説明

電池パック及び電池パック用ケース

【課題】難燃性を確保しながら薄肉部を形成できるようにするとともに、電池パック用ケースの形状が制約されないようにする。
【解決手段】電池パック用ケースは、第1ケース構成部21と、この第1ケース構成部21に結合される部位を有する第2ケース構成部22と、を備えている。第1ケース構成部21と第2ケース構成部22とが互いに結合されることによって電池を収納する空間が形成される。第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22は、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部25と、第1樹脂部25の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部25における前記所定の部位とは異なる部位に樹脂を一体成形した第2樹脂部26と、をそれぞれ備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及び電池パック用ケーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び2に開示されているように、電池パック用ケースとして、樹脂を射出成形した樹脂成形品からなるものが知られている。射出成形によって形成した電池パック用ケースにおいて、UL(Underwriters Laboratories Inc.)94に規定されている難燃性を確保するには、0.8mm程度の厚みが必要となる。一方、下記特許文献3には、0.2mm程度の厚みの樹脂製シート材を矩形箱形の凹陥部を有する成形型にはめ込んで成形した後、冷却固化させるようにした電池パック用ケースが開示されている。この電池パック用ケースは、肉厚が0.2mm程度であるため、射出成形品に比べて薄肉のケースとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−58332号公報
【特許文献2】特開2003−249771号公報
【特許文献3】特開2003−197168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シート材を成形型にはめ込んで成形する場合には、電池パック用ケースの形状が制約されてしまうという問題がある。すなわち、シート材を成形型にはめ込んで成形する場合には、シート材を折り曲げる程度のことができるだけなので、少し複雑な形状でも成形が困難となり、また部位によって厚みを変える等の要望に対応できるものではなく、ケースの形状が制約されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、難燃性を確保しながら薄肉部を形成できるようにするとともに、電池パック用ケースの形状が制約されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、前記ケースは、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を有し、前記第1樹脂部は、前記ケースのうち、規定の方向の両側から前記電池を覆う2つの部分のうちの少なくとも一方の部分に配置されている、電池パックである。
【0007】
前記電池パックにおいて、前記第1樹脂部は、前記ケースの2つの部分のうちの双方の部分に配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明は、電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、前記ケースは、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、回路基板を収納する収納部と、を有する、電池パックである。
【0009】
本発明は、電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、前記ケースは、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を有し、前記第1樹脂部は、前記電池をその長手方向の全体にわたり被覆可能な大きさを有する、電池パックである。
【0010】
前記電池パックにおいて、前記電池は、その長手方向に沿って複数個並べて配置され、前記第1樹脂部は、前記長手方向において前記各電池の全てを被覆可能な大きさを有することが好ましい。
【0011】
本発明は、電池パックに用いられるケースであって、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を備え、前記第1樹脂部の所定の部位は、前記電池の外径に沿っている、電池パック用ケースである。
【0012】
本発明は、電池パックに用いられるケースであって、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を備え、前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部の所定の部位に向かって先細りに形成されている、電池パック用ケースである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、難燃性を確保しながら薄肉部を形成できるようにするとともに、電池パック用ケースの形状が制約されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電池パックを示す斜視図である。
【図2】第2ケース構成部を取り外した状態で前記電池パックを示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線における電池パック用ケースの断面図である。
【図4】前記電池パックのケースに印字を施した状態を示す図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係る電池パック用ケースの図3相当図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る電池パック用ケースの図3相当図である。
【図7】本発明のその他の実施形態に係る電池パック用ケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電池パックは、電池パック用ケースである外装のケース12と、このケース12に収容された電池14とを備えている。電池14は円筒状の2次電池によって構成されており、本実施形態では、複数(図例では6つ)の電池14が2列に並んで収納される形態が示されている。ケース12内には、電池14の保護回路等を有する回路基板16も収容されている。この回路基板16には、外部と接続するための接続端子(図示省略)が取り付けられており、この接続端子は、ケース12に設けられた開口部(図示省略)を通して外部に露出するようになっている。
【0017】
ケース12は、全体として一方向に細長い外観を呈しており、互いに結合することによって電池14の収容空間を形成する第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22を備えている。第1ケース構成部21には、電池14及び回路基板16を電気的に接続するための金属製の接続部材18等が配設されていて、電池14及び回路基板16を設置可能となっている。一方、第2ケース構成部22は、第1ケース構成部21に設置された電池14及び回路基板16を覆うように第1ケース構成部21に結合される。
【0018】
第1ケース構成部21は、電池14の周面の略3分の1〜略2分の1を覆う大きさの湾曲状の周面部21aと、この周面部21aの長手方向の両端部に設けられた端面部21bとを一体的に備えている。周面部21aは、電池14の外周面に沿うような内面を有しており、本実施形態では、4つの電池14が縦に一列に並ぶ列と、2つの電池14が縦に一列に並ぶ列とが横に並んで配列される構成となっているので、周面部21aの内面は、長手方向の中間部において幅方向に2つの凹面が繋がった形状となっている。
【0019】
第2ケース構成部22は、電池14の周方向の略3分の2〜略2分の1を覆う大きさの湾曲状の周面部22aと、この周面部22aの長手方向の両端部に設けられた端面部22bとを一体的に備えている。周面部22aは、電池14の外周面に沿うような内面を有しており、この内面は、長手方向の中間部において幅方向に2つの凹面が繋がった形状となっている。なお、第2ケース構成部22では、一方の列の外面が湾曲状に形成される一方で他方の列の外面が平坦状に形成されているが、この構成に限られるものではない。
【0020】
図3に示すように、ケース12は、薄いシート状の第1樹脂部25と、この第1樹脂部25に一体的に成形される第2樹脂部26とを備えている。第1樹脂部25は、第1ケース構成部21と第2ケース構成部22のそれぞれに設けられている。また、第2樹脂部26も第1ケース構成部21と第2ケース構成部22のそれぞれに設けられている。第1樹脂部25は、後述するように樹脂フィルムを折り曲げ成形した部位であり、第2樹脂部26は、後述するように射出成形された部位である。なお、本実施形態では、第1樹脂部25が第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22において、周面部21a,22aのみに設けられる構成としているが、端面部21b,22bにも第1樹脂部25が設けられる構成としてもよい。
【0021】
第1樹脂部25は、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22のそれぞれにおいて、周方向の一部に設けられており、第1樹脂部25はケース12の外表面の一部を構成するように配設されている。言い換えると、第1樹脂部25は、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22において、ケース12の外周部に配設されている。そして、第2樹脂部26は、第1樹脂部25の配置されていない部位では、ケース12の外表面を構成し、第1樹脂部25の配置さている部位については、第1樹脂部25の内側に配設されて第1樹脂部25と一体化されている。このように第1樹脂部25の形状を補うように第2樹脂部26が成形されることにより、ケース12を電池14の外形に対応した形状に成形することができる。
【0022】
第1樹脂部25が配設されている部位において、第2樹脂部26は、第1樹脂部25の内面の一部が露出する程度に当該一部を残した状態で第1樹脂部25と接合されている。このため、ケース12の周面部21a,22aには、第1樹脂部25のみからなる部位と、この部位とは異なる部位で第2樹脂部26が内側になるように第1樹脂部25と第2樹脂部26とが積層された部位と、第2樹脂部26のみからなる部位とが存在する。
【0023】
第1樹脂部25は、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22において、それぞれ同じ素材の難燃性樹脂によって構成されている。本実施形態では、ポリカーボネート樹脂が用いられている。
【0024】
第2樹脂部26は、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22において、それぞれ同じ素材の難燃性樹脂によって構成されており、本実施形態では、ポリカーボネート樹脂が用いられている。すなわち、第1樹脂部25と第2樹脂部26とが同じ素材で構成されている。
【0025】
なお、第1樹脂部25及び第2樹脂部26は、ポリカーボネート樹脂に代えて、ポリアミド樹脂、ABS樹脂等の樹脂、これらの共重合体やアロイからなる難燃性の樹脂によって構成されていてもよい。
【0026】
第1樹脂部25は、厚みが0.25mm程度の圧延フィルムを所定の形状に折り曲げ成形したものである。このフィルムは圧延されたものであるため、射出成形されたものに比べて充填密度が高いものとなっている。したがって、ケース12の一部に、厚さが0.25mmのポリカーボネートフィルムのみによって構成される部位があったとしても、UL94に規定されている難燃性の基準をクリアすることができる。また、厚み方向に第2樹脂部26のみで構成される部位については、0.75mmの厚みを確保するようにしている。このような構成にすることにより、ケース12全体としてUL94の難燃性に関する基準が満足されている。なお、第1樹脂部25と第2樹脂部26とが積層された部位については0.75mm以下の厚みのところも存在している。
【0027】
第1樹脂部25は、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22において、どの範囲で設けられるようにしてもよいが、電池パック10が搭載される機器での電池パック10の設置空間の形状、大きさに応じて、ケース12として薄肉化を図りたい部位を含む範囲に設けられていればよい。そうすれば、薄肉化が必要な部位を残して第1樹脂部25に第2樹脂部26を一体形成することにより、所定の部位を薄肉にしつつ、所定の形状のケース12を得ることができる。
【0028】
第1ケース構成部21と第2ケース構成部22との結合は、本実施形態では、第2樹脂部26同士の機械的な嵌合となっている。具体的に説明すると、第1ケース構成部21の第2樹脂部26は、第1結合部31を有し、第2ケース構成部22の第2樹脂部26は、第2結合部32を有している。
【0029】
第1ケース構成部21では、第2樹脂部26の幅方向の両端部が立ち上がった形状となっていて、この立ち上がった部位が第1結合部31として機能する。第1結合部31は、幅方向両端部においてそれぞれ貫通孔31aを有している。貫通孔31aは、ケース長手方向の適宜位置に配設されている。
【0030】
第2ケース構成部22では、第2樹脂部26の幅方向の両端部が下向きに延出された形状となっており、この下向きの部位の端部が第2結合部32として機能する。第2結合部32は、第1結合部31の貫通孔31aに挿通された状態で第1結合部31に係止される爪部32aを有している。
【0031】
なお、第1結合部31が爪部を有し、第2結合部32が貫通孔を有する構成としてもよい。貫通孔に代えて凹部を設けるようにしてもよい。第1結合部31と第2結合部32との接合部においては、爪嵌合に加えて、あるいは爪嵌合に代えて、接着剤によって接着されるようにしてもよく、あるいは超音波、熱等によって固着されるようにしてもよい。
【0032】
第1樹脂部25は、透明な樹脂フィルムによって構成されていてもよい。この場合には、第1樹脂部25の裏面(内面)に必要な情報や図柄が印字される構成としても外部から視認できるようになる(図4参照)。この場合には、印字35が施された面が内側を向くようにフィルムを成形型にセットすれば、第1樹脂部25の裏面に印字35が施された形態とすることができる。これにより、印字35を外部から視認できる一方で、印字35が磨耗しないようにすることができる。
【0033】
以上のような構成の電池パック10を作成するには、まず樹脂フィルムを所定の形状に形成する(フォーミング工程)。この工程では、第1ケース構成部21の第1樹脂部25の形状に合わせた成形面を有する成形型(図示省略)に樹脂フィルムをセットするとともに、第2ケース構成部22の第1樹脂部25の形状に合わせた成形面を有する成形型に樹脂フィルムをセットし、この状態で熱をかけることによって所定の形状に固める。
【0034】
次に、これらの成形型から樹脂フィルム(シート状の樹脂成形品)を取り出す。そして、樹脂フィルムに所定の印刷を施す場合には、樹脂フィルムの裏面側に印刷を行う。
【0035】
次に、樹脂フィルムを、第1ケース構成部21を成形するための第1成形型(図示省略)に設置し、また樹脂フィルムを、第2ケース構成部22を成形するための第2成形型(図示省略)に設置する(設置工程)。この工程では、第1ケース構成部21の形状に応じたキャビティを有する第1成形型と、第2ケース構成部22の形状に応じたキャビティを有する第2成形型とが使用される。第1成形型では、第1樹脂部25を形成する位置に樹脂フィルムを設置することになるが、このとき樹脂フィルムの一方の面(外面)が成形型(例えば下型)のキャビティ内面に重ね合わされる。そして、この状態で成形型を閉じると、例えば上型(第1型)のキャビティ内面と下型(第2型)のキャビティ内面との間に成形空間が形成される。このとき、上型のキャビティ内面が樹脂フィルムの他方の面(内面)の一部に接触し、樹脂フィルムの内面における所定の部位が上型によって覆われる。すなわち、樹脂フィルム内面の所定部位と上型のキャビティ内面との間に隙間ができていない。
【0036】
そして、この状態で、キャビティ内に樹脂を射出し、樹脂フィルムに一体的に樹脂を成形する(モールディング工程)。これにより、第1樹脂部25の内面の所定部位が第2樹脂部によって覆われることなくその他の部位に第2樹脂部26が一体的に形成された樹脂成形品となる。射出された樹脂が硬化した後、樹脂成形品を成形型から取り出す。このようにして第1ケース構成部21が成形される。また、第2成形型を用いた第2ケース構成部22の成形についても同様に行われる。
【0037】
続いて、第1ケース構成部21に回路基板16、接続部材18を固定するとともに電池14を配設し、これらを挟み込むようにして第2ケース構成部22を第1ケース構成部21に結合することにより、電池パック10が完成する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の電池パック10では、ケース12の所定の部位の厚みが第1樹脂部25の厚みとなっている。つまり、電池パック10の寸法に制約が課される場合において、ケース12の肉厚が制約されてしまう場合があるが、この場合には、ケース12の厚みが制約される部位が第1樹脂部25によって構成される。この構成では、厚みが制約される部位の厚みが樹脂フィルムの厚みとなるが、このような厚みであっても、第1樹脂部25が難燃性のフィルムによって構成されるので、電池パック用のケース12として要求される難燃構造を達成することができる。しかも、第2樹脂部26については所定の厚みを確保することで電池パック用のケース12としての難燃構造を達成することができる。さらに、第1樹脂部25に第2樹脂部26の樹脂を一体成形した構成となっているので、第1樹脂部25のフィルムによっては対応できない形状の部位を第2樹脂部26の形状で対応することができる。したがって、第1樹脂部25により、難燃性を維持しつつ薄肉の部位を形成することができるとともに、電池パック用のケース12としての寸法の制約に対処可能となり、しかも、第2樹脂部26の形状をアレンジすることにより、種々の形状のケース12を実現することができる。
【0039】
さらに本実施形態では、第1樹脂部25と第2樹脂部26とが同じ素材で構成されるので、第1樹脂部25と第2樹脂部26との結合力を向上することができ、電池パック用ケース12としての強度を向上することができる。しかもそれぞれがポリカーボネート樹脂製とされているので、難燃性を確保しつつ、厚みが0.25mm程度の薄肉部を形成できる。
【0040】
また本実施形態では、第2樹脂部26にそれぞれ結合部31,32が設けられて、これらが機械的に嵌合する構成となっているので、第2樹脂部26の厚肉部を利用して機械的な嵌合構造を設けることができる。したがって、薄肉の部位を設けつつ、嵌合構造のための部位が増大することを防止できる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、樹脂フィルムは、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22の一方に設けられる構成であってもよい。すなわち、肉厚に余裕を持たせることができるようなケース12の場合には、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22の一方にのみ第1樹脂部25を形成し、もう一方のケース構成部22,21は第2樹脂部26のみからなる構成してもよい。
【0042】
第1ケース構成部21と第2ケース構成部22との結合は、第1樹脂部25と第2樹脂部26とが結合される構成としてもよい。例えば図5に示すように、第1ケース構成部21では、その幅方向の両端にそれぞれ第1樹脂部25の端部が位置している。そして、第1樹脂部25の端部は、第2樹脂部26よりも上側に向かって突出している。この突出した部位は第1結合部31として機能する。また、第2樹脂部26の幅方向両端部には、第1結合部31との間に第2ケース構成部22の第2樹脂部26を挟み込んだ状態で第2ケース構成部22を保持する保持部41がそれぞれ形成されている。第2ケース構成部22では、その幅方向の端部が第2樹脂部26のみによって構成されている。そして、その部位が保持部41と第1結合部31との間に挿入可能な形状に形成されている。この部位は、第1結合部31に結合される第2結合部32として機能する。第1結合部31と第2結合部32との結合は、第2結合部32の圧入としてもよく、あるいは第1樹脂部25と第2樹脂部26との間を接着剤で接着するようにしてもよく、あるいは、超音波又は熱による固着としてもよい。こうすることで、結合構造が複雑な形状になることを防止することができ、成形性を向上することができる。
【0043】
第1ケース構成部21と第2ケース構成部22との結合は、第1樹脂部25と第1樹脂部25とが結合される構成としてもよい。例えば図6に示すように、第1ケース構成部21の第1樹脂部25と第2ケース構成部22の第1樹脂部25とが互いに重なり合う部位が存在している。そして、これらが重なり合っているところで、両者を接着剤で接着するようにしてもよく、あるいは、超音波又は熱による固着としてもよい。こうすることで、結合構造が複雑な形状になることを防止することができ、成形性を向上することができる。この場合において、第1ケース構成部21の第2樹脂部26と第2ケース構成部22の第2樹脂部26とを圧入等によって固定するようにしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、第1ケース構成部21と第2ケース構成部22とがそれぞれ別個に成形された上で、その後に結合される構成としたがこれに限られるものではない。例えば、図7に示すように、第1ケース構成部21と第2ケース構成部22とがヒンジ43を介して結合された状態で第1及び第2ケース構成部21,22を成形するようにしてもよい。この場合には、第1ケース構成部21及び第2ケース構成部22を一体的に形成するための成形型(図示省略)が用いられる。
【0045】
図7は、閉じた状態で矩形箱形の外観を呈するケース12の断面を示しており、このケース12内には、円筒状の電池14が配設される。このケース12は、第1ケース構成部21の第2樹脂部26と第2ケース構成部22の第2樹脂部26とが対角線方向に沿う分割面(接合面)によって二分される構成となっている。そして、矩形の1つの頂角位置において、第1ケース構成部21から第2ケース構成部22に亘って配設される第1樹脂部25によってヒンジ43が構成され、その対角位置にある頂角の位置に、第1ケース構成部21と第2ケース構成部22とを結合するための第1結合部31及び第2結合部32が形成されている。第1結合部31は、凹部31bを備えており、第2結合部32は凹部31bに嵌合する爪部32bを備えている。なお、第1結合部31が爪部を備え、第2結合部32が凹部を備える構成であってもよい。
【0046】
第1樹脂部25は、矩形の4辺のうち3辺における外周部に連続するように設けられている。すなわち、第1樹脂部25の一端部は、第1ケース構成部21におけるヒンジ43の対角位置近傍に位置しており、他端部は第2ケース構成部22の幅方向の略中央部に位置している。第1樹脂部25の存在する3辺については、第1樹脂部25のみからなる部位が存在し、その部位では0.25mm程度の厚みとなっており、その他の1辺については、第2樹脂部26のみからなり、最も薄いところで0.75mm程度の厚みとなっている。
【0047】
この構成のケース12を作成するには、まず樹脂フィルムを所定の形状にフォーミングし、その後、この樹脂フィルムを成形型のキャビティ内に設置して樹脂を射出成形する。この成形型は、第1ケース構成部21と第2ケース構成部22とが繋がった形状のキャビティを有しているので、第1及び第2ケース構成部22を一括して成形することができる。
【0048】
なお、図7は矩形の3面に第1樹脂部25が配置された構成としたが、これに限られるものではない。例えば、矩形の4面にそれぞれ第1樹脂部25が配置される構成としてもよい。この場合には、4面のそれぞれにおいて第1樹脂部25のみからなる薄肉部を設けることができる。また、一方のケース構成部21,22のみに第1樹脂部25が設けられる構成としてもよい。この場合には、ヒンジ43が第2樹脂部26によって構成されていてもよい。また、外観が矩形となる断面形状を有する構成となっているものに限られない。電池14の形状に合わせて外面が湾曲状に形成されている部位があってもよい。
【0049】
なお、本発明は、電池パックに用いられるケースであって、難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を備えている電池パック用ケースである。
【0050】
本発明では、ケースの所定の部位の厚みが第1樹脂部の厚みとなっている。つまり、電池パックの寸法に制約が課される場合において、ケースの肉厚が制約される場合があるが、この場合には、ケースの厚みが制約される部位が第1樹脂部によって構成される。この構成では、厚みが制約される部位の厚みがフィルムの厚みとなるが、このような厚みであっても、第1樹脂部が難燃性のフィルムによって構成されるので、電池パック用ケースとして要求される難燃構造を達成することができる。しかも、第2樹脂部については所定の厚みを確保することで電池パック用ケースとしての難燃構造を達成することができる。さらに、第1樹脂部に第2樹脂部の樹脂を一体成形した構成となっているので、第1樹脂部のフィルムによっては対応できない形状の部位を第2樹脂部の形状で対応することができる。したがって、第1樹脂部により、難燃性を維持しつつ薄肉の部位を形成することができるとともに、電池パック用ケースとしての寸法の制約に対処可能となり、しかも、第2樹脂部の形状をアレンジすることにより、種々の形状の電池パック用ケースを実現することができる。
【0051】
ここで、前記第2樹脂部を構成する樹脂は、前記第1樹脂部の樹脂フィルムと同じ素材であるのが好ましい。この態様では、第1樹脂部と第2樹脂部とが同じ素材で構成されるので、第1樹脂部と第2樹脂部との結合力を向上することができ、電池パック用ケースとしての強度を向上することができる。
【0052】
また、前記第2樹脂部及び前記第1樹脂部は、何れもポリカーボネート樹脂によって構成されていてもよい。この態様では、難燃性を確保しつつ、厚みが0.25mm程度の薄肉部を形成できる。
【0053】
前記樹脂フィルムが透明の場合には、前記樹脂フィルムの裏面に印字がなされていてもよい。この態様では、印字を外部から視認できる一方で、磨耗しないようにすることができる。
【0054】
第1ケース構成部と、この第1ケース構成部に結合される部位を有する第2ケース構成部とを備えており、前記第1ケース構成部と前記第2ケース構成部とが互いに結合されることによって電池を収納する空間が形成される場合には、前記第1樹脂部は、前記第1ケース構成部及び前記第2ケース構成部の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0055】
この態様において、前記第2樹脂部は、前記第1ケース構成部及び前記第2ケース構成部のそれぞれに設けられ、前記第1ケース構成部の第2樹脂部は第1結合部を有し、前記第2ケース構成部の第2樹脂部は、第1結合部と機械的に嵌合される第2結合部を有していてもよい。この態様では、第2樹脂部の厚肉部を利用して機械的な嵌合構造を設けることができるので、薄肉の部位を設けつつ、嵌合構造のための部位が増大することを防止できる。
【0056】
また、前記第1樹脂部及び前記第2樹脂部が、前記第1ケース構成部及び前記第2ケース構成部のそれぞれに設けられる場合には、前記第1ケース構成部の第1樹脂部と前記第2ケース構成部の第2樹脂部とが互いに結合されていてもよい。この態様では、第1樹脂部と第2樹脂部との結合を接着剤や熱による固着とすることができ、結合構造が複雑な形状になることを防止することができる。したがって、成形性を向上することができる。
【0057】
また、前記第1樹脂部が、前記第1ケース構成部及び前記第2ケース構成部のそれぞれに設けられる場合には、前記第1ケース構成部の第1樹脂部と前記第2ケース構成部の第1樹脂部とが互いに結合されていてもよい。この態様では、第1樹脂部どうしの結合を接着剤、超音波又は熱による固着とすることができ、結合構造が複雑な形状になることを防止することができる。したがって、成形性を向上することができる。
【0058】
また、前記第1樹脂部は、前記第1ケース構成部から前記第2ケース構成部に亘って設けられる場合には、前記第1ケース構成部と前記第2ケース構成部とを繋ぐ前記第1樹脂部は、ヒンジとして機能してもよい。この態様では、薄肉の樹脂フィルムからなる第1樹脂部をヒンジとして機能させることができるので、第1ケース構成部と第2ケース構成部とを一体的に成形した電池パック用ケースを得ることができる。
【0059】
本発明は、前記電池パック用ケースと、前記電池パック用ケースに収容された電池と、を備えている電池パックである。
【0060】
本発明は、電池パック用ケースの製造方法であって、成形型のキャビティ内に、樹脂フィルムの所定の部位がキャビティ内面との間に隙間が残らないように前記樹脂フィルムを設置する設置工程と、前記成形型のキャビティに樹脂を射出して前記樹脂フィルムに一体成形するモールディング工程と、が含まれる電池パック用ケースの製造方法である。
【0061】
この製造方法において、樹脂フィルムを所定の形状に形成するフォーミング工程が含まれ、前記設置工程では、前記フォーミング工程において所定の形状に形成された樹脂フィルムを前記成形型に設置するようにしてもよい。
【0062】
本発明は、電池パックの製造方法であって、前記電池パック用ケースの製造方法によって製造された電池パック用ケースに少なくとも電池を収容する電池パックの製造方法である。
【符号の説明】
【0063】
14 電池
21 第1ケース構成部
21a 周面部
21b 端面部
22 第2ケース構成部
22a 周面部
22b 端面部
25 第1樹脂部
26 第2樹脂部
31 第1結合部
32 第2結合部
35 印字
43 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、
前記ケースは、
難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、
前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を有し、
前記第1樹脂部は、前記ケースのうち、規定の方向の両側から前記電池を覆う2つの部分のうちの少なくとも一方の部分に配置されている、電池パック。
【請求項2】
前記第1樹脂部は、前記ケースの2つの部分のうちの双方の部分に配置されている、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、
前記ケースは、
難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、
前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、
回路基板を収納する収納部と、を有する、電池パック。
【請求項4】
電池と、前記電池を収容するケースと、を備えた電池パックであって、
前記ケースは、
難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、
前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を有し、
前記第1樹脂部は、前記電池をその長手方向の全体にわたり被覆可能な大きさを有する、電池パック。
【請求項5】
前記電池は、その長手方向に沿って複数個並べて配置され、
前記第1樹脂部は、前記長手方向において前記各電池の全てを被覆可能な大きさを有する、請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
電池パックに用いられるケースであって、
難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、
前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を備え、
前記第1樹脂部の所定の部位は、前記電池の外径に沿っている、電池パック用ケース。
【請求項7】
電池パックに用いられるケースであって、
難燃性の樹脂フィルムからなる第1樹脂部と、
前記第1樹脂部の所定の部位を残しつつ、当該第1樹脂部に樹脂を一体成形した第2樹脂部と、を備え、
前記第2樹脂部は、前記第1樹脂部の所定の部位に向かって先細りに形成されている、電池パック用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253029(P2012−253029A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174693(P2012−174693)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2009−179018(P2009−179018)の分割
【原出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】