説明

電池システム

【課題】電源システムの循環接続に関する課題を解決する。
【解決手段】電源100は、電池モジュール110の直列回路と、インバータ回路120と、出力コンセント端子122と、充電回路123と、入力インレット端子124と、メインコントローラ125とを含む。メインコントローラ125は、インバータ回路120から出力された交流電圧が、出力コンセント端子122を介して、入力インレット端子124に入力されたことを検出した場合に、インバータ回路120と充電回路123を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の二次電池の電力を電気機器に供給してその電気機器を駆動するための電源すなわち電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機器は、商用電源から供給される交流電圧を用いて駆動される。一方、商用電源については、それのコンセント端子が設置される場所が限定的であったり、非常時のように電力そのものがそのコンセント端子から得られない状況があったりする。こうしたことから、近年、リチウムイオン電池等の二次電池を内蔵し、その二次電池に蓄えられた電力を交流電圧に変換して、商用電源から独立して電気機器への電力供給を行うことができる電池システムが市場に登場しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−295684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池から出力される直流電圧を交流電圧に変換する電池システムにおいては、その交流電圧を電気機器へ供給し続ける動作に伴い、前記二次電池の残容量が低下し、やがて放電不可となる。すなわち、残容量が低下した二次電池を充電する必要がある。
【0005】
二次電池の充電のためには、商用電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する充電回路が必要であるが、その充電回路へ交流電圧を入力するためには、商用電源と接続するための入力端子が必要となる。具体的には、商用電源の交流電圧が出力されるコンセント端子に接続可能な入力プラグ端子である。
【0006】
一方、二次電池から出力される直流電圧を交流電圧に変換し、その交流電圧を電気機器へ供給する電池システムにおいては、電気機器が有する電力入力用のプラグ端子と接続可能な出力端子、すなわち、商用電源のコンセント端子と同じ形状の出力コンセント端子が必要となる。
【0007】
したがって、嵌め合い形状に関し、前記電池システムが有する前記出力コンセント端子と前記入力プラグ端子との関係は、商用電源のコンセント端子と電気機器の電力入力用のプラグ端子との関係と同様である。そのため、ユーザは、前記電池システムを使用する際、前記電池システムの入力用プラグ端子を、同じ電池システムが有する出力コンセント端子に誤って接続(以下、「循環接続」と称する)する可能性は避けられない。
【0008】
また、前記電池システムが有する前記出力コンセント端子と前記入力プラグ端子は、互いに接続可能な形状であることから、当該電池システム1台における循環接続に限らず、複数台の電池システムによる循環接続も想定される。具体的には、1台目の電池システムの入力プラグ端子が2台目の電池システムの出力コンセント端子に、2台目の電池システムの入力プラグ端子が3台目の電池システムの出力コンセント端子に、という順に接続され、最終的にn台目の電池システムの入力プラグ端子が1台目の電池システムの出力コンセント端子に循環接続される状態である。
【0009】
このように循環接続された状態にある電池システムは、その内部に有する回路の故障が想定される。また、その回路が故障しない場合であっても、その回路による消費が続き、二次電池の残容量が低下する状態が想定され、電池システムとしての機能低下につながる。また、誤って循環接続された電池システムが、故障しなくても動き続けていることを視認したユーザは、一見、電源短絡をしている様子にも見え、その状態が好ましい状況ではないと不安に感じることになる。したがって、電池システムが循環接続された場合に、当該電池システムが動作し続ける状態を回避することは、その電源自体の故障回避、及び、ユーザへの安心感提供という両面から、解決することが望ましい。
【0010】
以上の事情を背景にして、本発明は、電池システムが循環接続された場合に、その電池システムが動作し続ける状態を回避することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0012】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0013】
(1)電気機器の電源として用いられる電池システムであって、
複数の電池セルで構成されて成る電池セル群と、
前記電池セル群の直流電圧を交流電圧に変換および出力する出力部と、
前記出力部から電気機器へ電力を供給するための電力出力端子と、
交流電圧を入力して直流電圧に変換し前記電池セル群を充電する充電部と、
前記充電部に電力を入力するための電力入力端子と、
前記電力入力端子の電圧もしくは電流またはそれに応じて変化する電圧もしくは電流を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果(例えば、特定の事象(例えば、前記出力部による交流電圧の出力)の開始時刻から、当該出力信号に特定の変化(当該出力信号によって表される電圧が、直流電圧から交流電圧に変化することや、当該出力信号によって表される電圧の振幅がしきい値を超えること)が出現する時刻までの経過時間の長さ)に基づき、当該電池システムの前記出力部と前記電力入力端子とが互いに接続される循環接続の有無、および/または、当該電池システムの前記出力部と別の電池システムの前記電力入力端子とが互いに接続されるとともに、前記他の電池システムの前記出力部と当該電池システムの前記電力入力端子とが互いに接続される循環接続の有無を判定する判定部と
を含む電池システム。
【0014】
(2)さらに、
前記出力部および前記充電部の起動または停止を制御する制御部を含み、
前記判定部は、前記検出部が、前記出力部による交流電圧の出力が開始されてから所定時間内に、前記電力入力端子に交流電圧が入力される状態を検出した場合に、前記循環接続が存在すると判定し、前記制御部により、前記出力部および/または前記充電部を停止させる(1)項に記載の電池システム。
【0015】
(3)さらに、
表示部を含み、
前記判定部は、前記検出部が、前記出力部による交流電圧の出力が開始されてから所定時間内に、前記電力入力端子に交流電圧が入力される状態を検出した場合に、前記循環接続が存在すると判定し、前記表示部の表示状態を変更する(1)または(2)項に記載の電池システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池システムが循環接続された場合に、当該電池システムが動作し続ける状態を自動的に回避するか、または、その状態の存在をユーザに告知してその状態を回避するための操作をユーザに促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に従う電池システムが収容する電池モジュールを示す機能ブロック図である。
【図2】前記電池システムを示す機能ブロック図である。
【図3】図2に示す電池システムの制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図4】図2に示す電池システムを、自己完結的に循環接続された状態で示す機能ブロック図である。
【図5】図2に示す電池システムを、別の同種の電池システムと循環接続された状態で示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照することにより、本発明の例示的な一実施形態に従う電池システムの一例である電源100を詳細に説明する。
【0019】
図1は、電源100が収容する電池モジュール110の機能ブロック図を示す。電源100は、9個の電池セル(例えば、リチウムイオン電池によって構成される)111を収容する。
【0020】
それら9個の電池セル111は、互いに直列に接続され、電池モジュール充電用FET(通電遮断素子の一例)112および電池モジュール放電用FET113を介し、電池モジュール端子114に接続される。
【0021】
電池モジュールコントローラ115は、電池セル111の電圧を検知するための電圧検知部116、電池セル111の温度を検知のための温度検知部117、および、電池セル111に流れる電流を検知するための電流検知部119のうちの少なくとも1つを用いて電池セル111の状態を検知し、その検知結果に基づき、電池モジュール充電用FET112と電池モジュール放電用FET113を制御して充電電流および/または放電電流の通電または停止を行う。
【0022】
また、電池モジュールコントローラ115は、信号送受信部(例えば、有線または無線の通信を可能にするための要素)118を有し、その信号送受信部118を介して、後述のメインコントローラ125と信号の送受信を行う。
【0023】
図2は、電源100を機能ブロック図で示す。
【0024】
4個の電池モジュール110は電池モジュール端子114を介して直列接続され、インバータ回路120と出力切替部121とを介して出力コンセント端子122に接続され、また、充電回路123を介して入力インレット端子124に接続される。
【0025】
メインコントローラ125は、直列接続された4個の電池モジュール110が通電状態にある場合には、それら電池モジュール110から電力を受けて駆動し、一方、少なくとも1個の電池モジュール110が通電状態になく、直列接続された4個の電池モジュール110からの電力が受けられない場合には、バックアップ付電源回路126より電力供給を受けて駆動する。
【0026】
メインコントローラ125には、電池モジュール110の電圧を検知する電圧検知部127、入力インレット端子124に電力が入力されたことを検知する入力検知部129、および、電池モジュール110に内蔵される電池セル111の残容量や電源100の動作状態を表示する表示部104が接続される。表示部104が、外部からの信号に応じて表示状態が変化するデバイスである。この表示部104は、例えば、点灯/消灯状態や色、輝度、配列などの表示状態を変更可能なLEDによるインジケータや、画面上に表示される図形や文字による表示状態を変更可能な液晶ディスプレイLCDである。
【0027】
ケーブル140は、それの一端部において入力インレット端子124に接続可能であり、他端部において入力プラグ端子141を有する。入力プラグ端子141は、商用電源のコンセント端子に嵌り入る形状を有しており、図示しないが、よく知られている電気機器の電力入力用のプラグ端子の形状と実質的に同じである。
【0028】
また、メインコントローラ125は、信号送受信部(例えば、有線または無線の通信を可能にするための要素)130と、電池モジュール110内の信号送受信部118を介して、電池モジュール110内の電池モジュールコントローラ115と信号の送受信を行う。
【0029】
電池モジュールコントローラ115は、電池セル111の電圧、温度、電流、または、メインコントローラ115から受信した信号に基づき、充電、および、放電の可否を判断し、電池モジュール充電用FET112、および、電池モジュール放電用FET113を制御し、選択的に入出力、および、停止する。
【0030】
また、電池モジュールコントローラ115は、前述の電池セル111の電圧、温度、電流に関する状態や充放電可否を示す示す信号をメインコントローラ125へ送信する。
【0031】
メインコントローラ125は、直列接続された電池モジュール110の電圧、または、各電池モジュール110より受信した信号に基づき、充電、および、放電の可否を判断し、充電回路123、および、インバータ回路120を制御し、選択的に充電の実行と停止、および、インバータ出力の実行と停止を行なう。また、メインコントローラ125は、充電、および、インバータ出力の可否の判断結果に従い、電池モジュール110の入出力の許可または禁止を示す信号を電池モジュールコントローラ115へ送信する。
【0032】
インバータ回路120は、直列接続された電池モジュール110の直流電圧を交流電圧に変換する電圧変換回路の一例であり、商用電源の正弦波と同じ形の電圧波形を擬似的に出力するものである。
【0033】
メインコントローラ125は、電池モジュールコントローラ115を通じて、電池セル111が、例えば、過放電、高温、過負荷といった放電を許可できない状態であることを検知した場合、インバータ回路120を停止する。
【0034】
充電回路123は、入力インレット端子124に接続されたケーブル140を通じて交流電圧を入力し、その入力された交流電圧を直流電圧に変換し、その直流電圧により、電池モジュール110に収容される電池セル群の充電を行う。特に、電池セル111がリチウムイオン電池である場合、電池セル電圧が所定電圧に達するまでは上限電流を設けた電流制御を行い、電池セル電圧が所定電圧に達してからは、充電中の電池セル電圧が前記所定電圧を超えないように電流制御を行うと良い。
【0035】
メインコントローラ125は、電池モジュールコントローラ115を通じて、電池セル111が、例えば、過充電、高温、過電流充電といった充電を許可できない状態であることを検知した場合、充電回路123を停止する。
【0036】
また、メインコントローラ125は、入力検知部129に接続され、入力インレット端子124に充電可能な電圧が入力される状態を検知し、選択的に充電、および、停止する。
【0037】
メインコントローラ125は、後述する制御シーケンスに基づき出力切替部121を制御し、出力切替部121のA側、すなわち、入力インレット端子124側、または、出力切替部121のB側、すなわち、インバータ回路120の出力側と選択的に接続される。これにより、出力コンセント端子122からは、入力インレット端子124から入力した商用電源等の交流電圧、または、インバータ回路120から出力された交流電圧を選択的に出力することができる。
【0038】
バックアップ付電源回路126は、その内部に、電池モジュール110が有する電池セル群とは別の蓄電部を有する。直列接続された4個の電池モジュール110が通電状態になく、メインコントローラ125、インバータ回路120、充電回路123、入力検知部129、表示部104などが、電池モジュール110から電力を受け取れない場合に、電池モジュール110に代わって電力を供給し、それらの起動等を補助する。また、直列接続された4個の電池モジュール110が通電状態にある場合には、バックアップ付電源回路126は、電池モジュール110、または、充電回路123から電力を受け取り、自身の内部に有する蓄電部を充電する。
【0039】
図3は、電源100の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【0040】
ステップS101では、メインコントローラ125が、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115へ通電を許可するための許可信号を送信する。送信するタイミングとは、例えば、図示しないが、電源100にスイッチを設け、そのスイッチをオンに操作した場合、また、電源100に外部からの粉塵や水などから出力コンセント端子122を保護するための可動式カバー、および、前記カバーの開閉に連動して動作するスイッチを設け、そのスイッチによって、前記カバーが開いて出力コンセント端子122に電気機器の入力プラグ端子を接続できる状態であることを検知した場合である。なお、前述のスイッチの状態を検知したり、許可信号を送信したりする際には、バックアップ付電源回路126から供給される電力を利用すると良い。
【0041】
ステップS102では、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115が、前記許可信号を受信し、電池モジュール充電用FET112と電池モジュール放電用FET113をオンする。電源100に収容される全ての電池モジュール110が通電可能な状態となり、インバータ回路120による出力、および、充電回路123による充電を可能とする。
【0042】
ステップS103では、メインコントローラ125が、入力検知部129を通じて、入力インレット端子124に商用電源等の交流電圧が入力される状態を検知した場合はステップS104、前記交流電圧入力状態を検知しない場合は、ステップS111へ移行する。
【0043】
ステップS104では、出力切替部121をA側に接続する。この状態においては、入力インレット端子124から出力コンセント端子122への通電経路が形成される。
【0044】
ステップS105において、メインコントローラ125は、電圧検知部127を通じて検出された直列接続された電池モジュール110の電圧や、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115から受信する信号を用いて、電池セル111が満充電状態であるかを判断し、選択的にステップS108の充電制御の実行、または、ステップS106の充電停止を実行する。
【0045】
ステップS106において、充電停止した場合は、ステップS107へ移行し、表示部104を用いて、満充電状態であることを表示し、ユーザへ知らせる。
【0046】
ステップS108において、充電実行中は、ステップS109において、表示部104を用いて、充電中の状態にあることを表示し、ユーザへ知らせる。充電中の状態を表示する一例として、電池セル群への充電量を示すと良い。なお、充電回路123による充電中、インバータ回路120は停止状態にある。
【0047】
ステップS110では、充電実行中に、メインコントローラ125が、入力検知部129を通じて、入力インレット端子124に交流電圧が入力される状態を検知し、入力状態であればステップS105に帰還し充電を継続し、入力状態でなければステップS110へ移行する。
【0048】
なお、出力切替部121をA側に接続した状態で充電を行っている際は、入力インレット端子124に入力された交流電圧を出力コンセント端子122へバイパス出力可能である。なお、入力インレット端子124に入力される交流電圧とは、商用電源であっても、別の電源100の出力コンセント端子122からケーブル140を介して入力される交流電圧であっても良く、バイパス出力は、前述のそれぞれの交流電圧に対応する。
【0049】
ステップS111では、出力切替部121をB側に接続する。この状態においては、電池モジュール110からインバータ回路120を介して出力コンセント端子122へ交流電圧を出力する経路、および、入力インレット端子124から充電回路123を介して電池モジュール110へ充電する経路が形成される。
【0050】
ステップS112において、メインコントローラ125は、電圧検知部127を通じて検出された直列接続された電池モジュール110の電圧や、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115から受信する信号を用いて、電池セル111の残容量がゼロの状態であるかを判断し、選択的にステップS117のインバータ回路120の出力の実行、または、ステップS113のインバータ回路120の停止を実行する。
【0051】
ステップS113において、インバータ回路120を停止した場合は、ステップS114へ移行し、表示部104を用いて、残容量がゼロの状態であることを表示し、ユーザへ知らせる。
【0052】
ステップS115において、メインコントローラ125は、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115へ通電を禁止するための禁止信号を送信し、ステップS116では、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115が、前記禁止信号を受信し、電池モジュール充電用FET112と電池モジュール放電用FET113をオフする。電源100に収容される全ての電池モジュール110が通電不可の状態となり、インバータ回路120による出力、充電回路123による充電を不可とする。これによって、電源100における消費電流の低減、異常時に各通電箇所を遮断することによる回路信頼性の確保、などを実現することができる。
【0053】
ステップS117において、インバータ回路120の出力中は、ステップS118において、表示部104を用いて、インバータ回路120の出力中の状態にあることを表示し、ユーザへ知らせる。インバータ回路120の出力中の状態を表示する一例として、電池セル群の残容量を示すと良い。なお、インバータ回路120の出力中、充電回路123は停止状態にある。
【0054】
ステップS119では、インバータ回路120の出力中に、メインコントローラ125が、入力検知部129を通じて入力インレット端子124に交流電圧が入力される状態を検知し、入力状態でない場合には、ステップS112に帰還し出力を継続し、入力状態にある場合には、ステップS121へ移行する。
【0055】
ステップS121において、メインコントローラ125は、ステップS117でインバータ回路120を出力開始してから、ステップS119で交流電圧が入力されていることを検知するまでに要した時間を前記タイムラグTとして検出し、そのタイムラグTがしきい値Tth以下であれば、ステップS122へ、そうでなければ、ステップS104へ帰還する。タイムラグTを検出する意義については、後述する。
【0056】
ステップS122において、メインコントローラ125は、独立した電気回路という形態ではなく、ソフトウェア上の機能実現部としてカウンタを有し、そのカウンタ値Nを1だけインクリメントする。カウンタ値Nを用いる意義についても、後述する。ステップS123において、そのカウンタ値Nが所定のしきい値Nth以上、例えば、「2」以上であれば、ステップS120を経てステップS124へ移行し、そうでなければ、ステップS104へ帰還する。ステップS120においては、メインコントローラ125は、インバータ回路120を停止する。カウンタ値Nがしきい値Nth以上である場合は、後述する電源100が循環接続されていることを確実に検出した状態にあるため、ステップS124においては、表示部104を用いて、ユーザによって不適切な操作が為されたこと(電源100の端子の接続状態が不適切であること)を表すエラー表示(例えば、特定のインジケータの点灯または消灯や、文字や特定の図形によるメッセージ)を行い、ユーザへ知らせる。
【0057】
続いて、ステップS125へ移行し、メインコントローラ125は、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115へ通電を禁止するための禁止信号を送信し、ステップS116で、各電池モジュール110の電池モジュールコントローラ115が、前記禁止信号を受信し、電池モジュール充電用FET112と電池モジュール放電用FET113をオフする。循環接続状態にある電源100に収容される全ての電池モジュール110を通電不可の状態として、インバータ回路120による出力、充電回路123による充電を不可とする。これによって、循環接続状態にある電源100の故障を防止することができる。
【0058】
なお、循環接続状態にある電源100に収容される全ての電池モジュール110が通電不可となった状態で、表示部104によるエラー表示を継続する場合には、バックアップ付電源回路126から、メインコントローラ125、および、表示部104へ電力供給を行なうことで、エラー表示を継続することができる。
【0059】
ここで、電源100が循環接続される状態、および、その場合において信頼性を確保する本実施形態に従う例示的な制御方法について図3ないし図5を用いて詳しく説明する。
【0060】
図4は、電源100を循環接続された状態で示す機能ブロック図である。
【0061】
入力インレット端子124に接続されたケーブル140の入力プラグ端子141は、出力コンセント端子122に循環接続されている。この状態における電源100の制御の流れを図3を参照して説明する。なお、電池セル111の残容量はゼロでないものとする。また、後に詳述するが、ステップS122で用いられるカウンタ値Nの初期値は「0」、および、ステップS123で用いられるしきい値Nthは「2」とする。
【0062】
図4に示すように、出力切替部121がA側に接続されている場合、入力インレット端子124と出力コンセント端子122は同電位であり、いずれの電圧もゼロである。したがって、ステップS103において、メインコントローラ125は、入力検知部129を通じて、それの検出部位の電圧がゼロであることを検知し、入力インレット端子124に交流電圧が入力されていない状態であると判定して、ステップS111へ移行する。
【0063】
メインコントローラ125は、ステップS111で、出力切替部121をB側に接続し、ステップS117で、インバータ回路120を起動し出力を開始する。インバータ回路120から出力された交流電圧は、出力コンセント端子122、および、ケーブル140の入力プラグ端子141を介して、入力インレット端子124に入力される。
【0064】
ステップS119で、メインコントローラ125は、入力検知部129を通じて入力インレット端子124に交流電圧が入力される状態を検知し、ステップS121へ移行する。
【0065】
ステップS121で、メインコントローラ125は、ステップS117でインバータ回路120を起動してから、ステップS119で前記交流電圧が入力されていることを検知するまでに要した時間をタイムラグTとして検出する。そのタイムラグTの長さは、メインコントローラ125内のタイマを用いて計測される。そのタイムラグTの長さは、ステップS117の実行によってインバータ回路120を起動することによって発生した交流電圧が入力検知部129を通じて即時検知されることになるため、例えば、0.1秒以内というように非常に短い時間である。そのタイムラグTが、所定のしきい値Tth、例えば、1秒以下である場合に、ステップS122へ移行する。
【0066】
T<=Tthの判定が行なわれた時点で(S121:Yes)、実質、循環接続が為されたものと判断することができる。別の表現をするならば、インバータ回路120が起動するのと同時に、ユーザがケーブル140の入力プラグ端子141を商用電源のコンセント端子に差し込む可能性は低いため、T<=Tthなる事象は、循環接続されている場合に限り起こり得ることと仮定することが妥当である。したがって、ステップS121において循環接続であると判断されたら、ステップS122およびS123を経ることなく、ステップS120を経てステップS124へ移行しても良い。
【0067】
一方、T>Tthの判定が行なわれた場合(S121:No)、インバータ回路120が起動して即時、インバータ回路120からの交流電圧が入力検知部129によって検知された状態ではないため、ユーザが循環接続することなく、ケーブル140の入力プラグ端子141を、商用電源のコンセント端子、または、別の電源100の出力コンセント端子122に接続したものと推定することができる。
【0068】
ステップS122およびS123は、循環接続状態の有無を判定する精度を高めるための判定フローである。インバータ回路120が起動するのと同時に、ユーザがケーブル140の入力プラグ端子141を商用電源のコンセント端子に差し込む可能性は低いが、ユーザは商用電源による充電を実施したいために入力プラグ端子141を商用電源ノコンセント端子に差し込んだにもかかわらず、前述のステップS121における判定がYESとなることも稀に想定される。
【0069】
ステップS121にて、T<=Tthの判定が行なわれると、ステップS122において、カウンタ値Nを1だけインクリメントして「1」とする。ステップS123で、カウンタ値Nがしきい値Nthである「2」より小さいと判定されるため、ステップS104へ帰還する。
【0070】
メインコントローラ125は、ステップS104で、出力切替部121をA側に接続し、ステップS108で、充電回路123を起動する。ただし、電源100は、ケーブル140によって循環接続されており、入力インレット端子124に入力される電圧はゼロであることをステップS110で判定し、ステップS111へ移行する。
【0071】
ステップS111以降は、前述と同じ流れで、再びステップS123まで移行する。この際、カウンタ値Nは「2」となり、ステップS123において、カウンタ値Nがしきい値Nthである「2」以上であると判定されるため、ステップS120を経てステップS124へ移行する。これにより、誤判定することなく循環接続状態を検知し、ユーザへのエラー表示も確実に行ない、また、確実に各回路を停止させることで、故障を防ぐことができる。
【0072】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、循環接続の有無を判定するために、電源100の出力コンセント端子122から出力される交流電圧が、特定の条件で、特定の時間的電圧変化パターン(前述のタイムラグTがしきい値Tth以下であること)を示すという事実に着目し、入力検知部129と前述のタイマとを用いて、電源100の入力インレット端子124に入力される電圧が、出力コンセント端子122から出力される交流電圧であるか否かを判定するようになっている。
【0073】
すなわち、本実施形態においては、4個の電池モジュール110が、前記(1)項における「電池セル群」の一例を構成し、インバータ回路120が同項における「出力部」の一例を構成し、出力コンセント端子122が同項における「電力出力端子」の一例を構成し、充電回路123が同項における「充電部」の一例を構成し、入力インレット端子124が同項における「電力入力端子」の一例を構成し、入力検知部129が同項における「検出部」の一例を構成し、メインコントローラ125のうち、図3のステップS117およびS121を実行する部分が同項における「判定部」の一例を構成しているのである。
【0074】
以上、1台の電源100が自己完結的に循環接続された場合に、その信頼性を確保する方法の例示的な一実施形態を説明したが、循環接続する電源100の数は1台とは限らない。
【0075】
図5は、2台の電源100Aおよび100Bを循環接続された状態で示す機能ブロック図である。
【0076】
電源100Aの出力コンセント端子122Aに接続されたケーブル140Aは、入力インレット端子124Bに接続され、一方、電源100Bの出力コンセント端子122Bに接続されたケーブル140Bは、入力インレット端子124Aに接続され、これにより、2台の電源100Aおよび100Bは循環接続された状態にある。
【0077】
この場合であっても、2台の電源100Aおよび100Bは、それぞれ前述の制御フローに従い、循環接続状態にあることを検出し、それぞれが各回路を停止し、エラー表示する。すなわち、循環接続される電源の台数が2台以上であっても循環接続を検出することができる。また、その検出のために、新規の端子や回路を追加する必要もないため、コストアップすることなく、信頼性の高いシステムを提供できる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の電源として用いられる電池システムであって、
複数の電池セルで構成されて成る電池セル群と、
前記電池セル群の直流電圧を交流電圧に変換および出力する出力部と、
前記出力部から電気機器へ電力を供給するための電力出力端子と、
交流電圧を入力して直流電圧に変換し前記電池セル群を充電する充電部と、
前記充電部に電力を入力するための電力入力端子と、
前記電力入力端子の電圧もしくは電流またはそれに応じて変化する電圧もしくは電流を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、当該電池システムの前記出力部と前記電力入力端子とが互いに接続される循環接続の有無、および/または、当該電池システムの前記出力部と別の電池システムの前記電力入力端子とが互いに接続されるとともに、前記他の電池システムの前記出力部と当該電池システムの前記電力入力端子とが互いに接続される循環接続の有無を判定する判定部と
を含む電池システム。
【請求項2】
さらに、
前記出力部および前記充電部の起動または停止を制御する制御部を含み、
前記判定部は、前記検出部が、前記出力部による交流電圧の出力が開始されてから所定時間内に、前記電力入力端子に交流電圧が入力される状態を検出した場合に、前記循環接続が存在すると判定し、前記制御部により、前記出力部および/または前記充電部を停止させる請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
さらに、
表示部を含み、
前記判定部は、前記検出部が、前記出力部による交流電圧の出力が開始されてから所定時間内に、前記電力入力端子に交流電圧が入力される状態を検出した場合に、前記循環接続が存在すると判定し、前記表示部の表示状態を変更する請求項1または2に記載の電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−116035(P2013−116035A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58544(P2012−58544)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2011−261577(P2011−261577)の分割
【原出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(507307651)
【Fターム(参考)】