電池および電池用外装体
【課題】軽量化を図りながら、発電要素を効率よく加熱することが可能な電池を提供する。
【解決手段】この電池100は、発電要素4と、発電要素4を収納するとともに、発電要素4を加熱するヒータ層15と、アルミニウム層13とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体1とを備えている。
【解決手段】この電池100は、発電要素4と、発電要素4を収納するとともに、発電要素4を加熱するヒータ層15と、アルミニウム層13とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体1とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池および電池用外装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体を備えた電池システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、二次電池と、二次電池の正極端子および負極端子に接続され、二次電池(発電要素)に近接または密接して配置されたヒータ(発熱体)とを備えた電池システムが開示されている。この電池システムでは、二次電池による電力によりヒータを発熱させて二次電池を加熱することによって、低温環境下でも二次電池の充電性能および出力性能が十分に発揮されるようにしている。なお、上記特許文献1には、ヒータ(発熱体)を二次電池(発電要素)に近接または密接して配置することが記載されているものの、ヒータの具体的な配置位置や取り付け構造については記載されていない。ここで、発熱体を電池(発電要素)に近接または密接して配置する場合、発熱体を電池の外装体の外側表面に接着層を介して貼り付ける構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/016497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成において、ヒータ(発熱体)を二次電池の外装体の外側表面に接着層を介して貼り付けることによってヒータを二次電池(発電要素)に近接または密接して配置した構成では、接着層の劣化や外装体の変形に起因してヒータが外装体の外側表面から剥がれてしまう場合がある。この場合には、ヒータ(発熱体)により二次電池(発電要素)を効率よく加熱することができないという問題点がある。
【0006】
また、低温環境下における電池の使用としては、寒冷地での使用のほか、人工衛星や飛行機等に搭載されて低温環境に晒される場合が考えられる。そして、人工衛星や飛行機等の移動体に搭載される場合には、発熱体により発電要素を加熱することに加えて、電池の軽量化も望まれる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、軽量化を図りながら、発電要素を効率よく加熱することが可能な電池および電池用外装体を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この発明の第1の局面による電池は、発電要素と、発電要素を収納するとともに、発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体とを備えている。
【0009】
この発明の第1の局面による電池では、上記のように、発電要素を加熱する発熱体層が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体を設けることによって、外装体として金属ケースを用いる場合に比べて軽量化を図ることができるとともに、発熱体層がラミネートフィルムからなる外装体の内部に積層されて設けられているので、発熱体層が外装体から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、発熱体層により外装体の内部に収納された発電要素を効率よく加熱することができる。また、発熱体層をラミネートフィルムからなる外装体の内部に積層することによって、発熱体を外装体の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様に発熱体層を形成(積層)することができるので、発熱体層を容易に設けることができる。
【0010】
上記第1の局面による電池において、好ましくは、外装体は、内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を含み、発熱体層は、外側表面の溶着樹脂層と金属層との間に設けられている。このように構成すれば、発熱体層が金属層よりも外側に設けられるので、発熱体層に電力を供給するための配線を容易に形成することができる。また、外装体の内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を設けることによって、内側表面の一部と外側表面の一部とを対向させた状態で溶着することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、外装体は、発熱体層と外装体の内側表面との間に設けられ、発熱体層による熱を拡散して発電要素に伝達する熱拡散層を含み、熱拡散層は、50μm以上400μm以下の厚みを有する。なお、本発明の熱拡散層は、単一の層から構成されるものに限らず、同一または異なる材質の複数の層から構成されるものも含む広い概念である。このように構成すれば、熱拡散層により熱を拡散して発電要素全体に分散させることができるので、発電要素全体を均一に加熱することができる。
【0012】
上記発熱体層が外側表面の溶着樹脂層と金属層との間に設けられている構成において、好ましくは、発熱体層と金属層との間には、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性耐熱層が設けられている。このように構成すれば、発熱体層と金属層とが熱により軟化しにくい絶縁性耐熱層を挟んで配置されるので、発熱体層と金属層とが接触するのが有効に抑制される。その結果、発熱体層と金属層とが短絡してしまうのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面による電池において、好ましくは、発熱体層と金属層とは同一の層からなる。このように構成すれば、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる外装体の層構成を簡素化することができるとともに、外装体の厚みが大きくなるのを抑制して電池の小型化を図ることができる。
【0014】
この発明の第2の局面による電池用外装体は、発電要素を収納するとともに、発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる。
【0015】
この発明の第2の局面による電池用外装体では、上記のように、発電要素を加熱する発熱体層が内部に積層されたラミネートフィルムにより形成することによって、金属ケースの電池用外装体に比べて軽量化を図ることができるとともに、発熱体層が内部に積層されて設けられているので、発熱体層が電池用外装体から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、発熱体層により内部に収納された発電要素を効率よく加熱することができる。また、発熱体層をラミネートフィルムからなる電池用外装体の内部に積層することによって、発熱体を電池用外装体の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様に発熱体層を形成(積層)することができるので、発熱体層を容易に設けることができる。
【0016】
上記第2の局面による電池用外装体において、好ましくは、発熱体層と金属層とは同一の層からなる。このように構成すれば、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる電池用外装体の層構成を簡素化することができるとともに、電池用外装体の厚みが大きくなるのを抑制して電池の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による電池の全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電池の表側を示した平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による電池の裏側を示した平面図である。
【図4】図2および図3の400−400線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による電池の外装体の層構造を示した断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による電池の外装体の熱拡散状態を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態による電池のヒータ回路を示した回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態による電池の全体構成を示した斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態による電池の平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による電池の外装体の層構造を示した断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態による電池の変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態による電池100の構成について説明する。
【0020】
本発明の第1実施形態による電池100は、図1〜図4に示すように、リチウムイオン電池であり、ラミネートフィルムからなる外装体1と、電池100の長手方向(Y方向)の両端部からそれぞれ外側に突出する正極端子2および負極端子3とを備えている。また、外装体1の内部には、図2〜図4に示すように、発電要素4と、図示しない電解液とが収納されている。なお、外装体1は、本発明の「電池用外装体」の一例である。
【0021】
外装体1は、ラミネートフィルムの内側表面の端部と外側表面の端部とが互いに対向した状態で重ねられて溶着されることにより筒状に形成されている。また、外装体1は、図1〜図3に示すように、電池100の長手方向(Y方向)の両端部において、内側表面同士が対向した状態で溶着されることにより形成された溶着部1aを有している。電池100の両端部の溶着部1aは、それぞれ、正極端子2および負極端子3を挟み込んだ状態で溶着されている。また、外装体1は、図5に示すように、発電要素4が配置される内側から外側方向に向かって、PE溶着層11、PET層12、アルミニウム層13、PET層14、ヒータ層15およびPE溶着層16がこの順に積層されたラミネート構造を有している。また、金属からなる層(アルミニウム層13およびヒータ層15)と樹脂層(PET層12、PET層14およびPE溶着層16)との間には、これらを互いに接合する接着層(接着剤、接着フィルムなど)が設けられている。
【0022】
PE溶着層11および16は、ポリエチレンからなり、約130℃の融点を有している。また、PE溶着層11および16は、約0.25W/(m・K)以上約0.34W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれに設けられたPE溶着層11および16は、約50μm以上約200μm以下の厚みを有している。なお、PE溶着層11および16は、本発明の「溶着樹脂層」の一例である。
【0023】
PET層12および14は、耐熱性を有する絶縁性のポリエチレンテレフタレートからなり、PE溶着層11の融点(約130℃)よりも高い約260℃の融点を有している。また、PET層12および14は、約0.2W/(m・K)以上約0.5W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、PET層12および14は、約5μm以上約50μm以下の厚みを有している。なお、PET層14は、本発明の「絶縁性耐熱層」の一例である。
【0024】
アルミニウム層13は、約4μm以上約100μm以下の厚みを有するアルミニウム箔からなり、ラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられている。また、アルミニウム層13は、外装体1の内部および外部からのガスおよび液体を遮断する機能を有している。なお、アルミニウム層13は、本発明の「金属層」の一例である。
【0025】
ヒータ層15は、銅箔からなり、ラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられている。なお、ヒータ層15は、本発明の「発熱体層」の一例である。また、ヒータ層15は、外装体1の外側表面のPE溶着層16とアルミニウム層13との間に配置されている。また、ヒータ層15は、図2および図3に示すように、Y方向(外装体1の長手方向)に延びる帯状に形成されており、複数の位置で折り返しながら電池100の表側から裏側にわたって略全体に設けられている。また、ヒータ層15は、外装体1の内部に収納された発電要素4の起電力により発熱され、発電要素4を加熱するように構成されている。
【0026】
また、ヒータ層15は、電池100の容量(Ah)とヒータ出力(W)との比が約1W/Ah以上約20W/Ah以下となる出力容量を有している。ヒータ層15の出力値としては、1W以上1000W以下が好ましい。また、銅箔からなるヒータ層15は、1×10−8Ω・m以上3×10−8Ω・m以下の電気抵抗率(比抵抗)を有している。また、ヒータ層15は、図2および図3に示すように、電池100の表側および裏側のそれぞれにおいて、内部に収納された発電要素4の投影面積の20%以上の範囲で発電要素4に重なるように配置されている。これにより、ヒータ層15により発電要素4を効果的に加熱することが可能である。また、ヒータ層15は、平面的に見て、実質的に発電要素4の投影領域内に配置されている。これにより、ヒータ層15によって発電要素4が配置されていない外装体1の溶着部1a近傍の部分が加熱されるのを防止することができるので、加熱に起因して外装体1が損傷を受けるのを防止することができる。なお、帯状のヒータ層15は、1mm以上20mm以下の幅を有することが好ましいとともに、5μm以上500μmの厚みを有することが好ましい。
【0027】
また、ヒータ層15は、図1〜図3に示すように、両端部に設けられた接続部15aおよび15bがそれぞれ電池100の表側および裏側において外側に露出している。具体的には、外装体1の外側表面のPE溶着層16の接続部15aおよび15bに対応する部分には、それぞれ、接続部15aおよび15bを外側に露出させる開口部16aおよび16bが形成されている。ヒータ層15は、接続部15aおよび15bを介して後述のヒータ回路5(図7参照)に接続されるように構成されている。
【0028】
上記のように外装体1を構成することによって、ヒータ層15による熱が、図6に示すように、ヒータ層15と外装体1の内側表面との間に配置されたPE溶着層11、PET層12およびPET層14の樹脂層により拡散されて発電要素4に伝達される。すなわち、アルミニウム層13に比べて熱伝導率が小さい、PE溶着層11、PET層12およびPET層14の樹脂層は、ヒータ層15の熱を徐々に拡散しながら発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層17を構成している。ヒータ層15の熱は、PET層14により徐々に拡散されながら外装体1の内側に向かって伝達され、樹脂層よりも熱伝導率の大きいアルミニウム層13によりさらに広範囲に拡散される。そして、アルミニウム層13により拡散された熱は、PET層12およびPE溶着層11により徐々に拡散されながら外装体1の内側に向かって伝達され、十分に拡散された状態で外装体1の内部に収納された発電要素4に伝達される。また、第1実施形態では、PE溶着層11、PET層12およびPET層14からなる熱拡散樹脂層17は、総厚みが約50μm以上約400μm以下であることが好ましい。なお、熱拡散樹脂層17は、本発明の「熱拡散層」の一例である。
【0029】
金属からなる層(アルミニウム層13およびヒータ層15)と樹脂層(PET層12、PET層14およびPE溶着層16)との間に設ける接着層(接着剤、接着フィルムなど)としては、エチレン−メタクリル酸共重合を用いることが好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合の他、アクリル系、エポキシ系、ゴム(シリコーン系、EPDM)などからなる接着層であってもよい。
【0030】
次に、図7を参照して、ヒータ層15を電池100に接続するヒータ回路5について説明する。
【0031】
ヒータ層15は、ヒータ回路5により電池100に接続されており、電池100の電圧が所定電圧以上の場合に、バイパス電路51を介して電流が流れることによりオン状態(発熱状態)になるように構成されている。具体的には、バイパス電路51には、バイパス電路51の開閉を行うためのトランジスタからなるスイッチ手段52が設けられている。スイッチ手段52は、バイポーラトランジスタからなり、電池100の電圧が所定電圧以上の場合にバイパス電路51を閉状態(接続された状態)にし、電池100の電圧が所定電圧よりも小さい場合にバイパス電路51を開状態(切断された状態)にするように構成されている。また、スイッチ手段52は、スイッチ駆動回路53により駆動されるように構成されている。スイッチ駆動回路53は、ヒータ層15に対してスイッチ手段52とは反対側に位置する接続点51aと、スイッチ手段52に対して接続点51aとは反対側に位置する接続点51bとを繋ぐ駆動用主電路531を備えている。また、スイッチ駆動回路53は、駆動用主電路531の途中に位置する接続点531aから分岐する分岐電路532と、基準電圧を供給する電圧供給源533と、分岐電路532および電圧供給源533に接続される比較器534とをさらに備えている。駆動用主電路531の接続点51aと接続点531aとの間には第1抵抗器535が設けられている。また、駆動用主電路531の接続点531aと接続点51bとの間には第2抵抗器536が設けられている。また、比較器534は、分岐電路532の電圧と電圧供給源533の基準電圧とを比較して、分岐電路532の電圧が基準電圧以上の場合に、スイッチ手段52をバイパス電路51が閉じる(接続される)ようにオン状態に駆動し、分岐電路532の電圧が基準電圧よりも小さい場合に、スイッチ手段52をバイパス電路51が開く(切断される)ようにオフ状態に駆動するように構成されている。なお、スイッチ手段52は、バイポーラトランジスタに限らず、FET(Field Effect Transistor)やメカニカルリレー等であってもよい。
【0032】
正極端子2および負極端子3は、それぞれ、アルミニウムおよび銅からなり、外装体1の長手方向(Y方向)の両端部の溶着部1aを介して外側に突出するように設けられている。発電要素4は、図示しない正極活物質が塗布された金属箔(Al)からなる正極と、負極活物質が塗布された金属箔(Cu)からなる負極と、正極および負極の間に配置されたセパレータとが互いに重ね合わされた状態で巻回されることによって形成されている。
【0033】
第1実施形態では、上記のように、発電要素4を加熱するヒータ層15が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体1を設けることによって、外装体1として金属ケースを用いる場合に比べて軽量化を図ることができるとともに、ヒータ層15がラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられているので、ヒータ層15が外装体1から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、ヒータ層15により外装体1の内部に収納された発電要素4を効率よく加熱することができる。また、ヒータ層15をラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層することによって、発熱体を外装体1の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様にヒータ層15を形成(積層)することができるので、ヒータ層15を容易に設けることができる。
【0034】
また、第1実施形態では、上記のように、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれにPE溶着層11および16を設けるとともに、ヒータ層15を、外側表面のPE溶着層16とアルミニウム層13との間に設ける。このように構成すれば、ヒータ層15がアルミニウム層13よりも外側に設けられるので、ヒータ層15に電力を供給するための配線を容易に形成することができる。また、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれにPE溶着層11および16を設けることによって、内側表面の端部と外側表面の端部とを対向させた状態で溶着することができる。
【0035】
また、第1実施形態では、上記のように、外装体1のヒータ層15と外装体1の内側表面との間に、ヒータ層15による熱を拡散して発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層17を設ける。このように構成すれば、熱拡散樹脂層17により熱を拡散して発電要素4全体に分散させることができるので、発電要素4全体を均一に加熱することができる。また、熱拡散樹脂層17を、50μm以上400μm以下の厚みにする場合には、熱拡散樹脂層17の厚みを50μm未満にした場合とは異なり、熱拡散樹脂層17により熱を効果的に拡散させてより広範囲に分散させることができるとともに、熱拡散樹脂層17の厚みを400μmよりも大きくした場合とは異なり、ヒータ層15から発電要素4までの距離が大きくなり過ぎるのを抑制して発電要素4に熱を効果的に伝達することができる。この結果、発電要素4全体を均一に、かつ、効果的に加熱することができる。
【0036】
また、第1実施形態では、上記のように、ヒータ層15とアルミニウム層13との間に、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性のPET層14を設ける。このように構成すれば、ヒータ層15とアルミニウム層13とが熱により軟化しにくい絶縁性のPET層14を挟んで配置されるので、ヒータ層15とアルミニウム層13とが接触するのが有効に抑制される。その結果、ヒータ層15とアルミニウム層13とが短絡してしまうのを抑制することができる。また、PET層14の厚みを5μm以上50μm以下にすることによって、PET層14の厚みが50μmを超える場合と異なり、外装体1の厚みが大きくなるのを抑制することができるとともに、PET層14の厚みが5μmよりも小さい場合と異なり、ピンホール等の欠陥が生じ易くなるのを抑制することができる。これにより、外装体1の厚みが大きくなるのを抑制して電池100の小型化を図りながら、適切な厚みのPET層14により、確実に、ヒータ層15とアルミニウム層13とが短絡するのを抑制することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層15と金属層としてのアルミニウム層13とが別個に設けられた上記第1実施形態とは異なり、発熱体層としてのヒータ層215を金属層としても用いる構成の電池200について説明する。
【0038】
本発明の第2実施形態による電池200は、図8〜図10に示すように、リチウムイオン電池であり、ラミネートフィルムからなる外装体201と、電池200の長手方向(Y方向)の両端部付近からそれぞれ外側に露出する正極端子2および負極端子3とを備えている。また、外装体201の内部には、上記第1実施形態と同様に、発電要素4(図2および図3参照)と、図示しない電解液とが収納されている。なお、外装体201は、本発明の「電池用外装体」の一例である。
【0039】
外装体201は、ラミネートフィルムの内側表面の端部と外側表面の端部とが互いに対向した状態で重ねられて溶着されることにより筒状に形成されている。また、外装体201は、電池200の長手方向(Y方向)の両端部において、内側表面同士が対向した状態で溶着されることにより形成された溶着部201aを有している。電池200の両端部の溶着部201aは、それぞれ、正極端子2および負極端子3を挟み込んだ状態で溶着されている。また、外装体201は、図10に示すように、発電要素4が配置される内側から外側方向に向かって、PE溶着層11、PET層214、ヒータ層215およびPE溶着層16がこの順に積層されたラミネート構造を有している。
【0040】
PET層214は、耐熱性を有する絶縁性のポリエチレンテレフタレートからなり、PE溶着層11の融点(約130℃)よりも高い約260℃の融点を有している。また、PET層214は、約0.2W/(m・K)以上約0.5W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、PET層214は、約5μm以上約50μm以下の厚みを有している。
【0041】
ヒータ層215は、SUS304などからなるステンレス鋼箔(SUS箔)により構成され、ラミネートフィルムからなる外装体201の内部に積層されて設けられている。また、ヒータ層215は、外側表面がPE溶着層16に接触し、内側表面がPET層214に接触するように構成されている。また、図9に示すように、第2実施形態のヒータ層215は、図2に示した帯状で折り返す構造の第1実施形態のヒータ層15とは異なり、外装体201全域にわたって隙間なく発電要素4の外周側の全面を覆うように設けられている。また、ヒータ層215は、外装体201の内部に収納された発電要素4の起電力により発熱され、発電要素4を加熱するように構成されている。また、ステンレス鋼箔からなるヒータ層215は、Cu箔からなるヒータに比べて電気抵抗が高いので、流れる電流が少ない。このため、消費電力を少なくすることが可能である。具体的には、ヒータ層215の電気抵抗率(Ω・m)をヒータ層215の厚み(m)で除した値が0.01Ω以上0.5Ω以下になるように構成されている。この場合、ヒータ層215の電気抵抗率が15×10−8Ω・m以上150×10−8Ω・m以下で、かつ、ヒータ層215の厚みが1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、加工性の点からは、ヒータ層215として、電気抵抗率が71×10−8Ω・mのSUS304箔を用いて、その厚みを2μm以上10μm以下にすることがより好ましい。
【0042】
また、第2実施形態では、ステンレス鋼箔からなるヒータ層215は、外装体201全域にわたって隙間なく設けられているため、外装体201の内部および外部からのガスおよび液体を遮断する機能を有している。つまり、第2実施形態では、ヒータ層215が金属層を兼用しており、発熱体層と金属層とが同一層からなる。なお、ヒータ層215は、本発明の「発熱体層」および「金属層」の一例である。
【0043】
また、ヒータ層215は、図8および図9に示すように、外装体201の長手方向(Y方向)の両端部付近のそれぞれから外側に露出する接続部215aおよび215b(図9参照)を有している。接続部215aは、電池200の表面側において外装体1のPE溶着層16の開口部16cにより露出されている。接続部215bは、図9に示すように、電池200の裏面側において外装体1のPE溶着層16の開口部16dにより露出されている。また、接続部215aは、スイッチ210を介して正極端子2に接続され、接続部215bは、直接的に負極端子3に接続されている。これにより、ヒータ層215は、スイッチ210が接続状態に切り替えられることによって発電要素4(図9参照)の起電力により発熱される。
【0044】
上記のように外装体201を構成することによって、外装体201全域に隙間なく設けられたステンレス鋼箔からなるヒータ層215による熱が、ヒータ層215と外装体201の内側表面との間に配置されたPE溶着層11およびPET層214の樹脂層により拡散されて発電要素4に伝達される。すなわち、PE溶着層11およびPET層214の樹脂層は、ヒータ層215の熱を徐々に拡散しながら発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層217を構成している。また、第2実施形態では、PE溶着層11およびPET層214からなる熱拡散樹脂層217は、総厚みが約50μm以上約400μm以下であることが好ましい。なお、熱拡散樹脂層217は、本発明の「熱拡散層」の一例である。
【0045】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0046】
第2実施形態では、上記のように、発熱体層としてのヒータ層215を外装体201全域に隙間なく設けて金属層としても用いることによって、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる外装体201の層構成を簡素化することができるとともに、外装体201の厚みが大きくなるのを抑制して電池200の小型化を図ることができる。なお、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、発電要素4を加熱するヒータ層215が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体201を設けることによって、軽量化を図りながら、ヒータ層215により外装体201の内部に収納された発電要素4を効率よく加熱することができる。
【0047】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
たとえば、上記第1実施形態では、本発明の発熱体層の一例として、銅箔からなるヒータ層を示し、上記第2実施形態では、本発明の発熱体層の一例としてステンレス鋼箔からなるヒータ層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、アルミニウム箔からなる発熱体層など、銅箔やステンレス鋼箔以外の材料からなる発熱体層であってもよい。また、本発明の発熱体層は、金属箔からなるものに限らず、銀ペーストなどの導電性塗料からなる発熱体層であってもよい。この場合、印刷の一種であるスクリーン印刷あるいは定量吐出器を用いた回路形成方法によってラミネートフィルムからなる外装体の内部に銀ペーストなどの導電性塗料からなる発熱体層を積層するようにしてもよい。
【0050】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の溶着樹脂層の一例として、ポリエチレンからなるPE溶着層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポリエチレン以外のポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレン(PP))からなる溶着樹脂層であってもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態では、本発明の絶縁性耐熱層の一例として、ポリエチレンテレフタレートからなるPET層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁性で、かつ、溶着樹脂層に用いられるポリオレフィンよりも耐熱性が高い材料であれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外のポリエステル系樹脂や、ナイロン、セロハン、フッ素樹脂(PTFE、PFAなど)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリルエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾールなど、ポリエチレンテレフタレート以外の材料からなる絶縁性耐熱層であってもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態では、本発明の金属層の一例として、アルミニウム箔からなるアルミニウム層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、亜鉛や、金、銀、黄銅、スズ、青銅、鉄、銅、チタン、鉛、ニッケル、白金、マグネシウム、リン青銅、ステンレス鋼など、アルミニウム以外の材料からなる金属層であってもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態では、本発明の熱拡散層の一例として、PE溶着層11、PET層12およびPET層14からなる熱拡散樹脂層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図11に示すように、外装体301の金属層(アルミニウム層13)よりも内側にPE溶着層11(溶着樹脂層)のみが設けられた構成において、PE溶着層11およびPET層14からなる熱拡散層317であってもよい。また、発熱体層と外装体の内側表面との間に溶着樹脂層のみが設けられた構成において、溶着樹脂層1層からなる熱拡散層であってもよい。
【0054】
また、上記第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層215を金属層としても用いることにより、ヒータ層215とは別個の金属層を設けない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体層を金属層としても用いながら、さらに、アルミニウムなどからなる金属層を設ける構成であってもよい。これにより、発熱体層および金属層の両方により、ガスおよび液体をより確実に遮断することができる。この際、アルミニウムなどからなる金属層は、発熱体層よりも内側に配置することが好ましい。
【0055】
また、上記第1および第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層を、外装体の内部に収納された発電要素の起電力により発熱させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体層を、外部電力により発熱させる構成であってもよい。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の電池を、非水系電解質電池の一種であるリチウムイオン電池に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の電池を、たとえば、リチウムイオン電池以外の非水系電解質電池に適用してもよいし、ニッケル水素電池などの水系電解質電池に適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、201、301 外装体(電池用外装体)
4 発電要素
11、16 PE溶着層(溶着樹脂層)
13 アルミニウム層(金属層)
14 PET層(絶縁性耐熱層)
15 ヒータ層(発熱体層)
17 熱拡散樹脂層(熱拡散層)
100、200 電池
215 ヒータ層(発熱体層、金属層)
217 熱拡散樹脂層(熱拡散層)
317 熱拡散層
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池および電池用外装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体を備えた電池システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、二次電池と、二次電池の正極端子および負極端子に接続され、二次電池(発電要素)に近接または密接して配置されたヒータ(発熱体)とを備えた電池システムが開示されている。この電池システムでは、二次電池による電力によりヒータを発熱させて二次電池を加熱することによって、低温環境下でも二次電池の充電性能および出力性能が十分に発揮されるようにしている。なお、上記特許文献1には、ヒータ(発熱体)を二次電池(発電要素)に近接または密接して配置することが記載されているものの、ヒータの具体的な配置位置や取り付け構造については記載されていない。ここで、発熱体を電池(発電要素)に近接または密接して配置する場合、発熱体を電池の外装体の外側表面に接着層を介して貼り付ける構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/016497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成において、ヒータ(発熱体)を二次電池の外装体の外側表面に接着層を介して貼り付けることによってヒータを二次電池(発電要素)に近接または密接して配置した構成では、接着層の劣化や外装体の変形に起因してヒータが外装体の外側表面から剥がれてしまう場合がある。この場合には、ヒータ(発熱体)により二次電池(発電要素)を効率よく加熱することができないという問題点がある。
【0006】
また、低温環境下における電池の使用としては、寒冷地での使用のほか、人工衛星や飛行機等に搭載されて低温環境に晒される場合が考えられる。そして、人工衛星や飛行機等の移動体に搭載される場合には、発熱体により発電要素を加熱することに加えて、電池の軽量化も望まれる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、軽量化を図りながら、発電要素を効率よく加熱することが可能な電池および電池用外装体を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この発明の第1の局面による電池は、発電要素と、発電要素を収納するとともに、発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体とを備えている。
【0009】
この発明の第1の局面による電池では、上記のように、発電要素を加熱する発熱体層が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体を設けることによって、外装体として金属ケースを用いる場合に比べて軽量化を図ることができるとともに、発熱体層がラミネートフィルムからなる外装体の内部に積層されて設けられているので、発熱体層が外装体から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、発熱体層により外装体の内部に収納された発電要素を効率よく加熱することができる。また、発熱体層をラミネートフィルムからなる外装体の内部に積層することによって、発熱体を外装体の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様に発熱体層を形成(積層)することができるので、発熱体層を容易に設けることができる。
【0010】
上記第1の局面による電池において、好ましくは、外装体は、内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を含み、発熱体層は、外側表面の溶着樹脂層と金属層との間に設けられている。このように構成すれば、発熱体層が金属層よりも外側に設けられるので、発熱体層に電力を供給するための配線を容易に形成することができる。また、外装体の内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を設けることによって、内側表面の一部と外側表面の一部とを対向させた状態で溶着することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、外装体は、発熱体層と外装体の内側表面との間に設けられ、発熱体層による熱を拡散して発電要素に伝達する熱拡散層を含み、熱拡散層は、50μm以上400μm以下の厚みを有する。なお、本発明の熱拡散層は、単一の層から構成されるものに限らず、同一または異なる材質の複数の層から構成されるものも含む広い概念である。このように構成すれば、熱拡散層により熱を拡散して発電要素全体に分散させることができるので、発電要素全体を均一に加熱することができる。
【0012】
上記発熱体層が外側表面の溶着樹脂層と金属層との間に設けられている構成において、好ましくは、発熱体層と金属層との間には、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性耐熱層が設けられている。このように構成すれば、発熱体層と金属層とが熱により軟化しにくい絶縁性耐熱層を挟んで配置されるので、発熱体層と金属層とが接触するのが有効に抑制される。その結果、発熱体層と金属層とが短絡してしまうのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面による電池において、好ましくは、発熱体層と金属層とは同一の層からなる。このように構成すれば、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる外装体の層構成を簡素化することができるとともに、外装体の厚みが大きくなるのを抑制して電池の小型化を図ることができる。
【0014】
この発明の第2の局面による電池用外装体は、発電要素を収納するとともに、発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる。
【0015】
この発明の第2の局面による電池用外装体では、上記のように、発電要素を加熱する発熱体層が内部に積層されたラミネートフィルムにより形成することによって、金属ケースの電池用外装体に比べて軽量化を図ることができるとともに、発熱体層が内部に積層されて設けられているので、発熱体層が電池用外装体から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、発熱体層により内部に収納された発電要素を効率よく加熱することができる。また、発熱体層をラミネートフィルムからなる電池用外装体の内部に積層することによって、発熱体を電池用外装体の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様に発熱体層を形成(積層)することができるので、発熱体層を容易に設けることができる。
【0016】
上記第2の局面による電池用外装体において、好ましくは、発熱体層と金属層とは同一の層からなる。このように構成すれば、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる電池用外装体の層構成を簡素化することができるとともに、電池用外装体の厚みが大きくなるのを抑制して電池の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による電池の全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による電池の表側を示した平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による電池の裏側を示した平面図である。
【図4】図2および図3の400−400線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による電池の外装体の層構造を示した断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による電池の外装体の熱拡散状態を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態による電池のヒータ回路を示した回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態による電池の全体構成を示した斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態による電池の平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による電池の外装体の層構造を示した断面図である。
【図11】本発明の第1実施形態による電池の変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態による電池100の構成について説明する。
【0020】
本発明の第1実施形態による電池100は、図1〜図4に示すように、リチウムイオン電池であり、ラミネートフィルムからなる外装体1と、電池100の長手方向(Y方向)の両端部からそれぞれ外側に突出する正極端子2および負極端子3とを備えている。また、外装体1の内部には、図2〜図4に示すように、発電要素4と、図示しない電解液とが収納されている。なお、外装体1は、本発明の「電池用外装体」の一例である。
【0021】
外装体1は、ラミネートフィルムの内側表面の端部と外側表面の端部とが互いに対向した状態で重ねられて溶着されることにより筒状に形成されている。また、外装体1は、図1〜図3に示すように、電池100の長手方向(Y方向)の両端部において、内側表面同士が対向した状態で溶着されることにより形成された溶着部1aを有している。電池100の両端部の溶着部1aは、それぞれ、正極端子2および負極端子3を挟み込んだ状態で溶着されている。また、外装体1は、図5に示すように、発電要素4が配置される内側から外側方向に向かって、PE溶着層11、PET層12、アルミニウム層13、PET層14、ヒータ層15およびPE溶着層16がこの順に積層されたラミネート構造を有している。また、金属からなる層(アルミニウム層13およびヒータ層15)と樹脂層(PET層12、PET層14およびPE溶着層16)との間には、これらを互いに接合する接着層(接着剤、接着フィルムなど)が設けられている。
【0022】
PE溶着層11および16は、ポリエチレンからなり、約130℃の融点を有している。また、PE溶着層11および16は、約0.25W/(m・K)以上約0.34W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれに設けられたPE溶着層11および16は、約50μm以上約200μm以下の厚みを有している。なお、PE溶着層11および16は、本発明の「溶着樹脂層」の一例である。
【0023】
PET層12および14は、耐熱性を有する絶縁性のポリエチレンテレフタレートからなり、PE溶着層11の融点(約130℃)よりも高い約260℃の融点を有している。また、PET層12および14は、約0.2W/(m・K)以上約0.5W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、PET層12および14は、約5μm以上約50μm以下の厚みを有している。なお、PET層14は、本発明の「絶縁性耐熱層」の一例である。
【0024】
アルミニウム層13は、約4μm以上約100μm以下の厚みを有するアルミニウム箔からなり、ラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられている。また、アルミニウム層13は、外装体1の内部および外部からのガスおよび液体を遮断する機能を有している。なお、アルミニウム層13は、本発明の「金属層」の一例である。
【0025】
ヒータ層15は、銅箔からなり、ラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられている。なお、ヒータ層15は、本発明の「発熱体層」の一例である。また、ヒータ層15は、外装体1の外側表面のPE溶着層16とアルミニウム層13との間に配置されている。また、ヒータ層15は、図2および図3に示すように、Y方向(外装体1の長手方向)に延びる帯状に形成されており、複数の位置で折り返しながら電池100の表側から裏側にわたって略全体に設けられている。また、ヒータ層15は、外装体1の内部に収納された発電要素4の起電力により発熱され、発電要素4を加熱するように構成されている。
【0026】
また、ヒータ層15は、電池100の容量(Ah)とヒータ出力(W)との比が約1W/Ah以上約20W/Ah以下となる出力容量を有している。ヒータ層15の出力値としては、1W以上1000W以下が好ましい。また、銅箔からなるヒータ層15は、1×10−8Ω・m以上3×10−8Ω・m以下の電気抵抗率(比抵抗)を有している。また、ヒータ層15は、図2および図3に示すように、電池100の表側および裏側のそれぞれにおいて、内部に収納された発電要素4の投影面積の20%以上の範囲で発電要素4に重なるように配置されている。これにより、ヒータ層15により発電要素4を効果的に加熱することが可能である。また、ヒータ層15は、平面的に見て、実質的に発電要素4の投影領域内に配置されている。これにより、ヒータ層15によって発電要素4が配置されていない外装体1の溶着部1a近傍の部分が加熱されるのを防止することができるので、加熱に起因して外装体1が損傷を受けるのを防止することができる。なお、帯状のヒータ層15は、1mm以上20mm以下の幅を有することが好ましいとともに、5μm以上500μmの厚みを有することが好ましい。
【0027】
また、ヒータ層15は、図1〜図3に示すように、両端部に設けられた接続部15aおよび15bがそれぞれ電池100の表側および裏側において外側に露出している。具体的には、外装体1の外側表面のPE溶着層16の接続部15aおよび15bに対応する部分には、それぞれ、接続部15aおよび15bを外側に露出させる開口部16aおよび16bが形成されている。ヒータ層15は、接続部15aおよび15bを介して後述のヒータ回路5(図7参照)に接続されるように構成されている。
【0028】
上記のように外装体1を構成することによって、ヒータ層15による熱が、図6に示すように、ヒータ層15と外装体1の内側表面との間に配置されたPE溶着層11、PET層12およびPET層14の樹脂層により拡散されて発電要素4に伝達される。すなわち、アルミニウム層13に比べて熱伝導率が小さい、PE溶着層11、PET層12およびPET層14の樹脂層は、ヒータ層15の熱を徐々に拡散しながら発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層17を構成している。ヒータ層15の熱は、PET層14により徐々に拡散されながら外装体1の内側に向かって伝達され、樹脂層よりも熱伝導率の大きいアルミニウム層13によりさらに広範囲に拡散される。そして、アルミニウム層13により拡散された熱は、PET層12およびPE溶着層11により徐々に拡散されながら外装体1の内側に向かって伝達され、十分に拡散された状態で外装体1の内部に収納された発電要素4に伝達される。また、第1実施形態では、PE溶着層11、PET層12およびPET層14からなる熱拡散樹脂層17は、総厚みが約50μm以上約400μm以下であることが好ましい。なお、熱拡散樹脂層17は、本発明の「熱拡散層」の一例である。
【0029】
金属からなる層(アルミニウム層13およびヒータ層15)と樹脂層(PET層12、PET層14およびPE溶着層16)との間に設ける接着層(接着剤、接着フィルムなど)としては、エチレン−メタクリル酸共重合を用いることが好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合の他、アクリル系、エポキシ系、ゴム(シリコーン系、EPDM)などからなる接着層であってもよい。
【0030】
次に、図7を参照して、ヒータ層15を電池100に接続するヒータ回路5について説明する。
【0031】
ヒータ層15は、ヒータ回路5により電池100に接続されており、電池100の電圧が所定電圧以上の場合に、バイパス電路51を介して電流が流れることによりオン状態(発熱状態)になるように構成されている。具体的には、バイパス電路51には、バイパス電路51の開閉を行うためのトランジスタからなるスイッチ手段52が設けられている。スイッチ手段52は、バイポーラトランジスタからなり、電池100の電圧が所定電圧以上の場合にバイパス電路51を閉状態(接続された状態)にし、電池100の電圧が所定電圧よりも小さい場合にバイパス電路51を開状態(切断された状態)にするように構成されている。また、スイッチ手段52は、スイッチ駆動回路53により駆動されるように構成されている。スイッチ駆動回路53は、ヒータ層15に対してスイッチ手段52とは反対側に位置する接続点51aと、スイッチ手段52に対して接続点51aとは反対側に位置する接続点51bとを繋ぐ駆動用主電路531を備えている。また、スイッチ駆動回路53は、駆動用主電路531の途中に位置する接続点531aから分岐する分岐電路532と、基準電圧を供給する電圧供給源533と、分岐電路532および電圧供給源533に接続される比較器534とをさらに備えている。駆動用主電路531の接続点51aと接続点531aとの間には第1抵抗器535が設けられている。また、駆動用主電路531の接続点531aと接続点51bとの間には第2抵抗器536が設けられている。また、比較器534は、分岐電路532の電圧と電圧供給源533の基準電圧とを比較して、分岐電路532の電圧が基準電圧以上の場合に、スイッチ手段52をバイパス電路51が閉じる(接続される)ようにオン状態に駆動し、分岐電路532の電圧が基準電圧よりも小さい場合に、スイッチ手段52をバイパス電路51が開く(切断される)ようにオフ状態に駆動するように構成されている。なお、スイッチ手段52は、バイポーラトランジスタに限らず、FET(Field Effect Transistor)やメカニカルリレー等であってもよい。
【0032】
正極端子2および負極端子3は、それぞれ、アルミニウムおよび銅からなり、外装体1の長手方向(Y方向)の両端部の溶着部1aを介して外側に突出するように設けられている。発電要素4は、図示しない正極活物質が塗布された金属箔(Al)からなる正極と、負極活物質が塗布された金属箔(Cu)からなる負極と、正極および負極の間に配置されたセパレータとが互いに重ね合わされた状態で巻回されることによって形成されている。
【0033】
第1実施形態では、上記のように、発電要素4を加熱するヒータ層15が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体1を設けることによって、外装体1として金属ケースを用いる場合に比べて軽量化を図ることができるとともに、ヒータ層15がラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層されて設けられているので、ヒータ層15が外装体1から外れてしまうのを抑制することができる。これにより、軽量化を図りながら、ヒータ層15により外装体1の内部に収納された発電要素4を効率よく加熱することができる。また、ヒータ層15をラミネートフィルムからなる外装体1の内部に積層することによって、発熱体を外装体1の外側表面に取り付ける場合とは異なり、ラミネートフィルムの製造工程で他の層と同様にヒータ層15を形成(積層)することができるので、ヒータ層15を容易に設けることができる。
【0034】
また、第1実施形態では、上記のように、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれにPE溶着層11および16を設けるとともに、ヒータ層15を、外側表面のPE溶着層16とアルミニウム層13との間に設ける。このように構成すれば、ヒータ層15がアルミニウム層13よりも外側に設けられるので、ヒータ層15に電力を供給するための配線を容易に形成することができる。また、外装体1の内側表面および外側表面のそれぞれにPE溶着層11および16を設けることによって、内側表面の端部と外側表面の端部とを対向させた状態で溶着することができる。
【0035】
また、第1実施形態では、上記のように、外装体1のヒータ層15と外装体1の内側表面との間に、ヒータ層15による熱を拡散して発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層17を設ける。このように構成すれば、熱拡散樹脂層17により熱を拡散して発電要素4全体に分散させることができるので、発電要素4全体を均一に加熱することができる。また、熱拡散樹脂層17を、50μm以上400μm以下の厚みにする場合には、熱拡散樹脂層17の厚みを50μm未満にした場合とは異なり、熱拡散樹脂層17により熱を効果的に拡散させてより広範囲に分散させることができるとともに、熱拡散樹脂層17の厚みを400μmよりも大きくした場合とは異なり、ヒータ層15から発電要素4までの距離が大きくなり過ぎるのを抑制して発電要素4に熱を効果的に伝達することができる。この結果、発電要素4全体を均一に、かつ、効果的に加熱することができる。
【0036】
また、第1実施形態では、上記のように、ヒータ層15とアルミニウム層13との間に、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性のPET層14を設ける。このように構成すれば、ヒータ層15とアルミニウム層13とが熱により軟化しにくい絶縁性のPET層14を挟んで配置されるので、ヒータ層15とアルミニウム層13とが接触するのが有効に抑制される。その結果、ヒータ層15とアルミニウム層13とが短絡してしまうのを抑制することができる。また、PET層14の厚みを5μm以上50μm以下にすることによって、PET層14の厚みが50μmを超える場合と異なり、外装体1の厚みが大きくなるのを抑制することができるとともに、PET層14の厚みが5μmよりも小さい場合と異なり、ピンホール等の欠陥が生じ易くなるのを抑制することができる。これにより、外装体1の厚みが大きくなるのを抑制して電池100の小型化を図りながら、適切な厚みのPET層14により、確実に、ヒータ層15とアルミニウム層13とが短絡するのを抑制することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層15と金属層としてのアルミニウム層13とが別個に設けられた上記第1実施形態とは異なり、発熱体層としてのヒータ層215を金属層としても用いる構成の電池200について説明する。
【0038】
本発明の第2実施形態による電池200は、図8〜図10に示すように、リチウムイオン電池であり、ラミネートフィルムからなる外装体201と、電池200の長手方向(Y方向)の両端部付近からそれぞれ外側に露出する正極端子2および負極端子3とを備えている。また、外装体201の内部には、上記第1実施形態と同様に、発電要素4(図2および図3参照)と、図示しない電解液とが収納されている。なお、外装体201は、本発明の「電池用外装体」の一例である。
【0039】
外装体201は、ラミネートフィルムの内側表面の端部と外側表面の端部とが互いに対向した状態で重ねられて溶着されることにより筒状に形成されている。また、外装体201は、電池200の長手方向(Y方向)の両端部において、内側表面同士が対向した状態で溶着されることにより形成された溶着部201aを有している。電池200の両端部の溶着部201aは、それぞれ、正極端子2および負極端子3を挟み込んだ状態で溶着されている。また、外装体201は、図10に示すように、発電要素4が配置される内側から外側方向に向かって、PE溶着層11、PET層214、ヒータ層215およびPE溶着層16がこの順に積層されたラミネート構造を有している。
【0040】
PET層214は、耐熱性を有する絶縁性のポリエチレンテレフタレートからなり、PE溶着層11の融点(約130℃)よりも高い約260℃の融点を有している。また、PET層214は、約0.2W/(m・K)以上約0.5W/(m・K)以下の熱伝導率を有している。また、PET層214は、約5μm以上約50μm以下の厚みを有している。
【0041】
ヒータ層215は、SUS304などからなるステンレス鋼箔(SUS箔)により構成され、ラミネートフィルムからなる外装体201の内部に積層されて設けられている。また、ヒータ層215は、外側表面がPE溶着層16に接触し、内側表面がPET層214に接触するように構成されている。また、図9に示すように、第2実施形態のヒータ層215は、図2に示した帯状で折り返す構造の第1実施形態のヒータ層15とは異なり、外装体201全域にわたって隙間なく発電要素4の外周側の全面を覆うように設けられている。また、ヒータ層215は、外装体201の内部に収納された発電要素4の起電力により発熱され、発電要素4を加熱するように構成されている。また、ステンレス鋼箔からなるヒータ層215は、Cu箔からなるヒータに比べて電気抵抗が高いので、流れる電流が少ない。このため、消費電力を少なくすることが可能である。具体的には、ヒータ層215の電気抵抗率(Ω・m)をヒータ層215の厚み(m)で除した値が0.01Ω以上0.5Ω以下になるように構成されている。この場合、ヒータ層215の電気抵抗率が15×10−8Ω・m以上150×10−8Ω・m以下で、かつ、ヒータ層215の厚みが1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、加工性の点からは、ヒータ層215として、電気抵抗率が71×10−8Ω・mのSUS304箔を用いて、その厚みを2μm以上10μm以下にすることがより好ましい。
【0042】
また、第2実施形態では、ステンレス鋼箔からなるヒータ層215は、外装体201全域にわたって隙間なく設けられているため、外装体201の内部および外部からのガスおよび液体を遮断する機能を有している。つまり、第2実施形態では、ヒータ層215が金属層を兼用しており、発熱体層と金属層とが同一層からなる。なお、ヒータ層215は、本発明の「発熱体層」および「金属層」の一例である。
【0043】
また、ヒータ層215は、図8および図9に示すように、外装体201の長手方向(Y方向)の両端部付近のそれぞれから外側に露出する接続部215aおよび215b(図9参照)を有している。接続部215aは、電池200の表面側において外装体1のPE溶着層16の開口部16cにより露出されている。接続部215bは、図9に示すように、電池200の裏面側において外装体1のPE溶着層16の開口部16dにより露出されている。また、接続部215aは、スイッチ210を介して正極端子2に接続され、接続部215bは、直接的に負極端子3に接続されている。これにより、ヒータ層215は、スイッチ210が接続状態に切り替えられることによって発電要素4(図9参照)の起電力により発熱される。
【0044】
上記のように外装体201を構成することによって、外装体201全域に隙間なく設けられたステンレス鋼箔からなるヒータ層215による熱が、ヒータ層215と外装体201の内側表面との間に配置されたPE溶着層11およびPET層214の樹脂層により拡散されて発電要素4に伝達される。すなわち、PE溶着層11およびPET層214の樹脂層は、ヒータ層215の熱を徐々に拡散しながら発電要素4に伝達する熱拡散樹脂層217を構成している。また、第2実施形態では、PE溶着層11およびPET層214からなる熱拡散樹脂層217は、総厚みが約50μm以上約400μm以下であることが好ましい。なお、熱拡散樹脂層217は、本発明の「熱拡散層」の一例である。
【0045】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0046】
第2実施形態では、上記のように、発熱体層としてのヒータ層215を外装体201全域に隙間なく設けて金属層としても用いることによって、発熱体層と金属層とを互いに別個に設ける場合に比べてラミネートフィルムからなる外装体201の層構成を簡素化することができるとともに、外装体201の厚みが大きくなるのを抑制して電池200の小型化を図ることができる。なお、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、発電要素4を加熱するヒータ層215が内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体201を設けることによって、軽量化を図りながら、ヒータ層215により外装体201の内部に収納された発電要素4を効率よく加熱することができる。
【0047】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
たとえば、上記第1実施形態では、本発明の発熱体層の一例として、銅箔からなるヒータ層を示し、上記第2実施形態では、本発明の発熱体層の一例としてステンレス鋼箔からなるヒータ層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、アルミニウム箔からなる発熱体層など、銅箔やステンレス鋼箔以外の材料からなる発熱体層であってもよい。また、本発明の発熱体層は、金属箔からなるものに限らず、銀ペーストなどの導電性塗料からなる発熱体層であってもよい。この場合、印刷の一種であるスクリーン印刷あるいは定量吐出器を用いた回路形成方法によってラミネートフィルムからなる外装体の内部に銀ペーストなどの導電性塗料からなる発熱体層を積層するようにしてもよい。
【0050】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の溶着樹脂層の一例として、ポリエチレンからなるPE溶着層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ポリエチレン以外のポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレン(PP))からなる溶着樹脂層であってもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態では、本発明の絶縁性耐熱層の一例として、ポリエチレンテレフタレートからなるPET層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁性で、かつ、溶着樹脂層に用いられるポリオレフィンよりも耐熱性が高い材料であれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外のポリエステル系樹脂や、ナイロン、セロハン、フッ素樹脂(PTFE、PFAなど)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリルエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾールなど、ポリエチレンテレフタレート以外の材料からなる絶縁性耐熱層であってもよい。
【0052】
また、上記第1実施形態では、本発明の金属層の一例として、アルミニウム箔からなるアルミニウム層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、亜鉛や、金、銀、黄銅、スズ、青銅、鉄、銅、チタン、鉛、ニッケル、白金、マグネシウム、リン青銅、ステンレス鋼など、アルミニウム以外の材料からなる金属層であってもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態では、本発明の熱拡散層の一例として、PE溶着層11、PET層12およびPET層14からなる熱拡散樹脂層を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図11に示すように、外装体301の金属層(アルミニウム層13)よりも内側にPE溶着層11(溶着樹脂層)のみが設けられた構成において、PE溶着層11およびPET層14からなる熱拡散層317であってもよい。また、発熱体層と外装体の内側表面との間に溶着樹脂層のみが設けられた構成において、溶着樹脂層1層からなる熱拡散層であってもよい。
【0054】
また、上記第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層215を金属層としても用いることにより、ヒータ層215とは別個の金属層を設けない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体層を金属層としても用いながら、さらに、アルミニウムなどからなる金属層を設ける構成であってもよい。これにより、発熱体層および金属層の両方により、ガスおよび液体をより確実に遮断することができる。この際、アルミニウムなどからなる金属層は、発熱体層よりも内側に配置することが好ましい。
【0055】
また、上記第1および第2実施形態では、発熱体層としてのヒータ層を、外装体の内部に収納された発電要素の起電力により発熱させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体層を、外部電力により発熱させる構成であってもよい。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の電池を、非水系電解質電池の一種であるリチウムイオン電池に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の電池を、たとえば、リチウムイオン電池以外の非水系電解質電池に適用してもよいし、ニッケル水素電池などの水系電解質電池に適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、201、301 外装体(電池用外装体)
4 発電要素
11、16 PE溶着層(溶着樹脂層)
13 アルミニウム層(金属層)
14 PET層(絶縁性耐熱層)
15 ヒータ層(発熱体層)
17 熱拡散樹脂層(熱拡散層)
100、200 電池
215 ヒータ層(発熱体層、金属層)
217 熱拡散樹脂層(熱拡散層)
317 熱拡散層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、
前記発電要素を収納するとともに、前記発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体とを備える、電池。
【請求項2】
前記外装体は、内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を含み、
前記発熱体層は、前記外側表面の溶着樹脂層と前記金属層との間に設けられている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記外装体は、前記発熱体層と前記外装体の内側表面との間に設けられ、前記発熱体層による熱を拡散して前記発電要素に伝達する熱拡散層を含み、
前記熱拡散層は、50μm以上400μm以下の厚みを有する、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記発熱体層と前記金属層との間には、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性耐熱層が設けられている、請求項2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記発熱体層と前記金属層とは同一の層からなる、請求項1または3に記載の電池。
【請求項6】
発電要素を収納するとともに、前記発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる、電池用外装体。
【請求項7】
前記発熱体層と前記金属層とは同一の層からなる、請求項6に記載の電池。
【請求項1】
発電要素と、
前記発電要素を収納するとともに、前記発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる外装体とを備える、電池。
【請求項2】
前記外装体は、内側表面および外側表面のそれぞれに溶着樹脂層を含み、
前記発熱体層は、前記外側表面の溶着樹脂層と前記金属層との間に設けられている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記外装体は、前記発熱体層と前記外装体の内側表面との間に設けられ、前記発熱体層による熱を拡散して前記発電要素に伝達する熱拡散層を含み、
前記熱拡散層は、50μm以上400μm以下の厚みを有する、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記発熱体層と前記金属層との間には、5μm以上50μm以下の厚みを有する絶縁性耐熱層が設けられている、請求項2または3に記載の電池。
【請求項5】
前記発熱体層と前記金属層とは同一の層からなる、請求項1または3に記載の電池。
【請求項6】
発電要素を収納するとともに、前記発電要素を加熱する発熱体層と、金属層とが内部に積層されたラミネートフィルムからなる、電池用外装体。
【請求項7】
前記発熱体層と前記金属層とは同一の層からなる、請求項6に記載の電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−25871(P2013−25871A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156292(P2011−156292)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
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