説明

電気絶縁材とその製造および使用方法

【課題】所望の熱及び機械特性、特に、セルロース紙よりも高く(約110℃/230°Fを超える)、NOMEXよりも低い(約220℃/428°F未満)連続使用温度に対する所望の熱および機械特性を有する、相対的に安価な絶縁材の開発に対する絶え間ない要求がある。
【解決手段】 繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含み、約8.9MV/m(225V/mil)から約15.7MV/m(325V/mil)の範囲の空気中で測定された絶縁耐力と、約23.6MV/m(600V/mil)を超える、油中で測定された絶縁耐力と、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)の連続使用温度を有する電気絶縁材。電気絶縁材を製造する方法であって、繊維成分を含む水性スラリを作成することと、前記スラリをシートに形成することと、前記シートを、結合剤と誘電体添加物を含む飽和剤で飽和させることと、前記飽和されたシートを乾燥することとを備えることを特徴とする方法。フィブリル化アクリル繊維を含む水性スラリを作成することと、前記スラリを希釈ハイドロフォーミング法でシートに形成することと、前記シートを、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体とフッ素重合体を含む飽和剤で飽和させることと、前記シートを乾燥させることと、前記シートを導電体上の絶縁材としての使用に供することとを備えることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(開示)は、電気絶縁材とその製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁材は、絶縁体または誘電体とも呼ばれ、電流の流れを阻止する材料である。種々の絶縁材が電気機器の部品に使用され、導電体を、その中を電流を通さずに支持または分離する機能を果たす。
【0003】
歴史的には、主に2つのタイプの電気絶縁材が、変圧器またはモーターのような電気機器または装置に使用される導電体(例えば、ワイヤ)を絶縁するために使用されてきた。第1のタイプは、湿式セルロース系材料(つまり、セルロース紙)を含み、高いレベルの形成一様性のため、つまり、存在してもわずかな数のピンホールしか有さないという非常に緻密な構造に由来する良好な電気絶縁特性を有するという特徴がある。更に、セルロース紙は、導電体上で絶縁体を覆っている時の重要な特性である非常に高い縦方向の引張り強さを生み出す。しかし、セルロース紙は、低い連続使用温度という、すべての電気絶縁材の用途において使用できる能力を制限する1つの重要な性能上の弱点を有している。ここにおいて、連続使用温度とは、用途要件および稼働環境に対して材料が耐えることができる最も高い定温のことである。
【0004】
電気電子技術者協会(IEEE)C57.91の標準によれば、セルロース紙は、「自然」クラフト紙に対しては、最高95℃(203°F)まで、または「熱改良型/窒素処理」クラフト紙に対しては、最高110℃(230°F)までの連続使用温度に耐えられる絶縁媒体を必要とする用途においての使用が認められている。これを超える温度では、セルロース紙は急速に質を落とし、絶縁材をより頻繁に交換することになる。
【0005】
電気絶縁材の第2のタイプは合成繊維から製造され、220℃(428°F)を超える連続使用温度を絶縁材が有することを要求する電気的用途において典型的に使用されている。このタイプの電気絶縁材の商品例としてはNOMEXがあり、これはデュポン社から入手可能な芳香族ナイロンであると考えられているメタアラミド繊維である。NOMEXは、220℃(428°F)を超える連続使用温度に耐えられるが、その供給は通常は限られており、セルロース紙よりも相当に高価である。
【0006】
従って、所望の熱及び機械特性、特に、セルロース紙よりも高く(約110℃/230°Fを超える)、NOMEXよりも低い(約220℃/428°F未満)連続使用温度に対する所望の熱および機械特性を有する、相対的に安価な絶縁材の開発に対する絶え間ない要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて開示されるのは、繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含む電気絶縁材である。更にここにおいて開示されるのは、繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含む不織布の電気絶縁シートまたはテープである。更にここにおいて開示されるのは、繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含み、約8.9MV/m(225V/mil)から約12.8MV/m(325V/mil)の範囲の空気中測定での絶縁耐力と、約9.4MV/m(240V/mil)から約27.6MV/m(700V/mil)の範囲の油中測定での絶縁耐力と、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)の連続使用温度を有する電気絶縁材である。繊維成分は、アクリル繊維、合成繊維、合成パルプ、リオセル繊維、メタアラミド、パラアラミド、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリ(ブチレンテレフタレート)繊維、ポリ(エチレンテレフタレート)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、グラスファイバー繊維、粘土繊維、またはそれらの組み合わせを含むことができる。繊維成分は、約0.25mmから約12.5mmの範囲の長さと、約500から約250,000のアスペクト比を有することができる。繊維は、フィブリル化でき、例えば、ナノフィブリル化できる。絶縁体は、絶縁体の総重量に対して、約50から約95重量パーセントの、または約65から約90重量パーセントの、または約75から約85重量パーセントの繊維成分を含むことができる。結合剤要素は、乳化重合体スチレンアクリレート、スチレンブタジエン、アクリル、酢酸ビニル、アクリロニトリル樹脂、ウレタン、エポキシ、尿素フォルムアルデヒド、メラミンフォルムアルデヒド、溶液重合体、酸性化アクリル、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせを含むことができる。結合剤要素は、機能性ポリマーを含んでよい。結合剤要素は、例えば、約1×10g/moleから約1×107g/moleの分子量を有するカルボキシル化重合体を含むことができる。結合剤要素は、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体を含むことができる。絶縁体は、絶縁体の総重量に対して、約3から約40重量パーセントの、または、約5から約25重量パーセントの、または約10から約20重量パーセントの結合剤要素を含むことができる。誘電体添加物は、フッ素重合体、ネオプレーン、ベークライト、シリコーン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。フッ素重合体は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEE)、ペルフルオロアルコキシ重合体(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FAP)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。誘電体添加物は、約40MV/m(1,016V/mil)から約80MV/m(2,032V/mil)の絶縁耐力を有することができる。誘電添加物は、約50nmから約500nm、または約200から約300nmの範囲の粒径と、約7.85um2から約785um2の範囲の表面積を有することができる。絶縁体は、絶縁体の総重量に対して、約1から約30重量パーセント、または約2から約20重量パーセント、または、約3から約10重量パーセントの誘電体添加物を有することができる。
【0008】
ここにおいて開示されるのは、繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含む電気絶縁材から形成されるシートまたはテープである。シートは、約0.0015インチ(0.0381mm)から約0.0150インチ(0.381mm)の7.3psi(0.51kg/cm2)の厚さ、約15lbs/2,880ft2(25.4g/m2)から約80lbs/2,880ft2(135.6g/m2)の重量、約10lbs/インチ(4.5kg/25.4mm)幅から約100lbs/インチ(45.4kg/25.4mm)幅の縦方向(MD)の引張り強さ、空気中測定での約225V/mil(8.9MV/m) から約325V/mil(12.8MV/m)の絶縁耐力、鉱油中測定での約240V/mil(9.4MV/m)から約700V/mil(27.6MV/m)の絶縁耐力、約20%から約40%の縦方向の伸び値、約20%から約40%の横方向の伸び値、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)の連続使用温度、約100%から約150%の鉱油吸収率、またはそれらの組み合わせを有することができる。更にここにおいて開示されるのは、シートまたはテープで包まれた導電体を含む絶縁導体である。導電体は、電気絶縁材で包まれた電線、電線管、バッテリ部品、電気モーター内部部品、磁気ワイヤ、または、変圧器内部部品を含むことができる。
【0009】
ここにおいて開示されるのは、電気絶縁体材を製造する方法であって、繊維成分を含む水性スラリを作成することと、スラリをシートに形成することと、シートを結合剤と誘電体添加物を含む飽和剤で飽和させることと、飽和されたシートを乾燥させることを備える。更に開示されるのは、そのような処理による、例えば、電気絶縁材のような製品である。一実施の形態においては、繊維成分はフィブリル化アクリル繊維であって、スラリの中に、約0.1(w/w)%から約3.0(w/w)%の量だけ存在し、結合剤要素は、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体であって、飽和剤の中に、約10(w/w)%から約20(w/w)%の量だけ存在し、誘電体添加物は、フッ素重合体分散剤であり、飽和剤の中に、約1(w/w)%から約10(w/w)%の量だけ存在している。誘電体添加物を結合剤要素の中で分散して飽和剤を形成できる。飽和剤は更に、約0.05(w/w)%から約2.00(w/w)%の量の湿潤剤を含むことができる。本方法は更に、繊維をシート内で一軸的または二軸的に配向することを備えることができる。本方法は更に、シートをクレープ加工、例えば、湿式または乾式クレープ加工してクレープ加工シートを形成することを備えることができる。本方法は更に、シートをクレープ加工および/またはカレンダー加工することを備えることができる。クレープ加工シートは、約30%から約50%の縦方向の伸び値、約30%から約50%の交差方向の伸び値、より短く、より小さな径のアクリル繊維に対しては約140%から約250%の鉱油吸収量、クレープ加工されていない類似のシートと比較して、約30%から約40%多い鉱油吸収量、空気中測定での約280V/mil(11.0MV/m)から約380V/mil(15.0MV/m)の絶縁耐力、鉱油中測定での約300V/mil(11.8MV/m)から約800V/mil(31.4MV/m)の絶縁耐力、またはそれらの組み合わせを有することができる。
【0010】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維を含む水性スラリを作成することと、希釈ハイドロフォーミング法でスラリをシートに形成することと、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体とフッ素重合体を含む飽和剤でスラリを飽和させることと、シートを乾燥させることと、シートを導電体上の絶縁材としての使用に供することとを備える方法である。導電体は油入り変圧器内に格納でき、油の温度は、約100℃(212°F)から約220℃(428°F)である。本方法は更に、シートをクレープ加工することを備えることができる。本方法は更に、シートをクレープ加工および/またはカレンダー加工することを備えることができる。
【0011】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含む電気絶縁シートまたはテープを得ることと、導電体の少なくとも一部を、シートまたはテープで覆うことと、導電体を、油入り変圧器における使用に供することとを備える方法であり、油の温度は、約100℃(212°F)から約220℃(428°F)である。電気絶縁材は、空気中測定での約8.9MV/m(225V/mil)から約12.8MV/m(325V/mil)の範囲の絶縁耐力と、油中測定での約9.4MV/m(240V/mil)から約27.6MV/m(700V/mil)の範囲の絶縁耐力を有することができる。電気絶縁材は、空気中測定での約8.9MV/m(225V/mil)から約12.8MV/m(325V/mil)の範囲の絶縁耐力と、油中測定での約23.6MV/m(600V/mil)を超える範囲の絶縁耐力を有することができる。
【0012】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維を含むスラリを作成することと、希釈ハイドロフォーミング法でスラリをシートに形成することと、シートをカルボキシル化スチレンアクリレート共重合体とフッ素重合体を含む飽和剤で飽和することと、シートを乾燥させることと、シートをラップまたはテープに形成することと、導電体の少なくとも一部をラップまたはテープで覆うことと、導電体の少なくとも一部を鉱油に接触させることとを備える方法である。
【0013】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート重合体と、フッ素重合体を含むスラリを作成することと、スラリをシートまたはテープに形成することと、導電体の少なくとも一部をシートまたはテープで覆うことと、導電体の少なくとも一部を油に接触させることとを備える方法である。鉱油は、約100℃から約220℃の温度であり、例えば、鉱油は変圧器内に格納できる。
【0014】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含む電気絶縁シートまたはテープを得ることと、導電体の少なくとも一部をシートまたはテープで覆うことと、導電体を油入り変圧器における使用に供することとを備える方法である。
【0015】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維を含むスラリを作成することと、希釈ハイドロフォーミング法でスラリをシートに形成することと、シートをカルボキシル化スチレンアクリレート共重合体とフッ素重合体を含む飽和剤で飽和させることと、シートを乾燥させることと、シートをラップまたはテープに形成することと、シートまたはテープを、油入り変圧器において導電体上の絶縁材としての使用に供することとを備える方法である。
【0016】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含む電気絶縁シートまたはテープを得ることと、導電体の少なくとも一部をシートまたはテープで覆うことと、導電体を変圧器ハウジングの内部に置くことと、油を変圧器ハウジング内に置いて電気絶縁シートまたはテープを接触(例えば、飽和)させることとを備える方法である。または、油は、導電体を変圧器ハウジングの内部に置くより前に、置くと同時に、および/または置いた後に変圧器ハウジングに置くことができる。導電体は、コイルまたは連続した導電体(例えば、ワイヤ)の巻き線であってよい。一実施の形態においては、電気絶縁シートまたはテープは、カレンダー加工および/またはクレープ加工(マイクロクレープ加工)されている。
【0017】
ここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含む電気絶縁シートまたはテープで包まれた変圧器内部部品を得ることと、内部部品を変圧器ハウジングの内部に置くことと、油を変圧器ハウジング内に置いて電気絶縁シートまたはテープを接触(例えば、飽和)させることとを備える方法である。または、油は、内部部品を変圧器ハウジングの内部に置くよりも前に、置くと同時に、および/または置いた後に変圧器ハウジングの中に置くことができる。内部部品は、コイルまたは連続した導電体(例えば、ワイヤ)の巻き線であってよい。一実施の形態においては、電気絶縁シートまたはテープは、カレンダー加工および/またはクレープ加工(マイクロクレープ加工)されている。
【0018】
ここにおいて開示されるのは、繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含み、空気中測定での約8.9MV/m(225V/mil)から約15.7MV/m(325V/mil)の範囲の絶縁耐力と、油中測定での約23.6MV/m(600V/mil)を超える絶縁耐力と、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)の連続使用温度を有する電気絶縁材である。シートまたはテープは、約10lbs/インチ幅(4.5kg/25.4mm)から約100lbs/インチ幅(45.4kg/25.4mm)の縦方向(MD)の引張り強さを有することができる。シートまたはテープは、約20%から約40%の縦方向の伸び値と、約20%から約40%の横方向の伸び値とを有することができる。
【0019】
更にここにおいて開示されるのは、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含むシートを形成することと、シートをクレープ加工および/またはホットカレンダー加工することと、シートを導電体上で絶縁材としての使用に供することとを備える方法である。
【0020】
上記は、下記に続く本発明の詳細な記述をより良く理解できるようにするために、本発明の特徴および技術的利点の概要をおおまかに説明した。本発明の追加的な特徴と利点は以下に開示され、それらが本発明の請求項の主題を形成する。この技術に精通した者にとっては、開示される概念と具体的な実施の形態は、本発明と同様な目的を実施するために他の構造を修正または設計する基盤として容易に利用できるということは当然のことである。また、この技術に精通した者にとっては、そのような等価な構成は、付随する請求項で記載される本発明の精神および範囲から逸脱していないということも当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここにおいて開示される実施の形態の詳細な説明のために、付随する図面についてここで述べる。
【0022】
【図1】図1はシート製造工程のフロー図である。
【0023】
【図2】図2は、本開示に係るクレープ加工されていない(つまりフラット)シート材料と、クレープ加工されたシート材料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特定のシステム構成要素に言及するために、下記の説明および請求項を通して、特定の用語が使用される。この技術に精通している者は理解するように、会社によって、ある構成要素に対して異なる名称を使用することもある。この文書は、名称は異なるが機能は同じである構成要素同士を区別することを意図していない。
【0025】
下記の検討において、および請求項において、「含む」(including)および「備える」(comprising)という用語は、非限定的に使用され、従って、「・・・を含むが、・・・に限定されてはいない」ことを意味すると解釈されるべきである。
【0026】
ここにおいて開示されるのは、電気絶縁材(EIM)とその製造および使用方法である。一実施の形態においては、EIMは、繊維成分と、誘電体添加物と、結合剤要素を含む。他の実施の形態においては、EIMは、繊維成分と、誘電体添加物と、結合剤要素と、湿潤剤を含む。一実施の形態においては、ここにおいて開示されるEIMは、電気絶縁シート(EIS)のようなシートに形成され、導電体をくるんで絶縁導電体(IEC)を形成するために使用できる。そのようなEIM、EIS、IECおよびそれらの製造と使用方法が、ここにおいて詳述される。
【0027】
一実施の形態においては、本開示のEIMは、従来の紙製造工程を介して、不織EISに形成される。任意の適切な紙/シート製造工程または方法が考えられ、従って、これらも本開示の範囲に含まれる。適切な紙/シート製造工程は一般的には、主要繊維成分を含むシート製造スラリ(SMS)を作成することと、SMSをシートに形成または成型することと、シートをシート結合剤スラリ(SBS)で飽和させることと、シートを乾燥させることとを備えることができる。一般的には、SMSは主要繊維成分を水に懸濁させてスラリを形成することにより形成される。SMSはワイヤまたはスクリーンに置かれ、真空成型されてマットを形成する。新しく形成されたマットは、結合剤要素と誘電体添加物を含むSBSで飽和される(真空または非真空で)。その後マットは乾燥されて形状持続形になり、不織紙シートを作り出す。
【0028】
例えば、EISは、Glens Falls Interweb, Inc.から入手できる、従来のDELTAFORMER希釈ハイドロフォーマー装置(例えば、傾斜ワイヤフォーマー)を使用して製造できる。図1を参照すると、DELTAFORMER装置10は、入口ヘッダーと乱流生成器を装備することができる典型的なヘッドボックス12を有して示されている。固体/液体比は、ヘッダー内で例えば、約0.5から約1.0wt%の固体と残部の液体(例えば、水)のように設定できる。SMS(完成紙料または原料スラリと呼ばれることもある)は、入口ヘッダーを介してヘッドボックス12に供給され、自由噴流14として、形成ワイヤ18とポンドレギュレータのリップ部の間に形成された空間であるスライス開口部16からヘッドボックスの外に出る。ポンドレギュレータは、スライス開口部16とヒール開口部20の機械的調整を行い、ヘッドボックスを出るスラリの速度が、形成ワイヤ18の速度に整合できるようにする。従って、自由噴流14が当たる角度と衝突点は、工程および幾何学形状によって異なるようにできる。繊維が形成ワイヤ18上に堆積されると、水は、例えば、自由排水路、真空形成ボックス22、および/または真空箔24を介して除去される。形成された不織繊維のシート26は形成ワイヤから離され、連続ウェブまたはシートとして回収される。
【0029】
新しく形成された繊維ウェブは、更なる脱水、飽和結合、乾燥、巻回および/または所望の製品形状への変換のような更なる任意の適切な方法により処理される。一実施の形態においては、飽和結合は、塗布器30を使用してSBSをウェブに塗布することにより行われる。一実施の形態においては、塗布器は、Glens Falls Interweb, Inc.から入手可能な微細流塗布器34である。入ってくるウェブ26は、ホールドダウンボックス(hold down box)32により定位置に保持され(例えば、真空を介して)、微細流塗布器34を通過する(例えば、図示のように左から右へ)。SBSは、入力36を介して微細流塗布器34に供給することができ、SBSは堰を超えて流れて、流れるカーテン/壁としてシートに塗布される。代替の実施の形態においては、SBSは、噴霧器のような代替の塗布器を使用してシートに塗布することができる。余分な結合剤は、塗布器ボックス38(例えば、結合剤をウェブを通して引きつけ、余分な結合剤を除去する真空ボックス)および/または、重力および/または真空の支援により余分な結合剤を除去できる結合剤制御ボックス40を介して除去される。一実施の形態においては、結合剤飽和シートは、1つまたは2つ以上の対流式オーブン42および/または1つまたは2つ以上の乾燥缶44において乾燥され、この乾燥は、EIM成分の質をそれほど下げることのない任意の温度で行うことができる。乾燥温度は、約121℃(250°F)から約232℃(450°F)、または約138℃(280°F)から約216℃(420°F)、または約154℃(310°F)から約199℃(390°F)の範囲であってよい。乾燥後は、シートはロール46に巻かれ、所望であれば更に処理、または格納できる。
【0030】
一実施の形態においては、商業的数量のEISを、DELTAFORMER機上で製造できる。このDELTAFORMER機は、繊維ウェブを製造し、結合剤をカーテン壁飽和器を介してウエブ繊維に塗布し、乾燥および硬化のために対流式オーブンと乾燥缶の組み合わせを用いる。または、EISは、Glens Falls Interweb, Inc.,から入手可能なROTOFORMER機およびROTOFORMER 2000機(例えば、真空シリンダー形成器)、Fourdrinier機、二重ワイヤ形成器、ハチェット機械、湿式板紙製造機のような、多様な結合剤デリバリシステム、例えば、ビーターアド(叩解機)、スプレー、コーター/カーテンなどを伴う、他のタイプの紙製造機で製造できる。
【0031】
一実施の形態においては、EISはシートをカレンダー加工することで更に処理される。EISのカレンダー加工は、シートを滑らかにする、つやを出す、および/または薄くする働きがある。カレンダー加工は例えば、シート26を、乾燥器の下流、例えば、乾燥缶44とロール46に位置している1つまたは2つ以上のカレンダー加工ローラー対を通すことにより、図1のシート製造工程の一部としてオンラインで行うことができる。そのような実施の形態においては、ロール46はカレンダー加工されたシート材から成ることになる。代替の実施の形態においては、ロール46は、カレンダー加工されていないシートから成り、このシートはその後、巻いた状態から解かれて、例えば、絶縁導電体製造業者のようなエンドユーザーにより採用されるスリッティング(細長く切断すること)および/またはラッピング(包み込み)処理の前に、オフラインでカレンダー加工される。カレンダー加工は、クレープ加工と組み合わせて行うこともでき、例えば、カレンダー加工の後にクレープ加工、またはその逆の順序のいずれでも行うことができる。カレンダー加工は、任意の適切な工程または機器により行うことができ、例えば、シートを滑らかにする、つやを出す、および/または薄くするために複数のローラーまたはプレートの間を通すことにより行うことができる。1つまたは2つ以上のローラーまたはプレートを熱して、シートをホットカレンダー加工することができる。一実施の形態においては、シートは感熱または熱活性化結合剤を含むことができ、シートはオンラインでホットカレンダー加工され、結合剤のセッティング(硬化)を更に補助する。そのような実施の形態においては、カレンダー加工ロールは、ここにおいて記載した材料と適合性のある任意の条件下で用いることができ、ここにおいて記載した特性を有する材料を製造することができる。例えば、ここにおいて記載した材料のカレンダー加工は、約200°F、または約250°F、または約270°Fを超える温度で、約1,000psiの圧力下で機能するカレンダー加工ロールを用いて行うことができる。カレンダー加工ロールの温度は、任意の適切な方法で調整できる。例えば、カレンダー加工ロールは、前述した温度まで電気的に熱することができる油を含むことができる。一実施の形態においては、カレンダー加工により、カレンダー加工されていないEISと比較して、EISの1つまたは2つ以上の特性(例えば、絶縁耐力、厚さ、伸び、複雑な形状または幾何学形状への適合性など)が改良される。この技術において通常の技量を有する者であれば理解されるように、シートのカレンダー加工によりシートの幅を増大できる。例えば、カレンダー加工の前に約18インチの幅を有していたシートは、カレンダー加工の後では、約22インチを超えない幅を有することができる。この技術において通常の技量を有する者は、カレンダー加工処理の1つまたは2つ以上の条件を調整して、1つまたは2つ以上の、ユーザおよび/または工程により所望される必要性に合致する幅を有する材料を得ることができる。
【0032】
一実施の形態においては、EIMは繊維成分を含む。繊維成分により、不織性かつ繊維性のウェブまたは結果としてのシートの母材を形成する、広い表面積のバルク材がもたらされる。この機能を果たすことができ、他のEIM成分との適合性があるいかなる繊維も本開示における使用に適する。
【0033】
一実施の形態においては、繊維成分は誘電体(例えば、非導体物質)である。例えば、繊維成分は、約1MV/m(25V/mil)から約60MV/m(1,524V/mil)、または約5MV/m(127V/mil)から約40MV/m(1,016V/mil)、または約10MV/m(254V/mil)から約30MV/m(762V/mil)の絶縁耐力を有することができる。ここにおいて、絶縁耐力とは、材料が破壊することなく本質的に耐えられる最大電界強度のことである。
【0034】
実施の形態において、繊維成分は、約1から約7、または約2から約6、または約2.5から約3.5の範囲の誘電率(比誘電率、比静電誘電率、静電誘電率、または静電比誘電率としても知られている)を有する。ここにおいて、誘電率とは、材料が静電気線束を一個所に集中する程度の尺度のことである。誘電率は、電位が加えられたときに蓄えられた電気エネルギー量の、真空の誘電率に対する比である。
【0035】
繊維成分は更に、約0.25mm(0.0098in)から約12.5mm(0.492in)、または約1mm(0.0394in)から約10mm(0.394in)、または約3mm(0.118in)から約6mm(0.236in)の範囲の長さと、約500から約250,000、または約2,500から約65,000、または約10,000から約30,000の範囲のアスペクト比を特徴とすることができる。
【0036】
一実施の形態においては、繊維成分はフィブリル化されている。または繊維は、ナノフィブリル化されている。ここにおいて、フィブリル化とは、表面の欠陥がより少なく、より細い繊維径、従って、結果としてより強い繊維を生み出す叩解(beating)の間に、化学パルプ繊維の壁に構造的変化を生み出す工程のことである。ここにおいて、ナノフィブリル化繊維とは、50nmから500nmの範囲のファイバ径の繊維のことである。フィブリル化および/またはナノフィブリル化繊維を作成する方法は、本開示による補助と恩恵により、この技術において通常の技量を有する者には理解される。フィブリル化の程度は、この技術において通常の技量を有する者には知られている、任意の適切な方法を使用して定量化できる。この方法には、例えば、走査電子顕微鏡法またはBETN2ガス吸収による表面積測定がある。
【0037】
本開示における使用に適する繊維の非限定的な例としては、アクリル繊維、合成繊維、合成パルプ、リオセル繊維、メタアラミド、パラアラミド、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリ(ブチレンテレフタレート)繊維、ポリ(エチレンテレフタレート)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、グラスファイバー繊維、粘土繊維、またはそれらの組み合わせがある。本開示における使用に適する繊維の追加例としては、それに限定されることはないが、市場でEftecから入手可能なナノフィブリル化アクリル繊維であるアクリル繊維A010シリーズがある。
【0038】
一実施の形態においては、繊維成分はSMS中に、約0.1weight/weight%(w/w%)から約3w/w%、または約0.5w/w%から約2.0w/w%、または約0.75w/w%から約1.25w/w%の量だけ存在している。繊維成分はEIS中に、シートの総乾燥重量に対して、約30重量パーセント(wt.%)から約90wt.%、または約50wt.%から約70wt.%、または約55wt.%から約65wt.%の量だけ存在できる。
【0039】
一実施の形態においては、EIMは誘電体添加物を含む。誘電体添加物は、繊維成分単独の場合に付与されるよりも大きな電気絶縁性能をEISに提供する機能を果たす。この機能を果たすことができ、他のEIM成分と適合性があるいかなる誘電材料も、本開示における使用に適する。
【0040】
一実施の形態においては、誘電体添加物は約7.85um2から約785um2、または約31um2から約503um2、または約126um2から約283um2の表面積を特徴とすることができる。更に、誘電体添加物は約40MV/m(1,016V/mil)から約80MV/m(2,032V/mil)、または約50MV/m(1,270V/mil)から約70MV/m(1,778V/mil)、または約55MV/m(1,397V/mil)から約65MV/m(1,651V/mil)の絶縁耐力と、約1.75から約2.25、または約1.80から約2.20、または約1.85から約2.15の範囲の誘電率を特徴とすることができる。
【0041】
誘電体添加物は約50nmから約500nm、または約100nmから約400nm、または約200nmから約300nmの範囲の数平均粒径分布を有することができる。
【0042】
一実施の形態においては、誘電体添加物はフッ素重合体、ネオプレーン、ベークライト、シリコーン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。一実施の形態においては、誘電体添加物は、フッ素重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシ重合体(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、またはそれらの組み合わせを含む。一実施の形態においては、誘電体添加物は接着促進剤と共に水に分散されたPTFEを含む。本開示における使用に適している誘電体添加物の非制限的例としては、市場でLaurel Products LLCから入手可能なPTFE分散剤であるAD-10Aがある。理論により制限されることを望まければ、ここにおいて記載された、高表面積のPTFEウィスカーを含むタイプの誘電体添加物を使用することにより、EISの電気絶縁特性を強化することができる。更に、PTFEにおけるフッ素族はEISを難燃材にし、この特徴は、開示された材料(つまり、EIMとEIS)を、電気絶縁材の用途に都合良く利用できるようにする別の特徴である。
【0043】
誘電体添加物はSBS中に、約1w/w%から約10w/w%、または約3w/w%から約7w/w%、または約4w/w%から約6w/w%の量で存在することができる。いくつかの実施の形態においては、誘電体添加物はEIS中に、シートの総乾燥重量に対して、約1wt.%から約30wt.%、または約2wt.%から約20wt.%、または約3wt.%から約10wt.%の量で存在している。
【0044】
一実施の形態においては、EIMは結合剤要素を含む。理論により制限されることを望まなければ、結合剤要素は、繊維成分による基本シートの形成を促進でき、繊維成分と誘電体添加物の相互作用を促進でき、EISにおける誘電体添加物の分散を促進でき、EISに追加的な引張りおよび伸び特性をもたらすことができ、EISに対して、より高い連続使用温度定格を付与でき、および/またはEISの電気絶縁特性を改良できる。結合剤要素は、前述した機能を実行でき、EIMの他の成分と適合性がある任意の材料を含むことができる。
【0045】
実施の形態において、結合剤要素は約5MV/m(127V/mil)から約45MV/m(1,143V/mil)、または約10MV/m(254V/mil)から約40MV/m(1,016V/mil)、または約20MV/m(508V/mil)から約30MV/m(762V/mil)の絶縁耐力を有している。更に、結合剤要素は約2から約4、または約2.5から約3.5、または、約2.75から約3.25の範囲の、1kHzの周波数における測定での誘電率を有することができる。他の実施の形態(例えば、他の組成配合)においては、誘電率の値は、試験されている特定の材料に対する中間領域に整合するように選択された他の周波数(例えば、高、中、低周波数)で作動する誘電体テスタを使用して測定できる。一実施の形態においては、誘電体テスタは、Cedar Grove, NJのBeckman Instruments Inc.から入手可能なBeckman Dielectric Tester Model No. PA5-252-052である。
【0046】
結合剤要素は、1×105g/moleから約1×10g/mole、または5×10g/moleから約5×10g/mole、または7.5×10g/moleから約2.5×10g/moleの分子量を有する重合体材料を含むことができる。
【0047】
一実施の形態においては、結合剤要素は、乳化重合体、樹脂、溶液重合体、またはそれらの組み合わせを含む。本開示における使用に適する結合剤要素の非制限的な例としては、スチレンアクリレート、スチレンブタジエン、アクリル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ウレタン、エポキシ、尿素フォルムアルデヒド、メラミンフォルムアルデヒド、酸性化アクリレート、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせがある。一実施の形態においては、結合剤要素は1つまたは2つ以上の官能基を含むように改質された重合体を含む。例えば、重合体は、付加的なカルボキシレートを含むように官能基化できる。
【0048】
一実施の形態においては、結合剤要素は、例えば、約1mmole/kgから約12mmole/kg、または約3mmole/kgから約10mmole/kg、または約5mmole/kgから約8mmole/kgのカルボキシ化の程度を有するカルボキシ化重合体を含む。以後、開示された範囲の電荷密度を有する重合体は、高カルボキシ化重合体と称する。カルボキシ化重合体は、カルボキシ化スチレン重合体、カルボキシ化スチレンアクリレート共重合体、高カルボキシ化スチレン重合体、高カルボキシ化スチレンアクリレート共重合体、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0049】
いくつかの実施の形態においては、結合剤要素は熱的に硬化できる水性結合剤である。あるいは、結合剤要素はカルボキシ化重合体、ポリアルコール架橋剤、および分散剤成分を含む。一実施の形態において、結合剤は市場でBASFから入手可能な高カルボキシ化スチレンアクリレート共重合体であるACRODUR 3558を含む。理論により制限されることを望まなければ、ACRODUR 3558 Resinにおける高度のカルボキシ化はまた、追加的な結合部位を提供でき、それにより、増加された量の誘電体添加物を繊維成分に接触させることが可能になる。
【0050】
一実施の形態においては、結合剤要素は約10w/w%から約20w/w%、または約12w/w%から約18w/w%、または約14w/w%から約16w/w%の量でSBS中に存在している。いくつかの実施の形態においては、結合剤要素は、シートの総乾燥重量に対して、約3wt.%から約40wt.%、または約5wt.%から約25wt.%、または約10wt.%から約20wt.%の量でEIS中に存在している。
【0051】
前記したように、EIM成分は水中で懸濁されてSMSとSBSを形成する。一実施の形態のおいては、SMSとSBSは、実用的なスラリと実用的な分散剤をそれぞれ形成するのに十分な量の水を含む。例えば、SMSおよび/またはSBSの1つまたは2つ以上の成分を水中で懸濁できる。水は真水(淡水)であってもよく、または、紙製造工程から再処理された水である加工水(mill water)であってもよい。SMS中の水は、湿潤重量を基準にして、約97%から約99.5%、または約97.5%から約99%、または約97.75%から約98.75%の量で存在できる。更に、SBS中の水は、湿潤重量を基準にして、約70%から約90%、または約73%から約87%、または約76%から約84%の量で存在できる。一実施の形態においては、水は、SMSとSBSの他のすべての成分を考慮した上で、スラリおよび分散剤の残部を構成する。
【0052】
一実施の形態においては、EIMは、1つまたは2つ以上の所望の物理的特性を付与するために必要と考えられる、1つまたは2つ以上の添加物を含む。添加物の例としては、制限されることはないが、安定剤、連鎖移動剤、抗酸化剤、紫外線遮断剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、顔料および染料、着色材などがある。
【0053】
前述した添加物は、例えば、SMSおよび/またはEISを形成するのに適切な、EIMの種々の配合を形成するために、単独で、または組み合わせて使用できる。これらの添加物は、所望の特性を付与するために有効な量だけ含むことができる。これらの添加物を、ここにおいて開示したタイプの組成物に含めるための有効な添加量および工程は、本開示の補助を得て、この技術に精通している者により決めることができる。
【0054】
一実施の形態においては、EIMは更に、1つまたは2つ以上の湿潤剤の有効な量を含む。湿潤剤は、一般的には、EISの親水性を高めるように機能できる両親媒性(amphiphilic)物質である。理論により制限されることを望まなければ、EISの親水性を高めると、油に接触したとき、例えば、油充填変圧器に浸漬されたときに、EISの劣化を減少し、また安定性を増加することができ有利である。湿潤剤により、EISは、物理的劣化および/または性能特性における劣化を同時に減少しつつ、油吸収量の増加を示すことが可能になる。湿潤剤により、EIS全体にわたって誘電体添加物のより良好な分散および均一性を確保できる。このことが、結果的に、EISの誘電絶縁値を高める。これに加えて、PTFEウィスカーの一様な散乱の結果としての、EISの熱的劣化に対する高められた抵抗性によって、マット(紙型)の物理的強度特性(つまり、引張り性、耐破断性、耐破裂性、伸び性)が向上できる。
【0055】
一実施の形態においては、湿潤剤はイオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含む。イオン界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、および双性イオン界面活性剤、例えば、ペルフルオロオクタン酸;ペルフルオロオクタンスルフォン酸;ドデシルスルフォン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、および他のアルキル硫酸塩;ラウリルエーテル硫酸ナトリウムとしても知られているラウリル硫酸ナトリウム;アルキルベンゼンスルフォン酸;臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとも称される臭化セチルトリメチルアンモニウムと他のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化セチルピリジニウム;ポリエトキシレート化獣脂アミン;塩化ベンザルコニウム(BAC);塩化ベンゼトニウム;ドデシルベタイン;コカミドプロピルベタイン;ココアンフォグリシネート;またはそれらの組み合わせを含むことができる。非イオン界面活性剤は、アルキルポリ(エチレンオキサイド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)とポリ(プロピレンオキサイド)の共重合体、アルキルポリグルコシド、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本開示における使用に適切な湿潤剤の例としては、広く市場に出回っている非イオン界面活性剤であるTRITON X-100(C14H22O(C2H4O)n)がある。
【0056】
いくつかの実施の形態においては、湿潤剤要素は、約0.05w/w%から約2w/w%、または約0.1w/w%から約1w/w%、または約0.2w/w%から約0.5w/w%の量でSBS中に存在している。
【0057】
一実施の形態においては、SMSは、ナノフィブリル化アクリル繊維を含む繊維成分と水を接触させることで形成される。SBSは、PTFE分散剤を含む誘電体添加物と、高カルボキシル化スチレンアクリレート材料を含む結合剤要素と、水を接触させることで形成できる。そのような実施の形態においては、ナノフィブリル化アクリル繊維は、SMSの総重量に基づいて、約0.5wt.%から約2wt.%の量で存在できる。SBSにおいては、PTFE分散剤は、約1wt.%から約10wt.%の量で存在でき、高カルボキシル化スチレンアクリレートは、約9wt.%から約20wt.%の量で存在でき、水は、約70wt.%から約90wt.%の量で存在でき、各成分に対する個々の量は、所与の範囲内で、組成に対して全体で100%になるように選択される。SMSとSBSは、ここにおいて前述したタイプの紙/シート製造装置に送られか、または後でより詳細に記載するように手すき紙に形成できる。結果として得られる不織EISは、材料を、電気絶縁材としての使用に適するものにする物理的および/または機械的特性を有することができる。更に、この技術において通常の技量を有する者には既知であるように、形成されたシートの更なる処理を行うことができる。一実施の形態においては、シートは、本開示のEIMを含むテープまたはラップを形成するために切断/細長く切断される。以降、本開示は、他の工程によるEISの形成も考えられるが、従来の紙製造工程で形成されるEISの特性に焦点を置く。また、「EIS」または「シート」という用語の使用は、任意の幅または厚さのシートを含み(他に規定されない限り)、また導電体の包装に使用されるテープまたはラップを形成する切断された/細長く切断されたシートも含むと理解されねばならない。同様に、「EIS」または「シート」の用語は、任意の硬さのシートを含むと理解されねばならず、従って、柔軟性のあるシートまたはより硬い、厚紙のような構造物も含む。
【0058】
一実施の形態のおいては、EISは、American Society for Testing and Materials (ASTM) D-202またはTechnical Association of the Pulp and Paper Industry (TAPPI) T-411に従った測定で、約0.0015インチ(0.0381mm)から約0.015インチ(0.381mm)、または約0.002インチ(0.0508mm)から約0.010インチ(0.254mm)、または約0.0025インチ(0.0635mm)から約0.008インチ(0.203mm)の範囲の7.3psi(0.51kg/cm2)厚さと、ASTM D-646に従った測定で、約15lbs/2,800ft2(25.4g/m2)から約80lbs/2,800ft2(135.6g/m2)、または約20lbs/2,800ft2(33.9g/m2)から約75lbs/2,800ft2(127.2g/m2)、または約25lbs/2,800ft2(42.4g/m2)から約45lbs/2,800ft2(76.3g/m2)の範囲の重量を有する。代替の実施の形態においては、厚さは0.0197から0.197in(0.5から5.0mm)の範囲である。所望される厚さにより、例えば、湿式板紙製造機のような異なるタイプの機械をEISの製造に採用できる。そのような装置は、この技術において通常の技量を有する者には知られており、本開示による補助と恩恵により選択できる。
【0059】
実施の形態においては、EISは、約0.4g/cc(25lbs/ft3)から約0.7g/cc(43.7lbs/ft3)、または約0.42g/cc(26.2lbs/ft3)から約0.65g/cc(40.6lbs/ft3)、または約0.44g/cc(27.5lbs/ft3)から約0.6g/cc(37.5lbs/ft3)の範囲の密度を有する。
【0060】
実施の形態においては、EISは、約30secs/100ccから約150secs/100cc、または約80secs/100ccから約145secs/100cc、または約90secs/100ccから約140secs/100ccの範囲の、1.125インチ(2.86cm)開口に対する空気抵抗と、約0.1%から約1%、または約0.2%から約0.8%、または約0.3%から約0.5%の範囲の水分含有量を有する。ここにおいて、空気抵抗とは、対象物を通る空気の相対運動に対向する力のことであり、TAPPI T-460、別名Gurley法に従って測定できる。ここにおいて、水分含有量とは、シート中に存在し、測定可能な水分量のことである。シート中の水分量は、周囲の条件と、製造中に加えられる水分量により変化し、例えば、熱重量分析またはTAPPI T412のような任意の適切な方法で測定できる。
【0061】
いくつかの実施の形態においては、EISは、約10lbs/インチ(4.5kg/25.4mm)から約100lbs/インチ(45.4kg/25.4mm)、または約20lbs/インチ(9.1kg/25.4mm)から約50lbs/インチ(22.7kg/25.4mm)、または約30lbs/インチ(13.6kg/25.4mm)から約40lbs/インチ(18.1kg/25.4mm)の範囲の、縦方向(MD)の引張り強さと、約10lbs/インチ(4.5kg/25.4mm)から約30lbs/インチ(13.6kg/25.4mm)、または約15lbs/インチ(6.8kg/25.4mm)から約25lbs/インチ(11.3kg/25.4mm)、または約18lbs/インチ(8.2kg/25.4mm)から約22lbs/インチ(10.0kg/25.4mm)の範囲の、交差または横方向(CDまたはTD)における引張り強さを有する。ここにおいて、引張り強さとは、縦方向の応力(張力)に対する材料の抵抗力のことであり、ASTM D-828またはTAPPI T-494に従って測定できる。
【0062】
一実施の形態においては、EISは、約25N*m/gから約310N*m/g、または約55N*m/gから約181N*m/g、または約90N*m/gから約157N*m/gの範囲のMD比引張り強さと、約48N*m/gから約138N*m/g、または約52N*m/gから約129N*m/g、または約73N*m/gから約116N*m/gの範囲のCD比引張り強さを有する。ここにおいて、比引張り強さとは、坪量当たりの引張り強さのことであり、次の方程式から計算できる:比引張り強さ=引張り強さ(N/m)/坪量(g/m2)。
【0063】
一実施の形態においては、EISは、約20%から約40%、または約25%から約35%、または約28%から約32%の範囲のMD伸び値と、約20%から約40%、または約25%から約35%、または約28%から約32%の範囲のCD伸び値を有する。ここにおいて、伸び値とは、シート中に存在し、測定可能な伸縮量のことであり、ASTM D-828またはTAPPI T-494に従って測定できる。
【0064】
一実施の形態においては、EISは、約103MN/m2(15psi)から約414MN/m2(60psi)、または約138MN/m2(20psi)から約379MN/m2(55psi)、または約172MN/m2(25psi)から約345MN/m2(50psi)の範囲の破裂強さと、約3.0MN/gから約4.5MN/g、または約3.3MN/gから約4.2MN/g、または約3.6MN/gから約3.9MN/gの範囲の比破裂強さを有する。ここにおいて、破裂強さとは、一様に分布され増加しつつある圧力が紙の一辺に加えられたとき、紙を破裂させるために必要な静水圧により測定される、破断に対する紙の抵抗力のことであり、一方、比破裂強さとは、破裂強さ(MegaNewtons/m2で表わされる)と、紙/板紙の坪量(g/m2で表わされる)との比のことである。破裂強さは、Mullen Burst Testerを使用して行うことができる、TAPPI T-403に従って測定できる。
【0065】
一実施の形態においては、EISは、約8.9MV/m(225V/mil)から約15.7MV/m(400V/mil)、または約8.9MV/m(225V/mil)から約12.8MV/m(325V/mil)、または約9.6MV/m(245V/mil)から約12MV/m(305V/mil)、または約10.2MV/m(260V/mil)から約10.6MV/m(270V/mil)の範囲の、空気中測定での絶縁耐力と、約23.6MV/m(600V/mil)を超える、または約9.4MV/m(240V/mil)から約31.4MV/m(800V/mil)、または約9.4MV/m(240V/mil)から約27.6MV/m(700V/mil)、または約10.2MV/m(260V/mil)から約23.6MV/m(600V/mil)、または約10.6MV/m(270V/mil)から約23.6MV/m(600V/mil)の範囲の、油中測定での絶縁耐力を有する。
【0066】
一実施の形態においては、EISは、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)、または約20℃(68°F)から約200℃(392°F)、または約100℃(212°F)から約180℃(356°F)の範囲の連続使用温度を有する。一実施の形態においては、EISの連続使用温度は、EISの成分、例えば、繊維成分、結合剤要素、および誘電体添加物の連続使用温度から決定され、所与の成分の最も低い連続使用温度が、一般的にEIS全体の連続使用温度として定義される。この技術に精通している者には理解されるように、連続使用温度とは、要求される作動寿命にわたり、容認できる性能(例えば、用途要件に対しての耐性)を保持できるように材料を使用できる推奨温度のことである。一実施の形態においては、連続使用温度は、Underwriters Laboratories (UL) Relative Thermal Index (RTI)標準UL 746に従って測定される。一実施の形態においては、連続使用温度は、UL 746に従って電気的RTI、衝撃を伴う機械的RTI、および/または衝撃を伴わない機械的RTIにより定義される。
【0067】
一実施の形態においては、EISは、一軸的または二軸的に配向され(例えば、シート製造工程中に)、所望の特性(例えば、強靭性、不透明性)をEISに付与する。一実施の形態においては、配向されたEISは、約10lbs/インチ(4.5kg/25.4mm)から約100lbs/インチ(45.4kg/25.4mm)、または約20lbs/インチ(9.1kg/25.4mm)から約50lbs/インチ(22.7kg/25.4mm)、または約30lbs/インチ(13.6kg/25.4mm)から約40lbs/インチ(18.1kg/25.4mm)の範囲の、縦方向(MD)における破断時の引張り強さ(降伏/破断強さとも称される)と、約10lbs/インチ(4.5kg/25.4mm)から約30lbs/インチ(13.6kg/25.4mm)、または約15lbs/インチ(6.8kg/25.4mm)から約25lbs/インチ(11.3kg/25.4mm)、または約18lbs/インチ(8.2kg/25.4mm)から約22lbs/インチ(10.0kg/25. 4mm)の範囲の、交差方向(CD)における破断時の引張り強さ(降伏/破断強さとも称される)を示す。破断時の引張り強さは、材料を破断するために必要な単位面積当たりの力であり、ASTM D-828またはTAPPI T-494に従って測定できる。
【0068】
一実施の形態においては、MDの破断時の引張伸びは、約20%から約40%、または約25%から約35%、または約28%から約32%に及び、TD(またはCD)の破断時の引張伸びは約20%から約40%、または約25%から約35%、または約28%から約32%に及ぶ。破断時の引張伸びは、材料が張力により破断する前に起こる長さにおける百分率での増加量であり、ASTM D-828またはTAPPI T-494に従って測定できる。
【0069】
一実施の形態においては、EISは、材料の孔体積に等しい鉱油吸収量を有する。そのような実施の形態においては、EISは油で飽和できる。または、EISは、それ自身の重量と等しい、またはそれを超える鉱油吸収量を示すこともできる。そのような実施の形態においては、EISは過飽和されたと言うことができる。例えば、EISは、約100%から約150%、または約110%から約140%、または約110%から約120%の範囲の、EISの予め湿潤された重量に基づく鉱油吸収量を示すことができる。任意の適切な方法を、鉱油中におけるEISの百分率吸収容量を測定するために採用できる。典型的な手順は、EISの試料を作成することと、試料の乾燥重量を記録することを採用できる。EISは、その後、所定の時間(例えば、3分間)鉱油中に浸漬され、その後、余分な油は排出または圧縮により除去される。そして試料は、重量が再び測られ、百分率吸収量が、(湿潤重量−乾燥重量)/乾燥重量×100%で計算される。
【0070】
一実施の形態においては、EISは、約0.3%から約0.6%、または約0.35%から約0.55%、または約0.4%から約0.5%の範囲の灰含有量を有する。ここにおいて灰とは、高温で紙を完全燃焼した後の残滓のことである。灰含有量は通常は、元のテスト試料の百分率として表現され、紙の中の無機物含有量を表す。
【0071】
一実施の形態においては、EISは、約0インチから約4インチ(10.16cm)、または約0インチから約2インチ(5.08cm)、または約0インチから約1インチ(2.54cm)の範囲の垂直炎飛跡長(vertical flame track)を有することもある。ここにおいて、難燃性とは、点火源(例えば、シガレットライター)がEISの縁部から取り除かれた後に、炎が飛跡する垂直距離のことであり、標準化された方法により測定できる。例えば、この方法は、テストする材料の試料を得ることを含むことができる。そして材料は、定位置に保持され、ブタンライターを使用して、炎の高さの約50%がシート上にくるようにして、試料の低縁部に炎を当てる。炎は、約2秒間、試料上の各位置に保持される。結果が観測され、そして判断される。試料は、炎が自然に消えるまえに4インチ(10.16cm)以下しか飛跡しなければ容認できるとされ、一方、炎がいずれかの位置において4インチ(10.16cm)を超えて飛跡したときに、容認できない評価が与えられる。
【0072】
一実施の形態においては、EISは、図2に示されているように、シートをクレープ加工することで更に処理される。ここにおいて、クレープ加工とは、紙のシートを機械的に柔軟にし、または皺を付けてその伸縮性および柔軟性を高める操作のことであり、更に、表面積と密度特性を増大することもでき、その結果、絶縁特性を高めることができる。
【0073】
いくつかの実施の形態においては、EISは、形成されたシートのインラインクレープ加工により更に処理される。ここにおいて、「インラインクレープ加工」は、ドラムロールやドクターブレードのようなクレープ加工構成要素を更に備える機械上で行うことができ、それによりEISは同じ工程で形成およびクレープ加工できる。例えば、再び図1を参照すると、ドラムロールやドクターブレードのようなクレープ加工構成要素は、乾燥器の下流に設置できる(例えば、乾燥缶44の下流)。EISは、湿式クレープ加工または乾燥クレープ加工を行うことができる。クレープ加工処理のタイプは、経済性、装置の入手可能性、および強度や伸縮性のようなユーザの所望する特性によって選択される。
【0074】
一実施の形態においては、EISは、湿式クレープ加工により更に処理される。ここにおいて、「湿式クレープ加工」とは、EISを再度湿潤し、再湿潤されたシートをクレープ加工ドラムまたはMG乾燥機に取り付けることである。取り付けられた再湿潤EISは、追加的なカレンダー加工および乾燥装置によりクレープ加工できる。米国特許第6,379,496、6,855,228、および4,992,140号に開示されているような、任意の適切な湿式クレープ加工が考えられ、それらの特許の記載内容をその全体にわたり本書に援用する。
【0075】
一実施の形態においては、EISは、乾式クレープ加工により更に処理される。ここにおいて、「乾式クレープ加工」とは、前述した湿式クレープ加工と類似しているが、EISは、この工程を行う前に再湿潤されない。米国特許第2,725,640、5,865,950、6,336,995、6,277,242、6,207,734、および5,944,954号に開示されているような、任意の適切な乾式クレープ加工が考えられ、それらの特許の記載内容をその全体にわたり本書に援用する。いずれの実施の形態においても、結果としての材料は、クレープ加工EISと称される。一実施の形態においては、クレープ加工は、例えば、Micrex MICROCREPERを使用するクレープ加工のような、Micrex Corporationから入手できる技術によるマイクロクレープ加工として知られている工程において行われる。
【0076】
一実施の形態においては、クレープ加工EISは、ASTM D-828またはTAPPI T-494に従った測定で、約30%から約50%、または約35%から約45%、または約37%から約43%の、縦方向における伸び値と、約30%から約50%、または約35%から約45%、または約37%から約43%の、交差方向における伸び値を有する。
【0077】
一実施の形態においては、クレープ加工EISは、EISの重量に基づいて、約140%から約250%、または約160%から約230%、または約180%から約210%の鉱油吸収量を有する。クレープ加工EISは、類似のクレープ加工されていないEISと比較して、約30%から約40%、または約32%から約38%、または約34%から約36%の吸収量の増加を示すことができる。
【0078】
一実施の形態において、クレープ加工されたEISは、ASTM D-149およびASTM D-3487に従った測定で、約260V/mil(10.2MV/m)から約400V/mil(15.7MV/m)、または280V/mil(11.0MV/m)から約380V/mil(15.0MV/m)、または約300V/mil(11.8MV/m)から約360V/mil(14.2MV/m)、または約315V/mil(12.4MV/m)から約345V/mil(13.6MV/m)の(空気中測定での)絶縁耐力を有する。
【0079】
一実施の形態においては、クレープ加工されたEISは、ASTM D-149およびASTM D-3487に従った測定で、約280V/mil(11.0MV/m)から約440V/mil(17.3MV/m)、または約300V/mil(11.8MV/m)から約420V/mil(16.5MV/m)、または約320V/mil(12.6MV/m)から約400V/mil(15.7MV/m)、または約330V/mil(13.0MV/m)から約390V/mil(15.4MV/m)の(油中測定での)絶縁耐力を有する。
【0080】
実施の形態においては、これ以降は、合わせてEISと称されるEISまたはクレープ加工EIS(いずれも、随意的にカレンダー加工されている)は、導電体を包んで、絶縁導電体(IEC)を形成するために使用される。言い換えると、EISは、導電体に対して、電気絶縁外層または包装材(ラッピング)を提供する。一実施の形態においては、EISは、本開示のEIS(例えば、テープまたはラップ)を導体の周りに螺旋状に巻き付けることにより導電体に貼り付けられる。本開示においては、任意のタイプの導電体が考えられ、例えば、銅線のような導電体がある。一実施の形態においては、本開示のEISで包まれた導電体(つまり、IEC)は、220℃未満、または約0℃から220℃、または約105℃から約220℃、または約110℃から約220℃、または約110℃以上かつ220℃未満、または110℃超かつ220℃未満、または約120℃から約200℃、または約100、105、110、115、120、125、130、135、140℃の1つの低終点から180、185、190、195、200、205、210、215、220℃の1つの高終点の範囲の連続使用温度に晒される。一実施の形態においては、導電体の連続使用温度は、油充填変圧器の要求される作動寿命を通して容認できる性能を提供するように選択される。導電体の非制限的な例としては、電線、電線管、電池部品、磁気ワイヤ、電気モーターの内部部品、変圧器の内部部品(例えば、変圧器コア、コイル、および巻き線)がある。
【0081】
一実施の形態においては、IECは油充填変圧器に用いられる。例えば、電線(銅または銅合金線)は、ここにおいて開示したようにEISで包まれてIECを形成できる。IECは更に処理されて(例えば、巻回される、またはコイル状に巻かれる)、変圧器ハウジングの中に設置できる。いくつかの実施の形態においては、変圧器は油(例えば鉱油)を充填でき、油はIECのEISラップ内にしみ込むことができる。
【0082】
一実施の形態においては、方法は、ナノフィブリル化繊維成分(例えば、アクリル繊維)を含む繊維質スラリを作成することと、スラリを真空成型してシートを形成することと、共にここにおいて前述したタイプの結合剤要素(例えば、カルボキシル化スチレン重合体)と誘電体添加物(例えば、フッ素重合体)を含む飽和剤を作成することと、真空成型シートを飽和剤で飽和することと、および飽和シートを乾燥または硬化して乾燥シートを形成することを含む。方法は更に、乾燥シートをクレープ加工することと、シートを細長く切断してテープを形成することと、導電体をテープで包んで絶縁導電体を形成することと、および絶縁導電体を油に接触させること(例えば、油充填変圧器内で)を含むことができる。
【0083】
一実施の形態においては、方法は、フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレン重合体と、フッ素重合体を含むスラリを作成することと、スラリをシートまたはテープに形成することと、導電体の少なくとも一部をシートまたはテープで覆うことと、および導電体の少なくとも一部を油に接触させることを含み、油の温度は、約100℃から約220℃であり、油は、変圧器内に格納されている。
【0084】
一実施の形態においては、方法は、ナノフィブリル化繊維成分(例えば、アクリル繊維)を含むSMSと、結合剤要素(例えば、カルボキシル化スチレン重合体)と誘電体添加物(例えば、フッ素重合体)を含む飽和剤を作成することを含み、これらのタイプはすべてここにおいて前述されている。SMSは、任意の適切なシート形成法を使用してシートを作成するために使用できる。そしてシートには、追加的処理を施すことができる。一実施の形態においては、シートはホットカレンダー加工される。または、シートはクレープ加工および/またはマイクロクレープ加工される。または、シートはホットカレンダー加工されてからクレープ加工される。または、シートはホットカレンダー加工されてからマイクロクレープ加工される。または、シートはクレープ加工されてからホットカレンダー加工される。または、シートはマイクロクレープ加工されてからホットカレンダー加工される。上述した実施の形態においては、カレンダー加工および/またはクレープ加工処理された結果としてのシートは、加工シートと称される。方法は更に、加工シートを細長く切断してテープを形成することと、導電体をテープで包んで絶縁導電体を形成することと、および絶縁導電体を油に接触させること(例えば、油充填変圧器内で)を含むことができる。
【0085】
一実施の形態においては、シートに形成された、ここにおいて開示したタイプのEISは更に、ホットカレンダー加工とマイクロクレープ加工(順序は任意)で処理される。そして加工EISは細長く切断してテープを形成することができ、そしてこのテープで導電体を包んで絶縁導電体を形成することができる。そして絶縁導電体は油と接触させることができ(例えば、油充填変圧器内で)、EIS材料は、EISの重量に基づいて、油の約100%から約150%を吸収する。そのようなEISは、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)、または約20℃(68°F)から約200℃(392°F)、または約100℃(212°F)から約180℃(356°F)の連続使用温度を有することができる。
【0086】
一実施の形態においては、ここにおいて開示されたタイプのEISは、IECの作成に有利に用いられる。本開示のEISは、上記の範囲の連続使用温度における電気絶縁材をもたらす。更に、開示されたEISの厚さで、より多くの数の絶縁ラップが、絶縁材用に割り当てられた空間の一定間隙内で作成できる。より多くの数のラップは、より多くの数の接触面および複数のラップに伴う空気空間の存在のために、より高い電気絶縁値をもたらす。加えて、ホットカレンダー加工されて、伸びの増加を示すEISは、より複雑および/または、より小さな幾何学形状を包むことを可能にする。より複雑および/または、より小さな幾何学形状を包むことができるということは、より小さな設置面積および/または、より効率的な幾何学形状を有するIECの製造を容易にし、その結果、IECの製造および運用の経済性に効果的な影響を及ぼす。
実施例
【0087】
実施の形態を一般的に記述してきたが、下記の実施例は、本発明の特定の実施の形態としてのものであり、それら特定の実施の形態の実践および利点を示すためのものである。実施例は、説明のための例であり、いかなる方法によっても明細書または請求項を制限するものではないということは理解されたい。
実施例1
【0088】
ここにおいて開示したタイプのSMSの典型的な配合を表1に示す。
【表1】

【0089】
EISの7in.×7in.(17.78cm×17.78cm)試作品を、表2の配合を使用して作成し、不織手すき紙を形成した。
【表2】

【0090】
手すき紙を下記のようにして作成した。加工水(7リットル)をステンレス鋼混合バケツに加え、20psi(1.4kg/cm2に)おいて混ぜた。A010-4アクリル繊維(9.47g)を混合バケツに加え、5分間混合した。8in.×8in.(20.32cm× 20.32cm)ステンレス鋼Noble & Wood形成ワイヤを手すき紙型中に置き、型を閉じてロックした。追加の加工水(7リットル)を、その後、手すき紙型に加えた。そして、混合バケツの内容物を手すき紙型に移し、手すき紙型の中の材料は、穴あきプランジャーで混合した(例えば、約20回突いた)。そして、手すき紙型と、ステンレス鋼形成ワイヤ上に成型された結果としてのシートを真空状態とした。第2混合物を、617mlの加工水と、300wet gのACRODUR DS 3558樹脂と、83wet gのAD-10 APTFE分散剤を2,000mlのNALGENEビーカー内で接触させて5分間混合することで作成した。そしてこの混合物をステンレス鋼飽和なべに移した。シートを手すき紙型から飽和ワイヤに移し、飽和ワイヤとシートの組み合わせを真空に晒した。そして、シートと飽和ワイヤの構成物を、ステンレス鋼飽和なべの中で、結合剤槽の上部をかすめるように通した。シート全体の長さをかすめるように通したあと、シートと飽和ワイヤの構成物を、再び真空スロットに通して、余分な結合剤を除去した。そしてシートを、シートの上部および底部にチーズクロス(目の粗い、薄地の綿布)を使用して、シートが乾燥器に付着しないように保ちながら飽和ワイヤから乾燥器に移し、220℃で5分間乾燥した。乾燥シートは7in.×7in.(17.78cm×17.78cm)に切断し整えた。このようにして作成したシートで得られた物理的特性データを表3にまとめる。
【表3】

【0091】
結果は、この方法で作成された標準セルロース系電気絶縁の度合い(grade)は、3lbs/インチ幅(1.36kg/25.4mm)に近い引張り強さを生み出したことを示している。しかし、これらのセルロース系の度合いは、紙製造機械を通すと、縦方向の引張り強さが、60から80lbs/インチ幅(27.2〜36.3kg/25.4mm)に増加した。理論により制限されることを望まなければ、引張り強さにおけるこの増加は、いくつかの要因の結果であり得る。第1に、手すき紙は引張り強さに対して方向性を持たない。手すき紙は、紙製造機械上のように、プレスおよび/または乾燥器部内に引き込まれることなく、静的な排出工程において単純に形成される。第2に、手すき紙は静的な排出工程により形成されるので、多くの繊維が、最終のシート構成においてz方向に固定される。つまり、繊維は他の繊維と重なって追加的な引張り強さを付与することができない。反対に、紙製造機械で製造された材料は、湿潤状態の繊維は紙製造機械の端に向けて引っ張られるので方向性を有し、そのため、これらの繊維のほとんどがxy平面に置かれる。つまり、これらの繊維お互いに重なって、追加的な張り強さをもたらす。最後に、セルロースおよびアクリル繊維は、典型的には、紙製造機械でインラインで精製され、増大した表面積を有するより小さな径の繊維となるので、その結果、繊維同士の重なりが多くなり、その後の結合部位が多くなる。従って、機械で製造されたEISは、手作業で製造されたEISよりも高い引張り強さを示すことができる。
実施例2
【0092】
ここにおいて開示したタイプのEIMの電気絶縁特性を調べた。試料1−18と指定した18の試料を表4の配合で作成した。
【表4】

【0093】
これらの試料を、実施例1と2で前述したようにしてシートに形成した。18の8in.×8in.(20.32cm×20.32cm)シートを作成して、それぞれを30lb/2,880sq.ft.(50.86g/m2)の目標坪量を有する7in.×7in.(17.78cm×17.78cm)に切断し整えた。試料は、乾燥オーブン内で220°F(104℃)および50%の相対湿度で24時間調整した。試料1−18と指定した試料の種々の特性をテストし、それらの特性と測定値を表5に示す。結果は、ここにおいて開示したタイプの材料は、EISおよび/またはEIMとしての使用に適する物理的および/または機械的特性を示している。特に、結果は、手作業製造のEISより機械製造のEISで更に改良されると期待される望ましい絶縁耐力を示している。
【表5】

実施例3
【0094】
ここにおいて開示したタイプのEISを、下記のパイロット Rotoformer 試し設計に従って作成した。ここで、パイロットロトフォーマー上での排出を促進し、その後、シートを工程の飽和/結合剤塗布部分に移すためには、より大きな寸法(より大きな径およびより長い長さ)のアクリル繊維(0.1d× 3mm Vonnel)を繊維完成紙料(SMS)に加えなければならなかったということに触れておく。
試し設計
目的:26.5”幅の変形例1の10,500’ロールの製造
繊維完成紙料

【0095】
ここにおいて開示したタイプのEISを下記の手順で製造した。結合剤補給タンクをゆっくり攪拌し、水を約半分まで入れ、BASF ACRODUR DS 3558ラテックスをそのまま70lbs、Laurel AD-10A PTFE 分散剤をそのまま20lbs加え、タンクを水で50ガロンに満たし、35結合剤/20水の割当量を有する混合物をスプレーヘッダに供給した。664ガロンの水と、64.1wet.lbsのEftec A040-6 アクリル繊維と、17.6wet lbs.の0.1d×3mm Vonnel アクリル繊維をパルプに加えた後、材料を5分間パルプ状にした。その後、材料を、4ft.を超えるレベルを保持するためにマシンチェストに供給する前に、中身を空けられて、664ガロンの水で洗浄してPDCとした。マシンチェストへ供給は、ファンポンプの吸引側に対してであり、24.0gpmおよび40Hzで行われた。機械は26.5"デッケル(deckle)であり、ポンド(pond)が中にあり、ダンディ(dandy)がその上にあり、攪拌器がヘッドボックスの中にあり、設定は、フロー弁は1/2開き、Hz.による制御レベルは開始時は15で、全部の箱を完全真空で、速度は27.0fpm、すべての缶を完全蒸発させ、目的の長さに巻くこととした。
【0096】
この試作において製造した材料に対する物理的特性データを表6に示す。
【表6】

【0097】
結果は、ここにおいて開示したタイプのEISは、空気中および油中の両方において高い絶縁耐力を呈示することを示している。
予想される実施例
【0098】
実施例3のEISに対しては、下記の追加的処理手順が行われる。(1)ホットカレンダー加工、(2)マイクロクレープ加工、(3)ホットカレンダー加工とそれに続くマイクロクレープ加工、および(4)マイクロクレープ加工とそれに続くホットカレンダー加工。工程(1)〜(4)を経たシートの物理的特性を、追加的処理手順を経ていないシートの物理的特性と比較する。追加的処理手順を経たシートは、追加的処理手順を経ていないシートと比較すると、物理的特性の改良を示すことが予想される。特に、追加的処理を経たシートは、絶縁耐力(空気中および/または油中)の増加を示すと予想される。
【0099】
実施の形態を示して記載してきたが、それらの修正は、本開示の精神および教示から逸脱することなく、この技術に精通した者により行うことができる。ここにおいて記載した実施の形態は単に例として示すものであり、限定的には意図されていない。ここにおいて記載した実施の形態の多くの変形および修正は可能で、本発明の範囲内である。数値の範囲または制限を明示的に述べた場合は、そのような表現の範囲または制限は、明示的に述べた範囲または制限内の同様な大きさの反復範囲または制限を含むものと理解されるべきである(例えば、約1から約10は、2、3、4などを含み、0.10を超えるとは、0.11、0.12、0.13などを含む)。請求項の任意の要素に対する「随意的に」(”optionally”)という用語は、主題の要素は必要であるか、または必要でないかを意味すると意図されている。両選択肢は、請求項の範囲内であると意図されている。より広い意味の用語、例えば、備える(comprises)、含む(includes)、有する(having)などの使用は、より狭い意味の用語、例えば、〜から構成される(consisting of)、本質的に〜から構成される(consisting essentially of)、実質的に〜から構成される(comprised substantially of)などをサポートするために使用されていると理解されるべきである。
【0100】
従って、保護の範囲は、上述した記載に制限されず、下記に続く請求項によってのみ制限され、請求項の範囲は、請求項の主題のすべての等価物を含む。各およびすべての請求項は、本発明の実施の形態として明細書に組み込まれる。このため、請求項は更なる記載であり、本発明の好適な実施の形態への追加である。ここにおいての参照文献の論考は、参照文献が、本発明に対する先行技術であることを認めるものではなく、特に、本出願の優先日付の後の公表日付を有するいかなる参照文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。ここにおいて引用したすべての特許、特許出願、および公開特許は、それらがここにおいて記載されたことに対する例、手順、または他の詳細補足を提供するという範囲において、本書に援用する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維成分と、結合剤要素と、誘電体添加物を含み、約8.9MV/m(225V/mil)から約15.7MV/m(325V/mil)の範囲の空気中で測定された絶縁耐力と、約23.6MV/m(600V/mil)を超える、油中で測定された絶縁耐力と、約−30℃(−22°F)から約220℃(428°F)の連続使用温度を有する電気絶縁材。
【請求項2】
前記繊維成分は、アクリル繊維、合成繊維、合成パルプ、リオセル繊維、メタアラミド、パラアラミド、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリ(ブチレンテレフタレート)繊維、ポリ(エチレンテレフタレート)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、グラスファイバー繊維、粘土繊維、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の絶縁材。
【請求項3】
前記結合剤要素は、乳化重合体スチレンアクリレート、スチレンブタジエン、アクリル、酢酸ビニル、アクリロニトリル樹脂、ウレタン、エポキシ、尿酸フォルムアルデヒド、メラミンフォルムアルデヒド、溶液重合体、酸性化アクリル、ポリビニルアルコール、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の絶縁材。
【請求項4】
前記誘電体添加物は、フッ素重合体、ネオプレーン、ベークライト、シリコーン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の絶縁材。
【請求項5】
請求項1に記載の前記絶縁材から形成されたシートまたはテープ。
【請求項6】
約10lbs/インチ幅(4.5kg/25.4mm)から約100lbs/インチ幅(45.4kg/25.4mm)の縦方向(MD)の引張り強さを有することを特徴とする請求項5に記載のシートまたはテープ。
【請求項7】
約20%から約40%の縦方向における伸び値と、約20%から約40%の横方向における伸び値を有することを特徴とする請求項5に記載のシートまたはテープ。
【請求項8】
約100%から約150%の鉱油吸収量を有することを特徴とする請求項5に記載のシートまたはテープ。
【請求項9】
クレープ加工された表面を有することを特徴とする請求項5に記載のシートまたはテープ。
【請求項10】
請求項5に記載の前記シートまたはテープで包まれた導電体を含むことを特徴とする絶縁導体。
【請求項11】
電気絶縁材を製造する方法であって、
繊維成分を含む水性スラリを作成することと、
前記スラリをシートに形成することと、
前記シートを、結合剤と誘電体添加物を含む飽和剤で飽和させることと、
前記飽和されたシートを乾燥することとを備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記繊維成分は、フィブリル化アクリル繊維であり、前記スラリの中に、約0.1(w/w)%から約3.0(w/w)%の量で存在し、
前記結合剤要素は、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体であり、前記飽和剤の中に、約10(w/w)%から約20(w/w)%の量で存在し、
前記誘電体添加物は、フッ素重合体分散剤であり、前記飽和剤の中に約1(w/w)%から約10(w/w)%の量で存在することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記飽和剤は更に、約0.05(w/w)%から約2.00(w/w)%の量の湿潤剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維を前記シート中において、一軸的または二軸的に配向することを更に備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記シートをクレープ加工および/またはカレンダー加工することを更に備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項12の前記工程により作成された電気絶縁材。
【請求項17】
フィブリル化アクリル繊維を含む水性スラリを作成することと、
前記スラリを希釈ハイドロフォーミング法でシートに形成することと、
前記シートを、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体とフッ素重合体を含む飽和剤で飽和させることと、
前記シートを乾燥させることと、
前記シートを導電体上の絶縁材としての使用に供することとを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記導電体は、油入り変圧器内に格納され、前記油の温度は、約100℃(212°F)から約220℃(428°F)であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シートをクレープ加工および/またはカレンダー加工することを更に備えることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含む電気絶縁シートまたはテープを得ることと、
導電体の少なくとも一部を、前記シートまたはテープで覆うことと、
前記導電体を油入り変圧器における使用に提供することとを備え、
前記油の温度は、約100℃(212°F)から約220℃(428°F)であることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記電気絶縁材は、約8.9MV/m(225V/mil)から約12.8MV/m(325V/mil)の範囲の、空気中測定での絶縁耐力と、約23.6MV/m(600V/mil)を超える範囲の、油中測定での絶縁耐力を有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フィブリル化アクリル繊維と、カルボキシル化スチレンアクリレート共重合体と、フッ素重合体を含むシートを形成することと、
前記シートをクレープ加工および/またはホットカレンダー加工することと、
前記シートを導電体上の絶縁材としての使用に供すること備えることとを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529155(P2012−529155A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514143(P2012−514143)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037304
【国際公開番号】WO2010/141757
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591088755)ライドール,インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】LYDALL INCORPORATED
【Fターム(参考)】