説明

電池の溶融塩型電解質のイオン伝導性を高めるための添加剤

リチウムイオン電池は、負極と、正極と、溶融塩、リチウム塩、及び電解質添加剤を含む電解質とを備える。電解質添加剤は電解質のリチウムイオン伝導性を高めるように選ばれる。電解質添加剤は有機炭酸塩等の有機添加剤とすることができる。他の例で、電解質添加剤は、カリウム、ナトリウム、及び/またはセシウムイオン等のリチウム以外のアルカリ金属カチオン源を提供する。リチウム以外のイオン種を使用する電池についても同様なアプローチができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池、特に融解塩電解質を有する充電式電池に関する。
【背景技術】
【0002】
融解塩電解質は融点が高く、蒸気圧が低いため、従来の有機電解質と比較して高温における高い安全性及び性能を有する。融解塩電解質は、電解質を用いた装置の動作温度で少なくとも部分的に溶融した(あるいは液状の)1種またはそれ以上の塩を備える電解質である。融解塩電解質は水溶媒を必要としないため、溶融した非水電解質として説明することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、室温以下では、リチウムイオン(Li)の伝導性は、通常、有機電解質よりも低い。粘性は電解質のイオン伝導性に大きく影響し、それは電池性能の主要パラメータの1つである。このため、融解塩電解質電池の高い安全性を有し、従来の融解塩電解質と比較して高いリチウムイオン伝導性を有するリチウムイオン電池が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件出願は、2004年5月17日付けの米国仮特許出願シリアルNo.60/571,778の優先権を主張し、言及することによってその全内容を本書に取り込む。
【0005】
電池は、負極と、正極と、溶融塩、カチオン源及び電解質添加剤を含む電解質とを備える。電解質添加剤は電解質のカチオン伝導性を高めるよう選択された1種またはそれ以上の有機化合物とすることができる。
【0006】
カチオンは溶融塩リチウムイオン電池に対応するリチウムイオン等のアルカリ金属イオンとすることができる。一例としての電解質添加剤は、例えばアルキルカーボネートまたはジアルキルカーボネートのような有機炭酸塩や有機リン酸塩等の有機化合物を含む。添加剤は非プロトン性極性化合物等の非プロトン性有機化合物でもよい。添加剤はN、O及び/またはS含有複素環等の複素環を有する化合物を含んでもよい。
【0007】
改良したリチウムイオン電池は、負極と、正極と、溶融塩、リチウム塩、及び電解質のリチウムイオン伝導性を高めるよう選択された電解質添加剤を含有した電解質とを含む。電解質添加剤は有機添加剤でもよい。他の例として、電解質添加剤はカリウム、ナトリウム及び/またはセシウムイオン等のリチウム以外のアルカリ金属カチオン源を提供する。これらの非リチウムカチオンは有機添加剤に加えて、あるいは別個に電解質のリチウムイオン伝導性を高める。従って、電解質添加剤はカリウム、ナトリウムあるいはセシウムの塩とすることができる。
【0008】
有機添加剤は、炭酸塩、リン酸塩、エポキシド、エーテル、酢酸塩、ギ酸塩、ジオキソラン、エステル、アルコール、アミン、ハロゲン化アルキル、アルカン、アルケン、ニトリル、イミン、ニトロ化合物、アルデヒド、ケトン、及び芳香族化合物からなる群から選択することができる。
【0009】
本発明の例では、電解質添加剤は、溶融塩に対するモルパーセントが通常の電池動作条件下での電解質の燃焼性については不十分だが、その他の点では電解質のイオン伝導性をかなり高めるのに十分に高い有機炭酸塩からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
有機添加剤は溶融塩電解質の粘性を変え、イオン伝導性を高めるように溶融塩電解質に加えることができる。従って、有機添加剤は溶融塩型リチウムイオン電池の性能を高めることができる。有機添加剤は、特に室温以下において溶融塩電解質の粘性及びLi伝導性を非常に高めることができる。有機添加剤は単一の有機化合物を含んでいてもよいし、あるいは2つ以上の有機化合物の混合物を含んでいてもよい。有機添加剤は、アルキルカーボネート、エポキシド、エーテル、アルコール、アミン、ハロゲン化アルキル、アルカン、アルケン、ニトリル、イミンあるいはニトロ化合物等の1種以上の化合物を含んでいてもよい。有機化合物の他の例としては、酢酸塩、エステル、アルデヒド、ケトン及び芳香族化合物を含むこともできる。
【0011】
リチウムイオン電池中の溶融塩電解質の粘性を低下させ、Li伝導性を高めることができる有機添加剤について説明する。溶融塩電解質の特性を向上させるために添加剤として使用することができる有機化合物の例は、有機炭酸塩と有機燐酸塩を含むものである。有機炭酸塩の例は、アルキルカーボネート(ジアルキルカーボネート等)、アルケニルカーボネート、環状及び非環状炭酸塩、フッ化有機炭酸塩(フルオロアルキルカーボネート等)、他のハロゲン化有機炭酸塩等を含む。例えば、有機添加剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジブチルカーボネート(DBC)、エチルカーボネート(EC)、メチルプロピルカーボネート(MPG)、エチルプロピルカーボネート(EPO)等の化合物を1種またはそれ以上を含んでいてもよい。アルキルカーボネートはフッ化アルキルカーボネート及び他のアルキルカーボネート誘導体も含む。
【0012】
有機リン酸塩は、一般式(RO)P(=O)(OR)(OR)(但し、R,R及びRは、水素、あるいはアルキル、芳香族または不飽和基等の有機置換基であり、R,R及びRは同じでも異なっていてもよい)を有する化合物を含む。例としては、リン酸アルキル、リン酸ジアルキル、及びTMP(リン酸トリメチル)のようなリン酸トリアルキルがある。
【0013】
従来の有機溶媒リチウムイオン電池に有機溶媒として使用されるもののような他の有機化合物も溶融塩電解質への添加剤として使用することができる。例として、非プロトン性極性化合物がある。
【0014】
有機添加剤は、エポキシド、エーテル、酢酸塩(酢酸アルキル等)、ギ酸塩(ギ酸アルキル等)、ジオキソラン(アルキルジオキソラン等)、ジエステル(オキサレート等)、アルコール、アミン、ハロゲン化アルキル、アルカン、アルケン、ニトリル、イミンあるいはニトロ化合物を含んでもよい。使用可能な有機添加剤の他の例は、酢酸塩、エステル、アルデヒド、チオフェン、ケトン及び芳香族化合物を含む。
【0015】
例えば、有機添加剤は、ジメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、スルホラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、プロピオン酸メチル、トリグライム、テトラグライム等の化合物を1種またはそれ以上を含んでいてもよい。
【0016】
リチウムイオン電池において、電解質は、LiPF,LiAsF,LiSbF,LiBF,LiClO,LiCFSO,Li(CFSON,Li(CFsSON,LiCSO,Li(CFSOC,LiBPh,LiBOB,Li(CFSO)(CFCO)Nの群から選ばれた1種またはそれ以上のリチウム塩等のリチウムイオン源を含んでいる。
【0017】
有機添加剤は、NaまたはK充電式電池のようなアルカリイオン電池における異なるアルカリイオン等、他のイオン種に基づくもののような他の電池技術に使用される溶融塩電解質の特性を向上させるためにも使用することができる。添加剤は溶融塩を含んだ媒体のイオン伝導性が重要な電池以外の用途に使用することもできる。
【0018】
例としてのリチウムイオン(Liイオン)電池は、リチウム合金酸化物カソード(LiCoOまたはLiNiO等)と、炭素系アノード(黒鉛等)と、溶融塩及び有機添加剤、さらにカチオン源を有する電解質とを備える。カチオン源は電解質に溶解したリチウム塩となる。有機添加剤はリチウム塩を溶解するために有機電解質リチウムイオン電池に使用されるような有機溶媒であってもよいが、この例では電解質は溶融塩を含む。ここで、アノード及びカソードは電池の負極及び正極をそれぞれ指す。黒鉛アノード等のアノードはリチウムイオンを蓄積し、それらは放電時に放出され、同時にリチウムイオンはカソードの電気活性物質に挿入される。溶融塩電解質に有機添加剤として使用されえる従来の有機電解質が、スマート(Smart)他のアメリカ特許 No.6,492,064に記載されている。
【0019】
本発明の例による電池は溶融塩電解質を有する。ここで、溶融塩電解質という用語は、例えば電解質の30パーセントを超える電解質の重要な構成要素として1種またはそれ以上の溶融塩を含む電解質を表わすために使用される。溶融塩電解質は、電池の動作温度で少なくとも部分的に溶融した(さもなければ液状の)1種以上の塩を備える電解質である。融解塩電解質は水溶媒を必要としないことから溶融した非水電解質、あるいはイオン性液体と説明することもできる。
【0020】
リチウムイオン電池及び同様の充電式電池では、アノードという用語が慣例として負極に使用され、カソードが慣例として正極に使用される。これらの名称は放電サイクルの電池にのみ技術的に正しいが、これらの名称は文献において広く使用され、ここでも使用する。電池という用語はここでは、1またはそれ以上の電気化学的セルを含む装置を示すものとして使用される。
【0021】
発明の実施例で使用可能な溶融塩電解質は、ジャイフォード(Gifford)のアメリカ特許No.4,463,071、ママントフ(Mamantov)他のNo.5,552,241、カーリン(Carlin)他のNo.5,589,291、カジャ(Caja)他のNo.6,326,104、ミチョット(Michot)のNo.6,365,301、グイドッティ(Guidotti)のNo.6,544,691に記載されている。ヨーロッパ特許EP−0918364は、溶融塩電解質に添加剤として使用するのではなく、アルカリ金属電気化学的セルの従来の有機電解質用リン酸塩添加剤について記載しているが、開示されたリン酸塩添加剤は、本発明の例において有機添加剤として使用することができる。
【0022】
溶融塩の例は、芳香族カチオン(イミダゾリウム塩またはピリジニウム塩等)、脂肪族第四級アンモニウム塩またはスルホニウム塩を有するものを含む。発明の溶融塩電解質は、アンモニウム、ホスホニウム、オキソニウム、スルホニウム、アミジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム等のオニウム、及びPF、BF、GFSO、(CFSO、(FSO、(CSO、Cl、Br等のアニオンを含んでもよい。
【0023】
本発明の一例として使用される溶融塩電解質は、Y(−SORf)(−XRf)をも含んでもよい。但し、Yは、イミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ピリジニウム、(イソ)チアゾリルイオン、(イソ)オキサゾリウムイオンの中から選ばれたカチオンである。前記カチオンが―CHRfまたは―OCHRf(但し、RfはC1−10のポリフルオロアルキルである)の少なくとも1種の置換基を持ち、RfとRfとが独立してC1−10のパーフルオロフェニルか、合わせてC1−10のパーフルオロアルキレンを構成し、Xが−SO−または―CO―であれば、C1−10のアルキルまたはエーテル結合を有するC1−10のアルキルに置き換えてもよい。
溶融塩は、芳香族カチオンを有する塩(イミダゾリウム塩またはピリジニウム塩等)、脂肪族第四級アンモニウム塩及びスルホニウム塩を含む。
【0024】
溶融塩は芳香族カチオン(イミダゾリウム塩またはピリジニウム塩等)、脂肪族第四級アンモニウム塩またはスルホニウム塩を有する塩を含む。
【0025】
イミダゾリウム塩は、ジメチルイミダゾリウムイオン、エチルメチルイミダゾリウムイオン、プロピルメチルイミダゾリウムイオン、ブチルメチルイミダゾリウムイオン、ヘキシルメチルイミダゾリウムイオンあるいはオクチルメチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン、または1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンあるいはl−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオンを有する塩を含む。イミダゾリウム塩は、エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩(EMI−BF)、エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(EMI−TESI)、プロピルメチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(DEMI−TFSI)、及び1,2,4−トリエチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TEMI−TESI)を含む。
【0026】
ピリジニウム塩は、1−エチルピリジニウムイオン、1−ブチルピリジニウムイオンまたは1−ヘキシルピリジニウムイオン等のアルキルピリジニウムイオンを有する塩を含む。ピリジニウム塩は、1−エチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸塩及び1−エチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホニルイミドを含む。
【0027】
アンモニウム塩は、トリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TMPA−TFSI)、ジエチルメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、及び1−ブチル−1−メチルピロリジウムトリフルオロメタンスルホニルイミドを含む。スルホニウム塩は、トリエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(TES−TFSI)を含む。
【0028】
カチオンの移動を通じて作動する二次電池では、通常、電解質はカチオン源を含み、電池の種類によってカチオンを供給する。リチウムイオン電池の場合、カチオン源はリチウム塩となる。リチウムイオン電池の電解質中のリチウム塩は、LiPF,LiAsF,LiSbF,LiBF,LiClO,LiCFSO,Li(CFSON,Li(CSON,LiCSO,Li(CFSOC,LiBPh,LiBOB,及びLi(CFSO)(CFCO)Nを1種またはそれ以上含んでもよい。本発明の例は、他のアルカリ金属または他のカチオンに基づく電池のような、リチウム以外のイオンを使用する充電式電池を含むことができ、その場合には適切な塩が使用される。例えば、カリウムイオン電池の溶融塩はKPF等のカリウムイオンを供給する化合物を含んでもよい。
【0029】
上記の有機添加剤以外に、溶融塩電解質に基づくリチウムイオン電池のLi伝導性を高めるために、Na、K、Cs等のアルカリイオン源も添加剤として使用することができる。
【0030】
本発明の他の例では、特定のカチオンの搬送に基づく電池の特性は他のカチオン種を含むことによって高められる。リチウムイオン電池の場合、他のアルカリ金属イオン源を含むことができる。例えば、リチウムイオン電池の電解質は通常、リチウムイオン源としてリチウム塩を含み、リチウムイオンの伝導性を高める電解質添加剤はカリウム塩、ナトリウム塩及び/またはセシウム塩であってもよい。
【0031】
本発明による電池の電解質はさらに、被輸送カチオン以外に別のカチオン塩を含んでもよく、それは電解質のイオン伝導性を高めることができる。例えば、リチウムイオン電池の電解質は、NaPF,NaAsF,NaSbF,NaBF,NaClO,NaCFSO,Na(CFSON,Na(CSON,NaCSO,Na(CFSOC,NaBPh,NaBOB,Na(CFSO)(CFCO)N,及び/またはこれらの塩のカリウムまたはセシウム類似体。例えば、リチウムイオン電池の電解質の特性は、上記のもののようなナトリウム塩またはカリウム類似体(KPFまたは別のカリウム塩)等のリチウム以外のアルカリ金属イオン源を含むことにより向上することができる。
【0032】
有機添加剤は、従来の有機電解質において有機溶媒として使用できる物質でもよい。例えば、溶融塩電解質への有機添加剤は、アルキルカーボネート(ジアルキルカーボネートを含む)、アルケニルカーボネートや、その他の有機添加剤を含んでもよい。有機添加剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1、3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートの1種以上を含んでよい。
【0033】
本発明の例による改良された電解質は、リチウムイオン電池、他のアルカリ金属イオン電池、及び他の金属イオンまたは有機イオンの輸送を利用する電池を含む種々の電池技術に使用できる。
【0034】
例としての電池で、負極(アノード)は負極活物質及び伝導物質を含み、正極(カソード)は正極活物質及び伝導物質を含む。負極と正極の両方をコレクタ上に形成することができる。電極はさらにバインダを含んでもよい。
【0035】
カソード(正極)の電気活性物質はカチオン挿入及び放出を可能にする物質でよい。リチウムイオン電池の場合、カソードの電気活性物質はリチウム合金酸化物(リチウムと少なくとも1種の他の金属種の酸化物)等のリチウム複合酸化物とすることができる。リチウム複合酸化物の例としては、Li−Ni含有酸化物(LiNiO,Li(Ni,Co)O等)、Li−Mn含有酸化物(LiMnO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5、及び他のリチウムマンガンニッケル酸化物等)、及びLi−Co含有酸化物(LiCoO等)、他のリチウム遷移金属酸化物、リチウム合金リン酸塩(例えば、LiCOPO、及びLiCoPOFのようなフッ化リチウム合金リン酸塩)、及び他のリチウム合金カルコゲナイドを含み、金属は遷移金属とすることができる。リチウム複合酸化物は、リチウムと1種またはそれ以上の遷移金属の酸化物と、リチウムとCo,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La,Ceの中から選ばれた1種またはそれ以上の金属の酸化物とを含む。カソードの電気活性物質は、例えば平均径が1ミクロン未満のナノ粒子からなるナノ構造であってもよい。
【0036】
アノード(負極)は、アノードの電気活性物質と、(任意に)電子伝導物質と、バインダとを備えることができる。アノードはアノードコレクタと電気的に接続可能に形成することもできる。
【0037】
アノードの電気活性物質は、天然黒鉛、メゾカーボン微小ビーズ(MCMBs)、高次熱分解黒鉛(HOPG)、硬質炭素、または軟質炭素等のような黒鉛炭素及び/または無定形炭素等の炭素系でも、あるいはシリコン、錫、あるいは他の成分を備える物質でもよい。負極はLiTi12等のチタン酸リチウムとすることができる。
【0038】
本発明の例による充電式電池は、可逆的に蓄積し(例えば、挿入または差し込み)、放出することができるいかなるカチオンに基づくものをも含む。カチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等のアルカリ金属、カルシウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、アルミニウム、銀及び亜鉛等の他の金属、及び水素の陽イオンを含んでもよい。他の例で、カチオンは、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジンイウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、そのようなイオンのアルキルや他の誘導体等の誘導体でもよい。
【0039】
本発明の例による電池のアノードまたはカソードに使用可能な伝導物質は、黒鉛等の炭素含有物質でもよい。電子伝導性物質の他の例は、ポリアニリン等の伝導性高分子、炭素繊維、カーボンブラック(またはアセチレンブラック等の同様な物質、またはケッチェンブラック)、及びコバルト、銅、ニッケル、他の金属または金属化合物等の非電気活性金属を含む。電子伝導性物質は、粒子(この用語はグラニュール、フレーク、パウダー等を含む)、繊維、メッシュ、シートあるいは他の二次ないし三次元の構造とすることもできる。電子伝導性物質はさらに、SnO,Ti,In/SnO(ITO),Ta,WO,W1849,CrO,及びTi等の酸化物、式MC(MはWC、TiC及びTaC等の金属である)によって表わされる炭化物、式MCによって表わされる炭化物、金属窒化物及び金属タングステンを含む。
【0040】
例としての電池はさらに、電気リードと適切なパッケージング、例えば第1及び第2集電体と電気的に接続する電気コンタクトを提供するシール容器を含んでもよい。
【0041】
コレクタは、金属、伝導性高分子または他の伝導物質からなる導電性部材とすることができる。コレクタは、シート、メッシュ、ロッド等の所望の形でよい。例えば、コレクタは、Al、Ni、Fe、Ti、ステンレス鋼、あるいは他の金属または合金等の金属でもよい。コレクタは、例えばタングステン(W)、プラチナ(Pt)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、酸化チタン(例えばTi)、リン化銅(Cu)、リン化ニッケル(Ni)、リン化鉄(FeP)等からなる保護層のような腐食を抑える保護皮膜を有してもよい。
【0042】
一方または両方の電極はさらにバインダを含んでもよい。バインダは、電極の機械的性質を向上させ、電極の製造または加工を容易にする等の目的で、1種またはそれ以上の不活性物質を備えてもよい。バインダ物質の例は、ポリエチレン、ポリオレフィン、及びその誘導体、ポリエチレンオキシド、アクリルポリマー(ポリメタクリレートを含む)、合成ゴム等のポリマーを含む。また、バインダは、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−HFP)等のフッ素ポリマーを含んでもよい。
【0043】
電池はさらに、ハウジング、電極接続や端子、及びカソードとアノードとの間のセパレータを備えてもよい。電池は、電極間で直接の電気接触(短絡)を防ぐ目的で、負極と正極の間に位置する1種またはそれ以上のセパレータを含んでもよい。セパレータは、例えば多孔質シート、フィルム、メッシュ、織布または不織布、繊維状マット(布)、あるいはその他の形態等のイオン透過シートとすることができる。セパレータは任意であり、固体電解質が同様の機能を有してもよい。セパレータは、ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、メチルセルロース等)、ゾル−ゲル物質、無機-有機複合体(Ormosil)、ガラス、セラミック、ガラスセラミック等のような物質を含む多孔性等のイオン透過シートとすることができる。セパレータは一方または両方の電極の表面に取り付けられてもよい。
【0044】
(例)
イオン伝導性の測定を室温での交流インピーダンス方式で行なった。例として、電池を、カソード電気活性物質LiCoOを備えるカソードと、伝導物質としてのアセチレンブラックと、バインダとしてのPVdFを有するラミネートセルとして構成した(例1)。カソード集電体はアルミニウムホイルであった。アノードは、アノード活物質LiTi12と、伝導物質としてのアセチレン・ブラックと、バインダとしてPVdFを備えた。アノード集電体はアルミニウムホイルであった。電解質は、混合物として60モル%のEMl−TFSI及び40モル%のEMCと、カチオン源としてのリチウム塩Li−TFSI(Li(CFSON)、1.25Mを含んでいた。セパレータはポリプロピレン多孔性皮膜であった。
【0045】
サイクル・テスト条件は以下のとおりであった。コンディショニングの後、電池に対して1Cのcc−cc充放電を100サイクル行なった。
【0046】
第2の電池を作製したが、例1との唯一の相違は、電解質の混合比を40モル%のEMI−TESIと60モル%のEMCに変更した点である(例2)。
【0047】
標準電池を例1及び例2と同様に作製したが、電解質が有機添加剤を含んでいないことのみ異なる(比較1)。電解質はEMI−TFSIであった。
【0048】
下記の表1は、3つの電池の電解質のイオン伝導度を示す。結果は、標準電池と比較して、有機添加剤を含む溶融塩電解質を有する2つの例の電池のリチウムイオン伝導度の驚異的な増大を明示している。
【0049】
【表1】

【0050】
イオン伝導度は有機添加剤の割合に従って高くなる。より低いパーセンテージの有機添加剤を使用することができるが、イオン伝導度の増加が少なくなると考えられる。しかし、有機添加剤の割合が増加すると、ある点で電解質燃焼のオリジナルの問題が戻る。通常の条件下での電解質の燃焼の危険性に至る割合より少し低い割合で、できるだけ高い割合で有機添加剤が存在するように溶融塩成分に対する電解質中の有機添加剤のモル%を選択するとよい。
【0051】
本発明の例で、有機添加剤は、溶融塩成分に対してモル%で40%〜60%のように、10%〜60%であるアルキルカーボネートである。
【0052】
図1は、標準電池と比較した2つの例としての再充電可能なリチウムイオン電池の放電率容量試験を示す。試験では1.5〜2.6Vの充放電電圧範囲を使用した。結果は、例としての改良電解質がリチウムイオン電池での使用に供することができることを示した。
【0053】
図2は、正極10、電解質12、負極14を備える電池の単純化された模式図を示し、本発明による例の電池では、電解質が溶融塩、カチオン源、及び電解質のカチオン伝導性を高めるように選ばれた電解質添加剤を備える。
【0054】
この明細書において言及された特許または文献は、個々の特許または文献が言及によって取り込まれるよう具体的に個々に表示された場合と同じ程度に、言及によって本書に取り込まれる。記載された例は、請求項に記載された発明の範囲を限定するよう意図されない。その変更及び他の用途に当業者は想到するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】標準電池と比較した本発明による2例の電池の放電率容量を示すグラフ
【図2】電池の模式図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と、正極と、カチオンを輸送するためのカチオン伝導性を有する電解質とを備える電池であって、
前記電解質が、溶融塩と、カチオン源と、前記電解質のカチオン伝導性を高めるよう選択された有機化合物である電解質添加剤とを含む電池。
【請求項2】
前記カチオンがアルカリ金属イオンであり、前記カチオン源がアルカリ金属塩である請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属イオンがリチウムイオンのリチウムイオン電池である請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記電解質添加剤が有機炭酸塩である請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記有機炭酸塩がアルキルカーボネートである請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記電解質添加剤が有機リン酸塩である請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記電解質添加剤が非プロトン性極性有機化合物である請求項1に記載の電池。
【請求項8】
負極と、正極と、電解質とを備えるリチウムイオン電池であって、
前記電解質が、溶融塩と、リチウム塩と、前記電解質のリチウムイオン伝導性を高めるよう選択された電解質添加剤とを含む電池。
【請求項9】
前記電解質添加剤が有機炭酸塩である請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記有機炭酸塩がアルキルカーボネートである請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記電解質添加剤が有機リン酸塩である請求項8に記載の電池。
【請求項12】
前記電解質添加剤が非プロトン性極性有機化合物である請求項8に記載の電池。
【請求項13】
前記電解質添加剤が、エポキシド、エーテル、酢酸塩、ギ酸塩、ジオキソラン、エステル、アルコール、アミン、ハロゲン化アルキル、アルカン、アルケン、ニトリル、イミン、ニトロ化合物、アルデヒド、ケトン、芳香族化合物からなる群から選択された有機化合物である請求項8に記載の電池。
【請求項14】
前記電解質添加剤がカリウム、ナトリウム、またはセシウムの塩である請求項8に記載の電池。
【請求項15】
前記電解質添加剤が有機炭酸塩であり、当該有機炭酸塩が溶融塩に対してモルパーセントで約10%〜60%である請求項8に記載の電池。
【請求項16】
前記電解質添加剤が有機炭酸塩であり、当該有機炭酸塩が溶融塩に対してモルパーセントで約40%〜60%である請求項8に記載の電池。
【請求項17】
前記電解質添加剤が有機炭酸塩であり、当該有機炭酸塩が溶融塩に対して、通常の電池動作条件下における電解質の燃焼の危険性に相当する燃焼モルパーセント未満である請求項8に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−538375(P2007−538375A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527366(P2007−527366)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017220
【国際公開番号】WO2005/117175
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(505438890)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR ENGINEERING & MANUFACTURING NORTH AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】25 ATLANTIC AVENUE,ERLANGER, KENTUCKY 41018, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】