説明

電池の製造方法

【課題】貫通孔を気密に封止する外側封止部材を備える電池において、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査できる電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】電池100の製造方法は、ゴム栓部材190を貫通孔170に圧入してこれを気密に仮封止する仮封止工程と、その後、外側封止部材180xでゴム栓部材190を外部から覆いつつ、外側封止部材180xを電池ケース110の孔周囲部113mに気密かつ環状に固着する本封止工程と、その後、外側封止部材180xを外部から押圧し変形させて、ゴム栓部材190による仮封止を解除し、貫通孔170を気体が流通可能とする仮封止解除工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、この電池ケース内に収容された電極体と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材とを備える電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電解液を注入するための注液孔などの貫通孔を有する電池ケースと、この電池ケース内に収容された電極体と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止した封止部材とを備える電池が知られている。封止部材としては、例えば、金属からなる金属蓋部材に、ゴム状弾性体からなるゴム栓部材が接合されたものがある。このうちゴム栓部材は、電池ケースの貫通孔に外部から圧入されており、貫通孔を気密に封止(密栓)する。一方、金属蓋部材は、このゴム栓部材を電池ケースの外部から覆いつつ、ゴム栓部材を電池ケースの内部に向けて押圧した状態で、電池ケースに接合されている。このようにすることで、ゴム栓部材による貫通孔の気密封止をより確実なものとすることができる。
なお、このような金属蓋部材及びゴム栓部材を有する封止部材で貫通孔を封止した形態の電池として、例えば特許文献1に開示された電池が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電池では、前述のように、貫通孔の気密封止はゴム栓部材で行えば足りると考えられていたため、金属蓋部材と電池ケースとの間の気密性まで厳密に要求されることはなかった。しかしながら、ゴム状弾性体からなるゴム栓部材は、経時的に劣化するため、ゴム栓部材と貫通孔との間の気密性も経時的に低下する。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用の電池は、例えば10年以上の長期間にわたり使用されるため、この経時劣化による気密性の低下が懸念される。
【0005】
ゴム栓部材が劣化してゴム栓部材と貫通孔との間の気密性が低下すると、電池ケース内に収容されていた電解液が、ゴム栓部材と貫通孔との間に入り込み、更に、金属蓋部材と電池ケースとの間の気密性も低い場合には、その電解液が金属蓋部材と電池ケースとの間を通じて電池外部まで漏れ出てしまうことがある。すると、電池ケース内の電解液が不足して、電池特性が低下するおそれがある。また逆に、金属蓋部材と電池ケースとの間、及び、ゴム栓部材と貫通孔との間を通じて、大気中の水分が電池ケース内に入り込み、電池特性が低下するおそれもある。
【0006】
この問題を解決するため、ゴム栓部材が劣化してゴム栓部材と貫通孔との間の気密性が低下しても、電池ケースの内部と外部が連通しないように、金属蓋部材と電池ケースとの間を確実に気密かつ環状に接合しておくことが考えられる。
しかしながら、このようにした電池は、製造直後にはゴム栓部材がまだ劣化しておらず、ゴム栓部材と貫通孔との間が気密に封止されている。つまり、この電池は、ゴム栓部材と貫通孔との密着、及び、金属蓋部材と電池ケースとの接合により、二重に封止されている。このため、金属蓋部材と電池ケースとの接合の不具合で封止不良が生じていたとしても、この封止不良が生じた電池を検査により判別するのが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電池ケースの貫通孔を外部から覆い、電池ケースの孔周囲部に気密かつ環状に固着して、貫通孔を気密に封止してなる外側封止部材を備える電池において、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査できる電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、前記電池ケース内に収容された電極体と、前記電池ケースの外部から前記貫通孔を覆い、前記電池ケースのうち前記貫通孔を囲む環状の孔周囲部に気密かつ環状に固着して、前記貫通孔を気密に封止してなる外側封止部材と、を備える電池の製造方法であって、ゴム状弾性体からなるゴム栓部材を、前記電池ケースの前記外部から前記貫通孔に圧入して、前記ゴム栓部材で前記貫通孔を気密に仮封止する仮封止工程と、前記仮封止工程の後、前記外側封止部材で前記ゴム栓部材を前記外部から覆いつつ、前記外側封止部材を前記電池ケースの前記孔周囲部に気密かつ環状に固着する本封止工程と、前記本封止工程の後、前記外側封止部材を前記外部から押圧し変形させて、前記外側封止部材で直接または間接に前記ゴム栓部材を変形または移動させ、前記仮封止を解除し、前記貫通孔を気体が流通可能とする仮封止解除工程と、を備える電池の製造方法である。
【0009】
この電池の製造方法では、仮封止工程において、ゴム栓部材で貫通孔を気密に仮封止する。このため、その後、本封止工程までの間に、電池ケース内に収容された電解液が貫通孔を通じて電池ケースの外部(孔周囲部等)に漏れ出るのを防止できる。従って、本封止工程の際に、貫通孔から漏れ出た電解液が外側封止部材と電池ケースの孔周囲部との間に入り込んで、封止不良が生じるのを防止でき、外側封止部材と孔周囲部とを確実に固着できる。
【0010】
更に、この電池の製造方法では、仮封止解除工程において、ゴム栓部材による仮封止を解除して、貫通孔を気体が流通可能とする。このため、この仮封止解除工程後の電池では、外側封止部材と電池ケース(その孔周囲部)との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。即ち、電池ケース内の気体が電池外部に漏れ出ないか否かを検査することで、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査できる。そして、これらの間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。
【0011】
なお、「仮封止解除工程」において、仮封止の解除する具体的な方法としては、例えば、外側封止部材に、貫通孔に向けて延びる針状突起部や延出部などの部位を設けておき、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧変形させ、この部位で直接、ゴム栓部材を変形または移動させて、仮封止を解除する方法が挙げられる。
また例えば、ゴム栓部材に、外側封止部材に向けて延びる延出部などの部位を設けておき、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧変形させて、外側封止部材でこの部位を押し、ゴム栓部材を移動させて、仮封止を解除する方法が挙げられる。
【0012】
また例えば、外側封止部材に、貫通孔に向けて延びる延出部等を設けると共に、ゴム栓部材に、外側封止部材に向けて延びる延出部等を設けておき、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧変形させて、外側封止部材の延出部等でゴム栓部材の延出部等を押し、ゴム栓部材を移動させて、仮封止を解除する方法が挙げられる。
また例えば、外側封止部材とゴム栓部材との間に、これらとは別部材とされた他の部材(中間部材)を本封止を行う前までに配置しておき、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧変形させて、外側封止部材で中間部材を押し、中間部材でゴム栓部材を変形または移動させて、仮封止を解除する方法が挙げられる。
【0013】
更に、上記の電池の製造方法であって、前記仮封止解除工程の後、前記貫通孔について前記仮封止が解除されていることを確認する解除確認工程を備える電池の製造方法とすると良い。
【0014】
この電池の製造方法では、解除確認工程を行って、ゴム栓部材による仮封止が解除されていることを確認するので、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性の検査をより確実に行うことができる。
なお、仮封止の解除を確認する具体的な方法としては、例えば、X線CT検査などX線による透視検査により、電池の内部を透視して仮封止が解除されていることを確認する方法が挙げられる。また例えば、仮封止解除工程でゴム栓部材を電池ケースの内部に落とし込む場合には、解除確認工程において、電池を揺動し、ゴム栓部材を電池ケース等に衝突させて衝突音を生じさせることにより、仮封止の解除を確認することもできる。
【0015】
更に、上記の電池の製造方法であって、前記解除確認工程の後、前記外側封止部材と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程を備える電池の製造方法とすると良い。
或いは、前記の電池の製造方法であって、前記仮封止解除工程の後、前記外側封止部材と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程を備える電池の製造方法とすると良い。
【0016】
これらの電池の製造方法では、気密検査工程において、外側封止部材と電池ケースの孔周囲部との間の気密性を検査するので、これらの間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。よって、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査した電池を製造できる。
【0017】
更に、上記のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、前記外側封止部材は、前記貫通孔に向けて延び、自身の先端が尖った針状突起部を有し、前記仮封止解除工程は、前記外側封止部材の押圧変形に伴って前記針状突起部を前記貫通孔に向けて移動させて、前記針状突起部で前記ゴム栓部材に前記電池ケースの内外を連通する連通孔をあける工程である電池の製造方法とすると良い。
【0018】
この電池の製造方法では、外側封止部材に針状突起部を設けておき、この針状突起部でゴム栓部材に連通孔をあけるので、仮封止の解除を容易かつ確実に行うことができる。従って、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性の検査を確実に行うことができる。
【0019】
更に、前記のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、前記外側封止部材は、前記貫通孔に向けて延びる延出部を有し、前記仮封止解除工程は、前記外側封止部材の押圧変形に伴って前記延出部を前記貫通孔に向けて移動させて、前記延出部で前記ゴム栓部材を前記電池ケースの内部に落とし込む工程である電池の製造方法とすると良い。
【0020】
この電池の製造方法では、外側封止部材に延出部を設けておき、この延出部でゴム栓部材を電池ケースの内部に落とし込むので、仮封止の解除を容易かつ確実に行うことができる。従って、外側封止部材と電池ケースとの間の気密性の検査を確実に行うことができる。
【0021】
更に、上記のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、前記仮封止工程は、減圧下で行い、前記本封止工程は、大気圧下で行う電池の製造方法とすると良い。
【0022】
仮封止工程を減圧下で行うことで、この仮封止後の電池ケース内を減圧状態(負圧)にすることができる。このため、本封止工程後に行うコンディショニング工程(初期充電)の際やその後の使用において、電池ケース内に気体が発生しても、電池ケースの内圧が早期に高くなるのを防止できる。一方、溶接等を行う本封止工程は、大気圧下で行うので、減圧下で行う場合に比して、本封止工程を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池を示す縦断面図である。
【図2】実施形態1に係り、電極体を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに重ねた状態を示す部分平面図である。
【図4】実施形態1に係り、ケース蓋部材、正極端子及び負極端子等を示す分解斜視図である。
【図5】実施形態1に係り、注液孔及び外側封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程において、ゴム栓部材で注液孔を気密に仮封止する様子を示す説明図である。
【図7】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、本封止工程において、外側封止部材を電池ケースの孔周囲部に気密かつ環状に溶接する様子を示す説明図である。
【図8】実施形態2に係り、注液孔及び外側封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図9】実施形態2に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程において、ゴム栓部材で注液孔を気密に仮封止する様子を示す説明図である。
【図10】実施形態2に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、本封止工程において、外側封止部材を電池ケースの孔周囲部に気密かつ環状に溶接する様子を示す説明図である。
【図11】変形形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程を行い、その後に本封止工程を行って、外側封止部材を電池ケースに溶接する様子を示す説明図である。
【図12】変形形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧し変形させて、ゴム栓部材による仮封止を解除する様子を示す説明図である。
【図13】変形形態2に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程を行い、その後に本封止工程を行って、外側封止部材を電池ケースに溶接する様子を示す説明図である。
【図14】変形形態2に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧し変形させて、ゴム栓部材による仮封止を解除する様子を示す説明図である。
【図15】変形形態3に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程後、ゴム栓部材上に中間部材を配置し、その後に本封止工程を行って、外側封止部材を電池ケースに溶接する様子を示す説明図である。
【図16】変形形態3に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧し変形させて、ゴム栓部材による仮封止を解除する様子を示す説明図である。
【図17】変形形態4に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程後、ゴム栓部材上に中間部材を配置し、その後に本封止工程を行って、外側封止部材を電池ケースに溶接する様子を示す説明図である。
【図18】変形形態4に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止解除工程において、外側封止部材を外部から押圧し変形させて、ゴム栓部材による仮封止を解除する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池(電池)100(以下、単に電池100とも言う)を示す。また、図2及び図3に、この電池100を構成する捲回型の電極体120及びこれを展開した状態を示す。また、図4に、ケース蓋部材113、正極端子150及び負極端子160等の詳細を示す。また、図5に、注液孔(貫通孔)170及び外側封止部材180の近傍の形態を示す。なお、図1,図4及び図5における上方を電池100の上側、下方を電池100の下側として説明する。
【0025】
この電池100は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両や、ハンマードリル等の電池使用機器に搭載される角型電池である。この電池100は、直方体形状の電池ケース110、この電池ケース110内に収容された捲回型の電極体120、電池ケース110に支持された正極端子150及び負極端子160等から構成されている(図1参照)。また、電池ケース110内には、非水系の電解液117が保持されている。
【0026】
このうち電池ケース110は、金属(本実施形態1ではアルミニウム)により形成されている。この電池ケース110は、上側のみが開口した箱状のケース本体部材111と、このケース本体部材111の開口111hを閉塞する形態で溶接されたケース蓋部材113とから構成されている(図1及び図4参照)。ケース蓋部材113は、電池ケース110の内部を向く主面である内表面113cと、電池ケース110の外部を向く主面である外表面113dとを有する矩形板状をなす。
【0027】
ケース蓋部材113には、その長手方向の中央付近に、電池ケース110の内圧が所定圧力に達した際に破断する非復帰型の安全弁115が設けられている。また、この安全弁115の近傍には、ケース蓋部材113を貫通し、電池ケース110の内外を連通する後述する注液孔(貫通孔)170が設けられている。この注液孔170は、電池ケース110内が大気圧よりも減圧された状態(負圧状態)で、後述する外側封止部材180で気密に封止されている。また、ケース蓋部材113には、それぞれ電池ケース110の内部から外部に延出する形態の通電端子部材151からなる正極端子150及び負極端子160と、ボルト153,153とが、樹脂からなる絶縁部材155,155を介して固設されている(図1及び図4参照)。
【0028】
また、電極体120は、絶縁フィルムを上側のみが開口した袋状に形成した絶縁フィルム包囲体119内に収容され、横倒しにした状態で電池ケース110内に収容されている(図1参照)。この電極体120は、正極集電箔122の両主面に正極活物質層123,123が形成された帯状の正極板121と、負極集電箔132の両主面に負極活物質層133,133が形成された帯状の負極板131とを、多孔質膜からなる帯状のセパレータ141,141を介して互いに重ねて(図3参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである(図2参照)。正極板121の幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の一方側ACに渦巻き状をなして突出しており(図2参照)、前述の正極端子150と接続している(図1参照)。また、負極板131の幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の他方側ADに渦巻き状をなして突出しており(図2参照)、前述の負極端子160と接続している(図1参照)。
【0029】
次に、凹部175、注液孔170、外側封止部材180及びゴム栓部材190について説明する(図5参照)。
凹部175は、ケース蓋部材113の外表面113dから内表面113c側(図5、下方)に凹む平面視円形状の凹部である。この凹部175は、円筒状をなす凹部側面175f1と、内表面113cに平行に延びる平面をなす凹部底面175f2により構成されている。
【0030】
注液孔170は、電解液117を電池ケース110内に注入にあたって用いられ、凹部75の凹部底面175f2とケース蓋部材113の内表面113cとの間を貫通する形態で、凹部底面175f2の中央に設けられた円孔であり、電池ケース110の内外を連通している。この注液孔170は、円筒状をなす孔側面170fで構成されている。
【0031】
外側封止部材180は、電池ケース110の材質と同じ材質、具体的にはアルミニウムからなり、キャップ部181と針状突起部183とから構成されている。
このうちキャップ部181は、注液孔170及び凹部175側に位置する主面である内表面181cと、電池外部側に位置する主面である外表面181dとを有する金属板(アルミニウム板)からなり、後述する押圧変形(座屈)により複雑に屈曲した形態を有する。
【0032】
なお、押圧変形前の未変形外側封止部材180xの未変形キャップ部181x(図7参照)は、円板部181iとテーパ部181jと周縁部181mとからなる。円板部181iは、ケース蓋部材113に平行で円板状をなす。また、周縁部181mは、円板部181iよりもケース蓋部材113側(図7中、下方)に位置し、ケース蓋部材113に平行で円環状をなす。また、テーパ部181jは、これら円板部181iと周縁部181mとの間を結ぶテーパ状(円錐台状)をなす。
【0033】
キャップ部181(未変形キャップ部181x)は、注液孔170及び後述するゴム栓部材190を電池ケース110の外部から覆い、かつ、凹部175全体を覆う形態で、電池ケース110(そのケース蓋部材113)に固着されている。具体的には、キャップ部181(未変形キャップ部181x)の円環状の周縁部181mが、ケース蓋部材113のうち注液孔170を囲む円環状の孔周囲部113mに、全周にわたり溶接されて、平面視円環状の溶接部181yを形成している。これにより、外側封止部材180(そのキャップ部181の周縁部181m)と電池ケース110の孔周囲部113mとが気密に接合されている。
【0034】
また、針状突起部183は、自身の先端183sが尖った円錐状をなし、キャップ部181(未変形キャップ部181x)のうち円板部181iの内表面181cの中央に接合(溶接)されて、注液孔170に向けて延びている。この針状突起部183は、後述するゴム栓部材190を貫通している。このため、この針状突起部183とゴム栓部材190との間には、ごく僅かな大きさの隙間からなる連通孔190hを形成され、電池ケース110の内外を連通している。かくして、電池ケース110内の気体は、連通孔190hを流通可能となっている。
【0035】
ゴム栓部材190は、ゴム状弾性体、本実施形態1ではエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなり、挿入部191と鍔部193とから構成されている。
このうち挿入部191は、径小な頂面191cと径大な底面191dとこれらの間を結ぶ側面191fとを有する円錐台状をなす。このうち頂面191cは、注液孔170の内径よりも径小となっている。一方、底面191dは、頂面191cよりも径大で、かつ、注液孔170の内径よりも径大となっている。また、この挿入部191の底面191dの中央には、頂面191c側に凹む円錐台状の凹部191kが形成されている。この凹部191k内には、前述の外側封止部材180の針状突起部183が挿入されている。
【0036】
この挿入部191は、注液孔170及び外側封止部材180と同軸に配置され、注液孔170内に挿入されている。具体的には、挿入部191は、注液孔170に圧入されており、自身の弾性によって、その側面191fが、注液孔170の孔側面170fと凹部175の凹部底面175f2とのなす角部170faに気密に圧接している。但し、前述のように、ゴム栓部材190(挿入部191)の中央には、針状突起部183との間に、電池ケース110の内外を連通する連通孔190hが形成されているので、注液孔170は、気密に封止されておらず、気体が流通可能な状態となっている。
【0037】
一方、鍔部193は、その断面が概略矩形状で、外径が凹部175の内径(凹部底面175f2の外径)よりも小さくされた平面視円環状をなす。この鍔部193は、挿入部191を囲む形態で挿入部191に繋がって挿入部191と一体化されている。この鍔部193は、凹部175の凹部底面175f2に当接している。
【0038】
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。
まず、未変形キャップ部181xと針状突起部183とからなる未変形外側封止部材180xを形成する(図7参照)。具体的には、未変形キャップ部181xと針状突起部183とをそれぞれ別々に形成し、未変形キャップ部181xの内表面181cの中央に針状突起部183を溶接して、未変形外側封止部材180xを形成する。また、ゴム栓部材190も用意しておく。
【0039】
また、安全弁115及び注液孔170等を形成したケース蓋部材113と、通電端子部材151,151と、ボルト153,153とを用意し、これらを射出成形用の金型にセットする。そして、射出成形により絶縁部材155,155を一体的に成形して、ケース蓋部材113に正極端子150及び負極端子160を固設する(図4参照)。
次に、別途形成した電極体120に、正極端子150及び負極端子160を接続(溶接)する。その後、ケース本体部材111及び絶縁フィルム包囲体119を用意し、ケース本体部材111内に絶縁フィルム包囲体119を介して電極体120を収容すると共に、ケース本体部材111の開口111hをケース蓋部材113で塞ぐ。そして、レーザ溶接によりケース本体部材111とケース蓋部材113とを溶接して、電池ケース110を形成する(図1参照)。
【0040】
次に、この電池ケース110等の気密性を検査する(電池ケースの気密検査工程)。具体的には、この電池100をチャンバ内に入れて、チャンバ内をヘリウムガスで充満させると共に、ケース蓋部材113の注液孔170に吸引用ノズルを気密に装着して、電池ケース110の内部を減圧する。例えば、電池ケース110の接合部分(ケース本体部材111とケース蓋部材113との溶接部分)や、電池ケース110と正極端子150または負極端子160との固設部分(ケース蓋部材113と絶縁部材155との間や絶縁部材155と通電端子部材151との間)に封止不良がある場合には、電池ケース110外のヘリウムガスが電池ケース110内に侵入する。従って、電池ケース110内に侵入したヘリウムガスを検知することで、電池ケース110等の気密性を検査できる。
【0041】
次に、この電池100を真空チャンバ内に入れて真空チャンバ内を減圧する。そして、注液用ノズルを注液孔170内に挿入して、注液用ノズルから電池ケース110内に電解液117を注液する。その後、不織布により注液孔170の周囲(孔周囲部113mを含む)を清掃する。電解液117の注入の際、電解液117が注液孔170の周囲に付着するおそれがあるが、この清掃により注液孔170の周囲を清浄状態とすることができる。
【0042】
次に、この減圧下において仮封止工程を行う(図6参照)。即ち、ゴム栓部材190を注液孔170に圧入して、注液孔170を気密に仮封止する。具体的には、ゴム栓部材190の挿入部191を、電池ケース110の外部から注液孔170に圧入し、挿入部191の側面191fを注液孔170の角部170faに圧接させて、挿入部191で注液孔170を気密に仮封止(密栓)する。その際、挿入部191は位置決めガイドとしての役割も果たすので、注液孔170に対するゴム栓部材190の位置決めを精度良く行うことができる。
【0043】
仮封止後は、真空チャンバ内を大気圧に戻して、真空チャンバからこの電池100を取り出す。電池ケース110は、仮封止工程でゴム栓部材190により気密に封止されているので、電池100を大気圧下に戻しても、電池ケース110内はその減圧状態を保っている。
ところで、注液孔170が封止されていない場合には、電池ケース110内に収容された電解液117が、電池外部に漏れ出たり、電池ケース110の孔周囲部113mに付着するおそれがある。しかし、本実施形態1では、前述の仮封止工程においてゴム栓部材190(その挿入部191)で注液孔170を気密に仮封止している。従って、電解液117が電池外部に漏れ出るのを確実に防止できる。また、次述する本封止工程も、電池ケース110内を減圧状態に保ったまま、大気圧下で行うことができる。
【0044】
次に、この大気圧下において本封止工程を行う(図7参照)。即ち、未変形外側封止部材180xでゴム栓部材190を外部から覆いつつ、未変形外側封止部材180xを電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mに気密かつ環状に固着する。具体的には、未変形外側封止部材180xの針状突起部183の先端183sをゴム栓部材190に向けて、ゴム栓部材190を外部から覆いつつ、未変形外側封止部材180xの未変形キャップ部181xの周縁部181mを、ケース蓋部材113の孔周囲部113mに当接させる。この状態で、レーザ溶接を行い、未変形キャップ部181xの周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとを全周にわたって溶接して平面視円環状の溶接部181yを形成する。これにより、外側封止部材180(その未変形キャップ部181xの周縁部181m)と電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mとの間が気密に封止される。
【0045】
次に、仮封止解除工程を行う(図5参照)。即ち、未変形外側封止部材180xを外部から押圧し変形させて、変形した外側封止部材180でゴム栓部材190を変形させ、仮封止を解除し、注液孔170を気体が流通可能とする。具体的には、未変形外側封止部材180xのうちキャップ部181の外表面181dの中央を、電池外部から電池内部(図中、下方)に押圧して、キャップ部181を変形させる。これと共に、外側封止部材180の針状突起部183を注液孔170に向けて移動させ、針状突起部183をゴム栓部材190に貫通させて、ゴム栓部材190に電池ケース110の内外を連通する連通孔190hをあける。これにより、電池ケース110内の気体は、連通孔190hを流通可能となる。
【0046】
次に、解除確認工程を行う。即ち、ゴム栓部材190による注液孔170の仮封止が解除されていることを確認する。具体的には、X線CT検査により、電池100のうち注液孔170の近傍を透視して、針状突起部183がゴム栓部材190を貫通して連通孔190hが形成されていることを確認する。なお、この解除確認工程は省略することもできる。
【0047】
次に、コンディショニング工程において、この電池100の初期充電を行う。その際、電池ケース110内には、水素ガスなどの気体が発生する。
【0048】
次に、この電池100について気密検査工程を行う。即ち、外側封止部材180(そのキャップ部181)の周縁部181mと電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mとの間(溶接部181y)の気密性を検査する。具体的には、電池100を真空チャンバ内に置いて、真空チャンバ内を減圧する。そして、外側封止部材180の近傍に、水素ガス検知器(Hydrogen Leak Detector H2000:センシスター社製)を設置して、120秒間、水素ガスを検知することにより行う。
【0049】
前述のように、電池ケース110内には、初期充電の際に発生した水素ガスが存在している。そして、この水素ガスは、気体が流通可能な状態とされている注液孔170(具体的にはその内側にある連通孔190h)を通じて、外側封止部材180とケース蓋部材113との間の空間まで届いている。従って、外側封止部材180の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間に封止不良が生じている場合には、外側封止部材180の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間(溶接部181y)のうち、封止不良の部位を通じて、水素ガスが電池ケース110の外部に漏れ出る。かくして、水素ガス検知器により水素ガスを検知できれば、外側封止部材180の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間に封止不良が生じていることが判る。そこで、この封止不良のある電池を排除し、封止不良のない良品の電池100のみを選別する。かくして、電池100が完成する。
【0050】
以上で説明したように、この電池100の製造方法では、仮封止工程において、ゴム栓部材190で注液孔170を気密に仮封止する。このため、その後、本封止工程までの間に、電池ケース110内に収容された電解液117が注液孔170を通じて電池ケース110の外部(孔周囲部113m等)に漏れ出るのを防止できる。従って、本封止工程の際に、注液孔170から漏れ出た電解液117が外側封止部材180(未変形外側封止部材180x)と電池ケース110の孔周囲部113mとの間に入り込んで、封止不良が生じるのを防止でき、外側封止部材180(未変形外側封止部材180x)と孔周囲部113mとを確実に固着できる。
【0051】
更に、仮封止解除工程において、ゴム栓部材190による注液孔170の仮封止を解除して、注液孔170を気体が流通可能とする。このため、この仮封止解除工程後の電池100では、外側封止部材180と電池ケース110(その孔周囲部113m)との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。即ち、電池ケース110内の気体が電池外部に漏れ出ないか否かを検査することで、外側封止部材180と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。そして、これらの間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。
【0052】
更に、本実施形態1では、仮封止解除工程の後、注液孔170について仮封止が解除されていることを確認する解除確認工程を備える。これにより、仮封止が解除されていることを確認できるので、外側封止部材180と電池ケース110との間の気密性の検査をより確実に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態1では、外側封止部材180と電池ケース110の孔周囲部113mとの間の気密性を検査する気密検査工程を備える。これにより、外側封止部材180と電池ケース110との間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。よって、外側封止部材180と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査した電池100を製造できる。
【0054】
また、本実施形態1では、外側封止部材180(未変形外側封止部材180x)は、注液孔170に向けて延び、自身の先端183sが尖った針状突起部183を有し、仮封止解除工程は、外側封止部材180の押圧変形に伴って針状突起部183を注液孔170に向けて移動させて、針状突起部183でゴム栓部材190に電池ケース110の内外を連通する連通孔190hをあける工程である。このように、外側封止部材180(未変形外側封止部材180x)に針状突起部183を設けておき、この針状突起部183でゴム栓部材190に連通孔190hをあけるので、仮封止の解除を容易かつ確実に行うことができる。従って、外側封止部材180と電池ケース110との間の気密性の検査を確実に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態1では、仮封止工程は、減圧下で行い、本封止工程は、大気圧下で行う。仮封止工程を減圧下で行うことで、この仮封止後の電池ケース110内を減圧状態(負圧)にすることができる。このため、本封止工程後に行うコンディショニング工程(初期充電)の際やその後の使用において、電池ケース110内に気体が発生しても、電池ケース110の内圧が早期に高くなるのを防止できる。一方、溶接等を行う本封止工程は、大気圧下で行うので、減圧下で行う場合に比して、本封止工程を容易に行うことができる。
【0056】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係るリチウムイオン二次電池(電池)200では、外側封止部材280及びゴム栓部材290の形態(図8〜図10参照)が、実施形態1に係る電池100の外側封止部材280及びゴム栓部材290の形態(図5〜図7)と異なる。また、これに伴って、電池200の製造方法も、実施形態1に係る電池100の製造方法と異なる。それ以外は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0057】
本実施形態2に係る外側封止部材280は、キャップ部181及び延出部283から構成されている(図8及び図10参照)。このうち、キャップ部181及びその未変形キャップ部181xの形状は、実施形態1のキャップ部181及び未変形キャップ部181xの形状と同様である。一方、延出部283は、円柱状をなし、キャップ部181のうち円板部181iの内表面181cの中央に接合されて、注液孔170に向けて延びている。この延出部283は、注液孔170を貫通しているが、延出部283と注液孔170との間には大きな隙間が生じているので、電池ケース110内の気体は、注液孔170を流通可能となっている。
【0058】
一方、本実施形態2に係るゴム栓部材290は、挿入部291からなる(図9及び図10参照)。この挿入部291は、径小な頂面291cと径大な底面291dとこれらの間を結ぶ側面291fとを有する円錐台状をなす。また、この挿入部291の底面291dの中央には、頂面291c側に凹む円錐台状の凹部291kが形成されている。但し、本実施形態2では、完成した電池200において、ゴム栓部材290は、実施形態1のゴム栓部材190のように注液孔170には係止されておらず、電池ケース110の内部に配置されている。
【0059】
次いで、本実施形態2に係る電池200の製造方法について説明する。
外側封止部材280(図10参照)は、未変形キャップ部181xと延出部283とをそれぞれ別々に形成し、未変形キャップ部181xの内表面181cの中央に延出部283を溶接することにより形成する。また、ゴム栓部材290も用意しておく。
そして、実施形態1と同様にして、ケース蓋部材113に正極端子150及び負極端子160を固設し(図4参照)、これらに電極体120を接続して、電極体120をケース本体部材111内に収容し、ケース本体部材111とケース蓋部材113とを溶接する(図1参照)。その後、電池ケース110の気密検査工程を行い、その後、電解液117の注液等を行う。
【0060】
次に、減圧下において仮封止工程を行う(図9参照)。即ち、実施形態1と同様に、ゴム栓部材290(挿入部291)を注液孔170に圧入して、注液孔170を気密に仮封止(密栓)する。仮封止後は、真空チャンバ内を大気圧に戻す。
次に、大気圧下において本封止工程を行う(図10参照)。即ち、実施形態1と同様に、ゴム栓部材290を外部から覆いつつ、未変形外側封止部材280x(その未変形キャップ部181xの周縁部181m)を、電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mに溶接により気密かつ環状に固着する。
【0061】
次に、仮封止解除工程を行う(図8参照)。即ち、未変形外側封止部材280xを外部から押圧し変形させて、外側封止部材280でゴム栓部材290を移動させ、仮封止を解除し、注液孔170を気体が流通可能とする。具体的には、未変形外側封止部材280xのうち未変形キャップ部181xの外表面181dの中央を、電池外部から電池内部に図中、下方に押圧して、未変形キャップ部181xを変形させる。これと共に、外側封止部材280の延出部283を注液孔170に向けて移動させ、延出部283でゴム栓部材290を押して電池ケース110の内部に落とし込む。これにより、電池ケース110内の気体は、注液孔170を流通可能となる。
【0062】
次に、解除確認工程を行う。即ち、注液孔170について仮封止が解除されていることを確認する。具体的には、実施形態1と同様に、X線CT検査により、電池100のうち注液孔170の近傍を透視する。そして、ゴム栓部材290が注液孔170に係止されていないことを確認する。
【0063】
なお、この確認解除工程は次のようにして行うこともできる。即ち、本実施形態2では、ゴム栓部材290が電池ケース110の内部に存在しているので、電池100を揺動することで、ゴム栓部材290を電池ケース110等に衝突させて衝突音を生じさせるができる。従って、この衝突音を検知することにより、仮封止の解除を確認することもできる。
確認解除工程後は、実施形態1と同様に、コンディショニング工程を行い、その後、気密検査工程を行う。かくして、電池200が完成する。なお、解除確認工程は省略することもできる。
【0064】
この電池200の製造方法も、仮封止工程及び本封止工程を有する。従って、本封止工程の際に、注液孔170から漏れ出た電解液117が外側封止部材280(未変形外側封止部材280x)と電池ケース110の孔周囲部113mとの間に入り込んで、封止不良が生じるのを防止でき、外側封止部材280(未変形外側封止部材280x)と孔周囲部113mとを確実に固着できる。更に、仮封止解除工程において、ゴム栓部材290による注液孔170の仮封止を解除して、注液孔170を気体が流通可能とする。このため、この仮封止解除工程後の電池200では、外側封止部材280と電池ケース110(その孔周囲部113m)との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。
【0065】
更に、本実施形態2では、外側封止部材280(未変形外側封止部材280x)は、注液孔170に向けて延びる延出部283を有し、仮封止解除工程は、外側封止部材280の押圧変形に伴って延出部283を注液孔170に向けて移動させて、延出部283でゴム栓部材290を動かし電池ケース110の内部に落とし込む工程である。このように、外側封止部材280(未変形外側封止部材280x)に延出部283を設けておき、この延出部283でゴム栓部材290を動かし電池ケース110の内部に落とし込むので、仮封止の解除を容易かつ確実に行うことができる。従って、外側封止部材280と電池ケース110との間の気密性の検査を確実に行うことができる。その他、実施形態1に係る電池100の製造方法と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0066】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0067】
例えば実施形態1では、外側封止部材180の針状突起部183でゴム栓部材190に連通孔190hをあけて、ゴム栓部材190による注液孔170の仮封止を解除した。また、実施形態2では、外側封止部材280の延出部283でゴム栓部材290を電池ケース110内に落とし込んで、ゴム栓部材290による注液孔170の仮封止を解除した。しかし、仮封止解除工程において仮封止を解除する方法は、これらに限定されない。
例えば変形形態1として、図11に示すように、ゴム栓部材390に、挿入部391から外側封止部材380(未変形外側封止部材380x)に向けて延びる延出部393を設けておく。そして、仮封止解除工程において、未変形外側封止部材380xを外部から押圧し変形させて、外側封止部材380でゴム栓部材390の延出部393を押し、ゴム栓部材390を電池ケース110内に落とし込んで、仮封止を解除してもよい(図12参照)。この電池300も、注液孔170を気体が流通可能であるため、外側封止部材380と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。
【0068】
また例えば変形形態2として、図13に示すように、外側封止部材480(未変形外側封止部材480x)に、注液孔170に向けて延びる延出部483を設けると共に、ゴム栓部材490に、挿入部491から外側封止部材480(未変形外側封止部材480x)の延出部483に向けて延びる延出部493を設けておく。そして、仮封止解除工程において、未変形外側封止部材480xを外部から押圧し変形させ、外側封止部材480の延出部483でゴム栓部材490の延出部493を押し、ゴム栓部材490を電池ケース110内に落とし込んで、仮封止を解除してもよい(図14参照)。この電池400も、注液孔170を気体が流通可能であるため、外側封止部材480と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。
【0069】
また例えば変形形態3として、図15に示すように、外側封止部材380(未変形外側封止部材380x)とゴム栓部材590との間に、これらとは別部材とされた中間部材595を本封止を行う前までに配置しておく。この中間部材595は、円板状の基部596に、注液孔170に向けて延びる針状突起部598が接合されている。そして、仮封止解除工程において、未変形外側封止部材380xを外部から押圧し変形させて、外側封止部材380で中間部材595の基部596を押し、中間部材595の針状突起部598でゴム栓部材590に電池ケース110の内外を連通する連通孔590hをあけて、仮封止を解除してもよい(図16参照)。この電池500も、注液孔170を気体が流通可能であるため、外側封止部材380と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。
【0070】
また例えば変形形態4として、図17に示すように、外側封止部材380(未変形外側封止部材380x)とゴム栓部材690との間に、これらとは別部材とされた中間部材695を本封止を行う前までに配置しておく。この中間部材695は、円板状の基部696に、注液孔170に向けて延びる延出部698が接合されている。そして、仮封止解除工程において、未変形外側封止部材380xを外部から押圧変形させて、外側封止部材380で中間部材695の基部696を押し、中間部材695の延出部698でゴム栓部材690を動かし電池ケース110内に落とし込んで、仮封止を解除してもよい(図18参照)。この電池500も、注液孔170を気体が流通可能であるため、外側封止部材380と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査できる。
【0071】
また、実施形態1,2及び変形形態1〜4では、電池ケースの内外を連通する「貫通孔」として、電解液117を注入するための注液孔170を例示したが、貫通孔は注液孔に限られない。貫通孔としては、例えば、電池ケース内の気体を抜くための通気孔などが挙げられる。また、実施形態1,2等では、「貫通孔」を、電池ケース110のうちケース蓋部材113に設けたが、貫通孔の形成位置はこれに限られない。貫通孔は、例えば、ケース本体部材111の側面や底面に設けてもよい。また、実施形態1,2等では、「貫通孔」の形態を円孔としたが、貫通孔の形態も適宜変更できる。
【0072】
また、実施形態1,2等では、「電極体」として、各々帯状をなす正極板121及び負極板131をセパレータ141,141を介して互いに重ねて捲回してなる捲回型の電極体120を例示したが、電極体の形態はこれに限られない。例えば、電極体を、各々所定形状(例えば矩形状など)をなす正極板及び負極板をセパレータを介して交互に複数積層してなる積層型としてもよい。
【0073】
また、実施形態1,2等では、「ゴム栓部材」として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなるゴム栓部材190,290,390,490,590,690を例示したが、ゴム栓部材190等をなすゴム状弾性体の材質はこれに限られない。ゴム状弾性体の材質として、例えば、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。また、ゴム栓部材の形状も、実施形態1,2等のゴム栓部材190,290等に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0074】
また、実施形態1,2等では、外側封止部材の「キャップ部」として、未変形キャップ部181xを押圧し変形させたキャップ部181を例示したが、未変形キャップ部の材質や形状は、適宜変更できる。また、外側封止部材に設ける「針状突起部」の材質や形状も、実施形態1の針状突起部183に限定されるものではなく、適宜変更できる。また、外側封止部材に設ける「延出部」の材質や形状も、実施形態2の延出部283や変形形態2の延出部483に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0075】
また、実施形態1,2等では、溶接により、外側封止部材180,280,380,480を電池ケース110の孔周囲部113mに固着したが、固着方法はこれに限られない。例えば、ロウ材やハンダ、接着剤等を用いて、或いは、加締めや巻き締め等により、外側封止部材を電池ケースの孔周囲部に固着してもよい。
【0076】
また、実施形態1,2等では、「気密検査工程」として、電池100,200,300,400,500,600を減圧下に置き、ガス検知器を用いて電池ケース110内からの気体の漏れを検知しているが、気密検査の方法はこれに限られない。例えば、電池100等を水などの液中に没して、電池ケース110内からの気体の漏れ(泡)を目視等により確認してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100,200,300,400,500,600 リチウムイオン二次電池(電池)
110 電池ケース
111 ケース本体部材
113 ケース蓋部材
113m 孔周囲部
117 電解液
120 電極体
150 正極端子
160 負極端子
170 注液孔(貫通孔)
175 凹部
180,280,380,480 外側封止部材
180x,280x,380x,480x 未変形外側封止部材
181 (外側封止部材の)キャップ部
181x (未変形外側封止部材の)未変形キャップ部
181m 周縁部
181y 溶接部
183 (外側封止部材の)針状突起部
183s (針状突起部の)先端
283,483 (外側封止部材の)延出部
190,290,390,490,590,690 ゴム栓部材
190h,590h 連通孔
191,291,391,491 挿入部
393,493 (ゴム栓部材の)延出部
595,695 中間部材
596,696 (中間部材の)基部
598 (中間部材の)針状突起部
698 (中間部材の)延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、
前記電池ケース内に収容された電極体と、
前記電池ケースの外部から前記貫通孔を覆い、前記電池ケースのうち前記貫通孔を囲む環状の孔周囲部に気密かつ環状に固着して、前記貫通孔を気密に封止してなる外側封止部材と、を備える
電池の製造方法であって、
ゴム状弾性体からなるゴム栓部材を、前記電池ケースの前記外部から前記貫通孔に圧入して、前記ゴム栓部材で前記貫通孔を気密に仮封止する仮封止工程と、
前記仮封止工程の後、前記外側封止部材で前記ゴム栓部材を前記外部から覆いつつ、前記外側封止部材を前記電池ケースの前記孔周囲部に気密かつ環状に固着する本封止工程と、
前記本封止工程の後、前記外側封止部材を前記外部から押圧し変形させて、前記外側封止部材で直接または間接に前記ゴム栓部材を変形または移動させ、前記仮封止を解除し、前記貫通孔を気体が流通可能とする仮封止解除工程と、を備える
電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記仮封止解除工程の後、前記貫通孔について前記仮封止が解除されていることを確認する解除確認工程を備える
電池の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電池の製造方法であって、
前記解除確認工程の後、前記外側封止部材と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程を備える
電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記仮封止解除工程の後、前記外側封止部材と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程を備える
電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
前記外側封止部材は、
前記貫通孔に向けて延び、自身の先端が尖った針状突起部を有し、
前記仮封止解除工程は、
前記外側封止部材の押圧変形に伴って前記針状突起部を前記貫通孔に向けて移動させて、前記針状突起部で前記ゴム栓部材に前記電池ケースの内外を連通する連通孔をあける工程である
電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
前記外側封止部材は、
前記貫通孔に向けて延びる延出部を有し、
前記仮封止解除工程は、
前記外側封止部材の押圧変形に伴って前記延出部を前記貫通孔に向けて移動させて、前記延出部で前記ゴム栓部材を前記電池ケースの内部に落とし込む工程である
電池の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電池の製造方法であって、
前記仮封止工程は、減圧下で行い、
前記本封止工程は、大気圧下で行う
電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−84480(P2013−84480A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224322(P2011−224322)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】