説明

電池および車両

【課題】発電要素内部における添加剤濃度の変動を抑える。
【解決手段】電池10は、電池缶30、電池缶30に収容される発電要素20、電池缶30に収容される電解液26、ならびに、緩衝材28を備える。緩衝材28は、発電要素20および電解液26と共に電池缶30に収容される。緩衝材28は添加剤を含有する。緩衝材28が添加剤を含有することは、たとえば発電要素20が衝撃を受けたことに伴って発電要素20内部とは異なる箇所で添加剤の放出が行われることを意味する。発電要素20内部とは異なる箇所で添加剤の放出が行われると、発電要素20内部で添加剤の放出が行われる場合に比べ、発電要素20内部における添加剤の濃度上昇は緩やかなものとなる。濃度上昇が緩やかなものとなるため、一時的に添加剤の濃度が高くなり過ぎるという事態を回避できる。その結果、電解液26中の添加剤濃度の変動を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、非水系二次電池用セパレータを開示する。この非水系二次電池用セパレータは、電気絶縁性の通気性基材と、この基材の片面または両面に積層された多孔質層とを備える。通気性基材ないし多孔質層に良溶媒が含有される。良溶媒は多孔質層を形成する高分子を溶解する。良溶媒はセパレータの重量に対して0.001〜0.6重量%含まれている。特許文献1に開示された非水系二次電池用セパレータによれば、良溶媒濃度を適切に調節することで、電池特性を良好とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明によれば、長期にわたり良好な性能を維持できる二次電池が得難いという問題点がある。二次電池が長期にわたり良好な性能を維持するためには、特許文献1に言う良溶媒すなわち添加剤の濃度を二次電池の発電要素内部において長期にわたり適切な範囲に維持する必要がある。添加剤の濃度を二次電池の発電要素内部において長期にわたり適切な範囲に維持するためには、発電要素内部における添加剤濃度の変動を抑えることが必要である。特許文献1に開示された発明では、そのように添加剤濃度の変動を抑えることが困難である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、発電要素内部における添加剤濃度の変動を抑え得る電池およびその電池を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照して本発明の電池を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、電池缶30、電池缶30に収容される発電要素20、電池缶30に収容される電解液26、ならびに、緩衝材28を備える電池10にかかる発明である。緩衝材28は、発電要素20および電解液26と共に電池缶30に収容される。この発明において緩衝材28は添加剤を含有する。
【0008】
請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、上述した緩衝材28が、多孔質材料により構成される衝撃緩和部材50と、添加剤溶液52とを備えているものである。添加剤溶液52は、衝撃緩和部材50内に収容される。添加剤溶液52は添加剤を溶質とする。
【0009】
請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、電解液26が次に述べる添加剤を含んでいるものである。その添加剤とは、添加剤溶液52が溶質とする添加剤と同じ添加剤である。添加剤溶液52における添加剤の濃度は電解液26における添加剤の濃度より濃いものである。
【0010】
請求項4にかかる発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電池10を搭載した車両80にかかる発明である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明によれば、緩衝材28が添加剤を含有する。これは、たとえば発電要素20が衝撃を受けたことに伴って発電要素20内部とは異なる箇所で添加剤の放出が行われることを意味する。発電要素20内部とは異なる箇所で添加剤の放出が行われると、発電要素20内部で添加剤の放出が行われる場合に比べ、発電要素20内部における添加剤の濃度上昇は緩やかなものとなる。濃度上昇が緩やかなものとなるため、一時的に添加剤の濃度が高くなり過ぎるという事態を回避できる。その結果、発電要素20内部における添加剤濃度の変動を抑えることができる。
【0012】
請求項2にかかる発明によれば、添加剤溶液52が衝撃緩和部材50に収容されている。添加剤溶液52が衝撃緩和部材50に収容されているので、添加剤溶液52は、衝撃緩和部材50が衝撃を受けたことによって衝撃緩和部材50から押出された場合に、電解液26と混じることとなる。これにより、衝撃緩和部材50が衝撃を受ける間、衝撃緩和部材50が衝撃を受けていない期間に比べ、電解液26に多くの添加剤が補給されることとなる。衝撃緩和部材50が衝撃を受けると添加剤が多く補給され、衝撃緩和部材50が衝撃を受けないと添加剤の補給が減るので、請求項2にかかる発明は、使用中に衝撃を受けやすい環境で実施すると、使用中でない期間における添加剤の補給を抑えることができる。使用中でない期間における添加剤の補給を抑えることができるので、使用中か否かを問わずに一定量の添加剤を補給する場合に比べ、長期にわたり添加剤の補給が可能となる。長期にわたり添加剤の補給が可能となるので、長期にわたり発電要素20内部における添加剤濃度の変動を抑えることができる。
【0013】
請求項3にかかる発明によれば、添加剤溶液52における添加剤の濃度は電解液26における添加剤の濃度より濃い。これは、添加剤溶液52における添加剤の濃度が電解液26における添加剤の濃度以下である場合に比べ、衝撃緩和部材50が受ける衝撃のわりに効率よく電解液26へ添加剤を補給できることを意味する。効率よく添加剤を補給できると、電解液26に予め多くの添加剤を入れておく必要がなくなる。
【0014】
請求項4にかかる発明によれば、車両80は電池10を搭載している。その電池10は、発電要素20内部における添加剤濃度の変動を抑えることができる。添加剤濃度の変動を抑えることができれば、添加剤の濃度を発電要素20内部において長期にわたり適切な範囲に維持できる。添加剤の濃度を長期にわたり適切な範囲に維持できると、電池10が長期にわたり良好な性能を維持できる。電池10が長期にわたり良好な性能を維持できると、車両80もまた長期にわたり良好な性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかる二次電池の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる緩衝材の一部の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる車両の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0017】
[構造の説明]
本実施形態にかかる二次電池10はリチウムイオン二次電池である。図1に示すように、本実施形態にかかる二次電池10は、発電要素20と、正極集電体22と、負極集電体24と、電解液26と、緩衝材28とを、電池缶30内部に収容したものである。
【0018】
発電要素20は、アルミニウム製の正極箔(図示省略)と銅製の負極箔(図示省略)とそれらの間に設けられる二枚のセパレータ(図示省略)とを渦巻状に巻回したものである。正極箔の端部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の正極集電体22に導通接合されている。負極箔の端部は、銅または銅合金製の負極集電体24に導通接合されている。
【0019】
電解液26は、電解質と添加剤とを含有する有機溶媒である。添加剤の具体例、電解質の具体例、および、有機溶媒の具体例は周知なので、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0020】
電池缶30は、無蓋箱状の本体ケース部60と天板62とをレーザー溶接などによって一体化したものである。電池缶30には、アルミニウム製の正極端子32と銅製の負極端子34とが設けられている。正極端子32と負極端子34とは天板62に取付けられている。正極端子32は正極集電体22に導通接続される。負極端子34は負極集電体24に導通接続される。ちなみに、電池缶30の素材は導体である。電池缶30の素材として、導体のうち、アルミニウム合金およびステンレス合金が好ましい。
【0021】
緩衝材28は、二次電池10が振動を受けたことにより発電要素20が受ける衝撃を和らげる。本実施形態の場合、緩衝材28は本体ケース部60の底面に押込められている。図1に示すように、本実施形態の場合、緩衝材28は棒状の部材である。本実施形態の場合、緩衝材28は凹部40を有する。緩衝材28の凹部40に発電要素20の端部が嵌まる。
【0022】
図2を参照しつつ、緩衝材28について説明する。本実施形態の場合、緩衝材28は衝撃緩和部材50と添加剤溶液52とを備える。衝撃緩和部材50は多孔質材料により構成される。具体的には、本実施形態にかかる衝撃緩和部材50は、発泡ポリプロピレンにより構成されている。衝撃緩和部材50の孔の中に添加剤溶液52が収容されている。本実施形態の場合、添加剤溶液52の成分は電解液26と同じである。したがって、添加剤溶液52は電解液26に含まれている添加剤と同じ添加剤を含んでいる。ただし、本実施形態の場合、添加剤溶液52における添加剤の濃度は、電解液26における添加剤の濃度より高い。添加剤溶液52における添加剤以外の成分の濃度は、電解液26における添加剤以外の成分の濃度より低い。
【0023】
電池缶30には、保護シート36も収容されている。再び図1を参照しつつ、保護シート36について説明する。保護シート36は、発電要素20、正極集電体22、負極集電体24、電解液26、および、緩衝材28と共に電池缶30に収容される。保護シート36は、発電要素20、正極集電体22、および、負極集電体24を包んでいる。このため、図1に示すように、発電要素20と緩衝材28との間は、保護シート36によって仕切られていることとなる。
【0024】
本実施形態の場合、保護シート36の形状は蓋のない袋状である。保護シート36は例えば薄膜状の合成樹脂で形成されている。保護シート36の底部すなわち発電要素20と共に緩衝材28の凹部40に嵌まっている部分には孔70が設けられている。したがって、電解液26中のイオンは孔70を通って保護シート36の中と外とを行き来する。孔70の数が特に限定されないことは言うまでもない。
【0025】
なお、発電要素20の具体的な構造、正極集電体22および負極集電体24の具体的な構造、正極端子32および負極端子34の具体的な構造、正極箔の端部と正極集電体22との接合部の具体的な構造、負極箔の端部と負極集電体24との接合部の具体的な構造、正極集電体22と正極端子32との接合部の具体的な構造、ならびに、負極集電体24と負極端子34との接合部の具体的な構造は周知である。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0026】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかる二次電池10はこれが振動を受けるような用途に用いられることが望ましい。二次電池10が振動を受けるような用途の例には、車両用電源がある。図3は、二次電池10が搭載されている車両80を表す概念図である。そのような車両80において、二次電池10は、電池ユニット82として搭載されている。電池ユニット82は、複数の二次電池10を1つのケースに収容したものである。このケースの中で、それらの二次電池10は、互いに接続されている。本実施形態にかかる二次電池10の使用方法そのものは周知のリチウムイオン二次電池と同様である。その二次電池10が搭載されている車両80の使用方法そのものは周知の自動車と同様である。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
【0027】
[効果の説明]
本実施形態にかかる二次電池10は、発電要素20内部における添加剤濃度の変動を抑えることができる。以下、その理由を説明する。緩衝材28は添加剤を含有する。緩衝材28が添加剤を含有する場合、たとえば発電要素20が衝撃を受けたことに伴って緩衝材28が添加剤を放出するため、電解液26に添加剤が補充されることとなる。添加剤が補充されるため、二次電池10の製造時には、電解液26中の添加剤濃度を高くしておく必要がない。電解液26中の添加剤が消費された頃、緩衝材28から電解液26へ添加剤が補充される。しかも、添加剤は発電要素20内部ではなく緩衝材28から補給される。これにより、発電要素20内部における電解液26中の添加剤の濃度は、発電要素20内部で添加剤が補給される場合に比べ、変動し難くなる。添加剤濃度が変動し難くなるので、添加剤の濃度を発電要素20内部において長期にわたり適切な範囲に維持することが容易になる。
【0028】
また、本実施形態にかかる二次電池10において、緩衝材28は衝撃緩和部材50を有する。衝撃緩和部材50は多孔質部材により構成されている。衝撃緩和部材50中の添加剤溶液52が自然に電解液26中に拡散することにより緩衝材28から添加剤が放出されるほか、振動によって衝撃緩和部材50の中から外へ添加剤溶液52が押出されることにより緩衝材28から添加剤が放出される。衝撃緩和部材50中の添加剤溶液52が押出されることで、二次電池10の使用にともない添加剤が電解液26中に供給されることとなる。つまり、車両80(一例が自動車である)その他振動する物に二次電池10を搭載してこれを使用すると、使用していない間における緩衝材28から電解液26への添加剤の補給は使用中に比べ抑えられる。添加剤の補給が抑えられるので、長期にわたる添加剤の補給が可能となる。長期にわたる添加剤の補給が可能となるので、長期にわたり発電要素20内部における電解液26中の添加剤濃度の変動を抑えることができる。
【0029】
また、本実施形態にかかる二次電池10において、緩衝材28が振動を受けると、電解液26より添加剤の濃度が高い添加剤溶液52が電解液26中に放出される。これにより、添加剤溶液52における添加剤の濃度が電解液26における添加剤の濃度以下である場合に比べ、振動の強さのわりに効率よく添加剤が電解液26に補給されることとなる。効率よく添加剤を補給できると、電解液26に予め多くの添加剤を入れておく必要がなくなる。
【0030】
また、保護シート36に孔70が設けられているので、そうでない場合に比べ、衝撃緩和部材50中の添加剤溶液52が発電要素20内の電解液26に混入しやすくなる。一方、緩衝材28から添加剤を補給すると発電要素20内での添加剤濃度の変動を抑えることができる。これらを組み合わせることで、電解液26中の添加剤濃度の変動幅を調整しやすくできる。
【0031】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0032】
たとえば、添加剤溶液における添加剤の濃度は必ずしも電解液26における添加剤の濃度より高くなくてもよい。緩衝材28が添加剤を含有するための具体的な構造は衝撃緩和部材50中に添加剤溶液52が収容されているものに限定されない。衝撃緩和部材50の素材は発泡ポリエチレンなどの発泡ポリプロピレン以外の素材であってもよい。また、保護シート36の孔70は必ずしも設けられる必要はない。
【符号の説明】
【0033】
10…二次電池、
20…発電要素、
22…正極集電体、
24…負極集電体、
26…電解液
28…緩衝材
30…電池缶、
32…正極端子、
34…負極端子、
36…保護シート、
40…凹部、
50…衝撃緩和部材、
52…添加剤溶液、
60…本体ケース部、
62…天板、
70…孔、
80…車両、
82…電池ユニット、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶、前記電池缶に収容される発電要素、前記電池缶に収容される電解液、ならびに、前記発電要素および前記電解液と共に前記電池缶に収容される緩衝材を備える電池であって、
前記緩衝材が添加剤を含有することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記緩衝材が、
多孔質材料により構成される衝撃緩和部材と、
前記衝撃緩和部材内に収容され、前記添加剤を溶質とする添加剤溶液とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電解液は前記添加剤溶液が溶質とする前記添加剤と同じ添加剤を含んでおり、
前記添加剤溶液における前記添加剤の濃度は前記電解液における前記添加剤の濃度より濃いことを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電池を搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62036(P2013−62036A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197917(P2011−197917)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】