説明

電気設備への小物体侵入防止用マット

【課題】 ケーブル挿入口から電気設備内へ虫などが侵入するのを確実に防止する。
【解決手段】 全体がシート状で、その平面がケーブル挿入口51の開口面よりも大きく、平面を貫通し制御ケーブル20を挿入可能なケーブル孔11が複数形成され、ケーブル孔11の外周側に、シリコーンを充填可能でシリコーンの充填によってケーブル孔11側に膨張してケーブル孔11の周縁11cを制御ケーブル20に密着させる充填部12が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気設備に設けられたケーブル挿入口から、電気設備内へ小動物や植物などが侵入することを防止する電気設備への小物体侵入防止用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
キュービクルや制御盤などの電気設備には、その底板や壁板などにケーブル挿入口が形成され、このケーブル挿入口に複数の制御ケーブルなどが挿入されている。一方、このような電気設備を屋外に設置する場合、その周辺に虫や植物などが生息し、ケーブル挿入口と制御ケーブルとの隙間や制御ケーブル間の隙間から、虫などが電気設備内に侵入する場合がある。そして、虫などが侵入すると、電気設備内の機器が、虫などの接触によって動作不良を起すおそれがある。
【0003】
そこで、ケーブル挿入口から電気設備内へ虫などが侵入することを防ぐために、ケーブルとケーブル挿入口との隙間に、パテなどの充填材を充填することが行われていた。また、防鼠剤や防蟻剤を含む外側シースでケーブルを覆う技術(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−102220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、充填剤を充填する技術では、複数のケーブルを束ねてケーブル挿入口に挿入する場合、各ケーブルとケーブル挿入口との隙間(ケーブル束の外周側)は充填剤で塞げるが、ケーブル間の隙間(ケーブル束の内側)を充填剤で完全に塞ぐことは困難である。その結果、虫などがケーブル間の隙間から電気設備内に侵入してしまう。また、特許文献1の技術では、鼠や蟻などの小動物がケーブルをかじることを防止することはできるが、ケーブル間の隙間などから、虫などが侵入することを防止することはできない。
【0006】
そこで本発明は、ケーブル挿入口から電気設備内へ虫などが侵入するのを確実に防止することが可能な電気設備への小物体侵入防止用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ケーブルを挿入するケーブル挿入口を有するキュービクルや制御盤などの電気設備内に、前記ケーブル挿入口から小動物や植物などの小物体が侵入することを防止する電気設備への小物体侵入防止用マットであって、全体がシート状で、その平面が前記ケーブル挿入口の開口面よりも大きく、前記平面を貫通しケーブルを挿入可能なケーブル孔が複数形成され、前記ケーブル孔の外周側に、流体を充填可能で流体の充填によって前記ケーブル孔側に膨張して前記ケーブル孔の周縁を前記ケーブルに密着させる充填部が形成されている、ことを特徴とする電気設備への小物体侵入防止用マットである。
【0008】
この発明によれば、この侵入防止用マットをケーブル挿入口の開口を覆うようにして取り付け、各ケーブル孔にケーブルを挿入した状態で、充填部に流体を充填する。これにより、充填部がケーブル孔側に膨張し、各ケーブル孔の周縁が各ケーブルに密着する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気設備への小物体侵入防止用マットにおいて、前記ケーブル孔は、直径が異なるケーブルを挿入可能となっている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の電気設備への小物体侵入防止用マットにおいて、前記平面において所望の大きさ、形状に切断自在となっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または3のいずれか1項に記載の電気設備への小物体侵入防止用マットにおいて、前記ケーブル孔が所定の間隔で形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、この侵入防止用マットでケーブル挿入口の開口を覆い、流体を充填部に充填することで、各ケーブル孔の周縁が各ケーブルに密着するため、各ケーブルの外周側には隙間が存在しなくなる。このため、ケーブル挿入口から電気設備内へ虫などが侵入するのを確実に防止することが可能となる。しかも、この侵入防止用マットを取り付け、充填部に流体を充填するだけでよいため、容易かつ短時間に作業を行うことが可能である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、各ケーブル孔に直径が異なるケーブルを挿入可能なため、多様な直径のケーブルを複数ケーブル挿入口に挿入する場合でも、各ケーブル孔の周縁が各ケーブルに密着し、虫などが侵入するのを確実に防止することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、この侵入防止用マットが所望の大きさ、形状に切断自在なため、ケーブル挿入口の開口面に合わせて侵入防止用マットを切断することで、多様な大きさ、形状のケーブル挿入口の開口面を塞ぐことができ、汎用性を高めることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ケーブル孔が所定の間隔で形成されているため、複数のケーブルを整然と挿入、配設することができ、また、ケーブルの挿入作業も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係わる小物体侵入防止用マットの平面図である。
【図2】図1の小物体侵入防止用マットを敷設するキュービクルの正面図である。
【図3】図2のキュービクルの側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1の小物体侵入防止用マットを切断する前の状態を示す平面図である。
【図6】図1の小物体侵入防止用マットを切断し、止め板を取り付けた状態を示す平面図である。
【図7】図1の小物体侵入防止用マットのケーブル孔に制御ケーブルとスペーサとを装着した状態を示す平面図である。
【図8】図1の小物体侵入防止用マットに装着するスペーサを示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【図9】図1の小物体侵入防止用マットの充填部にシリコーンを充填する前の状態を示す平面図である。
【図10】図1の小物体侵入防止用マットの充填部にシリコーンを充填した状態を示す模式図である。
【図11】図1の小物体侵入防止用マットの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係る電気設備への小物体侵入防止用マット(以下、適宜「侵入防止用マット」という)10を示す平面図である。この侵入防止用マット10は、電気設備内へ小動物や植物などが侵入するのを防止するマットであり、この実施の形態では、電気設備が図2、3に示すようなキュービクル50の場合について説明する。
【0019】
このキュービクル50は、スイッチギヤを収容する筐体であり、制御ケーブル(ケーブル)20を外部から内部に引き込むケーブル挿入口51が、底板52に形成されている。このケーブル挿入口51の開口面は、略長方形に形成され、複数の制御ケーブル20を挿入可能となっている。
【0020】
侵入防止用マット10は、全体がシート状の長方形で、その平面積がキュービクル50のケーブル挿入口51の開口面積よりも大きく設定されている。すなわち、適用対象となるすべての電気設備のケーブル挿入口よりも大きな平面積を有し、すべての電気設備に適用可能となっている。また、侵入防止用マット10は、弾性変形、膨張収縮が可能で、かつ耐環境性に優れた材質・素材、例えば軟質ゴムで構成され、さらに、平面において所望の大きさ、形状に切断自在となっている。すなわち、電気設備のケーブル挿入口の大きさや形状に合わせて、ハサミやカッタなどで所望の大きさ、形状に切断できるようになっている。
【0021】
また、侵入防止用マット10には、平面を貫通するケーブル孔11が、所定の間隔で複数形成されている。すなわち、このケーブル孔11は、円形の主孔部11aと、この主孔部11aから放射線状に四方に延びて切り込まれた切込み部11bとから構成され、これにより、直径が異なる制御ケーブル20を挿入できるようになっている。そして、このようなケーブル孔11が、所定の距離を隔てて縦横に形成されている。
【0022】
さらに、各ケーブル孔11の外周側には、シリコーン(流体)を充填可能な充填部12が形成されている。この充填部12は、図4に示すように、侵入防止用マット10の厚み方向に対する断面形状がチューブ状・管状で、侵入防止用マット10全体と一体的に形成、成型されている。このような充填部12が格子状に、かつ格子内にひとつのケーブル孔11が位置するように形成され、全流路(全管路)がつながっている。さらに、充填部12にシリコーンが充填されることで、充填部12がケーブル孔11側に膨張して、ケーブル孔11の周縁が制御ケーブル20に密着するように、充填部12の大きさ(内径)、間隔(ピッチ)およびケーブル孔11の大きさが設定されている。
【0023】
次に、このような構成の侵入防止用マット10の作用および、この侵入防止用マット10による小物体侵入防止方法などについて説明する。
【0024】
まず、図5に示すように、キュービクル50のケーブル挿入口51の開口面積よりも、ひと回り大きく侵入防止用マット10を切断する。次に、図6に示すように、切断した侵入防止用マット10を、ケーブル挿入口51を覆うように配置し、侵入防止用マット10の四辺部に止め板70を当て、この止め板70をキュービクル50の底板52に、ビス71で仮止めする。このとき、充填部12の開口(断面)が少なくともひとつ開放されるように、止め板70を取り付ける。ここで、止め板70は、金属製やプラスチック製で、ケーブル挿入口51の各辺の長さとほぼ同じ長さに設定されている。
【0025】
そして、開放された充填部12の開口に、充填用プラグ72を挿入、装着する。ここで、充填用プラグ72は、充填部12側が先細りしている略円筒形で、後述するポンプ80の吐出管81の先端部を装着できるようになっている。また、充填用プラグ72に逆止弁を備え、充填部12内に流入、充填されたシリコーンが、外部に流出しないようにしてもよい。
【0026】
その後、図7に示すように、ケーブル孔11に制御ケーブル20を挿入する。このとき、ひとつのケーブル孔11に対して1本の制御ケーブル20を挿入し、また、上記のように、多様な直径の制御ケーブル20をケーブル孔11に挿入することができる。さらに、制御ケーブル20を挿入しないケーブル孔11に対しては、スペーサ13を装着することで、ケーブル孔11からキュービクル50内に小物体が侵入するのを防止する。ここで、スペーサ13は、ゴム製で、図8に示すように、平板状の平板部13aと、この平板部13aの中央部に形成された円錐台状の装着部13bとを備えている。そして、装着部13bをケーブル孔11の主孔部11aに挿入、圧入することで、スペーサ13をケーブル孔11に装着でき、かつ、装着部13bとケーブル孔11との間に隙間が生じないようになっている。
【0027】
次に、充填部12にシリコーンを充填する。具体的には、図9に示すように、ポンプ80の吐出管81の先端部を充填用プラグ72に装着し、ポンプ80の吸込管82をシリコーンが貯留されているタンク(図示せず)に接続する。この状態で、ポンプ80のレバー83を操作して、タンク内のシリコーンを充填部12に送り込む。これにより、例えば図7に示すように、シリコーンCは、充填部12内を矢印方向に流れる。
【0028】
そして、全充填部12内にシリコーンが行き渡り、全充填部12内の空気が抜けたことを確認した後に、止め板70をキュービクル50の底板52に、ビス71で本止めし、固定する。その後、さらにポンプ80でシリコーンを送り込み、全充填部12にシリコーンを充填させる。このとき、ポンプ80に充填圧(送圧)を計測する圧力計を設け、充填圧が所定の圧力に達した時点で、シリコーンの送り込みを停止するようにしてもよい。
【0029】
このようにして、全充填部12にシリコーンを充填させた後に、充填操作を止め、充填用プラグ72を外して、充填部12の開口に封止栓(図示せず)を挿入、装着する。ここで、封止栓は、充填部12側が先細りしている略円柱形で、充填部12の開口に圧入できるようになっている。
【0030】
このような充填により、図10に示すように、充填部12が各ケーブル孔11側に膨張し、ケーブル孔11の周縁11cが制御ケーブル20に密着する。これにより、各制御ケーブル20の外周側・外周面には、隙間が存在しなくなる。その後、時間の経過とともにシリコーンが固化し、ケーブル孔11の周縁11cと制御ケーブル20との密着が、固定化、安定化されるものである。
【0031】
以上のように、この侵入防止用マット10および小物体侵入防止方法によれば、ケーブル挿入口51が侵入防止用マット10で覆われ、かつ、各制御ケーブル20の外周側には隙間が存在しない。このため、ケーブル挿入口51からキュービクル50内へ、虫などが侵入するのを確実に防止することが可能となる。しかも、各ケーブル孔11に直径が異なる制御ケーブル20を挿入可能なため、多様な直径の制御ケーブル20を複数キュービクル50に配設する場合でも、各ケーブル孔11の周縁11cが各制御ケーブル20に密着し、虫などが侵入するのを確実に防止することが可能となる。
【0032】
また、侵入防止用マット10を取り付け、充填部12にシリコーンを充填するだけでよいため、容易かつ短時間に作業を行うことが可能である。しかも、ケーブル孔11が所定の間隔で形成されているため、複数の制御ケーブル20を整然と挿入、配設することができ、また、制御ケーブル20の挿入作業も容易となる。さらに、侵入防止用マット10が所望の大きさ、形状に切断自在なため、ケーブル挿入口51の開口面に合わせて侵入防止用マット10を切断することで、多様な大きさ、形状のケーブル挿入口51の開口面を塞ぐことができ、汎用性が高い。
【0033】
一方、制御ケーブル20を一端配設した後に、追加の制御ケーブル20を配設する必要がある場合には、スペーサ13を取り外し、スペーサ13が装着されていたケーブル孔11に制御ケーブル20を挿入すればよい。つまり、将来の制御ケーブル20の増設にも、容易に対応することできる。この場合、ケーブル孔11と制御ケーブル20とのパテなど埋めることで、虫などの侵入を確実に防止することができる。
【0034】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、充填部12が格子状で、充填部12の膨張によって、ケーブル孔11の周縁が制御ケーブル20に密着するようになっているが、ケーブル孔11の周縁自体が膨張して、制御ケーブル20に密着するようにしてもよい。すなわち、図11に示すように、侵入防止用マット100を、2枚のシートを重ね合わせて構成し、各ケーブル孔11の主孔部11aと切込み部11bとにおいて、2枚のシートを熱溶着などで接合する。これにより、ケーブル孔11以外の部分がすべて充填部112となり、この充填部112にシリコーンを充填することで、ケーブル孔11の周縁自体(充填部112)が膨張して、制御ケーブル20に密着するものである。
【0035】
また、切込み部11bによって、直径が異なる制御ケーブル20を挿入できるようになっているが、主孔部11a自体を伸縮自在となり、直径が異なる主孔部11aを設けたりしてもよい。さらに、シリコーンを流体、充填材としているが、流動性、充填性を有し、望ましくは固化性を有するものであれば、エポキシ樹脂などその他の素材であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 小物体侵入防止用マット
11 ケーブル孔
11c 周縁
12 充填部
20 制御ケーブル(ケーブル)
C シリコーン(流体)
50 キュービクル(電気設備)
51 ケーブル挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを挿入するケーブル挿入口を有するキュービクルや制御盤などの電気設備内に、前記ケーブル挿入口から小動物や植物などの小物体が侵入することを防止する電気設備への小物体侵入防止用マットであって、
全体がシート状で、その平面が前記ケーブル挿入口の開口面よりも大きく、
前記平面を貫通しケーブルを挿入可能なケーブル孔が複数形成され、
前記ケーブル孔の外周側に、流体を充填可能で流体の充填によって前記ケーブル孔側に膨張して前記ケーブル孔の周縁を前記ケーブルに密着させる充填部が形成されている、ことを特徴とする電気設備への小物体侵入防止用マット。
【請求項2】
前記ケーブル孔は、直径が異なるケーブルを挿入可能となっている、ことを特徴とする請求項1に記載の電気設備への小物体侵入防止用マット。
【請求項3】
前記平面において所望の大きさ、形状に切断自在となっている、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の電気設備への小物体侵入防止用マット。
【請求項4】
前記ケーブル孔が所定の間隔で形成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電気設備への小物体侵入防止用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−229207(P2011−229207A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94015(P2010−94015)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】