説明

電気集塵装置

【課題】装置寸法の増加を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を向上する。
【解決手段】電気集塵装置10では、分配室90に流入したガスGが、集塵電極16におけるメッシュフィルタ30を通して内部流路28へ流入した後、内部排出口32を通してケーシング12内における集合室33へ排出されるように、ケーシング12内におけるガスGの流れが制御される。これにより、ケーシング12内に流れ込んだガスGを複数の帯電流路58に分配し、この帯電流路58内から集塵電極16の一部として構成され、単位体積当りの表面積が大きいメッシュフィルタ30を通して内部流路28に流入させた後、内部排出口32、集合室33及びガス排出口24を通して装置外部へ排出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置から排出される煤塵等の塵状体を含むガスの浄化を行うための電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置では、その操業時に燃焼、加熱反応等に伴って煤塵等の塵状体を含む高温の排出ガス(以下、単に「ガス」という。)を発生させ、このガスを装置外部へ排出する。産業装置から排出されるガスは、ある程度の温度まで冷却された後、フィルタ式集塵装置や電気集塵装置へ送られ、このような集塵装置により塵状体が捕集、除去される。
【0003】
フィルタ式の集塵装置と電気集塵装置とを比較すると、ガス中に分散する塵状体に対する集塵性能は、バグフィルタを用いるフィルタ式集塵装置が一般的に優れているとされているが、ガス温度が高温になる場合には、バグフィルタが使用不能になるため、このような場合には、塵状体を静電的な力(捕集力)により捕集除去する電気集塵装置が使用される。
【0004】
上記のような電気集塵装置としては、図8に示されるように、ガス導入口102及びガス排出口104がそれぞれ形成された中空状のケーシング100と、このケーシング100内にそれぞれ配置される放電電極106及び集塵電極108と、放電電極106に接続され、この放電電極106と集塵電極108との間に駆動電圧を印加する高圧電源(図示省略)と、を備えたものがある。この電気集塵装置では、図8に示されるように、塵状体Pを含むガスGを放電電極106と集塵電極108との間を流通させつつ、放電電極106からのコロナ放電によりガスG中に含まれる塵状体に電荷を与え、帯電することにより、この塵状体を静電的な力により集塵電極108に引き寄せて吸着する。
【0005】
また、電気集塵装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1記載の電気集塵装置には、ケーシング内にガスの流れ方向に沿って上流側に第1集塵部が設けられると共に、この第1集塵部の下流側に第2集塵部が設けられている。
ここで、第1集塵部には、プレート状の集塵電極が複数配置されると共に、一対の集塵電極の間に棒状の放電電極が、集塵電極の長手方向に沿って一定ピッチで略全長に亘って複数配設されている。第2集塵部も、基本的に第1集塵部と同様な構造とされており、複数の集塵電極及び放電電極をそれぞれ有している。第1及び第2集塵部における複数の放電電極にはそれぞれ高圧電源が接続される。
【0006】
特許文献1記載の電気集塵装置では、集塵電極がガスの流れ方向に沿って細長いメッシュプレート状に形成されており、放電電極がガスの流れ方向に略直交する上下方向に延在する細長い棒状に形成され、集塵電極の表面部又は裏面部に対向するように支持されている。これにより、ガスの流れ方向に沿って集塵電極とガスとの接触長を長くし、集塵電極の全長に亘ってガスにコロナ放電を作用させることができるので、ガス中の塵状体に対する集塵効率を向上できるとされている。
【0007】
特許文献1には、上流側の第1集塵部に配置された放電電極及び集塵電極に対し、下流側の第2集塵部に放電電極及び集塵電極を高密度に配置することより、塵状体の濃度が低いガスを集塵処理する場合でも、上流側の第1集塵部で捕集し損ねた塵状体も、下流側の第2集塵部で効率的に捕集できる、と開示されている。
【特許文献1】特開2004−160286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の電気集塵装置のように、集塵電極とガスとの接触長を延長するため、ガスの流れ方向に沿って集塵電極を細長いものにすると共に、複数の集塵部を配置するようにした場合には、ガスの流れ方向に沿ったケーシングの寸法が不可避的に長いものになり、装置の設置スペースの関係で不利になることがある。
また特許文献1に記載されているように、塵状体の濃度が低いガスから効率的に塵状体を捕集するため、上流側の第1集塵部に配置された放電電極及び集塵電極に対し、下流側の第2集塵部に放電電極及び集塵電極を密集して配置した場合は、上流側の集塵部の集塵能力が下流側の集塵部の集塵能力よりも劣るので、塵状体の濃度が高いガスを集塵処理するとき際には、上流側の集塵部と下流側の集塵部との負荷バランスを適切に保つことが困難になり、装置の集塵効率が低下するという問題が生じるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、上記事実を考慮し、装置寸法の増加を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を効率的に向上できる電気集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る電気集塵装置は、ガス中に含まれる塵状体を静電的な力により捕集する電気集塵装置において、ガスが内部を流通するケーシングと、前記ケーシング内に配置された放電電極と、前記ケーシング内に配置され、一端部に排気口が開口したボックス状に形成されると共に、内外空間を区画する隔壁部の少なくとも一部が金属製のメッシュフィルタにより形成された集塵電極と、前記放電電極と前記集塵電極との間に駆動電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、前記集塵電極は、前記ケーシング内で集塵対象となるガスが、前記メッシュフィルタを通して前記集塵電極の内部へ流入した後、前記排気口を通して前記集塵電極の外部へ排気されるように、前記ケーシング内におけるガスの流れを制御することを特徴とする。
【0011】
上記請求項1に係る電気集塵装置では、集塵電極が、ケーシング内で集塵対象となるガスがメッシュフィルタを通して集塵電極の内部へ流入した後、排気口を通して集塵電極の外部へ排気されるように、ケーシング内におけるガスの流れを制御することにより、ケーシング内に供給されたガスを集塵電極の一部として構成され、単位体積当りの表面積が大きいメッシュフィルタを通して、この集塵電極の外部空間から内部空間に流入させた後、装置外部へ排出できるので、集塵電極及びケーシングの寸法を特定の方向へ長くしなくても、放電電極からのコロナ放電により帯電された塵状体を含むガスと集塵電極との接触面積を効率的に増大させることができる。
【0012】
また、例えば、ガス中における塵状体の濃度や粒径分布に応じてメッシュフィルタの目の細かさ(メッシュ数)や、織り方を適宜選択するようにすれば、静電的な吸着力に加え、メッシュフィルタ自体による濾過作用によってもガス中に含まれる塵状体を集塵除去できることから、塵状体の含有率が高いガスを集塵処理する際に、装置全体として集塵効率を向上できる。
【0013】
この結果、請求項1に係る電気集塵装置によれば、装置寸法の増加を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を効率的に向上できる。
また本発明の請求項2に係る電気集塵装置は、請求項1記載の電気集塵装置において、前記放電電極を、前記メッシュフィルタに対向し、かつ該放電電極と前記メッシュフィルタとの間を流れるガスの流れ方向に沿って延在するように配置し、前記放電電極に、前記ガスの流れ方向に沿ってそれぞれ放電線を支持する複数個の放電線支持部を配列し、複数の前記放電線支持部にそれぞれ配置された前記放電線の本数を、前記ガスの流れ方向に沿った上流側の前記放電線支持部から、下流側の前記放電線支持部へ向かって段階的に減少させたことを特徴とする。
【0014】
また本発明の請求項3に係る電気集塵装置は、請求項1又は2記載の電気集塵装置において、前記集塵電極は、前記排気口及び前記メッシュフィルタがそれぞれ設けられた複数の電極ユニットが一体に組み立てられて構成され、かつ複数の前記電極ユニットに分解可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した本発明に係る電気集塵装置によれば、装置寸法の増加を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を効率的に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る電気集塵装置について図面を参照して説明する。
図1及び図2には、本発明の実施形態に係る電気集塵装置の構成が示されている。この電気集塵装置10は、略長方体状に形成された中空のケーシング12と、このケーシング12の内部に配置される放電電極14及び集塵電極16とを備えている。図1に示されるように、ケーシング12には、その底板部に漏斗状のホッパ18が下方へ突出するように設けられている。ホッパ18は、上端側から下端側へ向かって断面積が徐々に縮小し、装置の高さ方向(矢印H方向)へ貫通する角筒状に形成されている。これにより、ホッパ18は、その下部に電気集塵装置10の内部で捕集された塵状体が貯留可能になっている。
【0017】
ホッパ18には、その下端部に外部から開閉可能とされたフランジ部材19が配置されている。ホッパ18の下端部には、捕集、貯留された塵状体を系外へ排出させるための排出装置(例えば、スクリューコンベアやロータリバルブ)がフランジ部材19を介して取り付けられる。またホッパ18には、装置の長手方向(矢印L方向)に沿った片側(図1では、左側)の側板部にガス導入口20が開口しており、このガス導入口20には、ガスGの流通路を構成する導入ダクト22の先端部が接続されている。
【0018】
ここで、導入ダクト22は、その基端部が焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等から排出される塵状体を含むガスを吸入しつつ、燃焼処理や加熱処理が行われる産業装置(図示省略)の排気口に接続されている。この排気口から排出されるガスGは、通常、煤塵、塵埃等の塵状体P(図7参照)を含んでおり、導入ダクト22及びガス導入口20を通してケーシング12内における底部付近へ送り込まれる。ただし、導入ダクト22は電気集塵装置10の前段の産業装置の排気口の形状、配置によっては、形状及び取付位置が変わる場合がある。
【0019】
なお、産業装置の排気口から排出されるガスGの温度が非常に高温である場合には、例えば、導入ダクト22の途中に設けられたガス冷却装置によりガスGを電気集塵装置10の耐用温度以下まで冷却した後、このガスGをケーシング12内へ送り込む。
図1に示されるように、ケーシング12には、装置の幅方向(矢印W方向)に沿って他端側(図1の紙面奥側)の後板部12Bにガス排出口24が開口している。このガス排出口24は、後板部12Bにおける上端付近であって、長手方向Lに沿ってガス導入口20とは反対側の端部付近、すなわち後板部12Bにおけるガス導入口20に対する対角付近のコーナ部付近に開口している。ガス排出口24には、ガスGの流通路を構成する排出ダクト26の基端部が接続されている。後述するように、ケーシング12内で集塵処理が行われたガスGは、ガス排出口24及び排出ダクト26を通し、必要に応じてガスGに対して他の処理を行う処理装置に送られ、あるいは大気中へ排出される。ただし、ガス排出口24は電気集塵装置10の前段の産業装置の排気口の形状、配置によっては、形状及び取付位置が変わる場合がある。
【0020】
また排出ダクト26の途中には誘引ファン(図示省略)が配置されており、この誘引ファンは、排出ダクト26内におけるケーシング12側の空間(流通路)からガスGを吸い込む。これにより、ケーシング12の内部には、全体としてケーシング12のガス導入口20からケーシング12のガス排出口24へ向かってガスGが流れるガス流(主流MF(図1参照))が形成される。
【0021】
ケーシング12内に配置された複数個(本実施形態では、3個)の集塵電極16は、その外形がそれぞれ肉厚プレート状に形成されており、内部が中空とされている。集塵電極16は、その厚さ方向が幅方向W一致するようにブラケットを介してケーシング12により支持されている。図2に示されるように、集塵電極16の内部空間は、後述するメッシュフィルタ30を通過したガスGが流通する内部流路28とされている。集塵電極16は、図5に示されるように、長手方向Lに沿った片側の側端面の略全体が開口しており、この開口は、内部流路28を流通したガスGをケーシング12内へ排出する内部排出口32とされている。ケーシング12の内部には、図2に示されるように、長手方向Lに沿ってガス排出口24側の端部にガスGの集合室33が形成されており、この集合室33には、複数の集塵電極16の内部排出口32からそれぞれ排出されたガスGが流入し、集合する。
【0022】
集塵電極16には、図5に示されるように、長手方向Lに沿った両端部にそれぞれ支持フレーム34及び支持フレーム36が配置されており、一方の支持フレーム36は形鋼で枠状に形成されており、支持フレーム36には、前述した内部排出口32が形成されている。他方の支持フレーム36は、高さ方向Hに沿って細長い枠状に形成されており、集塵電極16における内部排出口32とは反対側の側端面を後板部37により閉塞している。
【0023】
図5に示されるように、集塵電極16は、支持フレーム34の上端部と支持フレーム36の上端部との間に架渡された上側閉塞板38と、支持フレーム34の下端部と支持フレーム36の下端部との間に架渡された下側閉塞板40とを備えている。これらの上側閉塞板38及び下側閉塞板40は、支持フレーム34と支持フレーム36とを互いに連結している。また集塵電極16の内部には、内部流路28を高さ方向Hに沿って下端側の上流部44と下端側の下流部46とに区画する隔壁部42が設けられている。
【0024】
集塵電極16には、図5に示されるように、支持フレーム34と支持フレーム36との間にメッシュフィルタ30が配置されている。このメッシュフィルタ30は、導電性金属からなる繊維状材料、ワイヤ状材料等を編んで網状体とすることにより構成されている。メッシュフィルタ30は、それぞれ平面状に形成された複数の分割片により構成されており、これらの分割片は、それぞれ形鋼により枠状に形成された複数のフレーム部材(図示省略)に取付けられると共に、複数のフレーム部材を介して支持フレーム34、36に連結固定されている。ここで、集塵電極16における頂面部及び底面部については、それぞれ上側閉塞板38及び下側閉塞板40によりガスGが通気しないように閉塞状態とされている。
【0025】
メッシュフィルタ30の目の細かさ(メッシュ数)については、ガスGの単位時間当りの通気量、ガスGに含まれる塵状体P(図7参照)の単位体積当りの数、塵状体Pの平均粒径及び粒径分布等に応じて適宜設定される。ここで、メッシュフィルタ30は、通常、目が細かい(メッシュ数が大きい)方が塵状体Pに対する集塵効率が高くなるが、目詰まりが生じ易くなり、かつ目詰まりが生じるまでの時間も短くなるので、これらのバランスを考慮してメッシュ数を適正に設定する必要がある。
【0026】
また、メッシュフィルタ30の織り方についても、通常、メッシュ数が一定の場合には、通常の平織より、例えば畳織のような立体的な織り方の方が塵状体Pに対する集塵効率が高くなるが、部品コストが高くなると共に、塵状体Pの除去作業が煩雑になるので、これらのバランスを考慮してメッシュフィルタ30の織り方も適正に設定する必要がある。なお、メッシュフィルタ30については、メッシュ数が同一のものや、異なるものを重ね合わせた積層構造のものを用いても良い。
【0027】
図2に示されるように、複数個の集塵電極16は、幅方向Wに沿って等ピッチで配列されおり、互いに隣接する一対の集塵電極16間には、幅方向Wに沿って延在する空間が形成される。この空間は、後述する放電電極14によりガスG中の塵状体Pに電荷を付与するための帯電流路58とされる。また集塵電極16とケーシング12の前板部12Fとの間及び集塵電極16とケーシング12の後板部12Bとの間にも、それぞれ幅方向Wに沿って延在する帯電流路58が形成される。ここで、複数個の集塵電極16は、それぞれメッシュフィルタ30を含む全体が接地状態とされている。
【0028】
図1に示されるように、ケーシング12内には、幅方向Wに沿って互いに隣接する一対の集塵電極16間、一端側に配置された集塵電極16と前板部12Fとの間及び他端側の集塵電極16と後板部12Bとの間にそれぞれ集塵電極16が配置されている。複数個(本実施形態では、4個)の放電電極14は、図3に示されるように、全体として梯子状の構造を有しており、それぞれメッシュフィルタ30における側面部に対向するように配置されている。
【0029】
放電電極14は高さ方向Hに沿って延在するように支持されており、この放電電極14には、高さ方向Hに沿って複数(複数段)の放電線支持部50が設けられている。放電支持部50には放電線60及び連結材52が設けられている。放電線60は帯状の導電性金属により形成されており、その上端部及び下端部がそれぞれ鋼管製の連結材52に連結されている。放電電極14では、連結材52を通して各放電支持部50における放電線60に高圧電流が流れる。
【0030】
連結材52は長手方向Lと平行に延在しており、放電線60は高さ方向Hと平行に延在している。なお、放電線60には、突起や尖りを持たせ、図7に示されるように、多数の放電突起61が放射状に形成されている。これにより、高圧電源による駆動電圧の印加時に、放電突起61の先端部からコロナ放電が発生しやすいようになっている。
図1に示されるように、ケーシング12の頂板部には、長手方向Lの中央部にボックス状の収納部48が一体的に形成されており、この収納部48内には、駆動電圧発生機(図示省略)から放電電極14へ導通させるための部材とそれらとケーシングとを絶縁するための碍子(図示省略)などが収納されている。一方、放電電極14における最上部の連結材52には、図3に示されるように、長手方向Lの中央部に吊下管54が連結されている。吊下管54は絶縁性材料により形成されるが、放電電極14全体の重量を支持する必要があるため、十分に高い引張り強度を有している。また最下部の連結材52には別の連結材52が連結されており、他の放電電極14と連結させることで、放電電極14が幅方向W及び長手方向Lに沿って振れ、又は捩れることが防止されている。
【0031】
吊下管54の上端部は収納部48内の給電電極に連結固定されており、この給電部材は、絶縁碍子(図示省略)にて支持され、放電電極14を吊り下げている。また収納部48内の給電部材には、駆動電圧供給用の高圧ケーブル(図示省略)が接続されており、この高圧ケーブルは吊下管54を介して放電電極14全体に給電している。
放電電極14の各放電線支持部50では、連結管52の長さ方向に沿って等間隔で放電線60が配置されている。また放電電極14では、各放電線支持部50に配置された放電線60の本数が、高さ方向Hに沿って上側に位置する放電線支持部50から下側に位置する放電線支持部50へ向かって段階的に増加している。具体的には、本実施形態では、放電電極14には3段の放電線支持部50が設けられており、上段の放電線支持部50には5本の放電線60が配置され、中段の放電線支持部50には8本の放電線60が配置され、下段の放電線支持部50には12本の放電線60が配置されている。
【0032】
但し、放電電極14に設けられる放電線支持部50の段数及び、各放電線支持部50に配置される放電線60の本数は、それぞれ本実施形態のものに限定されるものではない。
集塵電極16は、図4に示されるように、複数個(本実施形態では、2個)の電極ユニット62、64を備えており、図5に示されるように、2個の電極ユニット62、64が一体に組立てられている。一方の電極ユニット62は、隔壁部42(図5参照)を介して集塵電極16の下端側を形成しており、その内部に内部流路28の一部を形成する上流部44が配置されている。また電極ユニット64は、隔壁部42を介して集塵電極16の上端側を形成しており、その内部に内部流路28の残りの一部を形成する下流部46が配置されている。
【0033】
電極ユニット62には、電極ユニット62の支持フレーム34、36の下端側を形成する下側フレーム部66、68及び、メッシュフィルタ30の下端側を形成する下側フィルタ部72が設けられている。ここで、下側フレーム部66には、内部排出口32の一部を形成する下側開口部70が配置されている。
また電極ユニット64には、電極ユニット62の支持フレーム34、36の上端側を形成する上側フレーム部74、76及び、メッシュフィルタ30の上端側を形成する上側フィルタ部80が設けられている。ここで、上側フレーム部74には、内部排出口32の残りの一部を形成する上側開口部78が配置されている。
【0034】
電極ユニット62の上端部には、その長手方向Lに沿った両端部からそれぞれ外側へ延出するフランジ部82が形成されており、これら一対のフランジ部82の間には、内部流路28における上流部44の上端側を閉塞する仕切板86が配置されている。また電極ユニット64の下端部には、電極ユニット62における一対のフランジ部84にそれぞれ対応する一対のフランジ部84が形成されると共に、これら一対のフランジ部84間に内部流路28における下流部46の下端側を閉塞する仕切板88が配置されている。
【0035】
2個の電極ユニット62、64を集塵電極16に組立てる際には、電極ユニット62のフランジ部82及び仕切板86を、それぞれ電極ユニット64のフランジ部84及び仕切板88に突き当て、フランジ部82及びフランジ部84にそれぞれ穿設された挿通孔(図示省略)にボルトを挿通した後、このボルトの先端部にナットを捩じ込むことにより、電極ユニット62、64が集塵電極16に組立てられる。このとき、仕切板86及び仕切板88は、内部流路28を上流部44と下流部46とに区画する隔壁部42(図5参照)を構成する。
【0036】
また集塵電極16を2個の電極ユニット62、64を集塵電極16に分解する際には、電極ユニット62のフランジ部82と電極ユニット64のフランジ部84からボルト及びナットを外すことにより、集塵電極16が電極ユニット62及び電極ユニット64に分解可能になる。
次に、上記のように構成された電気集塵装置10によるガスGに対する集塵処理について説明する。
【0037】
焼却炉、溶解炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置の操業時には、電気集塵装置10は、排出ダクト26の途中に配置された誘引ファン(図示省略)を作動させる。これにより、誘引ファンに対して産業装置側の空間である導入ダクト22、ケーシング12の内部及び排出ダクト26の上流側がそれぞれ負圧状態となって、産業装置が発生した塵状体Pを含むガスGが導入ダクト22及びガス導入口20を通してケーシング12の内部に導かれる。
【0038】
ここで、ケーシング12内の空間のうち、ホッパ18の内側部分は、図2に示されるように、ガス導入口20からケーシング12内に流入したガスGの分配室90とされており、この分配室90に流入したガスGは、複数本(本実施形態では、4本)の帯電流路58にそれぞれ分配されて流入する。
帯電流路58に流入したガスGは、誘引ファンが発生する負圧の影響により全体としては、帯電流路58の下端(開口端)から上端(閉塞端)へ向かって流れる上昇流となる。但し、帯電流路58内には、放電電極14の放電線60が配置されており、放電線60には高圧電源(図示省略)により駆動電圧が印加されている。これにより、帯電流路58内では、放電線60が発生するコロナ放電の影響により、この放電線60から集塵電極16のメッシュフィルタ30側へ流れるイオン流IJ(図6参照)が形成されると共に、図7に示されるように、ガスGに含まれる塵状体Pに電荷Cが付与されて所定の極性に帯電される。このため、帯電流路58内を流れるガスG及び塵状体Pは、帯電流路58の下端側から上端側へ向かって流れつつ、通気性を有するメッシュフィルタ30の内部に徐々に流入した後、ガスGについては、最終的に全量がメッシュフィルタ30の内部を通過して内部流路28内に流入する。
【0039】
ここで、メッシュフィルタ30は、所定の極性に帯電された塵状体Pに対して静電的に吸着力を作用させるので、ガスGがメッシュフィルタ30を通過する際には、ガスG中の塵状体Pは、メッシュフィルタ30の外部表面に吸着されると共に、メッシュフィルタ30を通過する際に、メッシュフィルタ30内部の微小間隙(内部表面)にもトラップされる。従って、ガスGがメッシュフィルタ30を通過することにより、メッシュフィルタ30によりガスGに含まれる塵状体Pを効率良く除去でき、メッシュフィルタ30からは、塵状体Pが除去されて清浄化されたガスGが内部流路28内へ送り込まれる。
【0040】
内部流路28内に送り込まれたガスGは、図2に示されるように、集塵電極16の内部排出口32を通して集合室33内に流入する。集合室33の上端部にはガス排出口24が開口していることから、複数の集塵電極16における内部排出口32からそれぞれ集合室33内に流入したガスGは、ガス排出口24を通してケーシング12の外部へ排出され、排出ダクト26を通し、必要に応じてガスGに対して他の処理を行う装置へ送り込まれ、あるいは他の処理を行うことなく大気中に放出される。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る電気集塵装置10では、ケーシング12内の分配室90に流入したガスGは、集塵電極16によりメッシュフィルタ30を通して内部流路28へ流入した後、内部排出口32を通してケーシング12内における集合室33へ排出されるように、その流れが制御される。
これにより、ケーシング12内に流れ込んだガスGを複数の帯電流路58に分配し、この帯電流路58内から集塵電極16の一部として構成され、単位体積当りの表面積が大きいメッシュフィルタ30を通して内部流路28に流入させた後、内部排出口32、集合室33及びガス排出口24を通して装置外部へ排出できるので、集塵電極16及びケーシング12の寸法を特定の方向へ長くしなくても、放電電極14からのコロナ放電により帯電された塵状体Pを含むガスGと集塵電極16(メッシュフィルタ30)との接触面積を効率的に増大させることができる。
【0042】
また、例えば、ガスG中における塵状体Pの濃度や粒径に応じてメッシュフィルタ30の目の細かさ(メッシュ数)や、メッシュの織り方を適宜選択するようにすれば、静電的な吸着力に加え、メッシュフィルタ30自体による濾過作用によってもガスG中に含まれる塵状体Pを除去できることから、塵状体Pの含有率が高いガスGを集塵処理する際に、装置全体として集塵効率を向上できる。
【0043】
この結果、本実施形態に係る電気集塵装置10によれば、ケーシング12を含む装置寸法の増加を抑制しつつ、ガスG中に含まれる塵状体Pに対する集塵能力を効率的に向上できる。
また電気集塵装置10では、ケーシング12の分配室90から帯電流路58内に送り込まれたガスGがメッシュフィルタ30までへ移動し、メッシュフィルタ30を通過して内部流路28へ流れ込む。このとき、塵状体Pに作用する静電的な力の方向と、ガスGの流れの方向が実質的に一致しているので、メッシュフィルタ30での集塵を確実かつ効率良く行える。
【0044】
また電気集塵装置10では、放電電極14を帯電流路58に高さ方向Hに沿って配置すると共に、この放電電極14に高さ方向Hに沿って複数個の放電線支持部50を配列し、これらの放電線支持部50にそれぞれ配置された放電線60の本数を下端側の放電線支持部50から、上端側の放電線支持部50へ向かって段階的に減少させている。
これにより、放電線60から発生するコロナ放電の量が帯電流路58における下端側では多くなり、上端側へ向かって徐々に減少するので、帯電流路58における電荷エネルギの分布も下端側で高く、上端側へ向かって徐々に低いものになる。一方、帯電流路58内ではガスGが全体としては下端側から上端側へ向かって流れつつ、このガスGに含まれる塵状体Pが徐々にメッシュフィルタ30により吸着除去されて、ガスG中の塵状体Pの含有率が徐々に低下する。
【0045】
この結果、帯電流路58内における高さ方向Hに沿った電荷エネルギ分布が、ガスG中に含まれる塵状体Pの含有率に対応するものなることから、塵状体Pの含有率が少ない領域で過剰なコロナ放電を発生させ、無駄な電力を消費することを防止できるので、電力エネルギの使用効率を向上できる。
また電気集塵装置10では、集塵電極16が複数(本実施形態では、2個)の電極ユニット62、64が一体に組み立てられて構成され、かつ2個の電極ユニット62に分解可能とされている。
【0046】
これにより、例えば、腐蝕、経年劣化等により、集塵電極16が破損して補修する必要が生じた場合や、ケーシング12内の清掃作業、補修作業を行う場合には、集塵電極16をケーシング12内から取り出す必要があるが、ケーシング12の内部で集塵電極16を複数の電極ユニット62、64に分解し、電極ユニット62、64毎にケーシング12内から取り出すことができるので、集塵電極16を分解することなく、そのままでケーシング12内から取り出す場合と比較し、ケーシング12に形成する取出口(図示省略)を小さいものにできると共に、ケーシング12内から取り出す際の作業員の作業負荷を軽減でき、かつ集塵電極16をケーシング12内に組付ける際の作業負荷も軽減できる
この結果、本実施形態のように、集塵電極16として嵩が大きくなり、重量が増大しがちなボックス構造のものを用いても、集塵電極16を複数の電極ユニット62、64に分割して、搬送、ケーシング12からの取外し、組付け等の作業を行えるので、電気集塵装置10のメンテナンス性が良好になる。
【0047】
なお、本実施形態の電気集塵装置10では、集塵電極16として電極ユニット62、64からなる2分割構造のものを用いたが、3分割以上に分割可能な集塵電極を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る電気集塵装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される電気集塵装置の模式的に構成を示す平面図である。
【図3】図1に示される電気集塵装置における放電電極の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示される電気集塵装置における集塵電極の構成を示す斜視図であり、集塵電極が電極ユニットに分解された状態を示している。
【図5】図1に示される電気集塵装置における集塵電極の構成を示す斜視図である。
【図6】図1に示される電気集塵装置における帯電流路及び集塵電極及び、ガスの流れを示す平面図である。
【図7】図1に示される電気集塵装置における放電線及びメッシュフィルタ及び、塵状体を示す平面図である。
【図8】従来の電気集塵装置の構成を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 電気集塵装置
12 ケーシング
14 放電電極
16 集塵電極
18 ホッパ
19 フランジ部材
20 ガス導入口
22 導入ダクト
24 ガス排出口
26 排出ダクト
28 内部流路
30 メッシュフィルタ
32 内部排出口(排気口)
33 集合室
34 支持フレーム
36 支持フレーム
37 後板部
38 上側閉塞板
40 下側閉塞板
42 隔壁部
44 上流部
46 下流部
48 収納部
50 放電線支持部
52 連結材
54 吊下管
55 高圧ケーブル
58 帯電流路
60 放電線
61 放電突起
62 電極ユニット
64 電極ユニット
66、68 下側フレーム部
70 下側開口部
72 下側フィルタ部
74、76 下側フレーム部
78 上側開口部
80 上側フィルタ部
82 フランジ部
84 フランジ部
86 仕切板
88 仕切板
90 分配室
IJ イオン流
MF 主流
P 塵状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に含まれる塵状体を静電的な力により捕集する電気集塵装置において、
ガスが内部を流通するケーシングと、
前記ケーシング内に配置された放電電極と、
前記ケーシング内に配置され、一端部に排気口が開口したボックス状に形成されると共に、内外空間を区画する隔壁部の少なくとも一部が金属製のメッシュフィルタにより形成された集塵電極と、
前記放電電極と前記集塵電極との間に駆動電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記集塵電極は、前記ケーシング内で集塵対象となるガスが、前記メッシュフィルタを通して前記集塵電極の内部へ流入した後、前記排気口を通して前記集塵電極の外部へ排気されるように、前記ケーシング内におけるガスの流れを制御することを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記放電電極を、前記メッシュフィルタに対向し、かつ該放電電極と前記メッシュフィルタとの間を流れるガスの流れ方向に沿って延在するように配置し、
前記放電電極に、前記ガスの流れ方向に沿ってそれぞれ放電線を支持する複数個の放電線支持部を配列し、
複数の前記放電線支持部にそれぞれ配置された前記放電線の本数を、前記ガスの流れ方向に沿った上流側の前記放電線支持部から、下流側の前記放電線支持部へ向かって段階的に減少させたことを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記集塵電極は、前記排気口及び前記メッシュフィルタがそれぞれ設けられた複数の電極ユニットが一体に組み立てられて構成され、かつ複数の前記電極ユニットに分解可能とされたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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