圧において認められ、15オングストロームの鎖の長さを持つアルカンチオールに対する電流密度は、0.2Vの同じバイアス電圧に対して108A/m2以上であった。
【0035】
第2の例において、前記自己組織化システムは、単一の単分子層だけでなく、互いに自己組織化により設けられた2つ又は対の単分子層をも有する。このように、個別の層が異なる性質を持つ二層又は多層が作成されることができる。代わりに、増加された絶縁破壊電圧を持つキャパシタを作成するのに使用されることができる。このような二層又は多層の好適なバージョンは、接合部を含むものである。これは、p型有機半導体材料が第1の単分子層に対して使用され、n型有機半導体材料が第2の単分子層に対して使用されることで可能にされることができる。前記p型材料は、例えば、オリゴチオフェンであり、前記n型材料は、例えばC60バッキーボール型材料である。オリゴチオフェン自体は、自己組織化単分子層の形成に対して適切な官能基を持たない。しかしながら、これは無極性鎖、したがって官能基を持つ無極性鎖をも備えることができる。無極性鎖を持つオリゴチオフェンの提供の適切な合成は、非事前公開出願EP05101249.0(PHNL050166)に記載されている。
【0036】
第3の例において、前記自己組織化システムは、単分子層化合物として、p型基及びn型基又は代替的に供与基及びアクセプタ基の両方を含む材料を有する。好ましくは、このような基は、アルキル(−R−)又はオルトアルキレン(−OR−,−ORO−)等のような無極性基により分離される。特定の特性を持つ分子は、WO−A2003/079400から既知であるように、より大きなネットワーク又は無極性鎖に含まれることができる。
【0037】
第4の例において、前記自己組織化システムは、ナノ材料、及び特にカーボンナノチューブ又は半導体ナノワイヤを有する。これらの材料は、光電子アプリケーションのような高度な半導体に対する興味深いオプションと見なされる。しかしながら、これらの主要な製造方法は、化学蒸着に基づくか又は半導体基板のエッチングである。これは、これらのナノ材料が別々に作成され、この後に湿性化学堆積により一体化されることができる場合に、効率的である。本発明はこれを可能にする。これに関する一例は、ナノワイヤを使用し、半導体基板からドライエッチングにより製造されることができる。前記基板から分散液への前記ナノワイヤの除去後に、これらは、前記誘導体液にアンモニア及びテトラエトキシオルトシラン又は誘導体化オルトケイ酸塩を追加することにより表面層を設けられることができる。前記誘導体化オルトケイ酸塩は、上で論じられたような反応末端基を含むことができる。代わりに、前記誘導体化オルトケイ酸塩を持つ前記ナノワイヤは、前記自己組織化システムの一部としての一体化に対して所望の反応末端基を備えるように他の反応を受けてもよい。前記ナノワイヤに対する(3−アミノプロピル)トリエトキシシランのゾルゲル反応で得られるような酸化物又は酸化物の誘導体のような官能化表面を持つナノワイヤを提供する例は、参照によりここに含まれるWO−A2004/046021からこれ自体既知である。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は、図を参照して更に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の素子の第1の実施例を断面概略図で示す。この図は正しいスケールに描かれていない。素子50は、4インチ(10cm)の直系を持つシリコンの基板10上に作成された。基板10は、SiO2の熱成長層11で不動態化された。第1の底部電極51は、クロムの1nm及び金の40nmの熱蒸発により、続いてフォトリソグラフィにより作成された。この後に、空洞40が、電気絶縁層41に規定された。ネガ型フォトレジストが、絶縁層41として使用された。1ないし100ミクロンの複数の直径を持つ空洞40が規定された。自己組織化システム52が、このように形成された空洞40内に付着された。システム42は、この実施例において、単分子層であった。異なる実施例において1,8−オクタンジチオール、1,12−ドデカンジチオール及びドデカンチオールが使用された。この後に、導電材料の組成は、高分子接触層53を形成するためにスピンコーティングされる。前記組成は、H.C. Starck A.G.により供給される‐PEDOT/PSSとも称される‐ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸の混合物を含む。2滴の表面活性剤(FSO100、DuPont)が、表面張力を減少し、したがって空洞40内のPEDOT/PSSのウェッティングを向上するために前記分散液に加えられる。上部電極54は、蒸発によりここに付着され、フォトリソグラフィによりパターニングされる。最終的に、反応性イオンエッチング(O2プラズマ、5分、9sccm、0.009mbar)が、接触層53をパターニングするのに使用される。このステップにおいて、金の上部電極54は、エッチマスクとして機能する。
【0040】
図2は、印加バイアス電圧の関数として、このように形成された電気素子(キャパシタ)の電流密度のグラフを示す。前記グラフは、1,12−ドデカンジチオールを用いる実験に基づく。このデータは、接触空洞40の大きさに対する抵抗のスケーリングを示す。この技術のロバスト性は、100ミクロンの空洞を持つ素子50における短絡の欠如から推測されることができる。0.5Vのバイアスまで輸送が測定された。前記測定は、周囲条件内の室温において実行された。
【0041】
図3は、複数の温度に対して印加されたバイアス電圧の関数として直径20ミクロンの空洞40を持つ素子50に対する電流密度のグラフを示す。前記自己組織化システムとして1,12−ドデカンジチオールが使用される。この測定は、真空で実行された。第一に、前記電流密度は、図2及び3の比較からわかるように真空において増加する。真空において得られた前記電流密度は、文献データから予測されるものと同程度である。第二に、輸送は、温度に依存しない。これは、前記輸送がトンネリングにより支配されることを明らかに示す。最終的に、周囲条件における測定が、約1Vのバイアスにおいて負性微分抵抗を時々示す。これは、水のアーチファクトでありうる。真空において、前記負性微分抵抗は消失する。
【0042】
図4は、印加バイアス電圧の関数として電流I(A)の他のグラフを示す。このグラフは、ドデカンチオール、したがってモノチオールに対する実験に基づく。構造は、トンネルダイオードとして動作すると思われる。ドデカンジチオールに基づくMIMダイオード(直径100ミクロン)の電流対印加電圧(I−V)特性は、前記印加電圧に対する前記電流の非線形の増加を示す。I−V測定に対する199ないし293Kの範囲に対する温度依存性の不在は、非共鳴トンネリングがこれらのデバイスにおける支配的な輸送機構であることを示す。
【0043】
図5aは、電流密度Jが印加電圧(V)に関連して示されるグラフを示す。測定は、直径10ないし100マイクロメートルの範囲の横寸法で異なるアルカンジチオール、例えばオクタンジチオール、デカンジチオール、ドデカンジチオール及びテトラデカンジチオールに対して示される。前記グラフは、少なくとも17のデバイスに対して平均化され、エラーバーが含まれる。前記アルカンジチオールの長さに対する前記電流密度の減少が見出される。前記アルカンジチオールの長さは、したがって、トンネル障壁の厚さの良い尺度と思われる。
【0044】
図5bは、電流密度Jが異なるバイアス電圧に対して分子長に対してプロットされるグラフを示す。印加バイアス電圧は、0.1、0.3及び0.5Vである。電流密度Jは、対数スケールでプロットされる。このデータを通る線形フィットは、前記電流密度が障壁の厚さに指数的に依存することを示す。分子長に対するこの強力な依存性は、測定された電流が実際に分子/接触面関連性質の代わりに接合部における分子に対して特有であることを確認する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の素子の第1の実施例を断面図で示す。
【図2】印加バイアス電圧の関数として、このように形成された電気素子(キャパシタ)の電流密度のグラフを示す。
【図3】複数の温度に対する印加されたバイアス電圧の関数として直径20ミクロンの空洞40を持つ素子50に対する電流密度のグラフを示す。
【図4】印加されたバイアス電圧の関数として電流密度の他のグラフを示す。
【図5a】電流密度Jが印加電圧(V)に関連して示されるグラフを示す。
【図5b】電流密度Jが異なるバイアス電圧に対して分子長に対してプロットされるグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極並びに中間の自己組織化システムを有する電気素子を製造する方法において、
基板に前記第1の電極を設けるステップと、
前記第1の電極上に前記自己組織化システムを設けるステップと、
高分子接触層を形成するように、前記自己組織化システム上の湿性化学堆積により有機材料を有する組成物を付着するステップと、
導電性の前記接触層上に前記第2の電極を堆積するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記自己組織化システムが、自己組織化により前記第1の電極上に形成される単分子層を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、極性溶媒を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
パターニングされた誘電層が、前記第1の電極が少なくとも部分的に露出されるように前記第1の電極を持つ前記基板上に設けられ、この後に、前記自己組織化システムが、前記第1の電極の露出部分に設けられ、前記高分子接触層が、前記自己組織化システム及び前記誘電層上に延在するように設けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記有機材料が導電性高分子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記導電性高分子に対するドーパントとして機能する高分子酸材料を更に有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性高分子が、ポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)であり、アルキレン基が、随意にC1ないしC12−アルキル又はフェニル置換メチレン基、随意にC1ないしC12−アルキル又はフェニル置換1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基及び1,2−シクロヘキシレン基かなるグループから選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記自己組織化システムが、第1の官能基及び第2の官能基を備え、前記第1の官能基が、前記単分子層を形成する化合物の一部であり、前記自己組織化後に前記第1の電極に結合され、前記第2の官能基が、前記自己組織化システム上で露出され、前記有機接触層との結合の形成を可能にする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
複数の電気素子を備えた電子デバイスを製造する方法において、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の素子を製造する方法を有する方法。
【請求項10】
第1の電極及び第2の電極並びに中間の自己組織化システムを有する電気素子において、高分子導電性接触層が、前記自己組織化システムと前記第2の電極との間に存在する素子。
【請求項11】
前記自己組織化システムが接合部を有する、請求項10に記載の素子。
【請求項12】
前記自己組織化システムが、カーボンナノチューブ又はナノワイヤを有する、請求項10に記載の素子。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか一項に記載の電気素子を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−503838(P2009−503838A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523511(P2008−523511)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052510
【国際公開番号】WO2007/013015
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】