説明

電気錠システム

【課題】室外側から不意に解錠されることなく防犯上に優れ、構成を簡素化して利用者の使い勝手を良くした電気錠システムを提供する。
【解決手段】扉近傍の室内側と室外側のそれぞれにリーダ2を配設する。各リーダ2(2a,2b)は、扉近傍の人を検知する人検知センサ10と、電気錠の解錠操作又は施錠操作をする操作手段11と、非接触媒体4の情報を取得する受信手段12と、取得した非接触媒体4の情報を正常認証した後の操作手段11による操作及び電気錠の現在の状態に応じて電気錠を解錠制御又は施錠制御する制御手段13とを具備する。人検知センサ10が室内と室外の両方で扉近傍の人を検知した状態で非接触媒体4の情報を正常認証したときに、室外のリーダ2bの操作手段11による解錠操作を無効に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等の扉に内蔵された錠前を電気的に施解錠制御する電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等には電気錠システムが広く普及している。この種の電気錠システムとしては、下記特許文献1を含め、様々な形態のものが提案されている。
【0003】
ここで、従来の電気錠システムの一つとして、制御器、操作表示器、受信器を備えたものが知られている。この電気錠システムにおける制御器は、例えば管理室等に配置され、錠前の施解錠動作に係わる一連の処理を統括制御している。操作表示器は、例えば室内外の扉面や壁面等に配設されて制御器と接続されており、利用者の意志に基づくボタン操作によって錠前の解錠や施錠を指示する操作信号を制御器に入力したり、現在の錠前の施解錠状態を制御器からの入力により表示している。受信器は、例えば錠前とともに扉に内蔵されており、利用者が所持するICカードなどの非接触媒体の情報を非接触で受信し、この受信した情報を制御器に入力している。尚、非接触媒体には、錠前の施解錠を許容する利用者を特定する情報(例えば会社コード、社員コードなどの暗証情報)が予め記憶されている。
【0004】
この種の電気錠システムでは、利用者が所持する非接触媒体が受信器の通信可能領域内に入ると、その非接触媒体の情報が受信器によって受信され、この受信した情報が制御器に入力される。制御器は、受信器からの情報の正当性を判別し、正常に認証すると、現在の錠前の施解錠状態を操作表示器の表示部に表示制御する。そして、利用者が操作表示器の表示部を見て、利用者の意志に基づくボタン操作により解錠の指示がなされると、解錠を指示する操作信号が制御器に入力される。制御器は、操作表示器から解錠を指示する操作信号が入力されると、現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態に応じて錠前を解錠制御する。
【0005】
尚、制御器に自動施錠設定がなされている場合には、扉開閉後、または閉扉のまま所定時間が経過すると、錠前が自動的に施錠制御される。また、解錠状態にある錠前を施錠制御する場合には、非接触媒体の情報を正常に認証した後の操作表示器のボタン操作により施錠の指示がなされると、施錠を指示する操作信号が制御器に入力され、現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態に応じて錠前が施錠制御される。
【特許文献1】特開平10−025935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の電気錠システムでは、非接触媒体の情報を読み取る受信器とは別に、システムを構築する上で必要な施解錠操作や状態表示を実現するための機構や機器が必要不可欠であった。また、システムが複数の機構や機器で構成されるため、利用者にとってあまり使い勝手が良くなかった。
【0007】
そこで、この種の従来のシステムに比べ、構成を簡素化しつつ利用者の使い勝手を良くするのは勿論のこと、室外側から不意に解錠されることなく防犯上にも優れた電気錠システムの提供が望まれていた。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、室外側から不意に解錠されることなく防犯上に優れ、構成を簡素化して利用者の使い勝手を良くすることができる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された電気錠システムは、電気錠の解錠操作又は施錠操作をする操作手段と、前記電気錠の施解錠に必要な特定の情報が記憶された非接触媒体が通信可能領域内にあるときに該非接触媒体の情報を非接触通信により取得する受信手段と、該受信手段が取得した前記非接触媒体の情報を正常認証した後の前記操作手段による操作及び前記電気錠の現在の状態に応じて該電気錠を解錠制御又は施錠制御する制御手段とを備えたリーダが扉近傍の室内側と室外側にそれぞれ配設され、
さらに室内と室外の前記扉近傍の人を検知する人検知センサを備え、
前記人検知センサが室内と室外の両方で前記扉近傍の人を検知した状態で前記非接触媒体の情報を正常認証したときに、前記室外のリーダの前記操作手段による解錠操作を無効に制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載された電気錠システムは、請求項1の電気錠システムにおいて、
前記受信手段と前記非接触媒体との間が非接触通信中であるか否かを識別表示する表示機能と、前記非接触媒体の情報が正常認証されたときに前記操作手段の操作を誘導表示する表示機能と、前記電気錠の施解錠制御に伴う該電気錠の施解錠状態を識別表示する表示機能のうち少なくとも一つの表示機能を有する表示手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電気錠システムによれば、室内と室外の両方に人がいる状態で非接触媒体の情報を正常認証した場合には、室外側のリーダの解錠操作を無効に制御するので、非接触媒体を所持した室内の人が電気錠の施解錠を意図とせずに扉に近づいて非接触媒体の情報が正常認証されたときに、非接触媒体を所持していない人(電気錠の施解錠の許可が与えられていない人)によって室外から不意に解錠されるようなことが無くなり、防犯上にも優れた電気錠システムを提供することができる。
【0012】
また、従来のような別構成の専用の機構や機器が不要になり、別々に構成された操作表示器とリーダとを一体化して構成の簡素化を図り、利用者の使い勝手を向上させて電気錠システムを構築することができる。しかも、専用の機構や機器が不要になることにより、コストの低減が図れ、これら専用の機構や機器を設置するためのスペースの制約も無くなり、意匠性の向上を図ることができる。
【0013】
また、表示手段の表示制御により、受信手段と非接触媒体との間が通信中であるか否かの識別表示、非接触媒体の情報の正常認証後の操作手段のボタン操作の誘導表示、電気錠の施解錠制御直後の状態表示を動作状況に応じて適宜行うことができる。これにより、利用者は表示手段の表示状態を確認しながら電気錠の施解錠動作を行うことができ、利用者の使い勝手もさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の形態について、添付した図面を参照しながらそれぞれ詳細に説明する。図1は本発明に係る電気錠システムのブロック構成図、図2は同システムの室外側リーダの配設例を示す概略斜視図、図3は同システムの室内側リーダと室外側リーダの外観平面図、図4は同システムで非接触媒体の情報が正常認証されたときの各リーダのボタン操作の有効・無効の状態を示す図、図5は同システムのリーダの他の構成例を示す外観平面図である。
【0015】
図1に示すように、本例の電気錠システム1は、室内側と室外側のそれぞれに配設されるリーダ2(2a,2b)と、電気錠装置3とを備えて概略構成され、錠前(電気錠)の施解錠を許容する利用者を特定するために非接触媒体4を用いている。
【0016】
非接触媒体4は、本例の電気錠システム1の錠前(電気錠)の施解錠が許容される利用者が所持するもので、例えば電磁波や電波を用いてリーダ2との間で非接触通信可能であり、各種情報のリード/ライトが可能な記憶領域を有するICチップで構成されるRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag )を備えたICカード等で構成される。この非接触媒体4には、錠前の施解錠を許容する利用者を特定する固有の暗証情報(ID)が利用者単位で予め記憶されている。
【0017】
尚、非接触媒体4は、リーダ2との間で非接触通信可能な記憶媒体であれば良く、その構成が限定されるものではない。
【0018】
リーダ2は、図3に示すように、制御対象となる錠前(電気錠)を装備した部屋の室内側に設けられる室内側リーダ2aと、室外側に設けられる室外側リーダ2bとからなる。図2では、室外側の把手上方の扉面に室外側リーダ2bを設けた例を示しているが、この位置に限定されるものではない。本例の室内側リーダ2aと室外側リーダ2bは、後述する人検知センサ10を内蔵しているので、人検知センサ10が扉近傍の人を検知できるように室内側と室外側の扉面や扉面近傍の壁面などに設けるのが好ましい。これら室内側リーダ2aと室外側リーダ2bは、電気錠装置3との間で相互に通信可能とされており、図1に示すように、人検知センサ10、操作手段11、受信手段12、制御手段13、表示手段14、通信手段15を備えている。
【0019】
人検知センサ10は、扉近傍の人の検知を行うもので、室内側リーダ2a本体に内蔵される室内側人検知センサ10aと、室外側リーダ2b本体に内蔵される室外側人検知センサ10bから構成される。これら室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bは、例えば焦電素子、サーモパイル、サーミスタボロメータ等の周知の赤外線検出素子で構成され、赤外線を集光するためのレンズやミラー等の光学系も含む。そして、室内側人検知センサ10aは、室内側リーダ2a本体の検知窓(図3の点線丸部分の位置)を介して室内側の扉近傍の所定検知エリアから受光した赤外線の量に応じて、人有りのときにON信号、人無しのときにOFF信号を検知信号として制御手段13に入力している。また、室外側人検知センサ10bは、室外側リーダ2b本体の検知窓(図2や図3の点線丸部分の位置)を介して室外側の扉近傍の所定検知エリアから受光した赤外線の量に応じて、人有りのときにON信号、人無しのときにOFF信号を検知信号として制御手段13に入力している。
【0020】
なお、本例では、より構成の簡素化を図るため、人検知センサ10(10a,10b)をリーダ2に内蔵する構成としているが、人検知センサ10(10a,10b)をリーダ2に内蔵せずに別体に構成して室内や室外の扉近傍の人の検知を行うこともできる。
【0021】
操作手段11は、錠前の解錠や施錠を指示する操作信号を制御手段13に入力するもので、第1操作ボタン11aと第2操作ボタン11bを備えている。図3の例では、リーダ2(2a,2b)の本体上下に並設された矩形状の2つの押しボタンが第1操作ボタン11aと第2操作ボタン11bに相当し、中央部を支点として一方の操作ボタン11a(又は11b)が押下されたときに接点が閉じるシーソ式の押しボタンスイッチで構成される。ここでは、第1操作ボタン11aが錠前の施錠を指示する施錠ボタン(上ボタン)として機能し、第2操作ボタン11bが錠前の解錠を指示する解錠ボタン(下ボタン)として機能する。操作手段11は、何れかの操作ボタン11a又は11bが押下されると、押下された操作ボタン11a又は11bによる操作信号を制御手段13に入力している。
【0022】
さらに説明すると、施錠ボタン11aが押下されると、錠前の施錠を指示する旨の操作信号を制御手段13に入力する。また、解錠ボタン11bが押下されると、錠前の解錠を指示する旨の操作信号を制御手段13に入力する。さらに、何れの操作ボタン11a,11bも押下されていない状態では、不図示の付勢手段により水平状態が維持され、制御手段13には何も信号が入力されない。
【0023】
尚、本例では、施錠ボタン(上ボタン)を第1操作ボタン11a、解錠ボタン(下ボタン)を第2操作ボタン11bとしているが、当然の如く、解錠ボタンを第1操作ボタン11a、施錠ボタンを第2操作ボタン11bとして逆転した構成であっても良い。
【0024】
受信手段12は、非接触媒体4が通信可能領域内にあるときに、その非接触媒体4との間で非接触通信を行い、非接触媒体4に記憶されている情報を受信し、この受信した情報を制御手段13に入力している。
【0025】
制御手段13は、例えばCPUやROM,RAMなどを有するマイクロコンピュータで構成され、リーダ2の各部を統括制御している。この制御手段13が実行する制御内容としては、受信手段12から入力される非接触媒体4の情報の正当性を判別するとともに、人検知センサ10から入力される検知信号によって扉近傍の人を検知したか否かを判別している。
【0026】
また、制御手段13は、非接触媒体4の情報を正常認証したときに、人検知センサ10(10a,10b)の検知結果に応じてリーダ2の操作手段11のボタン操作の有効・無効を制御している。具体的には、図4に示すように、室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bの両方からON信号が入力されたときのみ、室外側リーダ2bの操作手段11の解錠ボタン11bの操作を無効に制御し(解錠ボタン11bが操作されたときに入力される操作信号を無視し)、それ以外のときには室内側リーダ2a及び室外側リーダ2bの操作手段11の施錠ボタン11a及び解錠ボタン11bの操作を有効に制御している(施錠ボタン11aや解錠ボタン11bが操作されたときに入力される操作信号を有効な信号としている)。なお、このボタン操作の有効・無効の制御は、室内側リーダ2aと室外側リーダ2bとの間で後述する通信手段15を介して情報交換を行うことにより、室内側リーダ2aの制御手段13、室外側リーダ2bの制御手段13の何れからでも行うことができる。
【0027】
さらに、制御手段13は、非接触媒体4との間の通信中に、通信中であることを利用者に知らせるべく後述する表示手段14の施錠表示部14a及び解錠表示部14bの表示を制御している。
【0028】
また、制御手段13は、非接触媒体4の情報を正常認証したときに、後述する電気錠装置3から取得する監視情報に基づいて現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態を認識し、この認識結果と人検知センサ10(10a,10b)の検知結果に応じて操作手段11のボタン操作を誘導するように表示手段14の表示を制御している。
【0029】
具体的には、非接触媒体4の情報を正常認証した後に、電気錠装置3から施錠・閉扉の監視情報を取得し、室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bの両方からON信号が入力せず、室内側人検知センサ10a又は室外側人検知センサ10bの一方からON信号が入力されると、該当するリーダ2側の解錠ボタン11b上に位置する後述する解錠表示部14bを所定時間だけ点灯(又は点滅)するように表示手段14の表示を制御する。
【0030】
なお、非接触媒体4の情報を正常認証した後に、電気錠装置3から施錠・閉扉の監視情報を取得し、室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bの両方からON信号が入力したときには、室外側リーダ2bの操作手段11の解錠ボタン11bの操作が無効となり、室内側リーダ2aの解錠ボタン11b上に位置する後述する解錠表示部14bを所定時間だけ点灯(又は点滅)するように表示手段14の表示を制御する。
【0031】
また、非接触媒体4の情報を正常認証した後に、電気錠装置3から解錠・閉扉の監視情報を取得し、室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bの少なくとも一方からON信号が入力されると、該当するリーダ2側の施錠ボタン11a上に位置する後述する施錠表示部14aを所定時間だけ点灯(又は点滅)するように表示手段14の表示を制御する。
【0032】
さらに、制御手段13は、解錠表示部14bが点灯(又は点滅)している状態で操作手段11の解錠ボタン11bが押されたときに、通信手段15を介して電気錠装置3に解錠指令信号を送信している。また、制御手段13は、施錠表示部14aが点灯(又は点滅)している状態で操作手段11の施錠ボタン11aが押されたときに、通信手段15を介して電気錠装置3に施錠指令信号を送信している。
【0033】
表示手段14は、錠前の施解錠に関する表示として、操作手段11のボタン操作を誘導する表示や錠前の施解錠状態の表示を制御手段13の制御の元に行っている。
【0034】
図2や図3に示すように、表示手段14は、操作手段11の第1操作ボタン11a上に一体に設けられた第1表示部14aと、操作手段11の第2操作ボタン11b上に一体に設けられた第2表示部14bとを有して構成される。
【0035】
本例では、第1表示部14aが施錠操作を誘導する表示や錠前の施錠状態を表示する施錠表示部として機能し、第2表示部14bが解錠操作を誘導する表示や錠前の解錠状態を表示する解錠表示部として機能する。
【0036】
さらに説明すると、図2や図3に示すように、施錠表示部14aは、2つの三角形(二等辺三角形や正三角形)の頂角が対向して内側に向いた形状により「施錠」を表現したランプで構成している。そして、このランプの点灯や点滅により、施錠ボタン11aを押下するように施錠操作を誘導したり、錠前が解錠状態から施錠状態に切り換わったことを表示している。また、解錠表示部14bは、2つの三角形(二等辺三角形や正三角形)の底辺を背合わせにして頂角が外側に向いた形状により「解錠」を表現したランプで構成している。そして、このランプの点灯や点滅により、解錠ボタン11bを押下するように解錠操作を誘導したり、錠前が施錠状態から解錠状態に切り換わったことを表示している。
【0037】
また、第1表示部14aと第2表示部14bは、上述した操作手段11のボタン操作を誘導表示する表示機能、錠前の施解錠状態の表示機能の他、受信手段12と非接触媒体4との非接触通信中に、制御手段13の制御により同時に点灯(又は同時に点滅、又は交互に点滅)し、通信中であることを利用者に知らせる表示機能も有している。尚、表示手段14としては、これら3つの表示機能を備えるのが好ましいが、少なくとも一つの表示機能を備えた構成とすることもできる。
【0038】
また、施錠表示部14a及び解錠表示部14bは、ランプの点灯や点滅によって操作手段11のボタン操作を誘導する表示や錠前の施解錠状態の表示を行うものであるが、図2や図3に示す形状のランプに限定されず、例えば2つの内向きの矢印形状のランプと2つの外向きの矢印形状のランプを点灯や点滅する構成としたり、「施錠」と「解錠」の文字で型取られた2つのランプを点灯や点滅する構成とすることもできる。さらに、上述した各表示機能毎にランプの点灯色や点滅色を変えて識別表示することも可能である。
【0039】
通信手段15は、例えばRS−485、イーサネット(登録商標)などを用い、リーダ2(2a,2b)間や電気錠装置3との間で相互に通信を行い、情報交換を行っている。具体的に、室内側リーダ2aは、室外側人検知センサ10bの検知信号を通信手段15を介して室外側リーダ2bから取得し、この取得した検知信号と室内側人検知センサ10aの検知信号とによる操作手段11の操作ボタンの有効・無効の状態を示す情報を通信手段15を介して室外側リーダ2bに送信している。また別の方法として、室外側リーダ2bは、室内側人検知センサ10aの検知信号を通信手段15を介して室内側リーダ2aから取得し、この取得した検知信号と室外側人検知センサ10bの検知信号とによる操作手段11の操作ボタンの有効・無効の状態を判別するようにしても良い。さらに、錠前の施解錠制御時には、操作手段11の操作信号に基づく解錠指令信号や施錠指令信号を電気錠装置3に通信手段15を介して送信している。また、現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態を示す状態情報を通信手段15を介して電気錠装置3から受信している。
【0040】
電気錠装置3は、リーダ2(2a,2b)との間で相互に通信可能とされており、リーダ2(2a,2b)からの解錠指令信号や施錠指令信号により錠前を電気的に施解錠制御するものである。この電気錠装置3は、図1に示すように、通信手段21、監視手段22、制御手段23、駆動手段24、施解錠機構25を備えている。
【0041】
通信手段21は、例えばRS−485、イーサネット(登録商標)などを用い、リーダ2との間で相互に通信を行い、情報交換を行っている。具体的に、通信手段21は、錠前の施解錠制御時に、リーダ2(2a,2b)からの操作手段11の操作信号に基づく解錠指令信号や施錠指令信号を受信している。また、監視手段22からの監視情報に基づく現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態を示す状態情報をリーダ2(2a,2b)に送信している。
【0042】
監視手段22は、例えばマイクロスイッチやリードスイッチなどの各種検知センサで構成され、現在の錠前の施解錠状態、扉の開閉状態を常時監視しており、その監視情報を制御手段23に入力している。
【0043】
制御手段23は、電気錠装置3の各部を統括制御するもので、例えばCPUやROM,RAMなどを有するマイクロコンピュータで構成される。制御手段23は、監視手段22からの監視情報に基づき、現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態を常時認識している。また、制御手段23は、通信手段21を介してリーダ2(2a,2b)から解錠指令信号や施錠指令信号が入力されたときに、現在の錠前の施解錠状態や扉の開閉状態に応じて錠前を解錠又は施錠するべく駆動手段24に解錠制御信号(解錠時)や施錠制御信号(施錠時)を出力している。
【0044】
駆動手段24は、制御手段23からの解錠制御信号や施錠制御信号により施解錠機構25を駆動して錠前を電気的に施解錠している。
【0045】
施解錠機構25は、駆動手段24からの通電により駆動されるモータやソレノイド等によって扉側のデッドボルトを扉枠側の係合穴に対して進退移動する機構で構成される。
【0046】
次に、上記のように構成される電気錠システム1において錠前を電気的に施解錠制御する場合の動作について説明する。
【0047】
まず、電気錠が施錠状態の時に室外から解錠する場合には、非接触媒体4を所持した利用者がリーダ2に近づき、非接触媒体4がリーダ2の通信可能領域内に入ると、リーダ2は、その非接触媒体4との間で非接触通信を行い、非接触媒体4に記憶された情報を読み取る。このとき、非接触媒体4を所持した室外の利用者が室外側人検知センサ10bによって検知される。この非接触通信中は、表示手段14の施錠表示部14aと解錠表示部14bが同時に点灯(又は同時に点滅、又は交互に点滅)している。これにより、非接触媒体4の情報の読み取りが完了したか否かを利用者に知らせる。そして、リーダ2は、非接触媒体4から読み取った情報と、予め登録されている情報とを照合し、その正当性を判別する。
【0048】
リーダ2は、非接触媒体4から読み取った情報を正常に認証し、室外の利用者のみを室外側人検知センサ10bが検知すると、操作手段11の解錠ボタン11b上の解錠表示部14bが所定時間だけ点灯(又は点滅)する。これにより、利用者に対して解錠ボタン11bの操作を誘導する。そして、解錠表示部14bが点灯(又は点滅)している間に非接触媒体4を所持した利用者によって解錠ボタン11bが押下されると、制御手段13から通信手段15,21を介して電気錠装置3の制御手段23に解錠指令信号を送信する。
【0049】
電気錠装置3の制御手段23は、リーダ2から解錠指令信号を受信すると、駆動手段24を介して施解錠機構25を駆動し、電気錠を解錠制御する。そして、電気錠装置3の制御手段23は、電気錠を解錠制御すると、監視手段22からの監視情報により現在の電気錠の施解錠状態を示す状態情報(解錠情報)を通信手段21,15を介してリーダ2に送信する。
【0050】
リーダ2の制御手段13は、電気錠装置3から状態情報(解錠情報)を受信すると、表示手段14の解錠表示部14bのランプが所定時間だけ点灯(又は点滅)し、このランプの点灯(点滅)により電気錠が施錠から解錠に切り換わったことを利用者に知らせる。
【0051】
なお、電気錠装置3に自動施錠設定がなされている場合、電気錠装置3の制御手段23は、扉開閉後、または閉扉のまま所定時間が経過したときに、駆動手段24を介して施解錠機構25を駆動し、電気錠を自動的に施錠制御する。また、特に自動施錠設定がなされていない場合には、電気錠の解錠状態を保持する。
【0052】
そして、電気錠が施錠状態の時に、非接触媒体4を所持した利用者が室内から解錠する場合にも、上述した室外からの解錠と同様の手順の動作によって電気錠が施錠から解錠に切り換えられる。
【0053】
ここで、上述した電気錠を室外又は室内から解錠する動作において、室内側人検知センサ10aと室外側人検知センサ10bの両方から人有りを示すON信号が入力された状態で非接触媒体4の情報を正常認証した場合には、室外側リーダ2bの操作手段11の解錠ボタン11bの操作を無効に制御している。これにより、非接触媒体4を所持した室内の人が電気錠の施解錠を意図とせずに扉に近づいて非接触媒体4の情報が正常認証されたときに、電気錠の施解錠が許可されていない室外の人(非接触媒体4を所持しない室外の人)が扉に近づいても、室外から不意に電気錠が解錠されてしまうことがない。
【0054】
次に、電気錠が解錠状態の時に室外から施錠する場合には、非接触媒体4を所持した利用者がリーダ2に近づき、非接触媒体4がリーダ2の通信可能領域内に入ると、リーダ2は、その非接触媒体4との間で非接触通信を行い、非接触媒体4に記憶された情報を読み取る。このとき、非接触媒体4を所持した室外の利用者が室外側人検知センサ10bによって検知される。この非接触通信中は、表示手段14の施錠表示部14aと解錠表示部14bが同時に点灯(又は同時に点滅、又は交互に点滅)している。これにより、非接触媒体4の情報の読み取りが完了したか否かを利用者に知らせる。そして、リーダ2は、非接触媒体4から読み取った情報と、予め登録されている情報とを照合し、その正当性を判別する。
【0055】
リーダ2は、非接触媒体4から読み取った情報を正常に認証し、室外の利用者のみを室外側人検知センサ10bが検知すると、操作手段11の施錠ボタン11a上の施錠表示部14aが所定時間だけ点灯(又は点滅)する。これにより、利用者に対して施錠ボタン11aの操作を誘導する。そして、施錠表示部14aが点灯(又は点滅)している間に非接触媒体4を所持した利用者によって施錠ボタン11aが押下されると、制御手段13から通信手段15,21を介して電気錠装置3の制御手段23に施錠指令信号を送信する。
【0056】
電気錠装置3の制御手段23は、リーダ2から施錠指令信号を受信すると、駆動手段24を介して施解錠機構25を駆動し、電気錠を施錠制御する。そして、電気錠装置3の制御手段23は、電気錠を施錠制御すると、監視手段22からの監視情報により現在の電気錠の施解錠状態を示す状態情報(施錠情報)を通信手段21,15を介してリーダ2に送信する。
【0057】
リーダ2の制御手段13は、電気錠装置3から状態情報(施錠情報)を受信すると、表示手段14の施錠表示部14aのランプが所定時間だけ点灯(又は点滅)し、このランプの点灯(又は点滅)により電気錠が解錠から施錠に切り換わったことを利用者に知らせる。
【0058】
そして、電気錠が解錠状態の時に、非接触媒体4を所持した利用者が室内から施錠する場合にも、上述した室外からの施錠と同様の手順の動作によって電気錠が解錠から施錠に切り換えられる。
【0059】
なお、上述した動作は、室内または室外のリーダ2を利用する場合の動作であるが、電気錠が解錠状態で閉扉状態の場合、非接触媒体4を用いないで室内側リーダ2aから施錠することもできる。この場合、室内側リーダ2aの施錠ボタン11aを押したときに、室内側人検知センサ10aが人を検知すると、室内側リーダ2aから電気錠装置3に施錠指令信号が送信され、電気錠装置3の制御手段23が電気錠を施錠制御する。
【0060】
このように、本例の電気錠システムでは、人を検知する人検知センサ10を室内側リーダ2a及び室外側リーダ2bに内蔵し、室内と室外の両方に人がいる状態で非接触媒体4の情報を正常認証した場合には、室外側リーダ2bの操作手段11の解錠ボタンを無効に制御している。これにより、非接触媒体4を所持した室内の人が電気錠の施解錠を意図とせずに扉に近づいて非接触媒体4の情報が正常認証されたときに、非接触媒体4を所持していない人(電気錠の施解錠の許可が与えられていない人)によって室外から不意に解錠されることが無く、防犯上にも優れた電気錠システムを提供することができる。
【0061】
また、本例のシステムに採用されるリーダ2は、非接触媒体4の情報の受信機能に加えて施解錠操作機能や施解錠状態表示機能を兼ね備えており、通信可能領域内にある非接触媒体4の情報を非接触で読み取って情報の正当性を判別し、この情報を正常に認証した後の操作手段11の解錠ボタン11b(又は施錠ボタン11a)を操作する一連の流れによって簡単に電気錠を施解錠することができる。
【0062】
これにより、従来のような別構成の専用の機構や機器が不要になり、別々に構成された操作表示器とリーダとを一体化して構成の簡素化を図り、利用者の使い勝手を向上させて電気錠システムを構築することができる。しかも、専用の機構や機器が不要になることにより、コストの低減が図れ、これら専用の機構や機器を設置するためのスペースの制約も無くなり、意匠性の向上を図ることができる。
【0063】
また、リーダ2では、操作手段11上に一体に設けられた表示手段14の表示制御により、受信手段12と非接触媒体4との間が通信中であるか否かの識別表示、非接触媒体4の情報の正常認証後の操作手段11のボタン操作の誘導表示、電気錠の施解錠制御直後の状態表示を動作状況に応じて適宜行っている。これにより、利用者は表示手段14の表示状態を確認しながら電気錠の施解錠動作を行うことができ、利用者の使い勝手もさらに向上させることができる。
【0064】
ところで、上述した形態では、非接触媒体4との通信中か否かの識別表示、操作手段11のボタン操作の誘導表示、電気錠の施解錠制御徳語の状態表示などを利用者に知らせるためにリーダ2(2a,2b)に表示手段14を備えた構成としているが、この表示手段14は必要不可欠な構成ではなく、構成の簡略化を図るために省く構成とすることもできる。
【0065】
また、室内側と室外側の両方にリーダ2(2a,2b)が設置されている状態で、室外側リーダ2bのみを使用する場合には、図4に示すように、室内側リーダ2aの本体表面に対し、操作手段11(上下ボタン11a,11b)及び表示手段14(上下ランプ14a,14b)を保護するカバー31を設ける。これにより、室内からの操作手段11の誤操作を防ぐことができる。なお、この場合、カバー31越しに室内の扉近傍の人が検知できるように室内側人検知センサ10aの検知窓が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る電気錠システムのブロック構成図である。
【図2】本発明に係る電気錠システムの室外側リーダの配設例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る電気錠システムの室内側リーダと室外側リーダの外観平面図である。
【図4】本発明に係る電気錠システムで非接触媒体の情報が正常認証されたときの各リーダのボタン操作の有効・無効の状態を示す図である。
【図5】本発明に係る電気錠システムのリーダの他の構成例を示す外観平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 電気錠システム
2 リーダ
2a 室内側リーダ
2b 室外側リーダ
3 電気錠装置
4 非接触媒体
10 人検知センサ
10a 室内側人検知センサ
10b 室外側人検知センサ
11 操作手段
11a 第1操作ボタン(施錠ボタン)
11b 第2操作ボタン(解錠ボタン)
12 受信手段
13 制御手段
14 表示手段
14a 第1表示部(施錠表示部)
14b 第2表示部(解錠表示部)
15 通信手段
21 通信手段
22 監視手段
23 制御手段
24 駆動手段
25 施解錠機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気錠の解錠操作又は施錠操作をする操作手段と、前記電気錠の施解錠に必要な特定の情報を記憶した非接触媒体が通信可能領域内にあるときに該非接触媒体の情報を非接触通信により取得する受信手段と、該受信手段が取得した前記非接触媒体の情報を正常認証した後の前記操作手段による操作及び前記電気錠の現在の状態に応じて該電気錠を解錠制御又は施錠制御する制御手段とを備えたリーダが扉近傍の室内側と室外側にそれぞれ配設され、
さらに室内と室外の前記扉近傍の人を検知する人検知センサを備え、
前記人検知センサが室内と室外の両方で前記扉近傍の人を検知した状態で前記非接触媒体の情報を正常認証したときに、前記室外のリーダの前記操作手段による解錠操作を無効に制御することを特徴とする電気錠システム。
【請求項2】
前記受信手段と前記非接触媒体との間が非接触通信中であるか否かを識別表示する表示機能と、前記非接触媒体の情報が正常認証されたときに前記操作手段の操作を誘導表示する表示機能と、前記電気錠の施解錠制御に伴う該電気錠の施解錠状態を識別表示する表示機能のうち少なくとも一つの表示機能を有する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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