説明

電池、電池収容容器及び製造方法

【課題】 簡単かつ低コストでありながら、生産性に優れ、品質も安定して歩留まり性が良く、所定の強度、剛性などを満たすことができる電池、電池収容容器及び製造方法を提供する。
【解決手段】 このため、本発明に係る電池は、発電要素を収容する電池収容容器を含んで構成される電池であって、電池収容容器は、つなぎ目無く凹状に成形された底部11と、底部から連続する複数の側壁部12A〜12Dと、を有し、複数の側壁部12A〜12D同士の隣接部13A〜13Dが接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、電池要素等の発電要素を収容する電池収容容器及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば特許文献1には、半殻体に成形された上カップと、その開口部を封止する下カップと、の間に薄型の角型電池を収容するようにした技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、薄型の角型電池を収容する角型電池缶に関する技術が記載されており、角型の筒状要素(角筒)と、底板と、を別々に成形し、角筒の端面に底板をレーザー溶接によって接合するようにした技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、薄型の角型リチウムイオン2次電池を収容する角型電池缶に関する技術が記載されているが、このものは、プレス成形は楕円状のブランク(素材)から複数工程を経て、角筒に成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−250517号公報
【特許文献2】特開平6−333541号公報
【特許文献3】特開2003−157809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、特許文献1に記載の技術は、浅絞りにより成形できるため、成形が容易で品質を安定させることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、上カップと下カップとを溶接により接合しているが、その溶接部は上カップと下カップの接合部の一周に亘るため溶接長が長く、生産性に劣るおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、深絞り成形を省くことができるため、成形が容易で品質を安定させることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、薄型の角型電池を接合する2つの部品(角筒と底板)の正確な位置合わせを行いつつ押圧維持しておく必要があり、作業の煩雑化や装置の複雑化等を招くおそれがある。また、レーザーが接合部(角筒廻り)を一周相対移動する必要があるため、溶接長が長くなると共に、角部では溶接速度を遅くする必要があるため、生産性に劣るおそれがある。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術は、薄肉軽量化が可能であるが、楕円状のブランク(素材)から複数工程を経て、角筒に成形するため、金型が複数で成形も難しく、生産コストが嵩むおそれや生産性に劣るおそれがある。
【0011】
なお、特許文献3に記載されているように、DI(Drawing and Ironing)工法(シゴキ絞り工法)により角型電池缶を成形することも行われているが、かかるDI工法は、円筒成形においては、2回の絞りでシゴキに入るので問題はないが、角筒成形では2回の絞りで最終的な角筒に成形することになるので、深い絞りの必要な形状の成形には不向きである。
【0012】
更に、インパクト成形により角型電池缶を成形することも想定されるが、インパクト成形は、1工程で角筒に成形することができるが、1回の押し出し成形であるため、側壁の厚みがばらついたり、側壁の厚みを薄くするのが困難であり、肉厚も厚くなってしまうなど、材料歩留まり悪く、品質管理も難しいといったおそれがある。
【0013】
なお、プレス成形により深絞りを行う場合、強加工を施すことになるため、加工硬化が激しく、ステンレスを材料とする場合には、焼鈍を行うことが一般的であり、加工時間が増大して生産性を改善することが難しいといった実情がある。
【0014】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストでありながら、生産性に優れ、品質も安定して歩留まり性が良く、所定の強度、剛性などを満たすことができる電池、電池収容容器及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明に係る電池は、
発電要素を収容する電池収容容器を含んで構成される電池であって、
電池収容容器は、
つなぎ目無く凹状に成形された底部と、
底部から連続する複数の側壁部と、
を有し、
複数の側壁部同士の隣接部が接合されていることを特徴とする。
【0016】
本発明において、底部はプレス成形により成形されていることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明において、底部から連続する複数の側壁部は、底部との接続部付近廻りに折り曲げられていることを特徴とすることができる。
【0018】
本発明において、前記複数の側壁部同士の隣接部の接合は溶接によることを特徴とすることができる。
【0019】
また、本発明に係る電池収容容器は、
発電要素を収容する電池収容容器であって、
つなぎ目無く凹状に成形された底部と、
底部から連続する複数の側壁部と、
を有し、
複数の側壁部同士の隣接部が接合されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る電池収容容器の製造方法は、
発電要素を収容する電池収容容器の製造方法であって、
電池収容容器の底部に成形される部位と、底部から連続され複数の側壁となる複数の側壁部と、を有する板状素材に対して、絞り成形を行って、つなぎ目の無い凹状の底部を成形するステップと、
底部との接続部付近廻りに複数の側壁部を折り曲げるステップと、
複数の側壁部同士の隣接部を接合するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明において、各ステップが、一のプレスマシン内において連続的に行われることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストでありながら、生産性に優れ、品品質も安定して歩留まり性が良く、所定の強度、剛性などを満たすことができる電池、電池収容容器及び製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池収容容器(電池)の製造に用いられる板状のブランク(素材)の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の状態から底部をプレス成形した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の状態から曲げ加工により側壁部を折り曲げて(立ち上げて)有底角筒形状に成形した状態を抜き出して示した斜視図である。
【図4】図3の状態をプレス金型及びレーザー溶接機を含んで示した一部断面を有する斜視図である。
【図5】図3の状態から隣接する側壁部同士に対して溶接を行った後、上端付近を切除した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明における浅絞り深さ(高さ)hを定義するための図である。
【図7】隣接する側壁部同士の間に生じるおそれのある隙間を説明するために電池収容容器の一部を拡大して示す斜視図である。
【図8】(A)はブランク(素材)の他の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)を有底角筒形状に成形した状態を示す斜視図である。
【図9】(A)はブランク(素材)の他の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)を有底角筒形状に成形した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法について、添付の図面に従って説明する。ところで、電池収容容器に発電要素(電池要素(1次電池、2次電池など))を収容した状態のものが電池として扱われることを考慮して、本実施の形態では、電池収容容器(電池)と記している。
なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0025】
本実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法においては、図1に示すように、1枚のブランク(板状素材)1から絞り成形を行うことにより、図2に示すような電池収容容器の凹状の底部11を成形する。
【0026】
かかる底部11の成形は、浅絞り成形であるため、比較的単純な構造の金型により無潤滑にて成形することができると共に成形は安定して可能であるため、つなぎ目が無く、品質ばらつきの少ない製品を提供することができ、生産コストや生産性などの改善に貢献可能である。
【0027】
次に、図2の状態から、底部11の4辺に連続するブランク1の十字状の4片の側壁部12A,12B,12C,12Dを曲げ成形により立ち上げて、図3に示すような状態に成形する。
【0028】
すなわち、ブランク1は、図3に示したような上端開放の角筒ケース形状に成形されていて、この状態にてサーボプレスの金型内に保持されている。なお、隣接する4片12A,12B,12C,12Dは相互に接合されていない状態である。
【0029】
図3の状態に成形されたブランク1は、図4に示すようにして金型内に保持されているので、本実施の形態においては、接合されていない部位13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部など)でこれから溶接等により接合する部位の位置決めや押圧などを容易かつ正確に行うことができる。
【0030】
本実施の形態では、金型内に保持されたブランク1の4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)を溶接するためのレーザー溶接機50により、4つの角部(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)を溶接により接合する。
【0031】
なお、4つの角部のそれぞれにレーザー溶接機50を配設する場合に限らず、1の或いは複数のレーザー溶接機50を角部間において移動させて、4つの角部13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)を溶接により接合するような構成とすることもできる。
【0032】
その後、図5に示すように、不要な部分を第1カット処理、第2カット処理によりカットして、電池収容容器の電池収容部10を完成する。
【0033】
なお、当該電池収容部10の内側に、図示しない発電要素(電池要素(1次電池、2次電池など))を挿入した後、上蓋(図示せず)が溶接等により電池収容部10の上部に接合されて密閉されて、電池収容容器延いては電池が完成される。
【0034】
このように、本実施の形態においては、上蓋を取り付ける場合を除き、図3や図4に示した溶接処理以外に溶接を行う必要がないために、溶接のために部材を位置決め保持するための冶具などを従来に対して減らすことができるため経済的で、更には溶接のために冶具へブランクをセットしたり、溶接後に治具からブランクを解放したりするための時間も必要ないため、生産性を向上させることができる。
【0035】
更に、本実施の形態では、図2の状態から図3の状態への曲げ加工と同時に、4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)を溶接することができるが、かかる場合においては金型によりブランク1がしっかりと位置決めされているので、別個独立の位置決め治具などが無くても、極めて高い位置決め精度を実現することができる。このため、歩留まりが良く製品の高品質化に貢献できると共に、生産性の向上にも貢献することができる。
【0036】
本実施の形態では、4つの角部13A,13B,13C,13Dに対応して4つのレーザー溶接機50を備えているが、溶接長は、凹状の底部11の上端付近(4つの辺の途中部分)から伸びる辺の長さとなるため、製品高さより短くて済むため、溶接長を短くすることができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、R部のような隅部(レーザーの照射軸がその前後で交差する方向(図4のr方向)に方向転換が必要な部分)に沿った溶接が不要となるため、辺に沿った直線的な溶接のみで製作可能であり、品質を所定レベルに維持しながら溶接速度を高めることができ、生産性を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、レーザー溶接機50による溶接の際には、プレスマシンを停止させ、レーザー溶接機50側を、4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13Dに沿って移動させる構成とすることができるが、サーボプレスマシンを用いている場合には、レーザー溶接機側を定位置に保持し、サーボプレスマシンのスライド(金型)延いてはブランク1側の移動速度を溶接速度に調整することも可能である。
【0039】
このように、レーザー溶接機側を定位置に保持して、ブランク1側(サーボプレスマシンのスライド側)を移動させる構成とすると、レーザー溶接機50を移動させるための装置を省略することができ、構成の簡略化や低コスト化を促進することができる。
【0040】
本実施の形態では、曲げ成形により、電池収容容器の側壁部12A,12B,12C,12Dを成形するので、加工上の製品高さ方向に対する制限は少なく、また側壁部を成形するための絞り加工などが不要であるためブランク1の素材そのままで4つの側壁部を構成させることができる。
【0041】
このため、板厚精度の高い電池収容容器を容易に製作することができるので、低コストでありながら電池収容容器の破壊強度を所定レベル以上とすることができると共に、側壁の板厚のバラツキ等を考慮しなくて良いので、側壁相互間における溶接を行う際において、板厚のバラツキ(熱容量のバラツキ)等を考慮したきめ細かな調整が不要で、溶接作業を容易なものとすることができると共に、仕上がり品質に優れたものとすることができる。
【0042】
更に、4つの側壁部に接合される上蓋もブランク(素材)1と同じ素材(板材)から打ち抜き等により製作することで、側壁部12A,12B,12C,12Dの板厚と均等な厚みとすることができるので、板厚のバラツキ(熱容量のバラツキ)等を考慮したきめ細かな調整が不要で、上蓋と側壁部との溶接も容易とすることができ、どちらかが溶融してしまうなどの不具合もなく、バラツキの少ない高品質な溶接接合を実現することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、深絞り成形等の強加工を必要としないので、加工硬化は発生せず、ステンレス材料である場合でも、焼鈍などの時間を要する熱処理加工を省略することができ、生産コスト及び生産性を改善することができる。
【実施例1】
【0044】
ここで、本実施の形態に係る実施例1について説明する。
実施例1は、SUS430をブランク(素材)1の材料として採用し、プレスマシンにて「ブランキング」(図1参照)→「絞り」(図2参照)→「曲げ及び溶接」(図3、図4参照)→「開口部第一カット」(図5参照)→「開口部第二カット」(図5参照)を行って、電池収容容器延いては電池を製作した。
【0045】
絞り成形(図2)は浅絞りであるため、比較的単純な構造の金型により無潤滑にて成形することが可能であると共に、成形は安定しているため、品質ばらつきの少ない製品を提供することができ、生産コストや生産性などの改善に貢献可能である。
【0046】
その後、上述したと同様に、4片の側壁部12A,12B,12C,12Dを曲げ成形により立ち上げて、図3に示すような状態に成形し、図4に示すような状態にサーボプレスの金型内で保持する。従って、接合されていない部位13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部など)でこれから溶接等により接合する部位の位置決めや押圧などを容易かつ正確に行うことができた。
【0047】
実施例1では、このように金型内に保持されているブランク1の4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13Dに対して、レーザー溶接機50によりレーザー溶接を行った。
【0048】
レーザー溶接機50は4つの角部に対応して4つ配設し、各レーザー溶接機50の溶接長さは140mmとした。
実施例1での溶接は直線であるので、溶接は簡単で、所要時間は3秒(sec)以内であった。
【0049】
また、側壁部12A,12B,12C,12Dに対する絞り加工などは行わないため、側壁部12A,12B,12C,12Dは均等な板厚であるので、溶接が容易であった。
【0050】
更に、上蓋もブランク(素材)1と同じ素材(板材)から製作することで、側壁部12A,12B,12C,12Dの板厚と均等な厚みとすることができるので、上蓋と側壁部との溶接も容易で、どちらかが溶融してしまうなどの不具合もなく、バラツキの少ない高品質な溶接接合を実現することができた。
【0051】
なお、発電要素(電池要素(1次電池、2次電池など))を挿入した後、上蓋を溶接することで製作された電池(電池収容容器)の破壊テストにおいては、電池収容容器全体がほぼ均一の板厚であるため、破壊テストの結果にもバラツキがなかった。
【0052】
また、深絞りがないため、加工硬化が発生しないので、SUS430特有の低温脆性が改善され、低温脆性試験においても破壊試験をクリアすることができた。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2について説明する。
実施例2は、SUS304をブランク(素材)1の材料として採用し、プレスマシンにて「ブランキング」(図1参照)→「絞り」(図2参照)→「曲げ及び溶接」(図3、図4参照)→「開口部第一カット」(図5参照)→「開口部第二カット」(図5参照)を行って、電池収容容器延いては電池を製作した。
【0054】
実施例2においても、絞り成形(図2)は浅絞りであるため、比較的単純な構造の金型により無潤滑にて成形することが可能であると共に、成形は安定しているため、品質ばらつきの少ない製品を提供することができ、生産コストや生産性などの改善に貢献可能である。
【0055】
その後、実施例2においても同様に、4片の側壁部12A,12B,12C,12Dを曲げ成形により立ち上げて、図3に示すような状態に成形し、図4に示すような状態にサーボプレスの金型内で保持する。従って、接合されていない部位13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部など)でこれから溶接等により接合する部位の位置決めや押圧などを容易かつ正確に行うことができた。
【0056】
実施例2では、このように金型内に保持されているブランク1の4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)に対して、レーザー溶接機50によりレーザー溶接を行った。
【0057】
レーザー溶接機50は4つの角部に対応して4つ配設し、各レーザー溶接機50の溶接長さは140mmとした。
実施例2での溶接は直線であるので、溶接は簡単で、所要時間は3秒(sec)以内であった。
【0058】
また、側壁部12A,12B,12C,12Dに対する絞り加工などは行わないため、側壁部12A,12B,12C,12Dは均等な板厚であるので、溶接が容易であった。
【0059】
また、上蓋もブランク(素材)1と同じ素材(板材)から製作することで、側壁部12A,12B,12C,12Dの板厚と均等な厚みとすることができるので、溶接が簡単で、どちらかが溶融してしまうなどの不具合もなく、バラツキの少ない高品質な溶接接合を実現することができた。
【0060】
なお、発電要素(電池要素(1次電池、2次電池など))を挿入した後、上蓋を溶接することで製作された電池(電池収容容器)の破壊テストにおいては、電池収容容器全体がほぼ均一の板厚であるため、破壊テストの結果にもバラツキがなかった。
【0061】
また、深絞りがないため、加工硬化が発生しないので、SUS304特有の時期割れが改善され、時期割れ試験においても破壊試験をクリアすることができた。
【実施例3】
【0062】
次に、実施例3について説明する。
実施例3は、アルミ合金(A3003)をブランク(素材)1の材料として採用し、プレスマシンにて「ブランキング」(図1参照)→「絞り」(図2参照)→「曲げ及び溶接」(図3参照)→「開口部第一カット」(図4参照)→「開口部第二カット」(図4参照)を行って、電池収容容器延いては電池を製作した。
【0063】
実施例3のようなアルミ合金を素材とする場合においても、絞り成形(図2)は浅絞りであるため、比較的単純な構造の金型により無潤滑にて成形することが可能であると共に、成形は安定しているため、品質ばらつきの少ない製品を提供することができ、生産コストや生産性などの改善に貢献可能である。
【0064】
その後、実施例3においても同様に、4片の側壁部12A,12B,12C,12Dを曲げ成形により立ち上げて、図3に示すような状態に成形し、図4に示すような状態にサーボプレスの金型内で保持する。従って、接合されていない部位13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部など)でこれから溶接等により接合する部位の位置決めや押圧などを容易かつ正確に行うことができた。
【0065】
実施例3では、このように金型内に保持されているブランク1の4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)に対して、レーザー溶接機50によりレーザー溶接を行った。
【0066】
レーザー溶接機50は4つの角部に対応して4つ配設し、各レーザー溶接機50の溶接長さは140mmとした。
実施例2での溶接は直線であるので、溶接は簡単で、所要時間は3秒(sec)以内であった。
【0067】
また、側壁部12A,12B,12C,12Dに対する絞り加工などは行わないため、側壁部12A,12B,12C,12Dは均等な板厚であるので、溶接が容易であった。
【0068】
また、上蓋もブランク(素材)1と同じ素材(板材)から製作することで、側壁部12A,12B,12C,12Dの板厚と均等な厚みとすることができるので、溶接が簡単で、どちらかが溶融してしまうなどの不具合もなく、バラツキの少ない高品質な溶接接合を実現することができた。
【0069】
なお、発電要素(電池要素(1次電池、2次電池など))を挿入した後、上蓋を溶接することで製作された電池(電池収容容器)の破壊テストにおいては、電池収容容器全体がほぼ均一の板厚であるため、破壊テストの結果にもバラツキがなかった。
【0070】
ここで、本実施の形態では、本発明の浅絞り成形の一例として、以下のように定義する。
すなわち、図6を参照して説明すると、
h:絞り深さ(高さ)(mm)
R:製品外R寸法(mm)
t:素材板厚(mm)
とした時、
R+2t<h<15を満たす絞り深さ(高さ)h(mm)での絞り成形を、浅絞り成形と定義する。
【0071】
製品の外R分は、絞り深さ(高さ)を確保しないと、レーザー溶接機をθ方向(図6参照:レーザーの照射軸がその前後で交差する方向)に移動させなければならないため、非効率となる。
また、R部分は、プレス時に金型で成形しないフリーな部位であり、成形毎に形状が微妙に異なり安定した形状ではないため、かかるR部分をレーザー溶接により接合することは溶接延いては製品の品質が安定しない。
従って、R部分への溶接は避けることが望ましい。
【0072】
また、R+2t≧hであると、図7に示すように、絞り成形後の側壁部の継ぎ手突き合わせがうまくいかず、隙間が生じるおそれがある。
このため、本実施の形態では、浅絞りの深さ(高さ)hを、R+2t<hとすることとしている。
【0073】
一方、h≧15であると、絞りが深くなり、絞り成形の際に潤滑剤を使用する必要が生じ、かかる場合には後工程において洗浄等の処理を行ってからでないと、レーザー溶接の処理を行うことができないため、工程が複雑化し冗長化すると共に洗剤や洗浄時間が必要になるため生産コストや生産性の面で不利な点が多くなる。
【0074】
このようなことから、本実施の形態においては、絞り深さ(高さ)hが、R+2t<h<15の範囲に収まる絞りを浅絞りとして定義している。
【0075】
なお、一例ではあるが、素材板厚tとしては、アルミの場合、例えば0.80〜1.2mm程度、SUSの場合、例えば0.5〜0.8mm程度で、Rは例えば6mm程度のものが想定される。
【0076】
ところで、上述してきた本実施の形態では、図4に示したように、金型内に保持されたブランク1の4つの角部(4つの辺)13A,13B,13C,13D(4片の側壁部12A,12B,12C,12Dの相互隣接部)を、レーザー溶接機50によって、溶接接合することとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0077】
例えば、図8や図9に示すように、4つの片(側壁部)12a(12a’),12b(12b’),12c(12c’),12d(12d’)を、図1で例示したような矩形形状から他の形状に変更することができる。これに対応して、溶接のためのレーザーを通過させるためにブランク1の外側の金型の形状に変更を加えたり、接合部を溶接するためのレーザー溶接機に対する変更などを施すことができる。
【0078】
なお、図8や図9に示すように、例えば接合部(溶接部)を平面部分に持ってくることで、接合処理が容易化して生産性や品質の改善などが期待できる。
【0079】
以上で説明したように、本実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法によれば、加工負荷の小さい浅絞りにより底部を無潤滑により成形し、つなぎ目無く成形された当該底部に連続する各片を加工負荷の小さい曲げ加工により略垂直に折り曲げて筒箱状に成形し、その状態を例えば金型により維持することで、精度良く位置決めしながら各片の隣接部分を溶接により接合するようにしたので、簡単かつ低コストでありながら、生産性に優れ、高いレベルで安定した品質の電池収容容器(電池)を製造することができる。
【0080】
特に、本実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法によれば、溶接すべき部分に対して絞り加工などを行わないので、溶接すべき部分の材料の厚さを素材そのままの厚さとすることができるため、溶接作業が容易で、かつ、突き合わされて溶接接合される部分における厚さの不均一さに伴う不具合等の発生を抑制することができるため、生産性を向上させることができると共に、溶接の品質延いては製品品質を向上させることができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法によれば、側壁部分に対して絞り加工を行わないので、その板厚を素材のままとすることができるため、電池要素等の発電要素を収容した後、側壁の上部に被せる上蓋を側壁と同じ厚さで製作することができるので、上蓋と側壁との間における溶接接合においても、厚さの不均一さに伴う不具合等の発生を抑制することができるため、生産性を向上させることができると共に、溶接の品質延いては製品品質を向上させることができる。
【0082】
更に、本実施の形態に係る電池収容容器(電池)及び製造方法によれば、深絞りのような負荷の大きな加工が含まれないため、加工硬化が発生しないので、例えば、焼鈍のような熱処理を行わなくても、SUS430を素材とした場合でもSUS430特有の低温脆性を改善することができると共に、SUS304を素材とした場合でもSUS304特有の時期割れを改善することができる。
【0083】
なお、上述した本実施の形態においては、レーザー溶接を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、素材の種類は寸法などに応じて適宜の溶接方法を採用することができると共に、溶接以外の接合方法を採用することも可能である。
【0084】
以上で説明した本発明に係る実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、簡単かつ低コストでありながら、生産性に優れ、品質も安定して歩留まり性が良く、所定の強度、剛性などを満たすことができる電池収容容器(電池)及び製造方法を提供することができ、例えば電池の製造技術の分野などにおいて有益である。
【符号の説明】
【0086】
1 素材(ブランク)
10 電池収容部
11 底部
12A〜12D 側壁部
12a〜12d 側壁部
12a’〜12d’ 側壁部
13A〜13D 角部(辺)
50 レーザー溶接機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を収容する電池収容容器を含んで構成される電池であって、
電池収容容器は、
つなぎ目無く凹状に成形された底部と、
底部から連続する複数の側壁部と、
を有し、
複数の側壁部同士の隣接部が接合されていることを特徴とする電池。
【請求項2】
底部はプレス成形により成形されていることを特徴とする電池。
【請求項3】
底部から連続する複数の側壁部は、底部との接続部付近廻りに折り曲げられていることを特徴とする電池。
【請求項4】
前記複数の側壁部同士の隣接部の接合は溶接によることを特徴とする電池。
【請求項5】
発電要素を収容する電池収容容器であって、
つなぎ目無く凹状に成形された底部と、
底部から連続する複数の側壁部と、
を有し、
複数の側壁部同士の隣接部が接合されていることを特徴とする電池収容容器。
【請求項6】
発電要素を収容する電池収容容器の製造方法であって、
電池収容容器の底部に成形される部位と、底部から連続され複数の側壁となる複数の側壁部と、を有する板状素材に対して、絞り成形を行って、つなぎ目の無い凹状の底部を成形するステップと、
底部との接続部付近廻りに複数の側壁部を折り曲げるステップと、
複数の側壁部同士の隣接部を接合するステップと、
を含むことを特徴とする電池収容容器の製造方法。
【請求項7】
各ステップが、一のプレスマシン内において連続的に行われることを特徴とする請求項6に記載の電池収容容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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