電気集塵用荷電装置
【課題】荷電効率の良い電気集塵用荷電装置を提供する。
【解決手段】荷電装置10は、放電電極1と、放電電極1に対峙する対向電極2との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部10aによって構成され、放電電極1は、板状であり、対向電極2の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加される。
【解決手段】荷電装置10は、放電電極1と、放電電極1に対峙する対向電極2との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部10aによって構成され、放電電極1は、板状であり、対向電極2の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気集塵用荷電装置、特に、板状電極を利用した電気集塵用の荷電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に空気清浄機の電気集塵装置は二つの電極間でコロナ放電を発生させて塵埃を帯電させる荷電部と、この荷電部で帯電された塵埃を集塵する集塵部とから構成される。荷電部は、平板状の対向電極、長手方向に対して複数の針状突起が一定間隔で形成される放電電極が配設される。そして、平板状の対向電極の面に放電電極に形成する複数の針状突起が対向し、かつ放電電極は空気流に対して直行するように配置される。次に、対向電極と放電電極との間に直流の高電圧を印加することにより、この電極間でコロナ放電が発生する。これにより、この電極間を通過する塵埃は正に帯電され、この後で集塵部によって補足され、清浄な空気となる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−184969号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された空気清浄機に搭載する電気集塵装置の荷電部は、放電電極に形成する複数の針状突起を空気の流れ方向に対して直交するように配置され、複数の針状突起と平板状の対向電極との第1空間でコロナ放電が集中して発生することになる。このために、第1空間を通過する塵埃粒子の殆どは帯電され易い状態と言える。
(あ)しかし、複数の針状突起間の第2空間ではコロナ放電が殆ど発生せず、この第2空間を通過する塵埃は帯電されない状態にある。このために、荷電部の荷電効率は比較的低いという問題点があった。
(い)また、複数の針状突起同士の間隔を狭くした場合、突起から対向電極に流れるコロナ放電電流が複数の針状突起同士で互いに干渉し合う。これにより、コロナ放電電流に脈動が生じて安定した電流が得られなくなるので、コロナ放電量は変動して帯電効率が低下するという問題点があった。
(う)さらに、前述のコロナ放電電流の脈動により雑音が発生すると同時にオゾン量が増え、人間に対して違和感を与えるという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑み、荷電効率をよくすることができる電気集塵用荷電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、放電電極と、該放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電させる荷電部と、該荷電部において帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、前記放電電極は、板状で前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、荷電装置を構成する放電電極が板状であるから、放電電極と対向電極との間に電圧を印加することによって、放電電極と対向電極との間の間隔を通過する空気中の粒子に対し高効率の荷電をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態1:平行設置]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る電気集塵用荷電装置に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図1は模式的に表した斜視図、図2は模式的に表した断面図である。
図1および図2に示す電気集塵用荷電装置(以下、「荷電装置」と称す)10において、荷電部10aは、放電電極1と、その対向電極2と、両者間に所定の電圧を付与する電源(図示しない)と、から形成され、粒子及び粉塵は両者の間を通過する際、帯電する。放電電極1は、板状で、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属、あるいはこれらの金属を主成分とする合金、もしくはこれらの金属に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたもので形成されている。
対向電極2は、板状で、同様の金属あるいはカーボン、金属フィラー等を練り込んだ導電性樹脂で形成されている。
【0009】
図1および図2に示す荷電部10aにおいて、放電電極1は対向電極2と平行に設置されている。つまり、板状の放電電極1の断面形状は短辺と長辺とを備えた矩形形状で、板状の対向電極2の断面形状も同じく短辺と長辺とを備えた矩形形状で、両電極の短辺同士・長辺同士が平行になるように設置されている。そして、放電電極1と対向電極2の間に数μA/cmの電流を流して、通過する粒子及び粉塵を帯電させる。
なお、荷電部10aの下流側に図示していないが集塵部が配置される。
【0010】
[実施の形態2:垂直設置]
図3および図4は本発明の実施の形態2に係る電気集塵用荷電装置に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図3は模式的に表した斜視図、図4は模式的に表した断面図である。
図3および図4に示す電気集塵用荷電装置(以下、「荷電装置」と称す)20において、荷電部10cには、放電電極1cが対向電極2に対して垂直に設置されている。なお、放電電極1cは放電電極1と同じものである。すなわち、荷電装置10(実施の形態1)と荷電装置20(実施の形態2)との相違は、対向電極2に対する放電電極の設置形態であって、前者では平行に設置され、後者では垂直に設置されるものである。
【0011】
[放電状況]
次に、実施の形態1に説明した荷電装置10と実施の形態2に説明した荷電装置20とにおける放電状況を、互いに比較しながら説明する。
図5および図6は本発明の実施の形態1および実施の形態2に説明した電気集塵用荷電装置における放電状況を模式的に表したものであって、図5は前者(平行設置の場合)の断面図、図6は後者(垂直配置の場合)の断面図である。
図7および図8は、放電状況を比較するためのものであって、図7の(a)はワイヤ電極の構成を模式的に表した斜視図、図7の(b)はワイヤ電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図、図8の(a)は突起電極の構成を模式的に表した斜視図、図8の(b)は突起電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図である。
【0012】
図5において、放電電極1を対向電極2と平行に設置した場合、荷電電極である放電電極1を凹凸が少なく平たい扁平形状にしたことで、放電は、放電電極1の断面からみて矩形状の四角の四箇所から起こっている。更に、放電電極の全体は均一に対向電極に向けて放電している。
【0013】
図6において、放電電極1cを対向電極2と垂直に設置した場合、放電電極1が平行である時よりも放電領域が狭く、放電領域が重なる部分もある。それによって、より高い電界強度が得られる。
また、荷電装置20の用途により、放電電極1cは垂直に設置されるため、圧損が僅かに上昇する。荷電部10cに通過する空気が放電電極1cにぶつかることによって、乱流が発生し、通過する粒子が効率よく荷電されることになる。
【0014】
図7において、比較する荷電部10wには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行にワイヤ電極1wが設置されている。そして、荷電領域はワイヤ電極1wの対向する側面(二箇所)に形成されている。
図8において、比較する荷電部10xには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行に突起電極1xが設置されている。そして、荷電領域は突起電極1xの突起先端に形成されている(基本的に二箇所に形成されている)。
【0015】
ここで、図5および図6と、図7の(b)および図8の(b)とを比較すると、放電電極1および放電電極1cの場合に、これらと対向電極2との間に生じる荷電領域は、ワイヤ電極1wまたは突起電極1xと、対向電極2との間に生じる荷電領域の何れよりも広いことが分かる。
すなわち、放電電極1および放電電極1cは設置形態にかかわらず、荷電領域が広く、この領域を通過する粒子や大気塵(粒子径0.3μm程度)に対して、効率よく荷電することができる。
【0016】
(実施例)
図9は図1に示された荷電装置の実施例の詳細寸法を示す模式図である。
図1に示す荷電部10aは、荷電装置10について、最大の荷電効率を出すため、最適化したものである。
すなわち、対向電極2は、幅A(長辺)が15〜20mm、厚みB(短辺)が0.1〜0.5mmである。放電電極1は、幅C(長辺)が0.5〜1.0mm、厚みD(短辺)が0.05〜0.1mmである。そして、対向電極2が平行に配置され、放電電極1と対向電極2との距離Eは10〜12mmである。このとき、荷電装置10の性能は、最も良い状態である。
なお、荷電部10cのように、放電電極が垂直に設置されている場合は、放電電極1cと対向電極2との距離は、9〜12mmが良い。
【0017】
(荷電効率)
次に、図2を参照して、荷電装置10の荷電効率について説明する。
荷電装置10の電源は用途により、荷電する電極をプラス荷電あるいはマイナス荷電に選択することができる。
例えば、荷電装置10の下流側に集塵部を配置した場合、荷電部10aの荷電電極極性と集塵部の電極極性を一致にした場合、良い集塵効率が得られる。荷電部10aの電源はプラスあるいはマイナスの荷電をすると、荷電部10aを通過する際、空気中の粒子及び大気塵がプラスあるいはマイナスの電荷に帯電され、気流とともに下流の集塵部に入る。
【0018】
(電流/電圧特性)
図10および図11は、図1に示された荷電装置における印加電圧と電流との関係を示す電気特性図であって、図10はプラス荷電時、図11はマイナス荷電時である。なお、放電電極1の短辺は0.05〜0.1mm、長辺は0.6〜1mmの範囲で、放電電極1は表面加工が有るかないかをパラメータにしている。たとえば、図中、中抜きひし形である「0.093−0.97」は短辺が0.093mmで長辺が0.97mmで表面加工なしを示し、黒丸である「0.057−0.65(Gold)」は、短辺が0.057mmで長辺が0.65mmで表面に金メッキを施していることを示している。
図10より、荷電装置10は、荷電部10aにプラスの荷電を印加する場合の電圧は、6〜9.5kVであることを特徴としている。
図11より、荷電装置10は、荷電部10aにマイナスの荷電を印加する場合、その電圧は4〜9kVであることを特徴としている。
【0019】
(荷電効率)
図12は、図1に示された荷電装置の荷電効率を説明する荷電効率特性図である。
図12において、荷電部10aの放電電極を板状にしたことによって、図10に示すワイヤ電極1wや突起電極1xの場合に比較して、大幅な荷電効率向上が認められる。たとえば、荷電電流を約160μA付加すると、板状の放電電極では100%に近い荷電効率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは約80%程度でしかない。また、荷電電流を約80μA付加した場合でも、板状の放電電極では90%以上の荷電効率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは80%未満でしかない。
よって、荷電装置10は、板状の放電電極1の効果によって、荷電効率が約20%向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、高い荷電効率が得られると共に、装置を小型にすることができるから、各種電気集塵用荷電装置として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る荷電装置の放電電極の構成を模式的に表した構成図。
【図2】図1に示す荷電装置の放電電極の断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る荷電装置の放電電極の構成を模式的に表した構成図。
【図4】図3に示す荷電装置の放電電極の断面図。
【図5】図1に示す荷電装置の放電電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図6】図3に示す荷電装置の放電電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図7】比較するためのワイヤ電極を表した斜視図及びその放電状態を模式的に表した断面図。
【図8】比較するための突起電極を表した斜視図及びその放電状態を模式的に表した断面図。
【図9】図1に示された荷電装置の荷電部の実施例の詳細寸法を示す模式図。
【図10】図1に示された荷電装置の荷電部におけるプラス荷電時の電気特性図。
【図11】図1に示された荷電装置の荷電部におけるマイナス荷電時の電気特性図。
【図12】図1に示された荷電装置の荷電効率を説明する荷電効率特性図。
【符号の説明】
【0022】
1:放電電極(平行状態)、1c:放電電極(垂直状態)、1w:ワイヤ電極、1x:突起電極、2:対向電極、10:荷電装置、10a:荷電部、10c:荷電部(垂直状態)、10w:荷電部(ワイヤ電極)、10x:荷電部(突起電極)、A:対向電極幅、B:対向電極厚さ、C:放電電極幅、D:放電電極厚み、E:放電電極と対向電極の距離。
【技術分野】
【0001】
本発明は電気集塵用荷電装置、特に、板状電極を利用した電気集塵用の荷電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に空気清浄機の電気集塵装置は二つの電極間でコロナ放電を発生させて塵埃を帯電させる荷電部と、この荷電部で帯電された塵埃を集塵する集塵部とから構成される。荷電部は、平板状の対向電極、長手方向に対して複数の針状突起が一定間隔で形成される放電電極が配設される。そして、平板状の対向電極の面に放電電極に形成する複数の針状突起が対向し、かつ放電電極は空気流に対して直行するように配置される。次に、対向電極と放電電極との間に直流の高電圧を印加することにより、この電極間でコロナ放電が発生する。これにより、この電極間を通過する塵埃は正に帯電され、この後で集塵部によって補足され、清浄な空気となる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−184969号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された空気清浄機に搭載する電気集塵装置の荷電部は、放電電極に形成する複数の針状突起を空気の流れ方向に対して直交するように配置され、複数の針状突起と平板状の対向電極との第1空間でコロナ放電が集中して発生することになる。このために、第1空間を通過する塵埃粒子の殆どは帯電され易い状態と言える。
(あ)しかし、複数の針状突起間の第2空間ではコロナ放電が殆ど発生せず、この第2空間を通過する塵埃は帯電されない状態にある。このために、荷電部の荷電効率は比較的低いという問題点があった。
(い)また、複数の針状突起同士の間隔を狭くした場合、突起から対向電極に流れるコロナ放電電流が複数の針状突起同士で互いに干渉し合う。これにより、コロナ放電電流に脈動が生じて安定した電流が得られなくなるので、コロナ放電量は変動して帯電効率が低下するという問題点があった。
(う)さらに、前述のコロナ放電電流の脈動により雑音が発生すると同時にオゾン量が増え、人間に対して違和感を与えるという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑み、荷電効率をよくすることができる電気集塵用荷電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、放電電極と、該放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電させる荷電部と、該荷電部において帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、前記放電電極は、板状で前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、荷電装置を構成する放電電極が板状であるから、放電電極と対向電極との間に電圧を印加することによって、放電電極と対向電極との間の間隔を通過する空気中の粒子に対し高効率の荷電をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態1:平行設置]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る電気集塵用荷電装置に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図1は模式的に表した斜視図、図2は模式的に表した断面図である。
図1および図2に示す電気集塵用荷電装置(以下、「荷電装置」と称す)10において、荷電部10aは、放電電極1と、その対向電極2と、両者間に所定の電圧を付与する電源(図示しない)と、から形成され、粒子及び粉塵は両者の間を通過する際、帯電する。放電電極1は、板状で、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属、あるいはこれらの金属を主成分とする合金、もしくはこれらの金属に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたもので形成されている。
対向電極2は、板状で、同様の金属あるいはカーボン、金属フィラー等を練り込んだ導電性樹脂で形成されている。
【0009】
図1および図2に示す荷電部10aにおいて、放電電極1は対向電極2と平行に設置されている。つまり、板状の放電電極1の断面形状は短辺と長辺とを備えた矩形形状で、板状の対向電極2の断面形状も同じく短辺と長辺とを備えた矩形形状で、両電極の短辺同士・長辺同士が平行になるように設置されている。そして、放電電極1と対向電極2の間に数μA/cmの電流を流して、通過する粒子及び粉塵を帯電させる。
なお、荷電部10aの下流側に図示していないが集塵部が配置される。
【0010】
[実施の形態2:垂直設置]
図3および図4は本発明の実施の形態2に係る電気集塵用荷電装置に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図3は模式的に表した斜視図、図4は模式的に表した断面図である。
図3および図4に示す電気集塵用荷電装置(以下、「荷電装置」と称す)20において、荷電部10cには、放電電極1cが対向電極2に対して垂直に設置されている。なお、放電電極1cは放電電極1と同じものである。すなわち、荷電装置10(実施の形態1)と荷電装置20(実施の形態2)との相違は、対向電極2に対する放電電極の設置形態であって、前者では平行に設置され、後者では垂直に設置されるものである。
【0011】
[放電状況]
次に、実施の形態1に説明した荷電装置10と実施の形態2に説明した荷電装置20とにおける放電状況を、互いに比較しながら説明する。
図5および図6は本発明の実施の形態1および実施の形態2に説明した電気集塵用荷電装置における放電状況を模式的に表したものであって、図5は前者(平行設置の場合)の断面図、図6は後者(垂直配置の場合)の断面図である。
図7および図8は、放電状況を比較するためのものであって、図7の(a)はワイヤ電極の構成を模式的に表した斜視図、図7の(b)はワイヤ電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図、図8の(a)は突起電極の構成を模式的に表した斜視図、図8の(b)は突起電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図である。
【0012】
図5において、放電電極1を対向電極2と平行に設置した場合、荷電電極である放電電極1を凹凸が少なく平たい扁平形状にしたことで、放電は、放電電極1の断面からみて矩形状の四角の四箇所から起こっている。更に、放電電極の全体は均一に対向電極に向けて放電している。
【0013】
図6において、放電電極1cを対向電極2と垂直に設置した場合、放電電極1が平行である時よりも放電領域が狭く、放電領域が重なる部分もある。それによって、より高い電界強度が得られる。
また、荷電装置20の用途により、放電電極1cは垂直に設置されるため、圧損が僅かに上昇する。荷電部10cに通過する空気が放電電極1cにぶつかることによって、乱流が発生し、通過する粒子が効率よく荷電されることになる。
【0014】
図7において、比較する荷電部10wには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行にワイヤ電極1wが設置されている。そして、荷電領域はワイヤ電極1wの対向する側面(二箇所)に形成されている。
図8において、比較する荷電部10xには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行に突起電極1xが設置されている。そして、荷電領域は突起電極1xの突起先端に形成されている(基本的に二箇所に形成されている)。
【0015】
ここで、図5および図6と、図7の(b)および図8の(b)とを比較すると、放電電極1および放電電極1cの場合に、これらと対向電極2との間に生じる荷電領域は、ワイヤ電極1wまたは突起電極1xと、対向電極2との間に生じる荷電領域の何れよりも広いことが分かる。
すなわち、放電電極1および放電電極1cは設置形態にかかわらず、荷電領域が広く、この領域を通過する粒子や大気塵(粒子径0.3μm程度)に対して、効率よく荷電することができる。
【0016】
(実施例)
図9は図1に示された荷電装置の実施例の詳細寸法を示す模式図である。
図1に示す荷電部10aは、荷電装置10について、最大の荷電効率を出すため、最適化したものである。
すなわち、対向電極2は、幅A(長辺)が15〜20mm、厚みB(短辺)が0.1〜0.5mmである。放電電極1は、幅C(長辺)が0.5〜1.0mm、厚みD(短辺)が0.05〜0.1mmである。そして、対向電極2が平行に配置され、放電電極1と対向電極2との距離Eは10〜12mmである。このとき、荷電装置10の性能は、最も良い状態である。
なお、荷電部10cのように、放電電極が垂直に設置されている場合は、放電電極1cと対向電極2との距離は、9〜12mmが良い。
【0017】
(荷電効率)
次に、図2を参照して、荷電装置10の荷電効率について説明する。
荷電装置10の電源は用途により、荷電する電極をプラス荷電あるいはマイナス荷電に選択することができる。
例えば、荷電装置10の下流側に集塵部を配置した場合、荷電部10aの荷電電極極性と集塵部の電極極性を一致にした場合、良い集塵効率が得られる。荷電部10aの電源はプラスあるいはマイナスの荷電をすると、荷電部10aを通過する際、空気中の粒子及び大気塵がプラスあるいはマイナスの電荷に帯電され、気流とともに下流の集塵部に入る。
【0018】
(電流/電圧特性)
図10および図11は、図1に示された荷電装置における印加電圧と電流との関係を示す電気特性図であって、図10はプラス荷電時、図11はマイナス荷電時である。なお、放電電極1の短辺は0.05〜0.1mm、長辺は0.6〜1mmの範囲で、放電電極1は表面加工が有るかないかをパラメータにしている。たとえば、図中、中抜きひし形である「0.093−0.97」は短辺が0.093mmで長辺が0.97mmで表面加工なしを示し、黒丸である「0.057−0.65(Gold)」は、短辺が0.057mmで長辺が0.65mmで表面に金メッキを施していることを示している。
図10より、荷電装置10は、荷電部10aにプラスの荷電を印加する場合の電圧は、6〜9.5kVであることを特徴としている。
図11より、荷電装置10は、荷電部10aにマイナスの荷電を印加する場合、その電圧は4〜9kVであることを特徴としている。
【0019】
(荷電効率)
図12は、図1に示された荷電装置の荷電効率を説明する荷電効率特性図である。
図12において、荷電部10aの放電電極を板状にしたことによって、図10に示すワイヤ電極1wや突起電極1xの場合に比較して、大幅な荷電効率向上が認められる。たとえば、荷電電流を約160μA付加すると、板状の放電電極では100%に近い荷電効率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは約80%程度でしかない。また、荷電電流を約80μA付加した場合でも、板状の放電電極では90%以上の荷電効率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは80%未満でしかない。
よって、荷電装置10は、板状の放電電極1の効果によって、荷電効率が約20%向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る電気集塵用荷電装置は、高い荷電効率が得られると共に、装置を小型にすることができるから、各種電気集塵用荷電装置として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る荷電装置の放電電極の構成を模式的に表した構成図。
【図2】図1に示す荷電装置の放電電極の断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る荷電装置の放電電極の構成を模式的に表した構成図。
【図4】図3に示す荷電装置の放電電極の断面図。
【図5】図1に示す荷電装置の放電電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図6】図3に示す荷電装置の放電電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図7】比較するためのワイヤ電極を表した斜視図及びその放電状態を模式的に表した断面図。
【図8】比較するための突起電極を表した斜視図及びその放電状態を模式的に表した断面図。
【図9】図1に示された荷電装置の荷電部の実施例の詳細寸法を示す模式図。
【図10】図1に示された荷電装置の荷電部におけるプラス荷電時の電気特性図。
【図11】図1に示された荷電装置の荷電部におけるマイナス荷電時の電気特性図。
【図12】図1に示された荷電装置の荷電効率を説明する荷電効率特性図。
【符号の説明】
【0022】
1:放電電極(平行状態)、1c:放電電極(垂直状態)、1w:ワイヤ電極、1x:突起電極、2:対向電極、10:荷電装置、10a:荷電部、10c:荷電部(垂直状態)、10w:荷電部(ワイヤ電極)、10x:荷電部(突起電極)、A:対向電極幅、B:対向電極厚さ、C:放電電極幅、D:放電電極厚み、E:放電電極と対向電極の距離。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電させる荷電装置において、
前記放電電極は、板状であり、前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする電気集塵用荷電装置。
【請求項2】
前記放電電極は、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属または該金属を主成分とする合金、もしくは該金属または該合金に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたものによって形成され、
前記対向電極は、前記金属または前記合金、あるいはカーボン、金属フィラーを練り込んだ導電性樹脂によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項3】
前記放電電極および対向電極は、その断面形状が長辺と短辺とを備えた矩形状とし、前記放電電極の短辺と前記対向電極の短辺を平行または垂直に設置し、前記放電電極と前記対向電極との距離を、前記放電電極と対向電極の短辺同士を平行に設置した時は10〜12mmに、前記放電電極と対向電極の短辺同士を垂直に設置した時は9〜12mmにしたことを特徴とする請求項1または2記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項4】
前記放電電極に印加する電圧は、プラス6〜9.5kV、またはマイナス4〜9kVであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項5】
前記対向電極の長辺の幅を15〜20mm、短辺を0.1〜0.5mmとし、前記放電電極の短辺を0.05〜0.1mm、長辺を0.6〜1.0mmとしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項1】
放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電させる荷電装置において、
前記放電電極は、板状であり、前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする電気集塵用荷電装置。
【請求項2】
前記放電電極は、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属または該金属を主成分とする合金、もしくは該金属または該合金に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたものによって形成され、
前記対向電極は、前記金属または前記合金、あるいはカーボン、金属フィラーを練り込んだ導電性樹脂によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項3】
前記放電電極および対向電極は、その断面形状が長辺と短辺とを備えた矩形状とし、前記放電電極の短辺と前記対向電極の短辺を平行または垂直に設置し、前記放電電極と前記対向電極との距離を、前記放電電極と対向電極の短辺同士を平行に設置した時は10〜12mmに、前記放電電極と対向電極の短辺同士を垂直に設置した時は9〜12mmにしたことを特徴とする請求項1または2記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項4】
前記放電電極に印加する電圧は、プラス6〜9.5kV、またはマイナス4〜9kVであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電気集塵用荷電装置。
【請求項5】
前記対向電極の長辺の幅を15〜20mm、短辺を0.1〜0.5mmとし、前記放電電極の短辺を0.05〜0.1mm、長辺を0.6〜1.0mmとしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電気集塵用荷電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−22999(P2010−22999A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190754(P2008−190754)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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