説明

電気表示装置及びその製造方法

【課題】耐湿性に優れ、かつ表示装置の小型化に寄与できる電気泳動型表示装置及びその製造方法の提供。
【解決手段】フレキシブル回路基板110の上に電気泳動粒子を用いた表示素子である表示素子120を接着して表示装置本体101が形成されている。平面視略長方形の電気泳動型表示装置100は、表示素子120の視認側の面を覆う上面保護フィルム131と背後側の面を覆う下面保護フィルム132とによって内包されている。フレキシブル回路基板110の表面には金属、カーボンペースト又は銀ペースト等より成る画素電極114が形成され、裏面には配線電極113が形成されている。上面保護フィルム131と下面保護フィルム132との端部は、接着剤を介して圧着されて一旦封止部133が形成された後、短辺方向の圧着された両端部が背後側へ折りたたまれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な書き込みが可能な表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的な書き込みが可能な表示装置としては、種々なものが知られているが、ひとつの例として、フレキシブルな基板を用いた表示装置について説明する。近年、電気泳動粒子を用いたフレキシブルな電気泳動型の表示装置が知られている。電気泳動型の表示技術において、液相分散媒と電気泳動粒子とを含む電気泳動分散液をマイクロカプセルに封入し、多数のマイクロカプセルを、電極を有する2枚の樹脂フィルムに挟着したものが開発されている。電気泳動分散液をマイクロカプセルに封入することにより、表示装置の製造工程において分散液の流出を防止することができるとともに、電気泳動粒子の沈降や凝集を減少させることができるという利点がある。また、この電気泳動型表示装置は、バックライトが必要ないことから低コスト化や薄型化が可能となり、さらに、視野が広くコントラストが高いことに加え、表示がメモリ性を有するために、次世代の表示デバイスとして注目を集めている。
【0003】
この表示装置の製造には、多数のマイクロカプセルを接着層に敷き詰め、共通電極を有する透明基板の共通電極上に積層してシート状に形成した電子インクシートが表示素子として活用されている。この表示素子を、所望のサイズに裁断して、画素電極を有する回路基板上に接着することにより、電気泳動型表示装置本体ができる。この表示装置の基板には、可撓性や割れ難さ軽量化等の観点からプラスチック等の材料が用いられている。しかし、プラスチック基板では、空気中の酸素などのガスや水分を十分に遮断することができなかった。これにより、プラスチック基板を透過したガスや水分が、表示装置内に浸入してマイクロカプセルを劣化させ、電気泳動型表示装置の寿命が短くなるという問題があった。そこで、このような問題を解決する手段として、表示装置本体の外周に保護フィルムをラミネートして、この保護フィルムによって表示装置本体を封止する方法が広く利用されている。
【0004】
図6は、このような従来の電気泳動型表示装置の断面図である。なお、断面図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさにするために、各部材毎の縮尺を異ならせてある。電気泳動型表示装置50は、画素電極51aが形成された第1の基板51の上に表示素子52が接着されて表示装置本体53が形成されている。表示素子52は、共通電極54aを有する透明樹脂基板である第2の基板54にマイクロカプセル55を敷き詰めた電気泳動層である接着層を積層して成っている。表示装置本体53は、上下2枚の保護フィルム56、57によって内包されており、その周辺部には接着剤58を介して固着され封止された封止部59を有している。しかし、封止部59の接合部から水分が表示装置本体53へ浸入してしまうという欠点があった。
【0005】
そこで、このような電気泳動型表示装置の封止方法を更に改良する発明も開示されている(例えば、特許文献1など参照。)。図7は、特許文献1に記載された電気泳動型表示装置の断面図である。この電気泳動型表示装置1では、保護フィルム14同士が接着剤18を介して固着された両封止部22の一部に、保護フィルム14同士が加圧により互いに接触された圧着部24が設けられている。この方法によれば、封止部22の一部に圧着部24を形成するため、封止部22の接着剤18を透過する水分、ガスなどを圧着部24において遮断して、表示素子20内への水分、ガスなどの浸入を防止することができる。これにより、表示装置50の耐久性と寿命を格段に向上させることができるというものである。
【特許文献1】特開2007−171447号公報(図1、13頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気泳動型表示装置において、図6における封止部59、図7における封止部22が表示装置の両側に張り出しているので、表示装置を小型化する上では不利であった。
【0007】
上記発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐湿性に優れ、かつ表示装置の小型化に寄与できる電気表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の手段は、電気的な書き込みが可能な表示素子と、前記表示素子の視認側の面を覆う上面保護フィルムと、前記表示素子の背後側の面を覆う下面保護フィルムとを有し、前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を圧着することによって前記表示素子を内包した電気表示装置において、前記端部は前記表示素子の背後側へ折りたたまれていることを特徴とする。
【0009】
また、前記折りたたまれた前記端部は前記下面保護フィルムに接着されていることを特徴とする。
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の他の手段は、電気的な書き込みが可能な表示素子の視認側に上面保護フィルムを配置する工程と、前記表示素子の背後側に下面保護フィルムを配置する工程と、前記両保護フィルムを前記表示素子の周囲で圧着して接着する工程と、圧着された前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を前記表示素子の背後側へ折りたたむ工程と、前記上面保護フィルムと前記背後側に折りたたまれた前記両保護フィルムの端部とを前記表示素子の視認側及び背後側からさらに押圧する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記折りたたまれた前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を前記下面保護フィルムに接着する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気的な書き込みが可能で、フレキシブルな基板を備えた表示素子に、表示素子の視認側の面を覆う上面保護フィルムと、表示素子の背後側の面を覆う下面保護フィルムとの端部を圧着することによって表示素子を内包し、かつ端部が表示素子の背後側へ折りたたまれているので、表示装置の両側に張り出した部分を無くすことができ、かつ、端部を折りたたむことによって、防湿性を高めることができた。よって、本発明による電気表示装置は、耐湿性に優れ、かつ小型化とすることができる。
【0013】
また、前記折りたたまれた前記端部は前記下面保護フィルムに接着すれば、耐湿性を一層優れたものとすることができる。また、折り返した末端部が出っ張らないので取り扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、電気表示装置として、電気泳動型表示装置を例に本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態である電気泳動型表示装置を示す平面図であり、図2は図1のA−A´断面を示す断面図であり、図3は図1のB−B´断面を示す断面図である。図4は製造工程中おける電気泳動型表示装置の平面
図である。
【0015】
まず、本発明の第一の実施の形態である電気泳動型表示装置の構成について説明する。図1〜図3において、フレキシブル回路基板110の上に電気泳動粒子を用いた表示素子120を接着し、表示装置本体101が形成されている。平面視略長方形の電気泳動型表示装置100は、表示素子120の視認側の面を覆う上面保護フィルム131と背後側の面を覆う下面保護フィルム132とによって内包されている。フレキシブル回路基板110の表面には金属、カーボンペースト又は銀ペースト等より成る画素電極114が形成され、裏面には配線電極113が形成されている。フレキシブル回路基板の先端部111は上面保護フィルム131と下面保護フィルム132とに覆われないで外部へ出ている。
【0016】
表示素子120は、ITOから成る共通電極123を有する可撓性の透明樹脂基板124の共通電極123側に、接着層121の中に多数のマイクロカプセル122を敷き詰めた電気泳動層を積層することによって形成されている。上面保護フィルム131には湿度遮断性能に優れた透明フィルムを、下面保護フィルム132には、樹脂コートされたアルミの多層膜を用いた。上面保護フィルム131と下面保護フィルム132との対向する内面には図示しない接着層を有している。上面保護フィルム131と下面保護フィルム132との端部は、図4のハッチング部で示すように、接着剤を介して圧着されて一旦封止部133を形成後、短辺方向の両端部は両折り返し線Lにおいて背後側へ折りたたまれている。
【0017】
次に、この電気泳動型表示装置100の作用について説明する。フレキシブル回路基板110の配線電極113を介して所定の表示用の制御電圧を、画素電極114と共通電極123との間に印加することにより、共通電極123側に白色又は黒色の電気泳動粒子を移動させて、所望の図形、文字等を含む画像を電子インクシート120の視認側へ表示させることができる。
【0018】
次に、本発明の第一の実施の形態の効果について説明する。電気泳動型表示装置100の長辺に沿った封止部133を表示面とは反対側の背後側へ折りたたむことで、短辺方向両側へ張り出していた封止部133のスペースを無くすことができ、このスペースが無くなった分だけ表示装置の小型化を図ることができる。また、封止部133を折り曲げることによって、表示装置100の密閉性が一層向上する。
【0019】
次に、この電気泳動型表示装置100の製造方法について説明する。まず、画素電極114を形成したフレキシブル回路基板110の画素電極114上に、表示素子120の接着層121を接着して表示装置本体101を形成する。次に、表示素子120の視認側に上面保護フィルム131を配置し、次いで、表示素子120の背後側に下面保護フィルム132を配置する。その後、上面保護フィルム131、下面保護フィルム132の外側からローラーにより圧力をかけることによって、接着剤を介して表示装置本体101の周囲を圧着し、封止部133を形成する。その後、短辺方向両端の封止部133を図4の折り返し線Lにおいて表示装置本体101の背後側へ折りたたむ。そして最後に、上面保護フィルム131と背後側に折りたたまれた前記両保護フィルムの端部とを表示素子120の視認側及び背後側からさらに押圧することによって、電気泳動型表示装置100が完成する。
【0020】
次に、本発明の第二の実施の形態である電気泳動型表示装置200について説明する。図5は本発明の第二の実施の形態である電気泳動型表示装置の短辺方向の断面図であり、図5において、電気泳動型表示装置200が、第一の実施の形態である電気泳動型表示装置100と異なるところは、背後側へ折りたたまれた封止部133が下面保護フィルム132の下面に接着剤140によって、接着されているところである。ここで、接着剤14
0は封止部133の端部の段差を埋めるように下面保護フィルム132にかけて覆っており、下面保護フィルム132面に対して角が出ないように丸めてある。その他の構成は第一の実施の形態である電気泳動型表示装置100と同様なので、同じ構成要素には同じ符号と名称とを付して詳細な説明を省略する。第二の実施の形態の製造方法は、第一の実施の形態の製造方法に引き続いて、折りたたまれた上面保護フィルム131と下面保護フィルム132との端部を下面保護フィルム132に接着する工程を追加することによって完成する。
【0021】
次に、第二の実施の形態の作用・効果について説明する。第二の実施の形態では、折りたたまれた封止部133の端部が下面保護フィルム132と接着されているので、取り扱いが容易であるという利点がある。その他、第一の実施の形態と同様な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一の実施の形態である電気泳動型表示装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A´断面を示す断面図である。
【図3】図1のB−B´断面を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態である電気泳動型表示装置の完成直前の状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態である電気泳動型表示装置を示す断面図である。
【図6】従来の電気泳動型表示装置を示す断面図である。
【図7】従来の電気泳動型表示装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
100、200 電気泳動型表示装置
120 表示素子
131 上面保護フィルム
132 下面保護フィルム
133 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な書き込みが可能な表示素子と、前記表示素子の視認側の面を覆う上面保護フィルムと、前記表示素子の背後側の面を覆う下面保護フィルムとを有し、前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を圧着することによって前記表示素子を内包した電気表示装置において、前記端部は前記表示素子の背後側へ折りたたまれていることを特徴とする電気表示装置。
【請求項2】
前記折りたたまれた前記端部は前記下面保護フィルムに接着されていることを特徴とする請求項1記載の電気表示装置。
【請求項3】
電気的な書き込みが可能な表示素子の視認側に上面保護フィルムを配置する工程と、前記表示素子の背後側に下面保護フィルムを配置する工程と、前記両保護フィルムを前記表示素子の周囲で圧着して接着する工程と、圧着された前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を前記表示素子の背後側へ折りたたむ工程と、前記上面保護フィルムと前記背後側に折りたたまれた前記両保護フィルムの端部とを前記表示素子の視認側及び背後側からさらに押圧する工程とを有することを特徴とする電気表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記折りたたまれた前記上面保護フィルムと前記下面保護フィルムとの端部を前記下面保護フィルムに接着する工程を有することを特徴とする請求項3記載の電気表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−151897(P2010−151897A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327170(P2008−327170)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】