説明

電気集塵装置

【課題】集塵部の集塵接地極板において、間にスペーサーを入れて極間を保持すると極板枚数が増え、材料費が掛かるだけでなく作業工数や質量も増える。また、集塵接地極板を電気絶縁フィルムで覆い、凹凸を設けて重ねるだけで極板間隔を保持するものがあるが、電気絶縁フィルム表面の電荷が接触によりしまうため逃げて集塵性能が低下するなどの課題があった。
【解決手段】集塵接地極板11に接地極板凸部16を設けて互い違いに並べることで集塵接地極板11同士の間隔を一定に保持させるとともに、この集塵接地極板11と交互に配した集塵正極板12に前記集塵接地極板11の接地極板凸部16を避ける形で開口部17を設けたことを特徴とし、集塵接地極板11の極間を維持できるためスペーサー10が不要となり、部品点数や組立工数・材料費・質量を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊粒子である塵埃などを捕集する電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用や業務用では空気清浄機や分煙機器、産業用ではトンネル換気用集塵装置やオイルミスト除去装置として、大気中の浮遊物(粉塵やオイルミスト・煙など)に電荷を与えることで、居室内やトンネル内・工場内などで発生する大気中の浮遊物(粉塵やオイルミスト・煙など)を捕集する電気集塵装置が採用されている。
【0003】
そして、かかる用途の電気集塵装置の集塵部においては、集塵接地極板や集塵放電極板の間隔を保持するために間にスペーサーを入れたものが多かった。しかし、極板枚数が増えると使用するスペーサーの数が多くなってしまうため材料費が掛かるだけでなく作業工数や質量も増えるという課題があった。このような状況の中で、集塵接地極板を電気絶縁フィルムで覆い、集塵接地極板表面に凹凸を設けることで、重ねるだけで絶縁を保ちつつ集塵接地極板と集塵正極板の極板間隔を保持できることを特徴とした電気集塵装置が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平1−119353号公報
【特許文献2】特開昭63−156554号公報
【特許文献3】特許第3641704号公報
【特許文献4】特開2000−488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気集塵装置の集塵部においては、集塵接地極板や集塵放電極板の間隔を保持するために、間にスペーサーを入れたものが一般的だが、極板枚数が増えると使用するスペーサーの数が多くなってしまうため材料費が掛かるだけでなく作業工数や質量も増えるという課題があった。また、最近では集塵接地極板を電気絶縁フィルムで覆い、集塵接地極板表面に凹凸を設けることで、重ねるだけで絶縁を保ちつつ集塵接地極板と集塵正極板の極板間隔を保持するものがあるが、この場合、集塵正極板の電気絶縁フィルム表面の電荷が集塵接地極板に接触することで逃げてしまうため、集塵性能が低下してしまうという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、集塵接地極板間のスペーサーを無くして質量や材料費・作業工数を減らすだけでなく、集塵放電極板の電荷が集塵接地極板に逃げて集塵性能が低下させることのない電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、コロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、集塵接地極板と集塵正極板を交互に配し、集塵正極板に高圧を印加することで集塵正極板からのクーロン力で埃などを集塵接地極板に吸着捕集させる集塵部からなる電気集塵装置において、前記集塵接地極板の表面に接地極板凸部を設け、前記集塵正極板には、前記接地極板凸部を避けるように開口部を設け、前記接地極板凸部が、集塵正極板をはさんで隣り合う他の集塵接地極板と接触することによって集塵接地極板同士の間隔を一定に保持させることを特徴としたものである。
【0007】
また、複数の前記接地極板凸部を前記集塵接地極板の表面に1列に並べて設け、集塵接地極板の表と裏に交互に互い違いになるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この手段により、集塵接地極板の極間を維持できるためスペーサーが不要となり、部品点数や組立工数・材料費・質量の少ない電気集塵装置が得られる。
【0009】
また、他の手段は、集塵接地極板の接地極板凸部の頂部同士を合わせることで間隔を保持させることを特徴とするものである。
【0010】
この手段により、集塵接地極板の接地極板凸部の高さを1/2にできるため絞り加工の工程を簡素化できるだけでなく、割れや反りなどの不良が発生しにくい電気集塵装置が得られる。
【0011】
また、他の手段は、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料としたことを特徴とするものである。
【0012】
この手段により、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料とすることで、鋼板やステンレス板に対して比重を約1/3にできるため、軽量な電気集塵装置が得られる。
【0013】
また、他の手段は、集塵正極板や集塵接地極板をフレームより小さい寸法としたことを特徴としたものである。
【0014】
この手段により、集塵正極板や集塵接地極板が集塵装置のフレームの外寸より小さくできているため、運搬や組立て、メンテナンスを行なう際、外力による集塵正極板や集塵接地極板の変形を防ぎ、短絡や集塵性能の低下を防ぐことのできる電気集塵装置が得られる。
【0015】
また、他の手段は、集塵接地極板の接地極板凸部の立ち上がりに複数の絞り孔を均等な間隔に設けたことを特徴とするものである。
【0016】
この手段により、処理風が接地極板凸部の複数の絞り孔を通り抜けることで、処理風量の低下を防ぐことができ、また接地極板凸部に複数の絞り孔を設けることで材料の伸びを促し、割れや反りを防ぐことができる電気集塵装置が得られる。
【0017】
また、他の手段は、集塵接地極板に保持用シャフト穴を設け、この保持用シャフト穴に接地側シャフトを通すことにより位置決めを行なうことを特徴とするものである。
【0018】
この手段により、集塵接地極板の保持用シャフト穴に接地側シャフトを通して積み重ねるだけで、集塵接地極板の上下左右の位置決めができる電気集塵装置が得られる。
【0019】
また、他の手段は、保持用シャフト穴を一つ置きに切欠穴としたことを特徴としたものである。
【0020】
この手段により、集塵接地極板を裏表交互に重ねるため、保持用シャフト穴と切欠穴が交互になるため、極板の位置決めを行ないつつ保持用シャフト穴に接地側シャフトを通す個所を減らすことができ、作業性を向上させることのできる電気集塵装置が得られる。
【0021】
また、他の手段は、集塵接地極板の片側の押えを止め輪によって行なうことを特徴とするものである。
【0022】
この手段により、集塵接地極板の片側の押えを止め輪で位置決めすることによって、片側だけをナットで締め付けるだけで済むため、組立てやメンテナンスの集塵正極板の位置決め調整が容易にできる電気集塵装置が得られる。
【0023】
また、他の手段は、集塵部の風の流入面あるいは流出面に対角状に筋交いを設けたことを特徴としたものである。
【0024】
この手段により、筋交いにより集塵装置・集塵部を対角で矯正できるため、変形や各部品の緩みを防ぐことのできる電気集塵装置が得られる。
【0025】
また、他の手段は、フレームの下端に爪穴を設け、この爪穴に筋交いの下端に設けた爪部を引っ掛けて保持できることを特徴としたものである。
【0026】
この手段により、電気集塵装置・集塵部に筋交いを設ける場合、特に固定しにくい電気集塵装置・集塵部の下部に筋交いの爪部を引っ掛けるだけで良いため、生産性やメンテナンス性を向上させることのできる電気集塵装置が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電気集塵装置によれば、前記集塵接地極板に接地極板凸部を設けて互い違いに並べることで集塵接地極板同士の間隔を一定に保持させるとともに、この集塵接地極板と交互に配した集塵正極板に前記集塵接地極板の接地極板凸部を避ける形で開口部を設けた構成とすることにより、集塵接地極板の極間を維持できるためスペーサーが不要となり、部品点数や組立工数・材料費・質量の少ない電気集塵装置を提供することができる。
【0028】
また、集塵接地極板の接地極板凸部の頂部同士を合わせることで間隔を保持させる構成とすることにより、集塵接地極板の接地極板凸部の高さを1/2にできるため絞り加工の工程を簡素化できるだけでなく、割れや反りなどの不良が発生しにくい電気集塵装置を提供することができる。
【0029】
また、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料とした構成とすることにより、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料とすることで、鋼板やステンレス板に対して比重を約1/3にできるため、軽量な電気集塵装置を提供することができる。
【0030】
また、集塵正極板や集塵接地極板をフレームより小さい寸法とした構成とすることにより、集塵正極板や集塵接地極板が集塵装置のフレームの外寸より小さくできているため、運搬や組立て、メンテナンスを行なう際、外力による集塵正極板や集塵接地極板の変形を防ぎ、短絡や集塵性能の低下を防ぐことのできる電気集塵装置を提供することができる。
【0031】
また、集塵接地極板の接地極板凸部の立ち上がりに複数の絞り孔を均等な間隔に設けた構成とすることにより、処理風が接地極板凸部の複数の絞り孔を通り抜けることで、処理風量の低下を防ぐことができ、また接地極板凸部に複数の絞り孔を設けることで材料の伸びを促し、割れや反りを防ぐことのできる電気集塵装置を提供することができる。
【0032】
また、集塵接地極板に保持用シャフト穴を設け、この保持用シャフト穴に接地側シャフトを通すことにより位置決めを行なう構成とすることにより、集塵接地極板の保持用シャフト穴に接地側シャフトを通して積み重ねるだけで、集塵接地極板の上下左右の位置決めができる電気集塵装置を提供することができる。
【0033】
また、保持用シャフト穴を一つ置きに切欠穴とした構成とすることにより、集塵接地極板を裏表交互に重ねるため、保持用シャフト穴と切欠穴が交互になるため、極板の位置決めを行ないつつ保持用シャフト穴に接地側シャフトを通す個所を減らすことができ、作業性を向上させることのできる電気集塵装置を提供することができる。
【0034】
また、集塵接地極板の片側の押えを止め輪によって行なう構成とすることにより、集塵接地極板の片側の押えを止め輪で位置決めすることによって、片側だけをナットで締め付けるだけで済むため、組立てやメンテナンスの集塵正極板の位置決め調整が容易にできる電気集塵装置を提供することができる。
【0035】
また、集塵部の風の流入面あるいは流出面に対角状に筋交いを設けた構成とすることにより、筋交いにより集塵装置・集塵部を対角で矯正できるため、変形や各部品の緩みのない電気集塵装置を提供することができる。
【0036】
また、フレームの下端に爪穴を設け、この爪穴に筋交いの下端に設けた爪部を引っ掛けて保持できる構成とすることにより、電気集塵装置・集塵部に筋交いを設ける場合、特に固定しにくい電気集塵装置・集塵部の下部に筋交いの爪部を引っ掛けるだけで良いため、生産性やメンテナンス性の良い電気集塵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
請求項1記載の発明は、コロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、集塵接地極板と集塵正極板を交互に配し、集塵正極板に高圧を印加することで集塵正極板からのクーロン力で埃などを集塵接地極板に吸着捕集させる集塵部からなる電気集塵装置において、前記集塵接地極板の表面に接地極板凸部を設け、前記集塵正極板には、前記接地極板凸部を避けるように開口部を設け、前記接地極板凸部が、集塵正極板をはさんで隣り合う他の集塵接地極板と接触することによって集塵接地極板同士の間隔を一定に保持させることを特徴とした電気集塵装置である。
【0038】
また、請求項2記載の発明は、複数の前記接地極板凸部を前記集塵接地極板の表面に1列に並べて設け、集塵接地極板の表と裏に交互に互い違いになるようにしたことを特徴とする電気集塵装置であり、集塵接地極板の接地極板凸部の山が集塵正極板の開口部を、集塵正極板との空間距離を確保しつつ貫通し、集塵正極板の反対側にある集塵接地極板に当たることで集塵接地極板同士の間隔を一定に保持するともに、集塵正極板や電気絶縁フィルム等の電気絶縁体に接触しないため電気絶縁フィルム表面の電荷が逃げないという作用を有する。
【0039】
また、請求項3記載の発明は、集塵接地極板の接地極板凸部の頂部同士を合わせることで間隔を保持させることを特徴とした電気集塵装置であって、接地極板凸部の互いの頂部を付き合わせることで極間を維持するため、接地極板凸部の高さを1/2にできるため無理な絞り加工を無くせる作用を有する。
【0040】
また、請求項4記載の発明は、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料としたことを特徴とした電気集塵装置であって、集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料とすることで、鋼板やステンレス板に対して比重を約1/3にできるため、軽量になる作用を有する。
【0041】
また、請求項5記載の発明は、集塵正極板や集塵接地極板をフレームより小さい寸法としたことを特徴とした電気集塵装置であって、集塵正極板や集塵接地極板が集塵装置のフレームの外寸より小さくできているため、運搬や組立て、メンテナンスを行なう際、外力による集塵正極板や集塵接地極板の変形を防ぎ、短絡や集塵性能の低下を防ぐ作用を有する。
【0042】
また、請求項6記載の発明は、集塵接地極板の接地極板凸部の立ち上がりに複数の絞り孔を均等な間隔に設けたことを特徴とした電気集塵装置であって、処理風が接地極板凸部の複数の絞り孔を通り抜けることで、圧力損失が少なくなって処理風量の低下を防ぎ、また複数の絞り孔により接地極板凸部の材料面積を小さくできるため絞りの伸びを促し、割れや反りを防ぐ作用を有する。
【0043】
また、請求項7記載の発明は、集塵接地極板に保持用シャフト穴を設け、この保持用シャフト穴に接地側シャフトを通すことにより位置決めを行なうことを特徴とした電気集塵装置であって、集塵接地極板の保持用シャフト穴に接地側シャフトを通して積み重ねることで、保持用シャフト穴による規制により上下左右の位置決めする作用を有する。
【0044】
また、請求項8記載の発明は、保持用シャフト穴を一つ置きに切欠穴としたことを特徴とした電気集塵装置であって、集塵接地極板を裏表交互に重ねるため、保持用シャフト穴と切欠穴が交互になり、極板の位置決めを行ないつつ保持用シャフト穴に地極側シャフトを通す個所を減らす作用を有する。
【0045】
また、請求項9記載の発明は、集塵接地極板の片側の押えを止め輪によって行なうことを特徴とした電気集塵装置であって、集塵接地極板の片側の押えを止め輪で位置決めすることによって、片側だけをナットで締め付けるだけで済むため、組立てやメンテナンスの集塵正極板の位置決め調整が容易になる作用を有する。
【0046】
また、請求項10記載の発明は、集塵部の風の流入面あるいは流出面に対角状に筋交いを設けたことを特徴とした電気集塵装置であって、筋交いにより集塵装置・集塵部を対角で突っ張ることで捻りによる変形や各部品の緩みを抑える作用を有する。
【0047】
また、請求項11記載の発明は、フレームの下端に爪穴を設け、この爪穴に筋交いの下端に設けた爪部を引っ掛けて保持できることを特徴とした電気集塵装置であって、特に固定しにくい電気集塵装置・集塵部の下部に筋交いの爪部を引っ掛けて電気集塵装置・集塵部の対角の上部で固定するだけで良くなるため、生産性やメンテナンス性を向上させる作用を有する。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
(実施の形態1)
図1から図6を用いて本実施の形態1による電気集塵装置について説明をおこなう。
【0050】
図1は本発明の実施の形態による電気集塵装置の概略図で、イオン化部と集塵部を組み合わせた状態を示す図で、図2は同装置の集塵部の斜視図、図3は同装置の集塵部の回路図、図4は同装置の集塵部の展開図、図5は同装置の集塵接地極板の設置極板凸部と集塵正極板の開口部の位置関係を示す斜視図、図6は同装置の集塵接地極板の接地極板凸部と集塵正極板の開口部の位置関係を示す縦断面図である。
【0051】
電気集塵装置1は、処理する空気に対して上流側のイオン化部2と下流側の集塵部3で構成されている。
【0052】
集塵部3は、両端にフレーム4を設け、その間に表面をフィルム状の電気絶縁体14(例えばPP・PET・フッ素樹脂など)で覆われた集塵正極板12と集塵接地極板11を交互に配している。フレーム4には給電バー6を設けているが、この給電バー6は絶縁碍子5によって絶縁されている。これらフレーム4や集塵正極板12、集塵接地極板11などは、たとえばアルミニウムなどの軽い材料で作られている。また、集塵正極板12や集塵接地極板11はフレーム4外形より小さい大きさとしている。
【0053】
また、集塵正極板12同士は、管状の金属製スペーサー10を入れることによって一定の間隔が保持され、これらスペーサー10を挟んだ集塵正極板12を串刺し状に両端にネジを切った正極側シャフト8が貫通しており、両側からナット9で締め付けて固定されている。さらに、正極側シャフト8の両端をフレーム4の給電バー6にナット9によって挟むことで電気的に導通した状態で固定されている。
【0054】
一方、集塵接地極板11同士は、集塵接地極板11の表面に設けた接地極板凸部16同士をお互い向き合わせ、その頂部を付き合わせることで一定の間隔が保持される。また、接地極板凸部16は、1枚の集塵接地極板11に、その表面の表と裏に交互に凸部を形成するように配置し、1列の接地極板凸部16を構成する。このように構成した集塵接地極板11を交互に前後の向きを逆にして配置することにより、接地極板凸部16が向かい合うことになる。さらに、集塵接地極板11の間に設けた集塵正極板12には接地極板凸部16が集塵正極板12に触れないよう、また高電圧に耐えられる空間距離を有した開口部17が設けられ、集塵接地極板11と集塵正極板12は完全に絶縁されている。集塵接地極板11の位置決めや保持については、フレーム4や集塵接地極板11に設けた保持用シャフト穴19に、両端にネジを切った接地側シャフト7を通して両端のフレーム4外側からナット9で締め付けることで電気的に導通され保持されている。
【0055】
そして、フレーム4はアース15に接続され、給電バー6は高圧発生装置13に接続させた構成となっている。
【0056】
上記構成により、イオン化部2を設けた側を風上側として、粉塵等を含んだ汚染空気を流入させるが、その動力としては電気集塵装置1の風下側に設けた送風機などにより吸引する方式をとると、送風機の汚れ等を考えると最も良い方法であると言える。そして高圧発生装置13に電気を供給すると、イオン化部2に直流11kV、集塵部3に直流6kVの高電圧が印加され、イオン化部2では接地極との間でコロナ放電が発生することで汚染空気の粉塵等に電荷を与えて帯電させ、集塵部3内に流入する。
【0057】
集塵部3では、給電バー6に印加された高電圧は正極側シャフト8やスペーサー10を通じて集塵正極板12に給電され、一方、アース15側はフレーム4から接地側シャフト7や接地極板凸部16を通じて集塵接地極板11に導通されているため、集塵正極板12と集塵接地極板11の間を汚染空気が流れようとした場合、クーロン力によって粉塵等が集塵接地極板11側に吸着される。電気集塵装置1の主な部分であるフレーム4や集塵正極板12、集塵接地極板11などは、アルミニウム材料であるため、鋼板やステンレス板に対して比重を約1/3にできるため、軽量化が図れ、メンテナンスや組立てが容易となる。また、集塵正極板12や集塵接地極板11はフレーム4の外寸より小さくできているため、運搬や組立て、メンテナンスを行なう際、外力による集塵正極板12や集塵接地極板11の変形を防ぎ、短絡や集塵性能の低下を防ぐことができる。
【0058】
また、集塵接地極板11の間隔を接地極板凸部16で行なうことで、スペーサー10が不要となり、部品点数や組立工数・材料費・質量を削減することができ、さらに接地極板凸部16をお互い向き合わせて付き合わせることで、接地極板凸部16の高さを半分にできるため、加工が容易にでき、導通も容易にとれる。この時、集塵正極板12の開口部17により接地極板凸部16と集塵正極板12は高電圧に耐えられる空間距離を確保しているため、集塵正極板12やフィルム状の電気絶縁体14表面に溜まった電荷がアース15側に逃げることがないため、集塵性能を低下させることはない。また、形状を工夫することで同じ集塵接地極板11を上下裏表逆に交互に積み重ねるだけで接地極板凸部16をお互い向き合わせて付き合わせる構成をとることができるため、部品を共有化できることとなる。なお、本実施形態では接地極板凸部16とは別に保持用シャフト穴19を設けたが、接地極板凸部16に保持用シャフト穴19を設けても効果は同じである。
【0059】
なお、本実施の形態では、集塵接地極板11の表面に設けた接地極板凸部16同士をお互い向き合わせ、その頂部を付き合わせることで集塵接地極板11同士の間隔を一定に保持する構成としたが、逆に集塵正極板12側に凸部を設け集塵接地極板11側に開口部を設ける構成としたり、集塵接地極板11と集塵正極板12の両方に凸部と開口部を設けて、お互い逃げる構成としても、集塵正極板12表面を電気絶縁体14で覆う加工等が難しくなるだけで効果は同じである。
【0060】
(実施の形態2)
図7から図9を用いて実施の形態2について説明する。図8は同装置の接地極板凸部に設けた複数の絞り孔の位置と風の方向を示す部分斜視図、図9は同装置の接地極板凸部に設けた複数の絞り孔単体で見たときの風の流れを示す部分斜視図であり、実施の形態1と同じ部分については同一の符号を用い、それらについての説明を省略する。
【0061】
実施の形態2は実施の形態1に対して図7から図9に示すように、集塵接地極板11の接地極板凸部16の立ち上がりに4ヵ所の絞り孔18を均等な間隔に設けた構成となっている。
【0062】
上記構成により、処理風が接地極板凸部16の絞り孔18を通り抜けることで、圧力損失が少なくなって処理風量の低下を防ぎ、また複数の絞り孔18により接地極板凸部16の材料面積を小さくできるため絞りの伸びを促し、割れや反りを防ぐこととなる。
【0063】
(実施の形態3)
図4および図10を用いて本実施の形態3による電気集塵装置について説明をおこなう。図4は同装置の集塵部の展開図、図10は同装置の集塵接地極板と集塵正極板に設けた保持用シャフト穴と切欠穴の位置関係を示す斜視図であり、実施の形態1と同じ部分については同一の符号を用い、それらについての説明を省略する。
【0064】
実施の形態3は実施の形態1に対して図10に示すように、集塵接地極板11に保持用シャフト穴19を設け、この保持用シャフト穴19に接地側シャフト7を通すことにより位置決めを行なう構成となっている。この時、保持用シャフト穴19を一つ置きに切欠穴20とした構成としてもよい。
【0065】
上記構成により、集塵接地極板11の保持用シャフト穴19に接地側シャフト7を通して積み重ねるだけで、集塵接地極板11の上下左右の位置決めができる。
【0066】
また、同じ集塵接地極板11を上下裏表逆に交互に積み重ねるため、保持用シャフト穴19を一つ置きに切欠穴20とすることで、保持用シャフト穴19と切欠穴20が交互になり、極板の位置決めを行ないつつ保持用シャフト穴19に接地側シャフト7を通す個所を減らすことができ、作業性を向上させることとなる。
【0067】
(実施の形態4)
図4および図11、図12を用いて本実施の形態4による電気集塵装置について説明をおこなう。図4は同装置の集塵部の展開図、図11は同装置の止め輪の位置関係を示す部分断面図、図12は同装置のフレーム上部の部分斜視図であり、実施の形態1と同じ部分については同一の符号を用い、それらについての説明を省略する。
【0068】
実施の形態4は実施の形態1に対して、集塵接地極板11の片側の押えを止め輪21によって行なう構成となっている。
【0069】
上記構成により、集塵接地極板11の片側の押えを止め輪21で位置決めすることによって、片側だけをナット9で締め付けるだけで済むため、組立てやメンテナンス時の極板間調整が容易にできることとなる。
【0070】
(実施の形態5)
図2、図4、図13を用いて本実施の形態5による電気集塵装置について説明をおこなう。図2は同装置の集塵部の斜視図、図4は同装置の集塵部の展開図、図13は同装置のフレーム下部に設けた筋交い用の爪穴と筋交いの爪部の位置関係を示す斜視図であり、実施の形態1と同じ部分については同一の符号を用い、それらについての説明を省略する。
【0071】
実施の形態5は実施の形態1に対して図2、図4、図13に示すように、フレーム4の下端に爪穴24を設け、この爪穴24に筋交い22の下端に設けた爪部23を引っ掛けて保持する構成となっている。
【0072】
上記構成により、特に固定しにくい集塵部3の下部に筋交い22の爪部23を引っ掛けて集塵部3の対角の上部で固定するだけで良くなるため、生産性やメンテナンス性を向上させることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の電気集塵装置は、コロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させ、帯電した粉塵をクーロン力によって捕集する電気集塵機に適用でき、特に家庭用や業務用では空気清浄機や分煙機器、産業用ではトンネル換気用集塵装置やオイルミスト除去装置などにおいても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態による電気集塵装置の概略図で、イオン化部と集塵部を組み合わせた状態を示す図
【図2】同装置の集塵部の斜視図
【図3】同装置の集塵部の回路図
【図4】同装置の集塵部の展開図
【図5】同装置の集塵接地極板の設置極板凸部と集塵正極板の開口部の位置関係を示す斜視図
【図6】同装置の集塵接地極板の接地極板凸部と集塵正極板の開口部の位置関係を示す縦断面図
【図7】同装置の接地極板凸部に設けた複数の絞り孔の位置関係を示す部分詳細図
【図8】同装置の接地極板凸部に設けた複数の絞り孔の位置と風の方向を示す部分斜視図
【図9】同装置の接地極板凸部に設けた複数の絞り孔単体で見たときの風の流れを示す部分斜視図
【図10】同装置の集塵接地極板と集塵正極板に設けた保持用シャフト穴と切欠穴の位置関係を示す斜視図
【図11】同装置の止め輪の位置関係を示す部分断面図
【図12】同装置のフレーム上部の部分斜視図
【図13】同装置のフレーム下部に設けた筋交い用の爪穴と筋交いの爪部の位置関係を示す斜視図
【符号の説明】
【0075】
1 電気集塵装置
2 イオン化部
3 集塵部
4 フレーム
7 接地側シャフト
11 集塵接地極板
12 集塵正極板
14 電気絶縁体
16 接地極板凸部
17 開口部
18 絞り孔
19 保持用シャフト穴
20 切欠穴
21 止め輪
22 筋交い
23 爪部
24 爪穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、集塵接地極板と集塵正極板を交互に配し、集塵正極板に高圧を印加することで集塵正極板からのクーロン力で埃などを集塵接地極板に吸着捕集させる集塵部からなる電気集塵装置において、前記集塵接地極板の表面に接地極板凸部を設け、前記集塵正極板には、前記接地極板凸部を避けるように開口部を設け、前記接地極板凸部が、集塵正極板をはさんで隣り合う他の集塵接地極板と接触することによって集塵接地極板同士の間隔を一定に保持させることを特徴とした電気集塵装置。
【請求項2】
複数の前記接地極板凸部を前記集塵接地極板の表面に1列に並べて設け、集塵接地極板の表と裏に交互に互い違いになるようにした請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
集塵接地極板の接地極板凸部の頂部同士を合わせることで間隔を保持させることを特徴とした請求項1または2記載の電気集塵装置。
【請求項4】
集塵正極板や集塵接地極板をアルミニウム材料としたことを特徴とした請求項1〜3いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項5】
集塵正極板や集塵接地極板をフレームより小さい寸法としたことを特徴とした請求項1〜4いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項6】
集塵接地極板の接地極板凸部の立ち上がりに複数の絞り孔を均等な間隔に設けたことを特徴とした請求項1〜5いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項7】
集塵接地極板に保持用シャフト穴を設け、この保持用シャフト穴に接地側シャフトを通すことにより位置決めを行なうことを特徴とした請求項1〜6いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項8】
保持用シャフト穴を一つ置きに切欠穴としたことを特徴とした請求項1〜7いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項9】
集塵接地極板の片側の押えを止め輪によって行なうことを特徴とした請求項1〜8いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項10】
集塵部の風の流入面あるいは流出面に対角状に筋交いを設けたことを特徴とした請求項1〜9いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項11】
フレームの下端に爪穴を設け、この爪穴に筋交いの下端に設けた爪部を引っ掛けて保持できることを特徴とした請求項10記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−90166(P2009−90166A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260702(P2007−260702)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】